(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されたシステムは、一般的な建築物の建築におけるレンガ積みのために開発されたものであるため、室炉式コークス炉の築炉における定型耐火物の積み上げに使用することはできない。その理由は以下のとおりである。
【0007】
一般的な建築物は、同じ形状(通常は直方体)で、同じ寸法のレンガを積み上げて建設される。これに対して、コークス炉は、上面から見た形状が、長方形、台形、L型など、様々な形状の定型耐火物を複雑に組み合わせて建造される。引用文献1に記載されているような一般建築物用のシステムでは、このように様々な形状の定型耐火物をハンドリングすることが困難であることに加え、それぞれの定型耐火物を、その形状に応じた適切な位置に積み上げることもできない。
【0008】
また、コークス炉においては、一般的な建築物に比べて、非常に高い寸法精度が求められる。そのため、コークス炉の築炉時に積み上げる定型耐火物の位置については、許容誤差が数mm単位で厳密に定められており、これを満たすように精度良く定型耐火物を積み上げる必要がある。しかし、実際に使用される定型耐火物は、数mm程度の寸法のばらつきを有しているため、これを単純に積み上げても要求される精度を満たすことはできない。手積みの場合には、このような定型耐火物寸法のばらつきを考慮した上で、最終的なコークス炉の寸法精度が得られるように調整を行いつつ定型耐火物を積み上げていたが、特許文献1に記載されているようなシステムは、そのような微妙な調整を行うことはできない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、様々な形状の定型耐火物が混在した状態で用いられるコークス炉の築炉において、それらの定型耐火物を、人手によらず、精度良く積み上げることができるコークス炉定型耐火物積みシステムおよびコークス炉定型耐火物積み方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)少なくとも一つの定型耐火物積み部と、
前記定型耐火物積み部へ定型耐火物を供給するための、少なくとも一つの定型耐火物供給部と、
を有し、
前記定型耐火物積み部が、
前記定型耐火物供給部から供給された定型耐火物を搬送するコンベアと、
前記コンベア上に配置された定型耐火物の、少なくとも形状、寸法、および位置を測定する測定手段と、
前記定型耐火物を積み上げる定型耐火物積み用ロボットと、
前記測定手段で測定された結果に基づいて前記定型耐火物積み用ロボットを制御する制御手段と、
前記定型耐火物にモルタルを塗布するモルタル塗布手段と、を有し、
前記定型耐火物供給部が、
定型耐火物貯留手段と、
前記定型耐火物貯留手段に貯留されている定型耐火物を前記定型耐火物積み部の前記コンベア上へ移載する移載手段と、を有する、コークス炉定型耐火物積みシステム。
【0011】
(2)前記コンベアが、該コンベアの搬送面に、定型耐火物底面の凸部を避けて該定型耐火物を支持する定型耐火物支持部を有する、前記(1)に記載のコークス炉定型耐火物積みシステム。
【0012】
(3)前記測定手段が、前記コンベア上に配置された定型耐火物の上面形状を測定する撮像素子と、距離センサとを備える、前記(1)または(2)に記載のコークス炉定型耐火物積みシステム。
【0013】
(4)前記定型耐火物積み用ロボットが、複数の挟持部材で前記定型耐火物を挟持する挟持部を備え、
前記挟持部材の少なくとも1つは、該挟持部材の前記定型耐火物と当接する当接面の角度が可変であり、
前記挟持部材の少なくとも1つは、該挟持部材の前記定型耐火物と当接する当接面と平行な方向における位置を変更可能であり、
前記挟持部材の前記角度と前記位置が、前記制御手段によって制御される、前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のコークス炉定型耐火物積みシステム。
【0014】
(5)前記制御手段が、前記測定手段で測定された定型耐火物の形状および寸法に基づいて、定型耐火物を積み上げる位置を補正する、前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のコークス炉定型耐火物積みシステム。
【0015】
(6)前記モルタル塗布手段が、
