(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
油圧供給元から潤滑油が入力される入力ポートと、前記入力ポートに入力された潤滑油を複数の潤滑油供給先にそれぞれ出力する複数の出力ポートとを有するロータリー弁本体と、回転駆動されることにより前記入力ポートと前記複数の出力ポートとを選択的に連通させる弁体とを有するロータリー弁を備えたロータリー弁付き自動変速機であって、
前記ロータリー弁本体に、前記入力ポート及び前記複数の出力ポートが前記弁体に対向する対向面から溝状に窪んで形成されると共に、前記複数の出力ポートにそれぞれ連通されると共に前記弁体の周方向に延在し、且つ前記弁体の径方向に離間して配置される複数の開口部が前記弁体に対向する対向面から溝状に窪んで形成され、
前記弁体に、該弁体が回転駆動されることにより前記ロータリー弁本体の前記開口部を介して前記入力ポートと前記複数の出力ポートとを選択的に連通させて複数の潤滑油供給先への潤滑油の供給を制御する連通部が前記ロータリー弁本体に対向する対向面から溝状に窪んで形成されている、
ことを特徴とするロータリー弁付き自動変速機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動変速機ではまた、オイルポンプによって生成した油圧を、摩擦締結要素の締結制御のために摩擦締結要素に供給するとともに、摩擦締結要素の摩擦板間に生じる摩擦熱の冷却、変速機構の軸受部の焼付き防止及びギヤ噛合部の潤滑などのために摩擦締結要素の摩擦板、軸受部及びギヤ噛合部などの各潤滑箇所に供給するように構成されている。
【0006】
このように構成された自動変速機では、摩擦締結要素の摩擦板、軸受部及びギヤ噛合部などの各潤滑箇所に供給する潤滑油として、オイルポンプの吐出圧を摩擦締結要素に供給するライン圧に調整するための油圧調整弁などから排出される作動油を用いるようにしたものが知られている。
【0007】
しかしながら、各潤滑箇所に供給する潤滑油は、車両の運転状態などに応じて潤滑箇所ごとに必要な供給量が異なることから、潤滑箇所に必要以上に潤滑油を供給することによる駆動損失等を抑制するために、潤滑箇所ごとに必要な量の潤滑油を供給することが求められている。
【0008】
これに対し、潤滑箇所である潤滑油供給先ごとに専用の油圧制御弁を用いて潤滑油の供給量を制御することが考えられるが、潤滑油供給先ごとに専用の油圧制御弁を用いることはコストがかかることから、潤滑油供給先ごとに専用の油圧制御弁を用いることなく、潤滑油の供給量を潤滑油供給先ごとに可変制御することが望まれる。
【0009】
そこで、本発明は、自動変速機において、潤滑油供給先ごとに専用の油圧制御弁を用いることなく、複数の潤滑油供給先に供給する潤滑油の供給量を潤滑油供給先ごとに可変制御することができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0011】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、油圧供給元から潤滑油が入力される入力ポートと、前記入力ポートに入力された潤滑油を複数の潤滑油供給先にそれぞれ出力する複数の出力ポートとを有するロータリー弁本体と、回転駆動されることにより前記入力ポートと前記複数の出力ポートとを選択的に連通させる弁体とを有するロータリー弁を備えたロータリー弁付き自動変速機であって、前記ロータリー弁本体に、
前記入力ポート及び前記複数の出力ポートが前記弁体に対向する対向面から溝状に窪んで形成されると共に、前記複数の出力ポートにそれぞれ連通されると共に前記弁体の周方向に延在し、且つ前記弁体の径方向に離間して配置される複数の開口部が
前記弁体に対向する対向面から溝状に窪んで形成され、前記弁体に、該弁体が回転駆動されることにより前記ロータリー弁本体の前記開口部を介して前記入力ポートと前記複数の出力ポートとを選択的に連通させて複数の潤滑油供給先への潤滑油の供給を制御する連通部が
前記ロータリー弁本体に対向する対向面から溝状に窪んで形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のロータリー弁付き自動変速機において、前記ロータリー弁本体と前記弁体との間にセパレート部材が設けられ、前記セパレート部材に、前記複数の出力ポートにそれぞれ連通されると共に前記弁体の周方向に延在し、且つ前記弁体の径方向に離間して配置される複数の開口部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載のロータリー弁付き自動変速機において、前記弁体の連通部は、前記弁体の径方向外側に向かって拡がる略扇形状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載のロータリー弁付き自動変速機において、複数の摩擦締結要素を有する変速機構を備え、前記ロータリー弁本体の複数の開口部のうち最も前記弁体の径方向外側の開口部に連通する前記出力ポートから潤滑油が出力される前記潤滑油供給先は、発進時に締結される前記摩擦締結要素を含むことを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4の何れか1項に記載のロータリー弁付き自動変速機において、前記ロータリー弁本体の複数の開口部の少なくとも一部は、前記弁体の周方向にオーバーラップして形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項1から請求項5の何れか1項に記載のロータリー弁付き自動変速機において、前記弁体を回転駆動するアクチュエータを備え、前記アクチュエータと前記弁体とは、ギヤ噛合部を介して連結されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項6に記載のロータリー弁付き自動変速機において、所定の油圧制御弁を備え、前記油圧制御弁は、スプールと、該スプールを付勢するスプリングと、前記スプリングの付勢力を調整して該油圧制御弁から出力する油圧を制御する付勢力調整機構とを備え、前記付勢力調整機構は、前記アクチュエータによって前記スプリングの付勢力を調整して前記油圧制御弁から出力する油圧を制御するように構成されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8に記載の発明は、前記請求項7に記載のロータリー弁付き自動変速機において、前記油圧制御弁は、前記ロータリー弁本体の前記入力ポートに入力する潤滑油の元圧を制御する弁であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9に記載の発明は、前記請求項6から請求項8の何れか1項に記載のロータリー弁付き自動変速機において、前記自動変速機の変速機構の出力部をロック状態又は非ロック状態に規制する規制機構を備え、前記規制機構は、前記アクチュエータによって前記変速機構の出力部をロック状態又は非ロック状態に規制するように構成されていることを特徴とする。
【0020】
また、請求項10に記載の発明は、
潤滑油が入力される入力ポートと、前記入力ポートに入力された
