(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現像装置での現像剤量の偏りは、現像剤を現像ローラに供給する供給槽においてだけでなく、現像剤の撹拌が行われる撹拌槽においても生じ得る。撹拌槽内の現像剤量の偏りは、供給槽内の現像剤量の偏りにも影響する。そのため、現像剤の補給量や排出量を適切に調整するためには、供給槽内の現像剤量だけでなく、撹拌槽内の現像剤量も考慮されることが好ましい。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑みて、現像剤の補給量及び排出量の少なくとも一方を、より適切に調整することが可能となる現像装置、及びこれを備えた画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る現像装置は、現像剤を撹拌する撹拌槽と、現像剤を現像ローラへ供給する供給槽とを有し、前記撹拌槽と前記供給槽を含む循環路で現像剤を循環搬送する現像装置であって、前記撹拌槽の上流側に現像剤を補給して前記循環路へ合流させる補給手段と、前記供給槽の下流側で前記循環路から分岐した現像剤を排出させる排出手段と、前記撹拌槽の下流寄りである第1位置での現像剤量を検知する第1検知手段と、前記供給槽の下流寄りである第2位置での現像剤量を検知する第2検知手段と、第1検知手段及び第2検知手段の検知結果に基づいて、現像剤の補給量
と排出量の
両方の調整を行う調整手段とを備えた構成とする。
【0009】
本構成によれば、現像剤の補給量
と排出量の
両方を、より適切に調整することが可能となる。なお、撹拌槽或いは供給槽の下流寄りとは、その中央よりも下流側であり、最下流である場合も含まれる。また、第1検知手段や第2検知手段による現像剤量の検知の形態は、現像剤量を直接的に検知する形態に限られず、現像剤量を間接的に検知する形態(例えば、現像剤の液面の位置を検知する形態など)であってもよい。
【0010】
また、上記構成としてより具体的には、前記調整手段は、第1検知手段及び第2検知手段の各検知結果を所定の基準値と比較し、該比較の結果に基づいて前記調整を行う構成としてもよい。
【0011】
また、上記構成としてより具体的には、前記調整手段は、第1検知手段の検知結果が前記基準値より大きく、かつ、第2検知手段の検知結果が前記基準値より小さい場合に、前記調整の処理として、前記排出量を減少させる第1調整処理と、第1調整処理の開始から所定の第1時間の経過後に前記排出量を増大させる第2調整処理とを行う構成としてもよい。
【0012】
また、上記構成としてより具体的には、前記調整手段は、第1検知手段の検知結果が前記基準値より大きく、かつ、第2検知手段の検知結果が前記基準値より小さい場合に、前記調整の処理として、前記補給量を減少させる第3調整処理と、第3調整処理の開始から所定の第2時間の経過後に前記補給量を増大させる第4調整処理とを行う構成としてもよい。
【0013】
また、上記構成としてより具体的には、前記調整手段は、第1検知手段の検知結果が前記基準値より小さく、かつ、第2検知手段の検知結果が前記基準値より大きい場合に、前記調整の処理として、前記排出量を増大させる第5調整処理と、第5調整処理の開始から所定の第1時間の経過後に前記排出量を減少させる第6調整処理とを行う構成としてもよい。
【0014】
また、上記構成としてより具体的には、前記調整手段は、第1検知手段の検知結果が前記基準値より小さく、かつ、第2検知手段の検知結果が前記基準値より大きい場合に、前記調整の処理として、前記補給量を増大させる第7調整処理と、第7調整処理の開始から所定の第2時間の経過後に前記補給量を減少させる第8調整処理とを行う構成としてもよい。
【0015】
また、上記構成としてより具体的には、第1時間は、第1位置から第2位置へ現像剤が搬送される時間に設定されている構成としてもよい。また、第2時間は、第2位置から前記合流の位置へ現像剤が搬送される時間に設定されてもよい。
【0016】
