(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正値制限部は、前記補正値を、予め設定した初期値から前記オフセット推定値を打ち消す値に向かって変化させると共に、該補正値の変化率を、前記ドライバ感度感応値が大きくなるほど小さくすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用加速度センサの出力補正装置。
前記補正値制限部は、前記制駆動力指示操作子の操作によって生じる前記車両の加速又は減速の方向と、前記補正後のセンサ出力値を用いた走行制御によって生じる前記車両の加速又は減速の方向とが同じとなる場合に前記補正を許可し、前記制駆動力指示操作子の操作によって生じる前記車両の加速又は減速の方向と、前記補正後のセンサ出力値を用いた走行制御によって生じる前記車両の加速又は減速の方向とが異なる場合に前記補正を禁止することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用加速度センサの出力補正装置。
前記車両の車両状態、前記車両の加速度の推定値である加速度推定値及び前記オフセット推定値のうち少なくとも1つに基づき、前記オフセット推定値の確からしさに依存する係数である補正信頼度を算出する補正信頼度算出部を備え、
前記補正値制限部は、前記補正信頼度が大きいほど前記補正値の制限量を小さくすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両用加速度センサの出力補正装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
(構成)
図1及び
図2に示すように、第1実施形態の車両用加速度センサの出力補正装置1は、車両に搭載された、加速度センサ2、アクセルセンサ3、ブレーキセンサ4、車輪速度センサ5、操舵角センサ6、モータ電流センサ7、シフトセンサ8及びコントローラ10を含んで構成される。
【0010】
以下、車両用加速度センサの出力補正装置1を、「センサ出力補正装置1」と称す。
加速度センサ2は、車両に作用する加速度を検出し、検出した加速度を示す加速度信号(電圧信号)をコントローラ10に供給する。コントローラ10は、入力した加速度信号から加速度センサ2が検出した加速度を判断する。
ここで、加速度センサ2は、そのセンサ出力にオフセット値を有している。即ち、車体に作用する加速度が0[G]の際に、出力電圧が0とならず、オフセット電圧を出力する。オフセット電圧は、温度等の周囲環境等によって変動するため、センサ出力から除去することが好ましいものである。
【0011】
また、加速度センサ2は、車両前後方向の加速度、車両左右方向の加速度、車両上下方向の加速度のうち、少なくとも車両前後方向の加速度を検出するセンサである。
アクセルセンサ3は、ドライバのアクセルペダル30の操作による操作量(以下、「アクセル操作量AC」と称す)を検出し、その検出結果をコントローラ10に入力する。アクセルセンサ3は、例えばポテンショメータであり、アクセルペダル30の操作位置を電圧信号に変換してコントローラ10へ入力する。コントローラ10は、入力した電圧信号からアクセルペダル30の操作位置(ストローク量)を判断する。
【0012】
ブレーキセンサ4は、ドライバのブレーキペダル32の操作による操作量(以下、ブレーキ操作量BRと称す)を検出し、その検出結果をコントローラ10に出力する。
ここで、第1実施形態の車両は、不図示の電子制御ブレーキシステムを備えている。また、
図1に示すように、各車輪13FL、13FR、13RL及び13RRにそれぞれ対応するブレーキアクチュエータ12を備えている。
【0013】
ブレーキアクチュエータ12は、マスターシリンダと各車輪に対応するホイールシリンダとの間に介装してある。第1実施形態において、各ホイールシリンダは、ディスクロータをブレーキパッドで挟圧して制動力を発生させるディスクブレーキに内蔵してある。
また、第1実施形態のブレーキアクチュエータ12は、アンチスキッド制御、トラクション制御、スタビリティ制御等に用いられる制動流体圧制御回路を利用したものである。そのため、運転者のブレーキ操作量(ブレーキペダル32のストローク量)BRに基づき、各ホイールシリンダの液圧の増圧・保持・減圧を制御することが可能である。
【0014】
車輪速度センサ5は、各車輪13FL、13FR、13RL及び13RRの車輪速度Vh1、Vh2、Vh3及びVh4を検出し、その検出結果を示す車輪速度信号をコントローラ10へ入力する。車輪速度センサ5は、例えばセンサロータの磁力線を検出回路によって検出しており、センサロータの回転に伴う磁界の変化を電流信号に変換してコントローラ10へ入力する。コントローラ10は、入力した電流信号から車輪速度Vh1〜Vh4を判断する。
【0015】
操舵角センサ6は、車両の備えるステアリングホイール(不図示)の回転角度である操舵角θを検出する。そして、検出した操舵角θを示す操舵角信号をコントローラ10へ入力する。
モータ電流センサ7は、後述する制駆動用モータ22のモータ電流Imを検出し、検出結果を示すモータ電流信号をコントローラ10へ入力する。
【0016】
シフトセンサ8は、車両に搭載された変速機のシフト位置(例えば、「P」、「D」、「L」、「R」等)を変更するシフトレバー34のシフト位置を検出する。そして、検出したシフト位置を示すシフト位置信号SPを、コントローラ10へ入力する。
コントローラ10は、例えばマイクロコンピュータからなり、各センサからの検出信号に基づいて後述するセンサ出力補正処理を実行し、加速度センサ2のセンサ出力値のオフセット補正を行う。そして、補正したセンサ出力値を、走行支援装置20等の加速度センサ2のセンサ出力値を制御に用いる各構成部に供給する。
【0017】
ここで、オフセット補正とは、後述するオフセット推定値Gosを打ち消すように加速度センサ2のセンサ出力値を補正することである。
走行支援装置20は、コントローラ10から供給されるオフセット補正後のセンサ出力値を用いて車両の走行支援制御を行う装置である。
ここで、走行支援制御には、VDC(Vehicle Dynamics Control)、勾配アシスト、ACC(Adaptive Cruise Control)、CACC(Cooperative ACC)等がある。
【0018】
モータ電源供給用インバータ21は、インバータを介してモータ出力(回転数やモータトルク)を制御する。具体的に、モータ電源供給用インバータ21は、走行支援装置20等から出力される制駆動力発生指令に応じた制駆動力が発生するように制駆動用モータ22への供給電力を制御する。
制駆動用モータ22は、モータ電源供給用インバータ21から供給される電力によって、走行支援装置20等から出力される制駆動力発生指令に応じた制駆動力が発生するように駆動輪13FL及び13FRの制駆動力を制御する。
【0019】
(コントローラ10)
次に、
図3に基づき、第1実施形態のコントローラ10の構成を説明する。
図3に示すように、コントローラ10は、駆動トルク推定部100と、加速度推定値算出部101と、オフセット推定値算出部102と、操作状態検出部103と、ドライバ感度感応項算出部104と、補正信頼度算出部105と、補正許可係数算出部106と、補正値制限部107と、出力値補正部108とを含んで構成される。
【0020】
駆動トルク推定部100は、第1実施形態において、駆動トルクオブザーバから構成される。駆動トルク推定部100は、モータ電流センサ7からのモータ電流Imと、車輪速度センサ5からの駆動輪13FL及び13FRの車輪速度Vh1及びVh2とに基づき、駆動トルクオブザーバを用いて車両にかかる駆動トルクを推定する。そして、駆動トルクの推定値であるトルク推定値Teを、加速度推定値算出部101に入力する。
【0021】
なお、第1実施形態では、車両の駆動源が制駆動用モータ22であるため、駆動トルクオブザーバを用いて駆動トルクを推定するようにした。従って、例えば、駆動源が内燃機関(エンジン)である場合は、例えばトルクセンサによって、エンジンのシャフトに作用するトルクを検出し、その検出結果から駆動トルクを推定する構成としてもよい。また、例えば、ホイールトルク計によって、車軸周りのトルクを計測し、その計測結果から駆動トルクを推定する構成としてもよい。
【0022】
加速度推定値算出部101は、駆動トルク推定部100から入力されるトルク推定値Teと、車輪速度センサ5から入力される車輪速度Vh1〜Vh4とに基づき、車両に発生する加速度Gaの推定値である加速度推定値Geを算出する。
具体的に、加速度推定値算出部101は、まず、車輪速度センサ5から入力される車輪速度Vh1〜Vh4から車両の車速Vを算出する。例えば、従動輪である後輪13RL及び13RRの車輪速度Vh3〜Vh4の平均値を車速Vとして算出する。
【0023】
次に、加速度推定値算出部101は、算出した車速Vから走行抵抗Rを算出する。ここで、走行抵抗Rは、空気抵抗成分であり、車速Vの二乗値に比例する抵抗成分である。第1実施形態の加速度推定値算出部101は、入力された車速Vの二乗値(V
2)に固定のゲインKを乗じることで、走行抵抗Rを算出する。そして、トルク推定値Teと、走行抵抗Rと、不図示のメモリに予め記憶された車両重量Mとから、下式(1)に従って、加速度推定値Geを算出する。
Ge=(Te−R)/M ・・・(1)
【0024】
即ち、上式(1)に示すように、加速度推定値算出部101は、トルク推定値Teから走行抵抗Rを減算した減算結果を車両重量Mで除算することで、加速度推定値Geを算出する。
加速度推定値算出部101は、算出した加速度推定値Geを、オフセット推定値算出部102及び補正信頼度算出部105にそれぞれ入力する。また、加速度推定値算出部101は、算出した車速Vを、補正信頼度算出部105に入力する。
【0025】
オフセット推定値算出部102は、加速度センサ2から入力されるセンサ出力値Gaと、加速度推定値算出部101から入力される加速度推定値Geとに基づき、下式(2)に従って、オフセット推定値Gosを算出する。
Gos=Ge−Ga ・・・(2)
即ち、上式(2)に示すように、オフセット推定値算出部102は、加速度推定値Geからセンサ出力値Gaを減算することで、オフセット推定値Gosを算出する。オフセット推定値算出部102は、算出したオフセット推定値Gosを、ドライバ感度感応項算出部104と、補正信頼度算出部105と、補正値制限部107とにそれぞれ入力する。
