(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び
図2は本発明を用いた一実施例である施肥装置を装着した施肥装置付き乗用型田植機を表している。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0027】
なお、本明細書では苗移植機の前進方向を向いて左右方向をそれぞれ左、右と言い、前進方向を前、後退方向を後と言うことにする。
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0028】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、第一ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構27によって施肥装置5へ伝動される。
【0029】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(
図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0030】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム45の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダを油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0031】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a,…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a,…に供給すると苗送りベルト51b,…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a,…に供給された苗を苗植付具52aで圃場に植付ける苗植付装置52,…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ53,53等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,…により苗が植え付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が上下動検出機構57により検出される。
【0032】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61,…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド63,…まで導き、施肥ガイド63,…の前側に設けた作溝体64,…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。電動モータ66で駆動のブロア67で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ68を経由して施肥ホース62,…に吹き込まれ、施肥ホース62,…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0033】
実施例1の施肥装置付き乗用型田植機(苗移植機)1では、前記連結軸(ローリング軸)44の近傍に、連結軸44の回転量(ローリング角)を検知するローリングセンサ101が設置されている。
【0034】
実施例1のローリングセンサ101は、苗植付部4の苗載台(苗タンク)51の連結軸44を中心とする回転量を検知する。なお、実施例1では、苗載台51が水平方向に平行な状態を基準(回転量がゼロ)とし、苗載台51の右側が左側に対して下方に回転した場合を「+」の回転量とし、左側が右側に対して下方に回転した場合を「−」の回転量として検知する。
【0035】
なお、実施例1の施肥装置5では、各繰出部61,…に対して、個別に、図示しない電動モータが設置されており、繰出部61,…毎に肥料の繰出量を制御可能に構成されている。
【0036】
また、実施例1の施肥装置付き乗用型田植機1では、センターフロート55には、センターフロート55の前部の上下動を検出する上下動検出機構(ピッチングセンサ)57に加えて、圃場の表土の硬さを検出する硬軟センサ102も設置されている。
【0037】
なお、実施例1の上下動検出機構(ピッチングセンサ)57は、センターフロート55の前部が水平の状態を基準(ピッチング量がゼロ)とし、下方に移動した場合を「+」のピッチング量、上方に移動した場合を「−」のピッチング量として検知する。
【0038】
硬軟センサ102は、2つのローラが、アームを介してセンターフロート55に上下動可能に支持され、一方のローラが硬いバネで圃場に押しつけられ、他方のローラが軟らかいバネで圃場表面に押しつけられており、ローラの上下動(や、アームの回転)をセンサで検出するものである。したがって、圃場が硬い場合には両方のローラが上下動し、圃場が軟らかい場合には軟らかいバネのローラのみが回転することで、圃場の硬軟を検出可能である。なお、上下動検出装置(ピッチングセンサ)57については、例えば、特開2012−55287号公報等に記載されており、硬軟センサ102については、例えば、特開2010−193727号公報等に記載されており、従来公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0039】