また、上記構成としてより具体的には、前記調整手段は、第1検知手段と第2検知手段の検知結果がともに前記基準値より大きい場合に、前記調整の処理として、第1検知手段又は第2検知手段の検知結果が前記基準値を下回るまで、前記排出量を増大させて前記補給量を減少させておく処理を行う構成としてもよい。
【0017】
また、上記構成としてより具体的には、前記調整手段は、第1検知手段と第2検知手段の検知結果がともに前記基準値より小さい場合に、前記調整の処理として、第1検知手段又は第2検知手段の検知結果が前記基準値を上回るまで、前記排出量を減少させて前記補給量を増大させておく処理を行う構成としてもよい。
【0018】
また、上記構成としてより具体的には、前記調整手段は、現像剤が排出される排出口の開口幅を調整することにより、前記排出量を調整する構成としてもよい。また、上記構成としてより具体的には、前記調整手段は、前記循環路における現像剤の搬送速度又は流動性に影響を与える要因を監視し、前記監視の結果に応じて前記調整の処理の内容を変更する構成としてもよい。
【0019】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記構成の現像装置を備える構成とする。本構成によれば、上記構成の現像装置の利点を享受することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る現像装置によれば、現像剤の補給量
と排出量の
両方を、より適切に調整することが可能となる。また、本発明に係る画像形成装置によれば、本発明に係る現像装置の利点を享受することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、タンデム型デジタルカラープリンター(現像装置を利用する画像形成装置の一形態であり、以下、単に「プリンター」という)を例に挙げ、各図に基づいて説明する。但し本発明の内容は、当該実施形態に何ら限定されるものではない。
【0023】
[プリンターの全体構成]
図1は、本実施形態に係るプリンター10の全体構成図である。プリンター10は、その内部のほぼ中央部に中間転写ベルト12を備えている。中間転写ベルト12は、半導電性材料からなっており、3つのローラ(14,16,18)の外周部に支持され、矢印A方向に回転駆動されるようになっている。
【0024】
中間転写ベルト12の下部水平部の下には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色トナーにそれぞれ対応する4つの作像ユニット(作像手段)(20Y,20M,20C,20K)が、中間転写ベルト12に沿って並んで配置されている。
【0025】
各作像ユニット(20Y,20M,20C,20K)は、感光体ドラム(22Y,22M,22C,22K)をそれぞれ有している。各感光体ドラム(22Y,22M,22C,22K)の周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電器(24Y,24M,24C,24K)と、プリントヘッド部(26Y,26M,26C,26K)と、現像装置(28Y,28M,28C,28K)と、一次転写ローラ(一次転写部材)(30Y,30M,30C,30K)と、クリーナー(32Y,32M,32C,32K)とがそれぞれ配置されている。
【0026】
帯電器(24Y,24M,24C,24K)は、感光体ドラム(22Y,22M,22C,22K)の表面を均一帯電させるものである。プリントヘッド部(26Y,26M,26C,26K)は、均一帯電した感光体ドラム表面を各色画像データに応じて露光することにより、静電潜像を形成するものである。現像装置(28Y,28M,28C,28K)は、感光体ドラム表面に形成された静電潜像を各色トナーで現像して、トナー画像とするものである。
【0027】
一次転写ローラ(30Y,30M,30C,30K)は、中間転写ベルト12を挟んで各感光体ドラム(22Y,22M,22C,22K)に対向する位置に、中間転写ベルト12の内側に接触してそれぞれ設けられ、感光体ドラム表面に形成されたトナー画像を中間転写ベルト12上に一次転写するためのものである。クリーナー(32Y,32M,32C,32K)は、一次転写後に感光体ドラム表面に残留するトナーを回収して、クリーニングするものである。