【0026】
操作状態検出部103は、第1実施形態では、アクセルセンサ3から入力されるアクセル操作量ACに基づき、アクセルペダル30の操作速度であるアクセル操作速度Asを検出する。具体的に、操作状態検出部103は、入力されるアクセル操作量ACを微分することでアクセル操作速度Asを算出する。操作状態検出部103は、算出したアクセル操作速度Asを、ドライバ感度感応項算出部104に入力する。
【0027】
ドライバ感度感応項算出部104は、オフセット推定値算出部102から入力されるオフセット推定値Gosと、操作状態検出部103から入力されるアクセル操作速度Asとに基づき、後述する補正許可係数Cpの算出に用いられる、ドライバ感度感応項Dsを算出する。
ここで、第1実施形態のドライバ感度感応項Dsは、アクセルペダル30の操作状態(第1実施形態ではアクセル操作速度As)に応じて変化する、センサ出力値Gaの補正後の値を用いた走行制御によって生じる車両の加減速度の変化に対するドライバの感度の大きさを示す値であるドライバ感度感応値の指標値である。
【0028】
以下、センサ出力値Gaの補正後の値を用いた走行制御によって生じる車両の加減速度を、「センサ出力値Gaの補正に起因した車両の加減速度」と称する場合がある。
また、第1実施形態において、ドライバ感度感応値は、アクセルペダル30の操作によって生じる車両の加速又は減速の方向と、センサ出力値Gaの補正後の値を用いた走行制御によって生じる車両の加速又は減速の方向とが同じ方向のときに、アクセルペダル30の操作状態が車両の加減速度の変化率が大きくなる操作状態であればあるほど小さくなるものである。
【0029】
以下、アクセルペダル30の操作によって生じる車両の加速又は減速を、「アクセルペダル30の操作状態に起因した車両の加速又は減速」と称する場合がある。また、センサ出力値Gaの補正後の値を用いた走行制御によって生じる車両の加速又は減速を、「センサ出力値Gaの補正に起因した車両の加速又は減速」と称する場合がある。
アクセルペダル30の操作速度が大きい場合、この操作状態に起因した車両の加減速度の変化率が大きくなるためドライバの車両の加減速度の変化に対する感度は比較的小さくなる。一方、操作速度が小さい場合、この操作状態に起因した車両の加減速度の変化率が小さくなるためドライバの車両の加減速度の変化に対する感度は比較的大きくなる。即ち、ドライバの車両の加減速度の変化に対する感度が小さいときに生じる、センサ出力値Gaの補正(以下、単に「補正」と称する場合がある)に起因した車両の加減速度の変化はドライバにとって感じにくい。そのため、補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの感度は小さくなる。一方、ドライバの車両の加減速度の変化に対する感度が大きいときに生じる、センサ出力値Gaの補正に起因した車両の加減速度の変化はドライバにとって感じやすい。そのため、補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの感度は大きくなる。
【0030】
このことに基づき、第1実施形態では、例えば、実験によって得られた、アクセル操作速度に対する不特定多数のドライバの上記補正に起因した車両の加減速度の変化に対する感度のデータから、ドライバ感度感応項Dsのマップを予め作成する。そして、このようにして作成したマップが、センサ出力補正装置1の備える不図示のメモリに予め記憶されている。
ここで、補正に起因した車両の加減速度の変化とは、センサ出力値Gaを、オフセット推定値Gosを打ち消すように補正した場合に、その補正後のセンサ出力値Gcを用いた制御(例えば、走行支援制御等の走行制御)によって車両に生じる加減速度の変化である。
【0031】
また、第1実施形態では、アクセル操作速度Asに基づき、ドライバのアクセルペダル30の操作状態に起因した車両の加速又は減速の方向と、補正に起因した車両の加速又は減速の方向とが同じとなる場合に、センサ出力値Gaの補正を許可する。一方、ドライバのアクセルペダル30の操作状態に起因した車両の加速又は減速の方向と、補正に起因した車両の加速又は減速の方向とが異なる場合に、センサ出力値Gaの補正を禁止する。
【0032】
例えば、ドライバが加速を意図してアクセルペダル30を踏み込んだ場合、アクセル操作速度As(アクセル操作量ACの微分値)はプラスの値となると共に車両が加速する。この場合に、補正後のセンサ出力値Gcを用いた制御によって車両が加速する場合は、センサ出力値Gaの補正を許可する。一方、補正後のセンサ出力値Gcを用いた制御によって車両が減速する場合は、センサ出力値Gaの補正を禁止する。
【0033】
また、ドライバが減速を意図してアクセルペダル30の踏み込みを緩めた場合、アクセル操作速度Asはマイナスの値となると共に車両が減速する。この場合に、補正後のセンサ出力値Gcを用いた制御によって車両が減速する場合は、センサ出力値Gaの補正を許可する。一方、補正後のセンサ出力値Gcを用いた制御によって車両が加速する場合は、センサ出力値Gaの補正を禁止する。
【0034】
第1実施形態では、車両が加速する側にオフセット補正を行う場合のドライバ感度感応項のマップである加速側補正時ドライバ感度感応項マップと、車両が減速する側にオフセット補正を行う場合のドライバ感度感応項のマップである減速側補正時ドライバ感度感応項マップとが予めメモリに記憶されている。
第1実施形態の加速側補正時ドライバ感度感応項マップは、アクセル操作速度Asがプラスの値のときに「0」よりも大きな値となり、アクセル操作速度Asが「0」及びマイナスの値のときに「0」となる特性を有したマップである。
【0035】
また、第1実施形態の減速側補正時ドライバ感度感応項マップは、アクセル操作速度Asがマイナスの値のときに「0」よりも大きな値となり、アクセル操作速度Asが「0」及びプラスの値のときに「0」となる特性を有したマップである。
そして、ドライバ感度感応項算出部104は、オフセット推定値Gosがマイナスの値である場合に、車両が加速する側にオフセット補正を行うと判定する。
【0036】
ここで、第1実施形態では、オフセット推定値Gosがマイナスの値である場合、センサ出力値Gaが真値に対して低い状態となる。また、この状態のセンサ出力値Gaを真値へと近づけるように補正を行うことで、この補正に起因して車両が加速する状態となる制御が作動しているものとする。
従って、ドライバ感度感応項算出部104は、オフセット推定値Gosがマイナスの値である場合に、加速側補正時ドライバ感度感応項マップからアクセル操作速度Asに対応するドライバ感度感応項Dsを取得する。
【0037】
一方、ドライバ感度感応項算出部104は、オフセット推定値Gosがプラスの値である場合に、車両が減速する側にオフセット補正を行うと判定する。
ここで、第1実施形態では、オフセット推定値Gosがプラスの値である場合、センサ出力値Gaが真値に対して高い状態となる。また、この状態のセンサ出力値Gaを真値へと近づけるように補正を行うことで、この補正に起因して車両が減速する状態となる制御が作動しているものとする。
【0038】
従って、ドライバ感度感応項算出部104は、オフセット推定値Gosがプラスの値である場合に、減速側補正時ドライバ感度感応項マップからアクセル操作速度Asに対応するドライバ感度感応項Dsを取得する。
ドライバ感度感応項算出部104は、取得したドライバ感度感応項Dsを、補正許可係数算出部106に入力する。
【0039】
ここで、第1実施形態では、アクセル操作速度Asと、ドライバ感度感応項Dsとは、アクセル操作速度Asが大きいほどドライバ感度感応項Dsが大きくなる関係にある。
また、第1実施形態において、ドライバ感度感応項Dsと、補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの感度とは、ドライバ感度感応項Dsの値が大きいほど感度が小さくなり、ドライバ感度感応項Dsの値が小さいほど感度が大きくなる関係にある。
【0040】
なお、この関係に限らず、ドライバ感度感応項Dsと、補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの感度とを、ドライバ感度感応項Dsの値が大きいほど感度が大きくなり、ドライバ感度感応項Dsの値が小さいほど感度が小さくなる関係としてもよい。例えば、ドライバ感度感応値そのものをドライバ感度感応項Dsとしてもよい。
但し、この場合は、補正値の制限量がドライバ感度感応項Dsの値に比例する。即ち、センサ出力値Gaを補正する時の補正値が、ドライバ感度感応項Dsの大きさに反比例した大きさに制限される。
【0041】
補正信頼度算出部105は、操舵角センサ6からの操舵角θと、加速度推定値算出部101からの車速V及び加速度推定値Geと、オフセット推定値算出部102からのオフセット推定値Gosとに基づき、後述する補正許可係数Cpの算出に用いられる、補正信頼度Ccを算出する。
ここで、補正信頼度Ccは、オフセット推定値Gosの確からしさ(精度)に依存する係数である。
【0042】
第1実施形態において、補正信頼度Ccは、例えば、実験データ等に基づき予め作成した、操舵角θ、車速V、加速度推定値Ge、オフセット推定値Gosにそれぞれ対応する感応項のマップの出力値の積として算出される。
具体的に、操舵角θに対する操舵角感応項Dθのマップと、車速Vに対する車速感応項Dvのマップと、加速度推定値Geに対する車両加速度感応項Dgのマップと、オフセット推定値Gosに対するオフセット推定値感応項Dosのマップとを予め作成する。そして、これらマップが、センサ出力補正装置1の備える不図示のメモリに予め記憶されている。なお、第1実施形態において、操舵角感応項Dθ、車速感応項Dv、車両加速度感応項Dg及びオフセット推定値感応項Dosは、「0〜1」の範囲の値に設定されている。
【0043】
ここで、操舵角感応項Dθは、操舵角θの大きさに対するオフセット推定値Gosの精度が高いほど大きな値となり、車速感応項Dvは、車速Vの大きさに対するオフセット推定値Gosの精度が高いほど大きな値となるように設定されている。