潤滑油をそれぞれ出力する複数の出力ポートとを有するロータリー弁本体と、回転駆動されることにより前記入力ポートと前記複数の出力ポートとを選択的に連通させる弁体とを有するロータリー弁であって、前記ロータリー弁本体に、
前記入力ポート及び前記複数の出力ポートが前記弁体に対向する対向面から溝状に窪んで形成されると共に、前記複数の出力ポートにそれぞれ連通されると共に前記弁体の周方向に延在し、且つ前記弁体の径方向に離間して配置される複数の開口部が
前記弁体に対向する対向面から溝状に窪んで形成され、前記弁体に、該弁体が回転駆動されることにより前記ロータリー弁本体の前記開口部を介して前記入力ポートと前記複数の出力ポートとを選択的に連通させて前記複数の出力ポートからの
潤滑油の出力を制御する連通部が
前記ロータリー弁本体に対向する対向面から溝状に窪んで形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記の構成により、本願の請求項1に記載の発明によれば、自動変速機に、油圧供給元から潤滑油が入力される入力ポートと複数の潤滑油供給先にそれぞれ出力する複数の出力ポートとを有するロータリー弁本体と、回転駆動されることにより入力ポートと複数の出力ポートとを選択的に連通させる弁体とを有するロータリー弁が備えられる。
【0022】
そして、ロータリー弁本体に、
入力ポート及び複数の出力ポートが弁体に対向する対向面から溝状に窪んで形成されると共に、複数の出力ポートにそれぞれ連通されると共に弁体の周方向に配置され、且つ弁体の径方向に離間して配置される複数の開口部が
弁体に対向する対向面から溝状に窪んで形成され、弁体に、該弁体が回転駆動されることによりロータリー弁本体の開口部を介して入力ポートと複数の出力ポートとを選択的に連通させて複数の潤滑油供給先への潤滑油の供給を制御する連通部が
ロータリー弁本体に対向する対向面から溝状に窪んで形成される。
【0023】
これにより、複数の潤滑油供給先ごとに専用の油圧制御弁を用いることなく、単一のロータリー弁を用いて、弁体の回転角度に応じて複数の潤滑油供給先に供給する潤滑油の供給量を潤滑油供給先ごとに可変制御することができる。例えば、発進時に締結される摩擦締結要素に発進時に潤滑油の供給量を多くして該摩擦締結要素を冷却したり、変速時に締結される摩擦締結要素に変速時に潤滑油の供給量を多くして該摩擦締結要素を冷却したりすることができる。
【0024】
また、請求項2に記載の発明によれば、ロータリー弁本体と弁体との間にセパレート部材が設けられ、セパレート部材に、複数の出力ポートにそれぞれ連通されると共に弁体の周方向に延在し、且つ弁体の径方向に離間して配置される複数の開口部が形成される。これにより、セパレート部材に形成される開口部によって、複数の潤滑油供給先に供給する潤滑油の供給制御を緻密に行うことができる。
【0025】
また、請求項3に記載の発明によれば、弁体の連通部は、弁体の径方向外側に向かって拡がる略扇形状に形成される。これにより、ロータリー弁本体に開口部が弁体の周方向に沿って延びるように形成される場合、弁体の径方向内側及び外側にそれぞれ配置される開口部に連通する出力ポートから同時に潤滑油を供給することができると共に、弁体の径方向外側に配置される開口部に連通する出力ポートから、弁体の径方向内側に配置される開口部に連通する出力ポートよりも多量の潤滑油を供給することができる。
【0026】
また、請求項4に記載の発明によれば、ロータリー弁本体の複数の開口部のうち最も弁体の径方向外側の開口部に連通する出力ポートから潤滑油が出力される潤滑油供給先は、発進時に締結される摩擦締結要素を含むことにより、ロータリー弁本体に開口部が弁体の周方向に沿って延びるように形成される場合、発進時に締結される摩擦締結要素に発進時に多量の潤滑油を供給して該摩擦締結要素の摩擦板間に生じる摩擦熱を冷却することが可能である。
【0027】
また、請求項5に記載の発明によれば、ロータリー弁本体の複数の開口部の少なくとも一部は、弁体の周方向にオーバーラップして形成されることにより、弁体に形成される1つの連通部を用いて複数の潤滑油供給先への潤滑油の供給量を可変制御することができ、前記効果を有効に奏することができる。
【0028】
また、請求項6に記載の発明によれば、弁体を回転駆動するアクチュエータが備えられ、アクチュエータと弁体とは、ギヤ噛合部を介して連結される。これにより、弁体からアクチュエータへの逆駆動を抑制するギヤ噛合部を用いることで、弁体を所定の回転角度に保持するときはアクチュエータに電力を供給することなく、弁体を回転駆動するときにのみアクチュエータに電力を供給することができるので、電力消費量を抑制しつつ、前記効果を有効に得ることができる。
【0029】
また、請求項7に記載の発明によれば、所定の油圧制御弁が備えられ、油圧制御弁は、スプールを付勢するスプリングと、スプリングの付勢力を調整して油圧を制御する付勢力調整機構とを備え、付勢力調整機構は、前記アクチュエータによってスプリングの付勢力を調整して油圧を制御するように構成される。これにより、単一のアクチュエータを用いて、ロータリー弁の弁体の回転制御と油圧制御弁の付勢力調整機構の駆動制御とを行うことができ、前記回転制御及び前記駆動制御のためにそれぞれアクチュエータを用いる場合に比して、部品点数や組立工程を削減することができると共に自動変速機の小型化を図ることができる。
【0030】
また、請求項8に記載の発明によれば、油圧制御弁は、ロータリー弁本体の入力ポートに入力する潤滑油の元圧を制御する弁であることにより、単一のアクチュエータを用いて、弁体の回転制御とロータリー弁本体の入力ポートに入力する潤滑油の元圧を制御する弁の付勢力調整機構の駆動制御とを行うことができ、前記効果を有効に得ることができる。
【0031】
また、請求項9に記載の発明によれば、変速機構の出力部をロック状態又は非ロック状態に規制する規制機構が備えられ、規制機構は、前記アクチュエータによって変速機構の出力部をロック状態又は非ロック状態に規制するように構成される。これにより、単一のアクチュエータを用いて、弁体の回転制御と変速機構の出力部をロック状態又は非ロック状態に規制する規制機構の駆動制御とを行うことができ、前記回転制御及び前記駆動制御のためにそれぞれアクチュエータを用いる場合に比して、部品点数や組立工程を削減することができると共に自動変速機の小型化を図ることができる。
【0032】
また、請求項10に記載の発明によれば、ロータリー弁は、
潤滑油が入力される入力ポートと
潤滑油をそれぞれ出力する複数の出力ポートとを有するロータリー弁本体と、回転駆動されることにより入力ポートと複数の出力ポートとを選択的に連通させる弁体とを有する。
【0033】
そして、ロータリー弁本体に、
入力ポート及び複数の出力ポートが弁体に対向する対向面から溝状に窪んで形成されると共に、複数の出力ポートにそれぞれ連通されると共に弁体の周方向に延在し、且つ弁体の径方向に離間して配置される複数の開口部が
弁体に対向する対向面から溝状に窪んで形成され、弁体に、該弁体が回転駆動されることによりロータリー弁本体の開口部を介して入力ポートと複数の出力ポートとを選択的に連通させて複数の出力ポートからの
