(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧電素子を駆動することにより前記板状の駆動ユニットが、前記屈曲振動と、前記屈曲振動とは異なる少なくとも一種の前記他の振動で振動するように構成されており、前記他の振動が、前記屈曲振動によって前記移動体を移動させ得るように前記弾性体の前記開口部の内壁が前記移動体に摩擦係合している前記移動可能状態と、前記弾性体の前記開口部の内壁が前記移動体に対して隔てられておりあるいは前記移動可能状態よりも低い摩擦係合力で前記移動体に接触している前記リリース状態とを実現する振動姿態とを有し、
前記駆動ユニットの前記屈曲振動及び前記他の振動により前記移動体をピッチ送りにより移動させる、請求項1に記載の駆動装置。
前記移動体が、前記移動方向に延びかつ前記弾性体の開口部に摩擦係合し得る側面を有し、前記側面において、前記弾性体の前記開口部に対する摩擦係合力を高める圧接部材が設けられている、請求項1に記載の駆動装置。
前記圧接部材が、前記側面において前記移動体の周方向に延び、常時よりも縮径した状態で取り付けられているリング状部材であり、前記移動体の側面に取り付けられた状態で該側面から外側に向かう弾発力を発現している、請求項8に記載の駆動装置。
前記圧電素子が中央に開口部を有し、圧電素子の開口部が前記弾性体の開口部よりも大きく、前記圧電素子が前記弾性体の開口部の周縁に至っていない、請求項1〜13のいずれか1項に記載の駆動装置。
前記圧電素子に電気的に接続されており、前記屈曲振動及び他の振動が同一周期で発現するように前記圧電素子に駆動パルスを与える駆動パルス源をさらに備える、請求項1〜17のいずれか1項に記載の駆動装置。
前記駆動ユニットが、前記結合モードの振動により振動するように構成されており、前記駆動パルス源が、前記結合モードの振動が生じるように前記圧電素子に駆動パルスを与える、請求項19に記載の駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の駆動装置では、駆動部材の軸の伸縮に、移動体が十分に追随できなかった。そのため、移動体を確実にピッチ送りすることができなかった。また、前方への移動期間で後退することがあった。よって、移動体の移動速度を高めることが困難であり、かつ移動速度が不安定であった。
【0006】
他方、特許文献2では、屈曲振動と径方向振動の複合共振を利用している。この場合、屈曲振動と径方向の伸縮振動とを同一周期で発生させることは容易ではない。そのため、移動体をピッチ送りすることは困難であり、移動体の移動速度の安定化も困難であった。
【0007】
本発明の目的は、移動体を安定に移動させることができ、後退が生じ難く、かつ移動速度の安定化を図ることができる、駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る駆動装置は、対向し合う第1,第2の主面を有しかつ中央に第1の主面から第2の主面に向かって貫通している開口部を有する板状の弾性体と、該板状の弾性体の少なくとも一方の主面に接合された圧電素子とを有する板状の駆動ユニットと、前記板状の弾性体の開口部に挿入されており、前記駆動ユニットを駆動することにより前記板状の弾性体の第1の主面と第2の主面とを結ぶ方向に移動される移動体とを備え、前記圧電素子を駆動することにより前記板状の駆動ユニットが、屈曲振動と、前記屈曲振動とは異なる少なくとも一種の他の振動で、または屈曲振動と、前記屈曲振動とは異なる少なくとも一種の前記他の振動が結合してなる結合モードの振動で振動するように構成されており、前記他の振動または前記結合モードの振動が、前記移動体を移動させ得るように前記弾性体の前記開口部の内壁が移動体に摩擦係合している移動可能状態と、前記弾性体の前記開口部の内壁が前記移動体に対して隔てられておりあるいは前記移動可能状態よりも低い摩擦係合力で前記移動体に接触しているリリース状態とを実現する振動姿態を有し、前記駆動ユニットの前記屈曲振動及び前記他の振動により、または前記結合モードの振動により前記移動体を移動させる。
【0009】
本発明に係る駆動装置のある特定の局面では、前記圧電素子を駆動することにより前記板状の駆動ユニットが、前記屈曲振動と、前記屈曲振動とは異なる少なくとも一種の前記他の振動で振動するように構成されており、前記他の振動が、前記屈曲振動によって前記移動体を移動させ得るように前記弾性体の前記開口部の内壁が移動体に摩擦係合している前記移動可能状態と、前記弾性体の前記開口部の内壁が前記移動体に対して隔てられておりあるいは前記移動可能状態よりも低い摩擦係合力で前記移動体に接触している前記リリース状態とを実現する振動姿態とを有し、前記駆動ユニットの前記屈曲振動及び前記他の振動により前記移動体をピッチ送りにより移動させる。
【0010】
本発明に係る駆動装置のさらに他の特定の局面では、前記屈曲振動と、前記他の振動とが同一周期となるように駆動される。
【0011】
本発明に係る駆動装置のさらに他の特定の局面では、前記圧電素子を駆動することにより前記板状の駆動ユニットが、前記結合モードの振動で振動するように構成されており、前記結合モードの振動が、前記移動体を移動させ得るように前記弾性体の前記開口部の内壁が移動体に摩擦係合している移動可能状態と、前記弾性体の前記開口部の内壁が前記移動体に対して隔てられておりあるいは前記移動可能状態よりも低い摩擦係合力で前記移動体に接触しているリリース状態とを実現する振動姿態を有し、前記駆動ユニットの前記結合モードの振動により前記移動体を移動させる。
【0012】
本発明に係る駆動装置のさらに他の特定の局面では、前記屈曲振動と、前記他の振動とが結合して前記結合モードが励振されるように、前記弾性体の寸法が調整されている。
【0013】
本発明に係る駆動装置の別の特定の局面では、前記移動体の平面形状が非円形の異方性を有する形状である。
【0014】
本発明に係る駆動装置のさらに他の特定の局面では、前記開口部の平面形状が非円形の異方性を有する形状である。
【0015】
本発明に係る駆動装置のさらに別の特定の局面では、前記移動体が、前記移動方向に延びかつ前記弾性体の開口部に摩擦係合し得る側面を有し、前記側面において、前記弾性体の前記開口部に対する摩擦係合力を高める圧接部材が設けられている。
