(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記シートについてのシート種情報を記憶するシート種情報記憶手段を備え、前記シート種情報に基づいて、前記所定の時間または前記吸引部の吸引の強さを可変するように制御する、
請求項1ないし4のいずれかに記載のシート排出装置。
前記制御部は、前記シートについてのサイズ情報を記憶するサイズ情報記憶手段を備え、前記サイズ情報に基づいて、前記所定の時間または前記吸引部の吸引の強さを可変するように制御する、
請求項1ないし4のいずれかに記載のシート排出装置。
前記制御部は、前記シートについての坪量情報を記憶する坪量情報記憶手段を備え、前記坪量情報に基づいて、前記所定の時間または前記吸引部の吸引の強さを可変するように制御する、
請求項1ないし4のいずれかに記載のシート排出装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、プリンタ、ファクシミリ、または複合機またはMFP(Multi Function Peripherals)と呼称される多機能装置などが、画像形成装置として用いられている。
【0003】
一般的な画像形成装置においては、画像情報を解析して画像データに展開する画像処理を行う画像処理部、画像データに基づいて電子写真方式でトナー像を形成し、形成したトナー像をシート(記録用紙)に転写する作像部、シート上のトナー像を定着する定着部(定着装置)、および、定着が行われたシートを排出するシート排出装置が設けられている。
【0004】
シート排出装置において、送られてきたシートが排出ローラによって排出口から排出され、シート積載部(シートトレイ)の上に積載される。一般に、シートの排出口とシート積載部との間には所定の落差が設けられており、排出されたシートはその落差を落下してシート積載部上に積み上げられる。
【0005】
ところが、排出口から排出されたシートとシート積載部との間には空気層が形成されるため、シートが落下する際に空気による浮力が発生し、シートの落下と安定に時間がかかるだけでなく、シートの落下時に空気層の影響によってシートの落下位置がずれてしまい、シート積載部への積載状態が乱れてしまうといった不具合が発生し易い。
【0006】
図13に示すシート排出装置130jにおいて、排出ローラ131jによってシートトレイ132jにシートPPが排出されるときに、シートトレイ132jの上面または先に積載されたシートPPの上面と排出されつつあるシートPPとの間には落差がある。そのため、排出されつつあるシートPPと積載されたシートPPの上面との間には空気層KSが形成され、シートPPの後端が自由落下する際に、シートPPはその空気層KSに乗った状態になり、浮力が発生する。そのため、シートPPが落下して積載されるのに時間がかかる。また、空気が抜ける際の外乱によるシートPPの傾きやシートPPのカール状態などによって、シートPPの積載位置がずれたり乱れたりし易いという問題がある。このため、空気層KSによるシートPPの乱れを招かないようにするためには積載枚数を減らさざるを得ないことがある。
【0007】
また、シートPPの両側から逃げる空気の量に差がある場合には、これによってシートPPを横方向に移動させる力が生じるため、シートPPが同じ位置に積載されない。そのため、乱れたシートPPを揃えるための機構を追加する必要も生じ、コスト高となる。
【0008】
このような問題に対処するものとして、シートの下方の空気を逃がすための空気流出口をシート排出壁に設けることや、空気流出口近傍にファンを配置することが提案されている(特許文献1)。
【0009】
また、用紙の先端部停止位置近傍に空気吸引手段を配置し、用紙載置台上に排出される用紙の下面側の空気を空気吸引手段により吸引することにより用紙を速やかに落下させる装置が提案されている(特許文献2)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔画像形成装置の全体の構成例〕
図1には、一実施形態の画像形成装置1の全体の構成の例が示されている。なお、ここで例にあげた画像形成装置1は、フルカラーの電子写真方式の作像部、定着部、および制御部などを備えているが、それらの一部の構成について
図1では図示が省略されている。なお、画像形成装置1として、原稿読み取り部を備えないプリンタ、その他種々の構成の装置であってもよい。
【0018】
