(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のような車両では、一般に、作動媒体供給手段として、エンジンによって駆動される機械式のオイルポンプが用いられる。
【0005】
一方、近年では、燃費を向上させるために、特許文献1に記載のように自動変速機が搭載された車両において、交差点等における停車時に、所定の自動停止条件の成立によりエンジンを自動停止させるアイドルストップ制御が行われている。
【0006】
上述のように、作動媒体供給手段として、エンジンによって駆動される機械式のオイルポンプが用いられている場合、エンジンが上記アイドルストップ状態であるときには、作動媒体供給手段の作動が停止して、作動媒体室内に作動媒体が供給されなくなる。
【0007】
また、仮に、作動媒体供給手段として、エンジン以外の駆動源によって駆動するオイルポンプが用いられている場合であっても、規制手段がパーキングロッドを規制しているときは、作動媒体室に作動媒体を供給する必要がないため、上記オイルポンプを駆動させるエネルギーの消費を抑えるために、規制手段がパーキングロッドを規制している間は、上記オイルポンプの作動を停止させていることがある。そのため、エンジンが上記アイドルストップ状態になった時に、作動媒体室への作動媒体の供給が停止していることがある。
【0008】
上記特許文献1に記載の車両の自動変速機では、規制手段が、パーキングロッドに形成された溝に嵌まり込むことで、パーキングロッドの移動を規制しているところ、作動媒体室内に作動媒体が供給されないときには、パーキングロッドが、付勢手段の付勢力によって軸方向に移動することで、上記溝の側面と規制手段とが当接して、規制手段にはパーキングロッドを介して上記付勢力が作用する。電子作動式拘束装置が、規制解除手段を駆動させて、規制手段によるパーキングロッドに対する規制を解除するような構成である場合、規制手段に付勢手段の付勢力が作用した状態で、規制手段によるパーキングロッドに対する規制を解除するには、規制解除手段に対して比較的大きな出力が要求される。その結果、規制解除手段を大型化することが必要となるおそれがある。
【0009】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、規制手段によるパーキングロッドに対する規制を解除するための装置を大型化することなく、該規制を解除可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、車両の制御装置を対象として、エンジンの出力を所定の変速比で変速する自動変速機と、上記自動変速機の動力伝達軸の回転をロックするためのパーキングロック手段と、軸方向に移動して、上記パーキングロック手段を、上記動力伝達軸の回転をロックしたロック状態及び該ロックを解除した非ロック状態に切り換えるパーキングロッドと、上記パーキングロッドを、その軸方向に移動させるためのパーキング駆動手段と、上記パーキング駆動手段に設けられ、上記パーキングロック手段を上記ロック状態にするように、上記パーキングロッドを、その軸方向の一側に付勢する付勢手段と、上記パーキング駆動手段に設けられ、上記パーキングロック手段を上記非ロック状態にするように、上記付勢手段の付勢力に抗して、上記パーキングロッドを、その軸方向の他側に移動させる移動力を発生させるために、作動媒体が供給される作動媒体室と、上記エンジン以外の駆動源によって駆動されかつ上記作動媒体室に上記作動媒体を供給する第1の作動媒体供給手段と、上記パーキングロック手段の上記ロック状態及び上記非ロック状態において、上記パーキングロッドの軸方向の移動を規制するための規制手段と、上記規制手段が上記パーキングロッドの軸方向の移動を規制した規制状態を解除するための規制解除手段と、上記車両のドライバによって選択されたシフトレンジを検出するシフトレンジ検出手段と、所定の自動停止条件が成立したときに、上記エンジンをアイドルストップ状態にするアイドルストップ手段と、上記第1の作動媒体供給手段及び上記規制解除手段を制御する制御手段と、を備え、上記制御手段は、上記エンジンが上記アイドルストップ状態であるときに、上記シフトレンジ検出手段によって、非パーキングレンジからパーキングレンジへの切換要求があったことが検出されたときには、上記第1の作動媒体供給手段を駆動させて、上記作動媒体室内の圧力が、上記付勢手段の付勢力以上の上記移動力を発生させるような圧力である所定圧力となるように、上記作動媒体室に上記作動媒体を供給した後、上記規制解除手段を駆動して、上記規制手段を、上記パーキングロッドに対する規制を解除した規制解除状態にするように構成されている、ものとした。
【0011】
この構成によると、規制解除手段は、比較的小さい出力で規制手段によるパーキングロッドに対する規制を解除することができる。
【0012】
すなわち、エンジンの上記アイドルストップ状態において、作動媒体室への作動媒体の供給が停止されていると、付勢手段の付勢力によって、パーキングロッドは、その軸方向の一側、換言すると、パーキングロック手段をロック状態にする側(以下、ロック側という)に付勢される。そのため、パーキングロッドの軸方向の移動を規制する規制手段には、パーキングロッドを介して、上記付勢力が作用する。
【0013】
これに対し、制御手段は、エンジンが上記アイドルストップ状態であるときに、シフトレンジ検出手段によって、非パーキングレンジからパーキングレンジへの切換要求があったことが検出されたときには、上記駆動源により第1の作動媒体供給手段を駆動して、作動媒体室内の圧力が、パーキングロッドを、その軸方向の他側、換言すると、パーキングロック手段を非ロック状態にする側(以下、非ロック側という)に移動させる移動力であって、上記付勢力以上の移動力を発生させるような圧力である所定圧力となるように、作動媒体室に作動媒体を供給する。これにより、パーキングロッドに上記移動力が作用して、パーキングロッドを介して規制手段にも上記移動力が作用するため、規制手段に作用する上記付勢力が低減されて、規制解除手段は、エンジンが上記アイドルストップ状態であるときでも、比較的小さい出力で規制手段によるパーキングロッドに対する規制を解除することができるようになる。この結果、規制解除手段を大型化することなく、規制手段によるパーキングロッドに対する規制を解除することができる。
【0014】
上記車両の制御装置の一実施形態において、上記エンジンによって駆動されかつ上記作動媒体室に上記作動媒体を供給する第2の作動媒体供給手段をさらに備え、上記制御手段は、上記エンジンが作動しているときには、上記エンジンにより駆動される上記第2の作動媒体供給手段によって、上記作動媒体室に上記作動媒体を供給する一方、上記エンジンが上記アイドルストップ状態であるときには、上記駆動源により駆動される上記第1の作動媒体供給手段によって、上記作動媒体室に上記作動媒体を供給するように構成されている、ことが望ましい。
【0015】
この構成によると、エンジンが作動しているときには、エンジンにより駆動される第2の作動媒体供給手段によって、作動媒体室に作動媒体を供給するようにし、エンジンがアイドルストップ状態であるときには、エンジン以外の駆動源により駆動される第1の作動媒体供給手段によって、作動媒体室に作動媒体を供給するようにしているため、エンジンの作動中は、第1の作動媒体供給手段を駆動させる必要がなくなり、第1の作動媒体供給手段を駆動させるためのエネルギーの消費を抑えることができる。