潤滑油の出力を制御する連通部が
ロータリー弁本体に対向する対向面から溝状に窪んで形成される。
【0034】
これにより、複数の作動液体供給先ごとに専用の油圧制御弁を用いることなく、単一のロータリー弁によって、弁体の回転角度に応じて複数の作動液体供給先に供給する作動液体の供給量を作動液体供給先ごとに可変制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0037】
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動変速機の油圧制御回路の要部の構成を示す回路図であり、
図2は、自動変速機の制御システム図である。本発明の第1実施形態に係る自動変速機は、変速機ケース内に、例えばエンジンなどの駆動源に連結された入力部としての入力軸と、該入力軸の軸線上に配設された複数のプラネタリギヤセットとクラッチやブレーキなどの複数の摩擦締結要素とを有する変速機構と、該変速機構の出力部である出力ギヤとを有する。
【0038】
前記自動変速機では、複数の摩擦締結要素の締結状態を組み合わせることにより複数のプラネタリギヤセットを経由する動力伝達経路を切り換えて変速機構の変速比を変更して所定の変速段を得るように構成されている。例えば、4つのプラネタリギヤセットと5つの摩擦締結要素とを備え、これらの摩擦締結要素のうちの3つを選択的に締結することにより、運転者により操作されるシフトレバーのD(前進走行)レンジでの1〜8速と、R(後退走行)レンジでの後退速とが形成されるように構成されている。
【0039】
前記自動変速機では、P(駐車)レンジ及びN(中立)レンジにおいて複数の摩擦締結要素のうちの何れの摩擦締結要素も締結されないようになっているが、Nレンジにおいて、Dレンジの1速で締結される1つ又は2つの摩擦締結要素を締結することも可能である。
【0040】
また、前記自動変速機では、変速機構の出力ギヤと一体的に回転するようにパーキングギヤが設けられている。前記パーキングギヤは、揺動することにより爪部がパーキングギヤに係合してパーキングギヤをロック状態にするパーキングポールと、該パーキングポールをパーキングギヤに係合するように押圧するパーキングロッド52(
図1参照)とともに、変速機構の出力ギヤをロック状態にする第1状態と非ロック状態にする第2状態とに切り換えられるパーキング機構55を構成している。
【0041】
前記自動変速機は、
図1及び
図2に示すように、複数の摩擦締結要素に選択的に締結油圧を供給して所定の変速段を実現するための油圧制御回路100を有する。
図1に示す油圧制御回路100は、Pレンジの状態で示されている。
【0042】
油圧制御回路100は、
図2に示すように、複数の摩擦締結要素をそれぞれ締結するために複数の摩擦締結要素に供給する油圧を制御する変速用ソレノイドバルブ101、複数の摩擦締結要素の摩擦板、ギヤ噛合部及び軸受部などの前記自動変速機内の複数の潤滑油供給先へ供給する潤滑油の供給を制御するための潤滑用アクチュエータ102、及びパーキング機構55をロック状態の第1状態と非ロック状態の第2状態とに切り換えるパーキング切換弁103等を備えている。
【0043】
前記自動変速機にはまた、油圧制御回路100における変速用ソレノイドバルブ101、潤滑用アクチュエータ102及びパーキング切換弁103等の作動を制御するコントローラ200が備えられ、コントローラ200には、運転者の操作により選択されたシフトレバーのレンジを検出するレンジセンサ201からの信号、当該車両の車速を検出する車速センサ202からの信号、運転者のアクセルペダル操作量を検出するアクセルセンサ203からの信号等が入力されるようになっている。
【0044】
そして、コントローラ200は、入力される信号に基づいて、選択されたレンジや当該車両の運転状態に応じて油圧制御回路100における変速用ソレノイドバルブ101に制御信号を出力し、変速用ソレノイドバルブ101の開閉ないし開度を制御して複数の摩擦締結要素の締結制御を行い、所定の変速段を形成する。Pレンジ及びNレンジでは、複数の摩擦締結要素の何れの摩擦締結要素も締結しないように変速用ソレノイドバルブ101を制御する。
【0045】
コントローラ200はまた、入力される信号に基づいて、選択されたレンジや当該車両の運転状態に応じて油圧制御回路100における潤滑用アクチュエータ102に制御信号を出力し、前記自動変速機内の複数の潤滑油供給先へ供給する潤滑油の供給を制御する。
【0046】
前記自動変速機では、3つの潤滑油供給先11、12、13が設けられ、第1潤滑油供給先11として複数の摩擦締結要素、ギヤ噛合部及び軸受部などを含む潤滑油供給先が設定され、第2潤滑油供給先12として発進時に締結される摩擦締結要素が設定され、第3潤滑油供給先13として変速時に締結及び解放される摩擦締結要素が設定されている。
【0047】
発進時には、発進時に締結される摩擦締結要素に、第1潤滑油供給先11に供給される潤滑油に加えて第2潤滑油供給先12に供給される潤滑油が供給され、変速時には、変速時に締結及び解放される摩擦締結要素に、第1潤滑油供給先11に供給される潤滑油に加えて第3潤滑油供給先13に供給される潤滑油が供給される。
【0048】
また、コントローラ200は、入力される信号に基づいて、パーキング切換弁103に制御信号を出力し、Pレンジにあるときはパーキング機構55をロック状態の第1状態にし、Nレンジ、Dレンジ及びRレンジにあるときはパーキング機構55を非ロック状態の第2状態にするように制御する。なお、コントローラ200は、マイクロコンピュータを主要部として構成されている。
【0049】
図1に示すように、油圧制御回路100は、油圧を供給する油圧供給元としてのオイルポンプ121によって供給される油圧が、油路131を通じて所定の油圧回路20に供給されるようになっている。所定の油圧回路20は、変速用ソレノイドバルブ101を含み、複数の摩擦締結要素に選択的に締結油圧を供給して複数の摩擦締結要素の締結制御を行い、所定の変速段を形成するようになっている。
【0050】
オイルポンプ121によって供給される油圧はまた、油路132を通じてパーキング切換弁103に供給されるようになっている。パーキング切換弁103は、上流側の油路132と下流側の油路133とを開通または遮断し、開通したときにはオイルポンプ121によって供給される油圧を下流側の油路133に供給し、遮断したときには下流側の油路133の油圧を排圧するようになっている。
【0051】
パーキング切換弁103の下流側の油路133は、パーキングロッド52として機能するピストンを有する油圧シリンダ50に接続されており、油圧シリンダ50への油圧の給排がパーキング切換弁103によって切り換えられる。油圧シリンダ50は、シリンダ本体51と、シリンダ本体51に移動可能に取り付けられたパーキングロッド52と、パーキングロッド52をシリンダ本体51から突出する方向に付勢するスプリング53とを備えている。
【0052】
パーキングロッド52は、油圧シリンダ50への油圧が排圧されるときはスプリング53によって付勢されてシリンダ本体51から突出したセット位置に位置し、油圧シリンダ50へ油圧が供給されるときはスプリング53の付勢力に抗してシリンダ本体51側に後退したストローク位置に位置する。