図1において、画像形成装置1は、画像形成部GKおよび後処理部ASからなる。画像形成部GKは、トナー像形成部10、原稿読取り部20、転写部30、給紙部40、定着部50、および本体制御部70などを備える。
【0019】
トナー像形成部10は、原稿読取り部20または外部から受信して入力された画像データに基づいて、電子写真方式によりYMCKの各色のトナー像を形成する。各色のトナー像の形成のために、感光体、帯電器、露光器、および現像部などを備える。
【0020】
原稿読取り部20は、原稿台およびスキャナーなどを備え、また、原稿台およびスキャナーに対して原稿を連続的に搬送するADF部を備える。原稿読取り部20は、原稿の画像を読み取って画像データを生成し、画像データを本体制御部70およびトナー像形成部10に送る。
【0021】
転写部30では、トナー像形成部10で形成されたトナー像が、1次転写ローラにより転写されて転写ベルト上に重ね合わせられる。転写ベルト上に形成されたトナー像は、2次転写ローラによって記録媒体である用紙(シート)PPにページ毎に転写される。
【0022】
給紙部40では、収納された用紙PPが給紙ローラによって1枚ずつ送り出され、転写ベルト上のトナー像と同期するようにレジストローラによって2次転写ローラの転写位置に搬送される。
【0023】
定着部50は、発熱体であるヒータを内蔵した加熱ローラおよび加圧ローラなどを備える。転写位置を通過した用紙PPは、加熱ローラと加圧ローラとの間のニップ部を通過することにより、トナー像が熱と圧力とによって用紙PPに定着される。定着された用紙PPは、排紙ローラ61によって画像形成部GKから用紙積載部62に排出される。
【0024】
本体制御部70は、画像形成部GKを制御するとともに、後処理部ASを含む画像形成装置1の全体を制御する。
【0025】
後処理部ASは、画像形成部GKの用紙積載部62の上に設けられた水平搬送部110、水平搬送部110から搬送される用紙PPに後処理を施す後処理本体部120、用紙排出部130、および後処理制御部170などを備える。
【0026】
水平搬送部110は、複数の搬送ローラ111、112が設けられ、排紙ローラ61から排出された用紙PPをそのまま搬送して後処理本体部120に送り込む。
【0027】
後処理本体部120は、水平搬送部110から搬送されてきた用紙PPに対し、用紙揃え、ステープル、または簡易製本、その他の後処理を施す。そのため、処理トレイ121、整合板122、ステープラユニット123などが設けられる。また、後処理本体部120には、搬送ローラ124、125、および切り替え爪126などが設けられたメイン搬送路HSM、および、搬送ローラ127などが設けられたサブ搬送路HSSが設けられる。
【0028】
メイン搬送路HSMを搬送される用紙PP、および処理トレイ121によって処理が行われた用紙(用紙束)PPは、最終的には後で述べる排出ローラ131によってメイントレイ132上に排出される。サブ搬送路HSSを搬送される用紙PPは、最終的にはサブトレイ133上に排出される。
【0029】
なお、後処理部ASにおいて後処理を行う場合には、用紙PPを処理トレイ121上に一旦集積し、必要な後処理を行った後で、用紙(用紙束)PPを排出ローラ131により排出してメイントレイ132上に積載する。
【0030】
処理トレイ121は、本発明における「シート束積載部」の例である。
【0031】
また、後処理部ASには、用紙PPに対し後処理を施さずに排出する機能も備わっている。その場合には、処理トレイ121上に用紙PPを集積することなく、メイン搬送路HSMを搬送された用紙PPをそのまま排出ローラ131により排出してメイントレイ132上に積載する。
【0032】
用紙排出部130は、後処理本体部120のハウジングを形成する背板120Aの周辺において主として設けられ、メイン搬送路HSMまたはサブ搬送路HSSから搬送される用紙PPを排出して積載する。
〔用紙排出部〕
次に、用紙排出部130について詳しく説明する。
【0033】
図2には用紙排出部130の正面断面図が、
図3には用紙排出部130の上面図が、
図4には後処理制御部170の構成の例を示すブロック図が、
図5には用紙排出部130における動作の様子を示すタイミング図が、
図6にはシャッタ145Bの形状の例が、
図7には吸引部134における吸引動作を行う時間および吸引の強さの設定方法の例が、それぞれ示されている。
【0034】
なお、
