特許第6244987号(P6244987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244987
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/033 20060101AFI20171204BHJP
   H02J 7/14 20060101ALI20171204BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B60R16/033 B
   H02J7/14 H
   H02J7/34 B
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-42880(P2014-42880)
(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公開番号】特開2015-168292(P2015-168292A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】丹度 久志
(72)【発明者】
【氏名】今井 敦志
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0012424(US,A1)
【文献】 特開2013−201891(JP,A)
【文献】 特開昭51−041944(JP,A)
【文献】 特開2012−080706(JP,A)
【文献】 特開2013−141907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/033
H02J 7/14
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池よりなる第1蓄電池(20)及び第2蓄電池(30)から電気負荷(43)に対する電力の供給を可能とする電源システムであって、
前記第1蓄電池と前記電気負荷とを電気的に接続する第1経路(L3)に設けられる第1スイッチ(53)と、
前記第2蓄電池と前記電気負荷とを電気的に接続する第2経路(L4)に設けられる第2スイッチ(54)と、
各々の前記スイッチの開閉状態を入れ替える場合、各々の前記スイッチのうち一方のスイッチへの指令信号を開放信号から閉鎖信号に切り替えるとともに他方のスイッチへの指令信号を閉鎖信号から開放信号に切り替える切替制御を行うスイッチ制御部(60)と、
前記スイッチ制御部により前記切替制御が行われた場合、前記一方のスイッチへの前記指令信号が開放信号から閉鎖信号に切り替えられるタイミングと比較して、前記他方のスイッチへの前記指令信号が閉鎖信号から開放信号に切り替えられるタイミングを遅らせる信号処理回路部(70)と、を備えたことを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記第1スイッチ又は前記第2スイッチを迂回するように前記第1経路又は前記第2経路と並列に設けられ、前記第1蓄電池又は前記第2蓄電池から前記電気負荷に対する電力供給を可能とするバイパス経路(B2)と、
前記バイパス経路上に設けられるバイパススイッチ(56)と、
を備え、
前記スイッチ制御部は、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチが共に開放状態となる場合に前記バイパススイッチを閉鎖状態にするよう指令信号を出力するものであり、
前記信号処理回路部は、前記バイパススイッチが閉鎖状態となる状況下で前記第1スイッチ及び前記第2スイッチのいずれかを開放状態から閉鎖状態に切り替える場合に、前記バイパススイッチの指令信号について閉鎖信号から開放信号への切り替えを一時的に遅らせるものである請求項に記載の電源システム。
【請求項3】
二次電池よりなる第1蓄電池(20)及び第2蓄電池(30)から電気負荷(43)に対する電力の供給を可能とする電源システムであって、
前記第1蓄電池と前記電気負荷とを電気的に接続する第1経路(L3)に設けられる第1スイッチ(53)と、
前記第2蓄電池と前記電気負荷とを電気的に接続する第2経路(L4)に設けられる第2スイッチ(54)と、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチのうち一方の指令信号を開放信号から閉鎖信号に切り替える場合に他方の指令信号を閉鎖信号から開放信号に切り替えるようにして前記各スイッチの指令信号を出力するスイッチ制御部(60)と、
前記スイッチ制御部から出力される前記指令信号が入力され、前記指令信号が閉鎖信号から開放信号に切り替えられる際にその指令信号の切り替えを一時的に遅らせて前記各スイッチの開閉を切り替える信号処理回路部(70)と、
前記第1スイッチ又は前記第2スイッチを迂回するように前記第1経路又は前記第2経路と並列に設けられ、前記第1蓄電池又は前記第2蓄電池から前記電気負荷に対する電力供給を可能とするバイパス経路(B2)と、
前記バイパス経路上に設けられるバイパススイッチ(56)と、
を備え、
前記スイッチ制御部は、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチが共に開放状態となる場合に前記バイパススイッチを閉鎖状態にするよう指令信号を出力するものであり、
前記信号処理回路部は、前記バイパススイッチが閉鎖状態となる状況下で前記第1スイッチ及び前記第2スイッチのいずれかを開放状態から閉鎖状態に切り替える場合に、前記バイパススイッチの指令信号について閉鎖信号から開放信号への切り替えを一時的に遅らせるものである電源システム。
【請求項4】
前記信号処理回路部は、第1スイッチ及び前記第2スイッチのうち一方の指令信号が閉鎖信号であることを条件として、前記バイパススイッチを開放状態にすることを許可する許可手段(74)を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の電源システム。
【請求項5】
発電機能を有し、前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池を充電する回転機(10)と、
前記第1蓄電池と前記回転機とを接続するとともに、その間の電池接続点(N1)に前記第2蓄電池を接続する主接続経路(L1,L2)と、
前記主接続経路において前記第1蓄電池及び前記電池接続点の間に設けられる第3スイッチ(51)と、前記電池接続点及び前記第2蓄電池の間に設けられる第4スイッチ(52)とを有してなる主接続経路開閉手段と、を備え、
前記第1経路及び前記第2経路は、前記主接続経路と並列に前記第1蓄電池と前記第2蓄電池とを接続するとともに、前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池の間の負荷接続点(N4)に前記電気負荷を接続する副接続経路であって、
前記バイパス経路は、前記電池接続点と前記負荷接続点とを接続することで、前記第1蓄電池又は前記第2蓄電池から前記電気負荷に対する電力供給を可能とすることを特徴とする請求項2乃至4のうちいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項6】
前記信号処理回路部は、
前記第1スイッチの指令信号について当該指令信号が閉鎖信号から開放信号に切り替えられる際の遅延を生じさせる第1ディレイ回路(71)と、
前記第2スイッチの指令信号について当該指令信号が閉鎖信号から開放信号に切り替えられる際の遅延を生じさせる第2ディレイ回路(72)と、
を有することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項7】
前記スイッチ制御部は、各々の前記スイッチのうち一方のスイッチへの指令信号を開放信号から閉鎖信号に切り替えるのと同時に、他方のスイッチへの指令信号を閉鎖信号から開放信号に切り替えるものであり、
前記第1ディレイ回路は、前記第1スイッチの指令信号が閉鎖信号から開放信号に切り替えられる際に第1オフディレイ時間の遅延を生じさせるとともに、当該指令信号が開放信号から閉鎖信号に切り替えられる際に第1オンディレイ時間の遅延を生じさせ、