【0016】
上記車両の制御装置において、上記パーキングロッドは、上記非ロック状態において、上記規制手段に設けられた係合爪が係合する係合溝を有し、上記エンジンが上記アイドルストップ状態であるときに、上記駆動源によって上記第1の作動媒体供給手段が駆動される前は、上記係合爪が上記係合溝の側面に当接して、上記パーキングロッドの、その軸方向の上記一側への移動が規制される一方、上記駆動源によって上記第1の作動媒体供給手段が駆動されて、上記作動媒体室内の圧力が上記所定圧力となったときには、上記パーキングロッドが、その軸方向の上記他側へ移動して、上記係合爪が上記係合溝の両側側面と当接しない状態となる、ことが望ましい。
【0017】
この構成によると、規制手段によって、パーキングロッドの軸方向の移動を規制するときには、先ず、パーキングロッドの係合溝に、規制手段の係合爪が係合する。そして、エンジンの上記アイドルストップ状態において、上記第1の作動媒体供給手段が作動する前は、パーキングロッドがロック側(軸方向の一側)に付勢されて、係合溝の側面と係合爪とが当接し、パーキングロッドのロック側への移動が規制される。このとき、係合爪には、パーキングロッドを介して付勢手段からの付勢力が作用する。一方、規制手段によるパーキングロッドに対する規制を解除するときに、駆動源によって第1の作動媒体供給手段を駆動して、作動媒体室内の圧力を上記所定圧力にすると、該所定圧力に基づく移動力によって、パーキングロッドが非ロック側(軸方向の他側)に移動して、係合爪と係合溝の両側側面とが当接しない状態になる。これにより、係合爪には付勢手段からの付勢力が作用しなくなる。この結果、規制解除手段は、より小さい出力で、規制手段によるパーキングロッドに対する規制を解除できるようになる。
【0018】
上記車両の制御装置において、上記制御手段は、上記作動媒体室内の圧力を上記所定圧力にして、上記規制手段を上記規制解除状態にした後、上記作動媒体室内の圧力を減少させて、上記パーキングロック手段を上記非ロック状態から上記ロック状態に切り換えるように構成されている、ことが望ましい。
【0019】
すなわち、作動媒体室内の圧力を上記所定圧力にして、規制手段を上記規制解除状態にした後、作動媒体室内の圧力を減少させれば、パーキングロッドは、付勢手段の付勢力によって、ロック側へと移動して、パーキングロック手段をロック状態に切り換える。これにより、非ロック状態からロック状態へと適切に切り換えることができる。
【0020】
上記制御手段が、上記のようにして、上記パーキングロック手段を上記非ロック状態から上記ロック状態に切り換えるように構成されている車両の制御装置において、上記パーキングロック手段の上記ロック状態及び上記非ロック状態を検出するためのロック検出手段をさらに備え、上記制御手段は、上記規制手段を上記規制解除状態にした後、上記作動媒体室内の圧力を減少させて、上記パーキングロック手段を上記非ロック状態から上記ロック状態に切り換えている間は、上記規制手段を上記規制解除状態に維持するように、上記規制解除手段を駆動させ続けて、上記ロック検出手段によって、上記パーキングロック手段の上記ロック状態が検出されたときに、上記規制解除手段を停止させて、上記規制手段を上記規制状態にするように構成されている、ことが望ましい。
【0021】
この構成によると、作動媒体室内の圧力を減少させて、パーキングロック手段を非ロック状態からロック状態に切り換えている間は、規制手段を上記規制解除状態に維持するように、規制解除手段を駆動させ続けて、ロック検出手段によって、パーキングロック手段のロック状態が検出されたときには、規制解除手段を停止させて、規制手段を上記規制状態にするため、パーキングロッドが、パーキングロック手段をロック状態にする位置までしてから、規制手段によって、パーキングロッドの軸方向の移動を規制することができる。これにより、適切にパーキングロッドの軸方向の移動を規制することができる。
【0022】
また、本発明の別の態様では、車両の制御装置を対象として、エンジンと、上記エンジンの出力を所定の変速比で変速する自動変速機と、上記自動変速機の動力伝達軸の回転をロックするためのパーキングロック手段と、軸方向に移動して、上記パーキングロック手段を、上記動力伝達軸の回転をロックしたロック状態及び該ロックを解除した非ロック状態に切り換えるパーキングロッドと、上記パーキングロッドを、その軸方向に移動させるためのパーキング駆動手段と、上記パーキング駆動手段に設けられ、上記パーキングロック手段を上記ロック状態にするように、上記パーキングロッドを、その軸方向の一側に付勢する付勢手段と、上記パーキング駆動手段に設けられ、上記パーキングロック手段を上記非ロック状態にするように、上記付勢手段の付勢力に抗して、上記パーキングロッドを、その軸方向の他側に移動させる移動力を発生させるために、作動媒体が供給される作動媒体室と、上記エンジンによって駆動されかつ上記作動媒体室に作動媒体を供給する作動媒体供給手段と、上記パーキングロック手段の上記ロック状態及び上記非ロック状態において、上記パーキングロッドの軸方向の移動を規制するための規制手段と、上記規制手段が上記パーキングロッドの軸方向の移動を規制した規制状態を解除するための規制解除手段と、上記車両のドライバによって選択されたシフトレンジを検出するシフトレンジ検出手段と、所定の自動停止条件が成立したときに、上記エンジンをアイドルストップ状態にするアイドルストップ手段と、上記エンジン及び上記規制解除手段を制御する制御手段と、を備え、上記制御手段は、上記エンジンが上記アイドルストップ状態であるときに、上記シフトレンジ検出手段によって、非パーキングレンジからパーキングレンジへの切換要求があったことが検出されたときには、上記エンジンを始動させることで上記作動媒体供給手段を駆動させて、上記作動媒体室内の圧力が、上記付勢手段の付勢力以上の上記移動力を発生させるような圧力である所定圧力になるように、上記作動媒体室に上記作動媒体を供給した後、上記規制解除手段を駆動して、上記規制手段を、上記パーキングロッドに対する規制を解除した規制解除状態にするように構成されている、ものである。
【0023】
すなわち、エンジンが上記アイドルストップ状態であるときには、エンジンが作動していないため、作動媒体供給手段による作動媒体の供給が停止され、パーキングロッドは、付勢手段によってロック側(軸方向の一側)に付勢されている。そのため、パーキングロッドの軸方向の移動を規制する規制手段には、パーキングロッドを介して、上記付勢力が作用する。
【0024】
