(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示された自動扉では、引戸本体の上端部がカバーにて覆われる構成とされているため、カバーの下方への開口部は、幅が引戸本体の厚さよりも大きく形成され、長さが引戸本体の移動範囲と対応する長さに形成されている。このため、引戸本体が開けられた際、カバーの下方への開口部から、カバー内に収容されているベースレールなどの引戸本体の駆動機構、仕上げを施していない下地部分や構造躯体などの建物内部が見えてしまい、意匠性の悪いものであった。
【0005】
前記特許文献1に開示された自動扉では、駆動機構が扉の上端部に配置されていたが、駆動機構がカバー内に収容されて扉の下端部に配置された自動扉もある。この場合、カバーの上方への開口部を介して、扉が上方へ延出して設けられることになり、扉の開放時に前記開口部から建物内部が見えてしまっていた。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、引戸とその開閉手段とを接続する部材が貫通され、その貫通箇所を介して開閉手段が配置される空間の内外が連通されるよう配置される引戸用横部材であって、簡易な構成で、貫通箇所から空間内を見え難くすることで、意匠性を改善することができる引戸用横部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る引戸用横部材は、引戸がその開閉手段に建具接続材により接続される引戸構造の自動ドアに用いられ、前記引戸の上
方に配置される引戸用横部材であって、
前記開閉手段は、駆動源であるモータと、駆動プーリおよび従動プーリに掛け回されるベルトと、前記建具接続材を介して前記引戸に固定されて前記引戸を懸架するハンガー材と、前記ハンガー材と前記ベルトとを連結する連結材と、前記ハンガー材に設けられる戸車と、前記戸車の走行路であるレールとを備え、前記引戸用横部材に固定されており、前記引戸が移動自在に通過する溝が形成され、この溝の底面に前記溝に沿うようにして、前記引戸の厚さよりも小さい幅を有する建具接続材通路が貫通して形成されており、前記開閉手段が配置される空間の内外が前記建具接続材通路を介して連通されるよう配置され、前記建具接続材が前記建具接続材通路に貫通した状態で配置され、前記開閉手段により、前記建具接続材が前記建具接続材通路に沿って移動しつつ前記引戸が前記溝を移動して、前記引戸の開閉がなされ、前記引戸用横部材は、板状に形成され、前記溝および前記建具接続材通路は、その深さ方向が前記引戸用横部材の板厚方向へ沿うよう形成されており、前記建具接続材通路の深さが前記溝の深さよりも深く形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る引戸用横部材は、前記建具接続材は、板状部を有し、この板状部が前記建具接続材通路を貫通しつつ前記建具接続材通路に沿って配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る引戸用横部材によれば、それに形成される溝に引戸が入れられていることで、引戸用横部材と引戸との間に隙間が生じない。そのため、引戸を介して隣接する一方の空間と他方の空間との間において、前記隙間を介して、一方の空間から他方の空間へ光が漏れることを防止することができる。また、溝の底面に建具接続材通路が形成されることで、貫通形成される建具接続材通路が溝よりも奥側(開閉手段が配置される空間側)に配置されることになり、引戸が配置されていない箇所において、建具接続材通路を目立ち難くすることができる。これに加えて、建具接続材通路の幅が引戸の厚さよりも小さく形成されることで、引戸が配置されていない箇所において、建具接続材通路をより目立ち難くすることができる。このようにして、建具接続材通路が奥側に配置されると共に、建具接続材通路の幅が引戸の厚さよりも小さく形成されることで、隣接する空間を行き来する通行者から、開閉手段が配置される空間内を見え難くすることができる。
【0011】
建具接続材が板状部を有することで、開閉手段に引戸が安定して接続され、引戸の開閉時の引戸のがたつきを抑制することができる。また、建具接続材の板状部が建具接続材通路を貫通しつつ建具接続材通路に沿って配置されることで、建具接続材通路の幅を建具接続材の板状部が接触することなく移動可能な程度の幅とすることができ、建具接続材通路の幅をより小さくすることができる。すなわち、本発明に係る引戸用横部材によれば、引戸の安定を損なうことなく、建具接続材通路の幅をより小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1から
