(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245339
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】肥料の固着を防止する施肥装置
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
A01C15/00 E
A01C15/00 G
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-214096(P2016-214096)
(22)【出願日】2016年11月1日
(65)【公開番号】特開2017-86069(P2017-86069A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2016年11月4日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0155437
(32)【優先日】2015年11月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516328317
【氏名又は名称】ホサンテック カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】パク,ス ヨン
【審査官】
田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−195115(JP,A)
【文献】
特開平11−089363(JP,A)
【文献】
実公平01−025526(JP,Y2)
【文献】
韓国登録特許第10−0914558(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 15/00−15/18
A01C 7/00−7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離可能な上、下ケース(11,12)の組立構成から成るロールケース(10)と、
前記ロールケース(10)の内部に回転可能となるように設置される施肥ロール(20)であって、前記施肥ロール(20)の一方の先端に形成された回転軸部(21)が前記上、下ケース(11,12)において、前記ロールケース(10)の軸方向の一方に形成された回転通孔(13)を貫通して外部に露出設置され、前記施肥ロール(20)の他方の先端の中央から内部に貫通して軸結合孔(22)が形成されるとともに、前記軸結合孔(22)と連通する多数の肥料収容孔(23)が外周面に放射状に貫通形成された前記施肥ロール(20)と、
前記施肥ロール(20)の前記軸結合孔(22)内に、一部が嵌め込み結合されている固着防止内輪(30)であって、前記固着防止内輪(30)の固定軸部(31)は、前記施肥ロール(20)の他方の先端から突出し、前記上、下ケース(11,12)において、前記ロールケース(10)の軸方向の他方に形成された回転通孔(13)を貫通して前記ロールケース(10)に一体化して固定設置される前記固着防止内輪(30)と、から成ることを特徴とする肥料の固着を防止する施肥装置。
【請求項2】
前記施肥ロール(20)は、前記肥料収容孔(23)の狭間にスクレーパー(26)が形成され、前記スクレーパー(26)は、前記施肥ロール(20)の回転作動時に前記固着防止内輪(30)の外周面を掻いて肥料の固着を防止することを特徴とする請求項1に記載の肥料の固着を防止する施肥装置。
【請求項3】
前記回転軸部(21)の先端には、動力入力部(24)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の肥料の固着を防止する施肥装置。
【請求項4】
前記回転軸部(21)の外周面には、前記回転通孔(13)の内周面との間で発生する摩擦抵抗を低減するブッシュベアリング(40)が嵌め込み設置され、前記固定軸部(31)の外周面には前記軸結合孔(22)の内周面との間で発生する摩擦抵抗を低減するブッシュベアリング(41)が嵌め込み設置されていることを特徴とする請求項1に記載の肥料の固着を防止する施肥装置。
【請求項5】
前記下ケース(12)に形成された前記回転通孔(13)の周りに沿って突出形成された支持突部(15)の先端には内輪固定具(50)が取り付けられ、前記内輪固定具(50)に形成された固定キー(51)は、前記固着防止内輪(30)の固定軸部(31)の外周面に陥没形成された固定溝(33)に嵌め込まれ、前記固着防止内輪(30)は、固定状態が維持されることを特徴とする請求項1に記載の肥料の固着を防止する施肥装置。
【請求項6】
前記内輪固定具(50)は半月形から成り、両側に形成された一対の締結孔(52)を貫通する締結具(53)が支持突部(15)にねじ結合され、中央上端にはアングル形状の固定キー(51)が突出形成されていることを特徴とする請求項5に記載の肥料の固着を防止する施肥装置。
【請求項7】
前記下ケース(12)に形成された前記回転通孔(13)の周りに沿って突出形成された支持突部(15)の外周面には固定ねじ(60)が貫通しており、前記固定軸部(31)に直接一体でねじ結合され、前記固着防止内輪(30)は固定状態が維持されることを特徴とする請求項1に記載の肥料の固着を防止する施肥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は施肥ロールに肥料を定量盛り付けて円滑に運び排出し、かつ前記施肥ロールに肥料が固着することを防止する新しい概念に基づいた技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に「側条施肥」とは、植え付けた苗から少し離れた位置に良好に活着させるために根の生え際に肥料を与えることをいい、このような側条施肥は、田植えと同時に肥料の投入を終えることから肥料の投入にかかる労動力を節減するとともに、土中に肥料を投入することから表層施肥による水質汚染及び肥料分の流出を減少させ、機械的に適正量の肥料を均等に投入することから生育が均一となることは勿論、緩効性複肥を用いると肥料量を節減できる長所を持つため、農家においてよく行なわれている。