同様に、車両加速度感応項Dgは、加速度推定値Geの大きさに対するオフセット推定値Gosの精度が高いほど大きな値となり、オフセット推定値感応項Dosは、オフセット推定値Gosの大きさに対するオフセット推定値Gosの精度が高いほど大きな値となるように設定されている。
【0044】
例えば、操舵角θが、車両が直進走行時の角度範囲外にある場合、車両は旋回状態又は蛇行状態にある可能性が高く、そのときに算出されたオフセット推定値Gosの精度は比較的低くなる。一方、操舵角θが直進走行時の角度範囲内にある場合、車両は直進状態にある可能性が高く、そのときに算出されたオフセット推定値Gosの精度は比較的高くなる。
従って、操舵角感応項Dθは、予め設定した直進走行時の角度範囲において大きい値(例えば、「1」)に設定し、直進走行時の角度範囲外において小さい値(例えば、「0」)に設定する。
【0045】
また、車速Vが遅すぎても速すぎても、算出されたオフセット推定値Gosの精度は比較的低くなる。従って、車速感応項Dvは、予め設定した、車速Vの影響を許容可能な車速範囲において大きい値(例えば、「1」)に設定し、この車速範囲外において小さい値(例えば、「0」)に設定する。
また、オフセット推定値Gosの精度は、車両重量Mの影響を受ける。具体的に、車両重量Mを用いて算出される加速度推定値Geの値がプラス方向及びマイナス方向に大きくなるほど、オフセット推定値Gosの精度は低くなる。従って、車両加速度感応項Dgは、予め設定した、車両重量Mの影響を許容可能な加速度の範囲(加速度0を中心とした範囲)において大きい値(例えば、「1」)に設定し、この加速度範囲外において小さい値(例えば、「0」)に設定する。
【0046】
また、オフセット推定値Gosが小さいときに対してオフセット推定値Gosが大きいときは、オフセット推定値Gosの誤差がオフセット推定値Gosに対して相対的に小さくなる。そのため、オフセット推定値Gosが大きいときは、オフセット推定値Gosが小さいときに対してオフセット推定値Gosの精度が向上する。従って、オフセット推定値感応項Dosは、予め設定した、相対誤差を許容できないオフセット推定値Gosの範囲(オフセット推定値0を中心とした範囲)において小さい値(例えば、「0」)に設定し、この範囲外において外に向かうほど大きくなる値(0<Dos≦1)に設定する。
【0047】
補正信頼度算出部105は、入力された操舵角θ、車速V、加速度推定値Ge及びオフセット推定値Gosに対する、操舵角感応項Dθ、車速感応項Dv、車両加速度感応項Dg及びオフセット推定値感応項Dosに基づき、下式(3)に従って、補正信頼度Ccを算出する。
Cc=Dθ×Dv×Dg×Dos ・・・(3)
【0048】
即ち、補正信頼度算出部105は、上式(3)に示すように、操舵角感応項Dθ、操舵角感応項Dθ、車速感応項Dv、車両加速度感応項Dg及びオフセット推定値感応項Dosを掛け合わせることで、補正信頼度Ccを算出する。これら各感応項は「0〜1」の範囲の値となるので、補正信頼度Ccも、「0〜1」の範囲の値となる。また、補正信頼度Ccは、車速感応項Dv、車両加速度感応項Dg及びオフセット推定値感応項Dosの値が大きいほど大きな値となる。
【0049】
補正信頼度算出部105は、算出した補正信頼度Ccを、補正許可係数算出部106に入力する。
補正許可係数算出部106は、ドライバ感度感応項算出部104からのドライバ感度感応項Dsと、補正信頼度算出部105からの補正信頼度Ccとに基づき、下式(4)に従って、補正許可係数Cpを算出する。
Cp=Ds×Cc ・・・(4)
即ち、補正許可係数算出部106は、ドライバ感度感応項Dsに補正信頼度Ccを乗算することで、補正許可係数Cpを算出する。
従って、補正信頼度Ccが大きいほど、補正許可係数Cpに対するドライバ感度感応項Dsの寄与度が大きくなる。
【0050】
補正許可係数算出部106は、算出した補正許可係数Cpを、補正値制限部107に入力する。
補正値制限部107は、補正許可係数算出部106からの補正許可係数Cpに基づき、センサ出力値Gaを補正する時の補正値を算出する。その際、第1実施形態の補正値制限部107は、センサ出力値Gaを補正する時の補正値を、直ちにオフセット推定値Gosを打ち消す値に設定せずに、補正値を制限するようになっている。
【0051】
即ち、補正値制限部107は、予め設定した補正値の初期値(例えば「0」)から上限値であるオフセット推定値Gosを打ち消す値に向かって、補正値を変化させていく。このとき、補正値制限部107は、補正値の変化率Ciを、補正許可係数Cpに基づく値に制限する。
具体的に、
図4中の補正許可係数Cpの時間変化L501及びレイトリミッタ定数RLの時間変化L502に示すように、補正値制限部107は、入力される補正許可係数Cpに比例したレイトリミッタ定数RLを算出する。
【0052】
そして、算出したレイトリミッタ定数RLに基づき、補正値の変化率(増加率)Ciを制限する。即ち、
図4中の制限補正値CLの時間変化L503に示すように、レイトリミッタ定数RLが大きいほど補正値の増加率Ciを大きくし(制限量を小さくし)、レイトリミッタ定数RLが小さいほど補正値の増加率Ciを小さくする(制限量を大きくする)。
【0053】
図4の例では、時刻t1を境に、時刻t1以前のレイトリミッタ定数RLよりも、時刻t1より先のレイトリミッタ定数RLの方が小さくなっている。従って、
図4に示すように、同じ変化時間Δtにおける、時刻t1以前の増加率Ci1と、時刻t1より先の増加率Ci2とは、「Ci1>Ci2」の関係となっている。
このことは、補正許可係数Cpが大きいほど、補正値の増加率Ciを大きくし、補正許可係数Cpが小さいほど、補正値の増加率Ciを小さくすることと同意である。
【0054】
ここで、上式(4)に示すように、補正許可係数Cpは、ドライバ感度感応項Dsと補正信頼度Ccとの積である。
従って、ドライバが、センサ出力値Gaの補正に起因した車両の加減速度変化に敏感である(ドライバ感度感応項Dsが小さい)か、又は、オフセット推定値Gosの精度が低いかの少なくとも一方のときに増加率Ciは小さくなる。つまり、ドライバ感度感応項Dsが大きくても、オフセット推定値Gosの精度が低い場合、増加率Ciは小さくなる。
【0055】
一方、ドライバが、センサ出力値Gaの補正に起因した車両の加減速度変化に鈍感であり(ドライバ感度感応項Dsが大きく)、かつ、オフセット推定値Gosの精度が高いときに増加率Ciは大きくなる。
補正値制限部107は、補正許可係数Cpが「0」のうちは、予め設定した補正値CLの初期値(例えば、「0」)を出力値補正部108に入力する。そして、補正許可係数Cpが「0」よりも大きな値になると、入力された補正許可係数Cpに比例するレイトリミッタ定数RLによって算出した増加率Ciで初期値又は前回の補正値CLを増加した新たな補正値CLを算出する。補正値制限部107は、算出した補正値CL(以下、「制限補正値CL」と称す)を、出力値補正部108に入力する。なお、補正値制限部107は、オフセット推定値Gosを打ち消す値(例えば、オフセット推定値Gosそのもの)を制限補正値CLの上限値とする。
【0056】
出力値補正部108は、加算器を含んで構成され、加速度センサ2から入力されたセンサ出力値Gaに、補正値制限部107から入力された制限補正値CLを加算することで、センサ出力値Gaを補正する。出力値補正部108は、補正後のセンサ出力値Gc(以下、「補正後センサ出力値Gc」と称す)を、走行支援装置20等の加速度センサ2の出力値を制御に用いる各構成部に供給する。
【0057】
(センサ出力値補正処理)
次に、
図5に基づき、コントローラ10において実行されるセンサ出力補正処理の処理手順を説明する。なお、センサ出力補正処理は、予め設定した周期で繰り返し実行される。
コントローラ10において、センサ出力補正処理が開始されると、まず、ステップS201に移行する。
ステップS201では、加速度推定値算出部101において、車両の加速度の推定値Geを算出し、算出した加速度推定値Geをオフセット推定値算出部102に入力して、ステップS202に移行する。
【0058】
具体的に、加速度推定値算出部101は、車輪速度センサ5からの車輪速度Vh1〜Vh4に基づき車両の車速Vを算出し、算出した車速Vの二乗値に予め設定した固定のゲインKを乗算して走行抵抗Rを算出する。そして、上式(1)に従って、駆動トルク推定部100からの車両のトルク推定値Teから走行抵抗Rを減算し、この減算結果を車両重量Mで除算することで加速度推定値Geを算出する。
【0059】
ステップS202では、オフセット推定値算出部102において、上式(2)に従って、加速度推定値算出部101からの加速度推定値Geから、加速度センサ2からのセンサ出力値Gaを減算することで、オフセット推定値Gosを算出する。そして、算出したオフセット推定値Gosをドライバ感度感応項算出部104、補正信頼度算出部105及び補正値制限部107にそれぞれ入力して、ステップS203に移行する。
【0060】
ステップS203では、ドライバ感度感応項算出部104において、ドライバ感度感応項算出部104からのオフセット推定値Gos及び操作状態検出部103からのアクセル操作速度Asに基づき、ドライバ感度感応項Dsを算出する。その後、ステップS204に移行する。
具体的に、ドライバ感度感応項算出部104は、加速側補正時ドライバ感度感応項マップ又は減速側補正時ドライバ感度感応項マップのうち、オフセット推定値Gosの正負に応じたマップを選定する。そして、選定したマップから、入力されたアクセル操作速度Asに対応するドライバ感度感応項Dsを取得し、取得したドライバ感度感応項Dsを、補正許可係数算出部106に入力する。
【0061】
ステップS204では、補正信頼度算出部105において、補正信頼度Ccを算出し、算出した補正信頼度Ccを、補正許可係数算出部106に入力して、ステップS205に移行する。
具体的に、補正信頼度算出部105は、操舵角感応項マップから、操舵角センサ6から入力された操舵角θに対応する操舵角感応項Dθを取得し、車速感応項マップから、加速度推定値算出部101から入力された車速Vに対応する車速感応項Dvを取得する。加えて、車両加速度感応項マップから、加速度推定値算出部101から入力された加速度推定値Geに対応する車両加速度感応項Dgを取得し、オフセット推定値感応項マップから、オフセット推定値算出部102から入力されたオフセット推定値Gosに対応するオフセット推定値感応項Dosを取得する。そして、上式(3)に従って、取得した操舵角感応項Dθ、車速感応項Dv、車両加速度感応項Dg及びオフセット推定値感応項Dosをそれぞれ掛け合わせて、補正信頼度Ccを算出する。