これに対し、制御手段は、エンジンの上記アイドルストップ状態において、シフトレンジ検出手段によって、非パーキングレンジからパーキングレンジへの切換要求があったことが検出されたときには、エンジンを始動させることで、作動媒体供給手段を駆動させる。そして、制御手段は、作動媒体室内の圧力が、パーキングロッドを非ロック側(軸方向の他側)に移動させる移動力であって、上記付勢力以上の移動力を発生させるような圧力である所定圧力となるように、作動媒体室に作動媒体を供給させる。これにより、パーキングロッドに上記移動力が作用して、規制手段にも該パーキングロッドを介して上記移動力が作用するため、規制手段に作用する上記付勢力が低減されて、規制解除手段は、エンジンが上記アイドルストップ状態であるときでも、比較的小さい出力で規制手段によるパーキングロッドに対する規制を解除することができるようになる。この結果、規制解除手段を大型化することなく、規制手段によるパーキングロッドに対する規制を解除することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明に係る車両の制御装置によると、制御手段は、エンジンがアイドルストップ状態であるときに、シフトレンジ検出手段によって、非パーキングレンジからパーキングレンジへの切換要求があったことが検出されたときには、第1の作動媒体供給手段を駆動させて、作動媒体室内の圧力が、付勢手段の付勢力以上の移動力を発生させるような圧力である所定圧力となるように、作動媒体室に上記作動媒体を供給した後、規制解除手段を駆動して、規制手段を、パーキングロッドに対する規制を解除した規制解除状態にするように構成されているため、規制解除手段は、パーキングロッドを介して規制手段に作用する付勢力が低減された状態で、規制手段による規制を解除することができる。これにより、規制解除手段は、比較的小さい出力で規制手段による規制を解除することができる。この結果、規制解除手段を大型化することなく、規制手段によるパーキングロッドに対する規制を解除することができる。
【0026】
また、本発明の別の態様の車両の制御装置では、制御手段は、エンジンがアイドルストップ状態であるときに、シフトレンジ検出手段によって、非パーキングレンジからパーキングレンジへの切換要求があったことが検出されたときには、エンジンを始動させることで作動媒体供給手段を駆動させて、作動媒体室内の圧力が、付勢手段の付勢力以上の移動力を発生させるような圧力である所定圧力になるように、作動媒体室に作動媒体を供給した後、規制解除手段を駆動して、規制手段を、パーキングロッドに対する規制を解除した規制解除状態にするように構成されているため、規制解除手段は、パーキングロッドを介して規制手段に作用する付勢力が低減された状態で、規制手段による規制を解除することができる。これにより、規制解除手段は、比較的小さい出力で規制手段による規制を解除することができる。この結果、上記車両の制御装置と同様に、規制解除手段を大型化することなく、規制手段によるパーキングロッドに対する規制を解除することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係るパーキング制御装置により制御される自動変速機4が搭載された車両1の前側部分の概略図である。この車両1は、フロントエンジンフロントドライブ式(FF式)の車両であって、車両前側にエンジン10が横置きされており、エンジン10の車両左側には自動変速機20が配置されている。エンジン10からの出力は、自動変速機20を介して駆動輪61に伝達され、これにより、車両1が走行するようになっている。尚、車両1は、車両後側の駆動輪(図示省略)を駆動するフロントエンジンリアドライブ式(FR式)の車両であってもよい。
【0030】
車両1における車室内には、シフトレバー50が配置されている。シフトレバー50は、自動変速機20のシフトレンジを選択するものであり、該シフトレンジとしては、「P」(パーキングレンジ)、「R」(後退レンジ)、「N」(ニュートラルレンジ)、「D」(ドライブレンジ)等があり、車両1のドライバがシフトレバー50を操作して所望のシフトレンジを選択する。尚、以下の説明において、パーキングレンジを「Pレンジ」、パーキングレンジ以外のシフトレンジである非パーキングレンジを「NotPレンジ」という。
【0031】
自動変速機20は、シフトバイワイヤ方式の自動変速機である。シフトレバー50の操作によって選択されたシフトレンジは、後述するシフトレンジ検出手段としてのセレクターセンサ101(
図5参照)によって検出されるようになっており、セレクターセンサ101の検出結果に基づく電気信号が、制御手段としてのコントロールユニット100に入力される。そして、上記電気信号に基づくコントロールユニット100からの出力信号によって、自動変速機20のシフトレンジが切り換えられる。
【0032】
また、自動変速機20は、Pレンジが選択されている際に、動力伝達軸23(
図2及び
図3参照)の動作(回転)を規制(ロック)するためのパーキング装置21(
図2及び
図3参照)を有している。動力伝達軸23は、エンジン2等の動力源からの動力を伝達するためのものである。動力伝達軸23は、上記動力源と直接連結されていてもよく、トルクコンバータ等を介して間接的に連結されていてもよい。
【0033】
次に、
図2〜
図4を参照しながら自動変速機20におけるパーキング装置21の構成について説明する。
【0034】
自動変速機20のパーキング装置21は、自動変速機20の変速機ケース(図示省略)の内部に配設されている。パーキング装置21には、動力伝達軸23に取り付けられたパーキングギヤ24と、Pレンジにおいて、パーキングギヤ24と係合して動力伝達軸23の回転をロックするパーキングポール25と、軸方向に移動して、パーキングポール25とパーキングギヤ23との係合状態(以下、ロック状態という)及び非係合状態(以下、非ロック状態という)を切り換えるためのパーキングロッド26と、パーキングロッド26を、その軸方向に移動させるためのアクチュエータ27(パーキング駆動手段)と、ロック状態及び非ロック状態においてパーキングロッド26の軸方向の移動を規制するためのストッパ35(規制手段)と、ストッパ35によるパーキングロッド26に対する規制を解除するためのソレノイド40(規制解除手段)と、パーキングロッド26の位置を検出するロッド位置センサ105と、を備えている。尚、以下の説明において、パーキングロッド26の軸方向における、パーキングポール25側(
図2及び
図3では左側)をロック側、反パーキングポール25側(
図2及び
図3では右側)を非ロック側という。
【0035】
パーキングポール25は、
図2及び
図3に示すように、ロック側の端部が上記変速機ケースにピン28で回動可能に支持され、非ロック側の端部にはパーキングロッド26(詳しくは、後述のパーキングカム29)に押圧されるポール押圧部25aが形成されている。ピン28によって支持された支持部とポール押圧部25aとの間には、パーキングギヤ24と係合する凸部25bが形成されている。また、パーキングポール25には、パーキングギヤ24とポール25bとの係合が解除される方向(
図2及び
図3では反時計回り方向)にポール押圧部25aを付勢する2本のパーキングポール付勢スプリング25c,25dが取り付けられている。パーキングポール付勢スプリング25c,25dは、本実施形態では、捻りコイルスプリングであり、パーキングポール付勢スプリング25cは、ロック側の端部がポール押圧部25aに当接しかつ非ロック側の端部が上記変速機ケースに当接している。一方、パーキングポール付勢スプリング25dは、ロック側の端部がポール押圧部25aに当接子かつ非ロック側の端部が後述するブラケット30に当接している。
