(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機エレクトロルミネッセンスパネルと、前記有機エレクトロルミネッセンスパネルの発光面側に配置される電気接続ユニットと、が積層されてなる有機エレクトロルミネッセンスモジュールであって、
前記電気接続ユニットは、
前記有機エレクトロルミネッセンスパネルの前記発光面側及びその周囲に配置される本体部と、当該本体部の少なくとも一箇所に切り込みが入れられて形成され、前記有機エレクトロルミネッセンスパネルの前記発光面とは反対面側に配置される接続片部とを有するフレキシブル基板と、
前記本体部の一方の面上に形成された静電容量型の検出回路部と、
前記本体部の一方の面上に形成され、前記有機エレクトロルミネッセンスパネルを駆動するための駆動回路部と、
前記接続片部の一方の面上に形成され、前記駆動回路部を前記有機エレクトロルミネッセンスパネルに接続するランド部と、
前記接続片部の他方の面上であって前記ランド部に対応する位置に形成された金属層部と、を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスモジュール。
前記電気接続ユニットが、前記有機エレクトロルミネッセンスパネルの発光光を透過する光透過部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンスモジュール。
有機エレクトロルミネッセンスパネルと、前記有機エレクトロルミネッセンスパネルの発光面側に配置される電気接続ユニットと、が積層されてなる有機エレクトロルミネッセンスモジュールの製造方法であって、
フレキシブル基板の一方の面上に、静電容量型の検出回路部と、前記有機エレクトロルミネッセンスパネルを駆動するための駆動回路部と、前記駆動回路部を前記有機エレクトロルミネッセンスパネルに接続するランド部とを形成し、前記フレキシブル基板の他方の面上であって前記ランド部に対応する位置に、金属層部を形成する工程と、
前記フレキシブル基板の前記ランド部の周囲に少なくとも一箇所の切り込みを入れて、前記検出回路部及び前記駆動回路部を有する本体部と、前記ランド部及び前記金属層部を有する接続片部とを形成することで、前記電気接続ユニットを作製する工程と、
前記有機エレクトロルミネッセンスパネルを面方向にスライド移動させて、前記フレキシブル基板の前記本体部と前記接続片部との間に前記有機エレクトロルミネッセンスパネルを挿入する工程と、
前記有機エレクトロルミネッセンスパネルの接続電極部と、前記電気接続ユニットの前記接続片部とを熱圧着する工程と、
を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスモジュールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の有機エレクトロルミネッセンスモジュールは、有機エレクトロルミネッセンスパネルと、前記有機エレクトロルミネッセンスパネルの発光面側に配置される電気接続ユニットと、が積層されてなる有機エレクトロルミネッセンスモジュールであって、前記電気接続ユニットは、前記有機エレクトロルミネッセンスパネルの前記発光面側及びその周囲に配置される本体部と、当該本体部の少なくとも一箇所に切り込みが入れられて形成され、前記有機エレクトロルミネッセンスパネルの前記発光面とは反対面側に配置される接続片部とを有するフレキシブル基板と、前記本体部の一方の面上に形成された静電容量型の検出回路部と、前記本体部の一方の面上に形成され、前記有機エレクトロルミネッセンスパネルを駆動するための駆動回路部と、前記接続片部の一方の面上に形成され、前記駆動回路部を前記有機エレクトロルミネッセンスパネルに接続するランド部と、前記接続片部の他方の面上であって前記ランド部に対応する位置に形成された金属層部と、を有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項6までの各請求項に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明においては、前記有機エレクトロルミネッセンスパネルが、面状の一対の電極を有することが好ましい。
また、本発明においては、前記電気接続ユニットが、前記有機エレクトロルミネッセンスパネルの発光光を透過する光透過部を有することが好ましい。これにより、電気接続ユニットを、透光性を有しない材料で作製することができ、有機ELモジュールの製造コストを低減することができる。
また、本発明においては、前記ランド部と前記金属層部とが、同一の材料からなることが好ましい。これにより、接続片部の両面における線膨張係数差をより低減することができ、フレキシブル基板の本体部と接続片部との間の隙間をより確実に生じさせ、有機ELモジュールの製造をより容易にすることができる。
また、本発明においては、前記有機エレクトロルミネッセンスパネルの前記発光面とは反対側の面には、接続電極部が設けられ、前記接続片部の前記ランド部が、異方性導電膜、導電性ペースト又は金属ペーストを介して、前記接続電極部に電気的に接続されていることが好ましい。これにより、有機エレクトロルミネッセンスパネルと電気接続ユニットとの機械的及び電気的接続をより確実に行うことができる。
【0028】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0029】
本発明の有機ELモジュールは、有機ELパネルと、当該有機ELパネルの発光面側に配置される電気接続ユニットと、が積層されてなり、電気接続ユニットは、有機ELパネルの発光面側及びその周囲に配置される本体部と、当該本体部の少なくとも一箇所に切り込みが入れられて形成され、有機ELパネルの発光面とは反対面側に配置される接続片部とを有するフレキシブル基板と、本体部の一方の面上に形成された静電容量型の検出回路部と、本体部の一方の面上に形成され、有機ELパネルを駆動するための駆動回路部と、接続片部の一方の面上に形成され、駆動回路部を有機ELパネルに接続するランド部と、接続片部の他方の面上であってランド部に対応する位置に形成された金属層部と、を有する。
【0030】
有機ELモジュールの全体構成を説明する前に、初めに、有機ELモジュールを構成する有機ELパネルと、電気接続ユニットの構成の詳細について、図を交えて説明する。
【0031】
ここで、本発明において、有機EL素子とは、一対の電極及び複数の有機機能層により構成される発光素子をいい、有機ELパネルとは、基材上において、有機EL素子が封止樹脂や封止部材等により封止され、一対の電極が引き出された状態のものをいい、有機ELモジュールとは、有機ELパネルの引き出された電極に、有機ELパネル駆動用の駆動回路部や静電容量方式の検出回路部を有する電気接続ユニットが接続されたものをいう。
【0032】
《有機エレクトロルミネッセンスパネル》
図1及び
図2を参照して有機ELパネル10について説明する。
図1は、有機ELモジュール100を構成する有機ELパネル10の構成の一例を示す概略図であって、
図1(a)は、有機ELパネル10を発光面10A側から見た概略上面図であり、
図1(b)は、
図1(a)におけるIB−IB線に沿った面の矢視断面図である。また、
図2は、有機ELパネル10の構成の一例を示す概略断面図である。
【0033】
