【実施例1】
【0028】
本発明の逆阻止IGBTからなる半導体チップ100は、
図1の要部断面図に示すように、n型シリコン半導体基板からなるドリフト層1を中心に、エミッタ側の表面30とコレクタ側の裏面40を有する。表面30側は主電流の流れる活性領域21とこの領域を取り囲む終端領域22とp型分離領域7とを備える。活性領域21の表面にはエミッタ電極10とゲートパッド電極(図示せず)が被覆され、終端領域22には高電界を緩和するFLR25、フィールドプレート11などが設けられる。p型分離領域7は表面30側から半導体チップ100の切断面に沿って、ドリフト層1を貫き、裏面40側のコレクタ層13に達する領域である。裏面40側には全面にp型のコレクタ層13を備えコレクタ電極14が接する。
【0029】
前記FLR25と活性領域21の間に本発明で特徴とするpウェル18(p型領域)が設けられる。本発明の逆阻止IGBTはこのpウェル18の拡散プロファイルに後述する特徴を有するように形成されている。また、前記活性領域21の表面30側には、選択的にp型ベース領域3と、この領域3表層内に設けられるn
+型エミッタ領域4と、このエミッタ領域4と前記ドリフト層1の表面とに挟まれるp型ベース領域3の表面上にゲート絶縁膜9を介して堆積されるポリシリコンゲート電極8bと、からなるMOS構造が設けられる。前記p型ベース領域3表面には、前記n
+型エミッタ領域4に沿面方向で隣接するp
+型コンタクト領域5を有することが好ましい。エミッタ電極10がn
+型エミッタ領域4とp
+型コンタクト領域5の表面を短絡するように共通に接触し、さらに前記ポリシリコンゲート電極8b上を層間絶縁膜17を介して覆っている。活性領域21の最外周のp型ベース領域3はpウェル18と一部で重なっている。pウェル18の上に酸化膜を介してゲート電極配線となるゲートランナ8aとこのゲートランナ8aに図外で繋がるゲート電極8bとが同時にポリシリコンにより形成される。前記pウェル18はp型ベース領域3と同等またはそれ以上の深さを有し、前記FLR25より浅く、不純物量が従来のpウェル(p型領域6)より低減されていることが本発明の逆阻止IGBTの特徴である。
【0030】
pウェル18のドーズ量はp型ベース領域3と同等またはそれ以上であって、前記FLR25のドーズ量の1/10以下である。このように前記FLR25のドーズ量の1/10以下とするために、前記Pウェル18を形成するためのイオン注入領域を従来のpウェル(p型領域6)のイオン注入領域の1/10以下の面積となるように選択された領域とする。ただし、選択的イオン注入領域を熱処理して熱拡散により連続的となったpウェル領域18が従来のpウェル(p型領域6)と同等の平面面積となるように、前述の1/10以下の面積のイオン注入領域を均等に分散配置することが本発明の逆阻止IGBTの製造方法の特徴である。ちなみに、イオン注入領域を均等に分散配置することは、前述の特許文献1にも記載されているが、ゲートパッド電極下のP型領域のみである。本発明の逆阻止IGBTでは、逆耐圧を低下させないために、前記特許文献1とは異なり、ゲートパッド電極下およびゲートランナ下のP型領域の両方で、イオン注入領域を均等に分散配置して、この領域のドーズ量を従来のようにP型領域より少なくし不純物濃度を低減し、深さを浅くしたプロファイルとする。
【0031】
図2に、本発明にかかる逆阻止IGBT(
図1)の破線枠内にあるゲートランナ近傍の拡大断面図を示す。
図2の活性領域21内のユニットセルはプレナーゲート構造で示されているが、
図24に示すようなトレンチゲート構造とすることもできる。
【0032】
本願発明の逆阻止IGBT(
図1)とそのゲートランナ近傍の拡大断面図である
図2について、pウェル18(p型領域6)のドーズ量をパラメータとして、室温逆耐圧とドリフト層の厚さの関係を調べた結果を