前記モルタルを移送するポンプと、
前記ポンプに接続された配管と、
前記配管に接続され、前記モルタルを帯状に塗布するノズルと、
前記ノズルが取り付けられた塗布用ロボットを備える、前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載のコークス炉定型耐火物積みシステム。
【0016】
(7)前記定型耐火物積み部を複数有する、前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載のコークス炉定型耐火物積みシステム。
【0017】
(8)前記(1)〜(7)のいずれか一項に記載のコークス炉定型耐火物積みシステムを用いて行うことを特徴とするコークス炉定型耐火物積み方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコークス炉レンガ積みシステムおよびコークス炉レンガ積み方法によれば、様々な形状のレンガが混在した状態で用いられるコークス炉の築炉において、それらのレンガを、人手によらず、精度良く積み上げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施する方法について具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な一実施態様を示すものであり、本発明は、以下の説明によって何ら限定されるものではない。
【0021】
本発明のコークス炉定型耐火物積みシステムは、少なくとも一つの定型耐火物積み部と、前記定型耐火物積み部へ定型耐火物を供給するための、少なくとも一つの定型耐火物供給部とを有している。
【0022】
<<定型耐火物積み部>>
まず、本発明のコークス炉定型耐火物積みシステムにおける定型耐火物積み部について説明する。定型耐火物積み部は、定型耐火物を積み上げて、コークス炉を直接建設するまたはコークス炉の建設に使用されるブロックを作製するためのものである。そして、前記定型耐火物積み部は、後述する定型耐火物供給部から供給された定型耐火物を搬送するコンベアと、前記コンベア上に配置された定型耐火物の、少なくとも形状、寸法、および位置を測定する測定手段と、前記定型耐火物を積み上げる定型耐火物積み用ロボットと、前記測定手段で測定された結果に基づいて前記定型耐火物積み用ロボットを制御する制御手段と、前記定型耐火物にモルタルを塗布するモルタル塗布手段とを有している。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態における定型耐火物積み部10を側面からみた概略図である。定型耐火物積み部10は、定型耐火物11を搬送するコンベア20、定型耐火物11の形状、寸法、および位置を測定する測定手段30、ならびに定型耐火物11を積み上げる定型耐火物積みロボット40を備えている。前記定型耐火物の形状、寸法、および位置を、以下、定型耐火物の形状等と記す。
【0024】
定型耐火物積みロボット40は、コンベア20によって搬送されてきた定型耐火物11を持ち上げて移動させ、積み架台12に定型耐火物11を積み上げる。その際の定型耐火物積みロボット
40の動作は、測定手段30で測定された定型耐火物の形状等に基づいて、制御手段50により制御される。積み上げられた定型耐火物の表面には、モルタル塗布手段60によりモルタル13が塗布され、さらにその上に定型耐火物積みロボット
40により定型耐火物が積み上げられる。次に、この定型耐火物積み部10の各部の構成と動作について、詳細に説明する。
【0025】
<定型耐火物>
前記定型耐火物としては、特に限定されることなく、レンガやプレキャストブロック等、任意の定型耐火物を用いることができる。なかでも、手積みでコークス炉を建設する際に用いられる通常の定型耐火物を用いることが好ましい。
【0026】
<積み場所>
積み場所としては、任意の場所を利用できる。例えば、コークス炉を建設する位置を積み場所として、直接コークス炉の築炉を行うこともできる。また、コークス炉の建設場所以外の場所において定型耐火物を積み上げて、コークス炉の築炉に使用されるブロックを製造することもできる。その場合、定型耐火物を積み上げて所定のサイズのブロックを作製した後、得られたブロックをコークス炉建設場所へ運搬し、該ブロックを積み上げてコークス炉を建設することができる。
【0027】