また、実施例1の施肥装置付き乗用型田植機1では、フロントカバー32に、硬軟センサ102の感度を作業者が手動で設定可能な感度ダイヤル(硬軟設定部材)103が設置されている。したがって、作業者は、圃場の土の硬軟に応じて感度ダイヤル103を調整することで、「硬」と検出される圃場の硬さの程度を調節、設定することが可能である。
【0040】
さらに、実施例1の施肥装置付き乗用型田植機1では、フロントカバー32に、植付深さ設定ボタン106と、施肥量設定ボタン107が設置されている。植付深さ設定ボタン106は、圃場の凹凸等で深い場所における植付深さを、「深植え」または「浅植え」のいずれかに設定可能に構成されている。また、施肥量設定ボタン107は、圃場の凹凸等で深い場所における施肥量を、標準に比べて「増加」または「減少」のいずれかに設定可能に構成されている。したがって、植える苗の種類や、圃場の状況(水の量や水の流れ、土の質等)に等に応じて、作業者が植付深さ設定ボタン106や施肥量設定ボタン107を操作して、植付深さや施肥量を設定可能に構成されている。
【0041】
図3は実施例1の施肥装置付き乗用型田植機1の制御装置が備えている各機能をブロック図(機能ブロック図)で示した図である。
図3において、実施例1の制御装置110は、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェース(I/O)、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM(リードオンリーメモリ)、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU(中央演算処理装置)、ならびに発振器等を有する小型情報処理装置、いわゆる、マイクロコンピュータにより構成されており、前記ROMに記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0042】
制御装置110は、ローリングセンサ101、ピッチングセンサ57、硬軟センサ102、感度ダイヤル103、植付深さ設定ボタン106、施肥量設定ボタン107等からの信号が入力される。
【0043】
また、制御装置110は、昇降油圧シリンダ46や施肥装置5の繰出部61へ制御信号を出力している。
実施例1の制御装置110は、設定判別手段111、ローリング量判別手段112、ピッチング量判別手段113、硬軟判別手段114、硬軟設定判別手段115、植付深さ調整手段116、施肥量調整手段117を有する。
【0044】
設定判別手段111は、植付深さ設定ボタン106や施肥量設定ボタン107の入力に基づいて、植付深さと施肥量の設定を判別する。
ローリング量判別手段112は、ローリングセンサ101の検知結果に基づいて、連結軸44を中心とした苗植付部4の回転量(ローリング量)を判別する。実施例1のローリング量判別手段112は、検知されたローリング量A1の大きさ(|A1|)が、予め設定された所定量α1よりも大きいか否か、すなわち、予め設定された所定の回転量α1よりも大きく回転しているか否かを判別する。
【0045】
ピッチング量判別手段113は、上下動検出機構57の検知結果に基づいて、センターフロート55の上下動の大きさであるピッチング量を判別する。実施例1のピッチング量判別手段113は、検知されたピッチング量A2の値が、表土の量を判別するために予め設定された所定値α2a(<0)以下であるかを判別する。すなわち、ピッチング量A2が、所定値α2aよりも小さい、すなわち、センターフロート55が上方に移動している場合には、ピッチング量判別手段113は、圃場の表土が多いと判別する。また、実施例1のピッチング量判別手段113は、検知されたピッチング量A2の値が、圃場の深さを判別するために予め設定された所定値α2b(>0)以上であるかを判別する。すなわち、ピッチング量A2が、所定値α2bよりも大きい、すなわち、センターフロート55が下方に移動している場合には、ピッチング量判別手段113は、圃場の深さが深いと判別する。なお、実施例1では、所定値α2bは、一例として10°に設定されている。すなわち、実施例1では、5°程度の圃場の小さな凹凸ではなく、10°程度の大きな凹凸による深さの違いを検出している。
【0046】
硬軟判別手段114は、硬軟センサ102の検知結果に基づいて、圃場が「硬い」か「軟らかい」か、を判別する。
硬軟設定判別手段115は、感度ダイヤル103の入力に基づいて、予め設定された標準の硬さの値よりも「硬」に設定されているか、「軟」に設定されているかを判別する。
【0047】
植付深さ調整手段116は、昇降油圧シリンダ46を介して苗植付部4を昇降させて、苗の植え付け深さを調整する。実施例1の植付深さ調整手段116は、植付深さ設定ボタン106の設定や、ローリング量A1、ピッチング量A2、圃場の硬さ、感度ダイヤルの設定、に基づいて、苗の植え付け深さを調整する。
【0048】
