特許第6245198号(P6245198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEスチール株式会社の特許一覧

特許6245198小コイル冶具および小コイル冶具を用いたコイル搬送方法
<>
  • 特許6245198-小コイル冶具および小コイル冶具を用いたコイル搬送方法 図000002
  • 特許6245198-小コイル冶具および小コイル冶具を用いたコイル搬送方法 図000003
  • 特許6245198-小コイル冶具および小コイル冶具を用いたコイル搬送方法 図000004
  • 特許6245198-小コイル冶具および小コイル冶具を用いたコイル搬送方法 図000005
  • 特許6245198-小コイル冶具および小コイル冶具を用いたコイル搬送方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245198
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】小コイル冶具および小コイル冶具を用いたコイル搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 47/24 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   B21C47/24 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-45559(P2015-45559)
(22)【出願日】2015年3月9日
(65)【公開番号】特開2016-165731(P2016-165731A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2016年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126701
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】秋元 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】栗尾 信治
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−006786(JP,U)
【文献】 実開平02−138011(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 47/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径が小さい、テンションリールで巻取った小コイルを載せて、コイル結束および搬送を補助するための小コイル冶具であって、
該小コイル冶具は、
前記小コイルを載置する本体を具備し、
該本体の両脚部は結束機のコイルスキッド上に載置できる長さ、および前記両脚部の間隔はコイルカー幅以上とする構造を有し、
前記小コイル冶具は、軽量であり、前記小コイルに疵がつきにくい材質で、金属芯を前記本体に内包し、
イルカー上に脱着ができることを特徴とする小コイル冶具。
【請求項2】
請求項1に記載の小コイル冶具を用いたコイル搬送方法であって、
予め、前記小コイル冶具をコイルカーの上に設置し、設置した小コイル冶具にテンションリールで巻取った小コイルを載置し、載置した小コイルごと結束機の位置までコイルカーで搬送し、結束機にて小コイルを結束し、結束した小コイルごと所定の位置までコイルカーにて搬送することを特徴とする小コイル冶具を用いたコイル搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板または鋼板の不良部分をテンションリールで巻取ったコイルを、コイル台車にて搬送するにあたって、前記コイルの外径がコイルスキッド間隔またはコイル台車の幅よりも小さいコイル(以下、小コイルと呼ぶ)をコイル結束機にて結束を行なえるようにする小コイル冶具、およびこの小コイル冶具を用いたコイル搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷延工場等においては、鋼帯の一部に板厚不良や表面欠陥が発見され、その部分をスクラップとして除去する際、不良部の長さが数m程度であれば、ライン内に設置されたシャーにより切断して除去される。しかしながら、不良部の長さが10m以上に及ぶ場合には、いったんテンションリールに巻取って、小径のスクラップコイルとして搬出するという方法が採られている。
【0003】
巻取られた小径のスクラップコイル(以下、スクラップコイルと呼ぶ)は径の大きな製品コイルと同様に、コイルカーに載荷後テンションリールから抜出されライン外へ搬出される。
【0004】
製品コイルと同様に、小径コイルをテンションリールから抜出して搬送するためには、例えば、特許文献1に、固定スキッドに小径コイル専用スキッドを設けるとともに、コイルカーに2分割昇降スキッドを設けるという技術が開示されている。人手により固定スキッド上に小径コイル受冶具を載せたり降ろしたりするそれまでの方法と比べて、安全性および生産能率を改善している。
【0005】
また、スクラップコイルはそのままテンションリールから抜取ると、スプリングバック(弾性回復)にてコイル形状がバラける(ほどける)現象が生じる。この対策として、テンションリールよりスクラップコイルを抜出す前にコイルを結束する方法、バラけたコイルに人力で結束を行なう方法が採られている。
【0006】
