特許第6245037号(P6245037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245037
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20171204BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20171204BHJP
   B41J 11/14 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B41J2/01 305
   B41J2/165 207
   B41J11/14
【請求項の数】18
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-73362(P2014-73362)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-193196(P2015-193196A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白野 太一
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−088329(JP,A)
【文献】 特開2010−214594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−215
B41J 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための複数の吐出口が形成された吐出面をそれぞれ有し、それぞれの前記吐出面が前記吐出面と平行な第1方向に沿った複数の列を形成するように並べられ、前記複数の列のうちの互いに異なる列に属する2つの前記吐出面が前記第1方向に関して互いに異なる位置に配置された、複数のヘッドと、
記録媒体を前記第1方向と直交しかつ前記吐出面と平行な第2方向に搬送するように構成された、搬送部と、
それぞれが前記第2方向に延在し、前記搬送部により搬送される記録媒体を支持するように構成された、複数の支持部と、
前記複数の支持部のそれぞれが、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に関して前記複数の吐出面のうちの少なくとも1つと対向して記録媒体を支持する支持位置と、前記第3方向に関して前記複数の吐出面と対向しない退避位置とを取り得るように、かつ、前記複数の支持部のそれぞれが、前記第1方向に関して互いに異なる複数の前記支持位置を取り得るように、前記複数の支持部を前記第1方向に移動させることが可能に構成された、移動部と、
少なくとも、前記複数のヘッド、前記搬送部、及び前記移動部を制御するように構成された、制御部と、
を備えたことを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項2】
前記退避位置にある前記複数の支持部のうちの少なくとも1つは、前記第1方向に関して前記複数の列のうち同じ列に属する互いに隣接する2つの前記吐出面の間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記複数の支持位置は、第1支持位置及び第2支持位置を含み、
前記移動部は、前記複数の支持部のそれぞれを、前記退避位置から前記第1支持位置に移動させるときと、前記退避位置から前記第2支持位置に移動させるときとにおいて、互いに逆向きに移動させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記移動部は、前記複数の支持部のそれぞれを、前記退避位置から前記第1支持位置に移動させるときと、前記退避位置から前記第2支持位置に移動させるときとにおいて、互いに同じ距離を移動させることを特徴とする、請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
記録媒体のサイズと前記複数の支持位置との対応関係を示す情報を記憶する、記憶部を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記情報に基づいて、搬送される記録媒体のサイズに応じて前記複数の支持部が前記複数の支持位置のうちの1つを取るように前記移動部を制御することを特徴とする、請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記複数の支持位置は、第1支持位置、及び、前記第1支持位置よりも前記退避位置からの移動距離が大きい第3支持位置を含み、
前記制御部は、前記第1支持位置と前記第3支持位置との両方に対応するサイズの記録媒体が搬送される場合に、前記複数の支持部が前記第1支持位置を取るように前記移動部を制御することを特徴とする、請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
記録媒体は、第1面、及び、前記第1面とは反対側の第2面を含み、
前記搬送部は、前記第1面に記録が行われた記録媒体を反転させた状態で前記複数のヘッドに向けて搬送するように構成された、反転搬送部を含み、
前記制御部は、前記両方に対応するサイズの記録媒体であって、前記第1支持位置にある前記複数の支持部によって支持されたときの記録媒体の前記第1方向両端が前記複数の支持部からはみ出すはみ出し量が前記第3支持位置にある前記複数の支持部によって支持されたときの前記はみ出し量よりも多い記録媒体が搬送される場合に、前記第1面の記録時は前記複数の支持部が前記第1支持位置を取るように、かつ、前記第2面の記録時は前記複数の支持部が前記第3支持位置を取るように、前記移動部を制御することを特徴とする、請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記複数の支持部は、前記第1支持位置、前記第2支持位、及び前記第3支持位置のうちの1つを取ることで、前記第1方向のサイズが連続的に異なる種々の記録媒体を支持可能であることを特徴とする、請求項又はに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記複数の支持部は、前記複数の列のうちの第1列に対応する第1支持部と、前記複数の列のうちの第2列に対応する第2支持部とを含み、
前記移動部は、前記第1支持部及び前記第2支持部を移動させるための前記第1支持部及び前記第2支持部に共通の駆動源を含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記移動部は、前記第1支持部及び前記第2支持部を、前記退避位置から前記支持位置に移動させるときに、互いに逆向きに移動させることを特徴とする、請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記支持位置にある前記第1支持部と前記支持位置にある前記第2支持部とは、前記第2方向から見て互いに重なることを特徴とする、請求項又は10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
それぞれが前記第2方向に延在し、前記搬送部により搬送される記録媒体を支持するように構成され、かつ、前記退避位置にある前記複数の支持部と前記第3方向に関して対向する位置に配置された、複数の協働支持部をさらに備えたことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記退避位置にある前記複数の支持部はそれぞれ前記複数の協働支持部よりも前記第3方向に関して前記吐出面から離隔していることを特徴とする、請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記複数の協働支持部は、それぞれ、記録媒体を支持しつつ走行することにより記録媒体を搬送するように構成された、環状ベルトであり、
前記退避位置にある前記複数の支持部のうちの少なくとも1つは、前記環状ベルトの内側に配置されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記移動部は、前記支持位置にある前記複数の支持部における前記吐出面と対向する面がそれぞれ前記複数の協働支持部における前記吐出面と対向する面と前記第3方向に関して同じ位置に配置されるように、前記複数の支持部を前記第3方向に移動させることを特徴とする、請求項1214のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記複数のヘッドの前記吐出面のそれぞれに対して前記複数の支持部のうちの2つの支持部が設けられており、
