(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照し、本発明の液体吐出装置の一実施形態である記録装置につい
て説明する。この記録装置は、紫外線硬化型インク(以下「UVインク」という)をイン
クジェット方式で吐出することにより、ワークである記録媒体に所望の画像を記録するも
のである。記録媒体としては、例えば、厚紙、プラスチック板、ガラス板、セラミック板
などが用いられる。
また、以下では、図に示した「X」「Y」「Z」を用いて説明するが、これらの方向は
説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されるもので
はない。また、X軸方向を「左右方向」といい、Y軸方向を「前後方向」といい、Z軸方
向を「上下方向」ともいう。
なお、X軸方向は、「第2方向」の一例であり、Y軸方向は、「第1方向」の一例であ
る。
【0019】
図1に示すように、記録装置1は、いわゆるフラットベッドタイプのものである。記録
装置1は、記録媒体Aが載置されるステージ部2と、ステージ部2に載置された記録媒体
Aに対し、Y軸方向に間欠移動しながら記録を行う記録部3と、各部を制御する制御部(
図示省略)と、を備えている。また、記録装置1は、記録部3をY軸方向に移動させるY
軸移動部4(
図2参照)を備えている。Y軸移動部4は、ステージ部2の下方に設けられ
ている。
なお、Y軸移動部4は、「第1移動部」の一例である。
【0020】
ステージ部2の上面には、複数の吸引孔が縦横に設けられている(図示省略)。ステー
ジ部2は、吸引孔に吸引力を付与するステージファン(図示省略)を有し、上面に載置さ
れた記録媒体Aを、吸引孔を通じて吸引する。また、ステージ部2の前端部には、操作パ
ネル5が設けられている。操作パネル5には、後述する送風排気ファン36をON/OF
F切替え操作等するためのファン駆動スイッチ46が設けられている。
【0021】
図2に示すように、Y軸移動部4は、モーター駆動のY軸移動機構6と、左右2つのY
軸ガイド7とを備えている。Y軸移動機構6は、Y軸方向に延在するボールネジ8と、ボ
ールネジ8に螺合すると共に、記録部3の連結フレーム32(後述する)に連結されたナ
ット部材10とを備えている。各Y軸ガイド7は、リニアガイドにより構成されており、
ステージ部2に対し、記録部3をY軸方向にスライド可能に支持する。ナット部材10が
回転しながらボールネジ8に沿ってY軸方向に往復移動することで、記録部3が、左右の
Y軸ガイド7にガイドされながら、Y軸方向に往復移動する。
【0022】
図3ないし
図5に示すように、記録部3は、ステージ部2を囲い込む「口」の字状(方
形状)のフレーム部11と、フレーム部11に支持された記録処理部12と、これらを覆
う装置カバー13と、を備えている。さらに、記録部3は、装置カバー13内にイオンを
生成するイオナイザー14と、装置カバー13内の後端部に設けられた3つの送風排気フ
ァン36とを備えている。
なお、記録処理部12は、「ワーク処理部」の一例であり、装置カバー13は、「カバ
ー部」の一例である。
【0023】
記録処理部12は、記録媒体Aに対して画像を記録する記録ユニット16と、記録ユニ
ット16をX軸方向に往復動させるX軸移動部17と、を備えている。記録処理部12は
、詳細は後述するが、X軸移動部17により、ステージ部2に載置された記録媒体Aの上
面に沿ってX軸方向に移動しながら、UVインクの吐出および紫外線の照射を行う動作と
、改行動作、すなわち記録部3がY軸方向に移動する動作と、を交互に行うことで、記録
媒体Aに画像を記録する記録処理を実行する。
【0024】
記録ユニット16は、液体吐出ユニット37と、液体吐出ユニット37の右側および左
側に設けられた2つの紫外線照射ユニット19と、を有している。記録ユニット16が左
方に移動する際には、液体吐出ユニット37が吐出したUVインクに対し、右側の紫外線
照射ユニット19が紫外線を照射し、記録ユニット16が右方に移動する際には、液体吐
出ユニット37が吐出したUVインクに対し、左側の紫外線照射ユニット19が紫外線を
