(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(蓄電システムの概要)
図1を参照して本発明の実施の形態の概要を述べる。
図1は、本発明の実施の形態に係る蓄電システム100の概要を模式的に示す図である。実施の形態に係る蓄電システム100は、自動車等の車両に搭載される電装部品410等の負荷400に電力を供給する電源部300と、電源部300の状態を計測したり、電源部300の充放電を制御したりする蓄電制御部200を備える。蓄電制御部200は、電源部300の電圧、電流、温度等を計測する計測部700と、計測部700が計測する測定値や予め記憶されている制御パラメータを使って電源部300の状態を判定する判定部600と、判定部600の判定した結果に基づいて、電源部300の充放電を制御する充放電制御部210とを含む。
【0011】
実施の形態に係る電源部300は、車載用の蓄電部として従来から使用される鉛バッテリ310と、鉛バッテリ310と並列に接続された蓄電部320を備える。蓄電部320は、鉛バッテリ310とは異なる充放電特性を有する蓄電素子が用いられる。具体的には鉛バッテリ310よりも充放電サイクルに対する耐性が高い蓄電素子が用いられる。以下本明細書においては、蓄電部320としてニッケル水素電池を利用することを前提に説明するが、蓄電部320は、例えばリチウムイオン電池等の二次電池や電気二重層コンデンサ等のキャパシタを用いても実現できる。ニッケル水素電池は、同じ総放電電気量で比較した際に、鉛バッテリよりも内部抵抗の増加率が小さい。
【0012】
負荷400は、電装部品410の他、エンジンを始動するためのスタータ420も含む。車載用の電装部品410としては、例えばヘッドライト、エアコン、デフォッガ、オーディオ、メータ、ストップランプ、フォグランプ、ウィンカ、パワーステアリング、パワーウインドウ、エンジン電装品等が挙げられる。
【0013】
オルタネータ500は、エンジンの動力を利用して交流電力を発電する。オルタネータ500が発電した交流電力は、図示しないレギュレータや整流器を介して負荷400に供給されたり、充放電制御部210の制御の下、電源部300に蓄電されたりする。
(蓄電部の状態判定)
図2は、本発明の実施の形態に係る蓄電システム100の回路構成を模式的に示す図である。上述したように、蓄電システム100は、電源部300と、蓄電制御部200とを備える。電源部300は、鉛バッテリ310と、蓄電部320と、電源部300の温度を検出するサーミスタ330を備える。鉛バッテリ310と蓄電部320は、スイッチ800を介して並列に接続される。蓄電部320は、スイッチ800を介して、負荷400やオルタネータ500に接続される。蓄電部320は、スイッチ800がオフ状態に制御されると、負荷400やオルタネータ500から切り離される。スイッチ800は、例えば既知のリレースイッチや半導体スイッチを用いて実現できる。また、蓄電システム100は、蓄電部320に直列に接続されるシャント抵抗720を備えており、蓄電部320の充放電電流を計測することができるようになっている。
【0014】
蓄電制御部200は、CPU(Central Processing Unit)250、記憶部260、スイッチ制御回路270および電圧電流検出回路280を含む。電圧電流検出回路280は、電源部300の電圧を検出する。また、電圧電流検出回路280は、シャント抵抗720の電圧降下から、蓄電部320の充放電電流を検出する。なお、シャント抵抗720の代わりにホール素子を使うこともできる。CPU250は、サーミスタ330から温度に基づく電気信号が入力され、サーミスタ330の近傍の温度を検出する。スイッチ制御回路270は、スイッチ800の作動状態を制御することで、蓄電部320から負荷400への放電や、オルタネータ500から蓄電部320への充電を停止できるようになっている。
【0015】