前記移動部は、前記2つの支持部が、前記支持位置において対応する前記吐出面と前記第3方向に関して対向し、前記退避位置において対応する前記吐出面と前記第3方向に関して対向せずに前記第1方向に関して前記吐出面を挟む位置に配置されるように、前記複数の支持部を移動させることを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
前記第3方向に関して前記支持位置にある前記複数の支持部のそれぞれを挟んで前記複数の吐出面のそれぞれと対向する位置に配置され、前記複数の支持部が前記退避位置にあるときに前記複数のヘッドをメンテナンスするように構成された、複数のメンテナンス部をさらに備えたことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項18】
前記複数のメンテナンス部は、前記複数の吐出口から吐出された液体を受けるように構成された液体受け部材をそれぞれ含むことを特徴とする、請求項17に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、用紙幅方向(第1方向)に沿った2つの列151,152を形成するように並べられた複数のヘッド150(図2参照)と、搬送ガイド141,142(支持部)のそれぞれがヘッド150と対向する支持位置とヘッド150と対向しない退避位置とを取り得るように搬送ガイド141,142を用紙搬送方向(第2方向)に移動させる駆動部143,144(移動部)(図7及び図8参照)と、を含むインクジェットプリンタが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−208241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、搬送ガイド141,142(支持部)の支持位置と退避位置とは用紙搬送方向(第2方向)に関して互いに異なる位置であり、駆動部143,144(移動部)は搬送ガイド141,142を用紙搬送方向に移動させる。したがって、特許文献1の装置では、支持部の移動範囲を確保するため、第2方向に装置を大型化せざるを得ない。
【0005】
本発明の目的は、第2方向の小型化を実現することができる、液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出するための複数の吐出口が形成された吐出面をそれぞれ有し、それぞれの前記吐出面が前記吐出面と平行な第1方向に沿った複数の列を形成するように並べられ、前記複数の列のうちの互いに異なる列に属する2つの前記吐出面が前記第1方向に関して互いに異なる位置に配置された、複数のヘッドと、記録媒体を前記第1方向と直交しかつ前記吐出面と平行な第2方向に搬送するように構成された、搬送部と、それぞれが前記第2方向に延在し、前記搬送部により搬送される記録媒体を支持するように構成された、複数の支持部と、前記複数の支持部のそれぞれが、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に関して前記複数の吐出面のうちの少なくとも1つと対向して記録媒体を支持する支持位置と、前記第3方向に関して前記複数の吐出面と対向しない退避位置とを取り得るように、かつ、前記複数の支持部のそれぞれが、前記第1方向に関して互いに異なる複数の前記支持位置を取り得るように、前記複数の支持部を前記第1方向に移動させることが可能に構成された、移動部と、少なくとも、前記複数のヘッド、前記搬送部、及び前記移動部を制御するように構成された、制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、移動部は、複数の支持部のそれぞれが支持位置と退避位置とを取り得るように、かつ、複数の支持部のそれぞれが第1方向に関して互いに異なる複数の支持位置を取り得るように、複数の支持部を第1方向に移動させる。これにより、第2方向の小型化を実現しつつ、第1方向のサイズが互いに異なる記録媒体を搬送することができる。
【0008】
前記退避位置にある前記複数の支持部のうちの少なくとも1つは、前記第1方向に関して前記複数の列のうち同じ列に属する互いに隣接する2つの前記吐出面の間に配置されてよい。例えば、退避位置にある複数の支持部の全てが、第1方向に関して同じ列に属する全ての吐出面の外側にある場合、複数の支持部が当該退避位置に配置されることで、装置が第1方向に大型化してしまう。これに対し、上記構成によれば、2つの吐出面間のデッドスペースを、複数の支持部のうちの少なくとも1つの退避位置として利用することで、第1方向の大型化を抑制することができる。
【0010】
前記複数の支持位置は、第1支持位置及び第2支持位置を含み、前記移動部は、前記複数の支持部のそれぞれを、前記退避位置から前記第1支持位置に移動させるときと、前記退避位置から前記第2支持位置に移動させるときとにおいて、互いに逆向きに移動させてよい。当該構成によれば、移動部の構成及び制御を簡素化することができる。
【0011】
前記移動部は、前記複数の支持部のそれぞれを、前記退避位置から前記第1支持位置に移動させるときと、前記退避位置から前記第2支持位置に移動させるときとにおいて、互いに同じ距離を移動させてよい。当該構成によれば、移動部の構成及び制御をより確実に簡素化することができる。
【0012】
本発明に係る液体吐出装置は、記録媒体のサイズと前記複数の支持位置との対応関係を示す情報を記憶する、記憶部を備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記情報に基づいて、搬送される記録媒体のサイズに応じて前記複数の支持部が前記複数の支持位置のうちの1つを取るように前記移動部を制御してよい。当該構成によれば、記録媒体のサイズに応じた適切な搬送を行うことができる。
【0013】
前記複数の支持位置は、第1支持位置、及び、前記第1支持位置よりも前記退避位置からの移動距離が大きい第3支持位置を含み、前記制御部は、前記第1支持位置と前記第3支持位置との両方に対応するサイズの記録媒体が搬送される場合に、前記複数の支持部が前記第1支持位置を取るように前記移動部を制御してよい。当該構成によれば、移動距離が小さい方の支持位置(第1支持位置)に各支持部を移動させることで、移動に要する時間を低減し、スループットを向上させることができる。
【0014】
記録媒体は、第1面、及び、前記第1面とは反対側の第2面を含み、前記搬送部は、前記第1面に記録が行われた記録媒体を反転させた状態で前記複数のヘッドに向けて搬送するように構成された、反転搬送部を含み、前記制御部は、前記両方に対応するサイズの記録媒体であって、前記第1支持位置にある前記複数の支持部によって支持されたときの記録媒体の前記第1方向両端が前記複数の支持部からはみ出すはみ出し量が前記第3支持位置にある前記複数の支持部によって支持されたときの前記はみ出し量よりも多い記録媒体が搬送される場合に、前記第1面の記録時は前記複数の支持部が前記第1支持位置を取るように、かつ、前記第2面の記録時は前記複数の支持部が前記第3支持位置を取るように、前記移動部を制御してよい。第1面の記録時は、記録媒体の腰が比較的強いため、はみ出し量が比較的多くても、搬送に不具合が生じ難い。一方、第2面の記録時は、記録媒体が第1面の記録によって水分を含み腰が比較的弱くなっているため、はみ出し量が多いと、搬送に不具合が生じ得る。上記構成によれば、第1面の記録時ははみ出し量が多く移動距離が小さい第1支持位置、第2面の記録時ははみ出し量が少なく移動距離が大きい第3支持位置に、複数の支持部を移動させる。これにより、搬送の不具合の抑制と、スループット向上とを、共に実現することができる。
【0015】
前記複数の支持部は、前記第1支持位置、前記第2支持位、及び前記第3支持位置のうちの1つを取ることで、前記第1方向のサイズが連続的に異なる種々の記録媒体を支持可能であってよい。当該構成によれば、種々のサイズの記録媒体を適切に搬送することができる。
【0016】
前記複数の支持部は、前記複数の列のうちの第1列に対応する第1支持部と、前記複数の列のうちの第2列に対応する第2支持部とを含み、前記移動部は、前記第1支持部及び前記第2支持部を移動させるための前記第1支持部及び前記第2支持部に共通の駆動源を含んでよい。当該構成によれば、移動部が第1支持部を移動させるための駆動源と第2支持部を移動させるための駆動源との両方を含む場合に比べ、移動部の構成の簡素化を実現することができる。
【0017】
前記移動部は、前記第1支持部及び前記第2支持部を、前記退避位置から前記支持位置に移動させるときに、互いに逆向きに移動させてよい。当該構成によれば、移動部の構成及び制御を簡素化することができる。