有機ELパネル10は、発光領域3を有する有機EL素子1と、当該有機EL素子1を支持する透明基材4と、当該透明基材4上において有機EL素子1を封止する封止構造部2と、を備えている。有機EL素子1の端部には接続電極部5が引き出されていて、後述する電気接続ユニット20のランド部24と、導電性接着剤8を介して、接続される。
図1に示す有機ELパネル10は、透明基材4側から光を出射する片面発光型の有機ELパネルであり、透明基材4の有機EL素子1に対向する面と反対側の面が発光光Lを出射する発光面10Aを構成している。
【0034】
図2に示すように、有機EL素子1は、陽極52、第1有機機能層群53A、発光層54、第2有機機能層群53B及び陰極55が積層されて構成され、これらが重なり合う領域に発光領域3が形成されている。第1有機機能層群53Aは、例えば、正孔注入層、正孔輸送層等から構成され、第2有機機能層群53Bは、例えば、電子輸送層、電子注入層等から構成されている。また、陽極52は、透明基材4の端部まで形成されて、接続電極部5を構成している。有機EL素子1を構成する各有機層は、封止用接着剤56で封止され、その表面に封止部材57が設けられていることで、各有機層を劣化させるガス(酸素、水分等)の侵入が抑制されている。有機ELパネル10は、透明基材4側から光を出射する片面発光型であるため、発光面10Aから効率的に光を出射できるように、透明基材4、陽極52、第1有機機能層群53A等が光透過性の高い材料で構成されていることが好ましい。
なお、有機EL素子1の具体的な構成要素及び製造方法の詳細については、後述する。
【0035】
《電気接続ユニット》
図3及び
図4を参照して電気接続ユニット20について説明する。
図3(a)は、電気接続ユニット20の概略上面図であり、
図3(b)は、
図3(a)におけるIIIB−IIIB線に沿った面の矢視断面図である。また、
図4は、
図3に示す電気接続ユニット20に有機ELパネル10が積層されてなる有機ELモジュール100を示す図であって、
図4(a)は、有機ELモジュール100の概略上面図であり、
図4(b)は、
図4(a)におけるIVB−IVB線に沿った面の矢視断面図である。なお、電気接続ユニット20は、
図3(b)及び
図4(b)に示すように一部がカールしているものであるが、
図3(a)及び
図4(a)においては、便宜上、電気接続ユニット20に力を加えて一時的に平坦化させたものとして図示している。
【0036】
電気接続ユニット20は、フレキシブル基板21と、検出回路部22と、駆動回路部23と、ランド部24と、金属層部25と、を備えている。
【0037】
フレキシブル基板21は、本体部211と、当該本体部211に切り込み213が入れられて形成された接続片部212とを有する。これにより、本体部211が有機ELパネル10の発光面10A側及びその周囲に配置され、接続片部212が有機ELパネル10の発光面10Aとは反対面側に配置されることが可能となっている。また、本体部211の一方の面211aと接続片部212の一方の面212aが連通し、本体部211の他方の面211bと接続片部212の他方の面212bが連通している。
【0038】
また、フレキシブル基板21の有機ELパネル10と重なり合う領域には、切り込み213と連通して開口された光透過部214が形成されている。当該光透過部214を介して有機ELパネル10の発光光Lが、フレキシブル基板21の下面側から上面側へ透過する。
【0039】
フレキシブル基板21に用いられる材料としては、可撓性を有し、かつ十分な機械的強度を備えた樹脂材料であれば特に制限はなく、例えば、ポリイミド樹脂(PI)、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、シクロオレフィン樹脂(COP)等が挙げられ、好ましくは、ポリイミド樹脂(PI)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等が挙げられる。一般的には、電極実装工程での熱印加を鑑み、熱耐性の高いポリイミド樹脂を用いることが多い。
【0040】
検出回路部22は、静電容量型のタッチ検出用の配線部位であり、フレキシブル基板21の本体部211の面211a上に形成されている。より具体的には、検出回路部22は、面211a上において光透過部214を囲むように形成されており、有機ELパネル10の発光領域3の周囲でタッチを検出する。
検出回路部22は、導電性を有する金属材料で構成され、例えば、金、銀、銅、ITO等が挙げられる。これらの中では、コスト低減の観点から銅が用いられることが好ましい。
【0041】
駆動回路部23は、有機ELパネル10を駆動IC(図示略)と接続するための配線部位であり、フレキシブル基板21の本体部211の面211a上に形成されている。駆動回路部23を構成する材料としては、上記検出回路部22の構成材料と同様のものが挙げられる。
【0042】
ランド部24は、駆動回路部23を有機ELパネル10に接続する部位であり、フレキシブル基板21の接続片部212の面212a上に設けられて、駆動回路部23と連通している。ランド部24を構成する材料としては、駆動回路部23の構成材料と同様のものが用いられる。
【0043】
金属層部25は、フレキシブル基板21の接続片部212の面212b上であってランド部24に対応する位置に形成されている。金属層部25を構成する材料としては、ランド部24を構成する材料と略同一の線膨張係数を有するものが好ましく、ランド部24を構成する材料と同一の材料が好ましい。
【0044】
以上のように構成される電気接続ユニット20においては、検出回路部22及び駆動回路部23が、フレキシブル基板21の本体部211の面211aのみに形成されており、面211bには形成されていない。また、上記したように、フレキシブル基板21は樹脂材料で構成され、検出回路部22及び駆動回路部23は金属材料で構成されるため、両者の間には線膨張係数に差が生じている。このため、フレキシブル基板21の本体部211は、面211a側と面211b側とで線膨張係数の差が生じており、電気接続ユニット20が作製された時点において、
図3に示すように、フレキシブル基板21の本体部211にはカールが発生している。
【0045】
一方、フレキシブル基板21の接続片部212には、面212aにランド部24が形成されているとともに、面212bのランド部24に対応する位置には金属層部25が形成されている。このため、フレキシブル基板21の接続片部212は、面212a側と面212b側とで線膨張係数の差が小さく、
図3に示すように、接続片部212にカールはほぼ発生していない。
【0046】
このように、電気接続ユニット20において、フレキシブル基板21の本体部211にはカールが発生し、接続片部212にはカールが発生していないため、当該本体部211と接続片部212との間には、隙間26が形成されている。有機ELパネル10と電気接続ユニット20とを積層する際には、有機ELパネル10を当該隙間26に挿入することにより行うことができ、接続片部212を本体部211に対して折り曲げる工程を行うことなく、容易に有機ELモジュール100を製造することができる。
また、検出回路部22がフレキシブル基板21の本体部211に形成され、当該本体部211が有機ELパネル10の発光面10A側及びその周囲に配置されるため、タッチ検出精度を低下させない。