CPU250は、蓄電制御部200の動作を統括的に制御する。具体的には、CPU250は記憶部260に格納された劣化判定プログラムを読み出して実行することで、鉛バッテリ310の劣化状態の判定を行う。図示はしないが、記憶部260はCPU250が実行可能なプログラムを格納するROM(Read Only Memory)の他、CPU250の作業用領域となるRAM(Random Access Memory)を備える。また、値を更新していく必要があるパラメータを格納するためにEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性メモリを備えることもできる。
【0016】
また、記憶部260は、本発明の実施形態の劣化判定プログラムのほかに、蓄電部320の過充電過放電を防止するための電池保護プログラムや、出力電流のピーク値を制限する電流制限プログラム等、蓄電部320の充放電制御に関するプログラムを格納することもできる。この場合、CPU250は、上述の劣化判定プログラムのほか、記憶部260に格納されているプログラムを実行することで、蓄電部320の充放電制御も行うことができる。
【0017】
(劣化判定の原理)
次に、本発明の実施形態に係る劣化判定の原理について説明する。
【0018】
図3および
図4は、電源部300を構成する鉛バッテリ310の劣化と蓄電部320の放電電流との関係を示すための図である。
図3および
図4に示す結果を得るために行われる試験の条件については、以下に記載する。
【0019】
(試験条件)
定格電圧12Vの鉛バッテリと定格電圧12Vのニッケル水素電池を並列に接続して構成した電源部300に、負荷400を模擬する抵抗器と、オルタネータを模擬する外部電源を接続して充放電する。鉛バッテリとニッケル水素電池の放電電流及びインピーダンス推移を以下の条件で評価する。
【0020】
環境温度:60℃において、以下の充放電を1サイクルとし、複数回繰り返す。
(i) 放電:45A/59.0秒。
(ii) 放電:300A/1.0秒。
(iii) 充電:充電電圧14.0V、制限電流100A/60秒。
【0021】
ここで、(i)〜(iii)の充放電を3600回繰り返した後、環境温度60℃にて48時間放置する(1サイクル)。48時間の放置終了後、再び(i)〜(iii)を繰り返す。上記の充放電、及び放置の繰り返し試験を、所定回数実施した後、鉛バッテリとニッケル水素電池の並列接続を解除し、抵抗測定器(交流電圧)を用いて、鉛バッテリ、ニッケル水素電池、それぞれのインピーダンスを測定する。また、(ii)の放電時に流れる鉛バッテリの放電電流Ip、ニッケル水素電池の放電電流Isを配線上に配置したシャント抵抗の電圧降下より算出する。
【0022】
この試験では、便宜上、インピーダンス(内部抵抗)の初期値に対する比率が220%を超えた場合にその蓄電素子が劣化していると判定する。蓄電素子が劣化した場合には、劣化した蓄電素子を劣化していない新しい蓄電素子に交換し、試験を継続する。
【0023】
図3は、上記充放電試験のサイクル回数に対する放電電流Ip、Isをプロットとしたグラフであり、
図4は、インピーダンスRp、Rsをそれぞれ、初期値に対する比率をプロットしたグラフである。各蓄電素子の劣化が進むと、インピーダンスが急激に増加し、初期値に対する比率が220%を越える。
図4は、各蓄電素子のインピーダンス、すなわち、内部抵抗の変化を示しており、各蓄電素子の劣化状態を直接的に判定することができる。
図4において、鉛バッテリのインピーダンスの比率が非連続に変化するポイントが、鉛バッテリを交換したタイミングに対応する。
【0024】
図3と
図4を比較すると、鉛バッテリのインピーダンスの比率が220%を超えるサイクル回数に対応して、ニッケル水素電池の放電電流に変化が見られることが理解できる。具体的には、
図3に示すように、サイクル回数が少ないうちは、放電電流に変化が見られないが、サイクル回数が増加し、鉛バッテリが劣化してくると、ニッケル水素電池の放電電流が急激に大きくなる。従って、ニッケル水素電池の放電電流の変化量を元に、鉛バッテリの劣化を判定することができる。具体的には、ニッケル水素電池から負荷へ供給される電流値を検出し、劣化前の電流値を初期値とした場合の初期値に対する比率が所定の値を越えた際に、鉛バッテリが劣化していると判定する。
