(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電源からの電流を負荷へ供給し、電流の状態に応じて電流供給を停止する供給部と、該供給部が電流供給を停止した後に、前記供給部に電流供給を再開させる手段とを備える電流制御装置において、
前記供給部が電流供給を再開することができる上限回数を記憶している記憶部と、
前記供給部が電流供給を再開した回数の計数を行う計数手段と、
該計数手段が計数を行った回数が前記上限回数に達した場合に、前記供給部が電流供給を再開することを禁止する手段と、
電流供給を指示する信号を受け付ける受付部と、
該受付部が前記信号を受け付けた場合に、前記供給部に電流供給を開始させる開始部と、
前記供給部が電流供給を再開することを禁止した場合に、前記計数手段が計数を行った回数をリセットする手段とを備え、
前記供給部は、負荷へ供給する電流値が所定範囲内に含まれる場合に電流供給を停止するように構成してあり、
前記上限回数は、前記供給部及び前記負荷の間の接続に用いられる電線に前記所定範囲内の最大電流が前記上限回数流れた場合に前記電線の温度が所定温度未満になるような回数に、予め定められており、
前記開始部は、前記供給部が電流供給を再開することを禁止した後、前記受付部が前記信号を受け付けた場合に、前記供給部に電流供給を開始させ、前記供給部が電流供給を再開することを禁止した後、前記受付部が前記信号を受け付けない限り前記供給部に電流供給を開始させないように構成してあること
を特徴とする電流制御装置。
【背景技術】
【0002】
車両には、ランプ又はモータ等、電力を消費する種々の負荷が備えられている。電源から負荷へ電流を供給するための電線は、摩耗によって暴露された芯線が車両のボディと接触してショートした場合等、過剰な電流が流れて過熱され、損傷が発生する虞がある。そこで、過剰な温度上昇から電線を保護する必要がある。特許文献1には、負荷が必要とする電流値が変動する場合であっても、過電流の発生を検出し、電線を過熱から保護する技術が開示されている。また、特許文献2には、電流値に基づいて電線の温度を推定する演算を行い、温度が高すぎる場合に電流供給を停止する技術が開示されている。
【0003】
従来の電流制御装置には、自己保護機能を有するIPD(Intelligent Power Device)を用いているものがある。IPDは、突入電流等の過大な電流が発生した場合、又は電流に外部からのノイズが重畳した場合等に自己保護を行い、電流供給を停止する。電流制御装置は、IPDの自己保護機能が働いた場合、ある程度の時間が経過した後に電流供給を再開するリトライの処理を行う。リトライの処理により、ノイズに起因する電流供給の誤停止を防止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リトライの処理を行う電流制御装置は、過大な電流の発生を原因として自己保護が行われた場合でもリトライの処理を実行することになる。このため、過大な電流が継続して発生している場合は、過大な電流の発生に応じてIPDが電流供給を停止しても、リトライの処理により電流供給が再開し、過大な電流が電線に流れ続け、電線の過熱を防止することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、リトライの処理を制限することにより、電流供給の誤停止を防止しながらも電線の過熱を防止することができる電流制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電流制御装置は、電源からの電流を負荷へ供給し、電流の状態に応じて電流供給を停止する供給部と、該供給部が電流供給を停止した後に、前記供給部に電流供給を再開させる手段とを備える電流制御装置において、前記供給部が電流供給を再開することができる上限回数を記憶している記憶部と、前記供給部が電流供給を再開した回数の計数を行う計数手段と、該計数手段が計数を行った回数が前記上限回数に達した場合に、前記供給部が電流供給を再開することを禁止する手段と
、電流供給を指示する信号を受け付ける受付部と、該受付部が前記信号を受け付けた場合に、前記供給部に電流供給を開始させる開始部と、前記供給部が電流供給を再開することを禁止した場合に、前記計数手段が計数を行った回数をリセットする手段とを備え、前記供給部は、負荷へ供給する電流値が所定範囲内に含まれる場合に電流供給を停止するように構成してあり、前記上限回数は、前記供給部及び前記負荷の間の接続に用いられる電線に前記所定範囲内の最大電流が前記上限回数流れた場合に前記電線の温度が所定温度未満になるような回数に、予め定められて