【0016】
本発明に係る駆動装置のさらに他の特定の局面では、前記圧接部材が、前記側面におい前記移動体の周方向に延び、常時よりも縮径した状態で取り付けられているリング状部材であり、前記移動体の側面に取り付けられた状態で該側面から外側に向かう弾発力を発現している。
【0017】
本発明に係る駆動装置のさらに他の特定の局面では、前記リング状部材が、リングの一部が切り欠かれた形状を有する。
【0018】
本発明に係る駆動装置のさらに別の特定の局面では、前記移動体の側面に溝が形成されており、前記圧接部材の一部が前記溝に嵌まり合っている。
【0019】
本発明の駆動装置のさらの他の特定の局面では、前記圧接部材が、第1の端部と、第1の端部とは反対側の第2の端部とを結ぶ方向が長さ方向である複数のバネ部材であり、各バネ部材は、第1の端部と第2の端部との間の部分が前記長さ方向と直交する方向に変位し得るように構成されており、前記移動体の前記側面に前記バネ部材の前記第1,第2の端部が固定されており、第1の端部と第2の端部との間のバネ部材部分が移動体の側面から遠ざかる方向に付勢するように撓まされており、撓んでいる部分の頂点が前記弾性体の前記開口部に圧接されている。
【0020】
本発明に係る駆動装置のさらに他の特定の局面では、前記板状の弾性体と前記圧電素子の平面形状が異なっている。
【0021】
本発明に係る駆動装置のさらに他の特定の局面では、前記圧電素子が中央に開口部を有し、圧電素子の開口部が前記弾性体の開口部よりも大きく、前記圧電素子が前記弾性体の開口部の周縁に至っていない。
【0022】
本発明に係る駆動装置のさらに別の特定の局面では、前記圧電素子が複数設けられている。
【0023】
本発明に係る駆動装置のさらに他の特定の局面では、前記他の振動が複数種の振動である。
【0024】
本発明に係る駆動装置のさらに他の特定の局面では、前記圧電素子が前記弾性体の第1及び第2の主面のうち一方の主面に設けられている。
【0025】
本発明に係る駆動装置のさらに他の特定の局面では、前記圧電素子に電気的に接続されており、前記屈曲振動及び他の振動が同一周期で発現するように前記圧電素子に駆動パルスを与える駆動パルス源をさらに備えられている。
【0026】
本発明の駆動装置の別の広い局面によれば、対向し合う第1,第2の主面を有しかつ中央に第1の主面から第2の主面に向かって貫通している開口部を有する板状の弾性体と、該板状の弾性体の少なくとも一方の主面に接合された圧電素子とを有する板状の駆動ユニットと、前記板状の弾性体の開口部に挿入されており、前記駆動ユニットを駆動することにより前記板状の弾性体の第1の主面と第2の主面とを結ぶ方向に移動される移動体とを備え、前記圧電素子を駆動することにより前記板状の駆動ユニットが、屈曲振動と、前記屈曲振動とは異なる少なくとも一種の他の振動によりまたは屈曲振動と、前記屈曲振動とは異なる少なくとも一種の前記他の振動が結合してなる結合モードの振動で振動するように構成されており、前記他の振動または前記結合モードの振動が、前記移動体を移動させ得るように前記弾性体の前記開口部の内壁が移動体に摩擦係合している移動可能状態と、前記弾性体の前記開口部の内壁が前記移動体に対して隔てられておりあるいは前記移動可能状態よりも低い摩擦係合力で前記移動体に接触しているリリース状態とを実現する振動姿態を有し、前記圧電素子に電気的に接続されており、前記屈曲振動及び他の振動または前記結合モードの振動が生じるように、前記圧電素子に駆動パルスを与える駆動パルス源をさらに備え、前記駆動ユニットの前記屈曲振動及び前記他の振動により、または前記結合モードの振動により前記移動体を移動させる、駆動装置が提供される。
【0027】
本発明に係る駆動装置のさらに他の特定の局面では、前記板状の駆動ユニットが、前記屈曲振動と、前記屈曲振動とは異なる少なくとも一種の前記他の振動で振動するように構成されており、前記駆動パルス源が、前記屈曲振動及び前記他の振動が同一周期で発現するように前記圧電素子に前記駆動パルスを与え、それによって前記移動体を前記駆動ユニットの前記屈曲振動及び前記他の振動によりピッチ送りさせる。
【0028】
本発明に係る駆動装置のさらに別の特定の局面では、前記駆動ユニットが、前記結合モードの振動により振動するように構成されており、前記駆動パルス源が、前記結合モードの振動が生じるように前記圧電素子に駆動パルスを与える。
【0029】
本発明に係る駆動装置のさらに他の特定の局面では、前記駆動ユニットの前記移動体の平面形状が非円形の異方性を有する形状である。
【0030】
本発明に係る駆動装置のさらに別の特定の局面では、前記駆動ユニットの前記弾性体の開口部の平面形状が非円形の異方性を有する形状である。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る駆動装置では、上記板状の駆動ユニットにおいて励振される屈曲振動及び他の振動により、または上記結合モードの振動により、移動体を、後退を招くことなく、安定にかつ確実に移動させることができ、移動速度の安定化も図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1(a)及び
図1(b)は、本発明の第1の実施形態に係る駆動装置の正面断面図及び駆動ユニットの平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る駆動装置の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の第1の実施形態で用いられている駆動ユニットの正面図であり、
図3(b)は、圧電素子の詳細を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明で用いられる駆動ユニットの変形例を示す正面断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施形態で用いられている支持台を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施形態で用いられている移動体を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施形態において移動体に取り付けられている圧接部材を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、圧接部材の変形例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の第1の実施形態における駆動ユニットの共振特性を示す図である。