前記第2ディレイ回路は、前記第2スイッチの指令信号が閉鎖信号から開放信号に切り替えられる際に第2オフディレイ時間の遅延を生じさせるとともに、当該指令信号が開放信号から閉鎖信号に切り替えられる際に第2オンディレイ時間の遅延を生じさせ、
前記第1オフディレイ時間は前記第2オンディレイ時間よりも長く、かつ前記第2オフディレイ時間は前記第1オンディレイ時間よりも長いものであることを特徴とする請求項に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池から電気負荷への電力供給を可能にする電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載される車載電源システムとして、複数の蓄電池(例えば鉛蓄電池、リチウムイオン蓄電池)を用い、これら各蓄電池を使い分けながら車載の各種電気負荷に対して電力を供給する構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−80706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように2つの蓄電池を用いる電源システムにおいて、2つの蓄電池の一方から電気負荷に対して電力供給を行い、状況に応じて電力供給元の蓄電池を切り替える構成が考えられる。具体的には、各蓄電池と電気負荷とをそれぞれ接続するとともに、その接続経路上にそれぞれスイッチを設け、そのスイッチを状況に応じて適宜オンオフする構成にする。このような構成にすることで、電気負荷に対して安定して電力を供給することが可能になる。また、両スイッチの一方がオン状態とされる場合に他方をオフ状態にする制御を行うことで、2つの蓄電池間が導通状態とされることによる不都合(例えば、電池間充電が生じ電力損失が発生すること)を抑制することが可能になる。
【0005】
ここで、電力供給元の蓄電池を切り替える際、2つの蓄電池と電気負荷との間に設けられた2つのスイッチにおいて、一方をオン状態からオフ状態へ、他方をオフ状態からオン状態へと制御することになる。このスイッチの切り替え制御に伴い、両スイッチが一時的に共にオフ状態になることが懸念される。両スイッチが共にオフ状態とされることで、電気負荷において瞬間的な電源失陥が生じることが懸念される。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電気負荷への電力供給元の蓄電池を切り替える際における電源失陥を抑制することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、二次電池よりなる第1蓄電池(20)及び第2蓄電池(30)から電気負荷(43)に対する電力の供給を可能とする電源システムであって、前記第1蓄電池と前記電気負荷とを電気的に接続する第1経路(L3)に設けられる第1スイッチ(53)と、前記第2蓄電池と前記電気負荷とを電気的に接続する第2経路(L4)に設けられる第2スイッチ(54)と、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチのうち一方の指令信号を開放信号から閉鎖信号に切り替える場合に他方の指令信号を閉鎖信号から開放信号に切り替えるようにして前記各スイッチの指令信号を出力するスイッチ制御部(60)と、前記スイッチ制御部から出力される前記指令信号が入力され、前記指令信号が閉鎖状態から開放状態に切り替えられる際にその信号の切り替えを一時的に遅らせて前記各スイッチの開閉を切り替える信号処理回路部(70)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、スイッチ制御部によって、原則的に第1スイッチと第2スイッチとが共に閉鎖状態にされないように制御を行う。このような制御を行うことで、両スイッチが共に閉鎖状態にされることに伴う不都合、例えば、第1蓄電池及び第2蓄電池が導通状態とされることで電力損失が生じるといった不都合を抑制している。
【0009】
また、両スイッチが共に閉鎖状態になると各蓄電池における電力損失の懸念が生じるのに対し、両スイッチが共に開放状態になると電気負荷の電源失陥の懸念が生じることになるため、両スイッチが共に閉鎖状態及び開放状態のいずれかにならないようにすることが望ましい。ただし、各蓄電池の電力損失と電気負荷の電源失陥とを比べると、後者の方が避けるべき状況であると考えられる。
【0010】
この点、上記構成では、スイッチ制御部の出力側において信号処理回路部を設けることにより、電気負荷の電源失陥を積極的に阻止するようにしている。この場合、信号処理回路部は、スイッチの開閉状態を変更する指令信号が閉鎖信号から開放信号に切り替えられる際に、指令信号の切り替えを一時的に遅らせるようにしている。この指令信号の切り替えの一時的な遅れ(オフディレイ)により、電力損失が過剰に生じることを抑制しつつ、電気負荷の電源失陥の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の電源システムを示す電気回路図。
図2】第1状態における各スイッチの状態を示す図。
図3】第2状態における各スイッチの状態を示す図。
図4】第3状態における各スイッチの状態を示す図。
図5】第4状態における各スイッチの状態を示す図。
図6】第5状態における各スイッチの状態を示す図。
図7】制御部と各スイッチとの接続を示す図。
図8】信号処理回路部の電気的構成を示す図。
図9】ディレイ回路の動作を示すタイミングチャート。
図10】信号処理回路部の動作を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の電池ユニットは車両に搭載される車載電源システムに適用されるものであり、車両は、エンジン(内燃機関)を駆動源として走行するものである。また、車両は、いわゆるアイドリングストップ機能を有している。
【0013】
図1に示すように、本電源システムは、回転機10、鉛蓄電池20、リチウムイオン蓄電池30、スタータ41、各種の電気負荷42,43、P−MOSスイッチ51、P−SMRスイッチ52、S−MOSスイッチ53、S−SMRスイッチ54を備えている。
【0014】
このうち、リチウムイオン蓄電池30と各スイッチ51〜56とは筐体(収容ケース)に収容されることで一体化され、電池ユニットUとして構成されている。また、電池ユニットUは、電池制御手段を構成する制御部60を有しており、各スイッチ51〜56と制御部60とは同一の基板に実装された状態で筐体内に収容されている。
【0015】
電池ユニットUには外部端子として第1端子P1、第2端子P2、第3端子P3が設けられており、第1端子P1には鉛蓄電池20とスタータ41と電気負荷42とが接続され、第2端子P2には回転機10が接続され、第3端子P3には電気負荷43が接続されるようになっている。この場合、第1端子P1にはハーネスH1を介して鉛蓄電池20等が接続され、第2端子P2にはハーネスH2を介して回転機10が接続され、第3端子P3にはハーネスH3を介して電気負荷43が接続される。第1端子P1と第2端子P2とは、いずれも回転機10の入出力の電流が流れる大電流入出力端子となっている。
【0016】
回転機10の回転軸は、図示しないエンジンのクランク軸に対してベルト等により駆動連結されており、クランク軸の回転によって回転機10の回転軸が回転するとともに、回転機10の回転軸の回転によってクランク軸が回転する。この場合、回転機10は、クランク軸の回転により発電(回生発電)を行う発電機能と、クランク軸に回転力を付与する動力出力機能とを備え、ISG(Integrated Starter Generator)を構成するものとなっている。また、回転機10の動力出力について言えば、アイドリングストップ制御でエンジン再始動が行われる場合に、回転機10によりエンジンが再始動される。また、車両走行時において回転機10による出力補助(アシスト)が可能となっている。
【0017】
鉛蓄電池20とリチウムイオン蓄電池30とは回転機10に対して並列に電気接続されており、回転機10の発電電力により各蓄電池20,30の充電が可能となっている。また、回転機10は、各蓄電池20,30からの給電により駆動されるものとなっている。
【0018】
