(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いながら、開示の無線通信方法、無線通信システム、無線基地局および無線端末の実施形態について説明する。尚、便宜上別個の実施形態として説明するが、各実施形態を組み合わせることで、組合せの効果を得て、更に、有用性を高めることもできることはいうまでもない。
【0015】
[問題の所在]
まず、各実施形態を説明する前に、従来技術における問題の所在を説明する。この問題は、発明者が従来技術を仔細に検討した結果として新たに見出したものであり、従来は知られていなかったものであることに注意されたい。
【0016】
今、無線通信システム(セルラーシステム)において、ある無線基地局の配下(管理下)に2台の無線端末が存在するものとする。このとき、従来は2台の無線端末は無線基地局を経由して通信を行う(以降は、このような通信形態を便宜上「無線基地局経由通信」と称する)。しかし、例えば無線端末間が近い場合(電波到達可能という観点において、ある無線端末のproximity内に別の無線端末が存在する場合、これらの無線端末は互いに近い場所に存在すると考える)等において、無線端末同士が無線基地局を介さずに直接無線通信を行う端末間通信も原理的には可能であると考えられる。
【0017】
しかしながら、LTEシステムを始めとする従来の無線通信システム(セルラーシステム)においては、端末間通信について子細に検討されておらず、以下のような問題があった。この問題は発明者による仔細な検討の結果、新たに見出されたものである。
【0018】
前述した端末間通信も可能なセルラーシステムにおいては、通常は無線基地局経由通信を行うが、所定条件を満たす場合には端末間通信を行うことが想定される。ここで端末間通信に行うための所定条件としては、様々なものが考えられる。一例としては、無線基地局の負荷が高い場合に、無線基地局の負荷を減らすべく、無線基地局が配下の一部の無線端末を無線基地局経由通信から端末間通信に移行させることが考えられる。また、ユーザが無線端末に対して明示的に指示した場合(ユーザが無線端末に対して所定の操作を行った場合)に、無線基地局経由通信から端末間通信に移行することが考えられる。
【0019】
ここで、端末間通信を行うための所定条件は様々なものが考えられるが、少なくとも、無線端末間の無線品質に関する条件を含む必要があると考えられる。無線端末間の無線品質(無線状態や無線環境等と言い換えてもよい)が著しく悪い場合には、端末間通信を行うのは現実的ではないと考えられるためである。そのため、所定条件としては、例えば無線基地局の負荷等のその他の条件を含んでもかまわないが、端末間の無線品質は欠くべからざる条件であるものと考えられる。
【0020】
ところが、LTEシステムを始めとする従来の無線通信システム(セルラーシステム)は、以上のような観点に基づいて設計されていない。すなわち、無線基地局と無線端末間の無線品質を考慮し、それに基づき、無線基地局と無線端末間の無線通信の制御や最適化を行うように設計されている。そのため、無線通信システムが無線基地局経由通信を行うか端末間通信を行うかを自律的に判断することができない。
【0021】
以下では、以上で述べた問題を解決する各実施形態を説明する。
【0022】
[第1実施形態]
第1実施形態は、前述した問題を解決する上位概念的な実施形態である。より具体的には、第1実施形態は、第1無線端末により送信される第1基準信号に基づいて測定した該第1無線端末から第2無線端末への無線品質に関する第1情報を、該第2無線端末が無線局に送信し、前記第2無線端末により送信される第2基準信号に基づいて測定した該第2無線端末から前記第1無線端末への無線品質に関する第2情報を、該第1無線端末が前記無線局に送信し、前記無線局が、前記第1情報と前記第2情報とに基づいて前記第1無線端末と前記第2無線端末との間で端末間通信を行うか否かを決定する無線通信方法に係る実施形態である。
【0023】
ここで、上記の無線局としては典型的には無線基地局が考えられるが、第3の無線端末等を含むその他の無線通信装置であってもかまわない。一例としては、災害等により無線基地局が機能しなくなったときに、無線端末が無線基地局の機能を代理する場合が考えられる。本実施形態および後述する各実施形態においては、無線局が無線基地局である場合を説明するが、これに限られないことに留意されたい。
【0024】
図1は第1実施形態における処理シーケンスの一例を示す図である。
【0025】
第1実施形態の前提を説明する。いま2台の無線端末20である第1無線端末20aと第2無線端末20bとが無線基地局10の管理下(配下)にあるとする。第1無線端末20aと第2無線端末20bのそれぞれは、通信中である必要はないが、少なくとも無線基地局10と同期している状態であるものとする。ここでの同期の意味は、無線端末20が、少なくとも無線基地局10が送信する同期信号や共通制御信号を受信しその内容を確認できる状態にあることである。なお、本願においては、第1無線端末20aと第2無線端末20bとを合わせて単に無線端末20と称することがあることに留意されたい。
【0026】
S101で第1無線端末20aは、基準信号を送信する。ここで基準信号とは、無線環境の測定の基準となり得る信号であり、無線品質(後述する)の測定を行うことができる既知信号であれば何でも良い。基準信号としては例えば、参照信号、パイロット信号、同期信号、ランダムアクセス信号等を含むことができる。また、基準信号としてLTEシステムにおける上りの参照信号を用いる場合、既定の復調参照信号(DRSまたはDMRS: Demodulation Reference Signal)、既定のサウンディング参照信号(SRS: Sounding Reference Signal)、そのどちらでもない新たな参照信号のいずれを用いることも可能である。
【0027】
また、基準信号として、LTEシステムにおける下りの参照信号(UE-specific demodulation reference signal)や同期信号(PSS:Primary Synchronization Signal, SSS:Secondary Synchronization Signal)を利用することも可能である。下りの参照信号や同期信号を利用する場合、無線端末20は、無線基地局10からの信号を受信するために使用する受信信号処理回路をある程度利用することが可能となる。ただし、下りで使用される信号を無線端末20に送信させる場合、無線基地局10が送信する信号との間で発生する干渉を回避したり緩和することが必要となる。
【0028】
さらに、基準信号として、上りのデータチャネルであるPUSCH(Physical Uplink Shared CHannel)の信号を用いることも可能である。上述した参照信号等を基準信号として用いる場合には送信側の無線端末の識別子程度の情報しか載せることができないが、PUSCHを用いると多くの情報を含ませることができる利点がある。ただし、上述した参照信号等を基準信号として用いる場合は受信側は信号列(符号列)の検出を行えばよいが、PUSCHを用いる場合は受信側は復号が必要となる。また、参照信号等を基準信号として用いる場合は端末間は非同期でも良いが、PUSCHを用いる場合は基本的に端末間で同期が必要となる。基準信号として、上述した参照信号等とPUSCHとを組み合わせた2段階構成とすることも可能である。
【0029】
ここで、基準信号のパターン(信号列あるいは符号列)、基準信号を送信する無線リソース(タイミングや周波数)、基準信号の送信電力等の各種パラメータは予め無線基地局10等から通知される等により第1無線端末20a並びに第2無線端末20bは把握しているものとする。この通知は、例えばLTEシステムにおいては、物理下り共有チャネル(PDSCH: Physical Downlink Shared CHannel)を用いて送信されるLayer3制御信号であるRRC(Radio Resource Control)信号、あるいは、物理下り制御チャネル(PDCCH: Physical Downlink Control CHannel)または拡張された物理下り制御チャネルEPDCCH(Enhanced Physical Downlink Control CHannel)を用いたLayer1制御信号によって行うことができる。
【0030】
S101で第2無線端末20bは、第1無線端末20aが送信した基準信号を受信する。
【0031】
このとき第2無線端末20bは、第1無線端末20aが送信した基準信号に基づき無線品質を測定する。本願における無線品質とは、特に断りが無い限り、受信された無線信号(基準信号)の品質や状態、被干渉の状態、あるいは、無線信号(基準信号)が通った無線通信路の品質や状態を含む概念とする。無線品質の具体例としては、伝搬路損失(パスロス)や無線特性(チャネル特性)、基準信号の受信電力、基準信号の所望信号受信電力対干渉信号受信電力比等が挙げられる。本願における無線品質は、前記の趣旨を逸脱しない限り、これら以外の任意の概念を含むことができるものとする。
【0032】
なお、無線品質としては、受信した無線信号(基準信号)に基づいて実測できるものだけでなく、受信した無線信号に基づく実測値から算出されるものであってもかまわない。例えば、上記で例示したパスロスは、受信された無線信号の受信電力の実測値と、事前の通知等により別途取得した送信電力等とから算出できる物理量である。
【0033】
S102で第2無線端末20bは、基準信号を送信する。S102における第2無線端末20bによる基準信号の送信は、S101における第1無線端末20aによる基準信号の送信と同様に行えばよいため、説明は割愛する。第1無線端末20aと第2無線端末20bは互いに異なるパターンを用いた基準信号を送信してもよい。
【0034】
S102で第1無線端末20aは、第2無線端末20bにより送信された基準信号を受信する。S102における第1無線端末20aによる基準信号の受信は、S101における第2無線端末20bによる基準信号の受信と同様に行えばよいため、説明は割愛する。
【0035】
