特許第6245355号(P6245355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許6245355-焼成用治具 図000002
  • 特許6245355-焼成用治具 図000003
  • 特許6245355-焼成用治具 図000004
  • 特許6245355-焼成用治具 図000005
  • 特許6245355-焼成用治具 図000006
  • 特許6245355-焼成用治具 図000007
  • 特許6245355-焼成用治具 図000008
  • 特許6245355-焼成用治具 図000009
  • 特許6245355-焼成用治具 図000010
  • 特許6245355-焼成用治具 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245355
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】焼成用治具
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/12 20060101AFI20171204BHJP
   C04B 35/64 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   F27D3/12 S
   C04B35/64
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-519208(P2016-519208)
(86)(22)【出願日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】JP2015062978
(87)【国際公開番号】WO2015174288
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2016年10月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-98742(P2014-98742)
(32)【優先日】2014年5月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有富 克朋
(72)【発明者】
【氏名】オン シュウ テン
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−169243(JP,A)
【文献】 特開2008−311386(JP,A)
【文献】 実開平05−077243(JP,U)
【文献】 特開2005−016906(JP,A)
【文献】 特開平03−247990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/00−5/00
C21D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および前記第1主面の裏側の面である第2主面を有し、通気部を取り囲む枠状の金属基体と、
前記金属基体の第1主面側において前記通気部を覆うように前記金属基体に固定される金属メッシュとを備え、
前記金属基体および前記金属メッシュはNiを主材料とし、
前記金属メッシュは一枚板から形成されており、
前記金属メッシュは、第1メッシュ面と、前記第1メッシュ面の裏側の面であって前記第1メッシュ面より激しい凹凸を有する第2メッシュ面とを有し、
前記第1メッシュ面は、第1平坦部および前記第1平坦部よりも低くなっている複数の凹部を含み、前記複数の凹部の各々の内面に開口部を有し、
前記第2メッシュ面は、第2平坦部および前記第2平坦部より高くなっている複数の隆起部を含み、
前記複数の隆起部の各々は、前記複数の凹部の各々に対応しており、前記複数の隆起部の各々の側面に向かって前記開口部が貫通している、焼成用治具。
【請求項2】
前記第2メッシュ面が、焼成対象物を載せる面となっている、請求項に記載の焼成用治具。
【請求項3】
前記金属メッシュは外縁に取付部を有し、前記金属基体の外周の少なくとも一部において前記取付部が前記第1主面の側から前記第2主面の側へと折り曲げられることによって、前記金属メッシュは前記金属基体に取り付けられている、請求項1または2に記載の焼成用治具。
【請求項4】
前記金属メッシュは、エキスパンドメタルである、請求項1からのいずれかに記載の焼成用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品などを得るために、セラミック材で素体を形成し、これを焼成するという作業が行なわれる場合がある。このような作業に用いられる治具、すなわち、焼成用治具の一例が特開2000−111269号公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−111269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルミナ質などのセラミック材は熱容量が大きいので、セラミック材を焼成する場合は、昇温時間および降温時間が長くなる。
【0005】
また、一般的に、焼成用治具は、何度も焼成に用いられているうちに変形してくる傾向にある。
【0006】
そこで、本発明は、焼成時における昇温時間および降温時間をなるべく短くでき、不所望な変形が起こりにくい焼成用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に基づく焼成用治具は、第1主面および上記第1主面の裏側の面である第2主面を有し、通気部を取り囲む枠状の金属基体と、上記金属基体の第1主面側において上記通気部を塞ぐように上記金属基体に固定される金属メッシュとを備え、上記金属基体および上記金属メッシュはNiを主材料とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属基体および金属メッシュがNiを主材料としたものであるので、セラミック材料に比べて熱伝導性に優れる。したがって、焼成時における昇温時間および降温時間をなるべく短くすることができる。また、不所望な変形も起こりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に基づく実施の形態1,2における焼成用治具の斜視図である。
図2】本発明に基づく実施の形態1,2における焼成用治具の分解図である。
図3図2におけるZ部を拡大した平面図である。
図4図3におけるIV−IV線に関する矢視断面図である。
図5】本発明に基づく実施の形態2における焼成用治具に備わる金属メッシュの第1メッシュ面の第1の向きでの写真である。
図6】本発明に基づく実施の形態2における焼成用治具に備わる金属メッシュの第1メッシュ面の第2の向きでの写真である。
図7】本発明に基づく実施の形態2における焼成用治具に備わる金属メッシュの第2メッシュ面の第1の向きでの写真である。
図8】本発明に基づく実施の形態2における焼成用治具に備わる金属メッシュの第2メッシュ面の第2の向きでの写真である。