図3に示す。ドリフト層1の不純物濃度nはn=1.22×10
14cm
-3である。キャリアーライフタイム(τ)は電子線照射などで空間的に均一に調整し、電子のライフタイムは0.35μsとし、ホールのライフタイムはその1/3とする。pウェル18の幅を48μmとし、pウェル18と連結するハーフセルの幅は12.5μmとする。p型ベース領域3のドーズ量を2.5×10
13cm
-2、FLR25(
図14のp型領域6)のドーズ量を2.5×10
15cm
-2とする。
【0033】
図3には、pウェル18のドーズ量が、p型ベース領域3と同等(すなわち2.5×10
13cm
-2)である場合と、FLR25(
図14のp型領域6)のドーズ量(2.5×10
15cm
-2)の1%と、10%と、100%の場合の4つをパラメータとする場合の室温逆耐圧とドリフト層1厚さの関係図を示す。
図3からpウェル18のドーズ量がFLR25のドーズ量と同じ100%の場合(
図14のp型領域6の場合)、絶対値で前記ゲートランナ部やゲートパッド部の逆耐圧は活性領域の逆耐圧(pウェル18のドーズ量がp型ベース領域3と同等の場合の逆耐圧)より約50V低くなっていることがわかる。その場合、逆耐圧は耐圧の低い前記ゲートパッド部やゲートランナ部で決まることになる。一般的に、これらの高電界強度部(ゲートパッド部やゲートランナ部)の面積は活性領域の面積より格段に小さい。このため、高電界による電界集中が狭い面積に局部的に生じ易くなる結果、素子の逆耐圧が低くなるほか、逆方向のアバランシェエネルギーや逆阻止IGBTのダイオードモードでの逆回復エネルギーが局在する(集中する)ことで全体の耐量が弱くなる。
【0034】
本発明の逆阻止IGBTのpウェル18では、pウェル18の形成のためのイオン注入領域面積を小さくすることにより、そのドーズ量(総不純物量)を、従来のpウェル(p型領域6)のドーズ量より低減させたので、前記
図23で説明したように逆耐圧を決めるバイポーラ―トランジスタの増幅係数が小さくなり、その結果、逆耐圧が向上する。たとえば、pウェル18のドーズ量(総不純物量)をFLR25の1/10以下にすれば、
図3から前記ゲートランナ・ゲートパッド直下のpウェル接合と活性領域のp型ベース領域接合とにおける逆耐圧の差を40V程度以下に抑制することができる。その結果、逆方向降伏がゲートランナやゲートパッド直下で先に発生しても、温度上昇などでそれら部分の耐圧が向上し、やがて活性領域全体で降伏するようになる。従って、逆方向のアバランシェ耐量やダイオードモードでの逆回復耐量も向上できる。
【0035】
前記
図2に示すpウェル18は前記
図14に示す従来のpウェル(p型領域6)と同様の製造工程において、イオン注入パターンの面積を小さくするように変えてドーズ量(総不純物量)を低減することにより形成することができる。
【0036】
まずFLR25の形成までの製造工程は、従来の逆阻止IGBT(
図13)のFLR25の形成と同様の製造工程であるので、
図13を参照して以下説明する。
【0037】
抵抗率が28〜35Ωcmのn型FZ−Siウェハの表面に熱酸化で酸化膜を形成する。フォトリソグラフィ工程を経て、酸化膜をパターンエッチングにより分離領域用開口部を形成する。その後、フォトレジストを除去し、ウェハを洗浄する。前記分離領域用開口部に薄いスクリーン酸化膜を熱酸化により形成する。酸化膜をマスクとして、前記分離領域用開口部に5×10
15cm
-2のボロンイオンを45KeVのイオン注入エネルギーで注入する。酸化膜の厚さは開口部以外へのボロンイオンのSiウェハへの注入がマスクされる厚さとする必要がある。イオン注入されたボロンイオンに対して、従来と同様の熱拡散工程を加え、p型分離領域7を形成する。熱拡散の雰囲気は酸素を含むArまたN