次にS103で第2無線端末20bは、S101で測定した無線品質(測定結果)を無線基地局10に報告する。S103の報告は、例えば、LTEシステムにおいては、上り無線区間で使用される物理データチャネルである物理上り共有チャネル(PUSCH: Physical Uplink Shared CHannel)を用いて送信されるRRC信号によって行うことができる。あるいは、上り無線区間で使用される物理上り制御チャネル(PUCCH: Physical Uplink Control CHannel)を用いて、測定した無線品質(測定結果)を無線基地局10に報告してもよい。または、測定結果をRRC信号の中に含ませずに直接PUSCHを用いて報告してもよい。
【0036】
また、S104で第1無線端末20aは、S102で測定した無線品質(測定結果)を無線基地局10に報告する。S104の報告も、S103における前記の報告の場合と同様の方法で行うことができる。
【0037】
次にS105で無線基地局10は、S103で第2無線端末20bから受けた報告と、S104で第1無線端末20aから受けた報告とに基づいて、第1無線端末20aと第2無線端末20bとに端末間通信を行わせるか否かを判定する。ここで、S103で無線基地局10が第2無線端末20bから受けた報告は、第1無線端末20aから第2無線端末20bへの無線品質を含んでいる。また、S104で無線基地局10が第1無線端末20aから受けた報告は、第2無線端末20bから第1無線端末20aへの無線品質を含んでいる。S105で無線基地局10は、これらの2つの無線品質に基づいて、第1無線端末20aと第2無線端末20bとに端末間通信を行わせるか否かを判定することが可能である。
【0038】
無線基地局10はS105の判定を、S103とS104とでそれぞれ受信した無線品質に基づいて、任意の方法で行ってよいものとする。すなわち、無線基地局10はS105の判断を、任意の判断基準、ルール、アルゴリズム等に基づいて行うことができる。一例としては、無線基地局10は、第1無線端末20aから第2無線端末20bへの無線品質と、第1無線端末20aから第2無線端末20bへの無線品質とのそれぞれが所定の基準を満たす場合に、第1無線端末20aと第2無線端末20bとに端末間通信を行わせると判定することができる。一方、無線基地局10は、第1無線端末20aから第2無線端末20bへの無線品質と、第1無線端末20aから第2無線端末20bへの無線品質とのいずれかが所定の基準を満たさない場合に、第1無線端末20aと第2無線端末20bとに端末間通信を行わせないと判定することができる。
【0039】
なお、S105における判定に用いる無線品質の一例としては、前述したように、第1無線端末20aと第2無線端末20bの間の無線区間の伝搬路品質(パスロス)や無線特性(チャネル特性)がある。パスロスに基づいて、これら2つの無線端末20が互いに近い場所にいるか否かを推測できる。さらに、チャネル特性に基づいて、端末間通信を行わせるか否かを判定することが可能である。
【0040】
次にS106で無線基地局10は、S105で行った判定に基づいて、第1無線端末20aと第2無線端末20bとに端末間送信を行う旨の指示を送信する。S106の指示も、例えばRRC信号によって行うことができる。この際、RRC信号には、第1無線端末20aと第2無線端末20bと無線基地局10の間だけで認識されるID(識別子)を含めてもよい。このIDは、例えば、D2D-RNTI(Radio Network Temporary Identifier)と呼んでもよい。このIDを、第1無線端末20aと第2無線端末20bの間の通信、第1無線端末20aと無線基地局10の間の通信、第2無線端末20bと無線基地局10の間の通信において送信される制御信号に関連づけてもよい。また、S106の指示は、下りの制御情報であるDCI(Downlink Control Information)によって下り制御チャネル(PDCCH: Physical Downlink Control CHannel)を介して行うことも考えられる。
【0041】
S106で第1無線端末20aと第2無線端末20bはそれぞれ、第1無線端末20aと第2無線端末20bの間での端末間通信を行う旨の指示を受信する。これにより、S106以降において、第1無線端末20aと第2無線端末20bとは、無線基地局10経由通信ではなく、端末間通信を行うことが可能となる。すなわち、S106以降においては、第1無線端末20aと第2無線端末20bが通信を行う場合、無線基地局10経由を介さず、端末間で無線信号の送受信を行うことができる。
図1においては一例として、S107で第1無線端末20aから第2無線端末20bに対してデータ信号を送信し、S108で第2無線端末20bから第1無線端末20aに応答信号(例えばACK信号)を送信している。また、S109で第2無線端末20bから第1無線端末20aに対してデータ信号を送信し、S110で第1無線端末20aから第2無線端末20bに応答信号を送信している。
【0042】
ここで、S106以降で第1無線端末20aと第2無線端末20bの間での端末間通信は可能となるが、端末間通信の合間に、各無線端末20は無線基地局10との間で通信を行ってもかまわないことには留意されたい。特に、無線基地局10が周期的に送信している同期信号を、第1無線端末20aと第2無線端末20bが、その送信周期と同じ、あるいはそれよりも長い周期で定期的に又は非定期的に受信することで、無線基地局10との間の同期を維持するのが極めて望ましい。また、例えば、無線基地局10は、端末間通信に因る干渉の発生量を制御する目的で制御信号を第1無線端末20aと第2無線端末20bに送信してもよい。さらに、第1無線端末20aと第2無線端末20bは、無線品質(測定結果)を、定期的に、又は無線基地局10から指示された時、あるいは事前に決められた条件を満たした時に、無線基地局10に送信してもよい。これにより、無線基地局10は無線端末間の無線品質(端末間通信の品質)を適時に把握でき、端末間通信を適切に管理または制御することが可能となる。
【0043】
なお、本願においては、端末間通信の方式等は問わない。例えば、端末間通信で使用する無線リソースは予め決められたものを用いても良いし、S106の端末間通信の指示において端末間通信で使用する無線リソースを指定することとしても良い。
【0044】
また、端末間通信は同期通信方式でも非同期通信方式のどちらで行うこととしても構わない。端末間通信が同期通信方式で行われる場合、S106の後に端末間で同期を確立する処理を行ってから端末間通信を開始することができる。この場合、S106の信号により、端末間が同期をとる(無線リンクを確立する)ために必要な情報を通知することとしてもよい。また、端末間通信が同期通信の場合、通信を行う度に動的に無線リソースが割り当てられても良いし、予め間欠的な無線リソースを割当てるようにしても良い。
【0045】
なお、第1無線端末20aと第2無線端末20bが共に無線基地局10に対し同期を維持している場合、第1無線端末20aと第2無線端末20bの間の同期を維持するのは比較的容易である。無線端末20が無線基地局10に対し無線信号を送信する時の送信タイミングの調整のために無線基地局10が無線端末20に対し送信するTA(Timing Advance)コマンドの値を、そのまま又はある程度、直接通信を行う無線端末間の同期の維持に利用することが可能である。前記TAコマンドをどの程度利用できるかは、例えば、無線端末20間並びに無線端末20と無線基地局10間の相互位置関係に依存する。
【0046】
一方、端末間通信が非同期通信の場合、データが含まれる信号を送信する前に、その信号の受信が容易となるような同期信号的役割を果たす信号を直前に送信することも可能である。
【0047】
端末間通信を終了するタイミングは任意に決めることができる。例えば、端末間通信中においても
図1のS101〜S105に相当する処理を定期的に行い、無線品質が所定の基準を満たさない場合等において、無線基地局10が端末間通信を終了する旨の判定を行い、その旨を無線端末20に通知することができる。ただし、この場合、S103とS104は、測定結果が基準値を満たさない場合にだけ行ってもかまわない。第1無線端末20aと第2無線端末20bの間で送信される無線信号を受信側で復調する目的で送信される基準信号に対する無線測定の結果を、定期的に又は所定の基準を満たさない時に、無線基地局10に報告してもよい。端末間通信を終了した後は、第1無線端末20aと第2無線端末20bとが通信を行う場合には、無線基地局10経由通信を行う。
【0048】
以上説明した第1実施形態によれば、端末間の無線品質の測定結果に基づいて、無線基地局10が端末間通信を行うか否かを自律的に判断することが可能となる。したがって、第1実施形態は、従来のLTEシステムやその他の無線通信システムでは得られなかった顕著な効果を奏するものである。
【0049】
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態の下位概念に相当する実施形態の一つである。第2実施形態は、第1実施形態をLTEシステムに沿って具体化するとともに、第1実施形態における基準信号として、LTEシステムにおける規定の上りの参照信号であるサウンディング参照信号(SRS: Sounding Reference Signal)を用いるものである。本実施形他においては、SRSを単に参照信号と称することがあるので留意されたい。
【0050】
第2実施形態は第1実施形態の下位概念に当たるため、以下では第2実施形態において第1実施形態と異なる点を中心に詳しく述べる。第2実施形態においては、第1実施形態と重複する説明は適宜割愛されていることに留意されたい。
【0051】
まず、本実施形態で用いる基準信号であるSRSを説明する。LTEシステムにおける規定の上りの参照信号としては、SRSの他に復調参照信号(DRSまたはDMRS: Demodulation Reference Signal)があり、これらは本来の用途が異なる。DRSは復調用の参照信号であるため、上りデータが送信されるサブフレームにおける上りデータがマッピングされたリソースブロック(サブキャリア)でしか送信されない。これに対し、SRSはスケジューリング用の参照信号であり、送信する上りデータと同じサブフレーム内で送信される他、上りデータが存在しなくても定期的に又は無線基地局から指示された時に単発で送信される。また、SRSは、システム帯域(キャリア)全体に渡って又はシステム帯域内の一部の領域において各無線端末から送信される。
【0052】
