特許第6245293号(P6245293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245293
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】シートバックパネル
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20171204BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B60N2/68
   A47C7/40
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-50931(P2016-50931)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-165187(P2017-165187A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】富田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元春
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−246067(JP,A)
【文献】 特開2010−046163(JP,A)
【文献】 特開2011−178370(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/094310(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00−2/72
A47C 7/40−7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立位置と起立位置から前方へ倒伏された倒伏位置とを選択的にとり得るようにしたシートバックを構成するためのシートバックパネルであって、
金属製の板材により構成され、
前記板材の平坦面に、エンボス部が形成されると共に、該エンボス部を取り巻くようにビード部が形成され、
前記ビード部は、前記板材の一面側に突出するように形成される一方、前記エンボス部は該板材の他面側に突出するように形成され、
前記ビード部の突出高さと前記エンボス部の突出高さとが互いに相違され、
前記ビード部と前記エンボス部とのうち突出高さの小さい方が、起立位置にあるシートバックの背面側に向けて突出されている、
ことを特徴とするシートバックパネル。
【請求項2】
請求項1において、
前記エンボス部の突出高さが、前記ビード部の突出高さよりも大きくされている、ことを特徴とするシートバックパネル。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記ビード部が、前記エンボス部の周方向に連続する閉じられた環状に形成されている、ことを特徴とするシートバックパネル。
【請求項4】
請求項3において、
前記ビード部が、方形の環状に形成されている、ことを特徴とするシートバックパネル。
【請求項5】
請求項3において、
前記ビード部が、円形の環状に形成されている、ことを特徴とするシートバックパネル。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記エンボス部が、円形として形成されている、ことを特徴とするシートバックパネル。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記エンボス部が、方形として形成されている、ことを特徴とするシートバックパネル。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、
前記ビード部が、左右一対の所定方向に長く延びる長い部分と、該所定方向と交差する方向に延びて該左右一対の長い部分同士を連結する複数の短い部分と、を有し、
前記エンボス部が、前記ビード部の長い部分と短い部分とで区画される領域毎に形成されている、
ことを特徴とするシートバックパネル。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、
前記ビード部が、周方向に閉じられた環状の長い部分と、
前記環状の長い部分内において該長い部分に連続するように形成されて、該環状の長い部分内を複数の領域に区画する短い部分とを有し、
前記短い部分で区画された前記長い部分内の複数の各領域に、前記エンボス部が形成されている、
ことを特徴とするシートバックパネル。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、