【0018】
前記支持位置にある前記第1支持部と前記支持位置にある前記第2支持部とは、前記第2方向から見て互いに重なってよい。当該構成によれば、搬送精度を向上させることができる。
【0019】
本発明に係る液体吐出装置は、それぞれが前記第2方向に延在し、前記搬送部により搬送される記録媒体を支持するように構成され、かつ、前記退避位置にある前記複数の支持部と前記第3方向に関して対向する位置に配置された、複数の協働支持部をさらに備えてよい。当該構成によれば、複数の支持部と複数の協働支持部とで記録媒体を支持することで、搬送精度を向上させることができる。
【0020】
前記退避位置にある前記複数の支持部はそれぞれ前記複数の協働支持部よりも前記第3方向に関して前記吐出面から離隔してよい。当該構成によれば、メンテナンス時に吐出口から吐出された液体が支持部に付着するのを防止することができる。
【0021】
前記複数の協働支持部は、それぞれ、記録媒体を支持しつつ走行することにより記録媒体を搬送するように構成された、環状ベルトであり、前記退避位置にある前記複数の支持部のうちの少なくとも1つは、前記環状ベルトの内側に配置されてよい。当該構成によれば、搬送精度を確実に向上させることができる。また、環状ベルトの内側のデッドスペースを、複数の支持部のうちの少なくとも1つの退避位置として利用することで、小型化が可能である。
【0022】
前記移動部は、前記支持位置にある前記複数の支持部における前記吐出面と対向する面がそれぞれ前記複数の協働支持部における前記吐出面と対向する面と前記第3方向に関して同じ位置に配置されるように、前記複数の支持部を前記第3方向に移動させてよい。当該構成によれば、複数の支持部と複数の協働支持部とにおいて吐出面と対向する面を面一にすることで、ジャムを抑制すると共に、搬送精度を向上させることができる。
【0023】
前記複数のヘッドの前記吐出面のそれぞれに対して前記複数の支持部のうちの2つの支持部が設けられており、前記移動部は、前記2つの支持部が、前記支持位置において対応する前記吐出面と前記第3方向に関して対向し、前記退避位置において対応する前記吐出面と前記第3方向に関して対向せずに前記第1方向に関して前記吐出面を挟む位置に配置されるように、前記複数の支持部を移動させてよい。当該構成によれば、退避位置から支持位置への移動距離を比較的小さくすることができる。また、移動部の構成及び制御を簡素化することができる。さらに、1の吐出面に対して2つの支持部で記録媒体を確実に支持しながら搬送することができる。
【0024】
本発明に係る液体吐出装置は、前記第3方向に関して前記支持位置にある前記複数の支持部のそれぞれを挟んで前記複数の吐出面のそれぞれと対向する位置に配置され、前記複数の支持部が前記退避位置にあるときに前記複数のヘッドをメンテナンスするように構成された、複数のメンテナンス部をさらに備えてよい。当該構成によれば、支持部を退避位置に移動させることで、メンテナンスを適切に行うことができる。
【0025】
前記複数のメンテナンス部は、前記複数の吐出口から吐出された液体を受けるように構成された液体受け部材をそれぞれ含んでよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、移動部は、複数の支持部のそれぞれが支持位置と退避位置とを取り得るように、かつ、複数の支持部のそれぞれが第1方向に関して互いに異なる複数の支持位置を取り得るように、複数の支持部を第1方向に移動させる。これにより、第2方向の小型化を実現しつつ、第1方向のサイズが互いに異なる記録媒体を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタを示す概略側面図である。
図2図1のプリンタに含まれるヘッドユニットのヘッドを示す部分断面図である。
図3】(a)は、図1のプリンタに含まれる支持ユニット及び移動部を示す斜視図である。(b)は、(a)から支持ユニットのうちの環状ベルトとその軸とを省略した図である。
図4】(a)は支持ユニットの各支持部が退避位置にあるとき、(b)は各支持部が第1支持位置にあるとき、(c)は各支持部が第2支持位置にあるとき、(d)は各支持部が第3支持位置にあるときの状態をそれぞれ示す、平面図である。
図5】(a)は、第1〜第3支持位置と用紙サイズとの関係とを示す概略図である。(b)は、図1のプリンタのROMに記憶されている情報(用紙のサイズと支持位置との対応関係を示す情報)に関するテーブルである。
図6】(a)は、支持部が退避位置にあるときにフラッシングが行われている状況を示す、図4(a)のVIA−VIA線に沿った部分断面図である。(b)は、支持部が第1支持位置にあるときに吐出面とキャップとの間に介在している状況を示す、図4(b)のVIB−VIB線に沿った部分断面図である。
図7図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図8図1のプリンタの制御部が実行する制御内容を示すフロー図である。
図9】(a)は、本発明の第2実施形態における、図4(a)のIXA−IXA線に沿った部分断面図である。(b)は、本発明の第2実施形態における、図4(b)のIXB−IXB線に沿った部分断面図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る支持ユニット及び移動部を示す斜視図である。
図11】(a)は、本発明の参考例に係る支持ユニットの各支持部が退避位置にあるときの状態を示す、図10のXIA−XIA線に沿った部分断面図である。(b)は、本発明の参考例に係る支持ユニットの各支持部が支持位置にあるときの状態を示す、図11(a)に対応する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
先ず、図1等を参照し、本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
【0030】
プリンタ1は、図1に示すように、筐体1a、ヘッドユニット10u、支持ユニット50u、キャップユニット40u、搬送部20、収容部3、受容部4、及び制御部100を含む。ヘッドユニット10u、支持ユニット50u、キャップユニット40u、搬送部20、収容部3、及び制御部100は、筐体1a内に配置されている。受容部4は、筐体1aの天板上部に設けられている。
【0031】
搬送部20は、給紙ローラ21、ローラ対22〜28、ガイド29a〜29h、及びカセット30を含む。
【0032】
給紙ローラ21は、収容部3内で最も上方にある用紙Pと接触する位置に配置されている。給紙ローラ21は、制御部100の制御によって給紙モータ21M(図7参照)が駆動されることで回転する。これにより、収容部3内で最も上方にある用紙Pが収容部3から送り出される。
【0033】
各ローラ対22〜28は、互いに接触する2つのローラを含み、用紙Pを当該2つのローラで挟持しつつ搬送するように構成されている。各ローラ対22〜28に含まれる2つのローラの一方は、駆動ローラであり、制御部100の制御によって搬送モータ20M(図7参照)が駆動されることで回転する。各ローラ対22〜28に含まれる2つのローラの他方は、従動ローラであり、駆動ローラの回転に伴い、駆動ローラと接触しながら駆動ローラと逆の方向に回転する。ローラ対26,27は、正逆回転可能である。
【0034】
ガイド29a〜29hは、それぞれ、用紙Pの搬送経路を画定するように構成されており、互いに間隙を介して離隔配置された一対の板を含む。カセット30は、用紙Pが通過可能な空間を画定している。
【0035】
片面記録の場合(用紙Pの表面に対して記録を行う場合)、搬送部20は、給紙ローラ21及びローラ対22〜27の駆動により、図1の黒塗り矢印に沿って、用紙Pを収容部3からヘッドユニット10uと支持ユニット50uとの間を経由して受容部4まで搬送する。
【0036】
両面記録の場合(用紙Pの表面及び裏面に対して記録を行う場合)、搬送部20は、先ず、給紙ローラ21及びローラ対22〜27の駆動により、図1の黒塗り矢印に沿って、用紙Pを収容部3からヘッドユニット10uと支持ユニット50uとの間を経由して搬送する。そして、搬送部20は、用紙Pがローラ対26,27に挟持されているときにローラ対26,27の回転方向が正方向から逆方向に切り換わることで、用紙Pの搬送方向を切り換えて、ローラ対26〜28の駆動により、図1の白抜き矢印に沿って、用紙Pをローラ対28及びカセット30を経由して搬送し、再びローラ対22に送り込む。その後、搬送部20は、ローラ対22〜27の駆動により、図1の黒塗り矢印に沿って、用紙Pをヘッドユニット10uと支持ユニット50uとの間を経由して受容部4まで搬送する。