図3は、本発明の引戸用横部材の一実施例を示す図であり、
図1は使用状態を室内側から見た概略正面図、
図2は概略左側面図、
図3は縦断面図である。なお、
図1および
図2は、一部を断面にして示すと共に一部を省略して示している。ここでは、住宅に設置される自動ドアであって、吊り下げられた扉を移動させる引戸式の自動ドアに適用される引戸用横部材である鴨居の場合について説明する。本実施例の鴨居1は、片引き式の引戸2がその開閉手段3に建具接続材4により接続される引戸構造に適用され、引戸1の上方に左右方向へ沿って配置される。
【0016】
引戸2は、上下方向が長手方向とされる長方形の板状とされ、上面には左右方向へ沿って凹形状の溝部5が形成され、下面には下方へ延出して板状の差込部6が左右方向へ沿って形成されている。引戸2は、後述する開閉手段3により、住宅の部屋の出入口に左右方向へ移動可能に設けられる。本実施例では、部屋の出入口は、その高さが部屋の高さよりも低く形成されている。
図1に示されるように、部屋の出入口では、左端部に上下方向へ沿って左枠材7が設けられると共に、右端部に上下方向へ沿って右枠材8が設けられ、左枠材7の上端部と右枠材8の上端部とが左右方向へ沿って設けられる鴨居1にて接続される。部屋の出入口は、右側半分が中空状の壁体10により閉じられ、左側半分が開口されており、この開口部が引戸2によって開閉される。引戸2の開閉は、鴨居1の上方の空間に配置される開閉手段3にてなされる。
図2に示されるように、引戸2の開閉手段3は、鴨居1と天井との間の空間である収容部11内に配置される。
【0017】
収容部11は、左右方向を長手方向とする略矩形の中空ボックス状に形成されており、
図2に示されるように下方への開口部12が形成されている。本実施例の収容部11の上壁は、左右方向へ沿って配置される板材13にて構成されている。収容部11の前壁は、板材14が板材13に対して直交すると共に左右方向へ沿って配置され、その板材14の前面が下端部を残して化粧板15にて覆われて構成される。収容部11の後壁は、板材16が板材13に対して直交すると共に左右方向へ沿って配置され、その板材16の後面が下端部を残して化粧板17にて覆われて構成される。収容部11の下壁では、上壁を構成する板材13よりも幅の小さい板材18が、左右方向へ沿って設けられる。この際、板材18は、後壁から前方へ延出するようにして設けられる。板材18の下面には、前後両端部を残して化粧板19が設けられ、板材18の上面には、板状の補強合板20が設けられる。収容部11の左壁および右壁は、それぞれ板材から構成されている。
図2に示されるように、後壁と下壁との角部には、断面略L字形状の化粧板21が設けられる。このようにして、収容部11は、下方への開口部12を有する中空ボックス状に形成される。前述した収容部11において、左壁および右壁のない場合もある。このときは、収容部11が左右方向へ開口した筒状に形成される。なお、収容部11は、前述した構成に限定されるものではなく、適宜に変更可能である。
【0018】
収容部11には、その開口部12を閉塞するようにして、左右方向を長手方向とする長方形の板状の鴨居1が設けられる。本実施例では、鴨居1は、木製とされるが、これに限定されるものではなく、たとえば、鉄製やアルミ製であってもよい。鴨居1の前端部の上面には、前壁の係合溝22が下方へ凹んで形成されている。鴨居1の下面には、前後方向略中央部に、左右方向へ沿うようにして、断面四角形状の溝23が上方へ凹んで形成されている。この溝23は、引戸2の上端部が入れられた状態で移動自在に通過できるように、その幅が引戸2の幅よりも大きく形成されている。溝23の底面には、左右方向へ沿って、細長い建具接続材通路24が鴨居1を貫通するよう形成されている。この建具接続材通路24の幅aは、引戸2の厚さbよりも小さく形成されており、たとえば、引戸2の厚さbの約0.5倍とされている。図示例では、建具接続材通路24の幅aが約20mmとされ、引戸2の厚さbが約40mmとされている。このようにして、溝23および建具接続材通路24は、その深さ方向が鴨居1の板厚方向へ沿うように形成されている。本実施例では、溝23の深さcが建具接続材通路24の深さdよりも深く形成されており、たとえば、溝23の深さcが建具接続材通路24の深さdの約2.3倍とされている。図示例では、溝23の深さcが約25mmとされ、建具接続材通路24の深さdが約11mmとされている。
【0019】