【0036】
パーキングポール25は、
図2に示すように、パーキングロッド26がロック側に移動したときには、ポール押圧部25aがパーキングロッド26に押圧されて、パーキングポール付勢25c,25dの付勢力に抗して、ピン28周りにパーキングギヤ24に凸部25bが係合する方向(
図2で時計回り方向)に回動する一方、
図3に示すように、パーキングロッド26が非ロック側に移動したときには、パーキングポール付勢25c,25dの付勢力によって、ピン28周りにパーキングギヤ24とポール25bとの係合が解除される方向に回動する。本実施形態では、パーキングギヤ24とパーキングポール25とは、動力伝達軸23の回転をロックするパーキングロック手段を構成する。
【0037】
パーキングロッド26は、
図2及び
図3に示すように、アクチュエータ27に配設されたピストンロッド26aと、ロック状態において、パーキングポール25を押圧するためのプッシュロッド26bとによって構成されている。
【0038】
プッシュロッド26bは、ブラケット30に支持された状態で配設されており、プッシュロッド26bのロック側の端部には、ロック状態において、パーキングポール25の凸部25bがパーキングギヤ24と係合する方向にポール押圧部25aを押圧するパーキングカム29が設けられている。パーキングカム29は、円柱体と円錐台とを組み合わせた形状をなしており、円柱体のロック側の面に、ロック側に向かって縮径するように円錐台が取り付けられている。パーキングカム29は、パーキングポール25を非ロック状態からロック状態に回動させる際に、パーキングポール25をパーキングギヤ24側に案内する役割を有している。すなわち、パーキングロッド26がロック側に移動したときには、パーキングポール25は、パーキングカム29の縮径部分に案内されて、ピン28周りに回動する。また、ブラケット30には、パーキングカム29の移動を案内するガイド51が設けられている。
【0039】
プッシュロッド26bの非ロック側の端部は、プッシュロッド26bの長手方向と略直角になるように湾曲しており、該湾曲した部分にピストンロッド26aのロック側の端部が接続されている。ピストンロッド26aには、後述のシリンダ31aに嵌挿されたピストン26cが形成されている。
【0040】
また、ピストンロッド26aの非ロック側の端部には、ストッパ35と係合する第1及び第2係合溝36,37が形成されている。第1係合溝36は、パーキングポール25がロック状態であるときに、ストッパ35が係合する溝である一方、第2係合溝37は、第1係合溝36よりもロック側に位置していて、ピストンロッド26aが非ロック側に移動して、パーキングポール25が非ロック状態であるときに、ストッパ35が係合する溝である。第1及び第2係合溝36,37の溝幅は、パーキングロッド26の軸方向における、ストッパ35の厚みよりも大きい。尚、第1及び第2係合溝36,37は、ピストンロッド26aの周方向全周に亘って形成されていてもよく、周方向の一部であって、ストッパ35が係合する部分のみに形成されていてもよい。
【0041】
アクチュエータ27は、本実施形態では、油圧式のアクチュエータである。アクチュエータ27は、シリンダ31aを有する円筒ケース31及び該シリンダ31aの両側の開口を封止する封止部材32によって形成されたハウジングを有している。ピストンロッド26aは、ロック側の封止部材32を貫通して、シリンダ31a内を通って、非ロック側の封止部材32を貫通するように延びている。上述したように、シリンダ31aにはピストン26cが嵌挿されており、該ピストン26cは、シリンダ31aを二室に区画している。区画された室のうち、ピストン26cよりも非ロック側の室には、パーキングポール25がロック状態となるように、パーキングロッド26(詳しくは、ピストン26c)を、その軸方向の一側に、すなわち、ロック側に付勢するロッド付勢スプリング(付勢手段)34が配置されている一方、ピストン26cよりもロック側の部屋には、パーキングポール25が非ロック状態となるように、ロッド付勢スプリング34の付勢力に抗して、パーキングロッド26を、その軸方向の他側、すなわち、非ロック側に移動させる移動力を発生させるために、オイル(作動媒体)が供給される油圧室(作動媒体室)33が形成されている。尚、ロッド付勢スプリング34は、本実施形態では、圧縮コイルスプリングであって、ロック側の端部はピストン26cに当接する一方、非ロック側の端部は封止部材32に当接している。
【0042】
上述したように、ロッド付勢スプリング34はパーキングロッド26をロック側に付勢している。つまり、油圧室33にオイルが供給されておらず、ピストン26cに、油圧室33内の圧力に基づく移動力が作用していない状態では、パーキングロッド26はロック側へ移動する。一方、油圧室33にオイルが供給され、油圧室33内の圧力が、ロッド付勢スプリング34の付勢力よりも大きい移動力を発生させるような圧力になっている状態では、パーキングロッド26がロッド付勢スプリング34の付勢力に抗して非ロック側へ移動する。
【0043】
上記油圧室33は、油圧室33内にオイルポンプからのオイルを供給するための油路12と接続されている。本実施形態では、油圧室33にオイルを供給するためのオイルポンプとして、エンジン10によって駆動される機械式オイルポンプ11(以下、機械ポンプ11という)と、エンジン10以外の駆動源であるモータ15によって駆動される電動式オイルポンプ14(以下、電動ポンプ14という)との2つが設けられている。機械ポンプ11は、例えば、上記変速機ケース内に配設されて、自動変速機20の摩擦締結要素へ供給する油圧を生成するオイルポンプである。一方、電動ポンプ14は、例えば、車両1に搭載されたバッテリ(図示省略)などの電力によって、モータ15が作動することで駆動されるオイルポンプであって、例えば、上記変速機ケース内に配設されて、自動変速機20の摩擦締結要素へ供給する油圧を生成するオイルポンプである。本実施形態では、電動ポンプ14が第1の作動媒体供給手段に相当し、機械ポンプ11が第2の作動媒体供給手段に相当する。
【0044】
各ポンプ11,14は、共通の切換弁16に接続されており、該切換弁16には油路12が接続されている。切換弁16は、油路12に接続されるポンプを切り替えるためのものである。詳しくは後述するが、切換弁16は、エンジン10が作動しているときには、油路12が機械ポンプ11と接続するように切り替えられる一方、エンジン10が後述する自動停止状態(アイドルストップ状態)であるときには、油路12が電動ポンプ14と接続するように切り換えられる。
【0045】
油路12には、油圧室33にオイルを供給又は油圧室33からオイルを排出(ドレン)するアクチュエータ制御弁13が設けられている。アクチュエータ制御弁13が設けられている。機械又は電動ポンプ11,14から供給されるオイルは、アクチュエータ制御弁13によって油圧が調整された後、油圧室33に供給される。すなわち、圧力室33の油圧はアクチュエータ制御弁13によって制御される。尚、アクチュエータ制御弁13は、例えばリニアソレノイドバルブなどである。
【0046】
ストッパ35は、