【0037】
表面は、収容部3内で下方を向く面であり、本発明の第1面に相当する。裏面は、収容部3内で上方を向く面であり、本発明の第2面に相当する。搬送部20のうち、ローラ対26〜28、ガイド29e〜29h、及びカセット30は、表面に記録が行われた用紙Pを反転させた状態でヘッドユニット10uに向けて搬送する反転搬送部20aを構成している。
【0038】
収容部3は、上面が開口したトレイからなり、筐体1aに対して副走査方向に着脱可能である。収容部3及び受容部4は、複数の用紙Pをそれぞれ収容及び受容可能であると共に、複数種類のサイズの用紙Pをそれぞれ収容及び受容である。
【0039】
副走査方向は、水平面に平行である。主走査方向(第1方向)は、水平面に平行で、かつ、副走査方向と直交する方向である。鉛直方向(第3方向)は、副走査方向及び主走査方向と直交する方向である。また、搬送部20による用紙Pの搬送方向において、ヘッドユニット10uと支持ユニット50uとの間における搬送方向(第2方向)(以下、単に「搬送方向」という。)は、副走査方向に平行であり、図1において左から右に向かう方向である。
【0040】
制御部100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)100a、ROM(Read Only Memory)100b、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)100c、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、I/F(Interface)、I/O(Input/Output Port)等を含む。ROM100bは、CPU100aが実行するプログラム、各種固定データ等を記憶している。RAM100cは、プログラム実行時に必要なデータを一時的に記憶する。ASICは、画像データの書き換えや並び替え(例えば、信号処理や画像処理)を行う。I/Fは、外部装置(例えば、プリンタ1に接続されたPC)とのデータ送受信を行う。I/Oは、各種センサの検出信号の入力/出力を行う。
【0041】
次いで、図2図6を参照し、ヘッドユニット10u、支持ユニット50u、及びキャップユニット40uについて説明する。
【0042】
ヘッドユニット10uは、図4に示すように、12のインクジェットヘッド10を含む。12のヘッド10は、記録中、移動せず、定位置に固定されている。即ち、プリンタ1は、12のヘッド10が固定された状態で記録を行うライン方式である。
【0043】
12のヘッド10は、互いに同じ構成であり、それぞれ、図2に示すように、流路ユニット12及びアクチュエータユニット17を含む。
【0044】
流路ユニット12は、4枚のプレート12a〜12dを積層した積層体であり、内部に流路が形成されており、下面に複数の吐出口14aが開口している。当該下面は、ヘッド10の吐出面10aに相当する。流路ユニット12の内部に形成された流路は、1のマニホールド流路13及び複数の個別流路14を含む。個別流路14は、吐出口14a毎に設けられており、マニホールド流路13の出口から圧力室16を介して吐出口14aまで延在している。マニホールド流路13は、インクを貯留するタンク(図示略)と連通している。タンクからマニホールド流路13に供給されたインクが、個別流路14を通り、吐出口14aから吐出される。
【0045】
アクチュエータユニット17は、振動板17a、圧電層17b、及び、複数の個別電極17cを積層した積層体である。振動板17aは、流路ユニット12の上面に固定され、複数の圧力室16を閉鎖している。圧電層17bは、振動板17aの上面に固定され、複数の圧力室16と対向している。複数の個別電極17cは、圧電層17bの上面に固定され、複数の圧力室16のそれぞれと対向している。アクチュエータユニット17における各個別電極17cと各圧力室16とで挟まれた部分は、圧力室16毎に個別のユニモルフ型アクチュエータとして機能し、各個別電極17cへの電圧の印加に応じて、独立して変形可能である。アクチュエータが圧力室16に向かって凸となるように変形することにより、圧力室16の容積が減少し、圧力室16内のインクに圧力が付与され、吐出口14aからインクが吐出される。このように、複数の個別電極17cに対して選択的に電圧を印加することにより、各ヘッド10は、複数の吐出口14aから選択的にインクを吐出することができる。
【0046】
12のヘッド10の吐出面10aは、図4に示すように、主走査方向に沿った4つの列10aR1〜10aR4を形成するように並べられている。各列10aR1〜10aR4は、3つの吐出面10aで構成されている。4つの列10aR1〜10aR4のうち、搬送方向上流側の2つの列10aR1,10aR2(第1列)は、それぞれの3つの吐出面10aが主走査方向に関して互いに同じ位置に配置されている。4つの列10aR1〜10aR4のうち、搬送方向下流側の2つの列10aR3,10aR4(第2列)は、それぞれの3つの吐出面10aが主走査方向に関して互いに同じ位置に配置されている。第1列と第2列とでは、それぞれの3つの吐出面10aが主走査方向に関して互いに異なる位置に配置されている。第1列に属する6つの吐出面10aの配置領域と、第2列に属する6つの吐出面10aの配置領域とは、主走査方向に関して部分的に重なり合うが完全には重なり合わないようにずれて配置されている。
【0047】
支持ユニット50uは、図3(a)に示すように、8つの支持部50、及び、6つの環状ベルト60を含む。
【0048】
8つの支持部50は、図3(b)に示すように、互いに同じ構成であり、それぞれ、主走査方向及び副走査方向に平行な面を有する矩形状の板である。各支持部50は、搬送方向に長く延在し、搬送部20により搬送される用紙Pを支持するように構成されている。
【0049】
8つの支持部50は、主走査方向に沿った2つの列51,52を形成するように並べられている。各列51,52は、4つの支持部50で構成されている。列51は、吐出面10aの列10aR1,10aR2(第1列)に対応し、列52は、吐出面10aの列10aR3,10aR4(第2列)に対応する(図4参照)。
【0050】
なお、各支持部50は、移動部70によって主走査方向に移動可能である。移動部70の構成及び各支持部50の移動については、後に詳述する。
【0051】
6つの環状ベルト60は、図3(a)に示すように、互いに同じ構成であり、それぞれ、主走査方向及び副走査方向に平行な面を有する。各環状ベルト60は、搬送方向に長く延在し、搬送部20により搬送される用紙Pを支持部50と協働して支持するように構成されている。即ち、各環状ベルト60は、本発明の協働支持部に相当する。
【0052】
6つの環状ベルト60は、主走査方向に沿った2つの列61,62を形成するように並べられている。各列61,62は、3つの環状ベルト60で構成されている。列61は、吐出面10aの列10aR1,10aR2(第1列)に対応し、列62は、吐出面10aの列10aR3,10aR4(第2列)に対応する(図4参照)。6つの環状ベルト60は、主走査方向に関して互いに異なる位置に配置されており、主走査方向に沿って千鳥状に配置されている。また、各環状ベルト60は、鉛直方向に関していずれの吐出面10aとも対向しない。
【0053】
列61に属する3つの環状ベルト60は、軸60x1,60x2に巻回されている。列62に属する3つの環状ベルト60は、軸60x2,60x3に巻回されている。3つの軸60x1〜60x3は、それぞれ主走査方向に沿って延在し、副走査方向に関して互いに離隔している。3つの軸60x1〜60x3のうち、中央の軸60x2上に、列61に属する3つの環状ベルト60と列62に属する3つの環状ベルト60とが等間隔で交互に配置されている。軸60x2が搬送モータ20M(図7参照)に接続されており、制御部100の制御によって搬送モータ20Mが駆動されて軸60x2が回転することで、6つの環状ベルト60が走行すると共に、環状ベルト60に連れ回って軸60x1,60x3が回転する。このように、各環状ベルト60は、用紙Pを支持しつつ走行することにより用紙Pを搬送するように構成されている。
【0054】
軸60x1,60x2の間に、列51に属する4つの支持部50が配置され、軸60x2,60x3の間に、列52に属する4つの支持部50が配置されている。
【0055】
