(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記ワイパーが前記ノズルから排出されて前記第1領域に残留したインクを前記親水部まで移動させるように、前記移動機構に前記ワイパーを移動させる、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【背景技術】
【0002】
一般的なインクジェット記録装置は記録ヘッド及びワイパーを備える。記録ヘッドはインク吐出面を有する。インク吐出面は、記録媒体にインクを吐出するノズルが開口する第1領域と、第1領域の一方端に隣接する第2領域と、第1領域の他方端に隣接する第3領域とを含む。ワイパーは、第3領域から第1領域を経由して第2領域まで移動することでインク吐出面に付着したインクを拭き取る(ワイピング)。第3領域はワイピングの開始位置である。
【0003】
ワイパー又はインク吐出面が乾いた状態でインク吐出面を拭くと(ドライワイピング)、ノズルを傷つける可能性がある。また、ドライワイピングでは、インク吐出面に付着している固着物を除去しきれない場合もある。そこで、ノズルからインクを排出させ、ワイパー又はインク吐出面を湿らせた状態でワイパーにインク吐出面を拭かせる(ウェットワイピング)。
【0004】
しかしながら、ウェットワイピングの場合、第3領域に残留したインクの引き伸ばしが発生する可能性がある。インクの引き伸ばしとは、インク吐出面に接触しながら、移動中のワイパーの先端から移動方向の反対方向に、インクが引き伸ばされることである。例えば、ワイピングの開始位置である第3領域に残留したインクの粘度が高いと、ワイパーの移動方向の下流側でワイパーの先端に付着して移動するインクの粘度が高くなり、第3領域からのインクの引き伸ばしが発生し易い。
【0005】
インクが乾燥及び増粘すると、除去が困難になるため、引き伸ばされたインクがインク吐出面に堆積する場合がある。そして、堆積したインクによって記録媒体が汚染される可能性がある。従って、インクの引き伸ばしを抑制することが要求される。
【0006】
そこで、特許文献1に記載の記録ヘッドには、ノズルよりもワイパーの移動方向の上流に、インクを強制的に排出するためのワイピング用ダミーノズルが設けられる。ダミーノズルから粘度の低いインクを排出させ、そのインクでワイパーの先端を濡らすことによって、インクの引き伸ばしを抑制する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。なお、本実施形態では、X軸及びY軸は水平面に平行であり、Z軸は鉛直線に平行である。
【0014】
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係るインクジェット記録装置1について説明する。
図1は、インクジェット記録装置1の構成を示す。インクジェット記録装置1は、ヘッド部3、制御部50、ワイパー部60、トレイ200、給送ローラー201、第1搬送ユニット205、第2搬送ユニット212、及びキャップユニット290を備える。
【0015】
トレイ200は、第1搬送ユニット205よりも記録媒体Tの搬送方向Pの上流に設けられ、記録媒体Tを収容する。トレイ200の搬送方向Pの下流端には、給送ローラー201が設けられる。給送ローラー201は、トレイ200に収容された記録媒体Tを一枚ずつ第1搬送ユニット205へ搬送する。記録媒体Tは、例えば、普通紙、コピー紙、再生紙、薄紙、厚紙、又は光沢紙のような紙、又はOHP(Overhead Projector)シートのような合成樹脂製のシートである。
【0016】
第1搬送ユニット205は、第1駆動ローラー206と、第1従動ローラー207と、第1駆動ローラー206及び第1従動ローラー207に掛け渡された第1搬送ベルト208とを含む。第1駆動ローラー206が反時計回りに回転することにより、第1搬送ベルト208が回転し、第1搬送ベルト208に保持された記録媒体Tが搬送方向Pに搬送される。
【0017】