図4においては、後処理制御部170に備えられた機能のうち、用紙排出部130の制御に関連するもののみが示されており、その他の機能は図示が省略されている。
【0035】
図1〜
図3を参照して、用紙排出部130には、排出壁部120a、排出ローラ131、メイントレイ132、サブトレイ133、および吸引部134などが設けられる。
【0036】
排出壁部120aには、用紙PPを排出するための排出口120bが形成されている。排出口120bは、各サイズの用紙PPが通過するものであればよい。なお、排出壁部120aは、排出ローラ131の周辺の構成部材であればよく、例えば背板120Aの一部であってもよい。
【0037】
排出ローラ131は、メイン搬送路HSMから送られてくる用紙PPを排出口120bから排出する。排出ローラ131の上流側には、排出口120aにおいて用紙PPを検出する排出口センサSE1が設けられており、用紙PPがメイン搬送路HSMを通って排出ローラ131の手前までくるとこの排出口センサSE1の検出信号S1がオンとなる。
【0038】
メイントレイ132は、排出口120bから排出されて落下する用紙PPを積載するためのものである。メイントレイ132は、その上に積載された用紙PPの量(積載高さ)に応じて、排出壁部120aに沿って上下方向に移動(昇降)することが可能である。メイントレイ132は、上下方向に移動することによって、積載する用紙PPの最上面の高さを一定に保つことが可能であり、これによって多枚数の用紙PPを積載することが可能である。
【0039】
サブトレイ133は、サブ搬送路HSSから搬送されて排出される用紙PPを積載するためのものである。
【0040】
メイントレイ132およびサブトレイ133は、本発明における「シート積載部」の例である。
【0041】
吸引部134は、排出壁部120aにおける排出口120bとメイントレイ132との間で開口し、排出口120bから排出される用紙PPの下方にある空気層の空気を吸引する。
【0042】
すなわち、吸引部134には、負圧室142を形成するハウジング141、負圧室142内の空気を大気に向けて排気するファン143、排出壁部120aの負圧室142に連通する箇所に設けられた開口部144、開口部144を開閉するシャッタ145などが備えられる。
【0043】
ファン143は、ファンモータM11によって回転駆動される。ファンモータM11の回転速度に応じて、吸引部134の吸引の強さが可変される。つまり、ファンモータM11の回転速度が大きいほど吸引の強さが強くなる。
【0044】
開口部144は、排出口120bから排出される用紙PPの下方において開口する。開口部144の幅は、用紙PPの幅の最大サイズを越えない寸法となっている。
【0045】
シャッタ145は、開口部144を開閉するように、排出壁部120aに沿って上下方向に移動可能に設けられている。シャッタ145は、シャッタモータM12によって駆動されて移動する。シャッタモータM12に代えてソレノイドまたはシリンダなどを用いてもよい。
【0046】
シャッタ145は、例えば、矩形の板状のものである。また、
図6に示すシャッタ145Bのように、開口幅が異なって階段状となった通気孔145aを設けておいてもよい。階段状の通気孔145aを設けた場合には、シャッタ145Bの上下方向の位置LV1〜4によって、開口部144の開口度を全閉と全開との間で段階的に調整することができる。なお、階段状の通気孔145aに代えて、三角形状または円弧状の通気孔としてもよい。
【0047】
後処理制御部170は、用紙排出部130における吸引部134の制御を初めとして、後処理部ASの全体を制御する。後処理制御部170は、必要に応じて本体制御部70と通信を行い、データおよび信号の送受信を行う。
【0048】
後処理制御部170は、特に用紙排出部130の制御に際し、排出口120bから排出される用紙PPの後端が排出口120bから抜け出たタイミングで、吸引部134が吸引動作を開始し、所定の計時時間T2が経過したタイミングで吸引動作を停止するように、吸引部134を制御する。なお、後処理制御部170の全部または一部は、本体制御部70の一部として本体制御部70の中に組み込まれていてもよい。
【0049】
図4において、後処理制御部170には、用紙検出部171、第1のタイマー172、第2のタイマー173、時間設定部174、ファン制御部175、シャッタ制御部176、排出ローラ制御部177、メモリ178、および通信部179などが設けられる。
【0050】