前記金属製の板材が、肉厚が0.2mm〜0.5mmとされた鋼板とされている、ことを特徴とするシートバックパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シートクッションとシートバックとからなるシートの中には、特に車両(自動車)の後席用として多くみられるように、シートバックが、起立位置と起立位置から前方へ倒伏された倒伏位置とを選択的にとり得るようにしたものがある。すなわち、起立位置においては、シートクッションに着座した乗員の背もたれとして機能され、倒伏位置においては、シートバックの背面側に荷物等が載置される載置面として機能される。
【0003】
シートバックの骨格部分は、フレームとシートバックパネルとにより構成されて、フレームは、少なくともシートバックパネルの周縁部に沿うように配設されるのが一般的である。そして、シートバックパネルは、起立位置においては乗員からの後方への荷重を受け、倒伏位置では載置される荷物からの荷重を受けることになるため、かなりの剛性が要求されるものである。
【0004】
シートバックパネルはかなり大きな面積を有することから、剛性確保のために金属製の板材によって構成されるが、単なる板材のままでは剛性が不足することになる。特許文献1には、シートバックパネルの剛性を向上させるために、V字形状とされた多数のビード部を上下方向に隣接させて形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−105049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近では、車両の軽量化が強く望まれるようになっており、このためシートバックパネルを薄肉化することが考えられている。しかしながら、シートバックパネルに対して単にビード部のような凹凸を形成するだけでは、薄肉化した際に十分な剛性を確保することが難しく、この点においてなんらかの対策が望まれるものである。
【0007】
特に、シートバックパネルの剛性が不足すると、シートバックパネルの厚さ方向に容易に弾性変形していわゆるペコつきを生じやすいものとなる。具体的には、起立位置において乗員からの荷重を受けた際には、シートバックパネルが背面側に向けて大きく弾性変形し、乗員からの荷重が解除されると正面側に向けて弾性復帰するような動きをしてしまうことになる。逆に、倒伏位置において、荷物を載置した際にシートバックパネルが正面側に向けて大きく弾性変形し、荷物を除去した際に背面側に弾性復帰するような動きをしてしまうことになる。これに加えて、シートバックを起立位置と倒伏位置との間で姿勢変更する際に、シートバックパネルの撓み変形に伴う異音を生じさせてしまうこともある。
【0008】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、シートバックパネルの薄肉化と剛性確保とを共に高い次元で満足できるようにしたシートバックパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
起立位置と起立位置から前方へ倒伏された倒伏位置とを選択的にとり得るようにしたシートバックを構成するためのシートバックパネルであって、
金属製の板材により構成され、
前記板材の平坦面に、エンボス部が形成されると共に、該エンボス部を取り巻くようにビード部が形成され、
前記ビード部は、前記板材の一面側に突出するように形成される一方、前記エンボス部は該板材の他面側に突出するように形成され、
前記ビード部の突出高さと前記エンボス部の突出高さとが互いに相違され、
前記ビード部と前記エンボス部とのうち突出高さの小さい方が、起立位置にあるシートバックの背面側に向けて突出されている、
ようにしてある。
【0010】
上記解決手法によれば、平坦面にエンボス部とエンボス部を取り巻くビード部とを形成することにより、その剛性が大幅に向上される。特に、エンボス部とビード部とは反対方向に突出形成されているので、同方向に突出形成した場合に比してより剛性を向上させることができる。また、突出高さの相違するエンボス部とビード部とのうち、突出高さの低い方をシートバックパネルの背面側に突出させるようにしたので、シートバックを倒伏位置としてシートバックパネルの背面側に荷物を載置する場合に支承を生じないものである。
【0011】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記エンボス部の突出高さが、前記ビード部の突出高さよりも大きくされている、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、ビード部の突出高さをエンボス部の突出高さよりも低くすることにより、細幅となるビード部を容易に形成する等の上で好ましいものとなる。
【0012】