ヘッド部3は、第1搬送ユニット205に対向して配置される。ヘッド部3は、ヘッドハウジング18、及びヘッドハウジング18に保持されたラインヘッド10K、10C、10M、10Yを含む。
図2は、ヘッド部3を示す。ラインヘッド10K、10C、10M、10Yは、それぞれ、ブラック色のインク、シアン色のインク、マゼンダ色のインク、及びイエロー色のインクを吐出又は排出する。ラインヘッド10K〜10Yは、記録媒体Tの搬送方向Pに沿って配置される。ラインヘッド10K〜10Yの各々は、搬送方向Pに直交する方向に沿って千鳥状に配置される3個の記録ヘッド10を含む。
【0018】
図1に示すように、第2搬送ユニット212は、第1搬送ユニット205よりも搬送方向Pの下流に配置されている。第2搬送ユニット212は、第2駆動ローラー213と、第2従動ローラー214と、第2駆動ローラー213及び第2従動ローラー214に掛け渡された第2搬送ベルト215とを含む。第2駆動ローラー213が反時計回りに回転されることにより、第2搬送ベルト215が回転し、第2搬送ベルト215に保持された記録媒体Tが搬送方向Pに搬送される。
【0019】
ヘッド部3によって画像が記録された記録媒体Tは第2搬送ユニット212へ送られ、第2搬送ユニット212を通過する間に記録媒体Tの表面に吐出されたインクが乾燥される。また、第2搬送ユニット212の下方にはワイパー部60及びキャップユニット290が配置されている。
【0020】
制御部50は、ワイパー部60にラインヘッド10K〜10Yのインク吐出面に付着したインクを拭き取らせる際に、つまり、ワイピングを実行する際に第1搬送ユニット205を下降させる。そして、制御部50は、第2搬送ユニット212の下方に配置されたワイパー部60を水平移動させて、待機位置、つまり、ヘッド部3の下方に配置する。その結果、ワイパー部60は、ヘッド部3と第1搬送ユニット205との間に配置される。ワイパー部60は、ラインヘッド10K〜10Yに付着したインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。
【0021】
制御部50は、ラインヘッド10K〜10Yのインク吐出面をキャッピングする際に、キャップユニット290を水平移動させてヘッド部3の下方に配置する。さらに、制御部50は、キャップユニット290を上方に移動させる。その結果、キャップユニット290は、ラインヘッド10K〜10Yのインク吐出面に装着される。
【0022】
排出ローラー216は、第2搬送ユニット212よりも搬送方向Pの下流に配置され、画像が記録された記録媒体Tをインクジェット記録装置1の外部に排出する。
【0023】
図3を参照して、記録ヘッド10及びワイパー部60について説明する。
図3は、記録ヘッド10及びワイパー部60を示す。ワイパー部60は、ワイパー20及び移動機構30を含む。
【0024】
記録ヘッド10は、インク吐出面17を有する。インク吐出面17は、第1領域A1と、第2領域A2と、第3領域A3とを含む。第2領域A2は、第1領域A1の一方端に隣接する。第3領域A3は、第1領域A1の他方端に隣接する。第1領域A1には、多数のノズル11が開口している。ノズル11は、記録媒体に画像を形成するためのインクを吐出する。ノズル11は、パージ処理において、記録ヘッド10内の不要物と共にインクNfを排出する。インクNfは密閉空間に収容されている。従って、インクNfに含有される揮発成分の蒸発が抑制される。揮発成分は、外気に触れると蒸発する。その結果、ノズル11から排出されるインクNfは、空気に触れていた残留インクと比較して粘度が低い。
【0025】
制御部50は、移動機構30にワイパー20を移動させる。移動機構30は、制御部50に制御されて、ワイパー20を移動させる。具体的には、移動機構30は、上昇方向D1にワイパー20を上昇させることができ、ワイピング方向D3又はワイピング方向D4にワイパー20を移動させることができ、下降方向D2にワイパー20を下降させることができる。本実施形態では、上昇方向D1及び下降方向D2は、Z軸に沿っており、インク吐出面17に直交し、ワイピング方向D3及びワイピング方向D4は、X軸に沿っており、インク吐出面17に沿っている。上昇方向D1及び下降方向D2を総称して上下方向と記載する場合もある。