おり、前記開始部は、前記供給部が電流供給を再開することを禁止した後、前記受付部が前記信号を受け付けた場合に、前記供給部に電流供給を開始させ、前記供給部が電流供給を再開することを禁止した後、前記受付部が前記信号を受け付けない限り前記供給部に電流供給を開始させないように構成してあることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る電流制御装置は、
複数の電線を通じて前記負荷へ電流を供給する複数の前記供給部を備え、夫々の前記供給部は、前記複数の電線の内の一つの電線を通じて前記負荷へ電流を供給するように構成してあり、前記上限回数は、前記複数の電線の夫々について定められていることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、電流制御装置は、外部電源からの電流を負荷へ供給し、電流の状態に応じて電流供給を停止する供給部を備え、供給部が電流供給を停止した後で電流供給を供給部に再開させる。電流制御装置は、電流供給を再開した回数が予め記憶している上限回数に達した場合に、供給部が電流供給を停止した後に電流供給を再開しないようにする。これにより、供給部が電流供給を停止した後に電流供給を再開する回数が制限される。過大な電流を原因として供給部が電流供給を停止した場合に電流供給を再開することによって過大な電流が負荷までの電線に流れ続けることが、電流供給の再開の回数の制限によって防止される。
【0012】
本発明においては、電流制御装置は、電流供給を指示する信号を外部から受け付けた場合に、負荷への電流供給を開始する。電流供給を再開した回数が上限回数に達した後は、供給部が電流供給を停止した場合は電流供給の停止が継続されるものの、電流制御装置は、信号を受け付けたことに応じて、電流供給を開始する。
【0013】
本発明においては、電流供給を再開した回数が上限回数に達した後、電流供給を再開しないようにした場合に、電流供給を再開した回数をリセットする。電流供給を指示する信号を受け付けて電流供給を開始した場合は、電流供給を再開した回数がリセットされているので、電流制御装置は、供給部が電流供給を停止した後に電流供給を再開することが可能である。
【0014】
本発明においては、供給部は、電流値が所定範囲内に含まれる場合に電流供給を停止する。電流供給を再開する上限回数は、電流供給の停止と再開とを繰り返す間に所定範囲内の最大電流が電線に流れた場合に電線の温度が所定温度未満である回数に定められている。このため、電流供給を再開する回数を制限することにより、電線が過熱することが防止される。
【発明の効果】
【0015】
本発明にあっては、電流制御装置は、供給部が負荷への電流供給を停止した場合に電流供給を再開する一方で、電流供給を再開する回数を制限することによって、過大な電流が負荷までの電線に流れ続けることを防止する。従って、電流制御装置は、負荷への電流供給の誤停止を防止しながらも、電線の過熱を防止することができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、電流制御装置1の内部の機能構成を示すブロック図である。電流制御装置1は、ボディECU(Electronic Control Unit )等の車載用の装置である。電流制御装置1は、車載された電源4に接続され、更に、電線61,62,63,64を介してランプ又はモータ等の負荷51,52,53,54に接続される。電流制御装置1は、電源4からの電流を、電線61,62,63,64を通じて負荷51,52,53,54へ供給する。電流制御装置1、電源4、負荷51,52,53,54、及び電線61,62,63,64は、自動車に搭載される。
【0018】
電流制御装置1は、制御部2及びIPD(Intelligent Power Device)31,32,33,34を備えている。制御部2は、マイコンで構成されている。IPD31,32,33,34は、本発明における供給部に対応している。IPD31,32,33,34は、電源4に接続され、夫々に、電線61,62,63,64を介して負荷51,52,53,54に接続される。IPD31,32,33,34は、電源4から電流を供給され、供給された電流を、電線61,62,63,64を通じて負荷51,52,53,54へ供給する。制御部2は、IPD31,32,33,34の動作を制御するための制御信号を出力する。IPD31,32,33,34は、制御信号を入力され、入力された制御信号に応じて、負荷51,52,53,54へ供給する電流を制御する。また、IPD31,32,33,34は、制御信号に応じて制御した電流の値を示す電流値信号を制御部2へ出力する。電流値信号は、例えば、電流値に比例した電流信号又は電圧信号である。