本実施形態においては、端末間通信の可否の判断はある程度定期的に行う方が都合が良い等の理由により、SRSに基づいて端末間の無線品質を測定している。しかしながら、本実施形態はDRSを用いても同様に実施できることには留意されたい。
【0053】
図2は第2実施形態における処理シーケンスの一例を示す図である。第2実施形態の前提は第1実施形態のそれに準ずるので、ここでは説明を割愛する。
【0054】
図2のS201で無線基地局10は、下り参照信号を送信する。この下り参照信号はLTEシステムにおける規定のものである。また、S201で第1無線端末20a及び第2無線端末20bは、下り参照信号を受信する。
【0055】
下り参照信号は下りサブフレームの復調や無線品質の測定等にも用いられるが、ここでは無線端末20の送信電力の決定に用いる。LTEシステムにおける無線端末20の送信電力はオープンループ方式とクローズドループ方式とで決定されるが、S201においてはクローズドループ方式で送信電力を決定する。クローズドループ方式による無線端末20の送信電力の決定の概略を説明する。まず、予め無線端末20は、無線基地局10が送信する基準信号送信電力を示す情報が含まれた報知情報を無線基地局10から受信する(不図示)。LTEシステムにおいては、この報知情報はSIB(System Information Block)と呼ばれる情報の一つであり、PDSCHを用いて無線基地局10から送信される。次にS201で無線端末20は、下り参照信号の受信電力を実測する。次に無線端末20は、報知情報が示す送信電力と、実測された受信電力とから、無線基地局10から無線端末20へのパスロスを算出する。そして無線端末20はパスロスに基づいて、所定の規則で当該無線端末20の送信電力を算出する。このとき、パスロスが大きいほど、算出される無線端末20の送信電力も大きな値となる。
【0056】
S201で第1無線端末20aと第2無線端末20bはそれぞれ無線基地局10との間のパスロスを算出した後、下り参照信号に基づくクローズドループ方式を用いて、それぞれの送信電力を決定する。
【0057】
次にS202で第1無線端末20aは、S201で決定した第1無線端末20aの送信電力を無線基地局10に通知する。S202の通知は、例えばRRC信号によって行うことができる。
【0058】
S202における送信電力の通知は、例えばLTEシステムにおける規定のPower Head Roomにより実現することができる。Power Head Roomは無線端末20の所要送信出力(所定の計算式で算出)とその無線端末20が送信することが許された最大送信電力との差分を示すパラメータである。また、S202の通知を、これ以外により(例えば無線端末20の送信電力の絶対値を示す情報)により実現することとしても良い。
【0059】
またS203で第2無線端末20bは、S201で決定した第2無線端末20bの送信電力を無線基地局10に通知する。S203の通知も、例えばRRC信号によって行うことができる。
【0060】
次に
図2のS204で無線基地局10は、第1無線端末20aが送信する参照信号(SRS)に関する情報を送信する。この情報を、本願では参照信号情報と称することとし、特に本実施形態ではSRS情報と称することとする。参照信号情報は、参照信号の送信側にとっては参照信号を送信するために必要な情報であるとともに、参照信号の受信側にとっては参照信号を受信するために必要な情報であると言える。
【0061】
参照信号情報は、参照信号に関する様々な情報(パラメータ)を含むことができる。例えば本実施形態における参照信号情報であるSRS情報は、LTEシステムにおけるSRSに関する規定のパラメータそのもの、もしくは既定のパラメータを含むパラメータセットとすることができる。
【0062】
参照信号情報(本実施形態においてはSRS情報であり以降も同様)は、例えば、参照信号(本実施形態においてはSRSであり以降も同様)を送信するタイミングに関する情報を含む。例えば参照信号を周期的に送信する場合には、参照信号を送信するタイミングに関する情報は、(基準時点からの)オフセット値と周期(インターバル)とすることができる。ここで、参照信号をサブフレーム単位で送信する場合、オフセット値と周期の単位はサブフレームとすることができる。
【0063】
また、参照信号情報は、参照信号の信号列あるいは符号列の種類に関する情報、参照信号を送信する送信帯域幅や、参照信号を配置する周波数位置を示す情報を含むことができる。参照信号情報は、端末間における参照信号の直交性を確保するためのサイクリックシフトを含むこともできる。参照信号情報には、その他にも例えば、参照信号を送信するアンテナポート情報、参照信号に適用する周波数ホッピング情報、参照信号を送信するサブフレーム構成情報等のように、参照信号を送受信するためのあらゆる情報を含むことができる。
【0064】
ここで、本実施形態における参照信号情報は、参照信号の送信電力(絶対値)を示す情報(送信電力情報と称する)を含むものとする。本実施形態においては、S202で無線基地局10は第1無線端末20aの送信電力を報告されているため、無線基地局10は参照信号情報に送信電力情報を含ませることが可能となる。より具体的には、例えばS202の通知をPower Head Roomで実現する場合、無線基地局10はこれと予め把握している無線端末20の最大送信電力とに基づいて、無線端末の送信電力の絶対値を求めることができる。
【0065】
参照信号情報の一部または全部は、報知信号(報知情報)によって無線基地局10から無線端末20に送信することができる。また、参照信号情報の一部または全部は、個別制御信号としてRRC信号によって無線基地局10から無線端末20に送信することができる。なお、報知信号は、例えば報知チャネル(BCH: Broadcast CHannel)で送信されるMIB(Master Information Block)や、物理下り共有チャネル(PDSCH: Physical Downlink Shared CHannel)においてRRC信号によって送信されるSIB(System Information Block)を含む。
【0066】
S204で第1無線端末20aは、第1無線端末20aが送信する参照信号に関する参照信号情報(便宜上、本願ではこれを「第1無線端末20a宛参照信号情報」と称することとし、特に本実施形態では「第1無線端末20a宛SRS情報」と称することとする)を無線基地局10から受信する。また、S204では第2無線端末20bも、第1無線端末20a宛参照情報を無線基地局10から受信する。
【0067】
なお、第1無線端末20a宛参照情報の全部または一部が個別制御信号としてRRC信号によって無線基地局10から送信される場合、RRC信号を受信するためには第1無線端末20aの識別子(RNTI: Radio Network Temporary Identifier)が必要となる。そのため、第2無線端末20bがこのような第1無線端末20a宛参照情報を受信するためには何らかの工夫を要することに注意されたい。例えば、予め第1無線端末20aの識別子を第2無線端末20bに知らせておいたり、第1無線端末20aと第2無線端末20bで共通の識別子を用いたりすることが考えられる。共通の識別子は、D2D-RNTIと名付けてもよい。また、S204で無線基地局10は、第1無線端末20a宛参照情報の全部または一部を、第1無線端末20aと第2無線端末20bのそれぞれに対して別個のRRC信号によって送信することとしてもよい。この場合S204で無線基地局10はRRC信号を2つ送信することになる。
【0068】
次にS205で無線基地局10は、第2無線端末20b宛参照信号情報を送信する。これに対し第2無線端末20bは、第2無線端末20b宛参照信号情報を無線基地局10から受信する。また、第1無線端末20aも、第2無線端末20b宛参照信号情報を無線基地局10から受信する。S205はS204と同様に行えばよいため、詳細な説明は割愛する。
【0069】
図2のS206で第1無線端末20aは、S204で受信した第1無線端末20a宛参照信号情報に基づいて、参照信号(SRS)を送信する。例えば第1無線端末20aは、S204で受信した参照信号情報(SRS情報)に含まれる送信タイミングに関する情報に基づいて、参照信号を送信する。例えば参照信号情報において送信タイミングがオフセット値と周期とによってサブフレーム単位で指定されている場合、第1無線端末20aは、当該オフセット値に対応するサブフレームから当該周期に対応するサブフレーム毎に、周期的に参照信号を送信する。参照信号(SRS)は周期的に連続して送信しなくてもよく、単発的に1回あるいは数回だけ送信してもよい。この場合、参照信号情報の中で、そのような送信方法を適用することが指示される。前述したように、参照信号情報には様々な情報が含まれるが、S206で第1無線端末20aはそれらの情報に基づいて参照信号を送信する。
【0070】
本実施形態において無線端末20が送信する参照信号であるSRSは、LTEシステムにおいて本来的には無線端末20が無線基地局10向けに送信する参照信号である。したがって、S206で無線基地局10は、第1無線端末20aが送信したSRSを受信する。それに加えて、本実施形態においては、S206で第2無線端末20bも、第1無線端末20aが送信したSRSを受信する。第2無線端末20bは、S204で第1無線端末20aに対するSRS情報を受信しているので、S206で当該SRS情報に基づいて第1無線端末20aが送信したSRSを受信することができる。
【0071】
このとき第2無線端末20bは、第1無線端末20aが送信した参照信号(SRS)に基づいて、第1無線端末20aから第2無線端末20bへの無線品質を測定する。本願における無線品質は、第1実施形態で説明した通り、特に断りが無い限り、受信された無線信号(基準信号)の品質や状態、あるいは、無線信号(基準信号)が通った無線通信路の品質や状態を含む概念である。無線品質に関する説明は第1実施形態と重複するためここでは割愛する。
【0072】