鉛蓄電池20は周知の汎用蓄電池である。これに対し、リチウムイオン蓄電池30は、鉛蓄電池20に比べて、充放電における電力損失が少なく、出力密度、及び、エネルギ密度の高い高密度蓄電池である。リチウムイオン蓄電池30は、複数の電池セルを直列に接続してなる組電池により構成されている。
【0019】
電池ユニットU内には、ユニット内電気経路として、各端子P1〜P3及びリチウムイオン蓄電池30を相互に接続する複数の接続経路L1〜L4が設けられている。このうち、
・第1接続経路L1は、第1端子P1と第2端子P2とを接続する電気経路であり、
・第2接続経路L2は、第1接続経路L1上の接続点N1(電池接続点)とリチウムイオン蓄電池30とを接続する電気経路であり、
・第3接続経路L3は、第1接続経路L1上の接続点N2と第3端子P3とを接続する電気経路であり、
・第4接続経路L4は、第2接続経路L2の接続点N3と第3接続経路L3の接続点N4(負荷接続点)とを接続する電気経路である。
このうち第1接続経路L1と第2接続経路L2とが「主接続経路」に相当し、第3接続経路L3と第4接続経路L4とが「副接続経路」に相当する。
【0020】
そして、
・第1接続経路L1(詳しくはN1−N2の間)にP−MOSスイッチ51が設けられ、
・第2接続経路L2(詳しくはN1−N3の間)にP−SMRスイッチ52が設けられ、
・第3接続経路L3(詳しくはN2−N4の間)にS−MOSスイッチ53が設けられ、
・第4接続経路L4(詳しくはN3−N4の間)にS−SMRスイッチ54が設けられている。
これら各スイッチ51〜54は、いずれも2×n個のMOSFET(半導体スイッチ)を備え、その2つ一組のMOSFETの寄生ダイオードが互いに逆向きになるように直列に接続されている。この寄生ダイオードによって、各スイッチ51〜54をオフ状態とした場合にそのスイッチが設けられた経路に流れる電流が完全に遮断される。なお、第1接続経路L1及び第2接続経路L2には、回転機10と各蓄電池20,30との間で比較的大きな電流が流れることが想定される大電流経路である。また、第3接続経路L3及び第4接続経路L4は、接続経路L1,L2に比べて小さい電流が流れることが想定される小電流経路である。そこで、接続経路L1,L2に設けられるスイッチ51,52は、接続経路L3,L4に設けられるスイッチ53,54に比べて、許容電流量の大きなものを用いている。具体的には、スイッチ51,52として、スイッチ53,54と比べて多くのMOSFETを並列接続して用いることで、許容電流量を大きくしている。
【0021】
また、電池ユニットUには、ユニット内のスイッチ51,53を介さずに、鉛蓄電池20を回転機10及び電気負荷43に接続可能とするバイパス経路B1,B2が設けられている。具体的には、本実施形態の電池ユニットUには第4端子P4が設けられており、第4端子P4には、ヒューズ44を介して、鉛蓄電池20、スタータ41及び電気負荷42が接続されている。また、第4端子P4は、電池ユニットUの内部において、第1接続経路L1上の接続点N1と、第1バイパス経路B1によって接続されている。第1バイパス経路B1上には、第4端子P4と接続点N1との接続を遮断状態又は導通状態にする第1バイパススイッチ55が設けられている。
【0022】
また、電池ユニットUの内部において、第1接続経路L1上の接続点N1と第3端子P3とを接続するように第2バイパス経路B2が設けられている。第2バイパス経路B2上には、接続点N1と第3端子P3との接続を遮断状態又は導通状態にする第2バイパススイッチ56が設けられている。
【0023】
第1バイパススイッチ55及び第2バイパススイッチ56は、常閉式のリレースイッチである。第1バイパス経路B1により、P−MOSスイッチ51を迂回して鉛蓄電池20と回転機10及びリチウムイオン蓄電池30とが接続される。また、第1バイパス経路B1と第2バイパス経路B2とが直列接続されることにより、S−MOSスイッチ53を迂回して鉛蓄電池20と電気負荷43とが接続される。
【0024】
制御部60は、各スイッチ51〜54のオン(閉鎖)とオフ(開放)との切り替えを行う。例えば、各蓄電池20,30の放電時において、スイッチ51〜54は、基本的に鉛蓄電池20及びリチウムイオン蓄電池30の接続を遮断するように制御され、鉛蓄電池20からリチウムイオン蓄電池30に電流が流れること、及び、リチウムイオン蓄電池30から鉛蓄電池20に対して電流が流れることが抑制される。これにより、両方の蓄電池間で電流が流れることに伴う電力損失を抑制することができる。
【0025】
また、制御部60は、電池ユニット外のECU100(電子制御装置)に接続されている。つまり、これら制御部60及びECU100は、CAN等の通信ネットワークにより接続されて相互に通信可能となっており、制御部60及びECU100に記憶される各種データが互いに共有できるものとなっている。ECU100は、アイドリングストップ制御を実施する。アイドリングストップ制御とは、周知のとおり所定の自動停止条件の成立によりエンジンを自動停止させ、かつその自動停止状態下で所定の再始動条件の成立によりエンジンを再始動させるものである。
【0026】
電気負荷43は、供給電力の電圧が概ね一定であるか、又は、電圧変動が所定範囲内であり安定していることが要求される定電圧要求電気負荷である。電気負荷43には、S−MOSスイッチ53を介して鉛蓄電池20が接続されるとともに、S−SMRスイッチ54を介してリチウムイオン蓄電池30が接続されており、鉛蓄電池20及びリチウムイオン蓄電池30のいずれかからの給電が行われるようになっている。
【0027】
電気負荷43の具体例としては車載ナビゲーション装置や車載オーディオ装置が挙げられる。例えば、供給電力の電圧が一定ではなく大きく変動している場合、又は、前記所定範囲を超えて大きく変動している場合には、電圧が瞬時的に最低動作電圧よりも低下して、車載ナビゲーション装置等の動作がリセットする不具合が生じる。そこで、電気負荷43へ供給される電力は、電圧が最低動作電圧よりも低下することのない一定の値に安定していることが要求される。
【0028】
電気負荷42は、電気負荷43(定電圧要求電気負荷)及びスタータ41以外の一般的な電気負荷である。電気負荷42の具体例としてはヘッドライト、フロントウインドシールド等のワイパ、空調装置の送風ファン、リヤウインドシールドのデフロスタ用ヒータ等が挙げられる。また、電気負荷42には、所定の駆動条件が成立することで停止状態から駆動状態に移行し、その条件が成立しなくなると停止状態に戻る駆動負荷が含まれる。駆動負荷は例えば、パワーステアリングや、パワーウィンドウなどである。スタータ41及び電気負荷42は、P−MOSスイッチ51に対して鉛蓄電池20の側に電気接続されており、スタータ41及び電気負荷42への電力供給は主に鉛蓄電池20が分担することとしている。
【0029】
回転機10は、エンジンのクランク軸の回転エネルギにより発電するものである。回転機10で発電した電力は、電気負荷42,43へ供給されるとともに、鉛蓄電池20及びリチウムイオン蓄電池30へ供給される。エンジンの駆動が停止して回転機10で発電が実施されていない場合には、鉛蓄電池20及びリチウムイオン蓄電池30から回転機10、スタータ41及び電気負荷42,43へ電力が供給される。各蓄電池20,30から回転機10、スタータ41及び電気負荷42〜43への放電量、及び、回転機10から各蓄電池20,30への充電量は、各蓄電池20,30のSOC(State of charge:充電状態、即ち、満充電時の充電量に対する実際の充電量の割合)が過充放電とならない範囲(適正範囲)となるよう制御される。
【0030】
制御部60は、リチウムイオン蓄電池30の温度、出力電圧及び充放電電流を検出し、その検出値に基づいてリチウムイオン蓄電池30のSOCを算出する。また、制御部60は、鉛蓄電池20の温度、出力電圧及び充放電電流を検出し、その検出値に基づいて鉛蓄電池20のSOCを算出する。制御部60は、各蓄電池のSOCに基づいて各スイッチ51〜54をオフオンし、そのSOCが適正範囲となるように制御を行う。また、各スイッチ51〜54にはそれぞれ電流センサが設けられており、制御部60は、各スイッチ51〜54に流れる電流の検出値をそれぞれ取得する。また、電池ユニットUの端子P1〜P3には電圧センサが設けられており、制御部60は端子P1〜P3の電圧の検出値をそれぞれ取得する。
