(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電磁継電器では、収容室を形成する壁面のうちアークが引き伸ばされる方向に位置する部位は、アークが引き延ばされる方向に対して垂直な平面であるため、アークは収容室壁面に当たって引き延ばしが阻害される。
【0005】
したがって、所定のアーク電圧を得るためには、固定接触子と可動接触子との接離部からアークが当たる収容室壁面までの長さを十分に確保する必要があり、電磁継電器が大型化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、所定のアーク電圧を確保しつつ、電磁継電器の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、外部電気回路に接続される一対の固定接触子(13、14)と、往復動して固定接触子と接離する可動接触子(23、25)と、一対の固定接触子および可動接触子を1つの空間に収容している収容室(111)と、収容室の外側に配置され、固定接触子と可動接触子とが接離する接離部に磁界を形成してアークを引き延ばす永久磁石(26)とを備え、収容室を形成する壁面のうち少なくともアークが最初に当たる部位は、可動接触子の往復動方向に沿って見たときに円弧状をなして
おり、永久磁石は、可動接触子の往復動方向に沿って見たときに、収容室を形成する壁面に沿った円弧状をなしていることを特徴とする。
【0008】
これによると、アークは、収容室壁面における円弧状の部位で収容室壁面に沿って延びるように案内されてスムーズに伸長することができるため、接離部からアークが当たる収容室壁面までの長さを短くしても、所定のアーク電圧を得ることができる。その結果、所定のアーク電圧を確保しつつ、電磁継電器を小型にすることができる。
【0009】
また、アークの伸長により収容室内にガス流れが発生し、そのガス流れにより接離部の金属蒸気が速やかに掃気されるため、電界強度が大きくなり、アーク遮断性能が向上する。
【0010】
さらに、上記のガス流れにより接離部に冷えたガスが流入し、アークが冷却されるため、アーク遮断性能が向上する。
【0012】
これによると、永久磁石を収容室壁面における円弧状の部位に沿わせて配置することができるため、電磁継電器をさらに小型にすることができる。
【0013】
請求項
2に記載の発明では、
外部電気回路に接続される一対の固定接触子(13、14)と、往復動して固定接触子と接離する可動接触子(23、25)と、一対の固定接触子および可動接触子を1つの空間に収容している収容室(111)と、収容室の外側に配置され、固定接触子と可動接触子とが接離する接離部に磁界を形成してアークを引き延ばす永久磁石(26)とを備え、収容室を形成する壁面のうち少なくともアークが最初に当たる部位は、可動接触子の往復動方向に沿って見たときに円弧状をなしており、さらに、接離部に発生するアークの引き延ばし経路のうち収容室の底面に、アークを分離するアーク分離部材(30)を備えることを特徴とする。
【0014】
ところで、電解強度は、陰極と陽極のごく近辺では大きく、その間の空間では小さい。したがって、アーク分離部材によりアークを複数に分離することにより、全体のアーク電圧が高くなる。その結果、所定のアーク電圧を確保しつつ、電磁継電器をさらに小型にすることができる。
【0015】
請求項
3に記載の発明では、
外部電気回路に接続される一対の固定接触子(13、14)と、往復動して固定接触子と接離する可動接触子(23、25)と、一対の固定接触子および可動接触子を1つの空間に収容している収容室(111)と、収容室の外側に配置され、固定接触子と可動接触子とが接離する接離部に磁界を形成してアークを引き延ばす永久磁石(26)とを備え、収容室を形成する壁面のうち少なくともアークが最初に当たる部位は、可動接触子の往復動方向に沿って見たときに円弧状をなしており、さらに、収容室を形成する円弧状内周面に、金属蒸気を捕捉するトラッパ(40)を備えることを特徴とする。
【0016】
これによると、掃気された金属蒸気がガス流れに乗って再び接離部に流れ込むことを防止することができる。
【0017】
請求項
4に記載の発明では、
外部電気回路に接続される一対の固定接触子(13、14)と、往復動して固定接触子と接離する可動接触子(23、25)と、一対の固定接触子および可動接触子を1つの空間に収容している収容室(111)と、収容室の外側に配置され、固定接触子と可動接触子とが接離する接離部に磁界を形成してアークを引き延ばす永久磁石(26)とを備え、収容室を形成する壁面のうち少なくともアークが最初に当たる部位は、可動接触子の往復動方向に沿って見たときに円弧状をなしており、永久磁石は、ラジアル配向型磁石であることを特徴とする。
【0018】
これによると、アークは、まず永久磁石の磁力によって円弧状に引き延ばされるため、その後収容室壁面における円弧状の部位で収容室壁面に沿ってよりスムーズに伸長することができる。
【0019】
請求項
5に記載の発明では、請求項1ないし
3のいずれか1つに記載の電磁継電器において、永久磁石は、パラレル配向型磁石であることを特徴とする。
【0020】
これによると、アークは、永久磁石の磁力によって直線的に引き延ばされて収容室壁面に衝突し、収容室壁面にて冷却されるため、アーク遮断性能が向上する。
【0021】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
【0025】
図1、