図1に示した実施形態においては、前記積み場所として可動式の積み架台12を使用し、積み架台12上へ定型耐火物を積み上げてブロックを作製する。積み架台12は、レール
14上に設置されており、レール
14上を走行可能となっている。積み架台12は、定型耐火物の積み上げに先立って、定型耐火物の積み上げを行う位置に移動され、固定される。積み架台12の、レール
14上への設置には、天井クレーンや重機などを使用することができる。
【0028】
<コンベア>
築炉に使用される定型耐火物11は、コンベア20によって、定型耐火物積みロボット
40のそばまで搬送される。前記コンベアとしては、ベルトコンベアなど、任意のコンベアを使用することができる。
【0029】
ただし、コークス炉に使用される定型耐火物の中には、定型耐火物の上下面にダボと呼ばれる凹凸を有するものがある。このダボは、定型耐火物の下面に設けられた凸部と、定型耐火物の上面に設けられた凹部からなり、定型耐火物を積み上げた際にそれらの凸部と凹部がかみ合うことにより、定型耐火物同士を強固に固定する作用を有している。しかし、このようなダボを有する定型耐火物を使用した場合、その下面にある凸部のために、通常のコンベアでは安定して定型耐火物を搬送することが難しい。そこで、定型耐火物底面の凸部を避けて該定型耐火物を支持する定型耐火物支持部21を搬送面に有するコンベアを用いることが好ましい。前記定型耐火物支持部の形状は特に限定されず、底面の凸部を避けて定型耐火物を支持することができるものであればよい。その一例としては、
図2に示すような2つの支持台22からなる定型耐火物支持部が挙げられる。支持台22は、コンベア20の搬送面上に、搬送方向に延びるように設けられており、定型耐火物11は支持台22の上に載せられた状態で搬送される。支持台22の高さを、定型耐火物11底面の凸部よりも大きくすることにより、定型耐火物を安定して搬送することが可能となる。なお、本発明のコークス炉定型耐火物積みシステムにおいては、定型耐火物を搬送するためのすべてのコンベアに、上述した形状の支持台を設けることが好ましい。
【0030】
<測定手段>
コンベア20によって搬送された定型耐火物11は、その後、定型耐火物積みロボット40によって所定の位置に積み上げられるが、本発明においては、定型耐火物積みロボット40による積み上げに先だって、測定手段30による定型耐火物の形状等の測定を行うことが重要である。先にも述べたように、コークス炉には、上面から見た形状が、長方形、台形、L型など、様々な形状の定型耐火物が使用される。そこで、定型耐火物の形状や寸法をあらかじめ測定し、その情報に基づいて定型耐火物積みロボット40を制御することにより、形状に応じた適切な位置に定型耐火物を自動的に積み上げることが可能となる。また、定型耐火物の寸法にはいくらかのばらつきがあるが、測定された定型耐火物の寸法の情報に基づいて、定型耐火物を積み上げる位置を補正することも可能となる。
【0031】
定型耐火物の形状等の測定に用いる装置は特に限定されず、少なくとも定型耐火物の形状、寸法、および位置を測定することのできるものであれば、任意の装置を利用できる。前記測定は、単一の装置で行ってもよいし、同一の種類または異なる種類の装置を複数組み合わせたものを用いてもよい。
【0032】
図1に示した実施形態においては、測定手段30がコンベアの上方に設置された撮像素子31と距離センサ32を備えている。撮像素子31としては、CCDカメラなど、任意のイメージセンサを使用することができる。撮像素子31により、コンベア上の定型耐火物11の画像データを取得し、該画像データを処理することによって定型耐火物11の上面から見た形状と、寸法、位置等を検出することが出来る。定型耐火物11の上面形状は、画像データを処理することにより、輪郭として検出してもよい。定型耐火物の位置に関する情報は、例えば、撮像素子31が設置されている位置の情報に基づいて画像データを解析することにより得ることができる。また、撮像素子31で得た画像データに基づいて、定型耐火物の傾きを測定し、得られた傾きの情報を後述するロボット等の制御に利用することもできる。例えば、
図1に示したように撮像素子31がコンベアの上方に設置されている場合は、得られた画像から、定型耐火物11の、上方から見た傾き(水平面内における傾き)を検出することができる。
【0033】