【0062】
ステップS205では、補正許可係数算出部106において、上式(4)に従って、ドライバ感度感応項算出部104から入力されたドライバ感度感応項Dsと、補正信頼度算出部105から入力された補正信頼度Ccとを掛け合わせて、補正許可係数Cpを算出する。そして、算出した補正許可係数Cpを、補正値制限部107に入力して、ステップS206に移行する。
ステップS206では、補正値制限部107において、補正許可係数算出部106から入力された補正許可係数Cpと、オフセット推定値算出部102から入力されたオフセット推定値Gosとに基づき、制限補正値CLを算出する。そして、算出した制限補正値CLを、出力値補正部108に入力して、ステップS207に移行する。
【0063】
ここで、補正値制限部107は、入力された補正許可係数Cpに比例するレイトリミッタ定数RLを算出する。そして、算出したレイトリミッタ定数RLに基づき補正値CLの増加率Ciを算出し、算出した増加率Ciに応じた加算量を初期値又は前回の制限補正値CLに加算して新たな制限補正値CLを算出する。なお、補正値制限部107は、オフセット推定値Gosを打ち消す値(例えば、オフセット推定値Gosそのもの)を上限値として制限補正値CLを算出する。補正値制限部107は、算出した制限補正値CLを、出力値補正部108に入力する。
ステップS207では、出力値補正部108において、加速度センサ2から入力されるセンサ出力値Gaに、補正値制限部107から入力される制限補正値CLを加算して、補正後センサ出力値Gcを算出する。そして、算出した補正後センサ出力値Gcを、走行支援装置20等の各種制御部に供給して、一連の処理を終了する。
【0064】
(動作)
次に、第1実施形態のセンサ出力補正装置1の動作を説明する。
イグニッションスイッチがON状態となって、センサ出力補正装置1に電源が供給されると、各種センサによって、各種車両状態の検出が開始される。そして、各種検出結果がコントローラ10に供給される。
即ち、アクセルセンサ3からのアクセル操作量AC、加速度センサ2からのセンサ出力値Ga、車輪速度センサ5からの車輪速度Vh1〜Vh4及びモータ電流センサ7からのモータ電流Imがコントローラ10に供給される。加えて、操舵角センサ6からの操舵角θがコントローラ10に供給される。
コントローラ10では、駆動トルク推定部100において、入力されたモータ電流Im及び駆動輪13RR及び13RLの車輪速度Vh1〜Vh2に基づき、駆動トルクオブザーバを用いてトルク推定値Teを算出する。駆動トルク推定部100は、算出したトルク推定値Teを、加速度推定値算出部101に入力する。
【0065】
一方、加速度推定値算出部101は、入力された車輪速度Vh1〜Vh4に基づき車速Vを算出する。更に、車速Vの二乗値を算出し、この二乗値に固定のゲインKを乗算して走行抵抗Rを算出する。そして、入力されたトルク推定値Teから、走行抵抗Rを減算した減算結果を車両重量Mで除算することで加速度推定値Geを算出する。加速度推定値算出部101は、算出した加速度推定値Geを、オフセット推定値算出部102及び補正信頼度算出部105にそれぞれ入力する(ステップS201)。
【0066】
オフセット推定値算出部102は、加速度推定値算出部101から入力された加速度推定値Geから、加速度センサ2から入力されたセンサ出力値Gaを減算して、オフセット推定値Gosを算出する。そして、算出したオフセット推定値Gosを、ドライバ感度感応項算出部104、補正信頼度算出部105及び補正値制限部107にそれぞれ入力する(ステップS202)。
【0067】
また、操作状態検出部103は、アクセルセンサ3から入力されたアクセル操作量ACを微分することでアクセル操作速度Asを算出する。そして、算出したアクセル操作速度Asを、ドライバ感度感応項算出部104に入力する。
ドライバ感度感応項算出部104は、入力されたオフセット推定値Gosがマイナスの値である場合は、
図6中の実線L301で示す特性を有する加速側補正時ドライバ感度感応項マップから、入力されたアクセル操作速度Asに対応するドライバ感度感応項Dsを取得する。
図6に示すように、センサ出力値Gaを加速する側に補正する場合のドライバ感度感応項Dsは、アクセル操作速度Asがプラス方向に大きいほど(踏み込む速度が大きいほど)線形に大きくなる値に設定されている。一方、アクセル操作速度Asのマイナス方向の変化に対しては「0」が設定されている。
【0068】
一方、ドライバ感度感応項算出部104は、入力されたオフセット推定値Gosがプラスの値である場合は、
図6中の破線L302で示す特性を有する減速側補正時ドライバ感度感応項マップから、入力されたアクセル操作速度Asに対応するドライバ感度感応項Dsを取得する。
図6に示すように、センサ出力値Gaを減速する側に補正する場合のドライバ感度感応項Dsは、アクセル操作速度Asがマイナス方向に大きいほど(踏み込みを緩める(足を離す)速度が大きいほど)線形に大きくなる値に設定されている。一方、アクセル操作速度Asのプラス方向の変化に対しては「0」が設定されている。
【0069】
そして、ドライバ感度感応項算出部104は、取得したドライバ感度感応項Dsを、補正許可係数算出部106に入力する(ステップS203)。
また、補正信頼度算出部105は、
図7(a)に示す特性を有する操舵角感応項マップから、操舵角センサ6から入力された操舵角θに対応する操舵角感応項Dθを取得する。
図7(a)に示すように、操舵角感応項マップは、予め設定した舵角範囲である−θd〜+θdの範囲において「0<Dθ≦1」の範囲の値となるように設定されている。具体的に、−θdから「0」に向かって、急峻かつ線形に最大値の「1」に向かって変化し、その後、+θdに向かって「1」で一定となり、+θdの直前から急峻且つ線形に最小値の「0」に向かって変化する。また、−θd〜+θdの範囲外において、最小値の「0」で一定となっている。
【0070】
引き続き、補正信頼度算出部105は、
図7(b)に示す特性を有する車速感応項マップから、加速度推定値算出部101から入力された車速Vに対応する車速感応項Dvを取得する。
図7(b)に示すように、車速感応項マップは、予め設定した車速範囲であるV1〜V2の範囲において、「0<Dv≦1」の範囲の値となるように設定されている。具体的に、車速V1からV2に向かって急峻かつ線形に最大値の「1」に向かって変化し、その後、V2に向かって「1」で一定となり、V2の直前から急峻且つ線形に最小値の「0」に向かって変化する。また、V1〜V2の範囲外において、最小値の「0」で一定となる。
【0071】
引き続き、補正信頼度算出部105は、
図7(c)に示す特性を有する車両加速度感応項マップから、加速度推定値算出部101から入力された加速度推定値Geに対応する車両加速度感応項Dgを取得する。
図7(c)に示すように、車両加速度感応項マップは、予め設定した加速度推定値の範囲である−Ged〜+Gedの範囲において、「0<Dg≦1」の範囲の値となるように設定されている。具体的に、−Gedから「0」に向かって、急峻かつ線形に最大値の「1」に向かって変化し、その後、+Gedに向かって「1」で一定となり、+Gedの直前から急峻且つ線形に最小値の「0」に向かって変化する。また、−Ged〜+Gedの範囲外において、最小値の「0」で一定となる。
【0072】
引き続き、補正信頼度算出部105は、
図7(d)に示す特性を有するオフセット推定値感応項マップから、オフセット推定値算出部102から入力されたオフセット推定値Gosに対応するオフセット推定値感応項Dosを取得する。
図7(d)に示すように、オフセット推定値感応項マップは、予め設定したオフセット推定値Gosの範囲である−Gosd〜+Gosdの範囲において、「0≦Dos<1」の範囲の値となるように設定されている。具体的に、−Gosdから「0」に向かって、急峻かつ線形に最小値の「0」に向かって変化し、その後、+Gosdに向かって「0」で一定となり、+Gosdの直前から急峻且つ線形に最大値の「1」に向かって変化する。また、−Gosd〜+Gosdの範囲外において、最大値の「1」で一定となる。
【0073】
そして、補正信頼度算出部105は、上式(3)に従って、取得した、操舵角感応項Dθ、車速感応項Dv、車両加速度感応項Dg及びオフセット推定値感応項Dosを掛け合わせて、補正信頼度Ccを算出する。補正信頼度算出部105は、算出した補正信頼度Ccを、補正許可係数算出部106に入力する(ステップS204)。
補正許可係数算出部106は、ドライバ感度感応項算出部104から入力されたドライバ感度感応項Dsと、補正信頼度算出部105から入力された補正信頼度Ccとを乗算して、補正許可係数Cpを算出する。そして、補正許可係数算出部106は、算出した補正許可係数Cpを、補正値制限部107に入力する(ステップS205)。
【0074】
補正値制限部107は、まず、補正許可係数算出部106から入力された補正許可係数Cpに比例するレイトリミッタ定数RLを算出する。次に、算出したレイトリミッタ定数RLと、オフセット推定値算出部102から入力されたオフセット推定値Gosとに基づき、制限補正値CLを算出する。
具体的には、補正値の最小値(例えば、「0」)又は前回の制限補正値CLに、レイトリミッタ定数RLによって制限された変化率Ciに応じた加算値を加算した値を、今回の制限補正値CLとして算出する。
【0075】
以下、
図8に基づき、具体例を示しながらセンサ出力値Gaを補正時の動作を説明する。
図8中の実線L601に示すように、時刻t1に至るまでは、アクセル操作量ACが一定となっており、アクセル操作速度Asが「0」となる。従って、この期間は、ドライバ感度感応項Dsが「0」となるので、
図8中の実線L602に示すように、補正許可係数Cpが「0」で一定となる。
【0076】
これにより、
図8中の実線L602に示すように、制限補正値CLは、最小値「0」で一定となり、走行支援装置20等へと出力される補正後センサ出力値Gcは、図中実線L604及びL605に示すように、加速度センサ2のセンサ出力値Gaと同じ値となる。
その後、