更に、上記構造により、有機ELパネル10の発光領域3近傍に検出回路部22を形成することができ、電気接続ユニット20のサイズを小さくすることができ、スモールフォーマットの表示が可能となる。
【0047】
なお、電気接続ユニット20は、フレキシブル基板21上に検出回路部22、駆動回路部23、ランド部24及び金属層部25が形成されているものとしたが、フレキシブル基板21の両面に、検出回路部22、駆動回路部23、ランド部24及び金属層部25の腐食を抑制する目的でカバー層(図示略)が形成されているものとしても良い。
【0048】
また、
図3に示す例においては、フレキシブル基板21の本体部211の一部は光透過部214を囲む略コの字型に形成されているものとしたが、本体部211の当該一部が光透過部214を囲む矩形状や円形状に形成されているものとしても良い。
また、フレキシブル基板21が透明樹脂等で形成され、検出回路部22、駆動回路部23、ランド部24及び金属層部25がITO等の透明金属等で形成されていることで、電気接続ユニット20の有機ELパネル10の発光領域3に重なる部分が透光性を有する場合には、光透過部214が形成されていなくても良い。
【0049】
また、検出回路部22及び駆動回路部23は、フレキシブル基板21の本体部211の面211aにのみ形成されているものとしたが、当該本体部211の両面側で線膨張係数に差が生じていれば、本体部211の面211aにもいずれかの回路部が形成されていても良い。
【0050】
(電気接続ユニットの作製方法)
以下に、電気接続ユニット20の作製方法の一例を説明する。
電気接続ユニット20の作製方法は、フレキシブル基板21の一方の面上に、静電容量型の検出回路部22と、有機ELパネル10を駆動するための駆動回路部23と、駆動回路部23を有機ELパネル10に接続するランド部24とを形成し、フレキシブル基板21の他方の面上であってランド部24に対応する位置に、金属層部25を形成する工程と、フレキシブル基板21のランド部24の周囲に少なくとも一箇所の切り込み213を入れて、検出回路部22及び駆動回路部23を有する本体部211と、ランド部24及び金属層部25を有する接続片部212とを形成する工程と、を有する。
【0051】
具体的には、電気接続ユニット20の作製には、ポリイミドフィルムをフレキシブル基板21とする両面銅張板を使用する。そのような両面銅張板としては、例えば、厚さが38μmのポリイミドフィルムの両面に、厚さ12μmの銅層がそれぞれ設けられてなる。
【0052】
次いで、各銅層に、
図3に示すような導電性の配線パターンを形成する。具体的には、一方の銅層に検出回路部22、駆動回路部23及びランド部24を形成し、他方の銅層に金属層部25を形成する。
【0053】
ポリイミドフィルムの両面に設けられた銅層上に、フォトレジスト材料等を塗布する、あるいはドライレジストフィルムをラミネートした後、所望の配線パターンとなるように、マスク材等を介して露光し、次いで現像、不要のレジストの剥離処理を経て、レジストパターンを形成する。
【0054】
次いで、銅層をエッチング液に浸漬、あるいはエッチング液をシャワーリングして付与することにより、両面に所望の配線パターンを形成する。
【0055】
また、必要に応じて、各配線パターン表面を保護するために、両面にカバー層が設けられる。カバー層は、透明なポリエチレンテレフタレートフィルム等が使用され、接着剤層を介して、熱ラミネート方法等により、各配線パターン表面に付与される。
【0056】
最後に、ピナクルダイ等を用いて、切り込み213、光透過部214等を形成する。これにより、検出回路部22及び駆動回路部23を有する本体部211と、ランド部24及び金属層部25を有する接続片部212とを形成される。
【0057】
以上のようにして、電気接続ユニット20を作製することができる。
作製された時点で、電気接続ユニット20は、
図3(b)に示すように、フレキシブル基板21の本体部211がカールしているものである。本体部211は両面側で線膨張係数に差が生じており、各作製工程のいずれかで当該本体部211のポリイミドフィルム及び銅層が加熱されることで、カールが発生しているものである。
【0058】
なお、上記作製方法では、フレキシブル基板21上に検出回路部22、駆動回路部23、ランド部24及び金属層部25を形成した後に、切り込み213を入れて本体部211と接続片部212を形成するものとして説明したが、これに限られるものではなく、あらかじめフレキシブル基板21に切り込み213を入れて本体部211と接続片部212を形成した後に、当該フレキシブル基板21上に検出回路部22、駆動回路部23、ランド部24及び金属層部25を形成するものとしても良い。
【0059】
《有機エレクトロルミネッセンスモジュール》
本発明の有機ELモジュール100は、有機ELパネル10と、電気接続ユニット20とを積層した構成からなり、電気接続ユニット20のフレキシブル基板21の本体部211が、有機ELパネル10の発光面10A側及びその周囲に配置され、フレキシブル基板21の接続片部212が、有機ELパネル10の発光面10Aと反対面側に配置されている。接続片部212の面212aは有機ELパネル10の反対面と対向し、当該面212a上に形成されたランド部24と有機ELパネル10の接続電極部5とが接続されている。すなわち、有機ELパネル10と電気接続ユニット20とは、
図4(b)に示すような形態で接続されている。
【0060】
有機ELパネル10と電気接続ユニット20との接続は、導電性接着剤8を用いて行われることが好ましい。導電性接着剤8としては、例えば、異方性導電膜(ACF)又は金属ペースト等を用いることができる。
【0061】
異方性導電膜としては、例えば、熱硬化性樹脂に導電性を持つ微細な導電性粒子が混ぜ合わされて構成される。導電性粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属粒子、金属被覆樹脂粒子等が挙げられる。市販されている異方性導電膜としては、例えば、MF−331(日立化成製)等の、樹脂フィルムにも適用可能な低温硬化型のものを挙げることができる。
【0062】
金属粒子としては、例えば、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、ニッケル、銀、銅が好ましい。これらの表面酸化を防ぐ目的で、表面に金、パラジウムを施した粒子を用いても良い。更に、表面に金属突起や有機物で絶縁被膜を施したものを用いても良い。
【0063】
金属被覆樹脂粒子としては、例えば、樹脂コアの表面をニッケル、銅、金、及びパラジウムのいずれかの金属を被覆した粒子が挙げられる。同様に、樹脂コアの最外表面に金、パラジウムを施した粒子を用いても良い。更に、樹脂コアの表面に金属突起や有機物で絶縁皮膜を施したものを用いても良い。
【0064】
また、金属ペーストとしては、市販されている金属ナノ粒子ペーストである、銀粒子ペースト、銀−パラジウム粒子ペースト、金粒子ペースト、銅粒子ペースト等を適宜選択して用いることができる。金属ペーストとしては、例えば、大研化学社から販売されている有機EL素子基板用銀ペースト(CA−6178、CA−6178B、CA−2500E、CA−2503−4、CA−2503N、CA−271等、比抵抗値:15〜30mΩ・cm、スクリーン印刷法で形成、硬化温度:120〜200℃)、LTCC用ペースト(PA−88(Ag)、TCR−880(Ag)、PA−Pt(Ag・Pt))、ガラス基板用銀ペースト(US−201、UA−302、焼成温度:430〜480℃)等を挙げることができる。