具体的には、植付深さ調整手段116は、植付深さ設定ボタン106で「深植え」に設定されている場合には、ローリング量の大きさ|A1|が所定値α1以上の場合や、ピッチング量A2が所定値α2b以上の場合、圃場が「硬い」と判別された場合、感度ダイヤル103が「硬」に設定されている場合に、苗植付部4を標準の位置よりも下降させて深植えを行うように調整する。
【0049】
一方で、植付深さ設定ボタン106で「浅植え」に設定されている場合には、ローリング量の大きさ|A1|が所定値α1よりも大きい場合や、ピッチング量A2が所定値α2bよりも大きい場合、圃場が「硬い」と判別された場合、感度ダイヤル103が「硬」に設定されている場合に、苗植付部4を標準の位置よりも上昇させて浅植えを行うように調整する。
【0050】
施肥量調整手段117は、繰出部61の繰出量を制御して、施肥量を調整する。実施例1の施肥量調整手段117は、施肥量設定ボタン107の設定や、ローリング量A1、ピッチング量A2、圃場の硬さ、感度ダイヤルの設定、に基づいて、施肥量を調整する。
【0051】
具体的には、施肥量調整手段117は、表土が多いと判別された場合(ローリング量の大きさ|A1|が所定値α1以上且つピッチング量A2が所定値α2a以下の場合)、ピッチング量A2が所定値α2bよりも大きい場合には、施肥量設定ボタン107で「増加」に設定されている場合、繰出量を標準の量よりも多くして施肥量を増加させ、施肥量設定ボタン107で「減少」に設定されている場合、全体の繰出量を標準の量よりも少なくして施肥量を減少させる。
【0052】
また、実施例1の施肥量調整手段117は、施肥量設定ボタン107で「増加」に設定され、且つ、表土が少ないと判別された場合(ローリング量の大きさ|A1|が所定値α1以上且つピッチング量A2が所定値α2aより大きい場合)には、ローリング量A1が正であれば右側の施肥量を増加させ且つ左側の施肥量を減少させると共に、ローリング量A1が負であれば左側の施肥量を増加させ且つ右側の施肥量を減少させる。すなわち、右側が深い場合には、右側の肥料を増加させ、左側が深い場合には、左側の肥料を増加させる。
【0053】
さらに、実施例1の施肥量調整手段117は、施肥量設定ボタン107で「減少」に設定され、且つ、表土が少ないと判別された場合(ローリング量の大きさ|A1|が所定値α1以上且つピッチング量A2が所定値α2aより大きい場合)には、ローリング量A1が正であれば左側の施肥量を増加させ且つ右側の施肥量を減少させると共に、ローリング量A1が負であれば右側の施肥量を増加させ且つ左側の施肥量を減少させる。すなわち、右側が深い場合には、右側の肥料を減少させ、左側が深い場合には、左側の肥料を減少させる。
【0054】
また、実施例1の施肥量調整手段117は、施肥量設定ボタン107の設定に関わらず、圃場が「硬い」と判別された場合、感度ダイヤル103が「硬」に設定されている場合には、全体の繰出量を標準の量よりも多くして施肥量を増加させる。
【0055】
図4は実施例1の施肥装置付き乗用型田植機1の植付深さ調整および施肥量調整処理のフローチャートである。
次に、実施例1の制御装置110の処理の流れをフローチャートを使用して説明する。
図4のフローチャートの各ST(ステップ)の処理は、制御装置110に記憶されたプログラムに従って行われる。また、この処理は乗用型田植機1の他の各種処理と並行して実行される。
【0056】
図4に示すフローチャートは、乗用型田植機1が起動した場合に開始される。
図4のST1において、作業者の操作に伴って、苗の植え付け作業が開始されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST2に進み、ノー(N)の場合はST1を繰り返す。
【0057】
ST2において、植付深さ設定ボタン106での植付深さの設定が「深植え」であるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST3に進み、ノー(N)の場合はST6に進む。
【0058】
ST3において、施肥量設定ボタン107での施肥量の設定が「増加」であるか否かを判別する、イエス(Y)の場合はST4に進み、ノー(N)の場合はST5に進む。
ST4において、深植え増加設定時の植付施肥処理(後述する
図5のフローチャート参照)を実行して、ST1に戻る。
【0059】
ST5において、深植え減少設定時の植付施肥処理(後述する
図6のフローチャート参照)を実行して、ST1に戻る。
ST6において、施肥量設定ボタン107での施肥量の設定が「増加」であるか否かを判別する、イエス(Y)の場合はST7に進み、ノー(N)の場合はST8に進む。
【0060】
ST7において、浅植え増加設定時の植付施肥処理(後述する
図7のフローチャート参照)を実行して、ST1に戻る。
ST8において、浅植え減少設定時の植付施肥処理(後述する
図8のフローチャート参照)を実行して、ST1に戻る。
【0061】
図5は実施例1の深植え増加設定時の植付施肥処理のフローチャートである。
図5のST11において、ローリング量の大きさ|A1|が所定値α1以上であるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST12に進み、ノー(N)の場合はST17に進む。