【0026】
移動機構30は、ワイパー20をインク吐出面17に接触させた状態でインク吐出面17に沿って移動させる。従って、ワイパー20は、ノズル11から吐出されたインク又はノズル11から排出されインク吐出面17に付着したインクNfを拭き取ることができる。また、ワイパー20は、インク吐出面17に付着した不要物も拭き取る。ワイパー20は、弾性を有し、平板状である。ワイパー20は、例えば、合成ゴム(例えば、EPDM(ethylene−propylene−diene terpolymer))、又は合成樹脂により形成される。
【0027】
インクジェット記録装置1は、親水部W1と、撥水部W2とをさらに備える。親水部W1は親水性を有する。親水部W1は、第2領域A2より高い親水性を有する。親水部W1は、例えば、親水性の高いステンレスのような金属、又は親水性の高い合成樹脂により形成される。親水部W1は、記録ヘッド10の第2領域A2に形成され、インク吐出面17に対して平行な親水面41を有する。親水面41の表面粗さを、第2領域A2の表面粗さより大きくする。
【0028】
ここで、親水部W1が第2領域A2よりも高い親水性を有していればよい。従って、例えば、親水部W1を金属又は合成樹脂により形成し、親水部W1の表面粗さを、第2領域A2の表面粗さより粗くすることにより、親水部W1の親水性を第2領域A2の親水性よりも高くする。
【0029】
撥水部W2は第2領域A2より高い撥水性を有する。撥水部W2は、例えば、フッ素樹脂により形成される。撥水部W2は、第1領域A1に対して親水部W1よりも外側に配置される。親水部W1と撥水部W2とは隣接する。撥水部W2は、撥水面42を有する。撥水面42は、インク吐出面17に対して斜め上方に傾斜している。
【0030】
以上、本実施形態によれば、ワイパー20は、ワイピングの往路において、ワイピング方向D3へ移動し、第1領域A1で排出されたインクNfを親水部W1に移動させる。そして、ワイパー20は、親水部W1に付着した粘度の低いインクNfを伴って、ワイピングの復路において、ワイピング方向D4へ移動する。ワイピングの復路では、粘度の低いインクNfが親水部W1に付着しているため、第2領域A2からのインクの引き伸ばしを抑制できる。また、ワイピングの復路において、親水部W1に付着した粘度の低いインクNfによって、ワイピングの往路で引き伸ばされたインクを効果的に拭き取ることができる。
【0031】
さらに、本実施形態によれば、ワイピングの復路では、ワイピングの往路で移動されたインクNfを利用する。従って、ワイピングの復路において、新たなインクを消費しない。その結果、ユーザーにとってインク購入の費用を抑制できる。
【0032】
次に、
図4及び
図5を参照して、ワイパー20の動作について説明する。
図4(a)〜
図4(e)は、ワイピングの往路におけるワイパー20の動作を示す。ワイパー20は、制御部50に制御されて駆動する移動機構30によって、次のように動作する。
【0033】
すなわち、
図4(a)に示すように、ワイピングを開始する前のワイパー20の先端にはインクNvが付着している。インクNvは、前回のワイピングでワイパー20の先端に残留したインクであり、空気に接触したことによって増粘している。ワイパー20は、待機位置から第3領域A3に向かって上昇方向D1に上昇する。そして、ワイパー20の先端が第3領域A3に押し当てられ、ワイパー20は上昇を停止する。その結果、インクNvが第3領域A3に付着する。
【0034】
図4(b)に示すように、ノズル11はインクNfを排出するため、インクNfは第1領域A1に残留する。インクNfの粘度は、ワイパー20の先端に付着したインクNvの粘度より低い。ワイパー20は、上下方向の位置を一定に維持したまま、第3領域A3から親水部W1に向かってワイピング方向D3に移動する。その結果、ワイパー20によって第1領域A1に残留したインクNfが拭き取られる。
【0035】