【0025】
また、鉛バッテリが劣化し、新しい鉛バッテリに交換した後の変化に着目すると、サイクル回数に対する放電電流の推移は、鉛バッテリの交換前の放電電流の推移と同じ傾向を示すことが理解できる。放電電流の絶対値自体は変化するが、鉛バッテリのインピーダンスの比率が220%を超えるサイクル回数に対応して、放電電流が初期値から変化するという傾向は同じである。このことから、鉛バッテリを交換した後も、上述と同じ原理を用いて、蓄電素子の電流値の変化量を元に、鉛バッテリの劣化を判定できることが理解できる。
【0026】
一方、
図4に示すように、蓄電素子の劣化が進むと、鉛バッテリの交換するタイミングが早くなる。蓄電素子が劣化すると内部抵抗が増加するため、鉛バッテリが頻繁に使用されることになり、それが鉛バッテリの交換するタイミングが早くなる要因となっている。
図3に示すように、蓄電素子が劣化すると、鉛バッテリ310から負荷へ流れる放電電流が増加する一方、蓄電部320から負荷400へ流れる放電電流が減少する。この特徴を利用することで、蓄電素子の劣化を判定することもできる。具体的には、鉛バッテリを交換した後の蓄電部320から負荷400へ流れる放電電流の絶対値が、所定の閾値以下であった場合、蓄電部320を構成する蓄電素子が劣化していると判定する。
【0027】
本願発明の劣化判定は、斯かる原理を利用して、電源部300が負荷400へ電力を供給する状態における蓄電部320の放電電流の推移を監視することで、鉛バッテリ310の劣化を判定する構成となっている。また、蓄電部320の放電電流の絶対値に基づいて、蓄電部320の劣化状態を判定する構成となっている。蓄電部320の放電電流は、インピーダンスとは異なり、直接、シャント抵抗720で検出することができるので、上述の劣化判定方法は、電源部300の物理量を測定する計測部の構成を簡略化することができる。
(判定部の構成)
図5は、判定部600の構成を説明するための機能ブロック図である。記憶部260は、設定値や制御パラメータを記憶している。取得部640は、記憶部260に記憶されている制御パラメータを取得する制御パラメータ取得部642と、記憶部260に記憶されている設定値を取得する初期電流値取得部644と、計測部700が測定する測定値を取得する電流取得部646と、を含む。演算部650は、初期電流値取得部644が取得する設定値と、計測部700が測定する測定値とを用いて、放電電流の変化を表す状態値を演算する。比較部620は、制御パラメータ取得部642が取得する制御パラメータと演算部650が演算する状態値を比較する。判定部600は、記憶部260と、取得部640と、演算部650と、比較部620とを備え、比較部620の結果から鉛バッテリの状態を判定する。
【0028】
記憶部260は、設定値として、放電電流の変化を検出するための初期電流値Isiが記憶される。初期値電流値Isiは、鉛バッテリ310及び蓄電部320が劣化していない状態において、電源部300から負荷400へ電力を供給する際に、蓄電部320から負荷400へ流れる電流の値が設定される。また、記憶部260は、制御パラメータとして、鉛バッテリ310の劣化判定を行うための閾値αと、蓄電部320の劣化判定を行うための下限放電電流値Iminと、鉛バッテリ310の交換検出を行うための閾値γが記憶される。
【0029】
演算部650は、電流取得部646が取得する放電電流Isを、初期電流値取得部642が取得する初期電流値Isiで商算して、初期電流値Isiに対する放電電流Isの初期電流比率Riを算出する。また、演算部650は、放電電流の差分電流Id=Is−Isiを算出する。
【0030】
比較部620は、演算部650が演算した初期電流比率Riと、制御パラメータ取得部652が取得する閾値αとを比較し、初期電流比率Riが閾値αより小さい場合に、鉛バッテリ310が劣化していると判定する。