図2に示されるように、鴨居1は、係合溝22に前壁の板材14の下端部が差し込まれると共に、後面が下壁の板材18の前面に当接した状態で、収容部11に固定される。固定状態では、建具接続材通路24を介して、収容部11の内外が連通されている。なお、収容部11には、断面略L字形状の化粧板21と下壁の化粧板19との隙間25に上端部が差し込まれて下方へ延出した薄板状の壁材26と、下壁の化粧板19と鴨居1の後面との隙間27に上端部が差し込まれて下方へ延出した薄板状の壁材28とにより、前述した壁体10が形成される。
【0020】
このようにして固定された鴨居1に沿って、開閉手段3により、引戸2が移動可能とされている。開閉手段3は、駆動源であるモータ29と、モータ29の駆動軸に回転可能に設けられる駆動プーリ30と、収容部11内に設けられる軸部に回転可能に設けられる従動プーリ31と、駆動プーリ30および従動プーリ31に掛け回されるベルト32とを備える。
図2に示されるように、鴨居1の上面にネジなどで固定される支持材33に、モータ29および従動プーリ31などが固定される。この際、
図1に示されるように、モータ29および駆動プーリ30が右端部に配置されると共に、従動プーリ31が左端部に配置され、左右に離隔して配置された両プーリ30,31にベルト32が掛け回される。
【0021】
また、開閉手段3は、引戸2を懸架するハンガー材34と、ハンガー材34とベルト32とを連結する連結材35と、ハンガー材34に設けられる戸車36と、戸車36の走行路であるレール37とを備える。本実施例では、ハンガー材34,34は、引戸2の上端部に左右へ離隔して設けられる。各ハンガー材34は、板材からなる板状部38の上下両端部に板片39,40が設けられた断面略I字形の建具接続材4を介して、引戸2に固定される。具体的には、ハンガー材34の下端部と建具接続材4の上側の板片39とが固定されると共に、建具接続材4の下側の板片40が引戸2の溝部5の底面にネジなどで固定される。この際、建具接続材4は、その板状部38の板面が前後方向に対して直交するよう配置される。各ハンガー材34には、それぞれ別の戸車36が設けられ、これらの戸車36,36が支持材33に固定されるレール37上に載せ置かれる。これにより、引戸2が吊り下げられた状態とされる。
図1に示されるように、左側に配置されるハンガー材34と連結材35とはボルトナットなどで互いに固定され、その連結材35は先端部がベルト32に固定される。なお、開閉手段3は、前述した構成に限定されるものではなく、適宜に変更可能である。
【0022】
このようにして、開閉手段3は、鴨居1の上面に支持材33を介して固定されて、収容部11内に配置される。また、引戸2は、開閉手段3に接続されて吊り下げられ、収容部11から下方へ延出して設けられる。この際、建具接続材4の板状部38が建具接続材通路24を貫通しつつ建具接続材通路24に沿って配置され、引戸2の上端部が鴨居1に形成された溝23に入れられている。本実施例では、建具接続材通路24の幅aは、建具接続材4の板状部38が建具接続材通路24の内面に接触することなく移動可能な程度の幅とされており、たとえば、板状部38の幅の約3.3倍とされている。図示例では、建具接続材通路24の幅aが前述したように約20mmとされ、建具接続材4の板状部38の幅が約6mmとされている。なお、引戸2の下端部に形成された差込部6は、床面Fに形成された凹形状のスライド溝41に左右方向へスライド可能に差し込まれている。
【0023】
このような構成により、モータ29を駆動させて駆動プーリ30を正面から見て時計方向へ回転させることで、ベルト32を時計方向へ回転させることができ、これにより、戸車36がレール37上を左方向へ走行しつつ、連結材35、ハンガー材34および建具接続材4を介してベルト32に連結された引戸2を左方向へ移動させることができる。これとは逆に、モータ29を駆動させて駆動プーリ30を正面から見て反時計方向へ回転させることで、引戸2を右方向へ移動させることができる。従って、開閉手段3により、建具接続材4の板状部38が建具接続材通路24に沿って移動しつつ引戸2が溝23を移動して引戸2の開閉がなされ、部屋の出入口を開閉することができる。
【0024】
本実施例の鴨居1によれば、溝23内に引戸2の上端部が入れられている。すなわち、引戸2の上端部を覆う構成とされていることで、鴨居1下面と引戸2上面との間に隙間が生じない。従って、引戸2が閉じられている際、その隙間を介して、室内側から室外側へ、または室外側から室内側へ光が漏れることを防止することができる。
【0025】