【0019】
制御部2は、電流制御のための処理を実行する処理部21と、出力部22と、A/D変換器23とを備えている。処理部21は、プロセッサ及びメモリを含んで構成されている。処理部21には、出力部22及びA/D変換器23が接続されている。出力部22は、IPD31,32,33,34の夫々に接続されている。処理部21は、出力部22に制御信号をIPD31,32,33,34へ出力させる。A/D変換器23には、IPD31,32,33,34が出力した電流値信号が入力される。A/D変換器23は、入力された電流値信号をA/D変換し、処理部21へ入力する。処理部21は、A/D変換器23から入力された電流値信号に基づいて、IPD31,32,33,34から電線61,62,63,64を通じて負荷51,52,53,54へ供給する電流の値を判定する。また、処理部21は、判定した電流の値に基づいて、電線61,62,63,64の温度を計算する。具体的には、処理部21は、特許文献1に記載の方法で電線61,62,63,64の温度を判定する。
【0020】
温度を判定する方法を簡単に説明する。nを自然数として、n回目に判定した電流値をI(n)、所定時間Δtの間の電線上昇温度をΔTw(n)、電線抵抗をRw(n)、電線熱抵抗をRthw、電線放熱時定数をτwとする。処理部21は、下記の(1)式に従って、電線上昇温度ΔTw(n)を計算する。
【0022】
制御部2は、不揮発性のメモリ(記憶部)25を備えている。(1)式に従った計算に必要なパラメータは、予めメモリ25に記憶されている。電流値I(n)としては、IPD31,32,33,34からの電流値信号に基づいて判定した値が用いられる。また、電線61,62,63,64が配置されている環境の温度を図示しない温度センサを用いて測定した値、又は予め定められている所定の温度値が、電線温度の初期値として用いられる。処理部21は、電線温度の初期値及び計算した電線上昇温度に基づいて、電線61,62,63,64の温度を判定する処理を行う。なお、処理部21は、(1)式を用いた計算以外の方法で電線の温度を判定する形態であってもよい。
【0023】
電線61,62,63,64の夫々について、許容される温度の上限が予め定められている。電線61,62,63,64が過熱されて温度が上限を超過した場合は、電線61,62,63,64は損傷し、例えば発煙することになる。電線61,62,63,64の夫々について、予め定められた上限温度の値がメモリ25に記憶されている。処理部21は、次に、判定した電線61,62,63,64の温度に基づいて、電線61,62,63,64の温度を所定温度以下に抑制するように電流を制御するための制御信号を生成する。例えば、処理部21は、判定した特定の電線の温度がその電線の上限温度未満である場合に、負荷への電流供給を継続することを指示する制御信号を生成し、判定した特定の電線の温度がその電線の上限温度以上である場合に、負荷への電流供給を停止することを指示する制御信号を生成する。なお、処理部21は、より複雑なフィードバック制御のための制御信号を生成してもよい。
【0024】
出力部22は、処理部21が電線61,62,63,64の夫々について生成した制御信号を、対応するIPD31,32,33,34へ出力する。例えば、出力部22は、処理部21が電線61について生成した制御信号をIPD31へ出力する。前述したように、IPD31,32,33,34は、制御信号を入力され、入力された制御信号に応じて、電線61,62,63,64を通じて負荷51,52,53,54へ供給する電流を制御する。このようにして、電流制御装置1は、電流を制御し、過剰な温度上昇から電線61,62,63,64を保護する。
【0025】
また、電流制御装置1には、ユーザが操作するスイッチ7が接続されている。スイッチ7は、ユーザからの操作を受け付け、負荷51,52,53,54への電流供給を指示する指示信号を制御部2へ入力する。例えば、スイッチ7は負荷51,52,53,54を動作させるための動作スイッチである。制御部2は、入力された指示信号を受け付ける受付部24を備えている。受付部24が指示信号を受け付けた場合、処理部21は、負荷51,52,53,54へ電流を供給するための制御信号を生成し、出力部22は制御信号をIPD31,32,33,34へ出力し、IPD31,32,33,34は制御信号に従って電流を負荷51,52,53,54へ供給する。
【0026】