前記ビード部が、前記エンボス部の周方向に連続する閉じられた環状に形成されている、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、シートバックパネルの剛性をより一層向上させることができる。
【0013】
前記ビード部が、方形の環状に形成されている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、広い方向からの外力に対して対抗する上で好ましいものとなる。
【0014】
前記ビード部が、円形の環状に形成されている、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、広い方向からの外力に対して対抗する上で好ましいものとなる。
【0015】
前記エンボス部が、円形として形成されている、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、広い方向からの外力に対して対抗する上で好ましいものとなる。
【0016】
前記エンボス部が、方形として形成されている、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、広い方向からの外力に対して対抗する上で好ましいものとなる。
【0017】
前記ビード部が、左右一対の所定方向に長く延びる長い部分と、該所定方向と交差する方向に延びて該左右一対の長い部分同士を連結する複数の短い部分と、を有し、
前記エンボス部が、前記ビード部の長い部分と短い部分とで区画される領域毎に形成されている、
ようにしてある(請求項8対応)。この場合、所定方向に複数のエンボス部を分散させて配置させつつ、そのビード部同士を連続するようにして、剛性を大幅に向上させることができる。
【0018】
前記ビード部が、周方向に閉じられた環状の長い部分と、
前記環状の長い部分内において該長い部分に連続するように形成されて、該環状の長い部分内を複数の領域に区画する短い部分とを有し、
前記短い部分で区画された前記長い部分内の複数の各領域に、前記エンボス部が形成されている、
ようにしてある(請求項9対応)。この場合、剛性を大幅に向上させることができる。
【0019】
前記金属製の板材が、肉厚が0.2mm〜0.5mmとされた鋼板とされている、ようにしてある(請求項10対応)。この場合、剛性を十分に確保しつつ軽量化を十分に行う上で好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シートバックパネルの薄肉化と剛性確保とを共に高い次元で満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明が適用された後席用シートの一例を示す正面図。
図2】シートバックパネルの正面図。
図3図2のX3−X3線相当断面図。
図4図2のX4−X4線相当断面図。
図5図2に示すシートバックパネルのうち、大きな面積を有する平坦面部分にハッチングを付して示す図。
図6図2に示される1組のビード部とエンボス部とを示す図。
図7図6のX7−X7線相当断面図。
図8】1組のビード部とエンボス部との第2の例を示す図。
図9】1組のビード部とエンボス部との第3の例を示す図。
図10】1組のビード部とエンボス部との第4の例を示す図。
図11】複数組のビード部とエンボス部との配設例を示す図。
図12】複数組のビード部とエンボス部との別の形状例と配設例を示す図。
図13】複数組のビード部とエンボス部との別の形状例と配設例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、車両の後席用シートSを示す。図中、1はシートクッション、2、3は左右分割構成とされたシートバックである。シートバック2は1人用で、シートバック3は2人用とされている。シートバック3は、クッション材等が除去された状態が示される。
【0023】
シートバック3は、シートバックパネル10とフレーム20とを有する。シートバックパネル10は、金属製(実施形態では通常の鋼板)の板材からなり、図1では、後述するビード部やエンボス部等が省略された簡略化した状態で示されている。
【0024】
フレーム20は、シートバックパネル10の外周縁部に沿うように配設された方形の主フレーム21を有する。すなわち、主フレーム21は、シートバックパネル10の上縁部に沿って車幅方向に延びる上部21aと、シートバックパネル10の下縁部に沿って車幅方向に延びる下部21bと、シートバックパネル10の左右の側縁部に沿って上下方向に延びる左右一対の縦部21c、21dとを有する。フレーム20は、さらに、主フレーム21の上部21aと下部21bとを連結する補助フレーム22を有する。このようなフレーム20は、金属製(実施形態では鋼製)のパイプ材によって構成されて、例えばその4隅においてシートバックパネル10に対して溶接等により固定されている。
【0025】