【0053】
そして、パーキングロッド52は、セット位置にあるときは前記パーキングポールを前記パーキングギヤに係合させて変速機構の出力ギヤをロック状態にし、ストローク位置にあるときは前記パーキングポールを前記パーキングギヤから離間させて変速機構の出力ギヤを非ロック状態にする。
【0054】
このようにして、油圧シリンダ50のパーキングロッド52は、前記パーキングポール及び前記パーキングギヤとともに、変速機構の出力ギヤをロック状態にする第1状態と非ロック状態にする第2状態とに切り換えられるパーキング機構55を構成している。
【0055】
また、パーキング切換弁103は、油圧シリンダ50に供給する油圧の給排を切り換えてパーキングロッド52を移動させ、パーキング機構55をロック状態の第1状態と非ロック状態の第2状態に切り換えるように構成されている。
【0056】
前記自動変速機ではまた、変速機構の出力ギヤをロック状態又は非ロック状態に規制する規制機構60が備えられ、規制機構60は、パーキング機構55がロック状態の第1状態から非ロック状態の第2状態に切り換えられることを規制すると共にパーキング機構55が非ロック状態の第2状態からロック状態の第1状態に切り換えられることを規制するようになっている。
【0057】
図3は、変速機構の出力ギヤをロック状態又は非ロック状態に規制する規制機構の駆動を説明するための説明図であり、
図4は、前記規制機構の作動を説明するための説明図である。
【0058】
前記自動変速機では、
図3に示すように、潤滑用アクチュエータ102として機能する電動アクチュエータが備えられると共に、電動アクチュエータ102の駆動軸先端に設けられたウォームギヤ111と、ウォームギヤ111に噛み合うウォームホイール112と、ウォームホイール112に固着されると共に前記自動変速機内に回転可能に支持されるシャフト部材113とが備えられている。なお、電動アクチュエータ102として、ステッピングモータやサーボモータなどを用いることができる。
【0059】
前記規制機構60は、ウォームホイール112の端面に該ウォームホイール112の周方向に円弧状に延びるように取り付けられた台形状のカム部材61と、スプリング62によってパーキングロッド52側に付勢された略断面L字状のストッパ部材63とを備えている。
【0060】
ストッパ部材63は、該ストッパ部材63の一端がパーキングロッド52の後端部に軸方向に並んで設けられた第1溝部55又は第2溝部56に係合してパーキングロッド52が軸方向に移動されることを規制するようになっている。
【0061】
ストッパ部材63はまた、該ストッパ部材63の他端がウォームホイール112に取り付けられたカム部材61に接触することによってスプリング62の付勢力に抗して反パーキングロッド52側に移動され、該ストッパ部材63の一端とパーキングロッド52の第1溝部55又は第2溝部56との係合を解除するようになっている。
【0062】
前記自動変速機では、
図4(a)に示すように、Pレンジにあるときは油圧シリンダ50への油圧が排圧されることによりパーキングロッド52をシリンダ本体51から突出したセット位置にするとともに、ストッパ部材63がパーキングロッド52の第2溝部56と係合することによりパーキングロッド52をセット位置に規制して変速機構の出力ギヤをロック状態に規制する。
【0063】
PレンジからDレンジへの操作時には、
図4(b)に示すように、電動アクチュエータ102を作動させてウォームギヤ111を回転駆動させることによりウォームギヤ111とウォームホイール112とのギヤ噛合部114を介してウォームホイール112がシャフト部材113と共に回転され、これに伴ってカム部材61によってストッパ部材63が反パーキングロッド52側に移動され、ストッパ部材63とパーキングロッド52の第2溝部56との係合を解除する。
【0064】
そして、ストッパ部材63とパーキングロッド52の第2溝部56との係合を解除した状態で、
図4(c)に示すように、パーキング切換弁103を制御して油圧シリンダ50へ油圧が供給されることによりパーキングロッド52をシリンダ本体51側に後退したストローク位置にする。
【0065】
次に、
図4(d)に示すように、電動アクチュエータ102を作動させてウォームギヤ111を回転駆動させることによりウォームホイール112がシャフト部材113と共に回転され、これに伴ってストッパ部材63とカム部材61との接触が解除されてストッパ部材63がパーキングロッド52側に移動され、ストッパ部材63とパーキングロッド52の第1溝部55とが係合することによりパーキングロッド52をストローク位置に規制して変速機構の出力ギヤを非ロック状態に規制する。
【0066】
このように、前記規制機構60は、電動アクチュエータ102にギヤ噛合部114を介して連結され、電動アクチュエータ102によって変速機構の出力ギヤをロック状態又は非ロック状態に規制するように構成されている。
【0067】
なお、PレンジからNレンジやRレンジへの操作時についても、PレンジからDレンジへの操作時と同様に、電動アクチュエータ102を作動させてストッパ部材63とパーキングロッド52の第2溝部56との係合を解除してからパーキングロッド52をストローク位置にし、その後に電動アクチュエータ102を作動させてストッパ部材63とパーキングロッド52の第1溝部55とを係合させてパーキングロッド52をストローク位置に規制する。Dレンジ、Nレンジ及びRレンジからPレンジへの操作については、PレンジからDレンジ、Nレンジ及びRレンジへの操作時と逆の動作が行われる。
【0068】
図1に戻って、油圧制御回路100にはまた、オイルポンプ121によって供給される油圧を制御し、第1潤滑油供給先11、第2潤滑油供給先12、第3潤滑油供給先13に潤滑油として供給する油圧を制御する油圧制御弁105が備えられている。
【0069】
油圧制御弁105は、スプール105aと、スプール105aの一端側に配置されてスプール105aを付勢するスプリング105bとを有している。油圧制御弁105にはまた、オイルポンプ121によって供給される油圧が油路134を通じて入力される入力ポートbと、各潤滑油供給先11、12、13に油路135を通じて出力する出力ポートcと、ドレンポートdとが設けられると共に、出力ポートcに接続された油路135から分岐された油路136がオリフィス136aを介して接続される戻りポートaが設けられている。
【0070】
油圧制御弁105は、スプール105aがスプリング105bの付勢力に抗して軸方向に移動することにより出力ポートcが、入力ポートbとドレンポートdとに選択的に連通し、出力ポートcから出力する油圧がスプリング105bの付勢力などによって設定された設定圧より高くなるとドレンポートdに連通し、所定の油圧に制御するようになっている。
【0071】
油圧制御弁105の出力ポートcに接続された油路135は、第1潤滑油供給先11への油路137、第2潤滑油供給先12への油路138及び第3潤滑油供給先13への油路139に分岐され、オイルポンプ121から供給される油圧が油圧制御弁105によって所定の油圧に制御されて潤滑油として潤滑油供給先11、12、13に供給される。