【0031】
なお、本発明の実施形態における劣化判定は、蓄電部320の放電電流の変化量と鉛バッテリ310の劣化度の関係から判断することに特徴があり、必ずしも初期電流値Isiに対する放電電流Isの初期電流比率Riを算出する必要はない。例えば、放電電流Isと初期電流値Isiの差分(Isi−Is)の大きさで劣化を判定することもできる。
【0032】
上記劣化判定において、劣化判定の精度は、電流値を検出する際の条件に依存する。例えば、内部抵抗は温度依存性を持っているため、極端に環境温度が異なる場合には、劣化判定にも影響を及ぼす場合もあり得る。通常の使用条件下であれば、これらの条件の違いが判定結果に影響を与えることは少ないが、精度を向上させるためには、これらの検出時の条件が一定となるように構成することが好ましい。
【0033】
具体的には、車両始動時に取得する測定値を使用することが好ましい。車両始動時において、環境温度、エンジン温度、クランク位置等に代表される各種条件は、ほぼ一定とみ
なせる。そのため、電源部300から負荷400へ電力が供給される際、蓄電部320から供給される電力の電流は、鉛バッテリ310と蓄電部320の劣化状態、すなわち鉛バッテリ310と蓄電部320の内部抵抗の値によって決まる。特に、劣化判定で使用される電流値は、電源部300がスタータ420へ電力を供給する際に検出される電流値を用いることが好ましい。
【0034】
また、スタータ420は、負荷400の中で、比較的大電力を必要とするものであり、電装部品410の作動状態の影響を受けにくい。例えば、電装部品410は、ヘッドライトなどが含まれるが、ヘッドライトの作動状態は、車両の状態によって変化する。具体的には、夜間の走行であれば、ヘッドライトがオン状態に制御されるが、日中の走行であれば、ヘッドライトがオフ状態に制御される。そのため、これらの電装部品410の作動状態に応じて、電源部300から負荷400への放電条件が変化するおそれがある。一方、スタータ420は、電装部品410の作動状態に依存する消費電力に比べて大電流を消費するため、電装部品410の作動状態による影響をほとんど無視できる。つまり、スタータ420へ電力を供給する際の放電電流を検出することで、実質的に同じ条件下における電源部300の放電電流を検出することができるようになる。
【0035】
上述の説明では、主に、測定条件を一定にするという観点で説明したが、測定結果を補正することで、劣化判定の精度を向上させることもできる。例えば、複数の温度条件における放電電流と劣化判定の結果を予め実験等によって見積もり、温度の影響を排除して劣化判定を行うように構成することもできる。補正に関する計算式や具体的なやり方等については、周知の技術であるのでここでは説明を省略する。
【0036】
次に、劣化した鉛バッテリ310の交換を検出する検出処理について説明する。
図3に示されるように、劣化した鉛バッテリ310が交換されると、電源部300が負荷400へ電力を供給する際の蓄電部320から負荷400へ流れる放電電流Isの絶対値は、初期電流値Isiと比較して、明らかに小さな値となる。従って、蓄電部320の放電電流Isが初期電流値Isiより小さくなった場合、鉛バッテリ310が交換されたと判定することができる。鉛バッテリ310の劣化による放電電流Isの変化は、増加方向の変化であるため、鉛バッテリ310の交換に伴う放電電流Isの変化と、鉛バッテリ310の劣化に伴う放電電流Isの変化は、明確に区別できる。具体的には、演算部650は、放電電流の差分電流Id=Is−Isiを算出する。比較部620は、差分電流Idと閾値γを比較し、差分電流Idが閾値γより大きい場合に、鉛バッテリ310が交換されたと判定するように構成される。
【0037】