図4(c)に示すように、ワイパー20は、親水部W1まで移動し停止する。その結果、インクNfが第1領域A1から親水面41まで移動される。親水面41は親水性を有するため、親水性が低い場合と比較して、親水面41にはインクNfが付着し易い。インクNfは、新鮮であり、粘度は低い。ワイパー20は、親水部W1で、一定時間の間、静止する。
図4(d)に示すように、ワイパー20は、静止後、下降方向D2に下降し、親水部W1の直下位置で停止する。
図4(e)に示すように、ワイパー20は、親水部W1の直下位置からワイピング方向D3に移動し、撥水部W2の直下位置まで移動する。
【0036】
図5(a)〜
図5(e)は、ワイピングの復路におけるワイパー20の動作を示す。
図5(a)に示すように、ワイパー20の先端には、インクNfが付着している。ワイパー20は、撥水部W2の直下位置から撥水部W2に向かって上昇方向D1に上昇し、撥水面42に接触して上昇を停止する。撥水面42は撥水性を有するため、撥水性を有しない場合と比較して、撥水面42にはワイパー20の先端に付着したインクNfが付着し難い。
【0037】
図5(b)に示すように、ワイパー20は、上下方向の位置を一定に維持したまま、撥水部W2から親水部W1に向かってワイピング方向D4に移動し、親水面41に付着したインクNfを拭き取る。従って、親水面41に付着したインクNfが、乾燥及び増粘して、親水面41にインクNfが堆積することを抑制できる。その結果、堆積したインクによる記録媒体Tの汚染を抑制できる。
【0038】
図5(c)に示すように、ワイパー20は、上下方向の位置を一定に維持したまま停止することなく、引き続き、第3領域A3に向かってワイピング方向D4に移動する。この場合、ワイパー20の先端には、親水面41に付着していたインクNfが付着しているため、ワイパー20は、インクNfを伴って移動し、第1領域A1を拭く。ワイパー20の先端に付着したインクNfは、粘度が低いため、インクNfの引き伸ばしが抑制される。
【0039】
図5(d)に示すように、ワイパー20は第3領域A3の端部まで移動し、第3領域A3に残留したインクNvを拭き取る。従って、乾燥及び増粘したインクNvが第3領域A3に堆積することを抑制できる。その結果、堆積したインクによる記録媒体Tの汚染を抑制できる。
【0040】
図5(e)に示すように、第3領域A3の端部に到達したワイパー20は、下降方向D2に下降する。そして、ワイパー20は、待機位置に戻り、ワイピングを終了する。
【0041】
以上、本実施形態によれば、
図4及び
図5を参照して説明したように、高い親水性を有する親水部W1を設けることによって、簡略な構成でインクNfの引き伸ばしを抑制しつつ記録ヘッド10のインク吐出面17に付着したインクを拭き取ることができる。
【0042】
すなわち、ワイピングの往路において、粘度の低いインクNfを伴ったワイパー20が親水部W1まで移動する(
図4(b)及び
図4(c))。親水部W1には、親水性を有しない場合よりも多くのインクNfが残留する。従って、ワイピングの復路において、ワイパー20の先端に粘度の低い十分な量のインクNfを伴って、ワイパー20をワイピング方向D4に移動させることができる(
図5(b)及び
図5(c))。
【0043】
その結果、第2領域A2からのインクNfの引き伸ばしを抑制しつつ、効果的にインク吐出面17を拭くことができる。つまり、ワイピング方向D4の下流側においてワイパー20の先端に付着して移動するインクNfの粘度が低いため、第2領域A2からのインクNfの引き伸ばしを抑制できる。インクNfの引き伸ばしが抑制されるため、引き伸ばされたインクのインク吐出面17への堆積が抑制される。従って、インク吐出面17に堆積したインクが垂れ落ちることによる記録媒体の汚染を抑制できる。
【0044】
また、本実施形態によれば、ワイパー20は、ワイピングの復路において、ワイパー20の先端に粘度の低い十分な量のインクNfを伴って移動するため、ワイピングの往路で引き伸ばされたインクNf及び第3領域A3に残留したインクNvを効果的に拭き取ることができる(
図5(b)及び