また、本実施例の鴨居1によれば、溝23の底面に建具接続材通路24が貫通形成されることで、建具接続材通路24が溝23よりも上側に配置されることになり、鴨居1の引戸2が配置されていない箇所において、下から鴨居1を見上げた際に建具接続材通路24を目立ち難くすることができる。これに加えて、建具接続材通路24の前後幅aが引戸2の厚さbよりも小さく形成されることで、鴨居1の引戸2が配置されていない箇所において、下から鴨居1を見上げた際に建具接続材通路24をより目立ち難くすることができる。さらにこれに加えて、本実施例では、建具接続材通路24の前後幅aが建具接続材4の板状部38が移動可能な程度の幅とされることで、建具接続材通路24の幅をさらに小さくすることができ、鴨居1の引戸2が配置されていない箇所において、下から鴨居1を見上げた際に建具接続材通路24をより一層目立ち難くすることができる。従って、室内側から室外側へ、または室外側から室内側へ移動する通行者が見上げた際に、収容部11内を見え難くすることができる。すなわち、簡易な構成で、仕上げが施されていない板材13,14,16の裏面や、収容部11内に配置される開閉手段3などを見え難くすることができ、意匠性を改善することができる。
【0026】
さらに、本実施例の鴨居1によれば、溝23の深さcが建具接続材通路24の深さdよりも深く形成されることで、建具接続材通路24をより上側に配置することができる。これにより、鴨居1の引戸2が配置されていない箇所において、下から鴨居1を見上げた際に建具接続材通路24をさらに目立ち難くすることができる。しかも、鴨居1が板状に形成されており、これにより通常用いられる鴨居と同一厚さのものを用いることができ、取付けスペースをとらない。すなわち、取付けスペースを増大させることなく、収容部11内を見え難くすることができる。
【0027】
本発明は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、自動ドアに適用される鴨居1とされたが、手動で扉の開閉を行う吊下げ式の引戸に適用される鴨居であってもよい。すなわち、開閉手段は、自動で引戸を移動させて開閉させる手段であってもよいし、手動で引戸を移動させて開閉させる手段であってもよい。また、前記実施例では、引戸2の上端部に配置される引戸用横部材である鴨居1とされたが、床面に配置される引戸用横部材である敷居であってもよい。この場合、引戸の開閉手段が床内に配置され、敷居を貫通した建具接続材により、引戸が開閉手段に接続される。この開閉手段は、引戸の下端部に接続されて引戸を移動させて開閉させる手段であればよい。なお、敷居の場合も、自動または手動で開閉する引戸とされる。また、前記実施例では、片引き式の引戸2に用いられる鴨居1とされたが、これに限定されるものではなく、たとえば、引き違い式の引戸に用いられる鴨居や敷居である引戸用横部材であってもよい。この場合、鴨居や敷居には、各引戸に対応して、溝および建具接続材通路が形成される。
【0028】
また、前記実施例では、溝23の深さcが建具接続材通路24の深さdよりも深く形成されたが、これとは逆に、建具接続材通路の深さを溝の深さよりも深く形成してもよい。この場合、板状の鴨居において、建具接続材通路の深さを溝の深さよりも深く形成してもよいし、建具接続材通路と対応する内穴を有する筒状部を上方へ延出して形成することで、建具接続材通路の深さを溝の深さよりも深く形成してもよい。また、前記実施例では、建具接続材通路24の幅aは、約20mmとされたが、これに限定されるものではなく、建具接続材4の板状部38が建具接続材通路24の内面に接触することなく移動可能な程度の幅であるのが好ましく、たとえば、約10〜約20mmとされるのが好ましい。
【0029】
また、前記実施例では、建具接続材4が板状部38を有する構成とされたが、これに限定されるものではなく、たとえば、引戸2とその開閉手段3とが棒状部を有する建具接続材により接続されてもよい。この場合、棒状部が建具接続材通路24を貫通するよう配置される。建具接続材通路24を貫通する部材を棒状に形成することで、建具接続材通路24の幅を小さくすることができる。
【0030】
また、前記実施例では、開閉手段3が配置される空間として収容部11とされたが、これに限定されるものではなく、たとえば、鴨居1と天井との間の壁内部を前記空間としてもよい。この場合、壁内部に開閉手段3が配置され、壁内部とその外部が鴨居1の建具接続材通路24を介して連通されている。さらに、前記実施例では、部屋の出入口の高さが部屋の高さよりも低く形成されたが、部屋の出入口が床から天井までの高さを有していてもよい。この場合、開閉手段3が配置される空間は天井内部とされ、この天井内部とその外部が、引戸用横部材1の建具接続材通路24を介して連通している。このようにして空間内を見え難くすることで、開閉手段3や、壁下地、天井下地および構造部材などを見え難くすることができる。