また、距離センサ32としては、レーザー変位計をはじめとする、任意の距離センサを用いることが出来る。
図1に示したように、コンベアの上方に設置された距離センサ32を用いて、定型耐火物11の上面までの距離を測定する。測定された距離と、コンベアの搬送面または支持台22の上面までの距離との差をとることにより、定型耐火物11の高さを求めることができる。また、距離センサ32による測定結果から、水平面に対する定型耐火物11の傾きを算出することもできる。傾きの算出は、複数の距離センサの測定結果を用いて行ってもよく、単一の距離センサを移動させて複数の地点で測定した結果を用いて行ってもよい。なお、
図1に示した実施形態においては、測定手段30がコンベアの上方に、定型耐火物11の上面に対向するよう設置されているが、例えば、定型耐火物11の側面に対向する位置や、斜め上方など、他の位置に設置することもできる。また、異なる位置に設置された複数の測定手段を併用することもできる。
【0034】
以上のようにして測定手段で得られた定型耐火物の形状等に関する情報は、制御手段50に送られ、定型耐火物積みロボット40の制御に使用される。例えば、制御手段50は、測定手段30によって得た情報に基づいて、後述する定型耐火物積みロボット40の挟持部による最適な把持パターンを決定することができる。また、撮像素子31および距離センサ32によって得られた情報をもとに定型耐火物の重心点や傾き角を算出し、それらを元に制御手段50による制御を行うこともできる。
【0035】
なお、測定手段による測定は、定型耐火物が定型耐火物積みロボットにより移送される前であれば、どのタイミングで行ってもよいが、
図1に示したように、コンベア上に定型耐火物11が存在する時に行うことが、効率の観点からは好ましい。その場合、測定を行う位置に定型耐火物が到達したタイミングでコンベアを停止させて定型耐火物が停止した状態で測定を行い、測定終了後、定型耐火物積みロボットにより該定型耐火物をコンベア上から取り除いた後、コンベアによる搬送を再開することが好ましい。なお、下面に凸部を有しない定型耐火物のみを用いる場合や、凸部の存在が妨げとならない場合には、定型耐火物をコンベアから、該コンベアの末端に接続されたテーブル等へ載せ替えた後に測定を行うこともできる。
【0036】
なお、本実施形態では、コンベア20の上方に設置された測定手段30を利用して測定を行っているが、定型耐火物積みロボット40のアームに撮像素子や距離センサを搭載し、それらを測定手段として使用することもできる。定型耐火物積みロボット40のアームに搭載された測定手段を使用する場合、1つの地点において測定を行ってもよく、アームを動かして複数の地点で測定を行ってもよい。また、コンベア20の上方に設置された測定手段30と、ロボット40のアームに搭載された測定手段とを併用することもできる。
【0037】
<定型耐火物積みロボット>
測定手段による測定の後、定型耐火物11は定型耐火物積みロボット40により移送され、積み架台12上の適切な位置に積み上げられる。定型耐火物積みロボットとして使用されるロボットの種類は特に限定されず、目的とするコークス炉の定型耐火物積みに必要な可搬質量、可動範囲、および精度を有するロボットであれば使用できる。前記定型耐火物積みロボットとしては、産業用ロボットの一種であるアーム型ロボットを用いることが好ましく、垂直多関節型ロボットを用いることがより好ましい。
図1に示した実施態様においては、垂直多関節型ロボットを定型耐火物積みロボット40として用いている。定型耐火物積みロボット40は、レール
14と平行に敷設されたレール49上に設置されており、コンベア20の長手方向および積み架台12の長手方向と平行に移動可能である。
【0038】
定型耐火物積みロボット40のアームの先端には、定型耐火物11を保持するための保持部が設けられている。前記保持部の機構はとくに限定されず、定型耐火物の保持と開放を適切に行えるものであれば任意の機構を用いることができる。その一例としては、平行開平型ハンド、支点開平型ハンド、真空吸着型ハンドなどが挙げられる。
【0039】
図1に示した実施態様においては、保持部として、複数の挟持部材で前記定型耐火物を挟持する挟持部41を設けている。挟持部42の構造を