無線品質の具体例としては、第1実施形態でも述べたように、伝搬路損失(パスロス)や無線特性(チャネル特性)が挙げられる。本実施形態では一例として、無線品質として伝搬路損失と無線特性を用いるものとする。ただし、伝搬路損失の代わりに、伝搬路損失とある程度の相関関係を有する情報である参照信号受信電力(RSRP: Reference Signal Received Power)、受信信号強度(RSSI: Received Signal Strength Indicator)、参照信号受信品質(RSRQ: Reference Signal Received Quality)等を用いることも可能である。また、無線特性の代わりに、無線特性に基づいて算出される指標である信号対雑音電力比(SNR: Signal to Noise power Ratio)、信号対雑音干渉電力比(SINR: Signal to Interference plus Noise power Ratio)、信号対雑音歪電力比(SNDR: Signal to Noise and Distortion power Ratio)等を用いることも可能である。
【0073】
本実施形態では一例として、無線品質としてパスロスとチャネル特性を用いる。そこで、S206で第2無線端末20bは、第1無線端末20aが送信した参照信号(SRS)に基づいて、パスロスを算出するとともに、チャネル特性を算出する。ここで、パスロスを算出するためには、下り参照信号の送信電力と受信電力(いずれも絶対値)とが必要となるが、送信電力はS204で受信した参照信号情報に含まれる送信電力情報を参照すればよく、受信電力は参照信号に基づく実測値を用いればよい。すなわち、本実施形態の第2無線端末20bは予め第1無線端末20aの送信電力を把握しているため、参照信号に基づいてパスロスを求めることができるのである。
【0074】
このように、本実施形態においては無線端末20が端末間のパスロスを算出できる。これに対し、一般的なLTEシステムにおいては無線端末20による端末間のパスロスの算出は困難である。これは、一般的なLTEシステムにおいては、無線端末20が相手無線端末20の送信電力(絶対値)を知る手段が提供されていないことに依る。
【0075】
この点、本実施形態においては、S202およびS203においては、各無線端末20は自分の送信電力(絶対値)を無線基地局10に送信している。そして、S204およびS205において無線基地局10は、無線端末20の送信電力(絶対値)を相手無線端末20に送信している。これにより、本実施形態においては無線端末20が端末間のパスロスを算出することを可能としている。
【0076】
次にS207で第2無線端末20bは、S205で受信した第2無線端末20b向けの参照信号情報に基づいて、参照信号(SRS)を送信する。これに対しS207で第1無線端末20aは、第2無線端末20bが送信した参照信号を受信する。このとき第1無線端末20aは、第2無線端末20bが送信した参照信号に基づいて、第2無線端末20bから第1無線端末20aへの無線品質を測定する。S207はS206と同様に行えばよいため、詳細な説明は割愛する。
【0077】
次にS208で第2無線端末20bは、S206で測定した第1無線端末20aから第2無線端末20bへの無線品質を無線基地局10に報告する(送信する)。S208の報告は、例えばPUSCHを用いて送信されるRRC信号、PUSCHそのものを使用することにより送信することができる。S206の報告を上り制御信号やその他の信号により送信することとしてもよい。これに対し、S208で無線基地局10は、第1無線端末20aから第2無線端末20bへの無線品質の報告を第2無線端末20bから受ける(受信する)。
【0078】
次にS209で第1無線端末20aは、S207で測定した第2無線端末20bから第1無線端末20aへの無線品質を無線基地局10に報告する(送信する)。これに対し、S209で無線基地局10は、第2無線端末20bから第1無線端末20aへの無線品質の報告を第1無線端末20aから受ける(受信する)。S209はS208と同様に行えばよいため、詳細な説明は割愛する。
【0079】
次にS210で無線基地局10は、S208で第2無線端末20bから受信した第1無線端末20aから第2無線端末20bへの無線品質とS209で第1無線端末20aから受信した第2無線端末20bから第1無線端末20aへの無線品質とに基づいて、第1無線端末20aと第2無線端末20bの間で端末間通信を行うか否かを判断する。
【0080】
無線基地局10はS210の判断を、S208とS209とでそれぞれ受信した無線品質に基づいて、任意の方法で行ってよいものとする。すなわち、無線基地局10はS210の判断を、任意の判断基準、ルール、アルゴリズム等に基づいて行うことができる。
【0081】
S210における判断方法の一例を示す。前述したように、本実施形態においてはS208とS209とで報告される無線品質がそれぞれ、伝搬路損失と無線特性とを含む。このとき、無線基地局10はまず、第1無線端末20aから第2無線端末20bへの無線品質について、伝搬路損失が所定の閾値以下であるか(第1条件と呼ぶ)と、予め定められた端末間通信用のリソースブロック(サブキャリア)における無線特性が所定の品質を満たすか(第2条件と呼ぶ)とを満たすかを判定する。そして、第1無線端末20aから第2への無線品質について第1条件と第2条件とが満たされる場合、無線基地局10はさらに、第2無線端末20bから第1無線端末20aへの無線品質について第1条件と第2条件とが満たされるかを判定する。そして、第2無線端末20bから第1無線端末20aへの無線品質についても第1条件と第2条件とが満たされる場合、無線基地局10は第1無線端末20aと第2無線端末20bの間で端末間通信を行うと判断することができる。他方、それ以外の場合には、無線基地局10は第1無線端末20aと第2無線端末20bの間で端末間通信を行わないと判断することができる。ここで説明した判断方法は一例であり、前述したように、無線基地局10はS210の判断を、S208とS209とでそれぞれ受信した無線品質に基づいて、任意の方法で行うことができることに注意されたい。
【0082】
次にS211で無線基地局10は、S210における判断結果を第1無線端末20aと第2無線端末20bとに通知する(送信する)。すなわち、S211で無線基地局10は、第1無線端末20aと第2無線端末20bとの間で端末間通信を行うか否かを、第1無線端末20aと第2無線端末20bとに通知する。S211の通知は、例えばRRC信号により送信することができる。S211の通知をDCIやその他の信号により送信することとしてもよい。これに対し、S211で第1無線端末20aと第2無線端末20bは、S210における無線基地局10による判断結果の通知を無線基地局10から受ける(受信する)。
【0083】
なお、S211の通知を2つの無線端末20が受信する際、S204において参照信号情報を2つの無線端末20が受信する際と同様の工夫を要することに留意する。
【0084】
S211で第1無線端末20aと第2無線端末20bとはそれぞれ、端末間送信を行う旨の指示を受信する。これにより、S211以降において、第1無線端末20aと第2無線端末20bとは、無線基地局10経由通信ではなく、端末間通信を行うことが可能となる。すなわち、S211以降においては、第1無線端末20aと第2無線端末20bが通信を行う場合、無線基地局10経由を介さず、端末間で無線信号の送受信を行うことができる。
図1においては一例として、S212で第1無線端末20aから第2無線端末20bに対してデータ信号を送信し、S213で第2無線端末20bから第1無線端末20aに応答信号(例えばACK信号)を送信している。また、S214で第2無線端末20bから第1無線端末20aに対してデータ信号を送信し、S215で第1無線端末20aから第2無線端末20bに応答信号を送信している。
【0085】
図2のS212〜S215については、第1実施形態に係る
図1のS107〜S110と同様に行えばよい為、ここでの説明は割愛する。
【0086】
ここで、S211以降で第1無線端末20aと第2無線端末20bの間での端末間通信は可能となるが、端末間通信の合間に、各無線端末20は無線基地局10との間で通信を行ってもかまわないことには留意されたい。この点は第1実施形態と同様である。特に、無線基地局10が周期的に送信している同期信号を、第1無線端末20aと第2無線端末20bが、その送信周期と同じ、あるいはそれよりも長い周期で定期的に又は非定期的に受信することで、無線基地局10との間の同期を維持するのが極めて望ましい。また、例えば、無線基地局10は、端末間通信に因る干渉の発生量を制御する目的で制御信号を第1無線端末20aと第2無線端末20bに送信してもよい。さらに、第1無線端末20aと第2無線端末20bは、無線品質(測定結果)を、定期的に、又は無線基地局10から指示された時、あるいは事前に決められた条件を満たした時に、無線基地局10に送信してもよい。これにより、無線基地局10は無線端末間の無線品質(端末間通信の品質)を適時に把握でき、端末間通信を適切に管理または制御することが可能となる。
【0087】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、端末間の無線品質の測定結果に基づいて、無線基地局10が端末間通信を行うか否かを自律的に判断することが可能となる。したがって、第2実施形態は、従来のLTEシステムやその他の無線通信システムでは得られなかった顕著な効果を奏するものである。
【0088】
また、第2実施形態は既存のLTEシステムで規定しているSRSを利用するものであり、端末間通信の為の参照信号を新たに導入するものではない。そのため、既存のLTEシステムに対する変更を最小限に留めつつ、上記の効果を得られるという利点があることに留意されたい。
【0089】
[第3実施形態]
第3実施形態は、第2実施形態と同様に、第1実施形態の下位概念に相当する実施形態の一つである。第2実施形態は、第1実施形態をLTEシステムに沿って具体化するとともに、基準信号としてLTEシステムにおける規定の上りの参照信号であるSRSを用いるものであった。これに対し、第3実施形態は、第1実施形態をLTEシステムに沿って具体化するとともに、基準信号としてLTEシステムにおける規定されていない端末間の参照信号を導入するものである。
【0090】
第3実施形態は第2実施形態と共通する点が多いため、以下では第3実施形態において第2実施形態と異なる点を中心に詳しく述べる。第3実施形態においては、第2実施形態と重複する説明は適宜割愛されていることに留意されたい。また、第3実施形態の説明を補うために第2実施形態の説明を参照する場合には、第2実施形態における「SRS」を「端末間参照信号」と読み替えることに留意されたい。
【0091】