【0028】
ここで、現像装置(28Y,28M,28C,28K)には、図示しないトナーボトル内に収容されたトナーとキャリアからなる現像剤が補給される。また、現像装置(28Y,28M,28C,28K)には、現像剤の排出口が設けられており、現像装置内で過剰となった現像剤を廃トナーボックス40内に排出するトリクル現像方式(AR方式)の機構が設けられている。現像装置(28Y,28M,28C,28K)の構成や動作については、改めて詳細に説明する。
【0029】
プリントヘッド部(26Y,26M,26C,26K)は、感光体ドラムの軸方向と平行な主走査方向に並べられた多数のLEDから構成されている。中間転写ベルト12のローラ18で支持された部分の外側には、二次転写ローラ(二次転写部材)34が圧接されている。
【0030】
二次転写ローラ34と中間転写ベルト12との接触部は、転写領域36となっている。二次転写ローラ34は、図示しない退避機構により、中間転写ベルト12と非接触となる位置へ退避可能になっている。
【0031】
一次転写ローラ(30Y,30M,30C,30K)には、不図示の電源により一次転写電圧V1が印加される。この一次転写電圧V1の作用により、各作像ユニット(20Y,20M,20C,20K)の感光体ドラム(22Y,22M,22C,22K)の表面に形成された各色トナー画像が静電的に引き付けられて、中間転写ベルト12上に一次転写される。
【0032】
また、二次転写ローラ34は不図示の電源により二次転写電圧V2が印加され、中間転写ベルト12を支持するローラ18は接地されている。この二次転写電圧V2の作用により、中間転写ベルト12上に形成されたトナー画像は、後述するように転写領域36に搬送されてきた用紙に静電的に引き付けられて、二次転写される。
【0033】
中間転写ベルト12のローラ16で支持された部分には、クリーナー38(クリーニングブラシローラ)が圧接されている。このクリーナー38は、二次転写後に中間転写ベルト12上に残留するトナーを掻きとって、廃トナーボックス40内に回収するためのものである。クリーナー38もまた、二次転写ローラ34と同様に、図示しない退避機構により中間転写ベルト12と非接触となる位置へ退避可能になっている。
【0034】
プリンター10の下部には、給紙カセット42が着脱可能に配置されている。給紙カセット42内に積載収容された用紙Sは、給紙ローラ44の回転によって最上部のものから1枚ずつ搬送路46に送り出されることになる。
【0035】
搬送路46は、給紙カセット42から、タイミングローラ対48のニップ部、二次転写領域36、及び定着ユニット50を通って排紙トレイ11まで伸びている。タイミングローラ対48は、給紙カセット42から送られてきた用紙Sを、中間転写ベルト12上の画像と同期をとって転写領域36に給紙するためのものである。
【0036】
タイミングローラ対48の近傍には、タイミングセンサー52が配置されている。タイミングセンサー52は、給紙カセット42から搬送路46へ送り出された用紙Sの先端がタイミングローラ対48でニップされたことを検出するためのものである。タイミングセンサー52により用紙Sの先端が検出されると、タイミングローラ対48はその回転を一旦停止し、その後、中間転写ベルト12上のトナー画像と同期をとって用紙Sを転写領域36に給紙する。
【0037】
また、タイミングローラ対48の一方のローラ48aに対向して、紙厚センサー54が配置されている。紙厚センサー54は、タイミングローラ対48に用紙先端がニップされたときの前記ローラ48aの移動量を検知するもので、これにより用紙が普通紙であるか、厚みのある厚紙又はOHPシートであるかを判別できるようになっている。
【0038】
定着ユニット50は、一対のローラ(56,58)に支持されて矢印B方向に回転駆動される定着ベルト60と、この定着ベルト60を介してローラ56に圧接されて矢印方向に従動回転する定着口−ラ62を備えている。また、トナー画像が二次転写された用紙が通過する定着ベルト60と定着ローラ62とのニップ部が、定着領域64となっている。定着ベルト60は、図示しないヒータにより加熱される。