【0072】
第1潤滑油供給先11への油路137、第2潤滑油供給先12への油路138、第3潤滑油供給先13への油路139にはそれぞれ、第1潤滑油供給先11、第2潤滑油供給先12、第3潤滑油供給先13へ供給する潤滑油の供給量を制御す可変絞り弁21、22、23が配置され、可変絞り弁21、22、23は、単一のロータリー弁30によって形成されている。
【0073】
また、第2潤滑油供給先12への油路138及び第3潤滑油供給先13への油路139にはそれぞれ、可変絞り弁22及び23の下流側に、潤滑油の供給量を所定量に保持する圧力補償機能を有する流量制御弁106、107が配置されている。
【0074】
図5は、自動変速機に備えられたロータリー弁を示す断面図である。
図5に示すように、ロータリー弁30は、ロータリー弁本体31と、ロータリー弁本体31に対して回転可能に支持される弁体32と、ロータリー弁本体31と弁体32との間に配置されるセパレート部材33と、ロータリー弁本体31にセパレート部材33を介して取り付けられると共に弁体32を回転可能に支持する支持部材34とを備えている。
【0075】
図6は、前記ロータリー弁のロータリー弁本体、セパレート部材及び弁体を示す平面図であり、
図6(a)は、
図5におけるY6a方向から見たロータリー弁本体を示し、
図6(b)は、
図5におけるY6b方向から見たセパレート部材を示し、
図6(c)は、
図5におけるY6c方向から見た弁体を示している。
【0076】
ロータリー弁本体31には、油圧供給元としてのオイルポンプ121から潤滑油の元圧を制御する油圧制御弁105を介して潤滑油が入力される入力ポートeと、入力ポートeに入力された潤滑油を第1潤滑油供給先11、第2潤滑油供給先12、第3潤滑油供給先13にそれぞれ出力する第1出力ポートf、第2出力ポートg、第3出力ポートhとが設けられている。
【0077】
図5及び
図6(a)に示すように、入力ポートe、第1出力ポートf、第2出力ポートg及び第3出力ポートhはそれぞれ、ロータリー弁本体31におけるセパレート部材33を介して弁体32に対向する対向面から溝状に窪んで形成されている。
【0078】
入力ポートe、第1出力ポートf、第2出力ポートg及び第3出力ポートhはそれぞれ、ロータリー弁本体31の外周側からロータリー弁体本体31の中央側に延びるように形成されている。入力ポートeは、ロータリー弁本体31の中央側端部が弁体32の中央部に対応する位置において円形状に形成された入力側開口部31aを備えている。
【0079】
第1出力ポートf、第2出力ポートg及び第3出力ポートhはそれぞれ、ロータリー弁本体31の中央側端部が弁体32の周方向に延在するように円弧状に形成された出力側開口部31b、31c、31dを備えている。第1出力ポートf、第2出力ポートg及び第3出力ポートhの出力側開口部31b、31c、31dは順に、弁体32の径方向内側から外側に離間して配置されている。
【0080】
セパレート部材33には、
図6(b)に示すように、該セパレート部材33を貫通する入力側開口部33aが形成され、入力側開口部33aは、ロータリー弁本体31の入力側開口部31aと同様に、弁体32の中央部に対応する位置において円形状に形成されている。
【0081】
セパレート部材33にはまた、該セパレート部材33を貫通する第1出力側開口部33b、第2出力側開口部33c及び第3出力側開口部33dが形成され、第1出力側開口部33b、第2出力側開口部33c及び第3出力側開口部33dはそれぞれ、ロータリー弁本体31の出力側開口部31b、31c、31dと同様に、弁体32の周方向に延在するように円弧状に形成され、弁体32の径方向内側から外側に離間して配置されている。
【0082】
弁体32は、電動アクチュエータ102の駆動軸先端に設けられたウォームギヤ111に噛み合うウォームホイール112に固着されたシャフト部材113に一体的に取り付けられ、電動アクチュエータ102によってシャフト部材113と共に回転駆動されるようになっている。
【0083】
弁体32には、該弁体32が回転駆動されることによりセパレート部材33の出力側開口部33b、33c、33dを介して入力ポートeと第1出力ポートf、第2出力ポートg、第3出力ポートhとを選択的に連通させて第1潤滑油供給先11、第2潤滑油供給先12、第3潤滑油供給先13への潤滑油の供給を制御する連通部32aが形成されている。
【0084】
連通部32aは、弁体32におけるセパレート部材33を介してロータリー弁本体31に対向する対向面から溝状に窪んで形成されている。弁体32の連通部32aは、該弁体32の径方向外側に向かって拡がる略扇形状に形成され、連通部32aの中央側端部32bが、ロータリー弁本体31の入力側開口部31a及びセパレート部材33の入力側開口部33aと同様に、弁体32の中央部に対応する位置において円形状に形成されている。
【0085】
図7は、
図5におけるY7−Y7線に沿ったロータリー弁の断面図であり、
図8は、前記セパレート部材に設けられた出力側開口部を説明するための説明図である。
図7に示すロータリー弁30の角度位置において、
図7及び
図8に示すように、セパレート部材33の第1出力側開口部33bは0度から150度の間で開口し、セパレート部材33の第2出力側開口部33cは30度から90度の間で開口し、セパレート部材33の第3出力側開口部33dは60度から120度の間で開口している。一方、弁体32の連通部32aは、中心角が30度になるように開口している。なお、セパレート部材33の出力側開口部33b、33c、33d及び弁体32の連通部32aは適宜設定される。
【0086】
ロータリー弁本体31の第1出力側開口部31b、第2出力側開口部31c、第3出力側開口部31dはそれぞれ、セパレート部材33の第1出力側開口部33b、第2出力側開口部33c、第3出力側開口部33dと同様に形成されている。
【0087】
これにより、弁体32が回転駆動されることによりセパレート部材33の出力側開口部33b、33c、33dを介して入力ポートeと出力ポートf、g、hとを選択的に連通して油圧供給元121から潤滑油供給先11、12、13への潤滑油の供給が制御される。
【0088】
例えば、弁体32の連通部32aが
図7及び
図8に示す状態にあるとき、入力ポートeから入力される潤滑油は、連通部32aを通じて第1出力ポートf、第2出力ポートg、第3出力ポートhから出力され、連通部32aに対して開口するセパレート部材33の出力側開口部33b、33c、33dの開口面積に応じて潤滑油の供給量が制御される。
【0089】
また、弁体32は、発進時には第1出力ポートf及び第2出力ポートgから潤滑油を出力し、変速時には第1出力ポートf及び第3出力ポートhから潤滑油を出力するように制御される。
【0090】
本実施形態では、セパレート部材33の第1出力側開口部33b、第2出力側開口部33c、第3出力側開口部33dの少なくとも一部は、弁体32の周方向にオーバーラップして形成されている。第1出力側開口部33bと第2出力側開口部33cとは30度から90度の間でオーバーラップし、第1出力側開口部33bと第3出力側開口部33dとは60度から120度の間でオーバーラップし、第2出力側開口部33cと第3出力側開口部33dとは60度から90度の間でオーバーラップして形成されている。