図4に示すように、細長い板状の部材に係合爪35aが形成されたものである。ストッパ35は、一端側が自動変速機20の上記変速機ケースにピン38で回動可能に支持されている。ストッパ35には、パーキングロッド26の軸方向の移動を規制する方向(
図4で時計回り方向。以下、規制方向という)にストッパ35を付勢するためのストッパ付勢スプリング39が取り付けてあり、ストッパ付勢スプリング39の付勢力によって、ストッパ35が、ピン38周りに規制方向に回動することで、係合爪35aがパーキングロッド26の第1又は第2係合溝36,37と係合する。ストッパ付勢スプリング39は、本実施形態では、圧縮コイルスプリングであって、一端側がストッパ35に当接する一方、他端側が上記変速機ケースに当接している。
【0047】
ストッパ35は、係合爪35aがパーキングロッド26に設けられた第1又は第2係合溝36,37と係合し、第1又は第2係合溝36,37の側面と当接することで、パーキングロッド26の軸方向の移動を規制する。すなわち、油圧室33内の圧力に基づく移動力又はロッド付勢スプリング34の付勢力によって、パーキングロッド26が非ロック側又はロック側に移動しようとしても、ストッパ35(詳しくは、ストッパ35の係合爪35a)が第1又は第2係合溝36,37の側面と当接することで、パーキングロッド26がその軸方向に移動しないように規制される。
【0048】
ソレノイド40は、所謂プッシュ型のソレノイドであり、
図4に示すように、内部に駆動用のコイル(図示せず)等が配置されたソレノイド本体40aと、該コイル等によって駆動される可動体40bとを備えている。ソレノイド40は、駆動時には、可動体40bを押し出して、ストッパ付勢スプリング39の付勢力に抗して、ストッパ35をピン38周りに規制を解除する方向(
図4で反時計回り方向。以下、規制解除方向という)に回動させて、
図4に仮想線で示す規制解除状態にする。一方、ソレノイド40は、停止時には、ストッパ付勢スプリング39の付勢力によって、可動体40bがソレノイド本体40aに押し込まれることで、ストッパ35をピン38周りに規制方向に回動させて、
図4に実線で示す規制状態にする。
【0049】
ロッド位置センサ105は、パーキングロッド26の非ロック側の端部の位置に配設されている。ロッド位置センサ105は、本実施形態では磁気タイプの位置センサであって、略C字状をなした磁気センサ105aと、磁気センサ105aにおけるC字の内側をスライド可能なスライダ105bとで構成されている。スライダ105bには、係合部105cが設けられており、この係合部105cがパーキングロッド26の非ロック側の端部と係合することで、スライダ105bとパーキングロッド26とが一体結合される。これにより、スライダ105bは、パーキングロッド26の軸方向の移動に合わせて、磁気センサ105aにおけるC字の内側をスライドする。スライダ105bには、所定の磁気パターンが着磁されており、この磁気パターンを磁気センサ105aで検出して、スライダ105bの位置を特定することで、パーキングロッド26の位置が検出される。
【0050】
次に、
図5を参照しながら、車両1の制御系について説明する。
【0051】
図5に、車両1の制御系の構成を示すブロック図を示す。車両1は、車両1のドライバがシフトレバー50を操作して選択したシフトレンジを検出するセレクターセンサ101と、車両1の乗員によるブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキ操作センサ102と、車両1の車速を検出する車速センサ103と、車両1の乗員によるアクセルペダルの踏み込み量(乗員の操作によるアクセル開度)を検出するアクセル開度センサ104と、上述したロッド位置センサ105と、それらのセンサの検出結果から、エンジン10、自動変速機20のアクチュエータ制御弁13及びソレノイド40、モータ15及び切換弁16等の作動制御等を行うコントロールユニット100と、が設けられている。
【0052】
コントロールユニット100は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。コントロールユニット100には、セレクターセンサ101、ブレーキ操作センサ102、車速センサ103、アクセル開度センサ104、ロッド位置センサ105、等からの各種情報の信号が入力されるようになっている。
【0053】
コントロールユニット100は、ロッド位置センサ105によって検出されたパーキングロッド26の位置から、パーキングポール25のロック状態、非ロック状態及びロック状態と非ロック状態との間の中間状態を判定する。具体的には、コントロールユニット100は、
図2に示すように、スライダ105bが磁気センサ105aのロック側に位置しているときには、パーキングポール25は、パーキングロッド26のパーキングカム29に押圧されて、ロック状態であると判断し、
図3に示すように、スライダ105bが磁気センサ105aの非ロック側に位置しているときには、パーキングポール25は、パーキングカム29の押圧から解放されて、非ロック状態であると判断する。また、スライダ105bが、ロック状態と判断される位置と非ロック状態と判断される位置との間の所定範囲に位置しているときには、パーキングポール25は中間状態であると判断されるようになっている。このことから、ロッド位置センサ105は、ロック状態及び非ロック状態を検出するためのロック検出手段を構成する。
【0054】
また、コントロールユニット100は、燃費の向上や、環境汚染物質あるいは二酸化炭素の排出低減等のために、所定の自動停止条件が成立したときに、エンジン10をアイドルストップ状態にし、所定の再始動条件が成立したときに、自動的に再始動させる、アイドルストップ制御を行う。上記自動停止条件としては、例えば、シフトレンジがドライブレンジであり、車速が所定車速以下であり、アクセル開度が所定開度以下であり、かつ、ブレーキペダルが踏み込まれたという条件である。一方、上記再始動条件としては、アイドルストップ状態から、アクセル操作が行われて、アクセル開度が所定開度よりも高くなったという条件である。以上のように、コントロールユニット100はアイドルストップ手段を構成している。
【0055】
さらに、コントロールユニット100は、切換弁16を制御して、油路12と接続されるオイルポンプを切り換える。具体的には、エンジン10が作動しているときには、機械ポンプ11が作動しているため、コントロールユニット100は、油路12が機械ポンプ11と接続されるように切換弁16を切り換えて、機械ポンプ11によって油圧室33にオイルが供給されるようにする。一方、エンジン10が上記アイドルストップ状態であるときには、機械ポンプ11が停止するため、コントロールユニット100は、油路12が電動ポンプ14と接続されるように切換弁16を切り換えるとともに、モータ15を駆動させることで、電動ポンプ14を駆動させて、電動ポンプ14によって油圧室33にオイルが供給されるようにする。これにより、エンジン10の上記アイドルストップ状態であっても、油圧室33にオイルを供給することができる。
【0056】
また、コントロールユニット100は、アクチュエータ制御弁13及びソレノイド40の作動制御を行うことで、自動変速機20のPレンジとNotPレンジとの切り換えを行う。