【0031】
本実施形態では、車両の回生エネルギにより回転機10を発電させて両蓄電池20,30(主にはリチウムイオン蓄電池30)に充電させる減速回生を行っている。この減速回生は、車両が減速状態であること、エンジンへの燃料噴射をカットしていること等の条件が成立した時にECU100の制御により実施される。
【0032】
ここで、両蓄電池20,30は回転機10に対して並列接続されている。このため、回転機10により発電された電力を充電する際には、端子電圧の低い方の蓄電池に対して優先的に充電がなされることになる。回生発電時には、リチウムイオン蓄電池30の端子電圧が鉛蓄電池20の端子電圧より低くなる機会が多くなるようにして、鉛蓄電池20よりも優先してリチウムイオン蓄電池30に対する充電が実施されるようになっている。こうした設定は、両蓄電池20,30の開放端電圧及び内部抵抗値を設定することで実現可能であり、開放端電圧の設定は、リチウムイオン蓄電池30の正極活物質、負極活物質及び電解液を選定することで実現可能である。
【0033】
また、本実施形態では、アイドリングストップ制御によりエンジンを自動停止させた後、回転機10の駆動によりエンジンを自動で再始動させる。更に、その再始動の後には、車両の速度が所定速度に達するまで、回転機10によってクランク軸にトルクを付与する出力補助(発進アシスト)を実施する。また、車両の走行中において、ドライバによりアクセルペダルが踏み込まれて車両の加速を実施する際、回転機10によってクランク軸にトルクを付与する出力補助(中間アシスト)を実施する。中間アシストは、登り急斜面を走行するときのように、クランク軸に高出力が要求される状況下においても実施される。発進アシスト及び中間アシストは共にECU100の制御により実施される。発進アシスト及び中間アシストを実施することで、車両の燃費を向上させることができる。
【0034】
始動時、発進アシスト時、及び、中間アシスト時において、回転機10の駆動に伴い、回転機10がクランク軸に対して付与するトルクの量に応じた電流が回転機10に対して電力を供給する蓄電池に流れる。この電流及び蓄電池の内部抵抗によって蓄電池の出力電圧が低下する。この回転機10が付与するトルクに応じた蓄電池の出力電圧の低下により、定電圧要求電気負荷43に供給される電力の電圧も一時的に低下し、予期せぬ動作のリセットが発生するおそれがある。
【0035】
そこで、本実施形態では、制御部60が各スイッチ51〜54の状態を車両の走行状態に応じて適切に制御することで、車両の走行中に定電圧要求電気負荷43の動作がリセットされる不具合を抑制する。具体的には、各スイッチ51〜54は、下記第1状態〜第5状態とされる。
【0036】
図2に示す第1状態では、スイッチ51,52,54がオン状態とされ、S−MOSスイッチ53のみがオフ状態とされている。この第1状態では、鉛蓄電池20とリチウムイオン蓄電池30とが導通状態とされ、両蓄電池20,30と回転機10及び電気負荷43とが導通状態とされる。回生発電時には、両蓄電池20,30に対して充電を行うべくスイッチ状態を第1状態とする。また、アイドリングストップ再始動後の発進アシスト時においても、スイッチ状態を第1状態とする。
【0037】
図3に示す第2状態では、スイッチ51,54がオン状態とされ、スイッチ52,53がオフ状態とされている。この第2状態では、鉛蓄電池20と回転機10とが導通状態とされ、電気負荷43とリチウムイオン蓄電池30とが導通状態とされる。また、鉛蓄電池20とリチウムイオン蓄電池30とが遮断状態とされる。回転機10によるアシストを行わない走行時(通常走行時)、アイドリングストップにおけるエンジン停止時、及び、アイドリングストップにおけるエンジン再始動時には、電気負荷43に供給される電力の電圧の安定化を目的としてスイッチ状態を第2状態とする。
【0038】
図4に示す第3状態では、スイッチ52,54がオン状態とされ、スイッチ51,53オフ状態とされている。この第3状態では、回転機10及び電気負荷43とリチウムイオン蓄電池30とが導通状態とされる。また、鉛蓄電池20とリチウムイオン蓄電池30とが遮断状態とされる。リチウムイオン蓄電池30から回転機10に対して電力供給を行い、リチウムイオン蓄電池30の残存容量(充電率)を低下させて、回生発電時において生じる電力をリチウムイオン蓄電池30により多く充電することを目的として、中間アシスト時には、基本的にスイッチ状態を第3状態とする。
【0039】
図5に示す第4状態では、スイッチ51,53がオン状態とされ、スイッチ52,54がオフ状態とされている。この第4状態では、回転機10及び電気負荷43と鉛蓄電池20とが導通状態とされる。また、鉛蓄電池20とリチウムイオン蓄電池30とが遮断状態とされる。リチウムイオン蓄電池30の過放電を防止すべく、IGオン直後及び冷間始動時、及び、リチウムイオン蓄電池30の残存容量が低下した場合には、スイッチ状態を第4状態とする。
【0040】
図6に示す第5状態では、スイッチ52,53がオン状態とされ、スイッチ51,54がオフ状態とされている。この第5状態では、回転機10とリチウムイオン蓄電池30とが導通状態とされ、電気負荷43と鉛蓄電池20とが導通状態とされる。また、鉛蓄電池20とリチウムイオン蓄電池30とが遮断状態とされる。中間アシスト時において、回転機10に流れる電流が所定量以上であり、リチウムイオン蓄電池30の出力電圧が大きく低下する場合には、スイッチ状態を第5状態とする。
【0041】
上述の通り、第1状態では、鉛蓄電池20とリチウムイオン蓄電池30とが導通状態とされ、鉛蓄電池20及びリチウムイオン蓄電池30と回転機10及び電気負荷43とが導通状態とされる。また、第2〜第5状態では、鉛蓄電池20とリチウムイオン蓄電池30とが遮断状態とされ、回転機10及び電気負荷43のそれぞれが、鉛蓄電池20及びリチウムイオン蓄電池30のいずれか一方と導通状態とされる。
【0042】
ここで、車載電源システムがIGオン状態とされている間に、P−MOSスイッチ51に開異常(常時オフ異常)が生じると、鉛蓄電池20に対して回転機10から電力供給を実施することができない。この場合、鉛蓄電池20から電気負荷42に電力が供給され続ける結果、鉛蓄電池20の充電率が低下していき、電気負荷42はやがて電源失陥となる。そこで、第1バイパス経路B1を介して鉛蓄電池20と回転機10とを接続する構成にした。これにより、P−MOSスイッチ51に開異常が生じた場合に、第1バイパススイッチ55をオン状態とすることで、回転機10から鉛蓄電池20に対する電力供給が可能になる。
【0043】
上記図2〜6に示した通り、S−MOSスイッチ53とS−SMRスイッチ54は、いずれか一方がオン状態とされる。これにより、鉛蓄電池20又はリチウムイオン蓄電池30から電気負荷43に対して電力が供給される。ここで、車載電源システムがIGオン状態とされている間に、開異常などが原因でS−MOSスイッチ53及びS−SMRスイッチ54が共にオフ状態とされると、鉛蓄電池20及びリチウムイオン蓄電池30のそれぞれから電気負荷43に対する電力供給をすることができず、電気負荷43が電源失陥となる。
【0044】
そこで、図1に示される第1バイパス経路B1及び第2バイパス経路B2を介して鉛蓄電池20と電気負荷43とを接続し、S−MOSスイッチ53又はS−SMRスイッチ54に異常が生じたことを条件として、両バイパススイッチ55,56を共にオン状態にする操作(オン操作)を行う構成とした。これにより、両スイッチ53,54を介さずに鉛蓄電池20から電気負荷43に対する電力供給が可能になり、電気負荷43における電源失陥を抑制することができる。
【0045】
また、車載電源システムがIGオフ状態における電気負荷42,43への電力供給(いわゆる暗電流供給)は、リチウムイオン蓄電池30が過放電となることを抑制するために、鉛蓄電池20から行われることが望ましい。これは、リチウムイオン蓄電池が鉛蓄電池に比べて過放電による劣化度合いが大きいからである。また、MOS−FETを駆動するために要する電力消費(例えば、ゲート・リーク電流による電力消費)を抑制するために、暗電流供給中はスイッチ51〜54はオフ状態とすることが望ましい。
【0046】