シートバック3は、主フレーム21の車幅方向各端部に設けたブラケット30、31を介して、車幅方向に延びる揺動軸線θを中心にして前後方向に揺動可能としてシートクッション1に連結されている。図1では、シートバック3は、起立位置にある状態が示され、この起立位置において、主フレーム21の左上端部に設けたロック部材32が、車体側に設けた係止部材33に係止されて、起立位置が保持されるようになっている。
【0026】
シートバック3は、図1に示す起立位置の他に、倒伏位置をもとり得るようになっている。すなわち、図1の起立位置の状態から、係止部材33に対するロック部材32のロックを解除した状態で、シートバック3を前方へ略180度揺動させることにより、起立位置において背面側(後面側)となる面が上方を向いて、荷物を載置可能な載置面として機能されるようになっている。
【0027】
主フレーム21の上部21aには、それぞれ2個一対となる保持筒部34、35が2組固定されている(例えば溶接による固定)。2組の保持筒部34、35には、それぞれ、ヘッドレスト用のフレーム36、37が上下方向に位置調整可能として保持されている。
【0028】
シートバック2においても、シートバック3と同様に、起立位置と倒伏位置とを選択的にとり得るようになっている。そして、シートバック2の骨格構造も、シートバック3と同様に、シートバックパネルとフレームとによって構成されている。また、シートバック2用のヘッドレストが符号38で示される。
【0029】
各シートバック2、3をそれぞれ起立位置とした図1の状態の他、図1の状態から、シートバック2のみを倒伏位置とする状態と、シートバック3のみを倒伏位置とする状態と、両シートバック2、3をそれぞれ倒伏位置とする状態と、を適宜選択可能である。
【0030】
図1において、40、41は、それぞれチャイルドシート取付用のブラケットであり、42は、シートベルトアンカであり、43、44はシートベルトガイドである。ブラケット40、41およびシートベルトアンカ42は、それぞれシートバックパネル10に対して例えば溶接等により固定されている。また、シートベルトガイド43、44はそれぞれ主フレーム21の上部21aに固定されている。
【0031】
次に、シートバックパネル10の詳細について、図2図7を参照しつつ説明する。シートバックパネル10は、実施形態では、薄肉(実施形態では厚さ0.4mm)の普通鋼板をプレス加工することにより形成されている。シートバックパネル10は、中央部分やその付近において、図5においてハッチングを付した3つの領域R1〜R3の部分が、上下方向に延びて大きな面積を有する平坦面とされている。
【0032】
上記3つの領域R1〜R3は、特に剛性が低くなるために、剛性向上が強く望まれる領域となる。この領域R1〜R3では、ビード部とエンボス部との形成によって、剛性向上が図られている。以下、領域R1〜R3におけるエンボス部とビード部との形成手法について説明するが、その位置や方向については、シートバックパネル10が起立位置にあるときの状態を前提として説明する。
【0033】
まず、各領域R1〜R3において、円形とされたエンボス部50が、領域R1〜R3の延び方向となる上下方向に間隔を開けて直列に複数形成されている。このエンボス部50は、シートバックパネル10の正面側(起立位置において前方を向く面側)に突出するように塑性変形された状態で形成されている。
【0034】
ビード部51は、エンボス部50を取り巻くように形成されている。1つのエンボス部50を取り巻くビード部51は、方形(実施形態では略正方形)とされて、シートバックパネルの背面側(起立位置において後方を向く面側)に突出するように塑性変形された状態で形成されている。そして、エンボス部50を取り巻いているビード部51は、周方向に閉じられた環状として形成されている。
【0035】
各領域R1〜R3において、複数のエンボス部50に対するビード部51同士は、互いに連続するように形成されている。すなわち、ビード部51のうち車幅方向に延びる部分が、上側のエンボス部50と下側のエンボス部50との共通用として形成されている。換言すれば、各領域R1〜R3において、上下方向に長く伸びるように左右一対の長いビード部(長い部分) を形成して、この左右一対のビード部同士を車幅方向に延びる短いビード部(短い部分)で連結しすることにより全体として梯子構造とて、上下左右のビード部によって囲まれた複数の領域にエンボス部50を形成するようにしてある。
【0036】
図7に示すように、ビード部51の突出高さが符号α1で示され、エンボス部50の突出高さが符号α2で示される。そして、α2>α1として設定されている。より具体的には、実施形態では、α1が2〜3mm程度に設定され、α2が8〜10mm程度に設定されている。
【0037】