【0091】
このように、セパレート部材33の複数の出力側開口部33b、33c、33dの少なくとも一部は、弁体32の周方向にオーバーラップして形成されることにより、弁体32に形成される1つの連通部32aを用いて複数の潤滑油供給先11、12、13への潤滑油の供給量を可変制御することができる。
【0092】
また、前記自動変速機では、
図1に示すように、ロータリー弁30の第1出力ポートfから出力する潤滑油は、油路137を通じて第1潤滑油供給先11へ供給されるが、ロータリー弁30の第2出力ポートgから出力する潤滑油は、圧力補償機能を有する流量制御弁106を介して第2潤滑油供給先12へ供給される。
【0093】
流量制御弁106は、スプール106aと、スプール106aの一端側に配置されてスプール106aを付勢するスプリング106bとを有している。流量制御弁106にはまた、ロータリー弁30の第2出力ポートgから潤滑油が入力される入力ポートjと、第2潤滑油供給先12に潤滑油を出力する出力ポートkと、ドレンポートlとが設けられると共に、油路135から潤滑油が供給される第1制御ポートiと、ロータリー弁30の第2出力ポートgから潤滑油が供給される第2制御ポートmとが設けられている。
【0094】
流量制御弁106は、スプール106aがスプリング105bの付勢力に抗して軸方向に移動することにより出力ポートkが、入力ポートjとドレンポートlとに選択的に連通し、油路135から供給される潤滑油の油圧がスプリング106bの付勢力などによって設定された設定圧より高くなるとドレンポートlに連通するようになっている。
【0095】
流量制御弁106は、油路135から供給される潤滑油の油圧が高くなった場合、第1制御ポートi及び第2制御ポートmに供給される潤滑油の差圧が大きくなることに伴ってスプール106aが出力ポートkを閉じる方向に移動し、出力ポートkから出力する潤滑油の供給量を所定量に制御する。
【0096】
また、油路135から供給される潤滑油の油圧が低くなった場合、第1制御ポートi及び第2制御ポートmに供給される潤滑油の差圧が小さくなることに伴ってスプール106aが出力ポートkを開く方向に移動し、出力ポートkから出力する潤滑油の供給量を所定量に制御する。
【0097】
ロータリー弁30の第3出力ポートhから出力する潤滑油についても、第2出力ポートgから出力する潤滑油と同様に、圧力補償機能を有する流量制御弁107を介して第3潤滑油供給先13へ供給される。
【0098】
本実施形態では、第2潤滑油供給先12への油路138に配置されたロータリー弁30は、発進時に第2潤滑油供給先12へ潤滑油を供給するように構成され、第3潤滑油供給先13への油路139に配置されたロータリー弁30は、変速時に第3潤滑油供給先13へ潤滑油を供給するように構成されている。
【0099】
また、ギヤ噛合部114としてウォームギヤ111及びウォームホイール112からなる減速機構を介して電動アクチュエータ102からシャフト部材113へ回転駆動が伝達されているが、シャフト部材113から電動アクチュエータ102への逆駆動を抑制する遊星歯車機構などのギヤ噛合部を介して電動アクチュエータ102からシャフト部材113へ回転駆動を伝達するようにしてもよい。
【0100】
また、本実施形態では、ロータリー弁30は、ロータリー弁本体31とセパレート部材33とが別体で形成されているが、ロータリー弁本体31にセパレート部材33を一体的に形成することも可能である。
【0101】
このように、本実施形態に係る自動変速機には、油圧供給元121から潤滑油が入力される入力ポートeと複数の潤滑油供給先11、12、13にそれぞれ出力する複数の出力ポートf、g、hとを有するロータリー弁本体31と、回転駆動されることにより入力ポートeと複数の出力ポートf、g、hとを選択的に連通させる弁体32とを有するロータリー弁30が備えられる。
【0102】
そして、ロータリー弁本体31に、複数の出力ポートf、g、hにそれぞれ連通されると共に弁体32の周方向に配置され、且つ弁体32の径方向に離間して配置される複数の開口部33b、33c、33dが形成され、弁体32に、該弁体32が回転駆動されることによりロータリー弁本体31の開口部33b、33c、33dを介して入力ポートeと複数の出力ポートf、g、hとを選択的に連通させて複数の潤滑油供給先11、12、13への潤滑油の供給を制御する連通部32aが形成される。
【0103】
これにより、複数の潤滑油供給先ごとに専用の油圧制御弁を用いることなく、単一のロータリー弁30を用いて、弁体32の回転角度に応じて複数の潤滑油供給先11、12、13に供給する潤滑油の供給量を潤滑油供給先11、12、13ごとに可変制御することができる。例えば、発進時に締結される摩擦締結要素に発進時に潤滑油の供給量を多くして該摩擦締結要素を冷却したり、変速時に締結される摩擦締結要素に変速時に潤滑油の供給量を多くして該摩擦締結要素を冷却したりすることができる。
【0104】
また、弁体32の連通部32aは、弁体32の径方向外側に向かって拡がる略扇形状に形成される。これにより、ロータリー弁本体31に開口部33b、33c、33dが弁体32の周方向に沿って延びるように形成される場合、弁体32の径方向内側及び外側にそれぞれ配置される開口部に連通する出力ポートから同時に潤滑油を供給することができると共に、弁体32の径方向外側に配置される開口部に連通する出力ポートから、弁体32の径方向内側に配置される開口部に連通する出力ポートよりも多量の潤滑油を供給することができる。
【0105】
また、弁体32を回転駆動するアクチュエータ102が備えられ、アクチュエータ102と弁体32とは、ギヤ噛合部114を介して連結される。これにより、弁体32からアクチュエータ102への逆駆動を抑制するギヤ噛合部114を用いることで、弁体32を所定の回転角度に保持するときはアクチュエータ102に電力を供給することなく、弁体32を回転駆動するときにのみアクチュエータ102に電力を供給することができるので、電力消費量を抑制することができる。
【0106】
また、変速機構の出力部をロック状態又は非ロック状態に規制する規制機構60が備えられ、規制機構60は、アクチュエータ102によって変速機構の出力部をロック状態又は非ロック状態に規制するように構成される。これにより、単一のアクチュエータ102を用いて、弁体32の回転制御と変速機構の出力部をロック状態又は非ロック状態に規制する規制機構60の駆動制御とを行うことができ、前記回転制御及び前記駆動制御のためにそれぞれアクチュエータを用いる場合に比して、部品点数や組立工程を削減することができると共に自動変速機の小型化を図ることができる。
【0107】
本実施形態では、第2潤滑油供給先12として発進時に締結される摩擦締結要素が設定され、第3潤滑油供給先13として変速時に締結及び解放される摩擦締結要素が設定されているが、第2潤滑油供給先12として変速時に締結及び解放される摩擦締結要素を設定し、第3潤滑油供給先13として発進時に締結される摩擦締結要素を設定するようにしてもよい。