図3に示すように、劣化した鉛バッテリ310を交換すると、鉛バッテリ310と蓄電部320の内部抵抗比が大きく変化するため、劣化判定に用いられる初期電流値Isiの値を更新する必要がある。具体的には、上述の交換検出処理に基づいて、鉛バッテリ310の交換が検出された後、記憶部260は、鉛バッテリ310交換後の放電電流Isを新しい初期電流値Isiとして、書き換える。従って、初期電流値Isiは、値が随時書き換えられる制御パラメータであるため書き換え可能な不揮発性メモリに記憶されることが好ましい。鉛バッテリが交換された後の劣化判定処理は、更新された初期電流値Isiを使って行われる。
【0038】
図6は、本発明の実施の形態に係る電源部300の判定処理の流れを説明するフローチャートである。本フローチャートにおける判定処理は、例えば蓄電システム100を搭載する車両のエンジンが始動する際に開始される。
図6に示すように、判定処理は、鉛バッテリ劣化判定処理と、蓄電部劣化判定処理と、鉛バッテリ交換検出処理とを含む。
図6のフローチャートでは、鉛バッテリ交換検出処理の次に鉛バッテリ劣化判定処理が行われ、その後、蓄電部劣化判定処理が行われるように構成されている。本発明の実施の形態に係
る電源部300の判定処理は、鉛バッテリ交換検出処理を最初に行う構成とすることが好ましい。鉛バッテリ交換検出処理を行うことで、初期電流値Isiを最新のデータに更新できるので、劣化判定処理の精度を向上させることができる。ただし、必ずしも鉛バッテリ交換検出処理を最初に行う必要があるわけではなく、これらの処理は順不同であり適宜入れ替えることができる。
(鉛バッテリの交換検出)
図7は、
図6のフローチャートのうちの鉛バッテリ交換検出処理のフローチャートである。
図7のフローチャートの処理が終わった後は、
図6のフローチャートに従って鉛バッテリ劣化判定処理(S200)に移行する。
【0039】
電流取得部646は、スタータ420へ電力を供給して車両のエンジンを始動する際に、蓄電部320からスタータ420を含む負荷400へ流れる放電電流Isを取得する(S110)。制御パラメータ取得部642は、記憶部260に記憶されている初期電流値Isiを取得する(S120)。演算部650は、差分電流Id=Is−Isiを算出する(S130)。制御パラメータ取得部642は、記憶部260に記憶されている交換閾値γを取得する(S140)。比較部620は、差分電流Idと閾値γを比較した結果、差分電流Idが閾値γより小さい場合(S150のY)、鉛バッテリ310は交換されてないと判定する(S152)。差分電流Idが閾値γより大きい場合(S150のN)、鉛バッテリ310が交換されたと判定する(S154)。鉛バッテリ310が交換されたと判定された場合に、記憶部260は、鉛バッテリ310交換後の放電電流Isを新しい初期電流値Isiとして、書き換える(S156)。
(鉛バッテリの劣化判定)
図8は、
図6のフローチャートのうちの鉛バッテリ劣化判定処理のフローチャートである。
図8のフローチャートの処理が終わった後は、
図6のフローチャートに従って蓄電部劣化判定処理(S300)に移行する。
【0040】
電流取得部646は、スタータ420へ電力を供給して車両のエンジンを始動する際に、蓄電部320からスタータ420を含む負荷400へ流れる放電電流Isを取得する(S210)。制御パラメータ取得部642は、記憶部260に記憶されている初期電流値Isiを取得する(S220)。演算部650は、電流取得部646が取得した放電電流Isを、制御パラメータ取得部642が取得した初期電流値Isiで商算し、放電電流の初期電流比率Ri=Is/Isiを演算する(S230)。制御パラメータ取得部642は、記憶部260に記憶されている閾値αを取得する(S240)。比較部620は、初期電流比率Riと閾値αを比較した結果、初期電流比率Riが閾値αより大きい場合(S250のY)、鉛バッテリ310は正常であると判定する(S252)。初期電流比率Riが閾値αより小さい場合(S250のN)、鉛バッテリ310は劣化していると判定する(S254)。
(蓄電部の劣化判定)
図9は、
図6のフローチャートのうちの蓄電部劣化判定処理のフローチャートである。
図9のフローチャートの処理が終わった後は、
図6のフローチャートに従って本発明の実施の形態に係る判定処理を終了する。
【0041】