【0062】
ST12において、ピッチング量A2が所定値α2a以下であるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST13に進み、ノー(N)の場合はST14に進む。
ST13において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を下降させて深植えの位置に移動させる。
(2)施肥装置5の全体の施肥量を増加させる。
【0063】
ST14において、ローリング量A1が0以上、すなわち、ローリング量A1が正の値であるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST15に進み、ノー(N)の場合はST16に進む。
【0064】
ST15において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を下降させて深植えの位置に移動させる。
(2)右側の施肥量を増加させ、且つ、左側の施肥量を減少させる。
【0065】
ST16において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を下降させて深植えの位置に移動させる。
(2)左側の施肥量を増加させ、且つ、右側の施肥量を減少させる。
【0066】
ST17において、ピッチング量A2が所定値α2b以上であるか否かを判別する。ノー(N)の場合はST18に進み、イエス(Y)の場合はST20に進む。
ST18において、硬軟センサ102の検知結果が「硬」であるか否かを判別する。ノー(N)の場合はST19に進み、イエス(Y)の場合はST20に進む。
【0067】
ST19において、感度ダイヤル103の設定が「硬」であるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST20に進み、ノー(N)の場合はST21に進む。
ST20において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を下降させて深植えの位置に移動させる。
(2)施肥装置5の全体の施肥量を増加させる。
【0068】
ST21において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を標準の植付深さの位置に移動させる。
(2)施肥装置5の施肥量を標準の施肥量に設定する。
【0069】
ST22において、植付作業が終了したか否かを判別する。ノー(N)の場合はST11に戻り、イエス(Y)の場合は
図5の植付施肥処理を終了して、
図4の処理に戻る。
図6は実施例1の深植え減少設定時の植付施肥処理のフローチャートである。
【0070】
図6において、実施例1の深植え減少設定時の植付施肥処理は、
図5で前述した深植え増加設定時の植付施肥処理のST13、ST15、ST16が、ST31、ST32、ST33となる点が異なる。そして、ST18、ST19でイエス(Y)の場合にST20に進む点は、
図5の処理と共通であるが、ST17でイエス(Y)の場合にはST34に進む点が異なる。その他の処理は、
図5と共通であるため、ST31〜ST34のみ説明して、その他のSTの処理の説明は省略する。
【0071】
ST31において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を下降させて深植えの位置に移動させる。
(2)施肥装置5の全体の施肥量を減少させる。
【0072】
ST32において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を下降させて深植えの位置に移動させる。
(2)左側の施肥量を増加させ、且つ、右側の施肥量を減少させる。
【0073】
ST33において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を下降させて深植えの位置に移動させる。
(2)右側の施肥量を増加させ、且つ、左側の施肥量を減少させる。
【0074】
ST34において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を下降させて深植えの位置に移動させる。
(2)施肥装置5の全体の施肥量を減少させる。
【0075】
図7は実施例1の浅植え増加設定時の植付施肥処理のフローチャートである。
図7において、実施例1の浅植え増加設定時の植付施肥処理は、
図5で前述した深植え増加設定時の植付施肥処理のST13、ST15、ST16、ST20が、ST41、ST42、ST43、ST44となるだけで、その他の処理は共通であるため、ST41、ST42、ST43、ST44のみ説明して、その他のSTの処理の説明は省略する。
【0076】
図7のST41において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を上昇させて浅植えの位置に移動させる。
(2)施肥装置5の全体の施肥量を増加させる。
【0077】
ST42において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を上昇させて浅植えの位置に移動させる。
(2)右側の施肥量を増加させ、且つ、左側の施肥量を減少させる。