図5(c))。
【0045】
さらに、本実施形態によれば、制御部50は、ワイパー20が第3領域A3から第1領域A1を経由して親水部W1で停止するように、移動機構30にワイパー20を移動させる(
図4(b)及び
図4(c))。従って、親水部W1に残留するインクNfの量が更に多くなる。従って、ワイピングの復路において、ワイパー20の先端に粘度の低い更に十分な量のインクNfを伴って、ワイパー20を移動させることができる。その結果、インクNfの引き伸ばしを更に抑制しつつ、更に効果的にインク吐出面17を拭くことができる。
【0046】
さらに、本実施形態によれば、制御部50は、ワイパー20が撥水部W2に接触してから親水部W1及び第1領域A1を経由して第3領域A3まで移動するように、移動機構30にワイパー20を移動させる(
図5(a)〜
図5(d))。従って、ワイピングの復路において、ワイパー20は、最初に撥水部W2に接触する。その結果、復路におけるワイピングの開始位置にインクNfが付着することを抑制できる。ワイピングの開始位置に、多くのインクが残留して乾燥及び増粘し、さらにインクの堆積が進行すると、記録媒体を汚染する原因になり得る。しかしながら、本実施形態では、復路におけるワイピングの開始位置を撥水部W2にしているため、インクNfの残留が抑制され、記録媒体の汚染を抑制できる。また、ワイピングの開始位置へのインクNfの残留を抑制することにより、ワイピングの開始位置からのインクNfの引き伸ばしを抑制できる。
【0047】
さらに、本実施形態によれば、親水部W1と撥水部W2とは隣接する。従って、ワイピングの復路において、撥水部W2から親水部W1へワイパー20を円滑に移動できる。
【0048】
さらに、本実施形態によれば、撥水部W2の撥水面42は斜め上方に傾斜している。従って、ワイパー20は、撥水部W2から親水部W1に移動する際に、撥水面42の傾斜に応じてワイパー20の先端部を徐々に湾曲させながら親水部W1に進入できる。その結果、ワイパー20を親水部W1に向かって上昇方向D1に上昇させ親水部W1に押し当てることによってワイパー20の先端部を湾曲させる場合と比較して、ワイパー20へのダメージを抑制できる。
【0049】
さらに、本実施形態によれば、制御部50は、ワイパー20がノズル11から排出されて第1領域A1に残留したインクNfを親水部W1まで移動させるように、移動機構30にワイパー20を移動させる(
図4(b)〜
図4(d))。従って、ワイパー20は、粘度の低いインクNfを親水部W1に付着させることができる。その結果、ワイピングの復路におけるインクNfの引き伸ばしを抑制できる。
【0050】
さらに、本実施形態によれば、制御部50は、ワイパー20が記録ヘッド10に対して上昇又は下降するように、移動機構30にワイパー20を移動させる(
図4(a)、
図4(d)、
図5(a)、及び
図5(e))。従って、移動機構30は、ワイパー20をインク吐出面17に接触させつつ移動させることもできるし、ワイパー20をインク吐出面17に接触させずにワイピング方向D3又はワイピング方向D4に移動させることもできる。
【0051】
さらに、本実施形態によれば、ワイピングの復路においてパージ処理を実行しなくてよい。従って、パージ処理に使用されるインクNfの消費量を抑制できる。
【0052】
次に、
図6及び
図7を参照して記録ヘッド10について説明する。
図6は、記録ヘッド10の正面を示す。記録ヘッド10のインク吐出面17は矩形状である。インク吐出面17の第1領域A1には、複数のノズル形成領域12が、記録ヘッド10の長手方向に沿って千鳥状に形成される。台形状のノズル形成領域12の各々には、複数のノズル11が開口している。
図6では、ワイパー20は第3領域A3の直下の待機位置に配置されている。ワイパー20の幅は、インク吐出面17の幅よりも大きい。なお、ワイパー20の幅は、インク吐出面17の幅と同一でもよいし、ワイパー20がノズル形成領域12を包含できる大きさであれば、インク吐出面17の幅より小さくてもよい。第2領域A2には親水部W1が配置されている。