そこで、IGオフ時に、第1バイパス経路B1及び第2バイパス経路B2を介して、鉛蓄電池20から電気負荷43への電力供給を実施する構成とした。つまり、制御部60は、IGオフを条件として、各バイパススイッチ55,56のオン操作を行う。なお、第1バイパス経路B1及び第2バイパス経路B2上に設けられている第1バイパススイッチ55及び第2バイパススイッチ56は、常閉式のリレースイッチであるため、リレースイッチを駆動するための電流が停止されるとオン状態となる。つまり、暗電流供給時において、スイッチを導通状態に保つことに伴う電力消費を抑制することができる。
【0047】
また、電池ユニットUの第4端子P4と、第1端子P1及び鉛蓄電池20が接続される接続点N5との間には、ヒューズ44が設けられている。第1バイパススイッチ55がオン状態とされている間に第2端子P2又はハーネスH2に地絡が生じると、鉛蓄電池20から地絡が生じた点に対して大電流が流れる。また、第1バイパススイッチ55及び第2バイパススイッチ56がオン状態とされている間に第3端子P3又はハーネスH3に地絡が生じると、鉛蓄電池20から地絡が生じた点に対して大電流が流れる。このような大電流が流れる場合にヒューズ44が溶断されることで、大電流が流れ続けることに伴う二次的な故障を抑制することができる。
【0048】
ここで、バイパス経路B1,B2は直列接続されているため、バイパス経路B1,B2それぞれに対してヒューズ44を設ける必要がなく部品点数を削減することができる。なお、ヒューズ44を電池ユニットUの外部に設ける構成としているため、ヒューズ44が溶断された場合に容易に交換が可能である。
【0049】
また、電池ユニットUのリチウムイオン蓄電池30と、電池ユニットUの筐体(GND)との間には、ヒューズ45が設けられている。P−SMRスイッチ52がオン状態とされている間に第2端子P2又はハーネスH2に地絡が生じると、リチウムイオン蓄電池30から地絡が生じた点に対して大電流が流れる。このような大電流が流れる場合にヒューズ45が溶断されることで、リチウムイオン蓄電池30から大電流が流れ続けることに伴う二次的な故障を抑制することができる。
【0050】
上述のように、本実施形態の電源システムは、スイッチ51〜54を第1〜第5状態へと適宜変更する。鉛蓄電池20又はリチウムイオン蓄電池30から電気負荷43への給電を継続して実施する場合、上記第1〜第5状態に限らず、S−MOSスイッチ53及びS−SMRスイッチ54の少なくとも一方をオン状態にするとよい。
【0051】
仮に上記第1〜第5状態とは異なりS−MOSスイッチ53及びS−SMRスイッチ54が共にオン状態にされると、副接続経路L3,L4上の負荷接続点N4を介して、鉛蓄電池20及びリチウムイオン蓄電池30が導通状態とされ、蓄電池20,30の間で充放電が行われて電力損失が生じるおそれがある。そこで、負荷接続点N4を経由して蓄電池20,30の間が導通状態とされることを抑制するために、上記第1〜第5状態では、S−MOSスイッチ53及びS−SMRスイッチ54を、一方をオン状態としている場合に、他方をオフ状態にするようにしている。つまり、IGオン状態において、S−MOSスイッチ53及びS−SMRスイッチ54の一方をオフ状態からオン状態に切り替える場合、その切り替えと同時に、他方をオン状態からオフ状態に切り替えるようにしている。
【0052】
ここで、スイッチ53,54の一方をオフ状態からオン状態に切り替える際、同時に他方をオン状態からオフ状態に切り替えると、瞬間的にスイッチ53,54が共にオフ状態とされることが懸念される。スイッチ53,54が瞬間的に共にオフ状態とされると、電気負荷43に対する電力供給が瞬断される。
【0053】
そこで、本実施形態では、スイッチ53,54の一方をオフ状態からオン状態、他方をオン状態からオフ状態に切り替える際に、スイッチ53,54が共にオン状態となる第1オーバーラップ期間を設けている。つまり、原則的にスイッチ53,54が同時にオン状態にされることを禁止しつつ、スイッチ状態の切り替わりにおいて第1オーバーラップ期間を設けることで、スイッチ53,54が共にオン状態にされることを一時的に許容する。このような構成にすることで、電池間充電が生じることによる電力損失を抑制しつつ、電気負荷43に対する電力供給の瞬断を抑制することが可能になる。
【0054】
また、仮に、スイッチ53,54の一方と、第2バイパススイッチ56とを共にオン状態にすると、鉛蓄電池20又はリチウムイオン蓄電池30と負荷接続点N4との間、及び、負荷接続点N4と電池接続点N1との間が共に導通状態にされる。この結果、鉛蓄電池20又はリチウムイオン蓄電池30と電池接続点N1(回転機10)との間が、副接続経路L3,L4及び第2バイパス経路B2を介して導通状態となる。このような状況下では、主接続経路L1,L2に流れる電流の一部が、副接続経路L3,L4及び第2バイパス経路B2を介して流れるおそれがある。
【0055】
特に、回転機10の発電時に回転機10から蓄電池20,30に対して充電電流が流れている場合や、回転機10の駆動時に蓄電池20,30から回転機10に駆動電流が流れている場合に、主接続経路L1,L2には大電流が流れている。主接続経路L1,L2に大電流が流れている場合に、スイッチ53,54の一方と、第2バイパススイッチ56とが共にオン状態にされると、主接続経路L1,L2に並列して設けられる副接続経路L3,L4及び第2バイパス経路B2に大電流が流れることになる。
【0056】
副接続経路L3,L4及び第2バイパス経路B2を構成する配線及びスイッチ53,54,56の許容充電量は、主接続経路L1,L2を構成する配線及びスイッチ51,52の許容充電量に比べて低く設定されている。このため、副接続経路L3,L4及び第2バイパス経路B2に大電流が流れると、副接続経路L3,L4及び第2バイパス経路B2を構成する配線及びスイッチ53,54,56に損傷が生じるおそれがある。
【0057】
そこで、鉛蓄電池20と回転機10との間、又は、リチウムイオン蓄電池30と回転機10との間に負荷接続点N4を経由して大電流が流れることを抑制するために、スイッチ53,54が共にオフ状態にされる場合に、第2バイパススイッチ56がオン状態にする構成としている。
【0058】
ここで、スイッチ53,54が共にオフ状態にされた後、第2バイパススイッチ56がオン状態にされるまでの間に、スイッチ53,54,56が全てオフ状態とされ、電気負荷43に対する電力供給が瞬断されることが懸念される。そこで、本実施形態では、スイッチ53,54が共にオフ状態にされるまでに、第2バイパススイッチ56をオン状態にするように、スイッチ53,54のいずれか一方と、第2バイパススイッチ56とが共にオン状態となる第2オーバーラップ期間を設けている。
【0059】
図7に示すように、本実施形態の電源システムでは、上記の第1、第2オーバーラップ期間を実現すべく、S−MOSスイッチ53、S−SMRスイッチ54、及び、第2バイパススイッチ56のオンオフを制御する制御部60とスイッチ53,54,56との間に信号処理回路部70を設ける構成とする。
【0060】
制御部60は、S−MOSスイッチ53、S−SMRスイッチ54、及び、第2バイパススイッチ56のオンオフ状態をそれぞれ変更するように指令する指令信号を出力する。信号処理回路部70は、各スイッチ53,54,56のオンオフの切り替え時において、オンオフの切り替えを指令する指令信号をそれぞれ遅延させる。ここで、信号処理回路部70は、スイッチ53,54,56をオン状態からオフ状態に変更する場合におけるディレイ時間(オフディレイ時間)を、スイッチ53,54をオフ状態からオン状態に変更する場合におけるディレイ時間(オンディレイ時間)に比べて長くすることで、上述の第1、第2オーバーラップ期間を実現している。
【0061】
S−MOSスイッチ53及びS−SMRスイッチ54は、共に正論理のMOS−FETスイッチであり、ゲート駆動回路61から駆動電流が入力されることでゲート電圧がハイ状態にされるとオン状態になる。また、ゲート電圧がロー状態にされるとオフ状態になる。なお、ゲート駆動回路61は、信号処理回路部70から入力される信号がロー状態からハイ状態になると駆動電流を出力し、信号処理回路部70から入力される信号がハイ状態からロー状態になると駆動電流を停止する。