移動部70は、図3(b)に示すように、2つの軸70x1,70x2と、1のウォーム72及び4つのウォームホイール73を含むウォームギヤ71と、ウォーム72に接続された移動モータ70M(図7参照)とを含む。2つの軸70x1,70x2は、それぞれ主走査方向に沿って延在し、副走査方向に関して互いに離隔している。軸70x1は、軸60x1,60x2の間に配置されており、列51に属する4つの支持部50を支持している。軸70x2は、軸60x2,60x3の間に配置されており、列52に属する4つの支持部50を支持している。各軸70x1,70x2の主走査方向一端近傍に、ラック70Rが設けられている。4つのウォームホイール73のうち、副走査方向の外側に位置する2つのウォームホイール73は、それぞれ軸70x1,70x2のラック70Rに係合している。移動モータ70Mが駆動すると、ウォームギヤ71が作動し、軸70x1,70x2が主走査方向に関して互いに逆向きに移動する。これに伴い、軸70x1に支持された4つの支持部50と、軸70x2に支持された4つの支持部50とが、主走査方向に関して互いに逆向きに移動する。
【0056】
各支持部50は、移動部70によって移動されることで、図3(a)及び図4(a)に示す退避位置と、図4(b)に示す第1支持位置と、図4(c)に示す第2支持位置と、図4(d)に示す第3支持位置とを取り得る。各支持部50において、退避位置及び第1〜第3支持位置は、主走査方向に関して互いに異なる位置である。
【0057】
各支持部50は、退避位置にあるとき、鉛直方向に関していずれの吐出面10aとも対向しない。このとき、8つの支持部50は、主走査方向に関して互いに異なる位置に配置されており、主走査方向に沿って千鳥状に配置されている。また、このとき、列51に属する4つの支持部50のうち、図4(a)で最も上方に示されている1つの支持部50を除く3つ、及び、列52に属する4つの支持部50のうち、図4(a)で最も下方に示されている1つの支持部50を除く3つは、主走査方向に関して吐出面10aの間(具体的には、各列10aR1〜10aR4に属する互いに隣接する2つの吐出面10aの間)に配置されていると共に、鉛直方向に関して環状ベルト60と対向する位置(具体的には、環状ベルト60の内側)に配置されている。即ち、このとき、各支持部50は、各環状ベルト60よりも鉛直方向に関して吐出面10aから離隔している。各支持部50の幅は、各環状ベルト60の幅と同じである。
【0058】
各支持部50は、第1〜第3支持位置にあるとき、鉛直方向に関して対応する吐出面10aと対向して用紙Pを支持する。
【0059】
列51に属する4つの支持部50は、それぞれ、退避位置から第1支持位置に移動するとき、図4(b)に矢印で示す方向(下方向)に距離D1移動する。列51に属する4つの支持部50は、それぞれ、退避位置から第2支持位置に移動するとき、図4(c)に矢印で示す方向(上方向)に距離D2(=D1)移動する。列51に属する4つの支持部50は、それぞれ、退避位置から第3支持位置に移動するとき、図4(d)に矢印で示す方向(下方向)に距離D3(>D1=D2)移動する。
【0060】
列52に属する4つの支持部50は、それぞれ、退避位置から第1支持位置に移動するとき、図4(b)に矢印で示す方向(上方向)に距離D1移動する。また、列52に属する4つの支持部50は、それぞれ、退避位置から第2支持位置に移動するとき、図4(c)に矢印で示す方向(下方向)に距離D2(=D1)移動する。列52に属する4つの支持部50は、それぞれ、退避位置から第3支持位置に移動するとき、図4(d)に矢印で示す方向(上方向)に距離D3(>D1=D2)移動する。
【0061】
各支持部50において、退避位置から第1支持位置までの移動距離D1と、退避位置から第2支持位置までの移動距離D2とは同じであり、退避位置から第3支持位置までの移動距離D3は、D1,D2よりも大きい。
【0062】
支持部50それぞれの移動に着目すると、移動部70は、各支持部50を、退避位置から第1支持位置に移動させるときと、退避位置から第2支持位置に移動させるときとにおいて、互いに逆向きに、かつ、互いに同じ距離D1,D2、移動させる(図4(b),(c)参照)。
【0063】
列51,52毎の支持部50の移動に着目すると、移動部70は、列51に属する4つの支持部50と、列52に属する4つの支持部50とを、退避位置から第1支持位置に移動させるときに、互いに逆向きに移動させる(図4(b)参照)。移動部70は、列51に属する4つの支持部50と、列52に属する4つの支持部50とを、退避位置から第2支持位置に移動させるときにも、互いに逆向きに移動させる(図4(c)参照)。移動部70は、列51に属する4つの支持部50と、列52に属する4つの支持部50とを、退避位置から第3支持位置に移動させるときにも、互いに逆向きに移動させる(図4(d)参照)。
【0064】
列51に属する4つの支持部50と、列52に属する4つの支持部50とは、第1支持位置にあるとき、搬送方向から見て互いに重なっている(図4(b)参照)。列51に属する4つの支持部50と、列52に属する4つの支持部50とは、第2支持位置にあるとき、搬送方向から見て互いに重なっている(図4(c)参照)。
【0065】
なお、各支持部50は、主走査方向に移動するが、鉛直方向及び副走査方向には移動しない。本実施形態において、各支持部50は、常に、環状ベルト60の上ループよりも下方に位置する。
【0066】
各支持部50は、フラッシング時に退避位置に配置され、また、記録時に、搬送される用紙Pのサイズに応じて第1〜第3支持位置のいずれかに配置される。フラッシングは、画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてヘッド10の全アクチュエータを駆動することにより全吐出口14aからインクを吐出させる動作をいい、本発明のメンテナンスに対応する。
【0067】
用紙Pのサイズと第1〜第3支持位置とは、図5(a)に示す関係にある。図5(a)のグラフの横軸は、用紙Pの幅Wに対応し、具体的には、用紙Pの主走査方向に関する中心Oから一端までの長さを示す。搬送される用紙Pの中心Oの位置は、図4(a)〜(d)にも示されている。例えば、A4サイズの用紙Pについては、各支持部50を第1支持位置に配置すれば、適切な搬送が実現されると想定される。A5サイズの用紙Pについては、各支持部50を第2支持位置に配置すれば、適切な搬送が実現されると想定される。A6サイズの用紙Pについては、各支持部50を第1又は第3支持位置に配置すれば、適切な搬送が実現されると想定される。ここで、適切な搬送とは、用紙Pが縦向き(長手方向が搬送方向と一致する向き)で搬送された場合に、搬送の不具合(ジャム等)が生じ難いことを意味する。具体的には、適切な搬送が実現されると想定される各支持部50の支持位置は、用紙Pの主走査方向の両端が支持部50によって支持される位置、又は、用紙Pの主走査方向の両端が支持部50からはみ出すはみ出し量が当該両端が垂れ下がることによる搬送の不具合が生じにくい量となる位置である。
【0068】
第1支持位置が対応する用紙Pの幅Wと第2支持位置が対応する用紙Pの幅Wとの間にブランクがあり、当該ブランクを埋めるように第3支持位置が対応する用紙Pの幅Wが存在する。つまり、第1支持位置及び第2支持位置のみでは主走査方向のサイズ(幅W)が連続的に異なる種々の用紙Pに対応することができないが、第1支持位置及び第2支持位置に加えて第3支持位置があることで、主走査方向のサイズが連続的に異なる種々の用紙Pに対応することができる。このように、支持部50は、第1〜第3支持位置のうちの1つを取ることで、主走査方向のサイズが連続的に異なる種々の用紙Pを支持可能となっている。
【0069】
用紙Pのサイズと支持位置との対応関係を示す情報(図5(b)参照)は、ROM100bに記憶されている。制御部100は、ROM100bに記憶された当該情報に基づいて、搬送される用紙Pのサイズに応じて各支持部50が第1〜第3支持位置のうちの1つを取るように、移動部70を制御する。
【0070】
なお、本実施形態では、図5(b)に示すように、用紙Pのサイズ毎に、用紙Pの表面に対する記録の場合(即ち、片面記録の場合、又は、両面記録における表面に対する記録の場合)と、用紙Pの裏面に対する記録の場合(即ち、両面記録における裏面に対する記録の場合)とのそれぞれについて、支持位置が定められている。例えば、A4サイズの用紙Pについては、表面に対する記録の場合及び裏面に対する記録の場合のそれぞれにおいて、各支持部50を第1支持位置に配置する。A5サイズの用紙Pについては、表面に対する記録の場合及び裏面に対する記録の場合のそれぞれにおいて、各支持部50を第2支持位置に配置する。A6サイズの用紙Pについては、表面に対する記録の場合は各支持部50を第1支持位置に配置し、裏面に対する記録の場合は各支持部50を第3支持位置に配置する。
【0071】