【0053】
図7は、記録ヘッド10の側面を示す。記録ヘッド10は、流入口13及び流出口15を有する。画像形成処理時又はパージ処理時に、タンクから流入口13に流入したインクは、記録ヘッド10の内部に流入し、流出口15から流出する。記録ヘッド10の内部に流入したインクは、画像形成処理時にノズル11から吐出され、又はパージ処理時にノズル11から排出される。本実施形態では、ワイパー20は、パージ処理でノズル11から排出され、インク吐出面17に付着したインクNfを用いてウェットワイピングを実行している。
【0054】
次に、
図8及び
図9を参照してワイパー部60について説明する。なお、
図8及び
図9では、図面の簡略化のため、親水部W1及び撥水部W2を省略している。
図8は、ワイパー部60を下降させた状態を示す。制御部50はワイパー部60を制御する。制御部50は、ワイピングを実行する際には、ワイパー部60を、ラインヘッド10K、10C、10M、10Yに対向するように移動させる。なお、
図8では、ラインヘッド10Kが備える3個の記録ヘッド10に対応する3個のワイパー20のみが表れている。
【0055】
ワイパー部60の移動機構30は、キャリッジ31、キャリッジ31を支持する支持フレーム35、コロ36、ギャップコロ37、昇降部材38、及び底部39を含む。
【0056】
昇降部材38の各々は、リフト部材38a及びシャフト38bを含む。制御部50は、駆動源(例えば、モーター)を駆動して、ワイピング方向D3の上流に配置される昇降部材38のシャフト38bを時計回りに回転させ、ワイピング方向D3の下流に配置される昇降部材38のシャフト38bを反時計回りに回転させる。すると、倒伏したリフト部材38aが底部39から起立する。その結果、
図9に示すように、支持フレーム35と共にキャリッジ31、コロ36、ギャップコロ37、及びワイパー20が上昇する。
【0057】
図9は、ワイパー部60を上昇させた状態を示す。ギャップコロ37は、ヘッドハウジング18に当接することで、上昇してインク吐出面17に押し当てられたワイパー20の上下方向の位置を一定に保持する。キャリッジ31は、支持フレーム35に対して、コロ36を介して移動可能に係合する。キャリッジ31がワイピング方向D3又はワイピング方向D4に移動することによって、ワイパー20もワイピング方向D3又はワイピング方向D4に移動する。
【0058】
なお、ラインヘッド10C、10M、10Yの各々に対する3個のワイパー20は、移動機構30によって、ラインヘッド10Kに対する3個のワイパー20と同じ動作をする。
【0059】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(4))。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0060】
(1)
図3を参照して説明したように、撥水部W2を設けたが、撥水部W2を設けなくてもよい。また、撥水面42は、インク吐出面17に対して斜め上方に傾斜していたが、親水面41と平行に形成されてもよい。さらに、撥水部W2は、第1領域A1に対して親水部W1の外側に形成されればよく、第2領域A2に形成されてもよい。さらに、親水部W1と撥水部W2とは隣接していなくてもよく、一定間隔を置いて形成されてよい。
【0061】
(2)
図3を参照して説明したように、撥水部W2と親水部W1とが別部材で形成されたが、例えば、親水性の素材(例えば、金属又は合成樹脂)の一部に、撥水性のテープ(例えば、フッ素樹脂テープ)を貼付し、親水性領域を親水面41とし、撥水性領域を撥水面42としてもよい。
【0062】
(3)
図2を参照して説明したように、ヘッド部3は、4色のラインヘッド10K〜10Yを含むが、ヘッド部3は、単色のラインヘッド含んでもよいし、4色以外の複数色のラインヘッドを含んでもよい。
【0063】
(4)
図2を参照して説明したように、1色に対して3個の記録ヘッド10が用意されるが、1色に対して、単数の記録ヘッド10が用意されてもよいし、3個以外の複数の記録ヘッド10が用意されてもよい。