照射する。
なお、液体吐出ユニット37は、「液体吐出部」の一例である。
【0025】
液体吐出ユニット37は、UVインクを吐出するインクジェットヘッド(図示省略)を
搭載し、インクジェットヘッドには、図示しないが、インクタンクからインクチューブを
介して、UVインクが供給される。
各インクジェットヘッドは、圧電素子(ピエゾ素子)により吐出駆動されるインクジェ
ットヘッドであり、Y軸方向に延在する色別複数のノズル列(図示省略)を有している。
すなわち、複数色のUVインクを吐出可能に構成されている。また、インクジェットヘッ
ドは、そのノズル面が記録媒体Aと対面し、UVインクを下方に吐出する。なお、本実施
形態においては、ピエゾ方式のインクジェットヘッドを用いたが、これに限るものではな
く、例えばサーマル方式や静電方式のインクジェットヘッド等を用いても良い。
【0026】
紫外線照射ユニット19は、記録媒体Aに対峙する紫外線照射ランプ20と、紫外線照
射ランプ20の上部に配置され、紫外線照射ランプ20を冷却するフィン式のヒートシン
ク23と、ヒートシンク23の上側に配置され、ヒートシンク23を通る気流を生じさせ
る冷却用ファン21と、これらが収容された照射ケース22とを備えている。
【0027】
紫外線照射ランプ20は、紫外線を照射する複数の紫外線照射LEDで構成されている
。紫外線照射ランプ20は、インクジェットヘッドによって記録媒体Aに吐出されたUV
インクに紫外線を照射することで、当該UVインクが硬化し、記録媒体Aに定着する。
【0028】
図6および
図7に示すように、冷却用ファン21は、照射ケース22内に吸気し、ヒー
トシンク23(送風方向の下流側)に向けて風を送り、照射ケース22外へ排気する。紫
外線照射ユニット19外では、前側を向いた排気口24から、上向き且つ前側向きの吸気
口25に流れる気流が生まれる。すなわち、紫外線照射ユニット19の前側で循環する気
流を生じさせている。
【0029】
ヒートシンク23は、紫外線照射ランプ20の上面に設けられているフィン式の放熱器
である。冷却用ファン21からヒートシンク23への送風により、紫外線照射ランプ20
で発生した熱が放熱される。これにより、紫外線照射ランプ20を効果的に冷却すること
ができる。
【0030】
X軸移動部17は、記録ユニット16をX軸方向に往復動させるX軸移動機構18と、
記録ユニット16の往復動をガイドする上下一対のガイド軸45とを有している。X軸移
動機構18は、ベルト機構で構成されており、記録ユニット16が連結されたタイミング
ベルト26と、タイミングベルト26が掛け渡された駆動プーリー27および従動プーリ
ー28と、駆動プーリー27を駆動する正逆回転可能なX軸モーター(図示省略)と、で
構成されている。X軸モーターが正逆回転することで、タイミングベルト26が正逆走行
し、記録ユニット16が、ステージ部2に載置された記録媒体Aの上面に沿ってX軸方向
に往復動する。
なお、X軸移動部17は、「第2移動部」の一例である。
【0031】
フレーム部11は、ステージ部2上を横断するようにX軸方向に延在し、X軸移動部1
7を支持する横架フレーム30と、それぞれステージ部2の下方まで延在し、横架フレー
ム30を左右両側で支持する左右一対のサイドフレーム31と、ステージ部2の下側でサ
イドフレーム31同士を連結する連結フレーム32とを備えている。すなわち、横架フレ
ーム30、一対のサイドフレーム31および連結フレーム32により、フレーム部11は
、構成されている。また、各サイドフレーム31と連結フレーム32との間には、記録ユ
ニット16を、ステージ部2に対してZ軸方向に移動させる昇降移動部33が組み込まれ
ている。昇降移動部33により、ステージ部2に載置された記録媒体Aと記録ユニット1
6に搭載されたインクジェットヘッドとのギャップGが調整される。
【0032】
装置カバー13は、下方が開放された略直方体状である。装置カバー13は、フレーム
部11および記録処理部12を内部に収容している。装置カバー13内には、インクジェ