【0108】
このように、ロータリー弁本体31の複数の開口部33b、33c、33dのうち最も弁体32の径方向外側の開口部33dに連通する出力ポートhから潤滑油が出力される潤滑油供給先13は、発進時に締結される摩擦締結要素を含むことにより、ロータリー弁本体31に開口部33b、33c、33dが弁体32の周方向に沿って延びるように形成される場合、発進時に締結される摩擦締結要素に発進時に多量の潤滑油を供給して該摩擦締結要素の摩擦板間に生じる摩擦熱を冷却することが可能である。
【0109】
また、ロータリー弁本体31と弁体32との間にセパレート部材33が設けられ、セパレート部材33に、複数の出力ポートf、g、hにそれぞれ連通されると共に弁体32の周方向に延在し、且つ弁体32の径方向に離間して配置される複数の開口部33b、33c、33dが形成される。これにより、セパレート部材33に形成される開口部33b、33c、33dによって、複数の潤滑油供給先11、12、13に供給する潤滑油の供給制御を緻密に行うことができる。
【0110】
次に、本発明の第2実施形態に係る自動変速機について説明する。第2実施形態に係る自動変速機は、第1実施形態に係る自動変速機とロータリー弁が異なるのみであるので、ロータリー弁についてのみ説明し、第1実施形態に係る自動変速機と同様の構成については説明を省略する。
【0111】
図9は、本発明の第2実施形態に係る自動変速機に備えられたロータリー弁を示す断面図である。
図10は、前記ロータリー弁のロータリー弁本体、セパレート部材及び弁体を示す平面図であり、
図10(a)は、
図9におけるY10a方向から見たロータリー弁本体を示し、
図10(b)は、
図9におけるY10b方向から見たセパレート部材を示し、
図10(c)は、
図9におけるY10c方向から見た弁体を示している。
【0112】
図9及び
図10に示すように、本発明の第2実施形態に係る自動変速機のロータリー弁230についても、ロータリー弁230は、ロータリー弁本体31と、ロータリー弁本体31に対して回転可能に支持される弁体32と、ロータリー弁本体31と弁体32との間に配置されるセパレート部材233と、ロータリー弁本体31にセパレート部材233を介して取り付けられると共に弁体32を回転可能に支持する支持部材34とを備えている。
【0113】
ロータリー弁230では、ロータリー弁本体31、弁体32及び支持部材34はロータリー弁30と同様に形成されているが、セパレート部材233に形成される第1出力側開口部33b、第2出力側開口部33c、第3出力側開口部33dが少なくとも1つの円形状の貫通孔から構成されている。
【0114】
セパレート部材233についても、
図10(b)に示すように、セパレート部材233に、該セパレート部材233を貫通する入力側用開口部33aと、第1出力側開口部33b、第2出力側開口部33c、第3出力側開口部33dとが形成されている。
【0115】
第1出力側開口部33b、第2出力側開口部33c及び第3出力側開口部33dはそれぞれ、ロータリー弁本体31の出力側開口部31b、31c、31dと同様に、弁体32の周方向に延在するように円弧状に形成され、弁体32の径方向内側から外側に離間して配置されている。
【0116】
本実施形態では、第1出力側開口部33bは、弁体32の周方向に配置された第1開口面積を有する円形状の第1貫通孔233eと第1連通孔233eより大きい第2開口面積を有する円形状の第2貫通孔233fとから構成され、
図10(b)に示すように、3つの第1貫通孔233eと2つの第2貫通孔233fとから構成されている。
【0117】
第2出力側開口部33cについても、弁体32の周方向に配置された第1貫通孔233eと第2貫通孔233fとから構成され、第2出力側開口部33cは、
図10(b)に示すように、1つの第1貫通孔233eと1つの第2貫通孔233fとから構成されている。
【0118】
第3出力側開口部33dについても、弁体32の周方向に配置された第1貫通孔233eと第2貫通孔233fとから構成され、第3出力側開口部33dは、
図10(b)に示すように、1つの第1貫通孔233eと1つの第2貫通孔233fとから構成されている。
【0119】
図11は、
図9におけるY11−Y11線に沿ったロータリー弁の断面図であり、
図12は、前記セパレート部材に設けられた出力側開口部を説明するための説明図である。
図12では、セパレート部材233の第1出力側開口部33b、第2出力側開口部33c及び第3出力側開口部33dについて、
図11に示すロータリー弁230の角度位置において、30度ごとに、第1貫通孔233eが配置されている場合を斜線ハッチングで示し、第2貫通孔233fが配置されている部分をクロスハッチングで示している。
【0120】
ロータリー弁230では、弁体32は30度ごとに回転される。ロータリー弁230についても、
図11に示すロータリー弁230の角度位置において、
図11及び
図12に示すように、セパレート部材233の第1出力側開口部33bは0度から150度の間で開口し、セパレート部材233の第2出力側開口部33cは30度から90度の間で開口し、セパレート部材233の第3出力側開口部33dは60度から120度の間で開口している。
【0121】
図11において破線で示すように、ロータリー弁本体31の第1出力側開口部31b、第2出力側開口部31c、第3出力側開口部31dはそれぞれ、セパレート部材33の第1出力側開口部33b、第2出力側開口部33c、第3出力側開口部33を構成する第1貫通孔233e及び第2貫通孔233fに開口するように形成されている。
【0122】
これにより、弁体32が回転駆動されることによりセパレート部材233の出力側開口部33b、33c、33dを介して入力ポートeと出力ポートf、g、hとを選択的に連通して油圧供給元121から潤滑油供給先11、12、13への潤滑油の供給が制御される。
【0123】
例えば、弁体32の連通部32aが
図11及び
図12に示す状態にあるとき、入力ポートeから入力される潤滑油は、連通部32aを通じて第1出力ポートf、第2出力ポートgから出力され、連通部32aに対して開口するセパレート部材233の出力側開口部33b、33cの開口面積に応じて、具体的には第1貫通孔233e、第2貫通孔233fの開口面積に応じて潤滑油の供給量が制御される。
【0124】
本実施形態に係る自動変速機においても、ロータリー弁230の弁体32は、発進時には第1出力ポートf及び第2出力ポートgから潤滑油を出力し、変速時には第1出力ポートf及び第3出力ポートhから潤滑油を出力するように制御される。
【0125】
また、本実施形態においても、ロータリー弁230は、ロータリー弁本体31とセパレート部材233とが別体で形成されているが、ロータリー弁本体31にセパレート部材233を一体的に形成することも可能である。
【0126】
このように、本実施形態に係る自動変速機に備えられるロータリー弁230についても、ロータリー弁本体31に、複数の出力ポートf、g、hにそれぞれ連通されると共に弁体32の周方向に配置され、且つ弁体32の径方向に離間して配置される複数の開口部33b、33c、33dが形成され、弁体32に、該弁体32が回転駆動されることによりロータリー弁本体31の開口部33b、33c、33dを介して入力ポートeと複数の出力ポートf、g、hとを選択的に連通させて複数の潤滑油供給先11、12、13への潤滑油の供給を制御する連通部32aが形成される。