まず、本実施形態の意義について説明する。第2実施形態においては、端末間の無線品質を測定するための基準信号として、LTEシステムで規定の上り参照信号であるSRSを用いた。ここで、第2実施形態において説明したように、SRSの送信電力は無線基地局10から無線端末20へのパスロスに基づいて決定される。SRSは本来は無線端末20から無線基地局10に向けて送信される参照信号であるため、無線基地局10まで到達するような送信電力で送信する必要があるためである。
【0092】
したがって、パスロスが大きい無線端末20ほど、SRSの送信電力も大きくなる。典型的には、無線基地局10から遠い無線端末20(セル端に位置する無線端末20)ほど、SRSの送信電力は大きくなる。当然のことながら、SRSの送信電力は無線端末20毎に異なるものとなる。
【0093】
ところで、端末間の無線品質を測定するための基準信号として供される参照信号(本願においては端末間参照信号と称する)においては、その送信電力が次の3つの要件を満たすのが望ましいと考えられる。
【0094】
まず第1の要件としては、端末間参照信号の送信電力が端末間で等しいことが挙げられる。端末間参照信号の送信電力が端末間で異なると、無線特性の評価が双方向で不公平となることが考えられる。相手の送信電力が小さい方の無線端末20において受信電力が小さくなることにより、干渉波の影響を受けやすくなるためである。そして、無線特性の評価から公平性が失われると、端末間通信可否判定の妥当性にも影響を及ぼすので好ましくない。したがって、端末間参照信号の送信電力が端末間で等しいのが望ましいと考えられる。
【0095】
次に第2の要件としては、端末間参照信号の送信電力が無線基地局10から遠い無線端末20ほど小さいことが挙げられる。無線基地局10から遠い無線端末20(セル端に位置する無線端末20)が強い送信電力で信号を送信すると、周辺の他無線基地局10b等への干渉源になりやすくなるためである。
【0096】
さらに第3の要件としては、端末間参照信号の送信電力が端末間の距離に応じて決定されるが挙げられる。端末間参照信号の受信電力の変化が少ない方が、無線品質の評価が適切に行えるためである。
【0097】
以上のように、端末間参照信号においてはこれら3つの要件を満たすのが望ましいと考えられる。しかしながら、第2実施形態の基準信号であるSRSはこれらをいずれも満たさない。まず、前述したようにSRSの送信電力は無線端末20同士で異なるため、第1要件は満たさない。また、SRSはむしろ無線基地局10から遠い無線端末20の送信電力が大きくなるため、第2要件も満たさない。さらに、SRSは端末間の距離などは考慮しないため第3要件も満たさない。
【0098】
したがって、端末間の無線品質の測定を行う場合、LTEシステムにおける規定のSRSをそのまま流用するよりも、上記の3つの要件を満たすような端末間参照信号を導入するのも一つの手であると考えられる。
【0099】
ここで、本実施形態で導入される端末間参照信号としては、SRSを一部流用するものであってもよいことに留意されたい。一例としては、信号列(符号列)についてはSRSのものを流用し、送信タイミングや周波数位置については別途規定することが考えられる。また、そのような場合には、特に、送信電力を別途規定することが望ましい。一般的なLTEシステムにおいてはSRSの送信電力はPDSCHの送信電力に関連付けられており、PUSCHの送信電力とSRSの送信電力の差分が無線基地局10から無線端末20に通知される。しかしながら、SRSを端末間参照信号として流用する場合には、SRSの送信電力をPDSCHの送信電力に関連付けない方が好ましい。PUSCHの送信電力は無線端末20と無線基地局10との距離に依存するためである。そこで、SRSの送信電力を端末間参照信号として流用する場合は送信電力を調整するのが望ましい。これは、SRSの送信電力を適切に調整するための情報(例えばSRSの送信電力の絶対値を示す情報)を、無線基地局10から無線端末20に対して通知(上述した参照信号情報における送信電力情報に対応)することにより実現できる。
【0100】
なお、上記の3つの要件は端末間参照信号において必須というわけではないことには注意を要する。端末間参照信号としては3つの要件のうち一つ以上を満たすのが望ましいとともに、多くの要件を満たす方がより望ましいと考えられるが、これらを満たさない信号でなければ端末間参照信号として使用できないわけではないことに留意されたい。
【0101】
第3実施形態は、このような端末間参照信号を基準信号として用いる実施形態の一例である。
【0102】
図3は第3実施形態における処理シーケンスの一例を示す図である。第3実施形態の前提は第1実施形態のそれに準ずるので、ここでは説明を割愛する。
【0103】
図3のS301で無線基地局10は、第1無線端末20aおよび第2無線端末20bが端末間参照信号を送信する際の送信電力を決定する。本実施形態においては、前述した第1要件に鑑み、第1無線端末20aと第2無線端末20bは同一の送信電力で端末間参照信号を送信するものとする。すなわち、S301において無線基地局10により決定される送信電力は、第1無線端末20aと第2無線端末20bとで共通するものとなる。
【0104】
S301における無線基地局10による無線端末20の送信電力の決定は、任意の方法で行ってよいものとする。すなわち、無線基地局10はS301における送信電力の決定を、任意の決定基準、ルール、アルゴリズム等に基づいて行うことができる。なお、S301における送信電力の決定には、送信電力を状況に応じてその都度決定する場合の他に、送信電力が予め決定(所定値に決め打ち)されている場合も含むものとする。
【0105】
S301における送信電力の決定方法の一例を示す。最も単純な例としては、送信電力を所定値とすることが考えられる。このような所定値の一例としては、無線基地局10が有するセルの大きさに応じて予め定めておくことが考えられる。また、無線基地局10は、予め無線端末20から受信した情報や、他無線基地局10bから受信した情報等に基づいて、無線端末20の送信電力に対する所定値を決定することとしてもよい。
【0106】
次に
図3のS302で無線基地局10は、第1無線端末20a宛参照信号情報を送信する。これに対し、S302で第1無線端末20aは、第1無線端末20a宛参照信号情報を無線基地局10から受信する。さらに、S302で第2無線端末20bも、第1無線端末20a宛参照信号情報を無線基地局10から受信する。
【0107】
S302は、第2実施形態に係る
図2のS204に沿って行うことができる。ただし、S302の第1無線端末20a宛参照信号情報は、S204の第1無線端末20a宛参照情報と一部が異なるため、以下に説明する。
【0108】
第2実施形態に係るS204の第1無線端末20a宛参照情報には、第1無線端末20aが送信する参照信号の送信電力を示す情報である送信電力情報が含まれていた。しかしながら、本実施形態に係るS302の第1無線端末20a宛参照情報には、送信電力情報(S301で決定した送信電力を示す情報)は含まないものとする。なお、本実施形態においては、送信電力情報は後述するS304で第1無線端末20aに送信される。
【0109】
図3のS303で無線基地局10は、第2無線端末20b宛参照信号情報を送信する。これに対し、S303で第2無線端末20bは、第2無線端末20b宛参照信号情報を無線基地局10から受信する。さらに、S303で第1無線端末20aも、第2無線端末20b宛参照信号情報を無線基地局10から受信する。S303はS302と同様に行えばよいため、詳細な説明は割愛する。
【0110】
次に
図3のS304で無線基地局10は、S301で決定した送信電力を示す送信電力情報を送信する。これに対し、S304において第1無線端末20aと第2無線端末20bとの両方が、無線基地局10から送信電力情報を受信する。S301で決定される送信電力は第1無線端末20aと第2無線端末20bに共通するものであるためである。
【0111】
S304の送信電力情報は、任意の信号で送信することができる。例えば、送信電力情報を前述した個別のRRC信号によって送信することができる。また、送信電力情報を前述したDCIによって送信することもできる。他にも、送信電力情報を前述した報知情報により送信することも可能である。
【0112】
なお、S304の送信電力情報を個別のRRC信号やDCIで送信する場合、それらは2つの無線端末20により受信されるものであるため、S204において参照信号情報を2つの無線端末20が受信する際と同様の工夫を要することに留意する。
【0113】
ところで、S304で無線基地局10が送信電力情報をDCIで送信する場合には、無線基地局10は通常、無線端末20が送信電力情報の受信に成功したかを知ることができない。DCIには通常は応答信号(ACK信号またはNACK信号)が付随しないためである。この問題は、DCIにおいて無線端末20による応答信号送信用の小さな上り無線リソースを割当てることで解決することができる。
【0114】
次にS305で第1無線端末20aは、S302で受信した第1無線端末20a宛参照信号情報に基づいて、S304で受信した送信電力情報が示す送信電力で、端末間参照信号を送信する。これに対し、S305で第2無線端末20bは、S302で受信した第1無線端末20a宛参照信号情報に基づいて、端末間参照信号を受信する。このとき第2無線端末20bは、S304で受信した送信電力情報が示す送信電力に基づいて、第1無線端末20aから第2無線端末20bへのパスロスを測定する。
【0115】
S305は、第2実施形態に係る
図2のS206と同様に行えばよいため、ここでは説明を割愛する。ただし、第2実施形態のS206のSRSとは異なり、本実施形態のS304の端末間参照信号は無線基地局10が受信しないことに留意する。
【0116】
次にS306で第2無線端末20bは、S303で受信した第2無線端末20b宛参照信号情報に基づいて、S304で受信した送信電力情報が示す送信電力で、端末間参照信号を送信する。これに対し、S306で第1無線端末20aは、S303で受信した第2無線端末20b宛参照信号情報に基づいて、端末間参照信号を受信する。このとき第1無線端末20aは、S304で受信した送信電力情報が示す送信電力に基づいて、第2無線端末20bから第1無線端末20aへのパスロスを測定する。S306は、S305と同様に行えばよいため、ここでは説明を割愛する。