【0039】
[プリンターの動作概略]
次に、以上の構成からなるプリンター10の動作について説明する。外部装置(例えばパソコン)からプリンター10の画像信号処理部(図示せず)に画像信号が入力されると、画像信号処理部ではこの画像信号をイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックに色変換したデジタル画像信号を作成し、この信号をプリントヘッド用LEDドライブ回路に伝達する。
【0040】
このドライブ回路は、入力されたデジタル信号に基づいて、各作像ユニット(20Y,20M,20C,20K)のプリントヘッド部(26Y,26M,26C,26K)を発光させて露光を行う。この露光は、プリントヘッド部(26Y,26M,26C,26K)の順にそれぞれ時間差をもって行われる。これにより、各感光体ドラム(22Y,22M,22C,22K)の表面に各色用の静電潜像がそれぞれ形成される。
【0041】
各感光体ドラム(22Y,22M,22C,22K)上に形成された静電潜像は、各現像装置(28Y,28M,28C,28K)によりそれぞれ現像されて各色のトナー画像となる。そして各色のトナー画像は、正極性の一次転写電圧が印加された各一次転写ローラ(30Y,30M,30C,30K)の作用により、矢印A方向に移動する中間転写ベルト12上に順次重ね合わせて一次転写される。
【0042】
このようにして、中間転写ベルト12上に形成された重ね合わせトナー画像は、中間転写ベルト12の移動にしたがって転写領域36に達する。重ね合わされた各色トナー画像は、一次転写電圧と同極性の二次転写電圧が印加された二次転写口−ラ34の作用により、給紙カセット42から搬送路46に送り出される。そしてこの各色トナー画像は、タイミングローラ対48の駆動により、転写領域36を通過する用紙Sに一括して二次転写される。なお、二次転写後に中間転写ベルト12上に残留するトナーは、正極性のクリーニング電流が印加されたクリーナー38の作用により回収され、クリーニングユニットに移動する。
【0043】
トナー画像が二次転写された用紙Sは、搬送路46を通って定着ユニット50に送られ、そこで定着領域64を通過することにより、トナー画像が用紙Sに加熱定着される。そして、用紙Sは排紙トレイ11に排出される。
【0044】
カラー画像形成動作はこのようにして行われるが、モノクロ画像の場合には入力されたモノクロ画像データに基づき、作像ユニット20Kだけが動作して中間転写ベルト12上にブラックトナー画像が形成される。その後は同様に、ブラックトナー画像は転写領域36で用紙Sに二次転写され、定着ユニット50で加熱定着されて、用紙Sが排紙トレイ11に排出される。
【0045】
[現像装置の構成及び動作]
先述した各現像装置(28Y,28M,28C,28K)は、基本的に同一の構成であり、同じ動作を行うように設定されている。以下、当該現像装置(現像装置28と総称する)の構成及び動作について詳細に説明する。
図2は、現像装置28の概略断面図(調整手段92の説明を含む)である。
【0046】
図2に示すように現像装置28は、筐体80内に、撹拌スクリュー81、供給スクリュー82、及び現像ローラ83が収容された構成となっている。撹拌スクリュー81、供給スクリュー82、及び現像ローラ83は、それぞれ回転軸が同じ方向(
図2での左右方向)となるように、筐体80に回転可能に取り付けられている。
【0047】
また、筐体80内には、撹拌スクリュー81と供給スクリュー82の間を仕切る隔壁84が設置されている。そのため筐体80内には、隔壁84を境にして、撹拌スクリュー81が位置する側の撹拌槽85、及び、供給スクリュー82が位置する側の供給槽86が形成されている。なお、現像ローラ83は、供給槽86における隔壁84と対向する位置にあり、供給槽86内に露出する格好となっている。
【0048】
但し隔壁84は、その両端側(