人力により結束する方法は、テンションリール周辺にはベルトラッパーやスーナーバーロール、通板のための案内テーブル等が設置されているため、作業者にとっては足場のない非常に危険な作業となる。そのため、ラインによっては歩留まりの低下を伴うものの、コイル自重がバラケようとする弾性力を上回る程度にまで巻取り数を増やして除去する方法も採られている。
【0007】
特許文献2には、テンションリール上でのコイル固定方法として、スクラップコイルの終端をスポット溶接で固定する技術が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、テンションリール直上に小径専用の結束機を設置する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平2−138011号公報
【特許文献2】特開平10−180354号公報
【特許文献3】特開平5−285537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、コイルカーおよびスキッドの改造が必要であり、かつコイルカーの移動範囲に制約がかかるため、スキッドに小コイルを置いた後の作業の障害となる可能性がある。また、記載されている小コイル冶具は材質の指定が無く、形状はコイルカーにはめ込む形をしており設置・取外しに不便な形状であり、作業時の安全性・取り扱い性に課題がある。
【0011】
また、特許文献2または特許文献3に開示された技術は、スクラップコイルに適用するには非常に有効であるものの、それぞれ専用の装置が必要となり、いずれもテンションリール近傍に設置するため、テンションリール付帯設備のメンテナンス等の障害となるというが課題がある。
【0012】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、テンションリールに巻き取られた小コイルを、現行の設備のメンテナンス性を阻害することなく安全に結束し、搬送することができる、小コイル冶具および小コイル冶具を用いたコイル搬送方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有している。
【0014】
[1] 外径が小さい、テンションリールで巻取った小コイルを載せて、コイル結束および搬送を補助するための小コイル冶具であって、
該小コイル冶具は、
前記小コイルを載置する本体を具備し、
該本体の両脚部は結束機のコイルスキッド上に載置できる長さ、および前記両脚部の間隔はコイルカー幅以上とする構造を有し、持ち運び可能でコイルカー上に脱着ができることを特徴とする小コイル冶具。
【0015】
[2] 上記[1]に記載の小コイル冶具において、
前記小コイル冶具は、
軽量であり、前記小コイルに疵がつきにくい材質で、
金属芯を前記本体に内包することを特徴とする小コイル冶具。
【0016】
[3] 上記[1]または[2]に記載の小コイル冶具を用いたコイル搬送方法であって、
予め、前記小コイル冶具をコイルカーの上に設置し、設置した小コイル冶具にテンションリールで巻取った小コイルを載置し、載置した小コイルごと結束機の位置までコイルカーで搬送し、結束機にて小コイルを結束し、結束した小コイルごと所定の位置までコイルカーにて搬送することを特徴とする小コイル冶具を用いたコイル搬送方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、小コイル冶具を用いることにより従来設置されている結束機を用いて、小コイルを結束し、搬送するようにしたので、現行の設備のメンテナンス性を阻害することなく安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来の小コイルの結束および搬送の様子を示す図である。
図2】本発明の一実施形態における小コイルの結束および搬送の様子を示す図である。
図3】コイルスキッド位置でのコイルの載荷状態を示す図である。
図4】本発明に係る小コイル冶具を用いる様子を示す図である。
図5】小コイル冶具の詳細を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者らは、テンションリールに巻き取ったスクラップコイル、および外径が小さい製品コイルを、従来の結束機にて結束、そして搬送する技術として、コイルカーおよび結束機のスキッドに着目し検討を行った。その結果、スクラップコイルを載せて、適切な寸法・強度を持った容易に持ち運び可能でコイルカー上に脱着が可能な小コイル冶具と、その冶具を用いて小コイル搬送・結束ができるとの知見に基づいて、本発明に想到した。
【0020】
本発明を実施するための形態を、図面に基づいて以下に説明を行う。
【0021】
図1は、従来の小コイルの結束および搬送の様子を示す図である。また、図2は、本発明の一実施形態における小コイルの結束および搬送の様子を示す図である。図中、1はテンションリール、2は結束機、3はコイルカー、4はコイルスキッド、5は小コイル、6は作業員、および7は小コイル冶具をそれぞれ表す。
【0022】
図1を用いて、これまで行われてきた小コイルの結束および搬送の様子を説明していく。図1(a)〜(d)の順に、コイル巻取りからコイル抜出し完了までが行われる。
【0023】
先ず、図1(a)で装置構成を説明すると、テンションリール1は鋼板を巻取りコイルとし、巻取ったコイルをテンションリール1から抜取り、コイルカー3で結束機2まで搬送し、コイルを結束する。径の大きな製品コイルの結束にあたっては、結束機2の位置に平行に並べて設置したコイルスキッド4の上にコイルを載せた状態で行う。
【0024】