図2に示すように、本実施形態に係る電磁継電器は、ナイロン等の樹脂よりなる略円筒状のベース11を備えている。このベース11には、円柱状空間である第1収容室111が径方向中心部に形成され、この第1収容室111には窒素等の不活性ガスが充填されている。また、ベース11には、円筒状空間である第2収容室112が第1収容室111の径方向外側に形成されている。
【0026】
第1収容室111と第2収容室112は円筒状の隔壁113にて隔てられている。換言すると、隔壁113の内周面は、後述する可動子の往復動方向(
図1の紙面上下方向、
図2の紙面垂直方向)に沿って見たときに全域が円弧状をなしている。
【0027】
そして、第1収容室111および第2収容室112の開口部を塞ぐようにして、樹脂製のカバー12がベース11の一端側に結合されている。
【0028】
ベース11には、導電金属製の板材よりなる一対の固定子13が固定されている。固定子13は、一端側が第1収容室111内に位置し、他端側が外部空間に突出している。固定子13における第1収容室111側の端部には、導電金属製の固定接点14がかしめ固定されている。固定子13における外部空間側の端部は、外部電気回路(図示せず)に接続されている。なお、固定子13および固定接点14は、本発明の固定接触子を構成している。
【0029】
通電時に電磁力を発生する円筒状のコイル15が、ベース11の他端側に配置されている。ベース11とコイル15との間には、磁性体金属材料よりなる鍔付き円筒状のプレート16が配置されている。コイル15の反ベース側および外周側には、磁性体金属材料よりなるヨーク17が配置されている。なお、プレート16およびヨーク17はベース11に固定されている。
【0030】
コイル15の内周側空間には、磁性体金属材料よりなる固定コア18が配置され、固定コア18はヨーク17に保持されている。
【0031】
コイル15の内周側空間内において、固定コア18に対向する位置には、磁性体金属製の可動コア19が配置されている。可動コア19はプレート16の円筒部にて摺動自在に保持されている。
【0032】
また、固定コア18と可動コア19との間には、可動コア19を反固定コア側に付勢する復帰ばね20が配置されている。そして、コイル通電時には、可動コア19は復帰ばね20に抗して固定コア18側に吸引される。
【0033】
なお、プレート16、ヨーク17、固定コア18、および可動コア19は、コイル15により誘起された磁束の磁路を構成する。
【0034】
可動コア19には、金属製のシャフト21が貫通して固定されている。シャフト21の一端は反固定コア側に向かって延びており、このシャフト21の一端側の端部には、電気絶縁性に富む樹脂よりなる絶縁碍子22が嵌合して固定されている。
【0035】
第1収容室111には、導電金属製の板材よりなる可動子23が配置されている。この可動子23とカバー12との間には、可動子23を固定子13側に付勢する接圧ばね24が配置されている。
【0036】
可動子23には、固定接点14に対向する位置に導電金属製の可動接点25がかしめ固定されている。そして、可動子23および可動接点25は、コイル15への通電状態に応じて
図1の紙面上下方向に往復動するようになっている。以下、可動子23および可動接点25の往復動方向を、可動接触子往復動方向という。なお、可動子23および可動接点25は、本発明の可動接触子を構成している。また、固定接点14および可動接点25は、本発明の接離部を構成している。
【0037】
第2収容室112には、固定接点14と可動接点25とが接離する接離部に磁界を形成してアークを引き延ばす一対の永久磁石26が配置されている。これらの永久磁石26は、一対の接離部の並び方向(
図1、
図2の紙面左右方向)に沿って対向配置されている。以下、一対の接離部の並び方向を、接離部並び方向という。
【0038】
また、永久磁石26は、可動接触子往復動方向に沿って見たときに円弧状をなしている。そして、永久磁石26を隔壁113の円弧状の外周面に沿わせて配置することにより、電磁継電器の小型化を図っている。
【0039】
さらに、永久磁石26はラジアル配向型磁石であり、矢印Bは磁束の流れを示している。
【0040】
次に、本実施形態に係る電磁継電器の作動を説明する。まず、コイル15に通電すると、可動コア19、シャフト21、および絶縁碍子22が、電磁力により復帰ばね20に抗して固定コア18側に吸引され、可動子23は接圧ばね24に付勢されて可動コア19等に追従して移動する。これにより、可動接点25が対向する固定接点14に当接し、可動子23を介して一対の固定子13間が導通する。因みに、可動接点25が固定接点14に当接した後、さらに可動コア19等が固定コア18側に向かって移動し、絶縁碍子22と可動子23は離れる。
【0041】
一方、コイル15への通電が遮断されると、復帰ばね20により接圧ばね24に抗して可動コア19等や可動子23が反固定コア側に付勢される。これにより、可動接点25が固定接点14から離され、一対の固定子13間の導通が遮断される。
【0042】
ここで、永久磁石26はラジアル配向型磁石であるため、開極時に接離部に発生するアークCは可動接触子往復動方向に沿って見たときに円弧状に引き延ばされる。
【0043】
そして、アークCは、円弧状に引き延ばされる過程で隔壁113に当たった後、隔壁113の円弧状の内周面に案内されてスムーズに伸長する。その結果、所定のアーク電圧が得られる。
【0044】
また、アークCの伸長により第1収容室111内にガス流れが発生し、そのガス流れにより接離部の金属蒸気が速やかに掃気される。さらに、上記のガス流れにより接離部に冷えたガスが流入し、アークCが冷却される。