領域R1〜R3以外の部分においても、シートバックパネル10には、エンボス部60やビード部61が適宜形成されて、全体として大きく剛性が向上されるようになっている。なお、エンボス部60はシートバックパネル10の正面側に突出するように形成され、ビード部61はシートバックパネル10の背面側に突出するように形成されている。そして、エンボス部60の突出高さが、ビード部61の突出高さよりも大きくされている(エンボス部50とビード部51との関係と同じ設定)。
【0038】
なお、図2中、46、47は、チャイルドシート取付用のブラケット40、41を取付けるための取付孔であり、48は、シートベルトアンカ42を取付けるための取付孔である。勿論、シートバックパネル10の前面側には肉厚のクッション材が配設される一方、シートバックパネル10の背面側は薄いカバーシートにより覆われて、シートバックパネル10およびフレーム20が外部から目視できないようにされる。
【0039】
また、取付孔46、47の周囲を取り巻くように、周方向に連続する(閉じられた)環状のビード部81が形成されている。ビード部81は、ビード部51と同方向に突出されている。ビード部81の形成により、取付孔46、47付近の剛性がより向上されることになる。実施形態では、ビード部51の一部が、ビード部81の一部を構成するようにしてある。なお、ビード部51とビード部81とは、その一部を共通化することなく、互いに別個独立して形成してもよい。また、ビード部51が第1ビード部に対応し、ビード部81が第2ビード部に対応するものである。
【0040】
シートベルトアンカ用の取付孔48の周囲には、ビード部81に相当するビード部が形成されていないが、取付孔48の周囲を取り巻くように、周方向に連続する(閉じられた)環状のビード部を形成してもよい。
【0041】
ここで、方形とされた各ビード部51は、車幅方向に延びる対向する2辺を有するものとなっている。そして、車幅方向に隔置されたビード部51の上記2辺同士は、互いに一直線上にないように位置設定されている。具体的には、図5において、車幅方向の直線R1上に、1つのビード部51の車幅方向に延びる辺を有するが、この直線R1上には、他のビード部51の車幅方向に延びる辺が位置しないように設定されている。同様に、車幅方向の直線R2上に、1つのビード部51の車幅方向に延びる辺を有するが、この直線R2上には、他のビード部51の車幅方向に延びる辺が位置しないように設定されている。このように、車幅方向に隣り合うビード部51の車幅方向に延びる各辺同士が、互いに一直線上にないように位置設定されることにより、特にシートバックパネル10のねじり剛性を高めることができる。また、各ビード部51で囲まれた領域内に形成されるエンボス部50同士も、車幅方向において一直線上にならないように位置設定されて、より一層ねじり剛性を高めることができる。
【0042】
図1における1人用のシートバック2においても、2人用のシートバック3と同様に、シートバックパネル10とフレーム20とにより構成されて、その広い面積を有する平坦面には、前述したエンボス部50、60やビード部51、61、81とが形成されている。
【0043】
以上のような構成において、シートバックパネル10は、大きな面積を有する平坦面に、エンボス部50とエンボス部50を環状に取り巻くビード部51とを形成することにより、その剛性が大幅に向上される。特に、エンボス部50とビード部51とは反対方向に突出形成されているので、同方向に突出形成した場合に比してより剛性を向上させることができる。さらに、1つのエンボス部50を取り巻くビード部51が、その周方向に閉じられた環状として形成することによりさらに剛性が向上される。さらにまた、複数のエンボス部50に対するビード部51が互いに連続するように形成することにより、ある1つのエンボス部50に対するビード部51が、他のエンボス部50に対するビード部51とが離間している場合に比して、より剛性を向上させることができる。ビード部51を方形(特に正方形)に形成することにより、種々の方向からの曲げ力に対抗する上で好ましいものとなる。
【0044】
シートバック3(2)が起立位置にあるとき、シートバックパネル10の前面側には突出量の大きいエンボス部50が位置されることになるが、シートバックパネル10の前面側に配設されているクッション材によって、大きな突出が問題とならないものである。また、シートバック3(2)を倒伏位置としたとき、シートバックパネル10の背面側つまり荷物が載置される載置面側に位置されるビード部51は、その突出量が小さいので、荷物を載置する上で支承を生じないものである。
【0045】
実施形態のものにおいては、所望の(必要な)剛性を確保するのに、従来は0.5mmを超える肉厚が必要であったが、0.3mmで同等の剛性を確保することが可能である。また、エンボス部50やビード部51等の形状や個数、シートバックパネル10の材質等よっては更に薄い板厚のものを使用してもよい。よって、0.2mm〜0.5mmの肉厚の普通鋼板をプレス加工することにより、必要な剛性を確保しつつ従来よりも十分に軽量化を図ることができる。