用紙検出部171は、排出口センサSE1からの検出信号S1に基づいて、排出ローラ131の上流側において用紙PPの有無を検出する。
【0051】
第1のタイマー172は、用紙検出部171により用紙PPが検出されたときに計時を開始する。
【0052】
第2のタイマー173は、第1のタイマー172がタイムアップしたときに計時を開始する。
【0053】
時間設定部174は、メモリ178に記憶された種々の内容などに基づいて、第1のタイマー172による計時時間T1および第2のタイマー173による計時時間T2などを設定する。
【0054】
ファン制御部175は、ファンモータM11の回転について、その起動、停止、および回転速度を制御する。ファン制御部175によって、ファン143による吸引の強さが制御される。
【0055】
シャッタ制御部176は、シャッタモータM12について、その起動、停止、回転量を制御する。シャッタ制御部176によって、シャッタ145の移動および停止位置が制御され、開口部144の開閉および開口度が制御される。
【0056】
通常は、ファン143を回転させて負圧室142内を負圧に保っておき、シャッタ145を開くことによって開口部144からの吸引動作を行う。
【0057】
この場合に、シャッタ制御部176は、第1のタイマー172がタイムアップしたときにシャッタ145を開いて吸引動作を開始し、第2のタイマー173がタイムアップしたときにシャッタ145を閉じて吸引動作を停止するように制御する。
【0058】
排出ローラ制御部177は、排出ローラ131の回転について、その起動、停止、および回転速度を制御する。通常、用紙検出部171によって用紙PPが検出されたときに、排出ローラ131を回転させてその用紙PPを排出する。用紙検出部171によって用紙PPが検出されなくなると、所定の時間の後で排出ローラ131の回転を停止させる。連続印字などによって用紙PPが連続的に搬送されてくると、その間において排出ローラ131の回転を持続させる。
【0059】
メモリ178には、サイズ情報記憶部178a、坪量情報記憶部178b、種類情報記憶部178c、積載高さ記憶部178d、および用紙束高さ記憶部178eなどが設けられる。
【0060】
サイズ情報記憶部178aは、用紙PPのサイズ情報を記憶する。サイズ情報として、A4、A3などの定型サイズでもよく、用紙PPの実際の寸法でもよい。
【0061】
坪量情報記憶部178bは、用紙PPの坪量情報を記憶する。坪量情報は、用紙PPの単位面積当たりの重量についての情報である。また、坪量情報として、用紙PPの厚さについての情報でもよい。
【0062】
種類情報記憶部178cは、用紙PPの種類、表面の状態、光沢の有無、その他の種々の情報を記憶する。
【0063】
これらサイズ情報記憶部178a、坪量情報記憶部178b、種類情報記憶部178cに記憶された情報は、本発明における「シート種情報」の例である。
【0064】
積載高さ記憶部178dは、メイントレイ132に積載された用紙PPの積載高さについての情報を記憶する。メイントレイ132が一定の位置にあるときは、用紙PPの積載高さについての情報に基づいて、排出口120bから排出される用紙PPとメイントレイ132に積載された用紙PPの最上面との間の距離が求められる。排出口120bの位置は、排出ローラ131のニップ部の位置と同じとすることができる。
【0065】
なお、用紙PPの積載高さを検出する積載高さ検出手段が設けられており、これにより検出された積載高さが積載高さ記憶部178dに記憶される。積載高さ検出手段は、例えば、メイントレイ132に積載された用紙PPの高さを直接に検出する用紙センサであってもよい。また、排出ローラ131によって排出される用紙PPの枚数を積算し、これと用紙PPの厚さ(坪量)などから演算によって求める演算手段であってもよい。
【0066】
用紙束高さ記憶部178eは、処理トレイ121に積載された用紙(用紙束)PPの高さまたは用紙枚数を記憶する。
【0067】
メモリ178に記憶された種々の情報に基づいて、第1のタイマー172および第2のタイマー173の計時時間T1,T2、およびファンモータM11の回転速度などが制御され、吸引部134による吸引動作の開始タイミング、停止タイミング、吸引の強さ、吸引のための開口部144の大きさなどが可変制御される。
【0068】
例えば、用紙PPのサイズが大きいときに、サイズが小さいときよりも、第2のタイマー173による計時時間T2を長くして吸引時間を長くし、または吸引部134による吸引の強さを強くするように、または開口部144を大きくするように、制御する。