【0057】
具体的には、シフトレバー50が、PレンジからNotPレンジに、又は、NotPレンジからPレンジに切り換えられたことが、セレクターセンサ101によって検出されたときには、コントロールユニット100は、ソレノイド40を駆動させて、ストッパ35を、パーキングロッド26に対する規制を解除した規制解除状態にする。
【0058】
ストッパ35を上記規制解除状態にした後、コントロールユニット100は、パーキングロッド26を、その軸方向に移動させるために、アクチュエータ制御弁13を制御して、油圧室33にオイルを供給して油圧室33内の圧力を増大、又は油圧室33内からオイルを排出して油圧室33内の圧力を減少させる。この間、コントロールユニット100は、ソレノイド40を駆動させ続け、ストッパ35を上記規制解除状態に維持する。
【0059】
そして、コントロールユニット100は、ロッド位置センサ105によって、ロック状態又は非ロック状態が検出されたときに、ソレノイド40を停止させ、ストッパ35を規制方向に回動させて、パーキングロッド26の第1又は第2係合溝36,37と係合爪35aとを係合させる。これにより、パーキングロッド26が軸方向に移動しようとしても、ある程度移動したところで第1又は第2係合溝36,37の側面と係合爪35aとが当接して、パーキングロッド26の軸方向の移動が規制される。
【0060】
ここで、車両1の走行中は、シフトレンジはドライブレンジ、すなわちNotPレンジが選択されており、パーキングポール25は非ロック状態である。この状態では、ストッパ35は、パーキングロッド26の第2係合溝37と係合して、パーキングロッド26の軸方向の移動を規制している。この状態から、上記自動停止条件が満たされて、エンジン10が上記アイドルストップ状態となると、機械ポンプ11が停止し、機械ポンプ11から油圧室33にオイルが供給されなくなる。油圧室33にオイルが供給されない状態では、パーキングロッド26は、ロッド付勢スプリング34の付勢力によって、ロック側に付勢される。このとき、ストッパ35は、第2係合溝37の非ロック側の側面と当接して、パーキングロッド26の軸方向の移動を規制するため、ストッパ35には、パーキングロッド26を介してロッド付勢スプリング34の付勢力が作用する。
【0061】
ストッパ35にロッド付勢スプリング34の付勢力が作用していると、ストッパ35が回動する際に摩擦等の抵抗力が発生して、ストッパ35が回動しにくくなる。そのため、上記アイドルストップ状態において、車両1のドライバが、車両1を駐車させるべく、シフトレンジをNotPレンジからPレンジへ切り替えたときに、ストッパ35によるパーキングロッド26に対する規制を解除するために、ストッパ35を規制解除方向に回動させるには、ソレノイド40に対して比較的大きな出力が要求される。この結果、ソレノイド40の大型化が避けられなくなる。
【0062】
そこで、実施形態1では、コントロールユニット100は、エンジン10が上記アイドルストップ状態であるときに、セレクターセンサ101によって、NotPレンジからPレンジへの切換要求があったことが検出されたときには、電動ポンプ14を駆動させて、油圧室33の圧力が、ロッド付勢スプリング34の付勢力以上の移動力を発生させるような圧力である所定圧力となるように、油圧室33にオイルを供給した後、ソレノイド40を駆動して、ストッパ35を、パーキングロッド26に対する規制を解除した規制解除状態にするようにしている。
【0063】
具体的に、エンジン10がアイドルストップ状態であるときに、NotPレンジからPレンジへの切換要求があったときについて説明する。先ず、初期状態では、エンジン10はアイドルストップ状態であり、シフトレンジはNotPレンジ(詳しくはドライブレンジ)に選択されて、パーキング装置21は非ロック状態となっており、機械ポンプ11は油圧室33へのオイルの供給を停止させた状態である。また、切換弁16は、油路12と電動ポンプ14とを接続するように切り替えられている。
【0064】
上記初期状態から、車両1のドライバがシフトレバー50を操作してシフトレンジをNotPレンジからPレンジへ切り換え、セレクターセンサ101によって、NotPレンジからPレンジへの切換要求があったことが検出されたときには、コントロールユニット100は、モータ15を駆動させることで、電動ポンプ14を駆動させる。さらに、コントロールユニット100は、ソレノイド40を駆動させる前に、アクチュエータ制御弁13を制御して、電動ポンプ14からのオイルを、油圧室33内の圧力が上記所定圧力となるように調整して、油圧室33に供給させる。上記所定圧力は、ストッパ35の係合爪35bが第2係合溝37の両側側面と当接しない程度の移動力を発生させるような圧力に設定されているため、油圧室33内の圧力が上記所定圧力となることで、パーキングロッド26は、ロッド付勢スプリング34の付勢力に抗して非ロック側へと移動し、ストッパ35の係合爪35bと第2係合溝37の両側側面とが当接しない状態になる。そして、この状態で、ソレノイド40を駆動してストッパ35を規制解除方向に回動させるようにすれば、ソレノイド40は比較的小さな出力でストッパ35を回動させることができる。この結果、ソレノイド40を大型化させることなく、ストッパ35を上記規制解除状態にすることができる。
【0065】
ストッパ35を上記規制解除状態にした後、コントロールユニット100は、油圧室33からオイルを排出して、油圧室33内の圧力を減少させる。油圧室33内の圧力を減少させることで、パーキングロッド26は、ロッド付勢スプリング34の付勢力によって、ロック側へ移動する。そして、コントロールユニット100は、ロッド位置センサ105によってロック状態が検出されたときに、ソレノイド40を停止させて、係合爪35bを第1係合溝36と係合させる。これにより、Pレンジに切り換えられた状態で、ストッパ35によって、パーキングロッド26の軸方向の移動が規制される。尚、パーキングポール25を非ロック状態からロック状態に切り換えるように、パーキングロッド26を移動させる際に、コントロールユニット100は、油圧室33へのオイルの供給を完全に停止させて、油圧室33からオイルを全て排出するようにしてもよいし、油圧室33へのオイルの供給を停止させずに、油圧室33にオイルを残すようにしてもよい。また、ストッパ35によってパーキングロッド26の軸方向の移動を規制した後は、油圧室33からオイルを全て排出するようにしてもよい。
【0066】
次に、
図6のフローチャートを参照しながら、実施形態1において、エンジン10がアイドルストップ状態であるときに、シフトレンジがNotPレンジからPレンジに切り換えられる際の、コントロールユニット100による処理動作について説明する。
【0067】
最初のステップS101において、シフトレンジがNotPレンジであるか否かについて判定する。NotPレンジであるか否かは、ロッド位置センサ105の検出結果に基づいて判定する。すなわち、ロッド位置センサ105によって、非ロック状態が検出されたときには、NotPレンジであると判定する一方、ロック状態が検出されたときには、NotPレンジではなく、Pレンジであると判定する。シフトレンジがNotPレンジであるYESのときには、ステップS102へと進む一方、シフトレンジがPレンジであるNOのときには、リターンする。