ところで、IPD31,32,33,34は、制御信号に従って電流の供給及び停止を行う機能以外に、自己保護機能を備えている。具体的には、IPD31,32,33,34は、外部からのノイズの侵入に応じて電流供給を停止する。例えば、電源4からの電流にノイズが重畳して所定の許容量以上の変動が発生した場合に、IPD31,32,33,34は電流供給を停止する。また、IPD31,32,33,34は、過大な電流が流れた場合に電流供給を停止する。IPD31,32,33,34には、電流供給を停止すべき電流範囲が予め設定されている。この電流範囲に含まれる電流は過大な電流であり、この電流範囲内の電流が流れた場合に、IPD31,32,33,34は電流の供給を停止する。電流供給を停止すべき電流範囲を超過する電流が流れた場合は、IPD31,32,33,34は損傷する虞がある。例えば、電源4から電流が供給される際、過大な突入電流が発生した場合に、IPD31,32,33,34の自己保護が働き、電流供給が停止される。
【0027】
制御部2は、IPD31,32,33,34からの電流値信号に基づき、IPD31,32,33,34の自己保護による電流供給の停止を検出する。なお、IPD31,32,33,34は、自己保護により電流供給を停止したことを示す信号を電流値信号とは別に出力する形態であってもよい。制御部2は、IPD31の自己保護による電流供給が停止した後、一定時間後に電流供給を再開させるリトライの処理を行う。具体的には、処理部21は、IPD31に電流供給を再開させるための制御信号を生成し、出力部22は、電流供給が停止してから一定時間が経過したタイミングで制御信号を出力し、IPD31は、制御信号に従って電流供給を再開する。一定時間の値は、メモリ25に記憶されている。IPD32,33,34の夫々についても、制御部2は同様にリトライの処理を行う。通常、突入電流の発生及びノイズの発生は一時的なものであるので、電流供給の再開後、IPD31,32,33,34は電流供給を継続する。しかしながら、IPD31,32,33,34が自己保護により電流供給を停止する原因となった状態が継続している場合は、再度、IPD31,32,33,34は自己保護により電流供給を停止し、更にリトライの処理が行われる。
【0028】
図2は、電流制御装置1からの電流供給のタイミングを示すタイミングチャートである。図中の横軸は時間を示す。図中の信号は、上から、制御部2が出力する制御信号、IPD31が供給する電流、及びIPD31の自己保護の発動状態を示している。ハイの制御信号は、IPD31に電流を供給させることを指示する制御信号を出力していることを示し、ローはその制御信号を出力していないことを示している。ハイの電流供給は、IPD31が電流を負荷51へ供給していることを示し、ローの電流供給は電流供給が停止していることを示している。ハイの自己保護は、IPD31の自己保護機能が働いていることを示し、ローの自己保護は自己保護機能が働いていないことを示している。
【0029】
IPD31が継続的に負荷51へ電流を供給している最中に、何らかの原因でIPD31の自己保護が発動する。このとき、電流供給は停止する。制御部2は、電流供給の停止に伴って、制御信号の出力を停止する。一定時間後、制御部2は、IPD31に電流を供給させることを指示する制御信号を再度出力し、IPD31は、制御信号に従って負荷31へ電流を供給する。IPD31の自己保護が発動する原因となった条件が継続している場合、再度、IPD31の自己保護が発動し、電流供給は停止する。条件が継続している間、この処理が繰り返される。IPD32,33,34の夫々についても、同様の処理が行われる。
【0030】
過大な電流が流れることでIPD31,32,33,34の自己保護機能が働き、更に過大な電流が継続している場合、リトライの処理が行われる都度、電線61,62,63,64に過大な電流が流れることになり、電線61,62,63,64が損傷する虞がある。そこで、電流制御装置1は、リトライの処理を行う上限回数を定めてあり、リトライの処理を行った回数が上限回数に達した場合に、電流供給を停止した後のリトライの処理を行わない。
【0031】
リトライの上限回数は、電線61,62,63,64の夫々について予め定められており、メモリ25に記憶されている。
図3は、メモリ25に記憶されているリトライの上限回数の例を示す図表である。チャンネルは、出力部22のチャンネルを示し、夫々のチャンネルに関連付けてリトライの上限回数が記憶されている。チャンネル1,2,3,4は夫々IPD31,32,33,34に接続されている。即ち、IPD31,32,33,34が電流を流す電線61,62,63,64の夫々について、リトライの上限回数がメモリ25に記憶されている。