【0069】
また、例えば、積載高さ記憶部178dに記憶される情報に基づいて、用紙PPの積載高さが高いときに、積載高さが低いときよりも第2のタイマー173による計時時間T2を短くし、吸引部134による吸引時間を短くするよう制御する。
【0070】
また、例えば、処理トレイ121に積載された用紙(用紙束)PPを排出ローラ131に送ったときに、当該用紙束の用紙枚数または高さに基づいて、吸引部134による吸引時間または吸引の強さを可変するように制御する。
【0071】
図5において、メイン搬送路HSMから用紙PPが搬送されてきて排出口センサSE1が時刻t1においてオンになると、排出ローラ131が回転を開始するとともに、第1のタイマー172が計時を開始する。このとき、ファン143が回転して負圧室142内を負圧にする。なお、ファン143は時刻t1以前から回転していてもよい。
【0072】
排出口120bを通過する用紙PPは、時刻t2において排出口センサSE1を通過し、検出信号S1がオフするが、その直後の時刻t3に、計時時間T1が経過して第1のタイマー172がタイムアップし、シャッタ145が開いて吸引動作を開始する。これと同時に、第2のタイマー173が計時を開始する。時刻t4において、計時時間T2が経過して第2のタイマー173がタイムアップすると、シャッタ145が閉じて吸引動作が停止する。このとき、ファン143が停止する。排出ローラ131は時刻t5において停止する。
【0073】
図7(A)には、用紙PPの坪量とサイズに応じた吸引時間(計時時間T2)の設定例が示されている。
図7(A)に示されるように、用紙PPの坪量とサイズとに応じて、シャッタ145を開いて吸引動作を行う計時時間T2が、T2a31、T2a32…などのように個々に設定される。
【0074】
吸引時間は、各用紙PPが落下するに要する時間に、次の用紙PPの落下を補助する時間をプラスして設定することも可能である。また、用紙PPが薄い場合には、用紙PPが落下すれば直ぐに吸引動作を停止するようにすればよい。
【0075】
図7(B)に示されるように、用紙PPのメイントレイ132上への積載高さに応じて、吸引時間が、T2h1、T2h2…などのように個々に設定される。
【0076】
図7(C)には、用紙PPの坪量とサイズに応じた吸引の強さの設定例が示されている。
図7(C)に示されるように、用紙PPの坪量とサイズとに応じて、ファン143の回転速度が可変され、吸引の強さFが、Fa31、Fa32…などのように個々に設定される。なお、吸引の強さFを可変するには、ファンモータM11の回転速度またはシャッタ145による開口度が調整される。
【0077】
図7(D)に示されるように、用紙PPのメイントレイ132上への積載高さに応じて、吸引の強さFが、Fh1、Fh2…などのように個々に設定される。
【0078】
このように、吸引部134を設け、適切なタイミングでかつ適切な吸引強さで吸引動作を行うことにより、用紙PPの積載状態が乱れてしまうことなく、排出口120bから排出される用紙PPを早く落下させて安定させることができる。
〔用紙排出部の他の実施例〕
図9(A)(B)および
図10(A)(B)には、他の例の用紙排出部130B、130C、130Dの構成が示されている。なお、これらの用紙排出部130B、130C、130Dにおいて、
図2の用紙排出部130と同じ機能を有する部分には同じ符号を付し、またはその符号に「B」「C」「D」を付して説明を省略しまたは簡略化する。
【0079】
図9(A)において、用紙排出部130Bは、高速で応答する吸引部134Bを備える。つまり、吸引部134Bは、シロッコファンのように立ち上がりの速いファン143Bを備える。ファン143は、ファンモータM11の駆動によって高速で応答するので、ファンモータM11のオンまたはオフによって吸引動作の開始および停止を制御できる。そのため、用紙排出部130Bでは、シャッタは設けられていない。
【0080】
このように、用紙排出部130Bによると、シャッタを省略することができ、構造および制御が簡単である。
【0081】
図9(B)において、用紙排出部130Cは、移動可能でシャッタの役目を果たすメイントレイ132Cを備える。つまり、メイントレイ132Cは、上下方向に移動可能であり、その背壁面132Caが開口部144Cを閉塞するように移動する。背壁面132Caによる開口部144Cの閉塞の度合いによって、開口部144Cの開口度が決定される。