【0065】
有機ELモジュール100の製造方法について説明する。
本発明の有機ELモジュールの製造方法は、フレキシブル基板21の一方の面上に、静電容量型の検出回路部22と、有機ELパネル10を駆動するための駆動回路部23と、駆動回路部23を有機ELパネル10に接続するランド部24とを形成し、フレキシブル基板21の他方の面上であってランド部24に対応する位置に、金属層部25を形成する工程と、フレキシブル基板21のランド部24の周囲に少なくとも一箇所の切り込み213を入れて、検出回路部22及び駆動回路部23を有する本体部211と、ランド部24及び金属層部25を有する接続片部212とを形成することで、電気接続ユニット20を作製する工程と、有機ELパネル10を面方向にスライド移動させて、フレキシブル基板21の本体部211と接続片部212との間に有機ELパネル10を挿入する工程と、有機ELパネル10の接続電極部5と、電気接続ユニット20の接続片部212とを熱圧着する工程と、を有する。
【0066】
具体的には、まず、上記電気接続ユニットの作製方法で説明したように、電気接続ユニット20を作製する。また、有機ELパネル10を準備しておき、当該有機ELパネル10の接続電極部5上には、あらかじめ導電性接着剤8を仮貼合する。
【0067】
次に、準備した電気接続ユニット20の本体部211と接続片部212との間に形成された隙間26に、有機ELパネル10の接続電極部5側の側端部が対向するように配置する。このとき、接続片部212に対して有機ELパネル10が略平行となるとともに、接続片部212の面212a及び有機ELパネル10の発光面10Aがともに同じ方向を向くように配置する。
【0068】
次に、有機ELパネル10を面方向にスライド移動させ、本体部211と接続片部212との間の隙間26に有機ELパネル10を挿入する。有機ELパネル10の発光領域3が電気接続ユニット20の光透過部214内に配置され、有機ELパネル10の接続電極部5が電気接続ユニット20のランド部24に対向配置されるまで、有機ELパネル10をスライド移動させる。これにより、電気接続ユニット20の本体部211が有機ELパネル10の発光面10A側及びその周囲に配置され、接続片部212が有機ELパネル10の発光面10Aの反対面側に配置される。
【0069】
次に、有機ELパネル10の接続電極部5と、電気接続ユニット20の接続片部212のランド部24とを、導電性接着剤8を介して熱圧着し、接続電極部5とランド部24とを機械的及び電気的に接続する。このとき、接続片部212の面212bにおいてランド部24に対応する位置には金属層部25が形成されているため、金属層部25を介してランド部24に対して圧力を加えることができる。このため、ランド部24に効率的に圧力を加えることができ、接続電極部5とランド部24との接続をより容易に行うことができる。
なお、接続電極部5とランド部24との接続方法は、導電性接着剤8を用いた方法でなくとも良く、両者を機械的及び電気的に接続することができればいずれの方法であっても良い。
【0070】
以上のようにして、有機ELモジュール100を製造することができる。
【0071】
《有機エレクトロルミネッセンス素子の構成及び製造方法》
有機ELパネル10を構成する有機EL素子1は、例えば、
図2で例示したように、透明基材4上に、陽極52、第1有機機能層群53A、発光層54、第2有機機能層群53B、陰極55が積層されて構成されている。第1有機機能層群53Aは、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層等から構成され、第2有機機能層群53Bは、例えば、正孔阻止層、電気輸送層、電子注入層等から構成されている。第1有機機能層群53A及び第2有機機能層群53Bはそれぞれ1層のみで構成されていても良いし、第1有機機能層群53A及び第2有機機能層群53Bはそれぞれ設けられていなくても良い。
以下に、有機EL素子の構成の代表例を示す。
【0072】
(i)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔注入輸送層/発光層/正孔阻止層/電子注入輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔注入輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子注入輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(v)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(vi)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極
更に、有機EL素子1は、非発光性の中間層を有していても良い。中間層は電荷発生層であっても良く、マルチフォトンユニット構成であっても良い。
【0073】
本発明に適用可能な有機EL素子の概要については、例えば、特開2013−157634号公報、特開2013−168552号公報、特開2013−177361号公報、特開2013−187211号公報、特開2013−191644号公報、特開2013−191804号公報、特開2013−225678号公報、特開2013−235994号公報、特開2013−243234号公報、特開2013−243236号公報、特開2013−242366号公報、特開2013−243371号公報、特開2013−245179号公報、特開2014−003249号公報、特開2014−003299号公報、特開2014−013910号公報、特開2014−017493号公報、特開2014−017494号公報等に記載されている構成を挙げることができる。
【0074】
更に、有機EL素子を構成する各層について説明する。
【0075】
〔透明基材〕
本発明に係る有機EL素子に適用可能な透明基板としては、例えば、ガラス、プラスチック等の透明材料を挙げることができる。好ましく用いられる透明な透明基板としては、例えば、ガラス、石英、樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0076】
ガラス材料としては、例えば、シリカガラス、ソーダ石灰シリカガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。これらのガラス材料の表面には、隣接する層との密着性、耐久性、平滑性の観点から、必要に応じて、研磨等の物理的処理、無機物又は有機物からなる被膜や、これらの被膜を組み合わせたハイブリッド被膜を形成することができる。
【0077】
樹脂フィルムを構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類及びそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル及びポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)及びアペル(商品名三井化学社製)等のシクロオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