【0078】
ST43において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を上昇させて浅植えの位置に移動させる。
(2)左側の施肥量を増加させ、且つ、右側の施肥量を減少させる。
【0079】
ST44において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を上昇させて浅植えの位置に移動させる。
(2)施肥装置5の全体の施肥量を増加させる。
【0080】
図8は実施例1の浅植え減少設定時の植付施肥処理のフローチャートである。
図8において、実施例1の浅植え減少設定時の植付施肥処理は、
図6で前述した深植え減少設定時の植付施肥処理のST31、ST32、ST33、ST34、ST20に替えて、ST51、ST52、ST53、ST54、ST44(
図7参照)となる点が異なる。その他の処理は、
図6と共通であるため、ST51〜ST54のみ説明して、その他のSTの処理の説明は省略する。
【0081】
図8のST51において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を上昇させて浅植えの位置に移動させる。
(2)施肥装置5の全体の施肥量を減少させる。
【0082】
ST52において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を上昇させて浅植えの位置に移動させる。
(2)左側の施肥量を増加させ、且つ、右側の施肥量を減少させる。
【0083】
ST53において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を上昇させて浅植えの位置に移動させる。
(2)右側の施肥量を増加させ、且つ、左側の施肥量を減少させる。
【0084】
ST54において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST22に進む。
(1)苗植付部4を上昇させて浅植えの位置に移動させる。
(2)施肥装置5の全体の施肥量を減少させる。
【0085】
以上により、この乗用型の田植機1では、植え付けられる苗の種類や圃場の状況に応じて、感度ダイヤル103や植付深さ設定ボタン106、施肥量設定ボタン107が作業者により操作されて、設定が行われると、設定に応じた処理(
図5〜
図8)が実行される。
【0086】
植付深さ設定ボタン106で「深植え」が設定され、施肥量設定ボタン107で「増加」が設定された場合、
図5に示す処理が実行される。
図5において、ローリング量の大きさ|A1|が所定値α1以上で、ローリング量A1が正(0以上)の場合には、苗植付部4が連結軸44を中心として、右側が下方に大きく回転している。すなわち、田植機1の進行方向に対して、田植機1の右側が左側よりも深くなっている。この場合、ST15の処理で、深植えされると共に、深い右側に多くの肥料が供給される。一方、ローリング量A1が負(0未満)の場合には、田植機1の左側が深くなっているため、ST16の処理で、深植えされると共に、左側に多くの肥料が供給される。したがって、圃場の深い場所で深植えしない場合、苗の植え付け深さが浅くなって、苗の倒伏や苗が風や水流に流される恐れがあるが、実施例1では、深植えされるので、苗の倒伏等が低減される。また、深い側への施肥量が多くない場合、肥料が表土まで届かず、肥料不足に伴う生育不良になる恐れがある。すなわち、圃場全体における肥料の濃度にムラが発生し、生育にムラが発生する場合がある。これに対して、実施例1では、ST15,ST16の処理により、肥料不足、生育不良が低減され、収穫物の品質が向上する。
【0087】
また、
図5において、ピッチング量A2が、所定値α2b以上の場合には、センターフロート55が下方に移動しているため、圃場の深さが深い。したがって、ST20の処理で、深植えされると共に、施肥量が増加される。よって、苗の倒伏等が低減されると共に、肥料不足に伴う生育不良が低減される。
【0088】
さらに、
図5において、硬軟センサ102の検出により、表土が硬い場合には、ST20の処理で、深植えされると共に、施肥量が増加される。仮に、表土が硬い場合に、標準の植付深さに設定すると、苗が深くまで植え付けられず、植付姿勢が乱れて倒伏する恐れがある。また、表土が硬い場合に、標準の施肥量に設定すると、表土に肥料が浸透しにくく、表土が水流や風で流されて、肥料不足になる恐れがある。これに対して、実施例1では、深植えすると共に、施肥量を増加しており、苗の倒伏が低減されると共に、肥料不足に伴う生育不良が低減される。
【0089】
また、
図5において、感度ダイヤル103の設定が「硬」の場合には、ST20の処理で、深植えされると共に、施肥量が増加される。すなわち、作業者が、圃場の表土が硬いことに対応する設定をしている場合には、深植えすると共に、施肥量を増加させて、苗の倒伏を低減すると共に、肥料不足に伴う生育不良を低減する。
【0090】
さらに、