【0082】
用紙排出部130Cでは、メイントレイ132Cに、用紙排出部130のシャッタ145の動作と同様の動作を行わせる。シャッタを兼用できるので、構造が簡単である。
【0083】
図10(A)(B)において、用紙排出部130Dは、クランク機構によりピストン146を往復移動させて負圧を発生させる吸引部134Dを備える。
【0084】
つまり、吸引部134Dは、ハウジング141Dの内周面に沿って摺動可能に配置されて往復移動するピストン146、図示しない駆動モータによって回転駆動される回転軸147、クランク板148a,b、および連結ロッド149a,bなどを備える。
【0085】
回転軸147の回転によって、これと摩擦で接しまたはギヤ歯で噛み合う2つのクランク板148a,bが同じ方向に回転する。クランク板148a,bの回転によって、連結ロッド149a,bを介し、ピストン146が上下方向に往復移動する。ピストン146が下降するときに、負圧室142D内の容積が拡大されて負圧が発生する。
【0086】
このように、ピストン146が下降するタイミングを制御することによって、吸引動作のタイミングを制御することができる。したがって、開口部144Dを開閉するシャッタがなくても、駆動モータによる回転軸147の回転のタイミングを制御して吸引の開始および停止を制御することができる。また、駆動モータによる回転軸147の回転速度を制御することによって、ピストン146の下降速度を可変し、吸引の強さを制御することができる。
【0087】
つまり、排出口120bから排出される用紙PPの後端が排出口120bから抜け出たタイミングで、駆動モータにより回転軸147を適当な速度で回転駆動し、ピストン146を下降させて吸引部134Dによる吸引動作を開始する。所定の計時時間T2が経過したタイミングで駆動モータを停止させる。
【0088】
なお、ピストン146が上昇するときに負圧室142D内に圧力が発生するが、例えば、排出口120bに用紙PPがないタイミングまたは排出口120bの用紙PPが落下したタイミングで、ピストン146を上昇させることにより、その影響を防ぐことが可能である。または、負圧室142Dから外気に向かう方向に自由流となるワンウエイバルブ(逆止弁)を、ピストン146またはハウジング141Dに設け、これによって負圧室142D内に発生する圧力を抜くようにしてもよい。
【0089】
また、ピストン146を2つの連結ロッド149a,bにより移動可能に支持しているので、ピストン146の往復移動が円滑である。しかし、1つの連結ロッド149により移動可能に支持してもよい。
【0090】
次に、
図11および
図12に基づいて、画像形成装置1および用紙排出部130における動作の概略の流れをフローチャートによって説明する。
【0091】
図11において、画像形成装置1は、まず画像形成部GKにおいて、原稿を読み取るなどしてプリントジョブを受け付ける(#11)。プリントジョブの画像データに対して画像処理を施し(#12)、画像形成部を行う(#13)。画像形成が行われた用紙PPは、後処理部ASに送られ、排出される(#14)。
【0092】
図12において、後処理部ASの用紙排出部130では、排出口120bにおいて、排出口センサSE1などによって用紙PPの先端が検出されるまで待つ(#21)。用紙PPの先端が検出されると、排出ローラ131が回転する(#22)。第1のタイマー172による計時が開始され(#23)、タイムアップすると(#24でイエス)、吸引部134による吸引動作が開始される(#25)。同時に、第2のタイマー173による計時が開始され(#26)、タイムアップすると(#27でイエス)、吸引部134の吸引動作が停止される(#28)。
〔吸引動作のタイミングが適切でない場合の問題〕
ここで、吸引部134による吸引動作のタイミングが適切でない場合の問題について説明する。
【0093】
図8(A)〜(C)には用紙排出部130における吸引部134による吸引動作のタイミングが適切でない場合の用紙PPの様子が示されている。
【0094】
図8(A)においては、吸引部134による吸引動作が常時行われている。この場合には、排出ローラ131によって排出されつつある用紙PPは、排出されながら吸引され、その先端部が既に排出済みの下の用紙PPaに吸着されてしまう。そのため、用紙PPの排出移動にともなって下の用紙PPaが一緒に移動して押し出され、用紙の蹴り出しが生じる。用紙の蹴り出しによって、用紙PPの位置がずれてしまう。このような現象は、吸引動作の開始のタイミングが早過ぎる場合にも起こり得る。