【0078】
有機EL素子においては、上記説明した透明基板上に、必要に応じて、ガスバリアー層を設ける構成であっても良い。
【0079】
ガスバリアー層を形成する材料としては、水分や酸素等、有機EL素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であれば良く、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素などの無機物を用いることができる。更に、ガスバリアー層の脆弱性を改良するため、これら無機層と有機材料からなる有機層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0080】
〔陽極〕
有機EL素子を構成する陽極としては、Ag、Au等の金属又はそれらを含有する合金、CuI、あるいはインジウム−スズの複合酸化物(ITO)、SnO
2及びZnO等の金属酸化物を挙げることができるが、銀又は銀を含有する合金であることが好ましい。
【0081】
陽極が、銀を含有する合金で構成されている場合、当該合金としては、例えば、銀・マグネシウム(Ag・Mg)、銀・銅(Ag・Cu)、銀・パラジウム(Ag・Pd)、銀・パラジウム・銅(Ag・Pd・Cu)、銀・インジウム(Ag・In)等が挙げられる。
【0082】
本発明に係る有機EL素子においては、陽極は、銀を主成分として構成された透明陽極であることが好ましい。本発明において、銀を主成分とするとは、陽極中の銀の含有量が60質量%以上であることをいい、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは98質量%以上である。また、透明とは、波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。
【0083】
また、陽極としてのシート抵抗値は、数百Ω/□以下が好ましく、厚さは、材料にもよるが、通常5nm〜1μmの範囲内、好ましくは5〜200nmの範囲内である。また、陽極が銀を主成分として構成されている場合、その厚さは、2〜20nmの範囲内であることが好ましく、4〜12nmの範囲内であることがより好ましい。厚さが20nm以下であれば、陽極による発光光の吸収成分及び反射成分が低く抑えられ、高い光透過率が維持されるため好ましい。
【0084】
また、本発明においては、陽極が、銀を主成分として構成される場合には、銀層の均一性を高める観点から、その下部に、下地層を設けることが好ましい。下地層としては、特に制限はないが、窒素原子又は硫黄原子を有する有機化合物を含有する層であることが好ましく、当該下地層上に、銀層を形成する方法が好ましい態様である。
【0085】
〔発光層〕
有機EL素子を構成する発光層は、発光材料としてリン光発光化合物が含有されている構成が好ましい。
【0086】
この発光層は、電極又は電子輸送層から注入された電子と、正孔輸送層から注入された正孔とが再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接する層との界面であっても良い。
【0087】
このような発光層としては、含まれる発光材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。また、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あっても良い。この場合、各発光層間には非発光性の中間層を有していることが好ましい。
【0088】
発光層の厚さの総和は、1〜100nmの範囲内にあることが好ましく、より低い駆動電圧を得ることができることから1〜30nmの範囲内が更に好ましい。なお、発光層の厚さの総和とは、発光層間に非発光性の中間層が存在する場合には、当該中間層も含む厚さである。
【0089】
以上のような発光層は、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(ラングミュア・ブロジェット、Langmuir Blodgett法)及びインクジェット法等の公知の方法により形成することができる。
【0090】
また発光層は、複数の発光材料を混合しても良く、リン光発光材料と蛍光発光材料(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう)とを同一発光層中に混合して用いても良い。発光層の構成としては、ホスト化合物(発光ホスト等ともいう)及び発光材料(発光ドーパント化合物ともいう。)を含有し、発光材料より発光させることが好ましい。
【0091】
(1)ホスト化合物
発光層に含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。更にリン光量子収率が0.01未満であることが好ましい。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
【0092】
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いても良く、あるいは、複数種のホスト化合物を用いても良い。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機電界発光素子を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
【0093】
発光層に用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でも良く、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でも良い。
【0094】
本発明に適用可能なホスト化合物としては、例えば、特開2001−257076号公報、同2001−357977号公報、同2002−8860号公報、同2002−43056号公報、同2002−105445号公報、同2002−352957号公報、同2002−231453号公報、同2002−234888号公報、同2002−260861号公報、同2002−305083号公報、米国特許公開第2005/0112407号明細書、米国特許公開第2009/0030202号明細書、国際公開第2001/039234号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2012/023947号、特開2007−254297号公報、欧州特許第2034538号明細書等に記載されている化合物を挙げることができる。
【0095】
(2)発光材料
本発明で用いることのできる発光材料としては、リン光発光性化合物(リン光性化合物、リン光発光材料又はリン光発光ドーパントともいう。)及び蛍光発光性化合物(蛍光性化合物又は蛍光発光材料ともいう。)が挙げられる。
【0096】
(2.1)リン光発光性化合物
リン光発光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
【0097】
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は、種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明においてリン光発光性化合物を用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて、上記リン光量子収率として0.01以上が達成されれば良い。