図5において、表土が多い場合(深さが浅い場合)には、ST13の処理で、深植えされると共に、施肥量が多くなる。よって、表土が多い場所では、土中に空隙が多くて凹凸が生じやすい傾向があり、このような場所に苗を標準の植付深さで植え付けると、苗の植付姿勢が乱れて倒伏する恐れがある。また、圃場の状況によっては、施肥量が標準や少ない場合、水の対流などで肥料が流されやすく、肥料不足になる恐れがある。これに対して、実施例1では、深植えされると共に、施肥量が多くなっており、苗の倒伏や肥料不足が低減されている。
【0091】
また、植付深さ設定ボタン106で「深植え」が設定され、施肥量設定ボタン107で「減少」が設定された場合、
図6に示す処理が実行される。
図6では、田植機1の右側が深くなっている場合には、ST32の処理で、深植えされると共に、深い右側の肥料が少なく設定される。また、田植機1の左側が深くなっている場合には、ST33の処理で、深植えされると共に、左側に少ない肥料が供給される。圃場の状況によって、水量が十分で対流が発生しやすかったり、水の流れがある場合には、深い場所に周辺から水と共に肥料が流入して滞留する場合がある。したがって、標準の施肥量の場合には、深い場所の肥料が過多になってしまう場合がある。肥料が過多になると、苗が生育不良になり、収穫物の品質に悪影響を及ぼす場合もある。これに対して、実施例1では、深い側の施肥量が減少するため、肥料過多が抑制され、収穫物の品質を向上できる。また、深植えにより苗の倒伏等が抑制される。
【0092】
また、
図6において、ピッチング量A2に基づいて、圃場の深さが深いことが検知された場合、ST34の処理で、深植えされると共に、施肥量が減少される。よって、苗の倒伏等が低減されると共に、肥料過多に伴う生育不良が低減される。
【0093】
さらに、
図6において、硬軟センサ102の検出により、表土が硬い場合には、ST20の処理で、深植えされると共に、施肥量が増加される。よって、苗の倒伏が低減されると共に、肥料不足に伴う生育不良が低減される。
【0094】
また、
図6において、感度ダイヤル103の設定が「硬」の場合には、ST20の処理で、深植えされると共に、施肥量が増加される。よって、苗の倒伏が低減されると共に、肥料不足に伴う生育不良がされる。
【0095】
さらに、
図6において、表土が多い場合(深さが浅い場合)には、ST31の処理で、深植えされると共に、施肥量が少なくなる。圃場の状況によっては、深さが浅い場所は、田植え前に耕した際に稲わらや稲株が土中に埋まっている場所であることもあり、稲わら等は土中の養分となる。このような場所に、他の場所と同量の肥料を供給すると肥料過多となり、生育不良を引き起こす場合がある。これに対して、実施例1では、表土が多い場所では、ST31により、施肥量が少なくなっており、肥料過多に伴う生育不良が低減されると共に、苗の倒伏が低減されている。
【0096】
また、植付深さ設定ボタン106で「浅植え」が設定され、施肥量設定ボタン107で「増加」が設定された場合、
図7に示す処理が実行される。
図7では、田植機1の右側が深くなっている場合には、ST42の処理で、浅植えされると共に、深い右側の肥料が多く設定される。また、田植機1の左側が深くなっている場合には、ST43の処理で、浅植えされると共に、左側に多くの肥料が供給される。苗の種類や圃場の状況(土質等)によっては、深い場所に対して深植えすると、苗が埋まりすぎて、生育不良になる場合がある。これに対して、実施例1では、浅植えすることで、苗が埋まりすぎることを低減でき、苗の生育不良を低減できる。また、深い側の施肥量が減少するため、肥料過多が抑制され、収穫物の品質を向上させることができる。
【0097】
また、
図7において、ピッチング量A2に基づいて、圃場の深さが深いことが検知された場合、ST44の処理で、浅植えされると共に、施肥量が増加される。よって、苗の生育不良が低減されると共に、肥料不足に伴う生育不良が低減される。
【0098】
さらに、
図7において、硬軟センサ102の検出により、表土が硬い場合には、ST44の処理で、浅植えされると共に、施肥量が増加される。表土が硬い場合に標準または深植えを行うと、苗が圃場の硬さの影響を受けて、根が張りにくかったり、分けつしにくかったり、葉部の下部が土中に埋まって日光に当たる面積が減少したりして、生育不良が発生する場合がある。また、表土が硬い場合に標準または深植えすると、苗植付装置52に負荷がかかり、故障の原因となる。これに対して、実施例1では、表土が硬い場合には、浅植えが行われるため、苗の生育が安定しやすく、苗植付装置52の故障も低減できる。また、施肥量が増加しており、肥料不足に伴う生育不良も低減される。
【0099】
また、
図7において、感度ダイヤル103の設定が「硬」の場合には、ST44の処理で、浅植えされると共に、施肥量が増加される。よって、苗の生育が安定しやすいと共に、肥料不足に伴う生育不良がされる。
【0100】
さらに、
図7において、表土が多い場合(深さが浅い場合)には、ST41の処理で、浅植えされると共に、施肥量が多くなる。苗の種類や圃場の状況によっては、浅い場所に深植えすると、苗が埋まりすぎて生育不良となる恐れがある。これに対して、実施例1では、浅植えが行われており、苗の生育不良が低減される。また、肥料不足に伴う生育不良も低減される。
【0101】
また、植付深さ設定ボタン106で「浅植え」が設定され、施肥量設定ボタン107で「減少」が設定された場合、
図8に示す処理が実行される。