図8中の実線L601及びL602に示すように、アクセル操作量ACが急速に上昇し、これに伴って、時刻t2に至るまで補正許可係数Cpが急速に上昇する。
【0077】
補正許可係数Cpが急速に上昇すると、補正値の増加率も急速に大きくなって、
図8中の実線L603に示すように、制限補正値CLが急速に上昇する。
これにより、
図8中の実線L605に示すように、走行支援装置20等へと出力される補正後センサ出力値Gcが急速に上昇する。
即ち、時刻t1〜t2の期間では、比較的大きなアクセル操作速度Asによってアクセルペダル30が踏み込まれており、ドライバは、オフセット補正に起因した車両の加減速度の変化と、アクセルペダル30の踏み込み操作に起因した車両の加減速度の変化との区別がつきにくい状態となる。このような期間において、補正値を大きくすることで、補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの違和感の発生を抑えつつ、真値への収束速度を確保する。
【0078】
引き続き、時刻t2〜t3の期間では、
図8中の実線L601に示すように、アクセル操作量ACの上昇がなだらかになり、アクセル操作速度Asが小さくなる。その結果、
図8中の実線L602及びL603に示すように、補正許可係数Cpが急速に小さくなっていき、これに伴って制限補正値CLの増加率も急速に小さくなる。
これにより、
図8中の実線L605に示すように、走行支援装置20等へと出力される補正後センサ出力値Gcの上昇がなだらかになる。
【0079】
即ち、時刻t2〜t3の期間では、比較的小さなアクセル操作速度Asによってアクセルペダル30が踏み込まれており、ドライバは、オフセット補正に起因した車両の加減速度の変化に対して敏感な状態となる。このような期間において、補正量を小さくすることで、補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの違和感の発生を抑えている。
【0080】
引き続き、時刻t3〜t4の期間では、
図8中の実線L601に示すように、アクセル操作量ACが一定となり、その後、アクセル操作量ACが減少している。この期間では、アクセル操作速度Asが「0」又はマイナスの値となる。
ここでは、オフセット推定値Gosがマイナスの値となっているため、ドライバ感度感応項Dsの算出に加速側補正時ドライバ感度感応項マップを用いている。
図6に示すように、第1実施形態の加速側補正時ドライバ感度感応項マップは、アクセル操作速度Asが「0」又はマイナスの値のときにドライバ感度感応項Dsが「0」となる。
【0081】
従って、時刻t3〜t4の期間では、
図8中の実線L602及びL603に示すように、補正許可係数Cpが「0」で一定となるため、制限補正値CLが「0」となる直前の値で一定となる(増加率Ciが「0」となる)。
これにより、
図8中の実線L605に示すように、走行支援装置20等へと出力される補正後センサ出力値Gcが一定となる。
【0082】
その後、時刻t3〜t4の期間では、
図8中の実線L601に示すように、アクセル操作量ACが上昇するため、アクセル操作速度Asがプラスの値となる。従って、
図8中の実線L602及びL603に示すように、補正許可係数Cpが「0」よりも大きくなり、制限補正値CLが上昇して、オフセット推定値Gosへと収束する。
これにより、
図8中の実線L605に示すように、走行支援装置20等へと出力される補正後センサ出力値Gcが、センサ出力値の真値であるセンサ出力真値Gtへと近づく。
【0083】
時刻t4以降は、
図8中の実線L603に示すように、制限補正値CLがオフセット推定値Gosで一定となるため、
図8中の実線L605に示すように、走行支援装置20等へと出力される補正後センサ出力値Gcが、センサ出力真値Gtで一定となる。
ここで、従来は、
図9に示すように、アクセル操作量ACが一定時(平坦路直進定速走行時)に、補正による加減速度の急変に起因したドライバの違和感の発生を抑えるため、図中D701に示す比較的小さな増加値で、補正値を緩やかに増加させながらオフセット補正を行っていた。
これに対して、第1実施形態のセンサ出力補正装置1であれば、
図9中のD702に示すように、ドライバのアクセル操作速度Asに応じて、従来と比較して補正値の増加値を大きくすることが可能となる。これにより、補正による加減速度の急変に起因したドライバの違和感の発生を抑えつつ、比較的速やかにオフセット補正を行うことが可能となる。
【0084】
ここで、加速度センサ2が、加速度センサに対応する。駆動トルク推定部100が、駆動トルク推定部に対応する。加速度推定値算出部101が、加速度推定値算出部に対応する。オフセット推定値算出部102が、オフセット推定値算出部に対応する。操作状態検出部103が、操作状態検出部に対応する。ドライバ感度感応項算出部104が、ドライバ感度感応値設定部に対応する。補正信頼度算出部105が、補正信頼度算出部に対応する。補正値制限部107が、補正値制限部に対応する。出力値補正部108が、出力値補正部に対応する。アクセルペダル30の操作状態に応じて変化する、センサ出力値Gaの補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの感度が、ドライバ感度感応値に対応する。アクセルペダル30が、アクセル操作子に対応する。
【0085】
(第1実施形態の効果)
(1)加速度センサ2が、車両の加速度を検出する。オフセット推定値算出部102が、加速度センサ2のオフセット値の推定値であるオフセット推定値Gosを算出する。出力値補正部108が、オフセット推定値Gosを打ち消すようにセンサ出力値Gaに補正値を加算することで補正を行う。操作状態検出部103が、車両の制駆動力を指示する制駆動力指示操作子(例えば、アクセルペダル30)の操作状態(例えば、アクセル操作速度As)を検出する。ドライバ感度感応項算出部104が、検出した操作状態に基づき、センサ出力値Gaの補正後の値(補正後センサ出力値Gc)を用いた走行制御によって生じる車両の加速又は減速に対するドライバの感度の大きさを示す値であって、制駆動力指示操作子の操作によって生じる車両の加速又は減速の方向と補正後センサ出力値Gcを用いた走行制御によって生じる車両の加速又は減速の方向とが同じ方向のときに、制駆動力指示操作子の操作状態が車両の加減速度の変化率が大きくなる操作状態であればあるほど(例えば、アクセル操作速度Asが大きければ大きいほど)小さくなるドライバ感度感応値、の指標値であるドライバ感度感応項Dsを設定する。補正値制限部107が、操作状態に基づき設定した、ドライバ感度感応項Dsに基づき、出力値補正部108がセンサ出力値Gaを補正する時の補正値の大きさを制限する。補正値制限部107が、ドライバ感度感応項Dsが、ドライバの感度感応値が大きくなる方向に変化するほどセンサ出力値Gaの変化が小さくなるように補正値の大きさを制限する。
【0086】
この構成であれば、ドライバ感度感応項Dsが、ドライバ感度感応値が大きくなる方向に変化するほど小さくなり、かつ、ドライバ感度感応項Dsが、ドライバ感度感応値が小さくなる方向に変化するほど大きくなる制限補正値CLで、センサ出力値Gaを補正することが可能となる。即ち、ドライバが、補正に起因した車両の加減速度の変化に対して違和感を受けやすい状況では補正値の制限量を大きくし、違和感を受けにくい状況では補正値の制限量を小さくすることが可能となる。
【0087】
その結果、ドライバに、自身の操作に起因した車両の加減速度の変化と、オフセット補正に起因した車両の加減速度の変化との区別をつきにくくすることが可能となると共に、オフセット補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの感度の大きさに応じて補正値の大きさを変化させることが可能となる。そのため、オフセット補正に起因した車両の加減速度変化に対するドライバの違和感の発生を抑えつつ、センサ出力値の真値への収束速度を向上することが可能となる。
【0088】
(2)駆動トルク推定部100が、車両の駆動トルクの推定値であるトルク推定値Teを算出する。加速度推定値算出部101が、トルク推定値Teに基づき車両の加速度の推定値である加速度推定値Geを算出する。オフセット推定値算出部102が、加速度推定値Geから加速度センサ2のセンサ出力値Gaを減算して、オフセット推定値Gosを算出する。
この構成であれば、車両の走行状況(例えば、平坦路を定速で直進走行する等)によらずに、センサ出力値Gaのオフセット推定値Gosを算出することが可能となる。その結果、ドライバ感度感応項Dsに基づくオフセット補正を、適切なタイミングで行うことが可能となる。
【0089】
(3)補正値制限部107が、出力値補正部108がセンサ出力値Gaを補正する時の補正値CLを、予め設定した初期値からオフセット推定値Gosを打ち消す値に向かって変化させると共に、該補正値CLの変化率Ciをドライバ感度感応項Dsが、ドライバ感度感応値が大きくなる方向に変化するほど小さくする。
この構成であれば、センサ出力値Gaの補正値の変化率Ciを、ドライバ感度感応項Dsの大きさに応じて制限することが可能となるので、ドライバ感度感応項Dsを、レイトリミッタとして作用させることが可能となる。
その結果、様々な走行状況やドライバ操作に対して、ドライバへ違和感を与えることなく適切な補正を行うことが可能となる。
【0090】
(4)補正値制限部107が、制駆動力指示操作子の操作状態に起因した車両の加速又は減速の方向と、補正に起因した車両の加速又は減速の方向とが同じ場合に、センサ出力値Gaの補正を許可し、ドライバの操作状態に起因した車両の加速又は減速の方向と、補正に起因した車両の加速又は減速の方向とが異なる場合に、センサ出力値Gaの補正を禁止する。
この構成であれば、例えば、ドライバが制駆動力指示操作子を車両が加速するように操作したとする(例えば、アクセルペダル30を踏み込んだとする)。加えて、この操作状態に応じたドライバ感度感応項Dsによって制限された補正値CLによってセンサ出力値Gaを補正したとする。このような状況において、補正後のセンサ出力値Gcが車両を加速させる方向に変化する場合に、補正を許可することが可能である。
【0091】
一方、例えば、ドライバが制駆動力指示操作子を加速が発生するように操作したとする。加えて、この操作状態に応じたドライバ感度感応項Dsによって制限された補正値CLによってセンサ出力値を補正したとする。このような状況において、補正後のセンサ出力値Gcが車両を減速させる方向に変化する場合に、補正を禁止することが可能である。