図2での左右両側)において、撹拌槽85と供給槽86を連通させる連通部が設けられた形態となっている。これにより筐体80内には、撹拌槽85と供給槽86を含む循環路が形成されている。撹拌スクリュー81及び供給スクリュー82はスパイラル型のスクリューとなっており、これらが回転することによって、
図2に破線矢印で示すように、当該循環路で現像剤が循環搬送される。なお、以下の説明で用いる「上流」及び「下流」の用語は、この循環搬送の流れについての「上流」及び「下流」を意味する。
【0049】
撹拌槽85では、撹拌スクリュー81の回転によって、現像剤が撹拌されながら搬送される。また、供給槽86では、供給スクリュー82の回転によって現像剤が搬送されるが、その過程で、一部の現像剤は現像ローラ83に供給される。現像ローラ83は、供給槽86から供給された現像剤を用いて、感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像させることになる。
【0050】
撹拌槽85の上流側には、現像剤が補給される補給口87が設けられている。補給口87は、概ね
図2に破線で示す位置に、筐体80を開口させることによって形成されている。補給口87から撹拌槽85の上流側に補給された現像剤は、循環路へ合流することになる。なお、補給口87から補給される現像剤の量(補給量)は、調整可能となっている。
【0051】
また、供給槽86には、供給槽86の下流側で循環路から分岐した現像剤(循環路で過剰となった分の現像剤)が排出される排出口88が設けられている。排出口88は、供給槽86の下流側端部に、筐体80を開口させることによって形成されている。また、排出口88には、その開口幅を調節可能とするシャッター89が設けられている。
【0052】
図3は、シャッター89の構成例を示した図(
図2のA方向に見た場合の図)である。本図に示すようにシャッター89は、例えば、シャッター89の動く方向に伸びているガイド89aによって両側を支持されており、このガイド89aに沿って動くことにより、排出口88の開口幅の調節(排出口88を閉じることも含む)が可能である。排出口88の開口幅が広いほど、そこから現像剤が排出され易くなる。そのため排出口88の開口幅が調節されることにより、排出口88から排出される現像剤の量(排出量)が調整されることになる。
【0053】
なお、排出口88の開口幅を調節する機構としては、上記以外の機構が採用されても良い。一例を挙げると、
図4や
図5に示すように、排出口88の近傍に調節用蓋90が設けられても良い。
図4に示す調節用蓋90は板状であり、その一端側に設けられた軸91を中心に回動することによって、排出口88の開口幅が調節される。また、
図5に示す調節用蓋90は、その中央部に設けられた軸91を中心に回動し、これによって排出口88の開口幅が調節される。
【0054】
また、
図2に示すように、撹拌槽85の下流寄りである所定位置には、その位置での現像剤量を検知する第1検知手段S1が設置されている。また、供給槽86の下流寄りである所定位置には、その位置での現像剤量を検知する第2検知手段S2が設置されている。第1検知手段S1は撹拌槽85の最下流に設置されていても良く、第2検知手段S2は供給槽86の最下流に設置されていても良い。
【0055】
なお、第1検知手段S1及び第2検知手段S2としては、非接触タイプの磁気センサーが用いられており、トナー濃度検知センサーの役割を兼ねている。また、現像装置28には、第1検知手段S1により検知された現像剤量(第1検知量X1)と第2検知手段S2により検知された現像剤量(第2検知量X2)に基づいて、現像剤の補給量及び排出量の調整を行う調整手段92が設けられている。
【0056】
調整手段92は、例えばマイクロコンピューター等により構成されており、磁気センサーである各検知手段(S1,S2)の出力に基づいて、現像剤量とトナー濃度の両方を把握することが可能である。この原理について以下に説明する。
【0057】
調整手段92は、磁気センサーの駆動中においてその磁気センサーの出力を常にカウントするようになっており、