図8では、田植機1の右側が深くなっている場合には、ST52の処理で、浅植えされると共に、深い右側の肥料が少なく設定される。また、田植機1の左側が深くなっている場合には、ST53の処理で、浅植えされると共に、左側に少ない肥料が供給される。よって、苗の埋まりすぎによる生育不良を低減できると共に、肥料の流入等による肥料過多が抑制され、収穫物の品質を向上させることができる。
【0102】
また、
図8において、ピッチング量A2に基づいて、圃場の深さが深いことが検知された場合、ST54の処理で、浅植えされると共に、施肥量が減少される。よって、苗の埋まりすぎによる生育不良が低減されると共に、肥料の流入等による肥料過多が抑制され、肥料過多による生育不良が低減される。
【0103】
さらに、
図8において、硬軟センサ102の検出により、表土が硬い場合には、ST44の処理で、浅植えされると共に、施肥量が増加される。よって、苗の生育が安定しやすく、苗植付装置52の故障も低減できると共に、肥料不足に伴う生育不良も低減される。
【0104】
また、
図8において、感度ダイヤル103の設定が「硬」の場合には、ST44の処理で、浅植えされると共に、施肥量が増加される。よって、苗の生育が安定しやすいと共に、肥料不足に伴う生育不良がされる。
【0105】
さらに、
図8において、表土が多い場合(深さが浅い場合)には、ST51の処理で、浅植えされると共に、施肥量が少なくなる。よって、苗が埋まりすぎによる生育不良が低減されると共に、稲わら等の養分による肥料過多が抑制され、肥料過多に伴う生育不良も低減される。
【0106】
図9は実施例1の昇降制御バルブの油圧回路の説明図である。
図9において、実施例1の昇降制御バルブ200では、油圧ポンプに接続されるPポート201は、上昇側流量制御弁202の入力側に接続されている。Pポート201と、HST23に接続されるNポート203との間には、圧力補償弁204が配置されている。上昇側流量制御弁202の出力側と、昇降油圧シリンダ46に接続されるCポート206との間には、パイロットチェック弁207が配置されている。上昇側流量制御弁202の出力側と、オイルタンクに還流するタンクポートT1との間には、減圧弁208および下降側流量制御弁209とが配置されている。上流側流量制御弁202のパイロットポート202aと、Pポート201との間には、比例減圧弁211が配置されている。さらに、パイロットチェック弁207のパイロットポート207aと、Pポート201との間には、三方弁212が配置されている。三方弁212の出力は、オイルタンクに還流するタンクポートT2に接続されている。上流側流量制御弁202の出力側と、圧力補償弁204のパイロットポート204aとの間は、微小流量のパイロットライン213で接続されている。パイロットライン213とNポート203との間には、リリーフ弁214が配置されている。
【0107】
したがって、実施例の昇降制御バルブ200では、苗植付部4を上昇させる場合には、上昇量に応じて比例減圧弁211の比例ソレノイド211aが作動して、上昇側流量制御弁202のパイロットポート202aのパイロット圧が変化する。よって、上昇側流量制御弁202が作動(
図9の状態から左方に移動)して、Pポート201からの圧油がパイロットチェック弁207に向けて供給される。パイロットチェック弁207では、圧油の圧力がクラッキング圧力に達すると、チェック弁(一方向性弁、逆止弁)207bが押し開かれ、Cポート206に圧油が供給されて、苗植付部4が上昇する。
【0108】
なお、HST23に対しては、圧力補償弁204で、所定の圧力以上の圧油がPポート201から供給される。また、圧油の圧力がリリーフ圧力になると、圧力補償弁204が開いて圧油が逃がされる。
【0109】
苗植付部4を下降させる場合には、下降量に応じて、比例減圧弁211がオフになり、上昇側流量制御弁202がバネ202bで初期状態に戻る。そして、三方弁212が作動(
図9の状態から左方に移動)して、パイロットチェック弁207のパイロットポート207aにパイロット圧が作用する。よって、Cポート206側から圧油が流れることが可能な状態となる。そして、下降側流量制御弁209の比例ソレノイド209aが作動(
図9の状態から右方に移動)して、Cポート206側の圧油が、減圧弁208で減圧され、下降側流量制御弁209を通じて、タンクポートT1に還流する。よって、苗植付部4が下降する。
【0110】
図10は従来の昇降制御バルブの油圧回路の説明図である。
図10において、従来の昇降制御バルブ01では、Pポート02は、上昇側直動型比例流量制御弁03の入力側に接続されている。上昇側直動型比例流量制御弁03とCポート04との間には、チェック弁(逆止弁)06が配置されている。また、Pポート02とNポート07との間には、リリーフ弁08と圧力補償弁09とが並列に接続されている。Cポート04とTポート011との間には、減圧弁012と下降側直動型比例流量制御弁013が直列に接続されている。
【0111】
従来の昇降制御バルブ01では、苗植付部4を上昇させる場合には、上昇側直同型比例流量制御弁03の比例ソレノイド03aが作動し、可変絞り03bが接続され、Pポート02からの圧油がチェック弁06を通じてCポート04に供給される。
【0112】