その結果、ドライバが自己の操作に対して期待している加減速応答に反することなくオフセット補正を行うことが可能となる。
【0092】
(5)操作状態検出部103が、制駆動力指示操作子(例えば、アクセルペダル30)の操作速度(例えば、アクセル操作速度As)を検出する。ドライバ感度感応項Dsは、制駆動力指示操作子の操作速度が大きいほど制限量を小さくする値に設定されるようにした。
ここで、ドライバの操作速度が大きいほど、ドライバの加減速度に対する感度は小さくなる。
このことに基づき、ドライバ感度感応項Dsを、ドライバの操作速度が大きいほど補正値を大きくする(制限量を小さくする)値に設定されるようにした。その結果、ドライバに違和感を与えることなく、より多くの補正を行うことが可能となるため、センサ出力値の真値への収束速度をより向上することが可能となる。
【0093】
(6)補正信頼度算出部105が、車両状態(例えば、操舵角θ、車速V等)、加速度推定値Ge及びオフセット推定値Gosのうち少なくとも1つに基づき、オフセット推定値Gosの確からしさに依存する係数である補正信頼度Ccを算出する。補正値制限部107が、補正信頼度Ccが大きいほど制限量が小さくなるように補正値CLを制限する。
この構成であれば、オフセット推定値Gosの信頼度(精度)によって、補正値CLの制限量をコントロールすることが可能となる。
その結果、オフセット補正の精度の向上と、オフセット補正の速度の向上との両立が可能となる。
【0094】
(7)補正信頼度算出部105が、少なくとも加速度推定値Geに基づき補正信頼度Ccを算出すると共に、補正信頼度Ccを、加速度推定値Geが大きいほど補正値CLの制限量を大きくする値に設定されるようにした。
ここで、オフセット推定値の精度は車両重量Mの影響を受け、また、オフセット推定値の値が大きくなるほど車両重量Mの影響が大きくなる。
このことに基づき、補正信頼度Ccを、加速度推定値Geが大きいほど補正値が小さくなる値に設定した。
その結果、オフセット推定値Gosへの車両重量Mの影響を考慮したオフセット補正を行うことが可能となり、オフセット補正の精度向上と、オフセット補正の速度向上との両立が、より高いレベルで可能となる。
【0095】
(8)補正信頼度算出部105が、少なくともオフセット推定値Gosに基づき補正信頼度Ccを算出すると共に、補正信頼度Ccを、オフセット推定値Gosが大きいほど補正値CLの制限量を小さくする値に設定されるようにした。
ここで、オフセット推定値Gosが小さいときに対してオフセット推定値Gosが大きいときは、オフセット推定値の誤差がオフセット推定値に対して相対的に小さくなるため、オフセット推定値に対する信頼度は向上する。
このことに基づき、補正信頼度Ccを、オフセット推定値Gosが大きいほど補正値CLが大きくなる値(制限量が小さくなる値)に設定した。
その結果、オフセット補正の精度向上と、オフセット補正の速度向上との両立が、より高いレベルで可能となる。
【0096】
(9)制駆動力指示操作子が、アクセルペダル30を含む。ドライバ感度感応項Dsを、ドライバのアクセルペダル30の操作状態に応じて変化する値に設定した。
この構成であれば、ドライバのアクセルペダル30の操作状態に応じた適切な補正値CLでセンサ出力値Gaを補正することが可能となる。
その結果、ドライバに、自身のアクセル操作に起因した車両の加減速度の変化と、オフセット補正に起因した車両の加減速度の変化との区別をつきにくくすることが可能となると共に、ドライバ感度感応項Dsの大きさに応じて補正量を変化させることが可能となる。そのため、補正に起因した車両の加減速度変化に対するドライバの違和感の発生を抑えつつ、センサ出力値の真値への収束速度を向上することが可能となる。
【0097】
(第2実施形態)
(構成)
第2実施形態は、操作状態検出部103が、ブレーキセンサ4からのブレーキ操作量BRに基づき、ブレーキ操作量BRに応じた要求制動力Gbを算出すると共に、要求制動力Gbの変化速度(変化率)ΔGbを検出する点が上記第1実施形態と異なる。加えて、センサ出力補正装置1が、要求制動力Gbの変化速度(変化率)ΔGbに応じて変化する、センサ出力値Gaの補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの感度の指標値であるドライバ感度感応項Dsのマップを備えている点が上記第1実施形態と異なる。更に、ドライバ感度感応項算出部104が、このドライバ感度感応項マップから、入力された変化速度ΔGbに対応するドライバ感度感応項Dsを取得する点が上記第1実施形態と異なる。
【0098】
以下、上記第1実施形態と同様の構成部については同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
図10に示すように、第2実施形態では、ブレーキセンサ4の検出したブレーキ操作量BRが、コントローラ10に供給される。
第2実施形態の操作状態検出部103は、まず、ブレーキセンサ4から入力されるブレーキ操作量BRに基づき要求制動力Gbを算出する。具体的に、コントローラ10の備える不図示のメモリに予め記憶された、ブレーキ操作量BRに対する要求制動力Gbのマップから、入力されたブレーキ操作量BRに対応する要求制動力Gbを取得する。次に、操作状態検出部103は、取得した要求制動力Gbを微分することで、要求制動力Gbの変化速度ΔGbを算出する。操作状態検出部103は、算出した変化速度ΔGbを、ドライバ感度感応項算出部104に入力する。
【0099】
第2実施形態のドライバ感度感応項算出部104は、オフセット推定値算出部102から入力されるオフセット推定値Gosと、操作状態検出部103から入力される要求制動力Gbの変化速度ΔGbとに基づきドライバ感度感応項Dsを算出する。
ここで、第2実施形態のドライバ感度感応項Dsは、ブレーキペダル32の操作による要求制動力Gbの変化速度ΔGbに応じて変化する、センサ出力値Gaの補正に起因した加減速度の変化に対するドライバの感度の大きさを示す値であるドライバ感度感応値の指標値である。 なお、ドライバのブレーキペダル32の操作速度が大きいほど要求制動力の変化速度が大きくなる。
【0100】
また、第2実施形態において、ドライバ感度感応値は、ブレーキペダル32の操作による要求制動力Gbの変化速度に起因した車両の加速又は減速の方向とセンサ出力値Gaの補正に起因した車両の加速又は減速の方向とが同じときに、ブレーキペダル32の操作による要求制動力Gbの変化速度に起因した車両の加減速度の変化率が大きくなるほど小さくなるものである。換言すると、第2実施形態のドライバ感度感応値は、ブレーキペダル32の操作状態が車両の加減速度の変化率が大きくなる操作状態であればあるほど小さくなるものである。
【0101】
要求制動力Gbの変化速度(ブレーキ操作速度)が大きい場合、ドライバの車両の加減速度に対する感度は比較的小さくなり、変化速度が小さい場合、ドライバの車両の加減速度に対する感度は比較的大きくなる。即ち、ドライバの車両の加減速度の感度が小さいときに生じる、センサ出力値Gaの補正に起因した車両の加減速度の変化はドライバにとって感じにくいため、補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの感度は小さくなる。一方、ドライバの車両の加減速度の感度が大きいときに生じる、センサ出力値Gaの補正に起因した車両の加減速度の変化はドライバにとって感じやすいため、補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの感度は大きくなる。
【0102】
このことに基づき、第2実施形態では、例えば、実験によって得られた、ブレーキペダル32の操作による制動力の変化速度に対する不特定多数のドライバの上記補正に起因した加減速度の変化に対する感度のデータから、ドライバ感度感応項のマップを予め作成する。そして、このようにして作成したマップが、センサ出力補正装置1の備える不図示のメモリに予め記憶されている。
【0103】
また、第2実施形態では、変化速度ΔGbに基づき、ドライバのブレーキペダル32の操作による制動力の変化状態に起因した車両の加速又は減速の方向と、補正に起因した車両の加速又は減速の方向とが同じとなる場合に、センサ出力値Gaの補正を許可する。一方、ドライバのブレーキペダル32の操作による制動力の変化状態に起因した車両の加速又は減速の方向と、補正に起因した車両の加速又は減速の方向とが異なる場合に、センサ出力値Gaの補正を禁止する。
【0104】
例えば、ドライバが減速を意図してブレーキペダル32を踏み込んだ場合、変化速度ΔGbはプラスの値となると共に車両が減速する。この場合に、補正後のセンサ出力値Gcを用いた制御によって車両が減速する場合に、センサ出力値Gaの補正を許可する。一方、補正後のセンサ出力値Gcを用いた制御によって車両が加速する場合に、センサ出力値Gaの補正を禁止する。
【0105】
また、ドライバが加速を意図してブレーキペダル32の踏み込みを緩めた場合、変化速度ΔGbはマイナスの値となると共に車両が加速する。この場合に、補正後のセンサ出力値Gcを用いた制御によって車両が加速する場合に、センサ出力値Gaの補正を許可する。一方、補正後のセンサ出力値Gcを用いた制御によって車両が減速する場合に、センサ出力値Gaの補正を禁止する。
【0106】
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、車両が加速する側にオフセット補正を行う場合の加速側補正時ドライバ感度感応項マップと、車両が減速する側にオフセット補正を行う場合の減速側補正時ドライバ感度感応項マップとをそれぞれ用意している。
但し、第2実施形態の加速側補正時ドライバ感度感応項マップは、変化速度ΔGbが「0」及びプラスの値のときに「0」となり、変化速度ΔGbがマイナスの値のときに「0」よりも大きな値となる特性を有したマップである。
【0107】
また、第2実施形態の減速側補正時ドライバ感度感応項マップは、変化速度ΔGbが「0」及びマイナスの値のときに「0」となり、変化速度ΔGbがプラスの値のときに「0」よりも大きな値となる特性を有したマップである。