図6に例示する波形(駆動時間とカウント値の関係を示すグラフ)の情報を得ることができる。ここで、カウント値の絶対値が大きい場合にはキャリアの量が少ないと判断することができ、このことから現像剤のトナー率が高いか、或いは現像剤量が少ないと判断することができる。逆にカウント値の絶対値が小さい場合にはキャリアの量が多いと判断することができ、このことから現像剤のトナー率が低いか、或いは現像剤量が多いと判断することができる。
【0058】
さらに
図6に示す波形の幅が広い場合には、キャリア量が不安定であり、現像剤が少ないと判断することができる。逆にその幅が狭い場合には、キャリア量が安定しており、現像剤量が多いと判断することができる。上記のことから調整手段92は、カウント値の絶対値と幅に基づいて、磁気センサーの位置での現像剤量を把握することが可能である。また、最初に測定されたカウント値を基準値として、次に測定したカウント値のズレ量を算出し、更にこの算出結果に所定の係数を乗じることによって、トナー濃度が計算される。なお、このようにして現像剤量やトナー濃度を導き出す処理は、各検知手段(S1,S2)自体が行うようにしても良い。
【0059】
次に、調整手段92によって行われる現像剤の補給量及び排出量の調整について、より具体的に説明する。この調整は、第1検知量X1及び第2検知量X2のそれぞれを、適正な現像剤量を示す所定の基準値Yと比較した結果に基づいて行われる。
【0060】
より具体的に説明すると、調整手段92は、第1検知量X1と第2検知量X2の両方が基準値Yより大きい状況(状況A)、第1検知量X1と第2検知量X2の両方が基準値Yより小さい状況(状況B)、第1検知量X1が基準値Yより大きく第2検知量X2が基準値Yより小さい状況(状況C)、及び、第1検知量X1が基準値Yより小さく第2検知量X2が基準値Yより大きい状況(状況D)の何れであるかに応じて、調整の内容を切替える。
【0061】
以下、当該調整の内容について、
図7〜
図10に示すグラフを参照しながら説明する。なお、
図7〜
図10に示すグラフは、各状況下での循環路上の位置(横軸)と現像剤量(縦軸)との関係を表すグラフであって、基準値Yを破線で示し、各検知手段(S1,S2)の検知結果から推察される現像剤量を実線で示している。
【0062】
まず、第1検知量X1と第2検知量X2の両方が基準値Yより大きい状況(状況A)では、
図7のグラフに示すように、循環路の大部分の範囲で現像剤量が基準値Yより大きいと言える。そのため調整手段92は、状況Aに対応した調整の処理として、通常より現像剤の排出量を増大させて補給量を減少させておく処理を行う。なお、このとき、排出量が最大となるようにしても良く、補給量が最小となるようにしても良い。
【0063】
これにより、循環路での現像剤量は徐々に小さくなり、基準値Yへ近づくことになる。なお、当該処理は、第1検知量X1と第2検知量X2の少なくとも一方が基準値Yを下回るまで行われるようにしても良く、これらの両方が基準値Yを下回るまで行われるようにしても良い。
【0064】
また、第1検知量X1と第2検知量X2の両方が基準値Yより小さい状況(状況B)では、
図8のグラフに示すように、循環路の大部分の範囲で現像剤量が基準値Yより小さいと言える。そのため調整手段92は、状況Bに対応した調整の処理として、通常より現像剤の排出量を減少させて補給量を増大させておく処理を行う。なお、このとき、排出量が最小となるようにしても良く、補給量が最大となるようにしても良い。
【0065】
これにより、循環路での現像剤量は徐々に大きくなり、基準値Yへ近づくことになる。なお、当該処理は、第1検知量X1と第2検知量X2の少なくとも一方が基準値Yを上回るまで行われるようにしても良く、これらの両方が基準値Yを上回るまで行われるようにしても良い。
【0066】
また、第1検知量X1が基準値Yより大きく第2検知量X2が基準値Yより小さい状況(状況C)では、循環路上の現像剤量は概ね
図9のグラフに示すようになっている。この状況では、現像剤の補給が過剰であり、かつ、現像剤の排出も過剰であると言える。この場合に調整手段92は、状況Cに対応した調整の処理として、次の第1〜第4調整処理を行う。
【0067】