【0046】
次に、図8以下を参照しつつ、エンボス部50をビード部51との変形例について説明する。まず、図8の例は、エンボス部50を方形(略正方形)に形成した例を示す。図8の例では、エンボス部50の各辺が、ビード部51の各辺と平行に延びるようにされている。
【0047】
図9の例は、図8の場合と同様に、エンボス部50を方形(略正方形)として形成してある。ただし、エンボス部50の各辺が、ビード部51の各辺と略45度傾斜する設定となっている。図9の場合は、より広い方向での曲げ力に対応する上で好ましいものとなる。
【0048】
図10の例は、エンボス部50およびビード部50共に、円形に形成した例を示す。円形の場合も、種々の方向からの外力に対抗する上で好ましいものとなる。図10の変形として、ビード部51を円形としつつ、エンボス部50を方形(特に略正方形)とすることもできる。
【0049】
図11は、エンボス部50とビード部51とからなる上下方向の列を、左右一対設けて、左右のエンボス部50用のビード部51を共通化としたものとなっている。
【0050】
図12は、図10に示すエンボス部50とビード部51とからなる1つのセルを、直列に複数配設した場合の例を示す。本例でも、図2の場合と同様に、上下方向に隣り合うエンボス部50用のビード部51を共通化して、全体として複数のエンボス部50に対するビード部51が連続したものとなるようにしてある。図12に示すようなエンボス部50とビード部51との列を、左右にさらに設ける場合には、図11のように左右境界にあるビード部51を互いに共通のものとすることができる。この場合、左右に隣り合うエンボス部50同士は、互いに上下方向同一位置に位置するようにしてもよく(図12中β線上に左右のエンボス部50が位置する設定)。また半ピッチ分ずらして位置するようにすることもできる(図12中γ線上に左右のエンボス部50が位置する設定)。
【0051】
図13の例は、方形(略正方形)のビード部71(長い部分)と、ビード部71の対角部分同士を連結するように斜めに延びる一対のビード部72(短い部分)とを設けてある。そして、各ビード部71と72とによって区画される4つの領域に、それぞれエンボス部70を形成したものとなっ
ている。
【0052】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。エンボス部50を取り囲むビード部51は、その周方向に断続的に存在するものであってもよい。エンボス部50の突出高さよりもビード部51の突出高さを大きくしてもよく、この場合は、シートバックパネル10の前面側(起立位置において前方を向く側の面)に、突出量の大きいビード部51を突出させ、シートバックパネル10の背面側(倒伏位置において上方を向く側の面)に突出量の小さいエンボス部50を位置させるようにすればよい。1つのエンボス部50とこれを取り巻くビード部51とを1つのセル単位としたとき、隣り合うセル同士(のビード部51)が互いに連続することなく離間したものであってもよい。
【0053】
1つのエンボス部50とこれを取り巻くビード部51とからなる1つのセル単位で考えたとき、1つのセル単位の面積(ビード部51によって囲まれる面積)は、小さいほど剛性向上の効果が高くなるので、例えば100平方cm〜500平方cm範囲で設定するのが好ましく、またエンボス部50の面積は、上記ビード部51によって囲まれる面積の10〜30%程度の大きさに設定するのが好ましい。1つのセル単位からなる剛性向上部は、シートバックパネル10のうち剛性が要求される平坦面部分に適宜配設することができる。例えば、1つのセル単位毎に適宜分散させたり、複数のセル単位が隣り合うように存在させたり、複数のセル単位を隣り合わせて配設するときにその延び方向(エンボス部50の配列方向)を車幅方向としたり、斜め方向にしたりする等、適宜選択できる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、シートバックの軽量化の上で好ましいものとなる。
【符号の説明】
【0055】
S:シート
θ:揺動軸線
α1:突出高さ(ビード部)
α2:突出高さ(エンボス部)
R1〜R3:領域(平坦面部分)
1:シートクッション
2:シートバック(1人用)
3:シートバック(2人用)
10:シートバックパネル
20:フレーム
32:ロック部材
33:係止部材
50:エンボス部
51:ビード部
60:エンボス部
61:ビード部
70:エンボス部
71:ビード部(長い部分)
72:ビード部(短い部分)
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