【0098】
リン光発光性化合物は、一般的な有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、白金化合物(白金錯体系化合物)又は希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0099】
本発明においては、少なくとも一つの発光層が、2種以上のリン光発光性化合物が含有されていても良く、発光層におけるリン光発光性化合物の濃度比が発光層の厚さ方向で変化している態様であっても良い。
【0100】
本発明に使用できる公知のリン光発光性化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
【0101】
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78,1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater.17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許公開第2006/835469号明細書、米国特許公開第2006/0202194号明細書、米国特許公開第2007/0087321号明細書、米国特許公開第2005/0244673号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
【0102】
また、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2009/000673号、米国特許第7332232号明細書、米国特許公開第2009/0039776号、米国特許第6687266号明細書、米国特許公開第2006/0008670号明細書、米国特許公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許公開第2003/0138657号明細書、米国特許第7090928号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
【0103】
また、Angew.Chem.lnt.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics 23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2006/082742号、米国特許公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許公開第2007/0190359号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許公開第2006/103874号明細書等に記載の化合物も挙げることができる。
【0104】
更には、国際公開第2005/076380号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/073149号、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−363552号公報等に記載の化合物も挙げることができる。
【0105】
本発明においては、好ましいリン光発光性化合物としてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。更に好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
【0106】
上記説明したリン光発光性化合物(リン光発光性金属錯体ともいう)は、例えば、Organic Letter誌、vol3、No.16、2579〜2581頁(2001)、Inorganic Chemistry,第30巻、第8号、1685〜1687頁(1991年)、J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第40巻、第7号、1704〜1711頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第41巻、第12号、3055〜3066頁(2002年)、New Journal of Chemistry.,第26巻、1171頁(2002年)、European Journal of Organic Chemistry,第4巻、695〜709頁(2004年)、更にこれらの文献中に記載されている参考文献等に開示されている方法を適用することにより合成することができる。
【0107】
(2.2)蛍光発光性化合物
蛍光発光性化合物としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
【0108】
〔注入層:正孔注入層、電子注入層〕
注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために、電極と発光層の間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)にその詳細が記載されている。一般には、正孔注入層であれば、陽極と発光層又は正孔輸送層との間、電子注入層であれば陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させることができる。
【0109】
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えば、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン):PSS(ポリスチレンスルホン酸)、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
【0110】
トリアリールアミン誘導体としては、α−NPD(4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル)に代表されるベンジジン型や、MTDATA(4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン)に代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
【0111】
正孔注入層の層厚については特に制限はなく、通常は0.1〜100nm程度の範囲内であるが、2〜50nmの範囲内であることが好ましく、2〜30nmの範囲内であることがより好ましい。
【0112】
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ金属ハライド層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物層、酸化モリブデン、酸化アルミニウム等に代表される金属酸化物、リチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。
電子注入層はごく薄い膜であることが望ましく、構成材料にもよるが、その層厚は1nm〜10μmの範囲が好ましい。
【0113】
〔正孔輸送層〕