電流取得部646は、スタータ420へ電力を供給して車両のエンジンを始動する際に、蓄電部320からスタータ420を含む負荷400へ流れる放電電流Isを取得する(S310)。制御パラメータ取得部642は、記憶部260に記憶されている下限放電電流値Iminを取得する(S340)。比較部620は、蓄電部320の放電電流Isと下限放電電流値Iminを比較した結果、蓄電部320の放電電流Isが下限放電電流値Iminより大きい場合(S350のY)、蓄電部320は正常であると判定する(S352)。蓄電部320の放電電流Isが下限放電電流値Iminより小さい場合(S350のN)、蓄電部320は劣化していると判定する(S354)。
【0042】
なお、ステップ210やステップ310の処理は、鉛バッテリ交換検出処理の過程で取得した放電電流Isを流用することもできる。具体的には、鉛バッテリ交換検出処理時において、エンジンを始動する際に蓄電部320からスタータを含む負荷400へ流れる放電電流Isを取得した後、取得した測定値を予め記憶部260に記憶し、ステップ210やステップ310の処理において、記憶部260に記憶されたIsを取得するように構成することができる。このような処理を行うことにより、実質的に放電電流Isを取得できる。
(蓄電部の構成)
以上、電源部300の劣化判定について説明した。上述の判定処理は、鉛バッテリ310に比べて、蓄電部320を構成する蓄電素子の劣化耐性が著しく大きい場合において有効となる。蓄電素子の劣化耐性は、蓄電素子の構成によって変化する。そこで、以下蓄電部320がニッケル水素電池である場合の蓄電部320の構成について簡単に説明する。
【0043】
図10は、本発明の実施の形態に係る蓄電部320の内部構成を模式的に示す図であり、より具体的にはニッケル水素電池の内部構成の一例を模式的に示す図である。
【0044】
実施の形態に係る蓄電部320は
図9に示すように外装缶17を備え、外装缶17の内部にアルカリ電解液を充填するアルカリ蓄電池である。外装缶17内部には、水酸化ニッケルを主正極活物質とするニッケル正極11と、水素吸蔵合金を負極活物質とする水素吸蔵合金負極12と、セパレータ13とを備える。
図9は、水素吸蔵合金負極12を網点で塗りつぶした領域で示している。またニッケル正極11は、隣り合うふたつの水素吸蔵合金負極12の間に存在する斜線で示された領域であり、セパレータ13は、隣り合うニッケル正極11と水素吸蔵合金負極12との間の白色で塗りつぶされた領域である。
【0045】
上述した
図6および
図7は、アルカリ電解液に、タングステン化合物、モリブデン化合物、ニオブ化合物から選択されるいずれか1種以上の化合物を添加した場合における、サブ蓄電部320の環境温度と充電効率特性との関係を示す図である。本願の発明者は、アルカリ電解液に上述の化合物を添加することにより、蓄電部320の充放電サイクル試験におるサイクル特性を飛躍的に改善できることを見いだした。
【0046】
このため実施の形態に係る蓄電部320のアルカリ電解液は、タングステン化合物、モリブデン化合物、ニオブ化合物から選択されたいずれか1種以上の化合物が添加されており、前記ニオブ化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択されたいずれか1種以上の化合物の添加量は、前記正極活物質の質量に対し0.5質量%以上で2.0質量%以下であることを特徴とする。これにより、上述した電源部300の充放電制御との相乗効果により、電源部300の高温環境下における充電効率特性の劣化をさらに抑制することができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態に係る蓄電システム100によれば、鉛バッテリ310と蓄電部320とを並列に備える電源部300において、各部の劣化を判定するために測定すべき項目を削減することができる。
【0048】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。