【0003】
前記側条施肥は、側条施肥機を用いて機械的に行なうが、前記側条施肥機は、乗用型や歩行型田植え機の植栽部付近に別途設置し、苗を植える作業と並行して植えておいた苗の付近に肥料を投入する。
【0004】
前記従来の側条施肥機は、ホッパーに注入された肥料を苗移植装置の作動に同期して作動する排出機具(施肥ロール)を用いて一定量ずつ落下させ、またこのように落下させた肥料をホース、溝形成機を経て圃場に送り出すように構成されている。
【0005】
しかし、従来の側条施肥機では、肥料紛が水分により施肥ロールの外周円及び施肥ロールに形成されたバケット溝にへばり付いて硬く固着する現象が起こり、これにより、時間の経過に伴って固着量が増加し、バケット溝の体積が減少することから肥料の定量排出ができなくなる問題を惹き起こす。
【0006】
このような問題点を無くすための先行技術としては、特許文献1「側条施肥機の施肥ロール及びロールケース清掃装置」が開示されている。
【0007】
前記先行技術において、別途の清掃ブラシが施肥ロールを自動的に清掃することは、オープン構造から成るロールケースを作業者が常に簡単に開放し、ロールケースの内部をきれいに清掃して水分作用による肥料粉の固着を防止する効果を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第914558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前記先行技術は、ロール清掃ブラシを用いてバケット溝を掃く構造のみによって肥料の固着を防止するところに限界があり、充分に固着防止効果が発揮されない問題を惹き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、施肥ロールを貫通して設置された固着防止内輪が前記施肥ロールに形成された肥料収容孔の下端を閉じ、肥料を円滑に収容しながらも前記固着防止内輪は常に固定状態を維持できるようにして、回転移動する肥料収容孔に注入された肥料が固着防止内輪の外周面に固着することを防げるような技術を講ずる。
【0011】
また、本発明は、前記肥料収容孔の狭間に形成されたスクレーパーが回転移動しながら固着防止内輪の外周面を掻き、肥料の固着をいっそう効率的に防止する技術を講ずる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、固着防止内輪が前記施肥ロールに形成された肥料収容孔の下端を閉じることで前記固着防止内輪の外周面が肥料収容孔の底面の役割を果たすことから、施肥ロールに肥料が円滑に注入されるのみならず、前記固着防止内輪は常に固定された状態を維持していることから、肥料収容孔に注入された肥料が固着防止内輪の外周面に滞留し、固着することを防ぐ効果を提供する。
【0013】
また、本発明は、肥料収容孔の狭間に形成されたスクレーパーが回転移動しながら前記固着防止内輪の外周面を掻き、肥料の固着をいっそう効率的に防止することから、常に正確な肥料の定量排出が可能であり、施肥ロールの回転作動負荷を画期的に低減する効果を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明の下ケースに施肥ロール及び固着防止内輪が設置された状態の側面図である。
【
図3】本発明の施肥ロール及び固着防止内輪の結合状態正断面図である。
【
図4】本発明の施肥ロール及び固着防止内輪の結合状態側断面図である。
【
図10】本発明の固定ねじによる固着防止内輪の固定状態側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明が解決しようとする課題の解決手段をより具体的に示すための望ましい実施例について説明する。
【実施例】
【0016】
本発明の望ましい実施例による全体的な構成を添付された図面に基づいて概略的に観察すると、ロールケース(10)、施肥ロール(20)、固着防止内輪(30)の構成要素に大別できることが確認される。
【0017】
以下、前記概略的な構成から成る本発明を容易に理解・再現できるように、更に詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明のロールケース(10)は、肥料が保存されたホッパーの下側に設置され、分離可能な上ケース(11)及び下ケース(12)の組立構成から成るのみならず、前記上、下ケース(11,12)は、単一体から成ることもある。
【0019】
このような上ケース(11)は、下部が開放されていて、下ケース(12)は上部が解放されることにより、前記上、下ケース(11,12)は組立られた状態で相互に内部が連通する一体化されたロールケース(10)を構成することとなり、前記上、下ケース(11,12)は、相互に擦り合う部分の両側に円形を成す回転通孔(13)が形成される。
【0020】
このようなロールケース(10)に関する技術構成は、特許文献1に既に開示されているところであるので、本発明では更に詳細な説明は省略する事にする。
【0021】
前記ロールケース(10)の内部に回転を可能とするように設置される施肥ロール(20)は、本発明の核心技術として一方の先端には施肥ロール(20)より小さな直径を持つ回転軸部(21)が突出形成され、前記回転軸部(21)は、上、下ケース(11,12)の一方に形成された回転通孔(13)を貫通して外部に露出設置され、他方の先端には中央に長さ方向に沿って軸結合孔(22)が内部へと貫通して形成される一方、外周面には前記軸結合孔(22)と連通する多数の肥料収容孔(23)が放射状に形成されることにより、前記肥料収容孔(23)には肥料が注入されるようになる。