【
図10】
図10(a)及び
図10(b)は、本発明の第1の実施形態において、初期状態及び移動体を把持した状態を示す各模式図である。
【
図11】
図11(a)及び
図11(b)は、本発明の第1の実施形態の駆動装置において、ピッチ送りを果たした状態と、板状の弾性体を移動体から離脱させる工程をそれぞれ説明する各模式図である。
【
図12】
図12は、本発明の第1の実施形態の駆動装置において、駆動に際して印加される駆動パルス信号と、駆動ユニットの屈曲振動と、拡がり振動との関係を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の第1の実施形態の動作時において、印加される駆動パルス信号と、移動体の変位量との関係を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の第2の実施形態に係る駆動装置の外観を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、本発明の第2の実施形態における駆動ユニットの模式的平面図である。
【
図16】
図16は、本発明の第3の実施形態に係る駆動装置における屈曲モードの振動姿態を示す模式的斜視図である。
【
図17】
図17は、本発明の第3の実施形態における駆動ユニットのうねり振動モードの振動姿態を説明するための模式的斜視図である。
【
図18】
図18は、本発明の第3の実施形態における駆動ユニットのインピーダンス特性を示す図である。
【
図19】
図19は、本発明の第4の実施形態に係る駆動装置で用いられる駆動ユニットを示す斜視図である。
【
図20】
図20は、本発明の第4の実施形態の駆動装置における駆動ユニットのインピーダンス特性を示す図である。
【
図21】
図21は、本発明の第5の実施形態に係る駆動装置の平面図である。
【
図22】
図22は、本発明の第5の実施形態の駆動装置の底面側からみた斜視図である。
【
図23】
図23は、本発明の第5の実施形態で用いられている移動体と圧接部材とを示す斜視図である。
【
図24】
図24は、本発明の第5の実施形態で用いられている圧接部材の斜視図である。
【
図25】
図25は、比較例の動作時において、印加される駆動パルス信号と、屈曲振動の変位と、移動体の変位量との関係を示す図である。
【
図26】
図26は、本発明の第6の実施形態で用いられている移動体の斜視図である。
【
図27】
図27は、本発明の第6の実施形態で用いられている圧接部材を示す斜視図である。
【
図28】
図28は、本発明の第6の実施形態において、移動体に圧接部材が取り付けられている構造の正面断面図である。
【
図29】
図29は、本発明の第7の実施形態で用いられている移動体を示す斜視図である。
【
図30】
図30は、本発明の第7の実施形態において、移動体に4つの圧接部材が取り付けられている構造を示す正面断面図である。
【
図31】
図31は、本発明の第7の実施形態で用いられている移動体に、2つの圧接部材が取り付けられている構造を示す正面断面図である。
【
図32】
図32は、駆動ユニットの板状の弾性体の厚みと屈曲振動及び拡がり振動のインピーダンスとの関係を示す図である。
【
図33】
図33は、屈曲振動と拡がり振動の結合モードにより移動体を前進させる場合の駆動ユニットの振動姿態を示す図である。
【
図34】
図34は、屈曲振動と拡がり振動の結合モードにより移動体を後退させる場合の駆動ユニットの振動姿態を示す図である。
【
図35】
図35は、本発明の第8の実施形態における駆動ユニットの結合モードの振動のインピーダンス−周波数特性を示す図である。
【
図36】
図36は、本発明の第8の実施形態における結合モードの振動及び第1の実施形態における駆動ユニットの振動における拡がり振幅と屈曲振幅との関係を示す図である。
【
図37】
図37は、本発明の第8の実施形態において、前進モード時の駆動パルスと、屈曲振動及び拡がり振動の変位量との関係を示す図である。
【
図38】
図38は、本発明の第8の実施形態において、後退モード時の駆動パルスと、屈曲振動及び拡がり振動の変位量との関係を示す図である。
【
図39】
図39は、本発明の第8の実施形態における駆動パルス電圧と移動体の移動量である変位量を示す図である。
【
図40】
図40は、本発明の第8の実施形態における駆動パルスの駆動周波数と、移動体の移動速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0034】
図2は本発明の第1の実施形態に係る駆動装置の外観を示す斜視図であり、
図1(a)は、その正面断面図である。
【0035】
本実施形態の駆動装置1は、支持台2を有する。支持台2上に、駆動ユニット3が固定されている。本実施形態では、駆動ユニット3により、移動体4が移動される。
【0036】
移動体4は、
図2に斜視図で示すように、円筒状のホルダ5を有する。このホルダ5の内部には、複数のレンズ6,6が配置されている。また、ホルダ5の開口端面を封止するように透明板7が取り付けられている。
【0037】
本実施形態の駆動装置1は、レンズ6,6を有する移動体4を円筒状のホルダ5の軸方向に移動させる。このような駆動装置1は、例えばカメラのレンズを含むレンズ駆動装置として好適に用いることができる。なお、
図1(a)における矢印Zが上記軸方向であり、駆動装置1では、移動体を軸方向Zにおいてピッチ送りすることが可能とされている。
【0038】
上記移動体4を構成するホルダ5の材料は特に限定されない。ホルダ5は、例えば金属、セラミックス、または合成樹脂などにより形成することができる。
【0039】
なお、
図6に示すように、ホルダ5の側面には、溝5aが周方向に延びるように形成されている。この溝5aに嵌まり合うようにリング状の圧接部材8が取り付けられている。本実施形態では、