A6サイズの用紙Pは、図5(a)に示すように、第1支持位置及び第3支持位置の両方に対応するが、第1支持位置にある支持部50によって支持されたときと、第3支持位置にある支持部50によって支持されたときとで、はみ出し量(用紙Pの主走査方向両端が支持部50からはみ出す量。具体的には、用紙Pの主走査方向一端と他端との間に配置される支持部50のうち、一端に最も近い1の支持部50と一端との間隔と、他端に最も近い1の支持部50と他端との間隔との和)Eが異なり、第1支持位置にある支持部50によって支持されたときのはみ出し量Eが第3支持位置にある支持部50によって支持されたときのはみ出し量E(本実施形態では、このときのE≒0)よりも多い(図4(b),(d)参照)。そこで、用紙Pのはみ出し量E、支持部50の移動距離D1,D3、用紙Pの腰の強さ等に鑑みて、表面に対する記録の場合は支持部50を第1支持位置に配置し、裏面に対する記録の場合(即ち、表面に対する記録が完了した後にさらに裏面に対して記録が行われる場合)は支持部50が第3支持位置を配置する。
【0072】
キャップユニット40uは、図4に示すように、ヘッドユニット10uに含まれる12のヘッド10にそれぞれ対応する、12のキャップ40を含む。12のキャップ40は、吐出面10aと同様に、主走査方向に沿った4つの列40R1〜40R4を形成するように並べられている。各列40R1〜40R4は、3つのキャップ40で構成されている。
【0073】
12のキャップ40は、互いに同じ構成であり、それぞれ、図6(a)に示すように、鉛直方向に関して吐出面10aと対向する凹部を含む。フラッシング時に吐出口14aから吐出されたインクは、凹部に受容される。凹部に受容されたインクは、管41を介して、廃インクタンク(図示略)に移動する。
【0074】
各キャップ40は、鉛直方向に関して、いずれの環状ベルト60とも対向せず、かつ、退避位置にあるいずれの支持部50とも対向しない(図4(a)参照)。また、各キャップ40は、鉛直方向に関して、第1〜第3支持位置にある各支持部50を挟んで各吐出面10aと対向する(図4(b)〜(d)及び図6(b)参照)。各キャップ40は、各支持部50が退避位置にあるときに各ヘッド10をメンテナンスする(具体的には、上述のように、フラッシング時に吐出口14aから吐出されたインクを受ける)ように構成されている(図6(a)参照)。即ち、各キャップ40は、本発明のメンテナンス部及び液体受け部材に相当する。
【0075】
次いで、図8を参照し、制御部100が実行する制御内容について説明する。制御部100は、プリンタ1の電源がONの間、図8に示すルーチンを繰り返し実行する。当該ルーチンの開始時点において、各支持部50は退避位置に配置されている。
【0076】
制御部100は、先ず、外部装置から記録指令を受信したか否かを判断する(S1)。記録指令を受信していない場合(S1:NO)、制御部100は、S1の処理を繰り返す。
【0077】
記録指令を受信した場合(S1:YES)、制御部100は、フラッシングが行われるように各部を制御する(S2)。具体的には、S2において、制御部100は、フラッシングデータに基づいてヘッド10の全アクチュエータを駆動することにより、全吐出口14aからインクを吐出させる。このとき、各支持部50は退避位置に配置されており、各吐出面10aと各キャップ40とが鉛直方向に関して支持部50を挟むことなく対向し、各吐出面10aの吐出口14aから吐出されたインクが各キャップ40の凹部に受容される。
【0078】
S2の後、制御部100は、ROM100bに記憶されている情報(図5(b)参照)と、記録指令に含まれる用紙Pのサイズに関する情報と、用紙Pの表面及び裏面のいずれに対する記録を行うかとに基づいて、各支持部50を第1〜第3支持位置のいずれに移動させるかを決定し、移動モータ70Mを制御して、各支持部50を退避位置から当該決定した支持位置に移動させる(S3)。
【0079】
S3の後、制御部100は、用紙Pの1頁(表面又は裏面)に対する記録が行われるように各部を制御する(S4)。
【0080】
具体的には、S4において、制御部100は、片面記録の場合、又は、両面記録における表面に対する記録の場合、給紙モータ21M及び搬送モータ20Mを制御して、収容部3内で最も上方にある用紙Pをヘッドユニット10uに向けて搬送し、さらにセンサ6(図1及び図7参照)からの信号に基づいて各ヘッド10を制御して、用紙Pの表面にインクを吐出させる。これにより、用紙Pの表面に対する記録が行われる。片面記録の場合、制御部100は、表面に対する記録が行われた用紙Pを受容部4まで搬送させる。両面記録における表面に対する記録の場合、制御部100は、上述のようにローラ対26,27の回転方向を切り換え、ローラ対26〜28の駆動により、表面に対する記録が行われた用紙Pを図1の白抜き矢印に沿って搬送させる。
【0081】
また、S4において、制御部100は、両面記録における裏面に対する記録の場合、搬送モータ20Mを制御して、直近のS4で図1の白抜き矢印に沿って搬送され、反転搬送部20aにより表裏が反転された用紙Pを、ヘッドユニット10uに向けて搬送し、さらにセンサ6からの信号に基づいて各ヘッド10を制御して、用紙Pの裏面にインクを吐出させる。これにより、用紙Pの裏面に対する記録が行われる。制御部100は、裏面に対する記録が行われた用紙Pを受容部4まで搬送させる。
【0082】
S4の後(具体的には、S4で用紙Pの表面又は裏面に対する記録が完了し、当該用紙Pの後端が支持ユニット50uよりも搬送方向下流側に到達した後)、制御部100は、移動モータ70Mを制御して、各支持部50を第1〜第3支持位置のいずれから退避位置に移動させる(S5)。
【0083】
S5の後、制御部100は、記録指令を参照し、次の頁に対する記録を行うか否かを判断する(S6)。具体的には、S6において、制御部100は、片面記録では、次の用紙Pに対する記録を行う場合に、次の頁に対する記録を行うと判断する。両面記録では、直近のS4で表面に記録が行われた用紙Pの裏面に対する記録を行う場合、及び、次の用紙Pの表面に対する記録を行う場合に、次の頁に対する記録を行うと判断する。
【0084】
次の頁に対する記録を行う場合(S6:YES)、制御部100は、処理をS2に戻し、上述のように、フラッシングに係る処理(S2)を行った後、支持部50の移動に係る処理(S3)を行う。ここで、制御部100は、S4で用紙Pの表面又は裏面に対する記録が完了し、当該用紙Pの後端が支持ユニット50uよりも搬送方向下流側に到達した時点から、当該用紙Pが受容部4に受容されて次の用紙Pの先端が支持ユニット50uに到達する時点、又は、反転搬送部20aにより表裏が反転された用紙Pの先端が支持ユニット50uに到達する時点までの間に、フラッシング及び支持部50の移動が完了するように、各部を制御する。
【0085】
次の頁に対する記録を行わない場合(S6:NO)、制御部100は、当該ルーチンを終了する。
【0086】
以上に述べたように、本実施形態によれば、移動部70は、各支持部50が支持位置と退避位置とを取り得るように、支持部50を主走査方向に移動させる(図4参照)。これにより、搬送方向の小型化を実現することができる。
【0087】
退避位置にある8つ支持部50のうちの少なくとも1つ(具体的には、列51に属する4つの支持部50のうち、図4(a)で最も上方に示されている1つの支持部50を除く3つ、及び、列52に属する4つの支持部50のうち、図4(a)で最も下方に示されている1つの支持部50を除く3つ)は、主走査方向に関して吐出面10aの間(具体的には、各列10aR1〜10aR4に属する互いに隣接する2つの吐出面10aの間)に配置されている。例えば、退避位置にある8つ支持部50の全てが、主走査方向に関して同じ列に属する全ての吐出面10aの外側にある場合、8つの支持部50が当該退避位置に配置されることで、プリンタ1が主走査方向に大型化してしまう。これに対し、上記構成によれば、2つの吐出面10a間のデッドスペースを、8つの支持部50のうちの少なくとも1つの退避位置として利用することで、主走査方向の大型化を抑制することができる。
【0088】
移動部70は、各支持部50が、1つの支持位置のみでなく、主走査方向に関して互いに異なる第1〜第3支持位置を取り得るように、支持部50を主走査方向に移動させる。当該構成によれば、搬送方向の小型化を実現しつつ、主走査方向のサイズが互いに異なる用紙Pを搬送可能である。
【0089】