そして、ドライバ感度感応項算出部104は、オフセット推定値Gosがマイナスの値である場合に、車両が加速する側にオフセット補正を行うと判定する。
【0108】
ここで、第2実施形態では、オフセット推定値Gosがマイナスの値である場合、センサ出力値Gaが真値に対して低い状態となる。また、この状態のセンサ出力値Gaを真値へと近づけるように補正を行うことで、この補正に起因して車両が加速する状態となる制御が作動しているものとする。
従って、ドライバ感度感応項算出部104は、加速側補正時ドライバ感度感応項マップからアクセル操作速度Asに対応するドライバ感度感応項Dsを取得する。
【0109】
一方、ドライバ感度感応項算出部104は、オフセット推定値Gosがプラスの値である場合に、車両が減速する側にオフセット補正を行うと判定する。
ここで、第2実施形態では、オフセット推定値Gosがプラスの値である場合、センサ出力値Gaが真値に対して高い状態となる。この状態のセンサ出力値Gaを真値へと近づけるように補正を行うことで、この補正に起因して車両が減速する状態となる制御が作動しているものとする。
従って、ドライバ感度感応項算出部104は、減速側補正時ドライバ感度感応項マップからアクセル操作速度Asに対応するドライバ感度感応項Dsを取得する。
ドライバ感度感応項算出部104は、取得したドライバ感度感応項Dsを、補正許可係数算出部106に入力する。
【0110】
(動作)
次に、第2実施形態のセンサ出力補正装置1の動作を説明する。
イグニッションスイッチがON状態となると、ブレーキセンサ4からのブレーキ操作量BR、加速度センサ2からのセンサ出力値Ga、車輪速度センサ5からの車輪速度Vh1〜Vh4及びモータ電流センサ7からのモータ電流Imがコントローラ10に供給される。加えて、操舵角センサ6からの操舵角θがコントローラ10に供給される。
操作状態検出部103は、ブレーキセンサ4からブレーキ操作量BRが入力されると、要求制動力Gbのマップから、入力されたブレーキ操作量BRに対応する要求制動力Gbを取得する。更に、操作状態検出部103は、取得した要求制動力Gbを微分して、要求制動力Gbの変化速度ΔGbを算出する。操作状態検出部103は、算出した変化速度ΔGbを、ドライバ感度感応項算出部104に入力する。
【0111】
ドライバ感度感応項算出部104は、入力されたオフセット推定値Gosがプラスの値である場合は、
図11中の破線L802で示す特性を有する減速側補正時ドライバ感度感応項マップから、入力された変化速度ΔGbに対応するドライバ感度感応項Dsを取得する。
図11に示すように、センサ出力値Gaを減速側に補正する場合のドライバ感度感応項Dsは、変化速度ΔGbがプラス方向に大きいほど(ブレーキペダル32を踏み込む速度が大きいほど)線形に大きくなる値に設定されている。
【0112】
一方、ドライバ感度感応項算出部104は、入力されたオフセット推定値Gosがマイナスの値である場合は、
図11中の実線L801で示す特性を有する加速側補正時ドライバ感度感応項マップから、入力された変化速度ΔGbに対応するドライバ感度感応項Dsを取得する。
図11に示すように、センサ出力値Gaを加速側に補正する場合のドライバ感度感応項Dsは、変化速度ΔGbがマイナス方向に大きいほど(踏み込みを緩める(足を離す)速度が大きいほど)線形に大きくなる値に設定されている。
そして、ドライバ感度感応項算出部104は、取得したドライバ感度感応項Dsを、補正許可係数算出部106に入力する(ステップS203)。
以降の動作は上記第1実施形態と同様となるので説明を省略する。
【0113】
ここで、加速度センサ2が、加速度センサに対応する。駆動トルク推定部100が、駆動トルク推定部に対応する。加速度推定値算出部101が、加速度推定値算出部に対応する。オフセット推定値算出部102が、オフセット推定値算出部に対応する。操作状態検出部103が、操作状態検出部に対応する。ドライバ感度感応項算出部104が、ドライバ感度感応値設定部に対応する。補正信頼度算出部105が、補正信頼度算出部に対応する。補正値制限部107が、補正値制限部に対応する。出力値補正部108が、出力値補正部に対応する。ブレーキペダル32の操作による要求制動力Gbの変化速度ΔGbに応じて変化する、センサ出力値Gaの補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの感度が、ドライバ感度感応値に対応する。ブレーキペダル32が、ブレーキ操作子に対応する。
【0114】
(第2実施形態の効果)
本実施形態は、上記第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を奏する。
(1)制駆動力指示操作子が、ブレーキペダル32を含む。ドライバ感度感応項Dsを、ドライバのブレーキペダル32の操作による制動力(要求制動力Gb)の変化状態(変化速度ΔGb)に応じて変化する値に設定した。
この構成であれば、ドライバのブレーキペダル32の操作による制動力の変化状態に応じた適切な補正値CLでセンサ出力値Gaを補正することが可能となる。
【0115】
その結果、ドライバに、自身のブレーキ操作に起因した車両の加減速度の変化と、オフセット補正に起因した車両の加減速度の変化との区別をつきにくくすることが可能となると共に、ドライバ感度感応値の指標値であるドライバ感度感応項Dsの大きさに応じて補正量を変化させることが可能となる。そのため、補正に起因した車両の加減速度変化に対するドライバの違和感の発生を抑えつつ、センサ出力値の真値への収束速度を向上することが可能となる。
【0116】
(第3実施形態)
(構成)
第3実施形態は、操作状態検出部103が、シフトセンサ8からの車両のシフトポジションSPに基づき、シフトレバー34の操作状態(例えば、シフトアップ操作状態、シフトダウン操作状態等)を検出する点が上記第1及び第2実施形態と異なる。加えて、センサ出力補正装置1が、予め設定した、シフトレバー34の操作状態に応じて変化する、センサ出力値Gaの補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの感度の指標値であるドライバ感度感応項Dsのデータテーブルを備えている点が上記第1及び第2実施形態と異なる。更に、ドライバ感度感応項算出部104が、このデータテーブルから、入力された操作状態Ssに対応するドライバ感度感応項Dsを取得する点が上記第1及び第2実施形態と異なる。
【0117】
以下、上記第1及び第2実施形態と同様の構成部については同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
図12に示すように、第3実施形態では、シフトセンサ8の検出したシフトポジションSPが、コントローラ10に供給される。
第3実施形態の操作状態検出部103は、まず、シフトセンサ8から入力されるシフトポジションSPに基づき、シフトポジションSPの変化状態を検出する。具体的に、操作状態検出部103は、車両のシフトポジションが、シフトアップしたか、シフトダウンしたかのいずれかを検出する。操作状態検出部103は、シフトアップしたことを検出した場合、シフトアップ操作が行われたことを示す情報を含むシフト操作状態情報Ss(以下、単に「シフト操作状態Ss」と称す)を、ドライバ感度感応項算出部104に入力する。一方、操作状態検出部103は、シフトダウンしたことを検出した場合、シフトダウン操作が行われたことを示す情報を含むシフト操作状態Ssを、ドライバ感度感応項算出部104に入力する。
【0118】
第3実施形態のドライバ感度感応項算出部104は、オフセット推定値算出部102から入力されるオフセット推定値Gosと、操作状態検出部103から入力されるシフト操作状態Ssとに基づきドライバ感度感応項Dsを算出する。
ここで、第3実施形態のドライバ感度感応項Dsは、シフト操作状態Ssに応じて変化する、センサ出力値Gaの補正によって生じる加減速度の変化に対するドライバの感度の大きさを示す値であるドライバ感度感応値の指標値である。また、第3実施形態において、ドライバ感度感応値は、シフトレバー34の操作状態に起因した車両の加速又は減速の方向と、センサ出力値Gaの補正に起因した車両の加速又は減速の方向とが同じときに、シフトレバー34の操作状態が車両の加減速度の変化率が大きくなる操作状態であればあるほど小さくなるものである。
【0119】
例えば、ドライバがシフトアップ操作を行った場合、ドライバの車両の加速度に対する感度は比較的小さくなり、シフトダウン操作を行った場合、ドライバの車両の減速度に対する感度は比較的小さくなる。即ち、ドライバの車両の加減速度の感度が小さいときに、センサ出力値Gaを補正した場合、この補正に起因した車両の加減速度の変化はドライバにとって感じにくい。そのため、補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの感度は小さくなる。一方、ドライバの車両の加減速度の感度が大きいときに、センサ出力値Gaを補正した場合、この補正に起因した車両の加減速度の変化はドライバにとって感じやすい。そのため、補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの感度は大きくなる。
【0120】
このことに基づき、第3実施形態では、例えば、実験によって得られた、シフトレバー34の操作状態に対する不特定多数のドライバの上記補正に起因した加減速度の変化に対する感度のデータから、ドライバ感度感応項のテーブルを予め作成する。そして、このように作成したテーブルが、センサ出力補正装置1の備える不図示のメモリに予め記憶されている。
【0121】
また、第3実施形態では、シフト操作状態Ssに基づき、ドライバのシフトレバー34の操作状態に起因した車両の加速又は減速の方向と、補正に起因した車両の加速又は減速の方向とが同じとなる場合に、センサ出力値Gaの補正を許可する。一方、ドライバのシフトレバー34の操作状態に起因した車両の加速又は減速の方向と、補正に起因した車両の加速又は減速の方向とが異なる場合に、センサ出力値Gaの補正を禁止する。
【0122】
例えば、ドライバが加速を意図してシフトレバー34のシフトアップ操作を行った場合、車両に搭載された変速機(不図示)のギアがシフトアップすると共に車両が加速する。このとき、補正後のセンサ出力値Gcを用いた制御によって車両が加速する場合に、センサ出力値Gaの補正を許可する。一方、補正後のセンサ出力値Gcを用いた制御によって車両が減速する場合に、センサ出力値Gaの補正を禁止する。