図7に示すように、圧接部材8は、円環状のリングの一部を切り欠いた形状を有する。圧接部材8は、金属からなる。また、圧接部材8は、切欠きの部分を狭めるようにして常時より縮径された状態で、ホルダ5に取り付けられている。そのため、上記切欠きの部分が拡がる方向の力が作用し、圧接部材8は、拡径方向に弾発力を発現する。
【0040】
本実施形態では、上記圧接部材8の外周面が、後述する駆動ユニット3の弾性体11の開口部11cの内壁に摩擦係合する。
【0041】
なお、
図8に示すように、閉じた環状の圧接部材8を用いてもよい。このような閉じた環状の圧接部材8としては、円筒状または角筒状などの筒状の圧接部材8を挙げることができる。この場合においても、圧接部材8を、筒状のホルダ5に外挿し、固定すればよい。
【0042】
支持台2は、金属、セラミックスまたは合成樹脂からなる。支持台2は、
図5に示すように、矩形板状のプレート部2aを有する。プレート部2aの中央に、貫通孔2bが設けられている。貫通孔2bは、
図1(a)に示すように、移動体4を挿通させる部分である。
【0043】
プレート部2aのコーナー部分においては、上方に突出した支持突起2cが設けられている。複数の支持突起2cの上面に、駆動ユニット3が固定されている。従って、
図1(a)に示すように、プレート部2aと駆動ユニット3との間に空間Aが設けられている。空間Aが設けられているため、駆動ユニット3の後述する振動が妨げられ難い。
【0044】
駆動ユニット3は、板状の弾性体11と、板状の弾性体11の下面に接合された圧電素子12とを有する。板状の弾性体11は、本実施形態では、ステンレスなどの金属板からなる。もっとも、金属板以外の板状の弾性材料により弾性体11が形成されていてもよい。
【0045】
なお、圧電素子12は、弾性体11の下面に接合されているが、
図1(a)に一点鎖線Bで示すように、弾性体11の上面に圧電素子が接合されていてもよい。さらに、弾性体11の下面及び上面の双方に圧電素子12が接合されていてもよい。
【0046】
好ましくは、圧電素子12は、弾性体11の上面及び下面のうち一方の面にのみ形成される。その場合には、コストを低減することができる。また、本実施形態では、他の振動として後述する拡がり振動を利用するが、圧電素子12が弾性体11の片面にのみ設けられている場合に拡がり振動が容易に励振される。
【0047】
なお、本実施形態では、弾性体11の下面に圧電素子12が設けられているが、移動体4を上方に移動させるには、弾性体11の上面にのみ圧電素子12を設けることが好ましい。もっとも、圧電素子12の外部との接触を防止するには、本実施形態のように圧電素子12は支持台2側に配置されていることが望ましい。
【0048】
上記板状の弾性体11は、第1の主面としての上面11aと、第2の主面としての下面11bとを有する。また、弾性体11は中央に上面11aから下面11bに貫通している開口部11cを有する。開口部11cは、移動体4を挿通させる部分であり、かつ開口部11cの内壁が、前述した移動体4に取り付けられている圧接部材8の外周面と摩擦係合する部分である。圧電素子12もまた、貫通孔12aを有する。
【0049】
図1(a)、
図2及び
図3(a)では、圧電素子12の詳細は示していなかったが、
図3(b)に示すように、実際には、圧電体13の両面に電極14,15が形成されている。この電極14側から弾性体11に圧電素子12が接合されている。なお、弾性体11が金属板の場合には、電極14を省略し、弾性体11を一方の電極として用いてもよい。
【0050】
なお、単層の圧電体13を用いた構成に代えて、従来より周知の積層型の圧電素子を用いてもよい。すなわち、複数の圧電体層と複数の内部電極とを有する積層型圧電素子を用いてもよい。
【0051】
圧電素子12の平面形状は、弾性体11の平面形状と同一とされている。もっとも、圧電素子12の平面形状は弾性体11の平面形状と異なっていてもよい。好ましくは、
図4に示す変形例のように、圧電素子12Aの貫通孔12aの径を、弾性体11の開口部11cの径よりも大きくすることが望ましい。この場合には、圧電素子12Aの貫通孔12aの内周面が、開口部11cの開口縁よりも外側に位置する。従って、圧電素子12Aと移動体4との接触をより一層確実に防止することができる。
【0052】
上記圧電体13を構成する圧電セラミックスとしてPZT系セラミックスなどの適宜の圧電セラミックスを用いることができる。電極14,15は、適宜の金属もしくは合金により形成することができる。
【0053】
本実施形態では、上記圧電素子12にパルス状の駆動電界を与えて圧電素子12を励振させる。それによって、駆動ユニット3において屈曲振動と他の振動とを発生させ、屈曲振動と他の振動とを利用する。
【0054】
すなわち、圧電素子12を励振すると、圧電素子12と弾性体11とを貼り合わせてなる駆動ユニット3が振動することとなる。この駆動ユニット3において、駆動ユニット3の主面中央が上下に変位する屈曲振動が生じる。同時に、上記開口部11cの径が大きくなったり、小さくなったりする拡がり振動も励振される。本実施形態では、屈曲振動とこの拡がり振動とが利用される。
【0055】
本実施形態では、
図1(a)に略図的に示す駆動パルス源16から駆動パルスを圧電素子12に与えた場合、同一周期の屈曲振動と拡がり振動とが励振される。
【0056】
上記のように、屈曲振動と拡がり振動とを同一周期で発生させるには、両振動の共振周波数を同じにする、もしくは、駆動パルスに応じて両振動の共振周波数を特定の周波数間隔となるように調整すればよい。この周波数間隔は、弾性体11の材質や厚み、平面形状の寸法の変更により調整することができる。
【0057】
図9は、本実施形態の駆動ユニット3の共振特性を示し、ここでは、矢印Cで示す位置に屈曲振動の共振が、それより高い矢印Dで示す位置に拡がり振動の共振が現れている。その屈曲振動の共振周波数は0.059MHzであり、拡がり振動の共振周波数は0.169MHzである。この場合、後述する駆動パルス信号により同一周期で屈曲振動及び拡がり振動を発生させることができる。従って、屈曲振動と拡がり振動の周期が同一となるように容易に駆動ユニット3を駆動することができる。
【0058】
本実施形態の駆動装置1による移動体4のピッチ送り動作を
図10及び
図11を参照して説明する。
【0059】