図3に示す例では、電線61についてリトライの上限回数が10と定められており、同様に、電線62,63,64の夫々について、リトライの上限回数が12、20、8と定められている。各電線についてのリトライの上限回数は、各電線において許容される温度の上限に応じて定められている。
【0032】
IPD31,32,33,34による電流供給の停止とリトライの処理とが行われる間、IPD31,32,33,34が電流供給を停止すべき電流範囲に含まれる最大の電流が電線61,62,63,64に流れると仮定し、電線61,62,63,64の温度が許容される上限温度を超過しないように、リトライの上限回数が定められている。具体的には、IPD31が自己保護を行うべき電流範囲中の最大電流を電流値I(n)として、(1)式を用いて電線上昇温度ΔTw(n)を計算する。電線上昇温度ΔTw(n)の計算をリトライの回数繰り返し、電線61の温度が許容される上限温度に達するリトライの回数を求める。求めたリトライの回数を電線61についてのリトライの上限回数と定める。定めた上限回数をメモリ25に記憶させる。なお、電線上昇温度ΔTw(n)の計算の際には、電線61に電流が流れている状態と流れていない状態とがリトライの回数繰り返し発生すると仮定して計算を行ってもよく、又、電流供給の停止とリトライの処理とがリトライの回数繰り返される間中電線61に電流が流れていると仮定して計算を行ってもよい。電線62,63,64の夫々についても、同様に、リトライの上限回数が定められ、メモリ25に記憶される。リトライの上限回数を定める処理は電流制御装置1の設計時に行われ、上限回数をメモリ25に記憶させる作業は電流制御装置1の製造時に行われる。
【0033】
図4は、電流制御装置1が実行する処理の手順の例を示すフローチャートである。処理部21は、リトライの処理を行ったリトライ回数を記憶する。処理部21は、スイッチ7から入力される指示信号を受付部24が受け付けることを待ち受ける(S1)。指示信号の受付が無い場合は(S1:NO)、処理部21は、指示信号の待ち受けを続行する。負荷51へ電流を供給することを指示する指示信号を受付部24が受け付けた場合は(S1:YES)、処理部21は、IPD31に負荷51へ電流を供給させるための制御信号を生成し、出力部22は制御信号をIPD31へ出力し、IPD31は電源4からの電流を負荷51へ供給する(S2)。IPD31は電流値信号を出力し、A/D変換器23は電流値信号をA/D変換し、処理部21は、電流値信号に基づいて、IPD31から負荷51へ供給している電流値を判定する(S3)。処理部21は、次に、電流値に基づいて、IPD31が自己保護により電流供給を停止したか否かを判定する(S4)。
【0034】
IPD31が電流供給を停止していない場合は(S4:NO)、処理部21は、(1)式を用いた計算により電線61の温度を判定し、判定した電線61の温度が所定の上限温度以上であるか否かを判定する(S5)。電線61の温度が所定の上限温度未満である場合は(S5:NO)、処理部21は、負荷51への電流供給を継続することを指示する制御信号を生成し、出力部22は制御信号をIPD31へ出力し、IPD31は電流の供給を継続する(S6)。電流制御装置1は、次に、処理をS3へ戻す。
【0035】
電線61の温度が所定の上限温度以上である場合は(S5:YES)、処理部21は、負荷51への電流供給を停止することを指示する制御信号を生成し、出力部22は制御信号をIPD31へ出力し、IPD31は負荷51への電流供給を停止する(S7)。電流制御装置1は、次に、処理を終了する。
【0036】
S4で、IPD31が自己保護により電流供給を停止したと処理部21が判定した場合は(S4:YES)、処理部21は、記憶しているリトライ回数が上限回数に達しているか否かを判定する(S8)。リトライ回数が上限回数未満である場合は(S8:NO)、制御部2は、一定時間後にIPD31に電流供給を再開させるリトライの処理を行う(S9)。S9では、処理部21は、電流供給を再開させるための制御信号を生成し、出力部22は、電流供給が停止してから一定時間が経過したタイミングで制御信号を出力し、IPD31は、電流供給を再開する。処理部21は、次に、記憶しているリトライ回数をインクリメントする(S10)。S10の処理は計数手段に対応する。電流制御装置1は、次に、処理をS3へ戻す。
【0037】
リトライ回数が上限回数に達している場合は(S8:YES)、処理部21は、負荷51への電流供給を停止することを指示する制御信号を生成し、出力部22は制御信号をIPD31へ出力し、IPD31は負荷51への電流供給を停止する(S11)。このようにして、電流制御装置1は、リトライの処理を禁止する。処理部21は、次に、記憶しているリトライ回数をゼロにリセットする(S12)。なお、処理部21は、リトライ回数をゼロ以外の値にリセットしてもよい。電流制御装置1は、次に、処理を終了する。