【0123】
また、ドライバが減速を意図してシフトレバー34のシフトダウン操作を行った場合、車両に搭載された変速機(不図示)のギアがシフトダウンすると共に車両が減速する。このとき、補正後のセンサ出力値Gcを用いた制御によって車両が減速する場合に、センサ出力値Gaの補正を許可する。一方、補正後のセンサ出力値Gcを用いた制御によって車両が加速する場合に、センサ出力値Gaの補正を禁止する。
【0124】
第3実施形態では、車両が加速する側にオフセット補正を行う場合のドライバ感度感応項のテーブルである加速側補正時ドライバ感度感応項テーブルと、車両が減速する側にオフセット補正を行う場合のドライバ感度感応項のテーブルである減速側補正時ドライバ感度感応項テーブルとをそれぞれ用意している。
第3実施形態の加速側補正時ドライバ感度感応項テーブルは、シフトアップしたときに「0」よりも大きな値(正の値)となり、シフトダウンしたときに「0」となる特性を有したテーブルである。
【0125】
また、第3実施形態の減速側補正時ドライバ感度感応項テーブルは、シフトアップしたときに「0」となり、シフトダウンしたときに「0」よりも大きな値(正の値)となる特性を有したテーブルである。
そして、ドライバ感度感応項算出部104は、オフセット推定値Gosがマイナスの値である場合に、車両が加速する側にオフセット補正を行うと判定する。
【0126】
ここで、第3実施形態では、オフセット推定値Gosがマイナスの値である場合、センサ出力値Gaが真値に対して低い状態となる。また、この状態のセンサ出力値Gaを真値へと近づけるように補正を行うことで、この補正に起因して車両が加速する状態となる制御が作動しているものとする。
従って、ドライバ感度感応項算出部104は、加速側補正時ドライバ感度感応項テーブルからシフト操作状態Ssに対応するドライバ感度感応項Dsを取得する。
【0127】
一方、ドライバ感度感応項算出部104は、オフセット推定値Gosがプラスの値である場合に、車両が減速する側にオフセット補正を行うと判定する。
ここで、第3実施形態では、オフセット推定値Gosがプラスの値である場合、センサ出力値Gaが真値に対して高い状態となる。また、この状態のセンサ出力値Gaを真値へと近づけるように補正を行うことで、この補正に起因して車両が減速する状態となる制御が作動しているものとする。
従って、ドライバ感度感応項算出部104は、減速側補正時ドライバ感度感応項テーブルからシフト操作状態Ssに対応するドライバ感度感応項Dsを取得する。
ドライバ感度感応項算出部104は、取得したドライバ感度感応項Dsを、補正許可係数算出部106に入力する。
【0128】
(動作)
次に、第3実施形態のセンサ出力補正装置1の動作を説明する。
イグニッションスイッチがON状態となると、シフトセンサ8からのシフトポジションSP、加速度センサ2からのセンサ出力値Ga、車輪速度センサ5からの車輪速度Vh1〜Vh4及びモータ電流センサ7からのモータ電流Imがコントローラ10に供給される。加えて、操舵角センサ6からの操舵角θがコントローラ10に供給される。
【0129】
操作状態検出部103は、シフトセンサ8からシフトポジションSPが入力されると、入力されたシフトポジションSPに基づき、シフトレバー34の操作状態を検出する。これにより、シフトアップしたことを検出すると、シフトアップ操作が行われたことを示す情報を含むシフト操作状態Ssを、ドライバ感度感応項算出部104に入力する。一方、シフトダウンしたことを検出すると、シフトダウン操作が行われたことを示す情報を含むシフト操作状態Ssを、ドライバ感度感応項算出部104に入力する。
【0130】
また、オフセット推定値算出部102は、算出したオフセット推定値Gosを、ドライバ感度感応項算出部104に入力する。
ドライバ感度感応項算出部104は、入力されたオフセット推定値Gosがマイナスの値であると判定すると、
図13中のT901で示す加速側補正時ドライバ感度感応項テーブルから、入力されたシフト操作状態Ssに対応するドライバ感度感応項Dsを取得する。
図13のT901に示すように、加速側補正時ドライバ感度感応項テーブルは、シフトアップ時の値として正の値を有し、シフトダウン時の値として「0」を有する。加速側補正時ドライバ感度感応項テーブルは、例えば、1速から2速、2速から3速といったようにシフトアップの内容に応じて異なる正の値を有している。
【0131】
一方、ドライバ感度感応項算出部104は、入力されたオフセット推定値Gosがプラスの値であると判定すると、
図13中のT902で示す減速側補正時ドライバ感度感応項テーブルから、入力されたシフト操作状態Ssに対応するドライバ感度感応項Dsを取得する。
図13のT902に示すように、減速側補正時ドライバ感度感応項テーブルは、シフトダウン時の値として正の値を有し、シフトアップ時の値として「0」を有する。減速側補正時ドライバ感度感応項テーブルは、例えば、3速から2速、2速から1速といったようにシフトダウンの内容に応じて異なる正の値を有している。
ドライバ感度感応項算出部104は、取得したドライバ感度感応項Dsを、補正許可係数算出部106に入力する(ステップS203)。
以降の動作は上記第1及び第2実施形態と同様となるので説明を省略する。
【0132】
ここで、加速度センサ2が、加速度センサに対応する。駆動トルク推定部100が、駆動トルク推定部に対応する。加速度推定値算出部101が、加速度推定値算出部に対応する。オフセット推定値算出部102が、オフセット推定値算出部に対応する。操作状態検出部103が、操作状態検出部に対応する。ドライバ感度感応項算出部104が、ドライバ感度感応値設定部に対応する。補正信頼度算出部105が、補正信頼度算出部に対応する。補正値制限部107が、補正値制限部に対応する。出力値補正部108が、出力値補正部に対応する。シフト操作状態Ssに応じて変化する、センサ出力値Gaの補正に起因した車両の加減速度の変化に対するドライバの感度が、ドライバ感度感応値に対応する。シフトレバー34が、シフト操作子に対応する。
【0133】
(第3実施形態の効果)
本実施形態は、上記第1及び第2実施形態の効果に加えて、以下の効果を奏する。
(1)制駆動力指示操作子が、シフトレバー34を含む。ドライバ感度感応値の指標値であるドライバ感度感応項Dsを、ドライバのシフトレバー34の操作状態(シフト操作状態Ss)に応じて変化する値に設定した。
この構成であれば、ドライバのシフトレバー34の操作状態に応じた適切な補正値CLでセンサ出力値Gaを補正することが可能となる。
その結果、ドライバに、自身のシフト操作に起因した車両の加減速度の変化と、オフセット補正に起因した車両の加減速度の変化との区別をつきにくくすることが可能となると共に、ドライバ感度感応項Dsの大きさに応じて補正量を変化させることが可能となる。そのため、補正に起因した車両の加減速度変化に対するドライバの違和感の発生を抑えつつ、センサ出力値の真値への収束速度を向上することが可能となる。
【0134】
(変形例)
(1)上記第1〜第3実施形態では、加速度推定値Geの算出を、推定トルクTeと、走行抵抗Rとに基づき行っているが、この構成に限らない。例えば、旋回抵抗や摩擦制動力を考慮して加速度推定値Geを算出する構成としてもよい。また、これら考慮した要素に応じて、補正信頼度Ccの従属変数及びマップを変更してもよい。
(2)上記第1〜3実施形態では、加速度推定値Geの算出を、推定トルクTeと、走行抵抗Rとに基づき行っているが、この構成に限らない。例えば、車両のすべり角や車両のピッチングによって加速度センサの値自身がずれる影響を考慮して加速度推定値Geを算出する構成としてもよい。また、これら考慮した要素に応じて、補正信頼度Ccの従属変数及びマップを変更してもよい。
【0135】
(3)上記第1〜第3実施形態では、アクセル操作、ブレーキ操作、またはシフト操作のいずれか1つを用いてドライバ感度感応項Dsを変化させる構成としたが、この構成に限らず、これらを組み合わせて用いる構成としてもよい。
(4)上記第1〜第3実施形態では、アクセル操作、ブレーキ操作、またはシフト操作のいずれか1つを用いてドライバ感度感応項Dsを変化させる構成としたが、この構成に限らない。例えば、ドライバのエアコンのオンオフ操作に応じて変化させる構成としてもよい。
【0136】
(5)上記第1〜第3実施形態では、オフセット推定値Gosを加速度推定値Geと加速度センサ2のセンサ出力値との差分から求める構成としたが、この構成に限らない。例えば、補正信頼度Ccが予め設定した一定閾値範囲外の時のオフセット推定値Gosとして、補正信頼度Ccが一定閾値範囲内である時の加速度推定値Gosとセンサ出力値Gaとの差分をホールドしたものを使用してもよい。
【0137】
(6)上記第1〜第3実施形態では、ドライバ感度感応項マップ又はドライバ感度感応項テーブルから、操作状態に対応するドライバ感度感応項Dsを取得する構成としたが、この構成に限らない。例えば、ドライバ感度感応項マップ又はドライバ感度感応項テーブルを関数化し、この関数を用いた演算によって、ドライバ感度感応項Dsを得る構成としてもよい。このことは、上記第1〜第3実施形態において、補正信頼度Ccを求める際に用いる操舵角感応項Dθのマップと、車速感応項Dvのマップと、車両加速度感応項Dgのマップと、オフセット推定値感応項Dosのマップについても同様に関数化して、各値を演算によって得る構成としてもよい。
【0138】
(7)上記第1〜第3実施形態では、本発明に係る車両用加速度センサの出力補正装置1を、制駆動用モータを動力源とするいわゆる電気自動車に適用した場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、内燃機関を動力源とする自動車や、内燃機関と制駆動用モータとを備えたハイブリッド車両であっても、本願発明は適用可能である。
また、上記実施形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、上記の説明で用いる図面は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、均等物等は本発明に含まれるものである。