上記のように、屈曲振動と拡がり振動とが用いられる。ここで、拡がり振動は、弾性体11の開口部11cの内壁が移動体4に摩擦係合している移動可能状態と、弾性体11の開口部11cの内壁が移動体4に対して隔てられており、あるいは移動可能状態よりも低い摩擦係合力で移動体4に接触しているリリース状態とを実現する各振動姿態を有する。
【0060】
図10(a)は、初期状態を示す。ピッチ送りに際し、まず、
図10(b)に示すように、拡がり振動により、矢印で示すように開口部11cが狭まるように弾性体11が変位する。その結果、移動可能状態、すなわち弾性体11による移動体4を把持した把持状態が実現される。この状態で、駆動ユニット3が屈曲振動により同位相で変位するため、
図11(a)に示すように、駆動ユニット3が変位し、移動体4が上方に移動される。
【0061】
次に、拡がり振動において、前述したリリース状態となるように弾性体11が変位し、弾性体11の開口部11cの内壁が移動体4に対して隔てられ、あるいは上記移動可能状態よりも低い摩擦係合力で移動体4に接触しているリリース状態となる。同時に、このリリース状態において、屈曲振動により
図11(b)に示すように、駆動ユニット3において、弾性体11の開口部11c付近が下方に移動する。
【0062】
しかる後、次の駆動パルスにより、再度把持状態となると共に、屈曲振動による変位により、
図11(b)に示すように移動体4が再度上方に移動される。このようにして、移動体4が上方にピッチ送りされる。
【0063】
本実施形態では、上記屈曲振動の周期と、上記拡がり振動の周期が同一となるように駆動パルス源から駆動パルス信号が与えられる。これを、
図12及び
図13を参照してより具体的に説明する。
図12は、上記ピッチ送りに際しての駆動パルス信号と、屈曲振動及び拡がり振動との関係を示す図である。実線が駆動パルス信号であり、破線が拡がり振動の変位量を、一点鎖線が屈曲振動の変位量を示す。駆動パルス信号の電界強度が実線で示す周期を有するように変化する。これに応じて、上記屈曲振動及び拡がり振動が励振されるが、
図12から明らかなように、屈曲振動の周期と、拡がり振動の周期がほぼ一致している。
【0064】
図13は、上記駆動パルス信号を駆動ユニット3に与えた場合の移動体4の変位量すなわちピッチ送り状態を示す図である。実線が駆動パルス信号であり、破線が移動体の変位量を示す。
【0065】
図13から明らかなように、駆動パルスを駆動ユニット3に与えることにより、移動体4を確実にピッチ送りし得ることがわかる。特に、本実施形態では、移動体4のピッチ送りに際し、移動体4に対してリリース状態で弾性体11の開口部11cの内壁が後方すなわち下方に移動することとなる。従って、移動体4がピッチ送りに際して後退するおそれがほとんどない。従って、上方に移動体4を安定にピッチ送りすることができる。しかも、
図13の破線から明らかなように、ピッチ送りに際しての1ピッチ毎の移動速度がほぼ一定であり、駆動速度の安定化も図ることができる。これは、移動体4を前方に移動させるための屈曲振動だけでなく、上記把持状態と、リリース状態とを実現するのに拡がり振動を利用しており、かつ上記屈曲振動と拡がり振動の周期が同一であることによる。
【0066】
比較のために、拡がり振動を用いず、屈曲振動のみを用いることを除いては、上記実施形態と同様にして構成した駆動装置を用意した。この比較例の動作を
図25に示す。
図25において、実線が駆動パルス信号であり、一点鎖線が屈曲振動の波形であり、破線が移動体の変位量を示す。
図25の破線から明らかなように、比較例では、変位開始直後に移動体がさほど移動しない期間Xが存在する。従って駆動後の応答性が悪いことがわかる。加えて、矢印Yで示すように、ピッチ送りが始まった段階において、ピッチ毎に後退現象がみられる。
【0067】
これに対して、
図13の破線から明らかなように、本実施形態によれば、このような後退を引き起こすことなく移動体4を移動させることができる。しかも、駆動直後から速やかに移動体4をその軸方向に安定に移動させることができる。
【0068】
なお、第1の実施形態では、駆動パルスのデューティーを逆転させれば、後退させることができる。
【0069】
図14は、本発明の第2の実施形態に係る駆動装置の斜視図であり、
図15は第2の実施形態で用いられる駆動ユニットと移動体との関係を示す模式的平面図である。
【0070】
図14に示すように、駆動装置31は、支持台2と、支持台2上に固定されている駆動ユニット33とを有する。駆動ユニット33は、
図15に示すように、平面形状が矩形枠状の形状を有している。駆動ユニット33では、矩形枠状の弾性体34の上面に、圧電素子35が接合されている。圧電素子35も矩形枠状の形状を有している。
【0071】
また、矩形枠状の弾性体34の開口部34c内に移動体4が配置されている。移動体4は第1の実施形態と同様に構成されている。移動体4の外周面が、上記弾性体34の4つの内側壁の各中央に摩擦係合している。
【0072】
圧電素子35に交番電界を印加することにより、圧電素子35が励振される。そして、圧電素子35が弾性体34に張り付けられている駆動ユニット33は、第1の実施形態と同様に、屈曲振動と拡がり振動とで振動する。そして、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、屈曲振動により移動体4を前方に移動させることができ、拡がり振動により、移動体4を把持している把持状態と、前述したリリース状態とを実現することができる。
【0073】
なお、
図14及び
図15では図示を省略しているが、第1の実施形態で用いた圧接部材8を本実施形態において採用してもよい。
【0074】
本実施形態では、屈曲振動の共振周波数と、拡がり振動の共振周波数のそれぞれを任意に調整することができる。これは、矩形枠状の弾性体11及び矩形枠状の圧電素子35を用いているため、この矩形枠状の形状における寸法を調整することにより、屈曲振動の共振周波数と、拡がり振動の共振周波数を容易に調整することができることによる。例えば、拡がり振動の共振周波数は、弾性体の平面形状における寸法を調整することにより容易に調整することができる。また、屈曲振動の共振周波数は、弾性体の枠状部分の寸法や厚みを調整することによって容易に調整することができる。例えば、8.5mm×8.5mm×厚み1.2mmの外形を有し、枠状部分の幅が1.0mmのステンレスを用いることにより、屈曲振動及び拡がり振動の共振周波数を85kHz程度に容易に調整することができる。