図3に示す。ここで用いられる挟持部41は、平行開平型ハンド(平行ハンド)と呼ばれるタイプの保持機構を、本発明の目的に合わせて改良したものである。図中、42aおよび42bは、定型耐火物を挟み込んで保持するための挟持部材である。挟持部材の形状は特に限定されないが、
図3に示したように定型耐火物と接触する面が平面であれば、接触面積が増し、その結果、定型耐火物を安定して保持できるため好ましい。また、挟持部材42aおよび42bの定型耐火物と接触する部分には、保持力を向上させるための滑り止め部材43aおよび43bを設けることが好ましい。前記滑り止め部材としては、例えば、一般的なゴムのような熱硬化性エラストマー、シリコーンゴムなどの熱可塑性エラストマー、およびその他の樹脂などを用いることができる。
図3に示した実施態様においては、挟持部材42aおよび42bの定型耐火物と接触する面に、滑り止め部材43aおよび43bとして板状のゴムを設けている。また、ゴム等の弾性材料からなる滑り止め部材を設けることにより、定型耐火物の破損を防止することもできる。
【0040】
挟持部材42aおよび42bは、開閉することにより定型耐火物を保持または開放するように構成される。ここで、本実施形態においては、2つの挟持部材が、互いに近づく方向または互いに離れる方向に、直線的に動くことにより開閉する。前記挟持部材の開閉は、2つの挟持部材をともに動かすことによって行ってもよいし、一方のみを動かして行ってもよい。
図3に示した挟持部の例では、エアシリンダ44を用いて、挟持部材
42aを矢印
Bの方向に移動させることにより、挟持部材の開閉を行うことができる。
【0041】
さらに、挟持部材の少なくとも1つは、該挟持部材の定型耐火物と当接する当接面の角度を可変とすることが好ましい。これにより、定型耐火物の側面が傾斜している(対向する側面と平行ではない)場合であっても、該定型耐火物の側面の傾斜に合わせて挟持部材が回転することで、安定して定型耐火物を保持することができる。前記挟持部材の回転方法は特に限定されず、挟持部材を一定の角度範囲内で自由に回転できるように回転自在に設けておき、定型耐火物を挟持する際に、該定型耐火物側面の傾斜に倣うように回転するようにすることもできる。また、モーター等の駆動装置を用いて挟持板を任意の角度に回転させるようにすることもできる。
【0042】
図3に示した挟持部の例では、挟持部材42aは、サーボモーター45に接続された回転軸46に固定されており、矢印
Aで示す方向に回転可能である。サーボモーター45は、後述する制御手段からの信号により駆動され、定型耐火物の形状に合わせて挟持部材42aの角度を調整する。なお、上記の例では、 一方の挟持部材を開閉可能かつ回転可能としたが、一方の挟持部材を開閉可能とするとともに他方の挟持部材を回転可能とすることもできる。また、両方の挟持部材を開閉可能かつ回転可能としてもよい。
【0043】
さらに、挟持部材の少なくとも1つは、該挟持部材の前記定型耐火物と当接する当接面と平行な方向における位置を変更可能とすることが好ましい。これにより、上面から見た形状がL型など特殊な形状の定型耐火物であっても、その形状に合わせた位置に挟持部材を平行移動させ、安定に定型耐火物を保持することができる。前記平行移動の方法は特に限定されず、任意の駆動装置を使用することが出来る。
図3に示した挟持部の例では、挟持部材42bを矢印Cの方向に移動させるためのボールネジ47およびモーター48が設けられている。前記モーターとしては、ステッピングモーターやサーボモーターを使用することができ、該モーターは、後述する制御手段からの信号により駆動される。
【0044】
<制御手段>
上記定型耐火物積みロボット40と、その保持部(挟持部)の動作は、制御手段50によって制御される。本実施形態においては、コンベア20で搬送されてきた定型耐火物11の形状等を測定手段30で測定した後、定型耐火物積みロボット40の挟持部41で該定型耐火物11を挟持する。その際、挟持部材42a、42bの角度と位置は、定型耐火物11の形状等に応じて制御手段50により調整される。そして、測定手段30で測定された定型耐火物の位置に基づいて定型耐火物積みロボット40のアームを駆動し、挟持部41によって定型耐火物を挟持する。
【0045】
挟持された定型耐火物は、定型耐火物積みロボット40により持ち上げて移動され、積み架台12の所定位置に積まれる。この時、定型耐火物を積む位置は、測定手段30で測定された定型耐火物の形状に基づいて、制御手段により決定される。どの形状の定型耐火物をどの位置に積むかという情報は、あらかじめ制御手段