【0045】
以上述べたように、本実施形態によると、アークCは、第1収容室111内でスムーズに伸長することができるため、接離部からアークCが最初に当たる隔壁113の内周面までの長さを短くしても、所定のアーク電圧を得ることができる。その結果、所定のアーク電圧を確保しつつ、電磁継電器を小型にすることができる。
【0046】
また、第1収容室111のガス流れにより接離部の金属蒸気が速やかに掃気されるため、電界強度が大きくなり、アーク遮断性能が向上する。
【0047】
さらに、第1収容室111のガス流れにより接離部に冷えたガスが流入し、アークCが冷却されるため、アーク遮断性能が向上する。
【0048】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態は、アーク分離部材を追加した点が第1実施形態と異なり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0049】
図3において、矢印C1は力行時のアークを示し、矢印C2は回生時のアークを示している。そして、第1収容室111における力行時のアークC1の引き延ばし経路中、および第1収容室111における回生時のアークC2の引き延ばし経路中に、金属(例えばアルミニウム)よりなる板状のアーク分離部材30を配置している。
【0050】
前述したように、電解強度は、陰極と陽極のごく近辺では大きく、その間の空間では小さい。したがって、本実施形態では、各アークC1、C2はアーク分離部材30により2つに分離されるため、全体のアーク電圧が高くなる。その結果、所定のアーク電圧を確保しつつ、電磁継電器をさらに小型にすることができる。
【0051】
また、アークC1、C2の伸長により発生するガス流れは、板状のアーク分離部材30により整流されるため、接離部の金属蒸気は一層確実に掃気される。
【0052】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。なお、本実施形態は、アーク分離部材およびトラッパを追加した点が第1実施形態と異なり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0053】
図4において、矢印C1は力行時のアークを示し、矢印C2は回生時のアークを示している。そして、第1収容室111における力行時のアークC1の引き延ばし経路中、および第1収容室111における回生時のアークC2の引き延ばし経路中に、金属(例えばアルミニウム)よりなる板状のアーク分離部材30を配置している。
【0054】
また、第1収容室111には、金属蒸気を捕捉するトラッパ40を2つ配置している。このトラッパ40は、金属製の板からなり、可動接触子往復動方向および接離部並び方向に対してともに直交する方向に位置し、且つ隔壁113の内周面に密着している。
【0055】
そして、開極時にガス流れにより一方の接離部から掃気された金属蒸気は、他方の接離部に向かって流れる途中でトラッパ40に当たって冷却され、トラッパ40に捕捉される。
【0056】
したがって、一方の接離部から掃気された金属蒸気が他方の接離部に流入することを防止することができる。また、金属蒸気をトラッパ40にて捕捉することにより、ガスの冷却能力劣化を防止することができる。
【0057】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、永久磁石26としてラジアル配向型磁石を用いたが、永久磁石26としてパラレル配向型磁石を用いてもよい。この場合、アークC、C1、C2は、永久磁石26の磁力によって直線的に引き延ばされて隔壁113に衝突した後、隔壁113の円弧状の内周面に案内されて伸長する。そして、アークC、C1、C2は、隔壁113に衝突した際に隔壁113にて冷却されるため、アーク遮断性能が向上する。
【0058】
また、上記各実施形態では、隔壁113の内周面は可動接触子往復動方向に沿って見たときに全域を円弧状にしたが、隔壁113の内周面は、可動接触子往復動方向に沿って見たときに、対向する2つの直線状の面とその2つの直線状の面の端部を繋ぐ2つの円弧状の面からなる、長円状にしてもよい。この場合、隔壁113の内周面のうち少なくともアークC、C1、C2が最初に当たる部位は、可動接触子往復動方向に沿って見たときに円弧状の面にする。
【0059】
また、上記各実施形態では、固定子13に、別部材の固定接点14をかしめ固定したが、固定子13に、可動子23側に向かって突出する突起部を例えばプレス加工にて形成し、その突起部を固定接点としてもよい。
【0060】
同様に、上記各実施形態では、可動子23に、別部材の可動接点25をかしめ固定したが、可動子23に、固定子13側に向かって突出する突起部を例えばプレス加工にて形成し、その突起部を可動接点としてもよい。
【0061】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0062】
また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【0063】
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0064】
また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。
【0065】
また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。