【0068】
上記ステップS102では、エンジン10が上記アイドルストップ状態であるか否かについて判定する。エンジン10が上記アイドルストップ状態であるか否かの判定は、エンジン10からの出力信号に基づいて行う。エンジン10が上記アイドルストップ状態であるYESのときには、ステップS103へと進む一方、エンジン10が上記アイドルストップ状態でないNOのときには、リターンする。
【0069】
上記ステップS103では、NotPレンジからPレンジへの切換要求があるか否かについて判定する。上記切換要求があるか否かは、セレクターセンサ101の検出結果に基づいて判定する。Pレンジへの切換要求があるYESのときには、ステップS104へ進む。一方、Pレンジへの切換要求がないNOのときには、リターンする。
【0070】
上記ステップS104では、油圧室33にオイルを供給すべく、モータ15を駆動させることで、電動ポンプ14を駆動させる。尚、フローチャートには示していないが、このとき、切換弁16は、油路12と電動ポンプ14を接続するように切り替えられている。
【0071】
次のステップS105では、アクチュエータ制御弁13を制御して、油圧室33内の圧力が上記所定圧力になるように、油圧室33にオイルを供給する。これにより、パーキングロッド26は、ロッド付勢スプリング34の付勢力に抗して非ロック側へと移動し、ストッパ35の係合爪35bと第2係合溝37の両側側面とが当接しない状態となる。
【0072】
次のステップS106では、ソレノイド40を駆動して、ストッパ35を、ピン38周りに規制解除方向に回動にさせて、パーキングロッド26に対する規制を解除した規制解除状態にする。ソレノイド40は、後述のステップS109においてPレンジへの切り換えが完了するまで、ストッパ35を上記規制解除状態に維持するために、駆動され続ける。
【0073】
次のステップS107では、アクチュエータ制御弁13を制御して、油圧室33からオイルを排出し、油圧室33内の圧力を減少させる。これにより、パーキングロッド26がさらにロック側へと移動する。上述したように、このステップS107において油圧室33内の圧力を減少させるときには、油圧室33へのオイルの供給を完全に停止させてもよいし、油圧室33へのオイルの供給を停止させずに、油圧室33にオイルを残すようにしてもよい。
【0074】
次のステップS108では、Pレンジへの切り換えが完了したか否かについて判定する。判定は、ロッド位置センサ105によってロック状態が検出されたか否かに基づいて行う。すなわち、ロック状態が検出されたときに、Pレンジへの切り換えが完了したと判定する。Pレンジへの切り換えが完了したYESのときには、ステップS109に進む一方、Pレンジへの切り換えが完了していないNOのときには、再びS108で判定を受ける。
【0075】
上記ステップS109では、ソレノイド40の駆動を停止させる。これにより、ストッパ35は、ストッパ付勢スプリング39の付勢力によって、ピン38周りに規制方向に回動し、第1係合溝36と係合する。これにより、パーキングロッド26の軸方向の移動が再び規制される。尚、上述したように、ストッパ35によってパーキングロッド26の軸方向の移動を規制した後は、油圧室33からオイルを全て排出するようにしてもよい。そして、ステップS109の後は、リターンする。
【0076】
したがって、実施形態1では、コントロールユニット100は、エンジン10がアイドルストップ状態であるときに、セレクターセンサ101によって、NotPレンジからPレンジへの切換要求があったことが検出されたときには、電動ポンプ14を駆動させて、油圧室33内の圧力が、ロッド付勢スプリング34の付勢力以上の移動力を発生させる圧力である所定圧力となるように、油圧室33にオイルを供給した後、ストッパ35を駆動して、ストッパ35を、パーキングロッド26に対する規制を解除した規制解除状態にするように構成されているため、エンジン10が上記アイドルストップ状態であるときに、上記切換要求があったときには、パーキングロッド26は、ロッド付勢スプリング34の付勢力に抗して、非ロック側に移動する。このように、パーキングロッド26が非ロック側に移動することで、パーキングロッド26を介してストッパ35に作用する上記付勢力が低減される。この結果、ソレノイド40は、比較的小さい出力でストッパ35によるパーキングロッド26に対する規制を解除することができるようになるため、ソレノイド40を大型化することなくパーキングロッド26に対する規制を解除することができる。
【0077】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0078】
図7は、実施形態2に係る制御装置により制御される車両1の、自動変速機20のパーキング装置21における非ロック状態のときの断面図である。
【0079】
実施形態1では、油圧室33にオイルを供給するオイルポンプとして、機械ポンプ11及び電動ポンプ14の2つのオイルポンプが設けられていたが、実施形態2では、電動ポンプ14がなく、オイルポンプは機械ポンプ11のみである。また、オイルポンプが機械ポンプ11のみであるため、切換弁16も設けられていない。その他、パーキング装置21を含む車両1の構成は、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0080】
実施形態2では、オイルポンプは機械ポンプ11のみであることから、エンジン10がアイドルストップ状態であるときに、NotPレンジからPレンジへの切換要求あったときの、コントロールユニット100による制御の内容が、実施形態1と異なる。
【0081】
具体的には、エンジン10がアイドルストップ状態であるときに、セレクターセンサ101によって、NotPレンジからPレンジへの切換要求があったことが検出されたときには、実施形態1では、電動ポンプ14を駆動させて、油圧室33の圧力が、ロッド付勢スプリング34の付勢力以上の移動力を発生させるような圧力である所定圧力となるように、油圧室33にオイルを供給するようにしていたが、実施形態2では、エンジン10を始動させて、機械ポンプ11を駆動させることで、油圧室33の圧力が上記所定圧力となるように、油圧室33にオイルを供給する。
【0082】
実施形態2の場合も、上記所定圧力は、ストッパ35の係合爪35bが第2係合溝37の両側側面と当接しない程度の移動力を発生させるような圧力に設定されているため、実施形態1と同様に、油圧室33内の圧力が上記所定圧力となることで、パーキングロッド26は、ロッド付勢スプリング34の付勢力に抗して非ロック側へと移動し、ストッパ35の係合爪35bと第2係合溝37の両側側面とが当接しない状態になる。そして、この状態で、ソレノイド40を駆動してストッパ35を規制解除方向に回動させるようにすれば、ソレノイド40は比較的小さな出力でストッパ35を回動させることができる。この結果、ソレノイド40を大型化させることなく、ストッパ35を、パーキングロッド26に対する規制を解除した規制解除状態にすることができる。また、機械ポンプ11と別に電動ポンプ14を設ける必要がなくなるため、車両1の製造コストを削減することもできる。