移動部70は、各支持部50を、退避位置から第1支持位置に移動させるときと、退避位置から第2支持位置に移動させるときとにおいて、互いに逆向きに移動させる(図4(b),(c)参照)。当該構成によれば、移動部70の構成及び制御を簡素化することができる。具体的には、各支持部50を、退避位置から第1支持位置に移動させるときと、退避位置から第2支持位置に移動させるときとにおいて、互いに逆向きに移動させることで、移動部70の移動モータ70Mの回転方向を切り換えるだけでよいので、移動部70の構成及び制御を簡素化することができる。
【0090】
移動部70は、各支持部50を、退避位置から第1支持位置に移動させるときと、退避位置から第2支持位置に移動させるときとにおいて、互いに同じ距離D1,D2を移動させる(図4(b),(c)参照)。当該構成によれば、移動部70の構成及び制御をより確実に簡素化することができる。具体的には、各支持部50を、退避位置から第1支持位置に移動させるときと、退避位置から第2支持位置に移動させるときとにおいて、互いに逆向きに、かつ、互いに同じ距離を移動させることで、移動部70の移動モータ70Mの回転量は同じで回転方向を切り換えるだけでよいので、移動部70の構成及び制御を簡素化することができる。
【0091】
制御部100は、ROM100bに記憶された情報(図5(b)参照)に基づいて、搬送される用紙Pのサイズに応じて各支持部50が第1〜第3支持位置のうちの1つを取るように移動部70を制御する。当該構成によれば、用紙Pのサイズに応じた適切な搬送を行うことができる。
【0092】
退避位置から第3支持位置までの移動距離D3は、退避位置から第1支持位置までの移動距離D1よりも大きい(図4(b),(d)参照)。制御部100は、第1支持位置と第3支持位置との両方に対応するサイズの用紙Pが搬送される場合(本実施形態では、図5(b)に示すように、A6サイズの用紙Pについて、片面記録を行う場合、又は、両面記録における表面に対する記録を行う場合)に、各支持部50が第1支持位置を取るように移動部70を制御する。当該構成によれば、移動距離が小さい方の支持位置(第1支持位置)に各支持部50を移動させることで、移動に要する時間を低減し、スループットを向上させることができる。
【0093】
上記両方に対応するA6サイズの用紙Pは、第1支持位置にある支持部50によって支持されたときのはみ出し量Eが、第3支持位置にある支持部50によって支持されたときのはみ出し量Eよりも多い(図4(b),(d)参照)。制御部100は、A6サイズの用紙Pが搬送される場合に、表面の記録時は各支持部50が第1支持位置を取るように、かつ、裏面の記録時は各支持部50が第3支持位置を取るように、移動部70を制御する(図5(b)参照)。表面の記録時は、用紙Pの腰が比較的強いため、はみ出し量Eが比較的多くても、搬送に不具合が生じ難い。一方、裏面の記録時は、用紙Pが表面の記録によって水分を含み腰が比較的弱くなっているため、はみ出し量Eが多いと、搬送に不具合が生じ得る。具体的には、腰の比較的弱い用紙Pにおいてはみ出し量Eが多いと、用紙Pの主走査方向の端部が垂れ下がり、当該端部が周辺部材等に引っ掛かってジャムが生じ得る。上記構成によれば、表面の記録時ははみ出し量Eが多く移動距離D1が小さい第1支持位置、裏面の記録時ははみ出し量Eが少なく移動距離D3が大きい第3支持位置に、各支持部50を移動させる。これにより、搬送の不具合の抑制と、スループット向上とを、共に実現することができる。
【0094】
支持部50は、第1〜第3支持位置のうちの1つを取ることで、主走査方向のサイズが連続的に異なる種々の用紙Pを支持可能である(図5(a)参照)。当該構成によれば、種々のサイズの用紙Pを適切に搬送することができる。
【0095】
移動部70は、第1支持部(列51に属する4つの支持部50)及び第2支持部(列52に属する4つの支持部50)に共通の駆動源としての移動モータ70Mを含む。当該構成によれば、移動部70が第1支持部を移動させるための駆動源と第2支持部を移動させるための駆動源との両方を含む場合に比べ、移動部70の構成の簡素化を実現することができる。
【0096】
移動部70は、第1支持部(列51に属する4つの支持部50)及び第2支持部(列52に属する4つの支持部50)を、退避位置から第1〜第3支持位置の各支持位置に移動させるときに、互いに逆向きに移動させる(図4参照)。当該構成によれば、移動部70構成及び制御を簡素化することができる。
【0097】
第1又は第2支持位置にある第1支持部(列51に属する4つの支持部50)と第2支持部(列52に属する4つの支持部50)とは、搬送方向から見て互いに重なっている(図4(b),(c)参照)。当該構成によれば、搬送精度を向上させることができる。具体的には、搬送される用紙Pが第1支持部及び第2支持部に支持される際に、第1支持部及び第2支持部が搬送方向から見て互いに重なっているため、用紙Pにおける第1支持部に支持される部分と第2支持部に支持される部分とが一致する。そのため、第1支持部から第2支持部への用紙Pの受け渡しを、安定して行うことができる。
【0098】
支持ユニット50uは、8つの支持部50に加え、6つの環状ベルト60を含む。当該構成によれば、8つの支持部50と6つの環状ベルト60とで用紙Pを支持することで、搬送精度を向上させることができる。
【0099】
退避位置にある各支持部50は、各環状ベルト60よりも鉛直方向に関して吐出面10aから離隔している。当該構成によれば、メンテナンス時に吐出口14aから吐出されたインクが支持部50に付着するのを防止することができる。
【0100】
退避位置にある8つの支持部50のうちの少なくとも1つ(具体的には、列51に属する4つの支持部50のうち、図4(a)で最も上方に示されている1つの支持部50を除く3つ、及び、列52に属する4つの支持部50のうち、図4(a)で最も下方に示されている1つの支持部50を除く3つ)は、環状ベルト60の内側に配置されている(図3(a)及び図4(a)参照)。当該構成によれば、用紙Pの搬送を環状ベルト60により行うため、搬送精度を確実に向上させることができる。また、環状ベルト60の内側のデッドスペースを、8つの支持部50のうちの少なくとも1つの退避位置として利用することで、小型化が可能である。
【0101】
プリンタ1は、鉛直方向に関して支持位置にある各支持部50を挟んで各吐出面10aと対向する位置に配置され、各支持部50が前記退避位置にあるときに12のヘッド10をメンテナンスするように構成された、12のキャップ40を有する(図4及び図6参照)。当該構成によれば、支持部50を退避位置に移動させることで、メンテナンスを適切に行うことができる。
【0102】
続いて、図9を参照し、本発明の第2実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。
【0103】
第2実施形態に係るプリンタは、移動部の構成及び支持部の移動態様を除き、第1実施形態に係るプリンタ1と同様の構成を有する。第2実施形態において、移動部270は、各支持部50を、主走査方向のみならず、鉛直方向にも移動させる。図9では、第1実施形態と同じ構成要素に同一の符号を付している。
【0104】
移動部270は、各軸70x1,70x2の代わりに、軸270xを有する。軸270xは、それぞれ主走査方向に沿って延在する上軸270xa及び下軸270xbを含む。上軸270xaは、2つのローラ274を介して、下軸270xbの上方に配置されている。2つのローラ274は、上軸270xaの主走査方向一端及び他端それぞれの近傍に配置されており、副走査方向に沿った軸線を中心に回転可能に上軸270xaに支持されている。下軸270xbの上面275は、2つの凹部276が形成されたことで、各凹部276の底面に対応する面277、及び、凹部276の外側にあって面277よりも上方に位置する面278を含む。2つの凹部276は、下軸270xbの主走査方向一端及び他端それぞれの近傍に配置されている。各凹部276の主走査方向の長さは、環状ベルト60の幅と略同じである。ウォームホイール73と係合するラック70R(図3参照)は、上軸270xaの主走査方向一端近傍に設けられている。移動モータ70Mが駆動すると、上軸270xaは移動するが、下軸270xbは移動しない。
【0105】
各支持部50が退避位置にあるとき、各ローラ274は、各凹部276内にあり、面277上に配置されている(図9(a)参照)。このとき、第1実施形態と同様、8つの支持部50のうちの少なくとも1つ(具体的には、列51に属する4つの支持部50のうち、図4(a)で最も上方に示されている1つの支持部50を除く3つ、及び、列52に属する4つの支持部50のうち、図4(a)で最も下方に示されている1つの支持部50を除く3つ)は、環状ベルト60の内側に配置されている。また、各支持部50の上面(吐出面10aと対向する面)は、各環状ベルト60の上面(吐出面10aと対向する面)よりも下方に位置している。