2とする。拡散の温度は1250〜1350℃とする。拡散時間は設計耐圧に必要なウェハ厚さ、すなわち、p型分離領域7の最終深さに依存する。耐圧700Vクラス素子の場合は140時間程度が必要となる。その時、p型分離領域7の深さは120μm以上となる。その後、マスクとして用いたウェハ面の酸化膜およびスクリーン酸化膜を除去する。
【0038】
図15に示すように、従来の逆阻止IGBTの製造工程では、熱酸化により再度厚さ約0.8μmの初期熱酸化膜19をウェハの表面に形成し、フォトリソグラフィ工程で初期酸化膜19をパターニングし、FLR25用開口部20a、pウェル(p型領域6)形成用開口部20bを形成する。フォトレジストマスク20を除去した後、スクリーン酸化膜を約30〜80nmの厚さで熱酸化により形成する。
図16に示すように、ウェハ全面にボロンイオンを注入する。注入エネルギーが30〜60KeV、ドーズ量が1〜2.5×10
15cm
-2とする。
【0039】
図17に示すように、温度を1050〜1150℃で、熱拡散時間を200〜250分とし、不活性雰囲気においてドライブインして、接合深さ8〜9μmのFLR25およびpウェル(p型領域6)を形成した。
【0040】
これに対し、本発明の逆阻止IGBTでは、
図15の右端に示す従来のpウェル用開口部20b内のパターンを、前記
図4の平面図示すように、複数の均等に配置されたスリット状開口部20cとする。従来のように全部開口する場合は、前記イオン注入ドーズ量のすべてがその開口部に注入される。その場合、工程完了時は従来のようにFLR25(開口部は20aとする)と同プロファイルのpウェル(p型領域6)(開口部20b)が形成される。しかし、本発明にかかる実施例1のように、従来のpウェル用開口部20b内のパターンを
図4のような複数の均等に配置されたスリット状開口部20cとする場合、具体的には、
図4示すように、A=2μmのスリット開口部を直交方向でB=8μm間隔に配置すれば、このスリット状開口部には等価的に従来のpウェル(p型領域6)の開口部20aの約8%の面積になる。つまり、従来例と同様にFLR25と同じドーズ量であれば、本発明のpウェル18のドーズ量は従来のpウェル(p型領域6)の8%のドーズ量が注入される。
【0041】
従来の逆阻止IGBTのゲートランナ直下のpウェル(p型領域6)の幅は数十μm以上ある。例えば、
図14ではpウェル(p型領域6)の幅は48μmであるので、前述のような48μm幅のpウェル6内に、2μm×2μm角のスリット開口部20cを前記
図4のような配置で複数形成するフォトレジストパターンにすると、本発明の逆阻止IGBTのpウェル18にすることができる。このように本発明にかかるスリット状開口部20cはゲートランナおよびゲートパッドの直下のpウェル領域に形成されイオン注入されpウェル領域18が形成される。
【0042】
また逆阻止IGBTとしての大電流ターンオフ能力を持たせるためには、複数のスリット状開口部から注入したボロンイオンが熱拡散により相互に繋がって連続した領域となるように、前記開口部面積および開口部間隔を設定する必要がある。
図5に
図4のC1−C2線における熱拡散後の断面図を示す。このようにすれば、選択的に分離して配置されたイオン注入領域は連結した領域、すなわち、連続的なpウェル18の領域となり、かつ、その接合深さも従来のpウェル(p型領域6)より浅くなる。
【0043】
pウェル18の深さが浅くなることで、大電流、高電圧でターンオフする際、ゲートランナ部へのキャリアー集中で素子のRBSOAが損なわれる場合は、
図2に示すように、
図14よりもp型ベース領域3及びp
+コンタクト領域5の沿面寸法を長くすればよい。これにより終端部下のターンオフ電流が流れ込む面積が増大するので電流の集中が緩和され、ダイナミックアバランシュと局部過熱を抑制することができ、RBSOAを回復することができる。