【0062】
また、第2バイパススイッチ56は、ノーマリークローズ型のリレースイッチである。ノーマリークローズ型のリレースイッチは、負論理型のスイッチと言え、リレースイッチのリアクトルに対して信号処理回路部70から入力される電圧がハイ状態にされるとオフ状態になり、リレースイッチのリアクトルに対して信号処理回路部70から入力される電圧がロー状態にされるとオン状態になる。
【0063】
図8に信号処理回路部70の電気的構成を示す。信号処理回路部70は、オフディレイ時間をオンディレイ時間より長くするディレイ回路71,72,73(第1〜第3ディレイ回路)と、指令信号Sa1,Sb1,Sc1を論理演算する論理回路74(許可手段)とを備える。
【0064】
まず、ディレイ回路71,72について説明する。なお、ディレイ回路71,72は構成が同一であるため、ディレイ回路71についてのみ説明し、ディレイ回路72の説明は省略する。
【0065】
指令信号Sa1は、ディレイ回路71のシュミットインバータ81に入力される。シュミットインバータ81の出力は、抵抗体82,83に入力される。抵抗体82は、ダイオード84のカソードに直列接続されている。抵抗体82及びダイオード84の直列接続体と、抵抗体83とは並列接続され、それぞれキャパシタ85を介して接地電位に接続されるとともに、シュミットインバータ86の入力端子に接続される。シュミットインバータ81,86は周知のシュミットトリガ型のインバータ(NOT回路)であり、入力信号を反転させて出力するとともに、ハイ状態/ロー状態の切り替わりにおいてヒステリシスを持つ。
【0066】
抵抗体82及びキャパシタ85、抵抗体83及びキャパシタ85はそれぞれローパスフィルタを構成している。抵抗体82の抵抗値は約1kΩ、抵抗体83の抵抗値は約500kΩ、キャパシタ93の容量は約0.1μFであるため、抵抗体82及びキャパシタ85から構成されるローパスフィルタの時定数は約0.1msec、抵抗体83及びキャパシタ85から構成されるローパスフィルタの時定数は約50msecである。
【0067】
ここで、ダイオード84のカソードはシュミットインバータ81側に、ダイオード84のアノードはシュミットインバータ86側にそれぞれ接続されている。このため、ダイオード84は、シュミットインバータ81からシュミットインバータ86に向かって流れる電流を遮断し、シュミットインバータ86からシュミットインバータ81に向かって流れる電流を導通させる。
【0068】
シュミットインバータ81の出力がロー状態からハイ状態に変化する(指令信号Sa1がハイ状態からロー状態に変化する)場合、ダイオード84が電流を遮断することで、抵抗体83及びキャパシタ85によって構成されるローパスフィルタによって遅延が生じることになり、そのディレイ時間は、時定数に相当する約50msecとなる。また、シュミットインバータ81の出力がハイ状態からロー状態に変化する(指令信号Sa1がロー状態からハイ状態に変化する)場合、ダイオード84が電流を導通させることで、抵抗体82及びキャパシタ85によって構成されるローパスフィルタによってディレイが生じることになる。そして、そのディレイ時間は、時定数に相当する約0.1msecとなる。
【0069】
シュミットインバータ81の出力は、シュミットインバータ86によって反転されてゲート駆動回路61に出力されるため、シュミットインバータ81の出力がロー状態からハイ状態に変化する場合のディレイ時間(約50msec)が、スイッチ53のオフディレイ時間になる。また、シュミットインバータ81の出力がハイ状態からロー状態に変化する場合のディレイ時間(約0.1msec)が、スイッチ53のオンディレイ時間になる。
【0070】
つまり、ディレイ回路71では、オン切り替え時の信号操作経路と、オフ切り替え時の信号操作経路とを並列に設けるとともに、それら各経路に共通のキャパシタ85を用いて、それぞれローパスフィルタを設ける構成とした。この場合、オン切り替え時の信号操作経路とオフ切り替え時の信号操作経路とでは、各々に信号切り替え時の遅延が生じるが、それら各経路でローパスフィルタの時定数を異なるものとしたため、所望の切り替え動作が実現できる。
【0071】
次に、論理回路74の説明を行う。指令信号Sa1,Sb1は、OR回路87に入力される。そして、OR回路87の出力と、指令信号Sc1とが、AND回路88に入力される。スイッチ53,54が共にオフ状態とされている状況下で、指令信号Sa1,Sb1のいずれか一方をハイ状態にしてスイッチ53,54のいずれか一方がオン状態へと切り替える際に、OR回路87の出力はハイ状態となる。そして、OR回路87の出力がハイ状態とされている状況下で、指令信号Sc1がハイ状態とされると、論理回路74の出力がハイ状態となり、第2バイパススイッチ56のリアクトルに入力される電圧がハイ状態となり、第2バイパススイッチ56はオフ状態にされる。つまり、指令信号Sc1は、第2バイパススイッチ56のオンオフを切り替える指令信号であり、OR回路87の出力は、第2バイパススイッチ56をオンからオフに切り替えることを許可する許可信号である。論理回路74は、制御部60から入力された指令信号Sa1,Sb1,Sc1を論理演算することで、スイッチ53,54が共にオフ状態にされている場合に、スイッチ56がオフ状態となることを抑制する。
【0072】
次に、ディレイ回路73の説明を行う。ディレイ回路73を構成するシュミットインバータ89,94、抵抗体90,91、キャパシタ93は、ディレイ回路71,72を構成するシュミットインバータ81,86、抵抗体82,83、キャパシタ85と同一の構成であるため説明を省略する。
【0073】
ディレイ回路73を構成するダイオード92は、ディレイ回路71,72のダイオード84と比較して接続されている向きが逆である点で異なっている。ダイオード92のアノードはシュミットインバータ89側に、ダイオード92のカソードはシュミットインバータ94側にそれぞれ接続されている。このため、ダイオード92は、シュミットインバータ89からシュミットインバータ94に向かって流れる電流を導通させ、シュミットインバータ94からシュミットインバータ89に向かって流れる電流を遮断させる。
【0074】
シュミットインバータ89の出力がハイ状態からロー状態に変化する(論理回路74の出力がロー状態からハイ状態に変化する)場合、ダイオード84が電流を遮断することで、抵抗体90及びキャパシタ93によって構成されるローパスフィルタによって遅延が生じることになり、そのディレイ時間は、時定数に相当する約50msecとなる。また、シュミットインバータ89の出力がロー状態からハイ状態に変化する(論理回路74の出力がハイ状態からロー状態に変化する)場合、ダイオード84が電流を導通させることで、抵抗体82及びキャパシタ85によって構成されるローパスフィルタによってディレイが生じることになる。そして、そのディレイ時間は、時定数に相当する約0.1msecとなる。
【0075】
シュミットインバータ89の出力は、シュミットインバータ94によって反転されて第2バイパススイッチ56のリアクトルに出力されるため、シュミットインバータ89の出力がハイ状態からロー状態に変化する場合のディレイ時間(約50msec)が、第2バイパススイッチ56のオフディレイ時間になる。また、シュミットインバータ89の出力がロー状態からハイ状態に変化する場合のディレイ時間(約0.1msec)が、第2バイパススイッチ56のオンディレイ時間になる。
【0076】
ここで、ディレイ回路71,72において、抵抗体82,83及びキャパシタ85で構成されるローパスフィルタの出力をシュミットインバータ86に入力する構成としている。また、ディレイ回路73において、抵抗体90,91及びキャパシタ93で構成されるローパスフィルタの出力をシュミットインバータ94に入力する構成としている。このため、シュミットインバータ86,94のヒステリシスにより、オフディレイ時間及びオンディレイ時間がそれぞれ延長される結果、オフディレイ時間とオンディレイ時間との差が顕著となる。
【0077】