図3は、コイルスキッド位置でのコイルの載荷状態を示す図である。図中、3はコイルカー、4はコイルスキッド、5は小コイル、8は径の大きな製品コイルをそれぞれ表す。図3(a)は、径の大きな製品コイル8がコイルスキッド4の上に載った状態を示しており、この状態でコイル結束が行われる。しかしながら、図3(b)のように、コイルスキッド4の間隔より直径が小さい小コイル5では、コイルスキッド4の上に載せることができず、このため結束機2を使用したコイル結束ができない。
【0025】
このため、図1(a)でのコイル巻取り完了後、図1(b)のようにテンションリール1近辺における作業員6による結束といった人手作業を行っている。この人手作業は、前述のように非常に危険な作業である。
【0026】
人手による結束作業が終了すれば、図1(c)に示すようにコイルカー3がテンションリール1まで移動し、小コイル5をテンションリール1から抜出す。そして、図1(d)に示すように小コイル5を載せたコイルカー3は、結束機2を素通りして所定の位置まで移動してコイル抜出しは完了する。
【0027】
本発明は、テンションリール近辺における作業員による結束作業を行うことなく、かつ結束機を用いた結束を、小コイルにおいて行うことができるように考案されたものである。
【0028】
図4は、本発明に係る小コイル冶具を用いる様子を示す図である。図中、7は小コイル冶具を表し、その他の符号は図3(b)と同じである。
【0029】
小コイル冶具7は、小コイル5を載せた状態で、結束機のコイルスキッド4、4の上に両脚部が載る形状を備えている。これにより、小コイルであっても、コイルスキッド上に載置することができ結束機での結束が可能となる。
【0030】
図5は、小コイル冶具の詳細を示す斜視図である。小コイル冶具7は、持ち運びを容易に行なえるために軽量であること、またコイルに疵がつきにくい材質であることから、小コイルを載置する本体は樹脂又は、ゴムにて構成すると良い。また、コイルカー上に載せて移動するために、両脚部の間隔Xは、コイルカーの幅以上とする。なお、移動の際に載置した小コイルにズレが生じないように、両脚部の間隔Xとコイルカーの幅との差は、必要以上に大きくとらないことが好ましい。
【0031】
さらに、両脚部の両端までの長さXは、コイルスキッド上に載せることができるように、コイルスキッド間隔よりも長くする。脚部の幅Yは、コイルスキッド自身の幅またはコイルスキッド間隔にもよるが、概ね100〜500mmの範囲とする。
【0032】
また、本体を樹脂にて構成した場合に、繰り返しの使用ができないなどといった強度上の問題が懸念されることがあれば、アルミ芯などの金属芯を小コイル冶具の本体に内包させるようにすれば良い。なお、金属芯の材質としては、強度が確保可能な強度、形状であればよく、軽量化を図るためには、金属芯をAl、Al合金、Mg、高張力鋼を用いればよい。
【0033】
また、樹脂については、工業用プラスチック(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)を用いることができる。さらに、本体に取手を取り付けるようにすれば、コイルカー上への設置およびコイルカーからの取外しを簡単に行うことができる。
【0034】
以上説明を行った、本発明に係る小コイル冶具を用いた小コイルの結束および搬送の様子を、図2を参照して説明していく。従来例を示した図1と同様に、図2(a)〜(d)の順で、小コイルのコイル巻取りからコイル抜出し完了までが行われる。
【0035】
図2(a)では、テンションリール1で鋼板を巻取りコイルとする作業を示している。この作業中または予め、テンションリール1から離れた場所にて作業員6が、コイルカー3の上に2つの小コイル冶具7をコイルスキッド4,4の間隔に並べて設置する。
【0036】
そして、コイル巻取り完了後、図2(b)のように、小コイル冶具7を載せたコイルカー3が移動して、巻取られた小コイル5を小コイル冶具7の上に載せてテンションリール1から抜取る。
【0037】
巻取られた小コイル5を小コイル冶具7の上に載せたコイルカー3は、結束機2の位置まで移動する。そして、コイルカー3を下降させて、小コイル5を載せた小コイル冶具7の脚部を4つのコイルスキッド4の上に静置する。しかるのち、結束機2による小コイル5のコイル結束が行われる(図2(c))。
【0038】
そして、コイル結束の終了の後は、結束された小コイル5を載せたコイルカー3が、所定の位置まで移動してコイル抜出しは完了する(図2(d))。
【0039】
なお、図示はしていないが、結束した小コイルをコイルカーから移動した後に、直ぐに次の小コイルがなければ、小コイル冶具をコイルカーから取り外す。
【0040】
本発明に係る小コイル冶具を用いて、前述の図2に示したように小コイルの結束および搬送を行った結果、テンションリール近辺における作業員によるコイル結束を行うことなく、結束機でコイル結束を行うことができ、作業の安全性ならびに効率を高めることができた。
【0041】
また、スクラップコイルに限らず客先に出荷する径の小さいコイルであっても、小コイル冶具の本体をゴム(Hs70)、金属芯に高張力鋼(板厚:2.5mm)を使用して作成したことにより、外周に疵を作ることなく確実にコイルの抜出し・搬送が可能なことが分った。
【0042】
さらに、小コイル冶具の本体に金属芯を内包させて強度を増すようにしたことにより、繰り返して使用することが可能となった。そして、小コイル冶具の本体に取手を取り付けたことにより、コイルカーへの設置およびコイルカーからの取外しの作業性が向上した。
【符号の説明】
【0043】
1 テンションリール
2 結束機
3 コイルカー
4 コイルスキッド
5 小コイル
6 作業員
7 小コイル冶具
8 径の大きな製品コイル
図1
図2
図3
図4
図5