現像剤の排出に関する処理として、まず、通常より排出量を減少させる第1調整処理が行われる。但し、第1検知手段S1の検知結果より、撹拌槽85の下流側では現像剤が多いことが分かっている。そのため、第1調整処理の開始から所定の第1時間の経過後に、現状より排出量を増大させる第2調整処理が行われる。なお、第1時間は、第1検知手段S1が設置された位置から第2検知手段S2が設置された位置へ、現像剤が搬送される時間(実験や計算等によって予め求められている)に設定されている。
【0068】
また、現像剤の補給に関する処理として、まず、通常より補給量を減少させる第3調整処理が行われる。但し、第2検知手段S2の検知結果より、供給槽86の下流側では現像剤が少ないことが分かっている。そのため、第3調整処理の開始から所定の第2時間の経過後に、現状より補給量を増大させる第4調整処理が行われる。なお、この第2時間は、第2検知手段S2が設置された位置から補給された現像剤が循環路に合流する位置へ、現像剤が搬送される時間(実験や計算等によって予め求められている)に設定されている。
【0069】
また、第1検知量X1が基準値Yより小さく第2検知量X2が基準値Yより大きい状況(状況D)では、循環路上の現像剤量は概ね
図10のグラフに示すようになっている。この状況では、現像剤の補給が不足しており、かつ、現像剤の排出も不足していると言える。この場合に調整手段92は、状況Dに対応した調整の処理として、次の第5〜第8調整処理を行う。
【0070】
現像剤の排出に関する処理として、まず、通常より排出量を増大させる第5調整処理が行われる。但し、第1検知手段S1の検知結果より、撹拌槽85の下流側では現像剤が少ないことが分かっている。そのため、第1調整処理の開始から先述した第1時間の経過後に、現状より排出量を減少させる第6調整処理が行われる。
【0071】
また、現像剤の補給に関する処理として、まず、通常より補給量を増大させる第7調整処理が行われる。但し、第2検知手段S2の検知結果より、供給槽86の下流側では現像剤が多いことが分かっている。そのため、第7調整処理の開始から先述した第2時間の経過後に、現状より補給量を減少させる第8調整処理が行われる。
【0072】
なお、循環路における現像剤の偏りや過不足の発生し易さ等は、循環路における現像剤の搬送速度や流動性によって左右される。現像剤の搬送速度に影響を与える要因としては、例えば、印字モード(普通紙モード/厚紙モード)の設定切替が挙げられる。すなわち、普通紙モード(高線速)の場合には現像剤の搬送速度が比較的速く、厚紙モード(低線速)の場合には現像剤の搬送速度が比較的遅くなる。現像剤の搬送速度が速くなると、現像剤を排出口88に押す力が強くなって排出量が増え、逆に現像剤の搬送速度が遅くなると、現像剤を排出口88に押す力が弱くなって排出量が減る。
【0073】
また、現像剤の流動性に影響を与える要因としては、例えば、環境温度などの環境条件の変動が挙げられる。排出口88の開口幅が同じであっても、現像剤の流動性が高くなると、現像剤が排出口88から流出し易くなって排出量が増え、現像剤の流動性が低くなると、現像剤が排出口88から流出し難くなって排出量が減る。
【0074】
上記の事情を考慮して、調整手段92は、循環路における現像剤の搬送速度又は流動性に影響を与える要因(上述した印字モードや環境条件など)を監視し、この監視の結果に応じて先述した調整の処理の内容を変更する。例えば調整手段92は、上述した印字モードや環境条件が変化した場合に、先述した第1時間の長さ、第2時間の長さ、及び、第1〜第8調整処理の動作量(補給量或いは排出量の増減の程度)の一部又は全部を、変化後の印字モードや環境条件に合うように変更する。
【0075】
これにより、現像剤の搬送速度又は流動性に変動が生じても、現像剤の補給量や排出量の調整精度を良好に維持することが可能となる。そのため、現像剤の供給不良による濃度ムラや供給過剰による現像剤溢れといった不具合を抑えることが出来る。
【0076】
次に、現像剤の補給量及び排出量の調整に関する制御フローについて、
図11に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0077】