ットヘッドがUVインクを吐出する際に生じたインクミストが漂っている。インクジェッ
トヘッドに供給されたUVインクは、インクチューブとの流動帯電により電荷を帯びてい
る。そのため、装置カバー13内を漂っているインクミストも帯電している。
【0033】
イオナイザー14は、記録処理部12と後述する絞り部34との間に設けられている。
イオナイザー14は、例えばAC(交流)方式により、コロナ放電を行って空気をイオン
化し、空気中(気体中)にイオンを生成する。イオナイザー14により生成されたイオン
は、後述する送風排気ファン36からの送風により、装置カバー13内へ拡散する。
また、イオナイザー14は、「イオン生成部」の一例である。
【0034】
3つの送風排気ファン36は、イオナイザー14により生成されたイオンを装置カバー
13内に拡散し、また、装置カバー13内のインクミストを装置カバー13外に排出する
ためのものである。本記録装置1では、装置カバー13の前面壁38aとステージ部2(
またはこれに支持された記録媒体A)との間の開口部分39から、上記ギャップGを通っ
て、装置カバー13の後面壁38bに設けられた3つの通気口40に至る給排気流路Rが
形成されている。3つの通気口40は、X軸方向に並んで配置されている。送風排気ファ
ン36は、この給排気流路R上において、前後方向の新鮮エアーの気流を生じさせ、当該
気流に載せてインクミストを装置カバー13外に排気する。なお、送風排気ファン36の
個数および通気口40の個数は、特に限定されるものではない。
なお、送風排気ファン36は、「送風排気部」の一例である。
【0035】
3つの送風排気ファン36は、各通気口40に配置されることで、X軸方向に並んで配
置されている。各送風排気ファン36は、プロペラファンに代表される軸流ファンで構成
されており、回転方向が正逆切り替わることで、通気口40から給気してイオナイザー1
4に向けて送風する送風状態と、装置カバー13内の空気を通気口40から排気する排気
状態とが切り替わる。各送風排気ファン36のON/OFFの切替え操作や、送風排気フ
ァン36の回転方向の切替え操作は、操作パネル5に設けられたファン駆動スイッチ46
により操作される。制御部は、ファン駆動スイッチ46が受け付けた操作に基づいて、送
風排気ファン36のON/OFFを切替え、また、送風排気ファン36の回転方向を切替
える。そして、送風排気ファン36が送風状態を取ることで、イオナイザー14に風が送
られるため、イオナイザー14により生成されたイオンが、装置カバー13内に拡散する
。また、送風排気ファン36が排気状態を取ることで、液体吐出ユニット37がUVイン
クを吐出した際に発生したインクミストが、装置カバー13外へ排出される。
【0036】
制御部は、液体吐出ユニット37がUVインクを吐出する際には、送風排気ファン36
を排気状態とし、液体吐出ユニット37がUVインクを吐出していない際には、送風排気
ファン36を送風状態とする。すなわち、制御部は、記録部3による記録動作の実行時に
は、送風排気ファン36を排気状態とし、記録部3による記録動作の非実行時には、送風
排気ファン36を送風状態とする。
【0037】
流路形成部材42は、装置カバー13の後面壁38bに近接して配置されており、前壁
42a、後壁42b、底壁42cおよび両側壁42dから成る箱型を有している。そして
、流路形成部材42の前壁42aには、ガラリ状のスリット開口部35が9つ設けられて
いる。9つのスリット開口部35は、X軸方向に並んで配置されている。9つのスリット
開口部35により、絞り部34が構成されている。絞り部34は、給排気流路Rを絞り、
その下流側の気流を増速させる。なお、開口部分39の開口面積は、絞り部34の総開口
面積より広くなっている。また、絞り部34は、上記ギャップGよりも上側に配置されて
いる。
なお、スリット開口部35の個数についても、特に限定されるものではない。
【0038】
また、流路形成部材42の天壁部分は、Y軸方向における横架フレーム30の後側に配
置され、インクチューブやケーブルを保持するチューブ保持部43によって塞がれている