【0106】
各支持部50が退避位置から第1支持位置に移動するとき、移動モータ70Mの駆動により、上軸270xaが主走査方向に沿って図9の右方に移動する。このとき、各ローラ274が、上面275における各凹部276を画定する側面を乗り越えて、各凹部276外に到達し、面278上に配置される(図9(b)参照)。これにより、各支持部50の上面(吐出面10aと対向する面)は、各環状ベルト60の上面(吐出面10aと対向する面)と鉛直方向に関して同じ位置に配置される。
【0107】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の構成による同様の効果に加え、支持部50と環状ベルト60とにおいて吐出面10aと対向する面を面一にすることで、ジャムを抑制すると共に、搬送精度を向上させることができる。また、支持部50と環状ベルト60とにおいて吐出面10aと対向する面を面一にすることで、吐出面10aと用紙Pとの間隔が一定になるため、記録精度を向上させることができる。
【0108】
続いて、図10及び図11を参照し、本発明の参考例に係るインクジェットプリンタについて説明する。
【0109】
本参考例に係るプリンタは、支持ユニット及び移動部の構成並びに支持部の移動態様を除き、第1実施形態に係るプリンタ1と同様の構成を有する。本参考例において、支持ユニット350uは、環状ベルト60を含まず、14の支持部350を含む。1の吐出面10aに対して2つの支持部350が設けられており、各支持部350は、移動部370によって移動されることで、図10及び図11(a)に示す退避位置と、図11(b)に示す1つの支持位置とを取り得る。図10及び図11では、第1実施形態と同じ構成要素に同一の符号を付している。
【0110】
14の支持部350は、図10に示すように、主走査方向に沿った2つの列351,352を形成するように並べられている。各列351,352は、7つの支持部350で構成されている。列351は、吐出面10aの列10aR1,10aR2(第1列)に対応し、列352は、吐出面10aの列10aR3,10aR4(第2列)に対応する(図4参照)。
【0111】
移動部370は、軸70x1,70x2の代わりに、軸370x1,370x2を有し、ウォームギヤ71の代わりに、ピニオン371を有する。
【0112】
各軸370x1,370x2は、それぞれ主走査方向に沿って延在する上軸370xa及び下軸370xbを含む。各支持部350は、各連結板370xcの連結部Aを介して、上軸370xa及び下軸370xbの一方と連結されている。各連結板370xcは、各支持部350の搬送方向中央から下方に延びており、連結部Aを介して上軸370xa及び下軸370xbの一方と連結されると共に、上軸370xa及び下軸370xbの他方とは連結されず、当該他方が摺動可能に貫挿される貫通孔を有する。各列351,352に属する7つの支持部350は、各軸370x1,370x2の主走査方向一端側から他端側に向けて配置された順に、上軸370xa及び下軸370xbに交互に連結されている。
【0113】
上軸370xa及び下軸370xbそれぞれの主走査方向一端近傍に、ラック370Rが設けられている。ピニオン371は、上軸370xaのラック370Rと下軸370xbのラック370Rとに係合している。移動モータ70Mが駆動すると、ピニオン371が回転し、上軸370xa及び下軸370xbが主走査方向に関して互いに逆向きに移動する。これに伴い、上軸370xaに連結された支持部350と、下軸370xbに連結された支持部350とが、主走査方向に関して互いに逆向きに移動する。各支持部350が退避位置から支持位置に移動するとき、上軸370xa及び下軸370xbは、互いに逆向きに、かつ、互いに同じ距離Da,Db移動する。
【0114】
列351に属する7つの支持部350、及び、列352に属する7つの支持部350は、それぞれ、支持位置にあるとき、主走査方向に関して、互いに略等間隔になるように配置されている。また、全ての支持部350が支持位置にあるとき、搬送方向から見て、列351に属する7つの支持部350と、列352に属する7つの支持部350とは、互いに重なる位置に配置されている。
【0115】
各吐出面10aに対応する2つの支持部350は、支持位置において、当該吐出面10aと鉛直方向に関して対向し(図11(b)参照)、退避位置において、当該吐出面10aと鉛直方向に関して対向せずに主走査方向に関して当該吐出面10aを挟む位置に配置される(図11(a)参照)。また、退避位置において、吐出面10aの列10aR1,10aR2(第1列)に属する互いに隣接する2つの吐出面10aの間に配置される2つの支持部350、及び、吐出面10aの列10aR3,10aR4(第2列)に属する互いに隣接する2つの吐出面10aの間に配置される2つの支持部350は、それぞれ、退避位置から支持位置に移動する際に、互いに逆向きに、かつ、互いに同じ距離Da,Db移動する。これにより、支持位置において、当該2つの支持部350の一方は、当該隣接する2つの吐出面10aの一方に対向し、当該2つの支持部350の他方は、当該隣接する2つの吐出面10aの他方に対向する。
【0116】
以上に述べたように、本参考例によれば、第1実施形態と同様の構成による同様の効果に加え、退避位置から支持位置への移動距離を比較的小さくすることができる。また、移動部370の構成及び制御を簡素化することができる。さらに、1の吐出面10aに対して2つの支持部350で用紙Pを確実に支持しながら搬送することができる。
【0117】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0118】
・支持位置の数は、3つ(第1実施形態)に限定されず、2つ又は4以上であってもよい。
・退避位置にある複数の支持部の全てが、第1方向に関して同じ列に属する全ての吐出面の外側にあってもよい。
・制御部は、第1支持位置と第3支持位置との両方に対応するサイズの記録媒体が搬送される場合に、第1面の記録時と第2面の記録時とで支持位置を異ならせなくてもよい。
・搬送部は、反転搬送部を含まなくてもよい。
・第1及び第2実施形態において、協働支持部(環状ベルト)を省略してもよい。また協働支持部として、環状ベルトに代えて、板状の支持部を配置してもよい。
・第1支持部を移動させるための駆動源と第2支持部を移動させるための駆動源とが別々であってもよい。
・移動部は、支持部を移動させることが可能である限り、任意の構成であってよく、ウォームギヤとラックによる構成や、ラックとピニオンによる構成に限定されない。
・キャップは、パージ時に吐出口から吐出されたインクを受容してもよい。また、1のキャップが、複数のヘッドの吐出口を覆ってもよい。
・メンテナンス部は、液体受け部材に限定されず、例えば、吐出面を清掃するためのワイパ、複数の吐出口を覆って吐出口内の液体の増粘を防止する封止部材等であってもよい。また、メンテナンス部を省略してもよい。
・吐出口から液体を吐出させるエネルギー付与部は、圧電素子を用いたピエゾ方式のものに限定されず、その他の方式(例えば、発熱素子を用いたサーマル方式、静電力を用いた静電方式等)のものであってもよい。
・ヘッドの吐出口から吐出される液体は、インクに限定されず、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等、任意の液体であってよい。また、複数のヘッド間で吐出口から吐出される液体の種類が異なってもよいし、1のヘッドの吐出口から複数種類の液体が吐出されてもよい。
・ヘッドの数は、複数である限り、任意である。
・本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。
・記録媒体は、用紙に限定されず、記録可能な任意の媒体であってよい。
【符号の説明】
【0119】
1 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
10 ヘッド
10a 吐出面
10aR1〜10aR4 列
10aR1,10aR2 第1列
10aR3,10aR4 第2列
10u ヘッドユニット
14a 吐出口
20 搬送部
20a 反転搬送部
40 キャップ(液体受け部材,メンテナンス部)
40u キャップユニット
50u;350u 支持ユニット
50;350 支持部
51,52;351,352 列
60 環状ベルト(協働支持部)
70;270;370 移動部
70M 移動モータ(駆動源)
100 制御部
100b ROM(記憶部)
P 用紙(記録媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11