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層及び電子阻止層も正孔輸送層の機能を有する。正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0114】
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであっても良い。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー及びチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0115】
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物を用いることができ、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0116】
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(略称:TPD)、2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン及びN−フェニルカルバゾール等が挙げられる。
【0117】
正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法及びLB法(ラングミュア・ブロジェット、Langmuir Blodgett法)等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲である。この正孔輸送層は、上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であっても良い。
【0118】
また、正孔輸送層の材料に不純物をドープすることにより、p性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報及びJ.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0119】
このように、正孔輸送層のp性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
【0120】
〔電子輸送層〕
電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する材料から構成され、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は、単層構造又は複数層の積層構造として設けることができる。
【0121】
単層構造の電子輸送層及び積層構造の電子輸送層において、発光層に隣接する層部分を構成する電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、カソードより注入された電子を発光層に伝達する機能を有していれば良い。このような材料としては、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体及びオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送層の材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した高分子材料又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0122】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(略称:Alq
3)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(略称:Znq)等及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送層の材料として用いることができる。
【0123】
電子輸送層は、上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法及びLB法等の公知の方法により、薄膜化することで形成することができる。電子輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲内である。電子輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる単一構造であっても良い。
【0124】
〔阻止層:正孔阻止層、電子阻止層〕
阻止層としては、正孔阻止層及び電子阻止層が挙げられ、上記説明した有機EL素子の各層の他に、必要に応じて設けられる層である。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層等を挙げることができる。
【0125】
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、電子輸送層の構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
【0126】
一方、電子阻止層とは、広い意味では、正孔輸送層の機能を有する。電子阻止層は、正孔を輸送する機能を有しつつ、電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。
【0127】
本発明に係る正孔阻止層及び電子阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲内であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲内である。
【0128】
〔陰極〕
陰極は、有機機能層群や発光層に正孔を供給するために機能する電極膜であり、金属、合金、有機又は無機の導電性化合物若しくはこれらの混合物が用いられる。具体的には、金、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO
2及びSnO
2等の酸化物半導体などが挙げられる。
【0129】
陰極は、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させて作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましく、厚さは、材料にもよるが通常5nm〜5μmの範囲内、好ましくは5〜200nmの範囲内である。
【0130】
〔封止部材〕
有機EL素子を封止するのに用いられる封止手段としては、例えば、封止部材と、陰極及び透明基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。
【0131】
封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていれば良く、凹板状でも、平板状でも良い。また透明性及び電気絶縁性は特に限定されない。
【0132】
具体的には、ガラス板、ポリマー板、フィルム、金属板、フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金が挙げられる。
【0133】