50または制御手段に接続された記憶装置に格納しておくことが好ましい。また、実際に定型耐火物を積む位置は、測定手段30によって測定された個々の定型耐火物の形状および寸法に基づいて補正される。これにより、定型耐火物の形状や寸法の誤差の影響を受けずに、定型耐火物を精度良く積み上げることができる。
【0046】
<モルタル塗布手段>
定型耐火物11を積む位置には、該定型耐火物を接合するためのモルタル13がモルタル塗布手段60により塗布される。
図1に示した実施形態においては、モルタル塗布手段60は、モルタル13を移送するポンプ61と、ポンプ61に接続された配管62と、配管62に接続され、前記モルタルを帯状に塗布するノズル63と、ノズル63が取り付けられた塗布用ロボット64を備えている。ノズル63は、ディスペンサ65を介して配管62と接続されており、ノズル63とディスペンサ65との接続部分には、ディスペンサ65の中心軸を中心としてノズル63を回転させる回転手段(図示されない)が設けられており、モルタルを塗布する面の向きに合わせてノズル63を回転させることができる。ノズル63の形状は特に限定されず、任意のノズルを用いることができる。広い面積に均一な厚みで塗布を行うという観点からは、平ノズルを用いることが好ましい。
【0047】
塗布用ロボット64としては、定型耐火物積みロボット40と同様に、産業用ロボットの一種であるアーム型ロボットを用いることが好ましく、垂直多関節型ロボットを用いることがより好ましい。塗布用ロボット64は、レール14と平行に敷設されたレール66上に設置されており、積み架台12の長手方向と平行に移動可能である。
【0048】
モルタルの塗布を行う手順や、その際のモルタル塗布手段の動作は特に限定されず、積み上げる定型耐火物同士を接合するために必要な位置に、必要な量のモルタルを塗布できる態様であれば、任意の方法を採用することができる。一例としては、定型耐火物積みロボット40によって1つの定型耐火物を積む毎に、それに先だって、その定型耐火物を積む位置にモルタルを塗布することができる。前記定型耐火物を積む位置とは、積もうとする定型耐火物の下面が接触する部位、すなわち、下の段に既に積まれている定型耐火物の上面を少なくとも含む位置である。積もうとする定型耐火物の側面が接する位置に、既に定型耐火物が積まれている場合には、その定型耐火物の側面のうち、前記積もうとする定型耐火物と接する面にもモルタルを塗布しておくことが好ましい。そのため、塗布用ロボット64のノズル63は、塗布用ロボット64の関節の可動および/またはノズル63の回転により、下方向以外だけでなく横方向など、任意の方向へ向けてモルタルを塗布することができるように構成されていることが好ましい。また、上記のように定型耐火物1つ分に対応する場所毎に逐次モルタルを塗布する以外に、2個またはそれ以上、場合によっては1段分など、複数の定型耐火物を積む位置にまとめてモルタルを塗布してもよい。なお、積み架台12の上に1段目の定型耐火物を積む際には、あらかじめモルタルを塗布しなくてもよい。
【0049】
モルタル塗布手段60は、別途設けた制御手段によって制御することもできるが、
図1に示したように、定型耐火物積みロボット40の制御を行う制御手段50によって行うことが好ましい。これにより、定型耐火物積みロボット40とモルタル塗布手段60の動作を連動させ、効率的に定型耐火物積みを行うことができる。モルタルの塗布を行う位置は、予め制御手段に記憶させておくこともできるし、既に積まれた定型耐火物の情報などに基づいて、制御手段により決定することもできる。あらかじめ定められた位置にモルタルを塗布する場合にも、既に積まれた定型耐火物の形状等についての情報に基づき、塗布位置の補正を行うことが好ましい。
【0050】
以上の手順を繰り返し行うことにより、定型耐火物が積み上げられる。コークス炉建設現場とは別の場所において、コークス炉の築炉に用いるブロックを作製する場合には、完成したブロックは別の場所へ運搬される。前記ブロックの運搬方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができるが、