【0075】
前述した第1の実施形態では、弾性体11の平面形状の外形が矩形であり、開口部11cの平面形状が円形である。この場合には、開口部が等方性の形状を有するため、弾性体の材質や厚み、平面形状の寸法を調整することにより、屈曲振動と拡がり振動の共振周波数を調整することができる。これに対して、第2の実施形態では、弾性体34の平面形状の外形が矩形であり、かつ開口部34cの平面形状が矩形である。この場合には、上記のように弾性体の材質や厚み、平面形状の寸法の変更によって、より一層容易に拡がり振動と屈曲振動の共振周波数を調整することができる。なお、弾性体の平面形状の外形が円形であり、かつ開口部の平面形状が円形である場合、弾性体の材質や厚さ、平面形状の寸法を調整しても、屈曲振動と拡がり振動の共振周波数を任意に調整することはできない。
【0076】
従って上記のように、弾性体の平面形状の外形及び開口部の平面形状は、非円形であることが好ましい。それによって、駆動パルス信号により同一周期で駆動されるように、拡がり振動の共振周波数と屈曲振動の共振周波数との周波数間隔に容易に調整することができる。
【0077】
第2の実施形態では、屈曲振
動と拡がり振
動とを、駆動パルス信号により同一周期で発生させるように、これらの共振周波数を容易に調整することができる。従って、屈曲振動と拡がり振動とをより一層高精度に同一周期で発生させることができる。そのため、第1の実施形態に比べ、より低い駆動電圧で、移動体4をより確実にピッチ送りすることができる。さらに、ピッチ送りに際しての移動速度の安定性もより一層高めることができる。
【0078】
上記第1及び第2の実施形態では、屈曲振動と、他の振動として拡がり振動とを利用した。本発明においては、他の振動は、拡がり振動以外の振動であってもよい。
【0079】
図16〜
図18を参照して、第3の実施形態として、他の振動がうねり振動である駆動装置を説明する。
【0080】
第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、矩形枠状の駆動ユニット33を用いる。駆動ユニット33は、第2の実施形態と同様に構成されている。もっとも、本実施形態では、
図16に振動姿態を示すように駆動ユニット33が屈曲モードで振動する。同時に、
図17に振動姿態を示すように、駆動ユニット33はうねり振動でも振動する。本実施形態では、ある駆動パルス信号で駆動した場合に、屈曲振動及び拡がり振動が同一周期で発生するように両振動の共振周波数間隔が調整されている。よって、本実施形態においても、駆動ユニット33が設計されている。
【0081】
図18は、第3の実施形態の駆動ユニット33のインピーダンス特性を示す図である。矢印C1で示す位置に屈曲モードの応答が現れている。また、矢印D1に示す位置にうねり振動の応答が現れている。両者の共振周波数は、第2の実施形態と同様に、駆動ユニット33における弾性体の寸法や圧電素子の寸法を調整することにより容易に調整することができる。
【0082】
また、第1〜第3の実施形態では、他の振動モードとして拡がり振動またはうねり振動のような1つの振動を利用したが、他の振動として複数種の振動を利用してもよい。
【0083】
さらに、他の振動は、幅方向振動や長さ方向の振動などであってもよい。
【0084】
また、第1の実施形態では、弾性体11の片面に1つの圧電素子12が貼り合わされていたが、
図19に示す第4の実施形態のように、複数の圧電素子42が弾性体41に接合されていてもよい。本実施形態では板状の弾性体として矩形枠状の弾性体41が用いられている。この弾性体41の片面に、複数の圧電素子42,42,42,42が接合されている。各圧電素子42は、矩形枠状の一辺において、弾性体41の上面に接合されている。
【0085】
上記圧電素子42に交番電界を印加することにより圧電素子42を励振する。その結果、駆動ユニット43は、屈曲振動と、拡がり振動を生じる。
【0086】
図20は、駆動ユニット43のインピーダンス特性を示す図である。矢印C2で示す位置に屈曲振動の応答が現れており、矢印D2で示す位置に拡がり振動の応答が現れている。本実施形態においても、屈曲振動と拡がり振動とが同一周期で発生するように、両振動の共振周波数の間隔が選ばれている。従って、移動体を正確にピッチ送りすることが可能となる。このように、弾性体の片面または両面に複数の圧電素子が接合されていてもよい。
【0087】
図21は、本発明の第5の実施形態に係る駆動装置の平面図であり、
図22はその底面側からみた斜視図である。
【0088】
駆動装置51は、駆動ユニット53を有する。本実施形態では、駆動ユニット53は、矩形枠状の平面形状を有する。
図21及び
図22では、弾性体11を含む駆動ユニット53の外形のみを略図的に図示してあることを指摘しておく。すなわち、弾性体11と移動体54と、圧接部材58のみを図示することとする。圧電素子等については、前述した第1〜第4の実施形態と同様に構成することができる。
【0089】
本実施形態においては、弾性体11の平面形状の外形が矩形であり、開口部11cの平面形状も矩形である。この弾性体11の開口部11c内に、移動体54が配置されている。移動体54は、直方体状、より詳細には矩形板状の形状を有している。このように、本発明においては、移動体の形状は、筒状体や柱状体に限定されず、直方体状などの様々な形状とすることができる。
【0090】
図23に示すように、本実施形態では、移動体54の対向し合う一対の側面に、それぞれ、圧接部材58が固定されている。
図24に示すように、圧接部材58は、金属からなり、第1の端部58aと第2の端部58bとを有する。圧接部材58は、第1の端部58a及び第2の端部58bにおいて、移動体54の側面に固定されている。そして、第1の端部58aと第2の端部58bとを結ぶ長さ方向を有する。この長さ方向中央部が
図21に示すように、移動体54の側面から遠ざかるように付勢されている。圧接部材58は、上記形状を有し、板バネとして作用する。
【0091】
上記第1の端部58aと第2の端部58bとの間の弾発部58cが開口部11cの内側面に接触すなわち圧接されている。このように、本実施形態では、板バネ状の圧接部材58を用いてもよい。なお、板バネに限らず、直線状の弾性部材を中央部において弾発力を有するように形成してなる、線バネを用いてもよい。