【0117】
図3における以降の処理であるS307〜S314については、第2実施形態に係る
図2のS208〜S215と同様に行えばよい為、ここでの説明は割愛する。
【0118】
なお、
図3に例示される処理シーケンスおよびそれに基づく上記の説明においては、S302の第1無線端末20a宛参照情報信号、S303の第2無線端末20b宛参照信号情報、S304の送信電力情報はそれぞれ別の信号であるように記載されている。しかしながら、これは第3実施形態の一例に過ぎず、これらの信号は同じ信号であってもよいことに注意を要する。例えば、S302〜S304が一つの信号で送受信されてもかまわない。また、S302とS304とが1つの信号で送受信され、S303とS304とが他の1つの信号で送受信されてもかまわない(この場合、S304の送信電力情報は実質的には各無線端末20に2度通知される)。これらの変更は、第3実施形態の効果を何ら減ずるものではないことに留意されたい。
【0119】
以上説明した第3実施形態によれば、第1〜第2実施形態と同様に、端末間の無線品質の測定結果に基づいて、無線基地局10が端末間通信を行うか否かを自律的に判断することが可能となる。したがって、第3実施形態は、従来のLTEシステムやその他の無線通信システムでは得られなかった顕著な効果を奏するものである。
【0120】
また、第3実施形態では端末間参照信号を導入することで、前述した第1要件を満たすものとなっていることに注意を要する。そのため、第3実施形態は、端末間参照信号の送信電力が端末間で等しくなるという効果も奏するものである。
【0121】
[第4実施形態]
第4実施形態は、第3実施形態の下位概念に相当する実施形態の一つである。第4実施形態も、第3実施形態と同様に、端末間参照信号を基準信号として用いる実施形態の一例である。第4実施形態は、無線基地局10が他無線基地局10b等への干渉の影響を考慮して、無線端末20の送信電力を決定するものである。
【0122】
第4実施形態は第3実施形態と共通する点が多いため、以下では第4実施形態において第3実施形態と異なる点を中心に詳しく述べる。第4実施形態においては、第3実施形態と重複する説明は適宜割愛されていることに留意されたい。
【0123】
図4は第4実施形態における処理シーケンスの一例を示す図である。第4実施形態の前提は第3実施形態のそれに準ずるので、ここでは説明を割愛する。
【0124】
図4のS401で無線基地局10は、下り参照信号を送信する。この下り参照信号はLTEシステムにおける規定のものであり、
図2のS201で送信されているものと同じものである。また、S401で第1無線端末20a及び第2無線端末20bは、下り参照信号を受信する。
【0125】
このとき第1無線端末20a及び第2無線端末20bは、受信した下り参照信号に基づいて、無線基地局10から各無線端末20への無線品質(下りリンクの無線品質)を測定する。ここでの無線品質としては前述したSIR等を用いることができる。そして、第1無線端末20a及び第2無線端末20bは、下りリンクの無線品質に基づいてCQI(Channel Quality Indicator)を生成する。CQIは下りリンクの通信路品質を示す上り指標であり、LTEシステムにおいて規定されている上り制御情報の一つである。CQIが無線基地局10にフィードバックされることで、無線基地局10は下りリンクの通信路品質を把握することができ、下りリンクのスケジューリング等を行うことが可能となる。
【0126】
次に
図4のS402で第1無線端末20aは、S401で生成したCQIを無線基地局10に送信する。これに対し無線基地局10は、CQIを第1無線端末20aから受信する。CQIの送受信はPUCCHまたはPUSCHのいずれかを介して行われる。
【0127】
また、S403で第2無線端末20bは、S401で生成したCQIを無線基地局10に送信する。これに対し無線基地局10は、CQIを第2無線端末20bから受信する。S403はS402と同様にして行われる。
【0128】
そして
図4のS404で無線基地局10は、第1無線端末20aおよび第2無線端末20bが端末間参照信号を送信する際の送信電力を決定する。本実施形態においては、第3実施形態と同様に、第1無線端末20aと第2無線端末20bは同一の送信電力で端末間参照信号を送信する。すなわち、S404において無線基地局10により決定される送信電力は、第1無線端末20aと第2無線端末20bとで共通するものとなる。
【0129】
S404における無線基地局10による無線端末20の送信電力の決定は、任意の方法で行ってよいものとする。ただし、S404の決定においては、無線基地局10は少なくとも他無線基地局10b(他セル)等への干渉の影響を考慮して、無線端末20の送信電力を決定するものとする。この趣旨を逸脱しない限り、無線基地局10はS404における送信電力の決定を、任意の決定基準、ルール、アルゴリズム等に基づいて行うことができる。
【0130】
S404における無線端末20の送信電力の決定方法の一例を示す。例えば、無線基地局10は、S402とS403で受信したそれぞれのCQIに基づいて、無線端末20の送信電力を決定する。より具体的には、無線基地局10は、S402で第1無線端末20aから受信したCQIとS403で第2無線端末20bから受信したCQIとに基づいて、各CQIが示す下りリンクの無線品質が悪いほど送信電力が小さくなるように、無線端末20の送信電力を決定することができる。下りリンクの無線品質が悪いということは、無線端末20が無線基地局10から離れている(無線端末20がセル端に位置する)可能性が高いということであり、そのような場合には他無線基地局10b等への干渉を考慮して送信電力を小さくする方が望ましいと考えられるからである。なお、2つのCQIから下りリンクの評価をする際には、下りリンクの無線品質が悪い方のCQIに基づいて送信電力を決定してもよいし、2つのCQIの示す下りリンクの無線品質の平均値に基づいて送信電力を決定してもかまわない。
【0131】
S404における無線端末20の送信電力の決定方法の他の一例を示す。LTEシステムにおいては、セル間干渉制御(ICIC: Inter-Cell Interference Coordination)と呼ばれる技術が知られている。ICICではセル間(無線基地局10間)で協調して干渉制御を行うためにセル間で情報交換を行うが、上りリンクのICICのために交換される情報としてはHII(High Interference Indication)やOI(interference Overload Indication)の2種類が規定されている。HIIは、無線基地局10がセル端のユーザに割当てるリソースブロック(サブキャリア)を他無線基地局10bに通知するものである。また、OIは、無線基地局10がリソースブロック(サブキャリア)毎に測定した干渉電力の大きさ(干渉電力のレベル)を他無線基地局10bに通知するものである。
【0132】
S404において、例えば無線基地局10は、他無線基地局10bから予めHIIを受信しておき(不図示)、当該HIIが示すリソースブロックが多いほど送信電力が小さくなるように、無線端末20の送信電力を決定することができる。他無線基地局10bから受信したHIIが示すリソースブロックが多いということは、当該他無線基地局10bのセル端に無線端末20が多く存在する可能性が高いということであり、そのような場合には当該他無線基地局10b等への干渉を考慮して無線端末20の送信電力を小さくする方が望ましいと考えられるからである。
【0133】
また、S404において、例えば無線基地局10は、他無線基地局10bから予めOIを受信しておき(不図示)、当該OIが示す干渉電力が大きなリソースブロックが多いほど送信電力が小さくなるように、無線端末20の送信電力を決定することができる。他無線基地局10bから受信したOIが示す干渉電力が大きなリソースブロックが多いということは、当該他無線基地局10bが周囲から干渉を強く受けているということであり、そのような場合には当該他無線基地局10b等への干渉を考慮して無線端末20の送信電力を小さくする方が望ましいと考えられるからである。
【0134】
上記ではS404における無線端末20の送信電力の決定の具体例をいくつか述べたが、これらは例示に過ぎないことには留意されたい。前述したように、S404において無線基地局10は少なくとも他無線基地局10b(他セル)等への干渉の影響を考慮する任意の方法により、無線端末20の送信電力を決定することができる。上記で説明した具体例を適宜組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0135】
図4における以降の処理であるS405〜S417については、第3実施形態に係る
図3のS302〜S314と同様に行えばよい為、ここでの説明は割愛する。
【0136】
以上説明した第4実施形態によれば、第1〜第3実施形態と同様に、端末間の無線品質の測定結果に基づいて、無線基地局10が端末間通信を行うか否かを自律的に判断することが可能となる。したがって、第4実施形態は、従来のLTEシステムやその他の無線通信システムでは得られなかった顕著な効果を奏するものである。
【0137】
また、第4実施形態では端末間参照信号を導入することで、前述した第1要件および第2要件を満たすものとなっていることに注意を要する。そのため、第4実施形態は、端末間参照信号の送信電力が端末間で等しくなるという効果とともに、端末間通信が他無線基地局10b等への干渉源となりにくいという効果を奏するものである。
【0138】
[第5実施形態]
第5実施形態は、第4実施形態と同様に、第3実施形態の下位概念に相当する実施形態の一つである。第5実施形態も、第3〜第4実施形態と同様に、端末間参照信号を基準信号として用いる実施形態の一例である。第5実施形態は、無線基地局10が他無線基地局10b等への干渉の影響を考慮するとともに、端末間の距離を考慮して、無線端末20の送信電力を決定するものである。
【0139】
第5実施形態は第3実施形態と共通する点が多いため、以下では第5実施形態において第3実施形態と異なる点を中心に詳しく述べる。第5実施形態においては、第3実施形態と重複する説明は適宜割愛されていることに留意されたい。
【0140】
図5は第5実施形態における処理シーケンスの一例を示す図である。第5実施形態の前提は第3実施形態のそれに準ずるので、ここでは説明を割愛する。