図1に示した実施形態のように、レール14上に設置された積み架台12の上に定型耐火物を積み上げる場合には、積み架台12をレール14上で走行させて搬出を行うことが好ましい。搬出されたブロックは、直接コークス炉建設場所へ運搬することもできるし、一時的な保管場所へ運搬した後、コークス炉建設の進行状況に応じて前記保管場所からコークス炉建設現場へ運搬することもできる。そして、ブロックが搬出された後の定型耐火物積み部10には、定型耐火物が積まれていない空の積み架台12を再度設置し、新たなブロックの作製を行うことができる。
【0051】
また、本発明のコークス炉定型耐火物積みシステムを用いて、ブロックの作製ではなく、コークス炉建設場所での定型耐火物積み上げ作業を直接行う場合には、一つの場所で定型耐火物の積み上げを行った後、必要に応じてコークス炉定型耐火物積みシステムの全体または一部を移動させ、異なる位置に定型耐火物を積み上げることができる。これを繰り返すことによりコークス炉の築炉が行われる。
【0052】
なお、
図1に示した定型耐火物積み部10は、コンベア10、測定手段
30、定型耐火物積みロボット40、制御手段50、およびモルタル塗布手段60を1つずつ備えているが、それらの数は、それぞれ独立に2以上とすることもできる。
【0053】
<<定型耐火物供給部>>
次に、本発明のコークス炉定型耐火物積みシステムにおける定型耐火物について説明する。定型耐火物供給部は、上述した定型耐火物積み部へ定型耐火物を供給するためのものであり、定型耐火物貯留手段と、前記定型耐火物貯留手段に貯留されている定型耐火物を定型耐火物積み部のコンベア上へ移載する移載手段とを有している。
【0054】
コークス炉の築炉には、様々な形状の定型耐火物を大量に使用する。そのため、使用する定型耐火物を前記定型耐火物貯留手段に一時的に貯留しておき、該定型耐火物貯留手段から、前記移載手段を用いて、必要な種類の定型耐火物を、前記定型耐火物積み部のコンベアへ受け渡すことにより、定型耐火物の供給を自動化し、効率的に定型耐火物の積み上げを行うことができる。
【0055】
前記定型耐火物貯留手段の形態は特に限定されることなく、任意の形態とできる。例えば、床面に直接定型耐火物を並べておき、後述する移載装置によって必要な定型耐火物を持ち上げて搬送しても良いが、作業性の面からは、棚などの貯留手段の上または内部に定型耐火物を貯留しておくことが好ましい。また、前記定型耐火物貯留手段は、定型耐火物を前記移載手段へ送り出すための、送り出し手段を備えていることがより好ましい。
【0056】
そして、前記移載手段は、前記定型耐火物貯留手段から取得した定型耐火物を、前記定型耐火物積み部のコンベアへ受け渡すためのものであり、定型耐火物を移載できるものであれば、その形態は限定されず、任意のものとすることができる。例えば、前記定型耐火物貯留手段と前記コンベアとが近接している場合には、水平多関節型ロボット、垂直多関節型ロボット等のアーム型ロボットを前記移載手段として用いることができる。また、前記定型耐火物貯留手段と前記コンベアとの間に設けた移載用コンベアを前記移載手段として用いることができる。なお、前記移載手段は、自走可能であることが好ましく、例えば、自走可能な台車上に移載用コンベアを設けたものとすることがより好ましい。移送手段が自走可能であれば、定型耐火物貯留手段が大きい場合でも、様々な位置から定型耐火物を取得することができる。また、1つの定型耐火物供給部に対して、複数の定型耐火物積み部が設けられているような場合においても、移載手段が自走可能であれば、1つの移載手段で前記複数の定型耐火物積み部に対して定型耐火物を供給することができる。
【0057】
図4は、本発明の一実施形態におけるコークス炉定型耐火物積みシステムの概略図であり、該コークス炉定型耐火物積みシステムを使用して、コークス炉の築炉に使用されるブロックを作製する場合を示している。また、
図5は、同実施形態におけるコークス炉定型耐火物積みシステムを側面から見た概略図である。以下、
図4および5を参照して、本実施形態における前記定型耐火物供給部の構成と動作について説明する。
【0058】
本実施形態におけるコークス炉定型耐火物積みシステム1は、定型耐火物積み部10と、定型耐火物供給部100とを有している。そして、定型耐火物供給部100は、定型耐火物貯留手段としての貯留棚110と、移載手段としてのピッキング装置120とを備えている。
【0059】
<定型耐火物貯留手段>