【0095】
ところで、左右の排出ローラ131の回転軸を互いに逆方向に傾斜させるなどして送り出す用紙PPにコルゲーション( 腰付け) を加えることが行われ、これによって、排出中の用紙PPが排出済みの用紙PPaの表面に接触するのをできるだけ遅くしている。
【0096】
しかし、この場合でも、排出中の用紙PPが吸引されることによって、用紙PPが腰砕けとなって下の用紙PPaに吸着してしまい、用紙の蹴り出しが生じることがある。
【0097】
図8(B)においては、吸引部134による吸引動作が常時行われている。この場合に、用紙PPが特に薄い場合や腰が弱い場合には、用紙PPが排出ローラ131を出たところで先端部が下向きに下がってしまい、用紙PPの丸まりや座屈といった不具合が発生する。
【0098】
図8(C)において、用紙PPの後端が排出ローラ131を抜ける前から吸引動作が行われている。この場合に、用紙PPの後端部が排出ローラ131または排出壁部120aに当たって吸引されてしまい、その状態で用紙PPが吸着され、膠着状態となる。そのため、用紙PPの位置がづれてしまう。このような現象は、吸引動作のタイミングが早過ぎたり、吸引が強過ぎる場合にも起こり得る。
【0099】
このように、吸引動作の開始タイミングをどのようにするかは極めて重要である。本実施形態においては、用紙PPを排出ローラ131によって排出する途中のある段階までは吸引動作を行うことなく、用紙PPの後端が排出口120bから抜け出たタイミングで吸引動作を開始する。しかも、用紙PPの厚さやサイズなどに応じて、用紙PPがメイントレイ132や下の用紙などに吸着してしまわないように吸引の強さを調整する。
【0100】
なお、用紙PPの後端が排出口120bから抜け出たことを検出するために、排出口センサSE1がオンからオフに切り替わったタイミング、またはそのタイミングから用紙PPの移動距離と速度に応じた時間を経たタイミングで、吸引動作を開始するようにしてもよい。
【0101】
また、吸引動作を開始した後、当該用紙PPの次の用紙PPが排出口120bから突出するまでに吸引動作を停止する。計時時間T2は、そのようなタイミングとなるように設定される。なお、次の用紙PPが排出口センサSE1によって検出され、かつ排出ローラ131が回転しているときに、吸引動作を強制的に停止するように制御してもよい。
【0102】
なお、用紙PPと用紙PPとの間隔は、用紙PPのサイズや印字モード、用紙PPの種類などによって異なるが、用紙PPの間隔が小さい場合は、間隔が大きい場合と比べて次の用紙PPの先端が排出ローラ131から排出されるタイミングが早くなるため、吸引動作を停止させるタイミングを早めてやる必要がある。
【0103】
したがって、吸引動作の開始および停止のタイミングを、搬送される用紙PPの間隔に応じて決定してもよい。用紙PPの間隔についての情報は、本体制御部70などから取得することが可能である。
【0104】
上に述べたように、本実施形態の画像形成装置1および用紙排出部130,130B,130Cによれば、用紙PPに対して適切なタイミングでかつ適切な吸引強さで吸引動作を行うことにより、用紙PPの積載状態が乱れることがなく、排出口120bから排出される用紙PPを早く落下させて安定させることができる。
【0105】
これにより、画像形成装置1における生産性の向上が図られる。
【0106】
上に述べた実施形態において、用紙PPとして、紙、合成樹脂などのフィルム、その他のシート状のものを用いることができる。
【0107】
上に述べた実施形態において、後処理部ASを設けていない画像形成装置1であってもよい。つまり、画像形成部GKにおける排紙ローラ61を用紙排出部130における排出ローラ131と見做して用紙排出部130を構成することが可能である。その場合には、排紙ローラ61から排出される用紙PPに対して、吸引部134による吸引動作を行うこととなる。
【0108】
その他、排出壁部120a、排出ローラ131、メイントレイ132、サブトレイ133、および吸引部134、ハウジング141、ファン143、シャッタ145、用紙排出部130、後処理制御部170、画像形成部GK、後処理部AS、および画像形成装置1の各部または全体の構成、構造、形状、個数、配置、回路、動作の内容または順序、タイミングなどは、本発明の主旨に沿って適宜変更することができる。