【0141】
図5のS501で第1無線端末20aは、第1無線端末20aの無線端末位置情報を無線基地局10に送信する。ここで、無線端末位置情報は、無線端末20の位置を示す情報であり、例えばGPS(Global Positioning System)により測位された無線端末20の位置を示す情報を含むことができる。また、無線端末位置情報は、LTEシステムで規定された端末位置測定用の専用参照信号であるPRS(Positioning Reference Signal)を用いて求められた無線端末20の位置を示す情報を含むこととしてもよい。S501の無線端末位置情報の送信は、例えばRRC信号やデータ信号によって行うことができる。S501で無線基地局10は、第1無線端末20aの無線端末位置情報を第1無線端末20aから受信する。
【0142】
S502で第2無線端末20bは、第2無線端末20bの無線端末位置情報を無線基地局10に送信する。S502で無線基地局10は、第2無線端末20bの無線端末位置情報を第2無線端末20bから受信する。S502はS501と同様に行えばよいため説明は割愛する。
【0143】
そして
図5のS503で無線基地局10は、第1無線端末20aおよび第2無線端末20bが端末間参照信号を送信する際の送信電力を決定する。本実施形態においては、第3〜第4実施形態と同様に、第1無線端末20aと第2無線端末20bは同一の送信電力で端末間参照信号を送信する。すなわち、S503において無線基地局10により決定される送信電力は、第1無線端末20aと第2無線端末20bとで共通するものとなる。
【0144】
S503における無線基地局10による無線端末20の送信電力の決定は、任意の方法で行ってよいものとする。ただし、S503の決定においては、無線基地局10は少なくとも他無線基地局10b(他セル)等への干渉の影響を考慮するとともに、端末間の距離を考慮して、無線端末20の送信電力を決定するものとする。この趣旨を逸脱しない限り、無線基地局10はS503における送信電力の決定を、任意の決定基準、ルール、アルゴリズム等に基づいて行うことができる。
【0145】
S503における無線端末20の送信電力の決定方法の一例を示す。例えば、無線基地局10は、S501とS502で受信したそれぞれの無線端末位置情報に基づいて、無線端末20の送信電力を決定する。より詳細には、まず無線基地局10は、S501で第1無線端末20aから受信した無線端末位置情報とS502で第2無線端末20bから受信した無線端末位置情報とに基づいて、無線基地局10と各無線端末20との間の距離をそれぞれ算出する(無線基地局10は予め自分の位置を認識しているものとする)。また、2つの無線端末位置情報に基づいて、端末間の距離を算出する。そして無線基地局10は、無線基地局10と各無線端末20との間の距離と、端末間の距離とに基づいて、無線端末20の送信電力を決定することができる。
【0146】
例えば無線基地局10は、無線基地局10と各無線端末20との間の距離が比較的大きい場合には、端末間の距離の大小にかかわらず、無線端末20の送信電力を小さくすることができる。他無線基地局10bへの干渉を抑制する必要がある為である。また、例えば無線基地局10は、無線基地局10と各無線端末20との間の距離が比較的小さい場合には、端末間の距離が大きいときは無線端末20の送信電力を大きくするとともに、端末間の距離が小さいときは無線端末20の送信電力を小さくすることができる。他無線基地局10bへの干渉は少ないと考えられるため、端末間の距離に応じて送信電力を定めるのが都合が良いと考えられる為である。
【0147】
図5における以降の処理であるS504〜S516については、第3実施形態に係る
図3のS302〜S314と同様に行えばよい為、ここでの説明は割愛する。
【0148】
以上説明した第5実施形態によれば、第1〜第4実施形態と同様に、端末間の無線品質の測定結果に基づいて、無線基地局10が端末間通信を行うか否かを自律的に判断することが可能となる。したがって、第5実施形態は、従来のLTEシステムやその他の無線通信システムでは得られなかった顕著な効果を奏するものである。
【0149】
また、第5実施形態では端末間参照信号を導入することで、前述した第1要件〜第3要件を満たすものとなっていることに注意を要する。そのため、第5実施形態は、端末間参照信号の送信電力が端末間で等しくなるという効果、端末間通信が他無線基地局10b等への干渉源となりにくいという効果に加え、端末間参照信号の受信電力が一定になりやすいという効果を奏するものである。
【0150】
[各実施形態の無線通信システムのネットワーク構成]
次に
図6に基づいて、各実施形態の無線通信システム1のネットワーク構成を説明する。
図6に示すように、無線通信システム1は、無線基地局10と、無線端末20とを有する。なお、
図6においては2台の無線端末20である無線端末20aと無線端末20bが例示されているが、これは一例にすぎないのは言うまでもない。無線基地局10は、セルC10を形成している。無線端末20はセルC10に存在している。なお、本願においては無線基地局10を「送信局」、無線端末20を「受信局」と称することがあることに注意されたい。
【0151】
無線基地局10は、有線接続を介してネットワーク装置3と接続されており、ネットワーク装置3は、有線接続を介してネットワーク2に接続されている。無線基地局10は、ネットワーク装置3およびネットワーク2を介して、他の無線基地局10とデータや制御情報を送受信可能に設けられている。
【0152】
無線基地局10は、無線端末20との無線通信機能とデジタル信号処理及び制御機能とを分離して別装置としてもよい。この場合、無線通信機能を備える装置をRRH(Remote Radio Head)、デジタル信号処理及び制御機能を備える装置をBBU(Base Band Unit)と呼ぶ。RRHはBBUから張り出されて設置され、それらの間は光ファイバなどで有線接続されてもよい。また、無線基地局10は、マクロ無線基地局10、ピコ無線基地局10等の小型無線基地局10(マイクロ無線基地局10、フェムト無線基地局10等を含む)の他、様々な規模の無線基地局10であってよい。また、無線基地局10と無線端末20との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(無線端末20との送受信及びその制御)も本願の無線基地局10に含まれることとしてもよい。
【0153】
一方、無線端末20は、
図6に示されるように、無線通信で無線基地局10と通信を行う。また、
図6においては、一例として、無線端末20aと無線端末20bとが端末間通信を行っている。このように、無線端末20は他無線端末20と端末間通信を行う。
【0154】
無線端末20は、携帯電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ(Personal Computer)、無線通信機能を有する各種装置や機器(センサー装置等)などの無線端末20であってよい。また、無線基地局10と無線端末20との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(無線基地局10との送受信及びその制御)も本稿の無線端末20に含まれることとしてもよい。
【0155】
ネットワーク装置3は、例えば通信部と制御部とを備え、これら各構成部分が、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。ネットワーク装置3は、例えばゲートウェイにより実現される。ネットワーク装置3のハードウェア構成としては、例えば通信部はインタフェース回路、制御部はプロセッサとメモリとで実現される。
【0156】
なお、無線基地局10、無線端末20の各構成要素の分散・統合の具体的態様は、第1実施形態の態様に限定されず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することもできる。例えば、メモリを、無線基地局10、無線端末20の外部装置としてネットワークやケーブル経由で接続するようにしてもよい。
【0157】
[各実施形態の無線通信システムにおける各装置の機能構成]
次に、
図7〜
図8に基づいて、各実施形態の無線通信システムにおける各装置の機能構成を説明する。なお、上述したように、無線端末20と述べた場合には、上述した各実施形態における第1無線端末20aと第2無線端末20bとを含むことに留意されたい。
【0158】
図7は、無線基地局10の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図7に示すように、無線基地局10は、例えば、無線送信部11と、無線受信部12と、制御部13と、記憶部14と、通信部15とを備える。これら各構成部分は、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。なお、無線送信部11と無線受信部12とをまとめて無線通信部16と称する。
【0159】
無線送信部11は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。無線送信部11は、無線端末20に対して無線信号(下りの無線信号)を送信する。無線送信部11が送信する無線信号には、無線端末20向けの任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0160】
無線送信部11が送信する無線信号の具体例としては、
図1〜
図5において各無線基地局10が無線端末20に対して送信している各無線信号(図中の矢印)が挙げられる。無線送信部11が送信する無線信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で各無線基地局10が無線端末20に対し送信するあらゆる無線信号を含む。
【0161】
無線受信部12は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で受信する。無線受信部12は、無線端末20から無線信号(上りの無線信号)を受信する。無線受信部12が受信する無線信号には、無線端末20により送信される任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0162】
無線受信部12が受信する無線信号の具体例としては、