【0127】
これにより、複数の潤滑油供給先ごとに専用の油圧制御弁を用いることなく、単一のロータリー弁230を用いて、弁体32の回転角度に応じて複数の潤滑油供給先11、12、13に供給する潤滑油の供給量を潤滑油供給先11、12、13ごとに可変制御することができる。
【0128】
また、ロータリー弁本体31と弁体32との間にセパレート部材233が設けられ、セパレート部材233に、複数の出力ポートf、g、hにそれぞれ連通されると共に弁体32の周方向に延在し、且つ弁体32の径方向に離間して配置される複数の開口部33b、33c、33dが形成される。これにより、セパレート部材233に形成される開口部33b、33c、33dによって、複数の潤滑油供給先11、12、13に供給する潤滑油の供給制御を緻密に行うことができる。
【0129】
本実施形態では、弁体32に形成される連通部32aが略扇形状に形成されているが、これに限定されるものでなく、他の形状に形成することも可能である。
【0130】
前記第1実施形態では、セパレート部材33の出力側開口部33b、33c、33dは、円弧状に形成された1つの開口部によって形成され、前記第2実施形態では、セパレート部材233の出力側開口部33b、33c、33dは、少なくとも1つの円形状の貫通孔233e、233fから構成されているが、円弧状に形成された開口部と円形状の貫通孔とを組み合わせてセパレート部材の出力側開口部を形成するようにしてもよい。
【0131】
次に、本発明の第3実施形態に係る自動変速機について説明する。第3実施形態に係る自動変速機は、第1実施形態に係る自動変速機とオイルポンプ121によって供給される油圧を制御する油圧制御弁が異なるのみであるので、油圧制御弁についてのみ説明し、第1実施形態に係る自動変速機と同様の構成については説明を省略する。
【0132】
図13は、本発明の第3実施形態に係る自動変速機の油圧制御回路の要部の構成を示す回路図である。
図13に示すように、本発明の第3実施形態に係る自動変速機の油圧制御回路300についても、オイルポンプ121によって供給される油圧を制御し、第1潤滑油供給先11、第2潤滑油供給先12、第3潤滑油供給先13に潤滑油として供給する油圧を制御する油圧制御弁305が備えられている。
【0133】
油圧制御弁305は、スプール305aと、スプール305aを付勢するスプリング305bとを有し、オイルポンプ121によって供給される油圧が油路134を通じて入力される入力ポートbと、各潤滑油供給先11、12、13に油路135を通じて出力する出力ポートcと、ドレンポートdとが設けられると共に、出力ポートcに接続された油路135から分岐された油路136がオリフィス136aを介して接続される戻りポートaが設けられている。
【0134】
油圧制御弁305についても、スプール305aがスプリング305bの付勢力に抗して軸方向に移動することにより出力ポートcが、入力ポートbとドレンポートdとに選択的に連通し、出力ポートcから出力する油圧がスプリング305bの付勢力などによって設定された設定圧より高くなるとドレンポートdに連通し、所定の油圧に制御するようになっている。
【0135】
油圧制御弁305はまた、スプリング305bの付勢力を調整して該油圧制御弁305から出力する油圧を制御する付勢力調整機構310を備え、付勢力調整機構310は、スプリング305bのスプール305aが配置される側と反対側に配置されるスプリング受け部材305cと、スプリング受け部材305cに当接するカム部材305dとから構成されている。
【0136】
カム部材305dは、電動アクチュエータ102の駆動軸先端に設けられたウォームギヤ111に噛み合うウォームホイール112に固着されたシャフト部材113に一体的に取り付けられ、電動アクチュエータ102によってシャフト部材113と共に回転駆動されるようになっている。
【0137】
カム部材305dはまた、シャフト部材113の回転角度に対応して該シャフト部材113の中心からの距離が不均一である外周面を有し、電動アクチュエータ102によってシャフト部材113と共にカム部材305dが回転駆動されることによりスプリング受け部材305cをスプール305aの軸方向に移動させてスプリング305bの付勢力を調整するようになっている。
【0138】
このように、付勢力調整機構310は、アクチュエータ102によってスプリング305cの付勢力を調整して油圧制御弁305から出力する油圧を制御するように構成されている。
【0139】
これにより、単一のアクチュエータ102を用いて、ロータリー弁30の弁体32の回転制御と油圧制御弁305の付勢力調整機構310の駆動制御とを行うことができ、前記回転制御及び前記駆動制御のためにそれぞれアクチュエータを用いる場合に比して、部品点数や組立工程を削減することができると共に自動変速機の小型化を図ることができる。
【0140】
また、油圧制御弁305は、ロータリー弁本体31の入力ポートeに入力する潤滑油の元圧を制御する弁であることにより、単一のアクチュエータ102を用いて、弁体32の回転制御とロータリー弁本体31の入力ポートeに入力する潤滑油の元圧を制御するための油圧制御弁305の付勢力調整機構310の駆動制御とを行うことができる。
【0141】
本実施形態では、
図1において、オイルポンプ121から油圧制御弁105を介してロータリー弁30に油圧が供給されているが、油圧制御弁105を介することなくオイルポンプ121からロータリー弁30に油圧を供給するようにしてもよい。
【0142】
また、本実施形態では、ロータリー弁30は、油圧供給元121から潤滑油を複数の潤滑油供給先11、12、13にそれぞれ出力するように構成されているが、潤滑油に限定されるものでなく、潤滑油などの作動液体を複数の作動液体供給先にそれぞれ出力するように構成することも可能である。
【0143】
かかる場合、ロータリー弁は、作動液体が入力される入力ポートと作動液体をそれぞれ出力する複数の出力ポートとを有するロータリー弁本体と、回転駆動されることにより入力ポートと複数の出力ポートとを選択的に連通させる弁体とを有する。
【0144】
そして、ロータリー弁本体に、複数の出力ポートにそれぞれ連通されると共に弁体の周方向に延在し、且つ弁体の径方向に離間して配置される複数の開口部が形成され、弁体に、該弁体が回転駆動されることによりロータリー弁本体の開口部を介して入力ポートと複数の出力ポートとを選択的に連通させて複数の出力ポートからの作動液体の出力を制御する連通部が形成される。
【0145】
このようにロータリー弁が構成されることにより、複数の作動液体供給先ごとに専用の油圧制御弁を用いることなく、単一のロータリー弁によって、弁体の回転角度に応じて複数の作動液体供給先に供給する作動液体の供給量を作動液体供給先ごとに可変制御することができる。
【0146】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。