【0022】
ここにおいて、前記肥料収容孔(23)は、施肥ロール(20)の長さ方向に沿って相互に間隔を置いて2列で形成されているが、必ずしもこれに限らず、少なくとも一以上の列から形成され、前記回転軸部(21)の先端には、別途の動力伝達用クラッチと連結される動力入力部(24)が形成されることから前記動力入力部(24)に動力が入力されると施肥ロール(20)は自主的に回転作動しながら肥料を下部に落下排出することができるようになる。
【0023】
前記施肥ロール(20)と1組を成す固着防止内輪(30)は、前記肥料収容孔(23)の下部を閉じて肥料の漏出を防止する底面の役割を果たしつつ、肥料の固着を防止する役割も果たす本発明の核心技術である。
【0024】
このような固着防止内輪(30)は、一方が前記軸結合孔(22)に挟まれることによって
図3のように外周面が前記肥料収容孔(23)の底面を成す機能を果たすことで、前記肥料収容孔(23)は初めて肥料を収容することができるようになり、前記固着防止内輪(30)の他方には固着防止内輪(30)より小さな直径を持つ固定軸部(31)が突出形成され、前記固定軸部(31)は上、下ケース(11,12)の他方に形成された回転通孔(13)を貫通して前記ロールケース(10)に一体化して固定設置される。
【0025】
すなわち、本発明の施肥ロール(20)及び固着防止内輪(30)は、相互一体に結合された状態において、前記施肥ロール(20)に形成された回転軸部(21)がロールケース(10)の一方の回転通孔(13)に回転が可能なように設置されているが、これとは別に、固着防止内輪(30)に形成された固定軸部(31)は、前記ロールケース(10)の他方の回転通孔(13)に固定された状態で設置される。
【0026】
したがって本発明は、
図4のように施肥ロール(20)を貫通して設置された固着防止内輪(30)が前記施肥ロール(20)に形成された肥料収容孔(23)の下端を閉じる形状となることから上部から供給される肥料を注入し、回転しながら円滑に下部に落下排出できるのみならず、この過程において前記固着防止内輪(30)は常に固定された状態を維持できることから、肥料収容孔(23)に注入された肥料は、固着防止内輪(30)の外周面で滞留することなく、外周面に沿って回転移動する技術を具現し、肥料は肥料収容孔(23)の底面の役割を果たす固着防止内輪(30)の外周面に固着することを効率的に防止する特別な効果を提供する。
【0027】
ここにおいて、前記回転軸部(21)の外周面にはブッシュベアリング(40)が追加で嵌め込まれることにより、回転通孔(13)の内周面との間で発生する摩擦抵抗を減少させることができ、前記固定軸部(31)の外周面にはブッシュベアリング(41)が追加で嵌め込まれることにより、軸結合孔(22)の内周面との間で発生する摩擦抵抗を減少させ、前記施肥ロール(20)は摩擦抵抗なしに更に円滑に回転することができるようになる。
【0028】
更に前記肥料収容孔(23)の狭間には
図4のように自然な形でスクレーパー(26)が形成され、前記スクレーパー(26)は、施肥ロール(20)の回転作動によって固着防止内輪(30)の外周面に沿って回転移動しながら前記固着防止内輪(30)の外周面を掻く役割を果たすことから、肥料の前記固着防止内輪(30)への固着を防ぎ、常に肥料を定量ずつ排出することができ、前記施肥ロール(20)の回転作動負荷を画期的に低減する特別な効果を提供する。
【0029】
一方、本発明のロールケース(10)に一体化された状態で固定設置される本発明の固着防止内輪(30)は、
図9のような内輪固定具(50)を用いて簡単に固定設置できる構造となっている。
【0030】
このための技術構成として、前記下ケース(12)に形成された回転通孔(13)の周りに沿って突出形成された支持突部(15)の先端には、
図2のように前記内輪固定具(50)が取り付けられ、前記固着防止内輪(30)の固定軸部(31)は、外周面に固定溝(33)が陥没形成されて、前記内輪固定具(50)に形成された固定キー(51)は固定溝(33)に嵌め込まれることにより、前記固着防止内輪(30)は、堅固な固定された状態を維持しながら肥料の固着を円滑に防ぐことができるようになる。
【0031】
このような内輪固定具(50)は、
図9のように半月形から成り、両側の上部には一対の締結孔(52)が形成され、この締結孔(52)を貫通する締結具(53)が支持突部(15)にねじ結合されて支持突部(15)に一体で取り付けられ、中央上端にはアングル形状の固定キー(51)が突出形成される細部構成から成る。
【0032】
また、本発明の固着防止内輪(30)は、内輪固定具(50)を使わずに、固定ねじ(60)のみを用いて簡単に固定することもできる。
【0033】
このための技術構成として、
図10のように前記下ケース(12)に形成された回転通孔(13)のまわりに沿って突出形成された支持突部(15)の外周面には固定ねじ(60)が貫通し、前記固着防止内輪(30)の固定軸部(31)に直接一体でねじ結合されることにより、前記固着防止内輪(30)は簡単に固定設置することができることから構造の簡素化を具現することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 ロールケース
11 上ケース
12 下ケース
13 回転通孔
15 支持突部
20 施肥ロール
21 回転軸部
22 軸結合孔
23 肥料収容孔
24 動力入力部
26 スクレーパー
30 固着防止内輪
31 固定軸部
33 固定溝
40、41 ブッシュベアリング
50 肥料固定具
51 固定キー
52 締結孔
53 締結具
60 固定ねじ