具体的には、ディレイ回路71,72では、シュミットトリガ機能を持たないインバータを用いた場合と比較して、オフディレイ時間は、VTH1×2/VCC倍される。また、オンディレイ時間は、2−VTH2×2/VCC倍される。ディレイ回路73では、シュミットトリガ機能を持たないインバータを用いた場合と比較して、オフディレイ時間は、2−VTH2×2/VCC倍される。また、オンディレイ時間は、VTH1×2/VCC倍される。ここで、VCCはインバータの動作電圧、VTH1はシュミットインバータ86,94のハイ側閾値電圧、VTH2はシュミットインバータ86,94のロー側閾値電圧であり、VTH2<VCC/2<VTH1であるため、VTH1×2/VCC,2−VTH2×2/VCCは共に1より大きい値になる。例えば、VTH1≒VCCとすると、VTH1×2/VCC≒2であり、VTH2≒0とすると、2−VTH2×2/VCC≒2である。また、ヒステリシスにより、入力信号の電圧が閾値付近で振動することに伴って、出力信号がロー状態/ハイ状態の間で不安定になることを抑制できる。
【0078】
図9にディレイ回路71の動作を表すタイミングチャートを示す。信号Sa1は制御部60から出力される信号、信号Sa2はシュミットインバータ86に入力される信号、信号Sa3はシュミットインバータ86から出力されゲート駆動回路61に入力される信号である。
【0079】
時刻T1において、S−MOSスイッチ53をオフ状態からオン状態に切り替えることを目的として、制御部60から出力される信号Sa1がロー状態からハイ状態にされる。これにより、シュミットインバータ81の出力がハイ状態からロー状態とされ、シュミットインバータ86からシュミットインバータ81側に電流が流れる。抵抗体82及びキャパシタ85から構成されるローパスフィルタの時定数は小さいため、信号Sa2の電圧は急速に低下する。そして、時刻T2において、信号Sa2の電圧が、シュミットインバータ86のロー側閾値電圧VTH2より低下して、シュミットインバータ86の出力信号Sa3がロー状態からハイ状態となる。シュミットインバータ86の出力信号Sa3がロー状態からハイ状態となることで、S−MOSスイッチ53はオフ状態からオン状態へとされる。つまり、時刻T1〜T2の間の時間がオンディレイ時間である。
【0080】
次に、時刻T3において、信号Sa1は、ハイ状態からロー状態とされる。これにより、シュミットインバータ81の出力がロー状態からハイ状態とされ、シュミットインバータ81からシュミットインバータ86側に電流が流れる。抵抗体83及びキャパシタ85から構成されるローパスフィルタの時定数は大きいため、信号Sa2の電圧は緩やかに上昇する。そして、時刻T4において、信号Sa2の電圧がシュミットインバータ86のハイ側閾値電圧VTH1より上昇して、シュミットインバータ86の出力信号Sa3がハイ状態からロー状態となる。シュミットインバータ86の出力信号Sa3がハイ状態からロー状態となることで、S−MOSスイッチ53はオン状態からオフ状態へとされる。つまり、時刻T3〜T4の間の時間がオフディレイ時間である。
【0081】
図10に信号処理回路部70の動作を表すタイミングチャートを示す。信号Sa1〜Sc1は制御部60から出力される信号、Sc2は論理回路74から出力される信号、信号Sa3〜Sc3はディレイ回路71〜73から出力される信号である。なお、図10のタイミングチャートでは、オンディレイ時間を十分に短いと見なして省略している。
【0082】
時刻T11において、信号Sa1,Sb1がロー状態とされている状況下で、信号Sc1がハイ状態とされる。具体的には、車両エンジンがIGオフからIGオンとされることで、信号Sa1がハイ状態となるのに先行して信号Sc1がハイ状態とされる。ここで、信号Sa1,Sb1が共にロー状態とされているため、論理回路74によってスイッチ56をオフ状態にすることが禁止され、論理回路74からスイッチ56側に出力される信号Sc2はロー状態とされる。このため、信号Sc3は、ロー状態のままとなる。
【0083】
時刻T12において、信号Sa1がハイ状態にされる。信号Sa1がハイ状態にされることで、信号Sa3がオンディレイ時間の後にハイ状態にされ、スイッチ53がオン状態にされる。また、信号Sa1がハイ状態にされることで論理回路74から出力される信号Sc2はハイ状態とされる。つまり、時刻T12において、信号Sa1がハイ状態にされることで、信号Sc2がハイ状態にされ、スイッチ56をオフ状態にすることが許可される。この結果、原則的に、時刻T12までは、スイッチ56を介して鉛蓄電池20から電気負荷43に対する電力供給が行われ、時刻T12の後は、スイッチ53を介して鉛蓄電池20から電気負荷43に対する電力供給が行われることになる。
【0084】
時刻T12の後、オフディレイ時間の経過後である時刻T13において、信号Sc3がハイ状態とされ、スイッチ56がオフ状態にされる。つまり、時刻T12〜T13において、スイッチ53と56が共にオン状態にされており、時刻T12〜T13の期間が上記の第2オーバーラップ期間に相当する。第2オーバーラップ期間である時刻T12〜T13において、スイッチ53,56が共にオン状態にされ、スイッチ53,56を介して鉛蓄電池20から電気負荷43に対する電力供給が行われることになる。
【0085】
時刻T14において、信号Sa1がロー状態にされるとともに、信号Sb1がハイ状態にされる。信号Sb1がハイ状態にされることで、信号Sb2がオンディレイ時間の後にハイ状態とされ、スイッチ54がオン状態にされる。また、信号Sa1がロー状態にされることで、信号Sa3がオフディレイ時間の経過後である時刻T15において、信号Sa3がロー状態にされ、スイッチ53がオフ状態にされる。
【0086】
時刻T16において、信号Sa1がハイ状態にされるとともに、信号Sb1がロー状態にされる。信号Sa1がハイ状態にされることで、信号Sa3がオンディレイ時間の後にハイ状態とされ、スイッチ53がオン状態にされる。また、信号Sb1がロー状態にされることで、信号Sb2がオフディレイ時間の経過後である時刻T17において、信号Sb2がロー状態にされ、スイッチ54がオフ状態にされる。
【0087】
つまり、時刻T14〜T15の期間、及び、時刻T16〜T17の期間において、S−MOSスイッチ53及びS−SMRスイッチ54が共にオン状態とされており、時刻T14〜T15の期間、及び、時刻T16〜T17の期間が上記の第1オーバーラップ期間に相当する。第1オーバーラップ期間においては、スイッチ53,54が共にオン状態にされ、スイッチ53,54を介して、鉛蓄電池20及びリチウムイオン蓄電池30と電気負荷43とが導通状態とされる。その後、スイッチ53,54の一方がオフ状態にされることになり、鉛蓄電池20及びリチウムイオン蓄電池30の一方から電気負荷43に対する電力供給が実施される。
【0088】
以下、本実施形態における効果を説明する。
【0089】
上記構成では、スイッチ53,54のオンオフ状態を変更する指令信号Sa1,Sb1の一方がハイ状態からロー状態に切り替えられる際に、他方をロー状態からハイ状態に切り替えることで、原則的にS−MOSスイッチ53とS−SMRスイッチ54とが共にオン状態にされないように制御を行う。このような制御を行うことで、両スイッチ53,54が共にオン状態にされることに伴う不都合、例えば、鉛蓄電池20及びリチウムイオン蓄電池30が導通状態とされることで電力損失が生じるといった不都合を抑制している。
【0090】
ここで、両スイッチ53,54が共にオン状態になると各蓄電池20,30における電力損失の懸念が生じるのに対し、両スイッチ53,54が共にオフ状態になると電気負荷43の電源失陥の懸念が生じることになるため、両スイッチ53,54が共にオン状態及びオフ状態のいずれかにならないようにすることが望ましい。ただし、各蓄電池20,30の電力損失と電気負荷43の電源失陥とを比べると、後者の方が避けるべき状況であると考えられる。
【0091】
この点、上記構成では、制御部60の出力側において信号処理回路部70を設けることにより、電気負荷43の電源失陥を積極的に阻止している。この場合、信号処理回路部70は、スイッチ53,54のオンオフ状態を変更する指令信号Sa1,Sb1がオン信号からオフ信号に切り替えられる際に、指令信号Sa1,Sb1の切り替えを一時的に遅らせるように指令信号を出力する。この指令信号Sa1,Sb1の切り替えの一時的な遅れ(オフディレイ)により電力損失が過剰に生じることを抑制しつつ、電気負荷43の電源失陥の抑制を図ることができる。