【0092】
図26は本発明の第6の実施形態で用いられている移動体61の斜視図である。移動体61は、略矩形板状の形状を有する。もっとも、移動体61の一方の主面上には、長さ方向両端に突出部61a,61aが設けられている。他方主面上においても、長さ方向両端に突出部61b,61bが設けられている。
【0093】
図27は、本実施形態で移動体に取り付けられる圧接部材62を示す斜視図である。圧接部材62は金属板からなり、屈曲させることにより板バネとして作用する。
【0094】
この圧接部材62の長さは、上記突出部61aと突出部61aとの間の距離よりも長くされている。
【0095】
図28に示すように、上記圧接部材62を屈曲させ、突出部61a,61a間に取り付ける。それによって、圧接部材62が板バネとして作用することとなる。突出部61b,61b間にも、同様に板バネからなる圧接部材62が取り付けられている。
【0096】
このような移動体61に圧接部材62を取り付けた構造は、例えば、第5の実施形態で用いた矩形枠状の開口部を有する弾性体11と組み合わせて用いることができる。
【0097】
また、
図29は、本発明の第7の実施形態で用いられている移動体の斜視図である。移動体71は、直方体状の形状を有する。すなわち、平面形状がほぼ正方形である。移動体71の上面71Aにおいては、側面71C,71Dとのなす端縁に沿うように、突出部71a,71aが設けられている。突出部71a,71aは上面71Aよりも上方に突出している。また、突出部71a,71aは、側面71C,71Dよりも外側にも突出している。同様に、下面71Bにおいては、下面71Bと側面71C,71Dとのなす各端縁に沿うように、突出部71b,71bが設けられている。
【0098】
図29に示す移動体71のように、平面形状が正方形の移動体71を用いてもよい。ここでは、
図27に示した圧接部材62が上記突出部71a,71aまたは突出部71b,71bを利用して取り付けられる。
【0099】
図30に示すように、上面71Aにおいて、突出部71a,71a間に圧接部材62を取り付けてもよい。さらに、下面71Bにおいても、突出部71b,71b間に圧接部材62を取り付けることができる。さらに、側面71C,71Dにおいても、突出部71aと突出部71bとの間に圧接部材62を取り付けることができる。
【0100】
あるいは、
図31に示すように、側面71C,71Dにおいてのみ圧接部材62,62を取り付けてもよい。
【0101】
第6及び第7の実施形態のように、圧接部材62を板バネで構成する場合、移動体61,71の形状を工夫するだけで、圧接部材を容易に移動体に取り付けることができる。
【0102】
なお、
図26における突出部61a,61a,61b,61bが設けられている構成は、表現を変えれば、矩形板状の移動体61の上面及び下面に凹部を形成した構造と表現することもできる。すなわち、一対の対向壁61a1,61a1を有するように上面に凹部を形成することにより、突出部61a,61aを形成してもよい。あるいは、前述したように、矩形板状の状態の上面から上方に突出するように突出部61a,61aが形成されていてもよい。
【0103】
(結合モードを利用した第8の実施形態)
本発明の駆動装置では、板状の駆動ユニットは、屈曲振動と、前記屈曲振動とは異なる少なくとも一種の振動が結合してなる結合モードの振動で振動するように構成されてもよい。このような結合モードの振動を利用した第8の実施形態を以下において説明する。
【0104】
なお、第8の実施形態に係る駆動装置では、
図19に示した圧電素子を用いている。また、その他の構成については、板状の駆動ユニットにおいて結合モードが生じるように構成されていることを除いては、第1の実施形態の駆動装置と同様である。従って、第8の実施形態の説明において、第1の実施形態に係る駆動装置について示した
、図1〜
図8と、第4の実施形態について示した
図19とを参照して説明した説明を援用することとする。
【0105】
具体的には、第8の実施形態では、板状の駆動ユニット3の弾性体11の寸法を調整することにより、屈曲振動と、拡がり振動とを結合してなる結合モードが励振されるように構成されている。その他の構成については、駆動方法を除いては、第1の実施形態と同様である。
【0106】
上記駆動ユニット3における弾性体11として、ステンレスからなり、8.5mm×8.5mm並びに矩形の開口縁と外周縁とを結ぶ幅方向の寸法が1.0mmの弾性体11を用意した。この弾性体11において、厚みを種々変化させ、弾性体表面に圧電素子12を貼り合せ、駆動ユニット3を構成した。この厚みが異なる駆動ユニット3の圧電素子を駆動し、振動させた。この場合の屈曲振動及び拡がり振動の共振周波数の変化を
図32に示す。
図32から明らかなように、弾性体の厚みが増加するにつれて、屈曲振動の共振周波数は厚みが増加してもさほど上昇しない。これに対して、拡がり振動の共振周波数は、弾性体11の厚みが増加するにつれて上昇し、厚みが1.2mm〜1.5mmの範囲では、屈曲振動の共振周波数に近づいていることがわかる。特に、厚みが1.3mm〜1.4mmにおいて、屈曲振動の共振周波数と、拡がり振動の共振周波数がほぼ一致する程度に近接していることがわかる。このような場合、屈曲振動と拡がり振動が結合し、結合モードの振動が生じる。このような結合モードの振動が生じるように弾性体11の厚みを設定した。
【0107】
より具体的には、厚みを1.37mmとし、駆動パルス信号を、周波数を変化させつつ印加した。この駆動ユニット3の共振特性を
図35に示す。
図35から明らかなように、駆動周波数が90.2kHzのところに共振周波数を有するモード1と、駆動周波数が87kHzの場合に共振周波数が現れるモード2とが存在することがわかる。
図33は、モード1の場合の駆動ユニット3の振動姿態を示す斜視図である。
図34は、モード2の場合の結合モードの振動姿態を示す斜視図である。
【0108】