当該制御が開始された段階では、現像剤の排出量及び補給量は通常の量(既定量)に設定されている。そしてまず、各検知手段(S1,S2)によりその位置での現像剤量が検知され、第1検知量X1及び第2検知量X2が把握される(ステップS1)。次に調整手段92は、第1検知量X1が基準値Yより大きいか否かを判別し(ステップS2)、更に、第2検知量X2が基準値Yより大きいか否かを判別する(ステップS3又はS4)。
【0078】
第1検知量X1が基準値Yより大きく(ステップS2のYes)、かつ、第2検知量X2が基準値Yより大きい(ステップS3のYes)場合、すなわち状況Aである場合には、調整手段92は、既に説明済みの状況Aに対応した調整の処理を実行する(ステップS5)。また、第1検知量X1が基準値Yより大きく(ステップS2のYes)、かつ、第2検知量X2が基準値Yより小さい(ステップS3のNo)場合、すなわち状況Cである場合には、調整手段92は、既に説明済みの状況Cに対応した調整の処理を実行する(ステップS6)。
【0079】
また第1検知量X1が基準値Yより小さく(ステップS2のNo)、かつ、第2検知量X2が基準値Yより大きい(ステップS4のYes)場合、すなわち状況Dである場合には、調整手段92は、既に説明済みの状況Dに対応した調整の処理を実行する(ステップS7)。また、第1検知量X1が基準値Yより小さく(ステップS2のNo)、かつ、第2検知量X2が基準値Yより小さい(ステップS4のNo)場合、すなわち状況Bである場合には、調整手段92は、既に説明済みの状況Bに対応した調整の処理を実行する(ステップS8)。
【0080】
ステップS5〜S8の何れかの処理の実行後、各検知手段の両方(又は一方)の検知量が基準値Yに達した場合には(ステップS9のYes)、現状での各設定値(例えば、第1時間の長さ、第2時間の長さ、及び第1〜第8調整処理の動作量に関する設定値)が保存された上で(ステップS10)、今回の制御が停止される。一方で、基準値Yに達していない場合には(ステップS9のNo)、再びステップS1の処理が行われる。このようにして、現像剤の補給量及び排出量が適切に調整される。但し上述したステップS1〜S10の一連の処理は、現像剤の補給量及び排出量の調整に関する制御フローの一例に過ぎず、当該制御フローの内容はこれに限定されない。
【0081】
[その他]
以上に説明したように現像装置28は、現像剤を撹拌する撹拌槽85と、現像剤を現像ローラ83へ供給する供給槽86とを有し、撹拌槽85と供給槽86を含む循環路で現像剤を循環搬送する。また、現像装置28は、撹拌槽85の上流側に現像剤を補給して循環路へ合流させる補給手段と、供給槽86の下流側で循環路から分岐した現像剤を排出させる排出手段と、撹拌槽85の下流寄りである所定位置での現像剤量を検知する第1検知手段S1と、供給槽86の下流寄りである所定位置での現像剤量を検知する第2検知手段S2とを備えている。
【0082】
そして更に現像装置28は、第1検知手段S1及び第2検知手段S2の検知結果に基づいて、現像剤の補給量及び排出量の調整を行う調整手段92を備えている。そのため現像装置28によれば、例えば一つだけの検知手段の検知結果に基づいて調整を行うもの等に比べ、現像剤の補給量及び排出量をより適切に調整することが可能である。なお、本実施形態では、第1検知手段S1及び第2検知手段S2の検知結果に基づいて、現像剤の補給量と排出量の両方の調整が行われるが、その代わりに、補給量と排出量の一方のみの調整が行われるようにしても良い。
【0083】
また、現像剤を排出するための排出口に関しては、本実施形態のように一つの排出口だけが設けられる形態に限られず、主となる排出口以外に現像剤量を調整するための排出口が別に設けられた形態としても良い。また、本実施形態では、現像剤量を検知する手段として磁気センサーを用いたが、現像装置内部に配置される液面センサー(圧電センサー)や光学センサー等が用いられても構わない。但し、本実施形態のように磁気センサーを用いる場合には、これをトナー濃度検知センサーとして利用することもでき、製造コストを抑えることが可能となる点で好ましい。