【0083】
以下において、
図8のフローチャートを参照しながら、実施形態2において、エンジン10がアイドルストップ状態であるときに、シフトレンジがNotPレンジからPレンジに切り換えられる際の、コントロールユニット100による処理動作について説明する。
【0084】
最初のステップS201において、シフトレンジがNotPレンジであるか否かについて判定する。NotPレンジであるか否かは、ロッド位置センサ105の検出結果に基づいて判定する。すなわち、ロッド位置センサ105によって、非ロック状態が検出されたときには、NotPレンジであると判定する一方、ロック状態が検出されたときには、NotPレンジではなく、Pレンジであると判定する。シフトレンジがNotPレンジであるYESのときには、ステップS202へと進む一方、シフトレンジがPレンジであるNOのときには、リターンする。
【0085】
上記ステップS202では、エンジン10がアイドルストップ状態であるか否かについて判定する。エンジン10がアイドルストップ状態であるか否かの判定は、エンジン10からの出力信号に基づいて行う。エンジン10がアイドルストップ状態であるYESのときには、ステップS203へと進む一方、エンジン10がアイドルストップ状態でないNOのときには、リターンする。
【0086】
上記ステップS203では、NotPレンジからPレンジへの切換要求があるか否かについて判定する。上記切換要求があるか否かは、セレクターセンサ101の検出結果に基づいて判定する。Pレンジへの切換要求があるYESのときには、ステップS204へ進む。一方、Pレンジへの切換要求がないNOのときには、リターンする。
【0087】
上記ステップS204では、エンジン10を始動させる。エンジン10が始動されることで、機械ポンプ11が駆動し、油圧室33にオイルを供給可能な状態となる。
【0088】
次のステップS205では、アクチュエータ制御弁13を制御して、油圧室33内の圧力が上記所定圧力になるように、油圧室33にオイルを供給する。これにより、パーキングロッド26は、ロッド付勢スプリング34の付勢力に抗して非ロック側へと移動し、ストッパ35の係合爪35bと第2係合溝37の両側側面とが当接しない状態となる。
【0089】
次のステップS206では、ソレノイド40を駆動して、ストッパ35を、ピン38周りに規制解除方向に回動にさせて、上記規制解除状態にする。ソレノイド40は、後述のステップS208においてPレンジへの切り換えが完了するまで、ストッパ35を上記規制解除状態に維持するために、駆動され続ける。
【0090】
次のステップS207では、アクチュエータ制御弁13を制御して、油圧室33からオイルを排出し、油圧室33内の圧力を減少させる。これにより、パーキングロッド26がさらにロック側へと移動する。このステップS207において油圧室33内の圧力を減少させるときには、油圧室33へのオイルの供給を完全に停止させてもよいし、油圧室33へのオイルの供給を停止させずに、油圧室33にオイルを残すようにしてもよい。
【0091】
ステップS208では、Pレンジへの切り換えが完了したか否かについて判定する。判定は、ロッド位置センサ105によってロック状態が検出されたか否かに基づいて行う。すなわち、ロック状態が検出されたときに、Pレンジへの切り換えが完了したと判定する。Pレンジへの切り換えが完了したYESのときには、ステップS209に進む一方、Pレンジへの切り換えが完了していないNOのときには、再びS208で判定を受ける。
【0092】
上記ステップS209では、ソレノイド40の駆動を停止させる。これにより、ストッパ35は、ストッパ付勢スプリング39の付勢力によって、ピン38周りに規制方向に回動し、第1係合溝36と係合する。これにより、パーキングロッド26の軸方向の移動が再び規制される。尚、ストッパ35によってパーキングロッド26の軸方向の移動を規制した後は、油圧室33からオイルを全て排出するようにしてもよい。そして、ステップS209の後は、リターンする。
【0093】
したがって、実施形態2では、コントロールユニット100は、エンジン10がアイドルストップ状態であるときに、セレクターセンサ101によって、NotPレンジからPレンジへの切換要求があったことが検出されたときには、エンジン10を始動させることで、機械ポンプ11を駆動させて、油圧室33内の圧力が、ロッド付勢スプリング34の付勢力以上の移動力を発生させるような圧力である所定圧力となるように、油圧室33にオイルを供給した後、ソレノイド40を駆動して、ストッパ35を、パーキングロッド26に対する規制を解除した規制解除状態にするように構成されているため、エンジン10がアイドルストップ状態であるときに、上記切換要求があったときには、パーキングロッド26はロッド付勢スプリング34の付勢力に抗して非ロック側に移動する。このように、パーキングロッド26が非ロック側に移動することで、パーキングロッド26を介してストッパ35に作用する付勢力が低減される。この結果、ソレノイド40は、比較的小さい出力でストッパ35によるパーキングロッド26に対する規制を解除することができるようになるため、ソレノイド40を大型化することなくパーキングロッド26に対する規制を解除することができる。
【0094】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0095】
例えば、上述の実施形態では、シフトレンジをシフトレバー50によって切り換えるように構成されていたが、これに限らず、各シフトレンジに対応したボタンが配置されており、該ボタンによって、シフトレンジを選択する構成であってもよい。また、Pレンジのみをボタンにして、その他のシフトレンジをシフトレバーで選択する構成にしてもよい。
【0096】
また、上述の実施形態では、ロッド位置センサ105によってPレンジであるかNotPレンジであるかを判断するようにしていたが、これに限らず、シフトレバー50によってPレンジに切り換えるように構成されている場合は、セレクターセンサ101によってPレンジであるかNotPレンジであるかを判断するようにしてもよい。
【0097】
さらに、上述の実施形態では、機械ポンプ11及び電動ポンプ14の両方又は機械ポンプ11のみが設けられる構成であったが、これに限らず電動ポンプ14のみが設けられる構成であってもよい。
【0098】
また、上述の実施形態では、ストッパ35とソレノイド40とを別体で設けていたが、これに限らず、ストッパ35とソレノイド40とを一体にしてもよい。すなわち、例えば、ソレノイド40の可動部40bが、パーキングロッド26の第1及び第2係合溝36,37と係合して、パーキングロッド26の軸方向の移動を規制するようにしてもよい。この場合は、可動部40bが規制手段に相当し、ソレノイド本体40bが規制解除手段に相当する。
【0099】
さらに、上述の実施形態では、パーキング装置21は自動変速機20の内部に配置されていたが、これに限らず、パーキング装置21が自動変速機20の外部に配置されていてもよい。
【0100】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。