封止部材としては、有機EL素子を薄膜化することできる観点から、ポリマーフィルム及び金属フィルムを好ましく使用することができる。更に、ポリマーフィルムは、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、1×10
−3g/m
2・24h以下であることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10
−3ml/m
2・24h・atm(1atmは、1.01325×10
5Paである)以下であって、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、1×10
−3g/m
2・24h以下であることが好ましい。
【0134】
封止部材と有機EL素子の表示領域(発光領域)との間隙には、気相及び液相では窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙を真空とすることや、間隙に吸湿性化合物を封入することもできる。
【0135】
〔中間電極層〕
本発明に係る有機EL素子は、陽極と陰極との間に、有機機能層群と発光層から構成される有機機能層ユニットを二つ以上積層した構造であっても良く、この場合、有機機能層ユニット同士の間に、電気的接続を得るための独立した接続端子を有する中間電極層が設けられる。
【0136】
〔有機EL素子の製造方法〕
有機EL素子の製造方法としては、透明基材上に、陽極、第1有機機能層群、発光層、第2有機機能層群及び陰極を積層して積層体を形成する。
【0137】
まず、透明基材を準備し、該透明基材上に、所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲内の膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を形成する。同時に、陽極端部に、外部電源と接続する接続電極部を形成する。
【0138】
次に、この上に、第1有機機能層群を構成する正孔注入層及び正孔輸送層、発光層、第2有機機能層群を構成する電子輸送層等を順に積層する。
【0139】
これらの各層の形成方法としては、例えば、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等が用いられるが、均質な層が得られやすく、かつ、ピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法又はスピンコート法が特に好ましい。更に、層ごとに異なる形成法を適用しても良い。これらの各層の形成に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度1×10
−6〜1×10
−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、層厚0.1〜5μmの範囲内で、各条件を適宜選択することが望ましい。
【0140】
以上のようにして第1有機機能層群、発光層及び第2有機機能層群を形成した後、陰極を、例えば、蒸着法やスパッタ法等の適宜の形成法によって形成する。この際、陰極は、有機機能層群によって陽極に対して絶縁状態を保ちつつ、第2有機機能層群の上方から透明基板の周縁に端子部分を引き出した形状にパターン形成する。
【0141】
陰極の形成後、これら透明基材、陽極、第1有機機能層群、発光層、第2有機機能層群及び陰極を封止材で封止する。すなわち、陽極及び陰極の端子部分を露出させた状態で、透明基材上に、少なくとも有機機能層群を覆う封止材を設ける。
以上のようにして、有機EL素子を製造することができる。
【実施例】
【0142】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図4に示すように構成される有機ELモジュールの作製について説明する。
【0143】
適宜必要なサイズにカットされた有機ELパネルを仮置きトレイにアレイ化して並べて配置する。この際、有機ELパネルの発光面を下向き、接続電極部側を上向きにして配置する。有機ELパネルは、
図1及び
図2に示すように構成されている。
【0144】
真空チャック又は静電チャック機構を有する装置を用い、有機ELパネルの発光面と反対面側をチャックして移送し、導電性接着剤としてのACFを貼合する貼合機のステージ上に有機ELパネルを配置する。生産性を向上させるため、有機ELパネルを移送する装置は自動制御にて動作させる。
【0145】
貼合機のステージ上に有機ELパネルを配置した後、当該ステージ上で真空チャックにより有機ELパネルを固定する。続いて、リールより引き出されたフィルム状のACFを有機ELパネルの接続電極部上に供給する。ACFの幅は、有機ELパネルのサイズにもよるが、例えば0.8〜1.5mmの範囲内で適宜選定される。引き出されたACFを当該サイズでカットし、当該ACFを有機ELパネルの接続電極部上に配置した後、80℃程度に加熱されたヒートツールによりACFと接続電極部とを仮貼合する。ヒートツールによる加圧条件としては、0.2MPa、5秒程度が例示される。仮貼合後、ACFからセパレータを剥離する。
【0146】
次に、有機ELパネルを移送し、有機ELパネルの発光面が上向き、ACF仮貼合面(接続電極部)が下向きとなるように仮置きトレイ上に配置する。ACF仮貼合面がトレイ面に触れないように、仮置きトレイ内のACF貼合領域に対応する位置は凹状に加工されている。
【0147】
次に、あらかじめ作製された電気接続ユニットを、仮組みステージ上に配置する。電気接続ユニットは、
図3に示すように構成されており、フレキシブル基板の本体部の片面には検出回路部及び駆動回路部が形成され、接続片部の両面にはランド部及び金属層部が形成されている。このため、電気接続ユニットは仮組みステージ上に配置された時点において、接続片部のみが平坦な形状であって、それ以外の本体部はカールした形状となっており、接続片部と本体部との間には隙間が形成されている。
【0148】
次に、仮組みステージ上にて、電気接続ユニットの接続片部のランド部側が上向きに配置された状態で、当該接続片部を吸着固定する。これにより、電気接続ユニットの本体部が仮組みステージから離れる方向にカールし、接続片部と本体部との間の隙間が確保された状態となる。
【0149】
次に、有機ELパネルを面方向に移動させながら、本体部と接続片部との間の隙間に有機ELパネルを挿入する。有機ELパネルの接続電極部が電気接続ユニットのランド部に対向配置され、有機ELパネルの発光領域が電気接続ユニットの光透過部内に配置された時点で、有機ELパネルの面方向移動を停止する。有機ELパネルの接続電極部と、電気接続ユニットのランド部とに対して、両面側から約0.2MPa程度の圧力をかけることで、接続電極部上に仮貼合されたACFをランド部に密着させる。これにより、有機ELパネルを電気接続ユニットに対して仮固定することができる。
【0150】
その後、仮組みした有機ELパネルと電気接続ユニットとをFPC圧着機のステージ上へ移送し、当該ステージの所定位置に固定する。圧着用のヒートツールは130℃程度に加熱されており、これを用いて両面側から約1〜2MPaの圧力で、10〜20秒、熱圧着を行う。熱圧着の際は、FPCのランド部のみに圧力を印加することが可能な形状に加工されたヒートツールを用いる。
【0151】
以上のようにして、タッチ検出精度を低下させることなく、有機ELモジュールを容易に製造することができた。