苗植付部4を下降させる場合には、下降側直動型比例流量制御弁013の比例ソレノイド013aが作動して、Cポート04の圧油が、減圧弁012で減圧された後、下降側直同型比例流量制御弁013を通じてTポート011に還流する。
【0113】
図10に示す従来の昇降制御バルブ01では、上昇側直動型比例流量制御弁03を作動させる際に、比例ソレノイド03aが直接、比例流量制御弁03作動させている。したがって、比例ソレノイド03aとして、力の強いソレノイドを使用する必要があった。よって、製造コストが高くなる問題があった。これに対して、
図9に示す実施例の昇降制御バルブ200では、比例ソレノイド211aは、上流側流量制御弁202を直接作動出せておらず、微小流量のパイロットライン211bにおいてパイロット圧を変化させているだけである。よって、力の弱いソレノイドを使用することが可能である。また、下降側流量制御弁209の比例ソレノイド209aは、減圧弁208で減圧されているため、力の弱いソレノイドを使用することも可能である。よって、実施例では、従来の構成に比べて、使用可能なソレノイドの選択肢を増やすことができ、設計の自由度が上がると共に、製造コストを抑制することもできる。
【0114】
図10に示す従来の昇降制御バルブ01では、上昇側にチェック弁06が配置されていると共に、下降側にも下降側直動型比例流量制御弁013内にもチェック弁013bが配置されている。よって、2つのチェック弁06,013bが設けられている。これらに対して、実施例では、パイロットチェック弁207内にチェック弁207bが設けられているだけである。よって、実施例の構成では、従来の構成に比べて、リーク量を減らすことができる。
【0115】
また、従来の昇降制御バルブ01では、下流側直動型比例流量制御弁013の内部にチェック弁013bが設けられており、上昇側直動型比例流量制御弁03と下降側直動型比例流量制御弁013との構成が異なるため、部品の共通化が困難であり、部品点数が増加する問題があった。これに対して、実施例1では、流量制御弁202,209は構成を共通化することができ、部品点数を削減し、コストを削減することができる。
【0116】
また、実施例のパイロットチェック弁207の切り替えは、三方弁212により行われている。従来の昇降制御バルブ01では、上昇側のチェック弁06と下流側のチェック弁013が設けられており、作動油がこれらのチェック弁06,013からリークすると、昇降シリンダの伸縮時に僅かながら油量が不足することがある。油量が不足すると、伸縮に時間がかかったり、伸縮が開始されるタイミングが遅れたりする問題がある。
【0117】
上昇が遅れると、旋回開始時に苗の植え付けが終わるタイミングが遅れ、空中で苗が掻き取られてしまい、無駄に消費される苗が発生する。また、後進時の場合は、後進開始時に苗植付部4の下部側が圃場面と接触し、施肥ガイド63や作溝体64に泥土が付着して、圃場面に肥料が供給できなくなる問題もある。
【0118】
一方、下降が遅れると旋回時の植付開始位置を旋回前の植付終了位置に合わせにくくなる。タイミングの遅れ方次第では、1株程度の空きスペースができてしまい、そこに手作業で苗を植え付ける必要が生じる。
【0119】
これに対して、実施例の昇降制御バルブ200では、三方弁212でパイロットチェック弁207を切り替えており、パイロットチェック弁207を上昇、下降の両方で用いることができる。よって、チェック弁207bが1カ所になり、オイルリークによる瞬間的な油量不足の発生が防止され、苗植付部4の昇降速度や作動タイミングが安定し、苗の植え付け精度が向上する。
【0120】
また、実施例では、圧力補償弁204のパイロットライン213にリリーフ弁214が接続されている。従来の構成では、リリーフ圧力以上になると、リリーフ弁08から全流量を逃がすことになるため、部品のサイズが大きく、構成が複雑になる問題がある。これに対して、実施例1では、リリーフ弁214は、微小流量のパイロットライン213にも受けられており、従来の構成に比べて、サイズを小型化でき、低コストで構成することができる。
【0121】
図11は実施例および従来の昇降制御バルブにおける圧力流量特性線図であり、横軸に圧力を取り縦軸に流量を取ったグラフである。
さらに、従来の昇降制御バルブ01では、所定の圧力がかかると、リリーフ弁08の開放のみで作動油を逃がしていた。このリリーフ弁08は、大型化することで速やかに圧力を所定値未満に下げる構成となっているが、その分構成が複雑になり、配置スペースも限られる問題があった。
【0122】
また、
図11の破線で示すように、従来のリリーフ弁08は、開放後、すなわち、クラッキング圧がかかって油量が上昇し始めると、リリーフ圧力に到達する前は、ほぼ比例的に圧力が増大する。
【0123】
一方、実施例のリリーフ弁214は、圧力補償弁204のパイロットライン213に接続されているので、小型の物を用いても、従来と同等、あるいはそれ以上の速度で圧力を下げることができるようになる。また、クラッキング圧がかかってからしばらくの間は圧力の変化が小さく、最後に一気に上昇する構成となるので、オーバーライド特性が高く(クラッキング圧力とリリーフ圧力との差が小さく)なり、チャタリング(微振動)が生じにくく、油圧回路内の圧力が安定し、昇降シリンダの伸縮が安定する。