【0092】
信号処理回路部70は、S−MOSスイッチ53及びS−SMRスイッチ54のオンオフ状態の変更を指令する指令信号Sa1,Sb1を遅延させて、信号Sa3,Sb2を出力する。更に、指令信号Sa1,Sb1の遅延について、S−MOSスイッチ53及びS−SMRスイッチ54の一方のスイッチのオフディレイ時間が、他方のスイッチのオンディレイ時間より長くなるように設定する。これにより、S−MOSスイッチ53及びS−SMRスイッチ54のいずれか一方をオン状態からオフ状態に、他方をオフ状態からオン状態へと制御する場合に、両スイッチ53,54が共にオン状態となる第1オーバーラップ期間が存在することになる。この第1オーバーラップ期間により、オンオフ状態の切り替え時においてS−MOSスイッチ53及びS−SMRスイッチ54が共にオフ状態となることを抑制し、電気負荷における電力供給の瞬断を抑制することが可能になる。
【0093】
第2バイパス経路B2及び第2バイパススイッチ56を設け、S−MOSスイッチ53及びS−SMRスイッチ54を共にオフ状態としている場合に、第2バイパススイッチ56をオン状態にすることで、第2バイパススイッチ56を介して鉛蓄電池20から電気負荷43に対する電力供給を行う。
【0094】
信号処理回路部70は、第2バイパススイッチ56のオンオフを指令する信号Sc2を遅延させて、信号Sc3を出力する。これにより、第2バイパススイッチ56をオフ状態に切り替え、S−MOSスイッチ53又はS−SMRスイッチ54をオン状態に切り替える際に、スイッチ56とスイッチ53又はスイッチ54が共にオン状態になる第2オーバーラップ期間が設けられる。この第2オーバーラップ期間によって、電気負荷43における電力供給の瞬断を抑制することが可能になる。
【0095】
ここで、信号Sc2の遅延について、第2バイパススイッチ56のオフディレイ時間をS−MOSスイッチ53及びS−SMRスイッチ54それぞれのオンディレイ時間より長く設定することで、より好適に電気負荷43における電力供給の瞬断を抑制することができる。
【0096】
スイッチ56をオフ状態にする際、スイッチ53,54のオンオフ状態の変更を指令する指令信号Sa1,Sb1のいずれか一方がハイ状態(オン状態)にされたことを条件として、スイッチ56のオンオフを指令する信号Sc2がハイ状態(オフ状態)になることを許可するような構成にした。これにより、第2バイパス経路B2を介して電力供給を行い、その後、スイッチ56をオフ状態にするとともに、スイッチ53,54の一方をオン状態にして、副接続経路L3,L4を介して電力供給を行う場合に、スイッチ53,54,56の切り替えに伴う瞬断を抑制することが可能になる。
【0097】
ここで、信号処理回路部70のディレイ回路73によって信号Sc2が遅延して第2バイパススイッチ56に出力されるため、スイッチ53,54のいずれか一方がオン状態とされた後に、第2バイパススイッチ56がオフ状態になることがより確かになる。このため、より好適に電気負荷43における電力供給の瞬断を抑制することができる。
【0098】
本実施形態では、蓄電池20,30に対する充電は、主接続経路L1,L2を介して行い、蓄電池20,30から電気負荷43への電力供給は、副接続経路L3,L4を介して行う。このような構成において、スイッチ53,54が共にオン状態にされると、主接続経路L1,L2に流れる充電電流(大電流)の一部が、副接続経路L3,L4を介して流れることになる。このような状況下では、例えば、副接続経路L3,L4上の素子(スイッチ53,54)や配線に損傷が生じることが懸念される。本実施形態では、原則的に両スイッチ53,54が同時にオン状態になることがないため、上記の不都合を抑制することが可能になる。
【0099】
(他の実施形態)
・上記実施形態では、ディレイ回路71〜73の備える抵抗体の抵抗値及びキャパシタの容量値を各ディレイ回路〜73で同一のものとした。これにより、各スイッチ53,54,56のオフディレイ時間が互いに同じになり、また、オンディレイ時間が互いに同じになる。この構成を変更し、ディレイ回路71〜73の備える抵抗体の抵抗値及びキャパシタの容量値を変更することで、各スイッチ53,54,56のオフディレイ時間及びオンディレイ時間が互いに異なるようにしてもよい。
【0100】
この場合、S−MOSスイッチ53のオフディレイ時間がS−SMRスイッチ54のオンディレイ時間より長くなるように設定するとよい。また、S−SMRスイッチ54のオフディレイ時間がS−MOSスイッチ53のオンディレイ時間より長くなるように設定するとよい。このように、オンディレイ時間、オフディレイ時間を設定することで第1オーバーラップ期間を設けることが可能になる。また、第2バイパススイッチ56のオフディレイ時間を、スイッチ53,54のオンディレイ時間より長く設定するとよい。このようにオンディレイ時間、オフディレイ時間を設定することで第2オーバーラップ期間を設けることが可能になる。
【0101】
・各ディレイ回路71〜73において、各スイッチ53,54,56におけるオンディレイ時間を設けない構成としてもよい。例えば抵抗体82,90を省略することで、オンディレイ時間を省略できる。つまり、ディレイ回路は、オフディレイ時間を設けることが可能であればよい。
【0102】
例えば、制御部60から出力される指令信号のうち1つが並列に設けられた2本の経路に入力される構成とし、その経路の片側にのみローパスフィルタを設け、ローパスフィルタの後段で当該2本の経路をOR回路の入力端子に接続するような回路であってもよい。このような回路の場合、指令信号がローからハイに切り替わると、OR回路に入力される信号のうちローパスフィルタを介さない経路を経由する信号が、遅延なくローからハイに切り替わるため、OR回路の出力が遅延なくローからハイに切り替わる。また、指令信号がハイからローに切り替わると、OR回路に入力される信号のうちローパスフィルタを介する経路を経由する信号が、遅延してハイからローに切り替わるため、OR回路の出力が遅延してハイからローに切り替わる。つまり、このOR回路の出力をゲート駆動回路61に入力すれば、スイッチ53,54の切り替えにおいて、オンからオフへの切り替え時にのみディレイを設けることが可能になる。この場合、ローパスフィルタを介する経路がオフ切り替え時用の信号操作経路であり、ローパスフィルタを介さない経路がオン切り替え時用の信号操作経路である。
【0103】
・第2バイパス経路B2及び第2バイパススイッチ56を省略する構成としてもよい。
【0104】
・第2バイパス経路は、第1端子P1及び負荷接続点N4の間に設けられていてもよい。この場合、第2バイパス経路に設けられた第2バイパススイッチがオン状態とされることで、鉛蓄電池20及び電気負荷43の間が導通状態にされ、鉛蓄電池20から電気負荷43への電力供給が実施される。また、第2バイパス経路は、リチウムイオン蓄電池30及び負荷接続点N4の間に設けられていてもよい。この場合、第2バイパス経路に設けられた第2バイパススイッチがオン状態とされることで、リチウムイオン蓄電池30及び電気負荷43の間が導通状態にされ、リチウムイオン蓄電池30から電気負荷43への電力供給が実施される。
【0105】
・各ディレイ回路71〜73において、2つのシュミットインバータを用いる構成に代えて、1つのシュミットトリガゲートを用いる構成としてもよい。また、ゲート駆動回路61や、第2バイパススイッチ56がシュミットトリガゲートを内蔵する構成としてもよい。また、シュミットインバータを用いる構成に代えて、ヒステリシスを持たないインバータ(NOT回路)を用いる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0106】
20…鉛蓄電池(第1蓄電池)、30…リチウムイオン蓄電池(第2蓄電池)、43…電気負荷、53…S−MOSスイッチ(第1スイッチ)、54…S−SMRスイッチ(第2スイッチ)、60…制御部(スイッチ制御部)、70…信号処理回路部、L3…副接続経路(第1経路)、L4…副接続経路(第2経路)。
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