【0038】
S8〜S11の処理により、
図2に示すように、リトライ回数が上限回数と等しくなった最後のリトライの処理以降は、IPD31が自己保護により電流供給を停止したとしてもリトライの処理は行われない。S7又はS12の後で処理が終了した後は、負荷51へは電流は供給されない。ユーザがスイッチ7を操作することにより、スイッチ7から電流制御装置1へ指示信号が入力された場合に、電流制御装置1はS1から処理を開始する。S12でリトライ回数がリセットされているので、指示信号の入力によって処理が開始された後は、リトライの処理も可能になる。電流制御装置1は、IPD32,33,34の夫々についても、同様の処理を実行する。
【0039】
以上詳述した如く、本実施の形態においては、電流制御装置1は、IPD31,32,33,34の自己保護により負荷51,52,53,54への電流供給が停止した場合に電流供給を再開させるリトライの処理の回数を所定の上限回数以下に制限する。リトライの処理の回数が上限回数に達した場合は、負荷51,52,53,54への電流供給が停止してもリトライの処理は行われず、電流供給の停止が継続される。リトライの上限回数が定められているので、過大な電流を原因としてIPD31,32,33,34が自己保護により電流供給を停止した場合にリトライの処理によって過大な電流が電線61,62,63,64に流れ続けることが防止される。このため、過大な電流が流れることによる電線61,62,63,64の過熱が防止される。一方で、ノイズの発生等の一時的な原因によってIPD31,32,33,34の自己保護が働いた場合は、リトライの処理によって負荷51,52,53,54への電流供給は再開される。従って、電流制御装置1は、負荷51,52,53,54への電流供給の誤停止を防止しながらも、電線61,62,63,64の過熱を防止することができる。
【0040】
また、本実施の形態においては、電流制御装置1は、負荷51,52,53,54への電流供給を指示する指示信号をスイッチ7から入力された場合に、電流供給を開始する。リトライの処理の回数が上限回数に達した後に負荷51,52,53,54への電流供給が停止した場合は電流供給の停止が継続されるものの、電流制御装置1は、指示信号の入力に応じて電流供給を再開することができる。言い換えれば、リトライの処理が行われず負荷51,52,53,54への電流供給が停止した後は、ユーザの操作によりスイッチ7から指示信号が入力されない限り、電流供給は再開されない。
【0041】
また、本実施の形態においては、電流制御装置1は、リトライの処理の回数が上限回数に達した後、リトライの処理が行われず負荷51,52,53,54への電流供給が停止した場合に、リトライの回数をリセットする。スイッチ7から指示信号が入力されて電流供給が再開した後は、リトライの回数がリセットされているので、電流制御装置1は、リトライの処理を行うことが可能である。また、本実施の形態においては、リトライの上限回数は、IPD31,32,33,34による電流供給の停止とリトライの処理とが繰り返されている間、IPD31,32,33,34が自己保護を行うべき電流範囲の最大電流が流れたと仮定して、電線61,62,63,64の温度が許容される上限温度を超過しないように定められている。このため、リトライの処理の回数を制限することにより、電線61,62,63,64の温度が上限温度を超過して電線61,62,63,64が損傷することが防止される。
【0042】
なお、本実施の形態においては、制御部2で電流供給の停止をするか否かを判定する形態を示したが、電流制御装置1は、電流供給の停止をするか否かの判定を制御部2では行わずIPD31,32,33,34で行う形態であってもよい。また、本実施の形態においては、電流制御装置1を用いて4個の負荷へ電流を供給する形態を示したが、電流制御装置1はその他の数の負荷へ電流を供給する形態であってもよい。また、本実施の形態においては、本発明における供給部をIPD31,32,33,34で構成し、制御部2をマイコンで構成した形態を示したが、電流制御装置1は、これに限るものでは無く、その他のデバイスで供給部及び制御部2を構成した形態であってもよい。また、本実施の形態においては、ユーザにより操作されるスイッチ7からの信号を電流制御装置1が受け付ける形態を示したが、電流制御装置1は、スイッチ7以外のデバイスから電流供給を指示する信号を受け付ける形態であってもよい。また、電流制御装置1は、負荷へ供給する電流を制御する装置であれば、車載用以外の装置であってもよい。