上記屈曲振動と拡がり振動の結合モードの振動では、弾性体11の開口部11cの内壁が移動体4に摩擦係合している移動可能状態と、開口部11cの内壁が移動体に対して隔てられており、あるいは移動可能状態よりも低い摩擦係合力で移動体4に接触しているリリース状態とを実現する振動姿態を有する。このような振動姿態は、モード1及びモード2のいずれの場合においても生じる。但し、モード1では、移動可能状態において結合モードにより、移動体4が前進するように移動体4が移動されることになる。他方、モード2では、移動可能状態において、開口部11cの内壁が移動体4を後退させる。
【0109】
言い換えれば、本実施形態では、上記結合モードがモード1の場合には、移動体4を上記結合モードの振動により前進させることができる。他方、後退させたい場合には、モード2が生じるように駆動周波数を切り替えることにより、移動体4を後退させることができる。
【0110】
上記結合モードの振動は、本実施形態では、屈曲振動と、拡がり振動とが結合することにより形成されている。結合させるには、好ましくは、屈曲振動の共振周波数と、拡がり振動の共振周波数が一致されておればよい。もっとも、双方の共振周波数は、完全に一致されておらずともよく、ほぼ一致されておればよい。より具体的には、屈曲振動の共振周波数と、拡がり振動の共振周波数との差の絶対値が、モード1における共振周波数と、モード2における共振周波数との平均値±15%の範囲内、より好ましくは平均値±5%の範囲内であればよい。このような範囲内であれば、上記モード1及びモード2をより一層確実に発現させることができる。
【0111】
上記結合モードの振動を利用することにより、第8の実施形態では、第1の実施形態に比べて、屈曲振幅を大きくすることができる。これは、振動が単振動の形となるため、屈曲振幅を大きくすることができることによる。これを、
図36を参照して説明する。
図36の実線は、上記
第8の実施形態の場合の変位ヒステリシスを示す図であり、破線は第1の実施形態の場合の変位ヒステリシスを示す図である。
【0112】
図36の破線で示すように、第1の実施形態では、拡がり振幅がマイナスの場合とプラスの場合とで、リリース状態及び移動可能状態が実現され、かつ屈曲振幅の大きさだけ移動体4を前進させることができる。
【0113】
他方、実線で示す第8の実施形態においては、結合モードにより、拡がり振幅がマイナスの場合のリリース状態と、拡がり振幅がプラス側である移動可能状態とが実現され、いずれにしても、屈曲振幅は非常に大きい。そのため、移動体を高速で移動させることができ、かつ大きな変位量を得ることができる。これを、
図37〜
図40を参照してより具体的に説明する。
【0114】
図37は、前述したモード1の場合の駆動パルスと、屈曲振動及び拡がり振動の変位量との関係を示す図である。なお、この屈曲振動の変位及び拡がり振動の変位が結合し、モード1の結合モードの振動が実現されている。モード1の場合には、屈曲振動と拡がり振動とがほぼ逆位相となるように、屈曲振動と拡がり振動とが結合されている。従って、移動体4を前進させることができる。
【0115】
これに対して、
図38に示すように、モード2の場合には、屈曲振動の位相と拡がり振動の位相がほぼ一致するように両者が結合されている。そのため、モード2では、移動体4を後退させることができる。
【0116】
いずれにしても、屈曲振動の変位量が前進時及び後退時のいずれにおいてもかなり大きいため、また屈曲振動が正弦波の形で変位するため、大きな変位量の得られることがわかる。
【0117】
図39は、第8の実施形態の駆動装置における駆動パルス及び移動体4の変位量の時間的変化を示す図である。
図39から明らかなように、第8の実施形態では、駆動開始当初から移動体4を移動させることができ、かつ高速で移動させ得ることがわかる。また、
図39から明らかなように、第8の実施形態では、移動体4の後退も生じ難いことがわかる。
【0118】
図40は、上記駆動パルスの駆動周波数と、移動体の速度との関係を示す図である。
【0119】
第8の実施形態において、上記駆動パルスの周波数を変化させると、前述したように、モード1またはモード2の結合モードが強く励振される。
図40は、モード1が生じる駆動周波数付近の駆動周波数と移動体速度との関係を示す図である。本実施形態では、93kHzとすれば、移動体4を最も高速で移動することができることがわかる。また、駆動周波数が90〜97kHzの範囲内であれば、移動体4を十分に高速で移動させ得ることがわかる。このような周波数範囲では、モード1の結合モードが強く励振されるためである。
【0120】
なお、
図40では図示していないが、90kHzよりも低い周波数域では、前述したモード2の結合モードが強く励振される周波数範囲が現れる。従って、駆動周波数を変化させることにより、モード1あるいはモード2により、移動体4を高速で前進または後退させることができる。
【0121】
第8の実施形態では、屈曲振動と、拡がり振動との結合モードを用いたが、屈曲振動と結合される他の振動は拡がり振動に限定されない。すなわち、屈曲振動と結合し得る限り、前述した第1の実施形態における他の振動と同様の他の振動を用いることができる。
【0122】
また、第8の実施形態では、弾性体11の厚みを調整することにより、結合モードの振動を生じさせていたが、弾性体11の厚みだけでなく、他の寸法や材質などを考慮して、上記結合モードの振動を生じさせてもよい。
【0123】
前述したように、第8の実施形態は上記結合モードの振動を利用したことにおいて第1,第4の実施形態と異なるものであり、従って、その他の構成については、第1の実施形態及び第1の実施形態の変形例、並びに第2,第3,及び第5〜第7の実施形態で示したように、適宜変形することができる。よって、第1の実施形態の変形例や第2,第3,及び第5〜第7の実施形態についての説明も第8の実施形態の駆動装置の説明に援用することとする。
【0124】
なお、上記第1〜第8の実施形態から明らかなように、弾性体の開口部もしくは外形の平面形状は、円形であってもよく、矩形などの異方性を有する非円形の形状であってもよい。そして、非円形の異方性を有する形状である場合には、前述したように、弾性体の寸法を調整することにより、屈曲振動の共振周波数と、他の振動の共振周波数を容易に調整することができる。従って、弾性体の平面形状や開口部の平面形状は、非円形の異方性を有する形状であることが望ましい。より好ましくは、弾性体の外形の平面形状と、開口部の平面形状との双方が非円形であることが好ましい。