定型耐火物貯留手段としての貯留棚110には、コークス炉に用いられる様々な形状の定型耐火物11が、その種類ごとに区分された状態で貯留されている。貯留棚110にはコンベア111が備えられており、投入口112より投入された定型耐火物11は、コンベア111によって排出口113方向へ搬送される。貯留棚110の排出口側には、貯留されている定型耐火物11を1個ずつ移載手段へ送り出すための送り出し用コンベア114が設けられており、排出口113には昇降自在のストッパ115が備えられている。コンベア111および送り出し用コンベア114の搬送面には、
図2に示したコンベア20と同様に、定型耐火物底面の凸部を避けて該定型耐火物を支持するための定型耐火物支持部(図示されない)が設けられている。
【0060】
<移載手段>
前記移載手段としてのピッキング装置120は、可動式台車121と、可動式台車121上に設置された、不定形耐火物を搬送するためのピッキング用コンベア122とを有しており、さらに可動式台車121は、レール123上に設置されている。ピッキング用コンベア122の搬送面には、
図2に示したコンベア20と同様に、定型耐火物底面の凸部を避けて該定型耐火物を支持するための定型耐火物支持部(図示されない)が設けられている。
【0061】
図4、5に示したように、コンベア20、コンベア111、送り出し用コンベア114、およびピッキング用コンベア122は、積み架台12の長手方向と平行に設置することが好ましい。また、レール123は、コンベア20、コンベア111の搬送方向に対して垂直方向に敷設することが好ましい。このようにレール123を敷設すれば、貯留棚110が多数のコンベア111と、コンベア111のそれぞれに対応する排出口113を有している場合でも、ピッキング装置120をレール123上で移動させることにより、1台のピッキング装置で定型耐火物を移載することができる。同様に、定型耐火物積み部10が複数設けられている場合であっても、ピッキング装置120をレール123上で移動させることにより、1台のピッキング装置で、複数の定型耐火物積み部へ定型耐火物を移載することができる。なお、ピッキング装置(移載装置)は、1台であってもよいが、2台以上とすることもできる。
【0062】
<制御手段>
定型耐火物供給部100は、図示されない制御手段を備えている。前記制御手段は、適切なタイミングで、適切な種類の定型耐火物を定型耐火物積み部10へ供給するように、定型耐火物貯留手段としての貯留棚110、および移送手段としてのピッキング装置120の動作を制御する。前記制御手段は、定型耐火物積み部10の制御手段50を兼ねていてもよい。
【0063】
次に、本実施形態における、定型耐火物供給部100の動作の一例を説明する。
貯留棚110に貯留されている定型耐火物11は、コンベア111によって排出口113へ向けて搬送され、送り出し用コンベア114の上まで到達する。次いで、ストッパ115を上昇させて排出口113を開け、送り出し用コンベア114を駆動して、定型耐火物11を送り出す。この時、予めピッキング装置120を、定型耐火物11が貯留されている位置へ移動させておく。そして、送り出し用コンベア114と同時に、ピッキング装置120のピッキング用コンベア122を動作させ、定型耐火物11を送り出し用コンベア114からピッキング用コンベア122上へ移動させる。
【0064】
定型耐火物11を1つ送り出した後は、ストッパ115を下降させて、後続の定型耐火物が排出口113から排出されることを防止する。この際、ストッパ115の直前に光電センサを設け、該光電センサで定型耐火物が検出されると送り出し用コンベア114の動作を停止するようにしてもよい。定型耐火物11を受け取ったピッキング装置120は、次いで、コンベア20の前まで移動し、ピッキング用コンベア122を再度動作させてコンベア20上へ定型耐火物を移載する。
【0065】
コンベア20上へ移載された定型耐火物11は、定型耐火物積み部10の説明において記したように、定型耐火物積みロボット40によって積み架台12上へ積み上げられる。本実施形態においては、定型耐火物積みロボット40と塗布用ロボット64が、それぞれレール49とレール66上に設置されており、レール49とレール66とが、積み架台12の長手方向と平行に敷設されているため、これらのロボットをレール上で移動させることにより、長さの長いブロックを容易に製作することができる。