図1〜
図5において各無線基地局10が無線端末20から受信している各無線信号(図中の矢印)が挙げられる。無線受信部12が受信する信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で各無線基地局10が無線端末20から受信するあらゆる無線信号を含む。
【0163】
制御部13は、無線端末20に送信するデータや制御情報を無線送信部11に出力する。制御部13は、無線端末20から受信されるデータや制御情報を無線受信部12から入力する。制御部13は、後述する記憶部14との間でデータ、制御情報、プログラム等の入出力を行う。制御部13は、後述する通信部15との間で、他の無線基地局10等を相手に送受信するデータや制御情報の入出力を行う。制御部13はこれら以外にも無線基地局10における種々の制御を行う。
【0164】
制御部13が制御する処理の具体例としては、
図1〜
図5において各無線基地局10が送受信している各信号(図中の矢印)に対する制御、および各無線基地局10が行っている各処理(図中の矩形)に対する制御が挙げられる。制御部13が制御する処理は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で各無線基地局10が実行するあらゆる処理に関する制御を含む。
【0165】
記憶部14は、データ、制御情報、プログラム等の各種情報の記憶を行う。記憶部14が記憶する各種情報は、上記の各実施形態および変形例で各無線基地局10において記憶されうるあらゆる情報を含む。
【0166】
通信部15は、有線信号等(無線信号でも構わない)を介して、他の無線基地局10等を相手にデータや制御情報を送受信する。通信部15が送受信する有線信号等の具体例としては、各実施形態において各無線基地局10が他の無線基地局10を相手に送受信している各有線信号等が挙げられる。通信部15が送受信する有線信号等は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で各無線基地局10が他の無線基地局10等を相手に送受信するあらゆる有線信号等を含む。
【0167】
なお、無線基地局10は、無線送信部11や無線受信部12を介して無線端末20以外の無線通信装置(例えば他の無線基地局10や中継局)と無線信号を送受信してもかまわない。
【0168】
図8は、無線端末20の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図8に示すように、無線端末20は、例えば、無線送信部21と、無線受信部22と、制御部23と、記憶部24とを備える。これら各構成部分は、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。なお、無線送信部21と無線受信部22とをまとめて無線通信部25と称する。
【0169】
無線送信部21は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。無線送信部21は、各無線基地局10に対して無線信号(上りの無線信号)を送信する。無線送信部21が送信する無線信号には、各無線基地局10向けの任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0170】
また、無線送信部21は、他の無線端末20に対して無線信号を送信することができる(端末間通信)。無線送信部21が送信する無線信号には、他の無線端末20向けの任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0171】
無線送信部21が送信する無線信号の具体例としては、
図1〜
図5において無線端末20が各無線基地局10に対して送信している各無線信号(図中の矢印)、および無線端末20が他の無線端末20に対して送信している各無線信号が挙げられる。無線送信部21が送信する無線信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が各無線基地局10に対し送信するあらゆる無線信号、および無線端末20が他の無線端末20に対して送信しているあらゆる無線信号を含む。
【0172】
無線受信部22は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で受信する。無線受信部22は、各無線基地局10から無線信号(下りの無線信号)を受信する。無線受信部22が受信する無線信号には、各無線基地局10により送信される任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0173】
また、無線受信部22は、他の無線端末20から無線信号を受信することができる(端末間通信)。無線受信部22が送信する無線信号には、他の無線端末20からの任意のユーザデータや制御情報(符号化や変調等がなされる)、基準信号等を含むことができる。
【0174】
無線受信部22が受信する無線信号の具体例としては、
図1〜
図5において無線端末20が無線基地局10から受信している各無線信号(図中の矢印))、および無線端末20が他の無線端末20から受信している各無線信号が挙げられる。無線受信部22が受信する信号は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が各無線基地局10から受信するあらゆる無線信号、および無線端末20が他の無線端末20から受信しているあらゆる無線信号を含む。
【0175】
制御部23は、各無線基地局10に送信するデータや制御情報を無線送信部21に出力する。制御部23は、各無線基地局10から受信されるデータや制御情報を無線受信部22から入力する。制御部23は、後述する記憶部24との間でデータ、制御情報、プログラム等の入出力を行う。制御部23はこれら以外にも無線端末20における種々の制御を行う。
【0176】
制御部23が制御する処理の具体例としては、
図1〜
図5において無線端末20が送受信している各信号(図中の矢印)に対する制御、および無線端末20が行っている各処理(図中の矩形)に対する制御が挙げられる。制御部23が制御する処理は、これらに限らず、上記の各実施形態および変形例で無線端末20が実行するあらゆる処理に関する制御を含む。
【0177】
記憶部24は、データ、制御情報、プログラム等の各種情報の記憶を行う。記憶部24が記憶する各種情報は、上記の各実施形態および変形例で無線端末20において記憶されうるあらゆる情報を含む。
【0178】
なお、無線端末20は、無線送信部21や無線受信部22を介して無線基地局10以外の無線通信装置と無線信号を送受信してもかまわない。
【0179】
[各実施形態の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成]
図9〜
図10に基づいて、各実施形態および各変形例の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成を説明する。なお、上述したように、無線端末20と述べた場合には、上述した各実施形態における第1無線端末20aと第2無線端末20bとを含むことに留意されたい。
【0180】
図9は、無線基地局10のハードウェア構成の一例を示す図である。
図9に示すように、無線基地局10は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ111を備えるRF(Radio Frequency)回路112と、プロセッサ113と、メモリ114と、ネットワークIF(Interface)115とを有する。これら各構成要素は、バスを介して各種信号やデータの入出力が可能なように接続されている。
【0181】
プロセッサ113は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)である。本願においては、プロセッサ113をデジタル電子回路で実現することとしてもかまわない。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)等が挙げられる。
【0182】
メモリ114は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。この他に、無線基地局は不図示の補助記憶装置(ハードディスク等)等を備えていても良い。
【0183】
図7に示す無線基地局10の機能構成と
図9に示す無線基地局10のハードウェア構成との対応を説明する。無線送信部11および無線受信部12(あるいは無線通信部16)は、例えばRF回路112、あるいはアンテナ111およびRF回路112により実現される。制御部13は、例えばプロセッサ113、メモリ114、不図示のデジタル電子回路等により実現される。記憶部14は、例えばメモリ114により実現される。通信部15は、例えばネットワークIF115により実現される。
【0184】
図10は、無線端末20のハードウェア構成の一例を示す図である。
図10に示すように、無線端末20は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ121を備えるRF(Radio Frequency)回路122と、プロセッサ123と、メモリ124とを有する。これら各構成要素は、バスを介して各種信号やデータの入出力が可能なように接続されている。
【0185】
プロセッサ123は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)である。本願においては、プロセッサ123をデジタル電子回路で実現することとしてもかまわない。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)等が挙げられる。
【0186】
メモリ124は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。
【0187】
図8に示す無線端末20の機能構成と
図10に示す無線端末20のハードウェア構成との対応を説明する。無線送信部21および無線受信部22(あるいは無線通信部25)は、例えばRF回路122、あるいはアンテナ121およびRF回路122により実現される。制御部23は、例えばプロセッサ123、メモリ124、不図示のデジタル電子回路等により実現される。記憶部24は、例えばメモリ124により実現される。