。すなわち、流路形成部材42は、チューブ保持部43と共に、給排気流路Rのうちの、
3つの絞り部34と3つの送風排気ファン36との間の流路を構成している。
【0039】
以上のような構成によれば、送風排気ファン36が送風状態になると、記録処理部12
の周囲に、絞り部34を通過することで流速が高められた気流が流れる。このため、送風
排気ファン36が送風状態となる液体の非吐出時には、流速が高められた気流により、記
録処理部12の周囲にイオンを効率良く拡散することができる。また、流速の速い気流に
より、インクミストを吹き払うように強力に除去することができる。一方、送風排気ファ
ン36が排気状態になると、記録処理部12の周囲に、絞り部34を通過する前の、比較
的流速の遅い気流が流れる。このため、送風排気ファン36が排気状態となるUVインク
の吐出時には、比較的流速の遅い気流により、吐出したUVインクの飛行曲がりやインク
ミストの記録媒体Aへの吹き付けを防止しつつ、インクミストを装置カバー13外へ排出
することにより、装置カバー13内のインクミストを除去することができる。
【0040】
なお、本実施形態において、送風排気ファン36の前後(上下流側)のいずれか一方に
換気フィルターを設ける構成であっても良い。この場合、換気フィルターにインクミスト
が回収されることで、装置カバー13内のインクミストを除去することができる。また、
各スリット開口部35に絞り量(開口量)を調整するシャッターを備える構成であっても
良い。
【0041】
またさらに、本実施形態においては、記録ユニット16をXY方向に移動して記録を行
う記録装置1に本発明を適用したが、ラインヘッドを有した記録ユニット16を、Y軸方
向のみに移動して記録を行う記録装置1(いわゆるラインプリンター)に本発明を適用す
る構成であっても良い。
【0042】
以上、本発明の一実施形態における記録装置1によれば、送風排気ファン36が送風状
態を取ることで、イオナイザー14に風が送られるため、イオナイザー14により生成さ
れたイオンが、装置カバー13内に拡散する。これにより、装置カバー13内を除電する
ことができる。また、拡散したイオンが、装置カバー13の下方開放部を介して、記録媒
体Aに達するため、記録媒体Aをも除電することができる。一方、送風排気ファン36が
排気状態を取ることで、液体吐出ユニット37がインクを吐出した際に発生したミストが
、装置カバー13外に排出される。このように、イオンの拡散のための送風およびインク
のミストの排出のための排気を、同じ送風排気ファン36により行うことができる。
したがって、イオンの拡散および液体のミスト排出のための部品点数を削減することが
できる。
【0043】
なお、液体吐出装置としては、特に限定されるものではないが、厚紙、プラスチック板
などの記録媒体に対し、インクを吐出することで画像を記録する記録装置や、ガラス基板
に対して機能液を吐出する機能液滴吐出装置を例示することができる。前者の場合、イン
クとしては、例えば、一般的な水性インクや油性インクのほか、X線、紫外線、可視光線
、赤外線等の照射により硬化する電磁波硬化型インクを用いることができる。後者の場合
は、機能液としては、例えば、液晶表示デバイスを形成するための液晶表示デバイス形成
用材料、有機EL表示デバイスを形成するための有機EL形成用材料、電子回路の配線パ
ターンを形成するための配線パターン形成用材料である。
液体吐出部としては、特に限定されるものではないが、例えばインクジェット方式によ
り液体を吐出するものを用いることができる。
イオン生成部としては、例えば、イオナイザーを用いることができる。イオナイザーと
しては、コロナ放電式、X線照射式など、各種方式のものを用いることができる。
【0044】
なお、本実施形態において、各送風排気ファン36のON/OFFの切替え操作や、送
風排気ファン36の回転方向の切替え操作は、操作パネル5に設けられたファン駆動スイ
ッチ46により操作されるようになっていたが、これに限られるものではない。制御部が
自動で各送風排気ファン36のON/OFFの切替えや送風排気ファン36の回転方向の
切替えを行ってもよい。