図9】本発明に基づく実施の形態3における複数の焼成用治具を放射状に配置した状態の平面図である。
図10】本発明に基づく実施の形態3における複数の焼成用治具を積み上げた状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
図1図4を参照して、本発明に基づく実施の形態1における焼成用治具について説明する。本実施の形態における焼成用治具101の斜視図を図1に示し、分解図を図2に示す。図2におけるZ部を拡大したところを図3に示す。図3におけるIV−IV線に関する矢視断面図を図4に示す。
【0011】
本実施の形態における焼成用治具101は、金属基体3と、金属メッシュ4とを備える。金属基体3は、第1主面31および第1主面31の裏側の面である第2主面32を有し、通気部3aを取り囲む枠状である。金属基体3は、第1主面31の外周から第2主面32の外周にかけて設けられる外側壁33と、外側壁33よりも内側に設けられる内側壁34を有する。内側壁34の各々は環状となるように繋がっており、これにより通気部3aの内周面が形成される。金属メッシュ4は、金属基体3の第1主面31側において通気部3aを覆うように金属基体3に対して固定される。焼成用治具101の周囲に存在する気体は、金属メッシュ4の隙間および金属基体3の通気部3aを経由して通過可能となっている。金属基体3および金属メッシュ4は、Niを主材料とする。
【0012】
金属メッシュ4の厚みは、たとえば0.3mm以上1.5mm以下である。金属メッシュ4はNi製のメッシュであってもよい。
【0013】
焼成対象物としては、たとえば積層型セラミック電子部品の焼成前のセラミック素体が考えられる。この場合、焼成対象物のタイプとしては、たとえば1.0mm×0.5mm×0.5mmのものが挙げられる。
【0014】
本実施の形態では、金属基体3および金属メッシュ4がNiを主材料としたものであるので、セラミック材料に比べて熱伝導性に優れ、また、熱容量が小さい。本実施の形態では、金属基体3および金属メッシュ4の熱容量が小さいことから、焼成時における昇温時間および降温時間をなるべく短くすることができる。したがって、焼成炉内を高温にするための電力消費量を少なくすることができる。
【0015】
Niは耐熱性があり、1200℃程度の高温焼成にも使用することができる。金属基体3および金属メッシュ4がNiを主材料としたものであることにより、これらの物の機械的強度が高くなり、割れにくくなる。
【0016】
金属基体3と金属メッシュ4とが同じ金属を主材料としているので、焼成用治具が高温の条件下に置かれたとしても熱膨張量がほぼ等しくなる。したがって、熱応力に起因する金属基体3および金属メッシュ4の不所望な変形を起こりにくくすることができる。
【0017】
図2に示したように、金属メッシュ4は外縁に取付部4dを有し、金属基体3の外周の少なくとも一部において取付部4dが第1主面31の側から外側壁33に沿って第2主面32の側へと折り曲げられることによって、金属メッシュ4は金属基体3に取り付けられていることが好ましい。図2に示された金属メッシュ4において破線で表示されている線は、取付け時に山折りとなる線を表す。金属メッシュ4の金属基体3に対する取付けは、このように取付部4dを折り曲げることによって行なわれているので、折り曲げられた取付部4dを逆に曲げて広げることによって、金属メッシュ4を金属基体3から容易に取り外すことができる。取付けおよび取外しは繰返し行なうことができる。このような構成であれば、金属メッシュ4および金属基体3のうち一方に不具合が生じたときに、不具合が生じた物を容易に交換することができる。なお、図2に示した金属メッシュ4に設けられている取付部4dは、あくまで一例であり、取付部の形状や位置や大きさは図2に示した例に限らない。
【0018】
図2図4に示したように、金属メッシュ4は、第1メッシュ面5と、第1メッシュ面5の裏側の面であって第1メッシュ面5より激しい凹凸を有する第2メッシュ面6とを有することが好ましい。図4に示すように、金属メッシュ4は、1つの断面形状の中に山部8と谷部9とを有する。谷部9は2つの山部8の間に位置する。山部8は2つの谷部9の間に位置する。山部8は、第2メッシュ面6側に突出している。谷部9は、図4に示した例では平坦となっているが、第1メッシュ面5側に少しだけ突出していてもよい。ただし、その場合の突出量は山部8の突出量より小さい。図4に示すように、山部8の高さはHであり、山部8のピッチはWである。たとえば、高さHは0.1mm以上0.5mm以下であり、ピッチWは0.5mm以上2.5mm以下である。
【0019】
このように表裏で面の状態が異なることにより、必要に応じて所望の面を上側に向けて使用することができる。なお、ここでいう第2メッシュ面6が、焼成対象物を載せる面となっていることが好ましい。このようになっていれば、焼成対象物と金属メッシュ4との接触面積が小さくなるので、焼成の準備作業時または焼成中に、金属メッシュ4に焼成対象物がくっついてしまう現象をなるべく減らすことができるからである。
【0020】
金属メッシュ4の第2メッシュ面6が焼成対象物を載せる面となるようにするためには、たとえば、金属メッシュ4の第1メッシュ面5が金属基体3の第1主面31に当接するように金属メッシュ4を配置した後、取付部4dを、図2に示される破線が山折りとなるようにそれぞれ折り曲げることによって金属メッシュ4を金属基体3に対して取り付けて焼成用治具101を作製し、上側を向いた第2メッシュ面6が焼成対象物を載せる面となるようにしてもよい。あるいは、金属メッシュ4の第2メッシュ面6が金属基体3の第2主面32に当接するように金属メッシュ4を配置した後、取付部4dを、図2に示される破線が谷折りとなるようにそれぞれ折り曲げることによって金属メッシュ4を金属基体3に対して取り付けて焼成用治具を作製し、上側を向いた第2メッシュ面6が焼成対象物を載せる面となるようにしてもよい。
【0021】
(実施の形態2)
図1図8を参照して、本発明に基づく実施の形態2における焼成用治具について説明する。本実施の形態における焼成用治具は、実施の形態1で説明したものを、より具体的に特定した一例である。本実施の形態における焼成用治具の基本的な構成は、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0022】
本実施の形態における金属メッシュ4において、第1メッシュ面5の拡大写真を図5および図6に示す。図5図6とは同じく第1メッシュ面5を撮影したものである。図6は、図5に比べて向きを180°回転させて撮影したものであるので、上下および左右がそれぞれ逆になっている。第1メッシュ面5の裏側である第2メッシュ面6の拡大写真を図7および図8に示す。図7図8とは同じく第2メッシュ面6を撮影したものである。図8は、図7に比べて向きを180°回転させて撮影したものであるので、上下および左右がそれぞれ逆になっている。
【0023】
本実施の形態における焼成用治具101に備わる金属メッシュ4は、図2図4に示したように、第1メッシュ面5と、第1メッシュ面5の裏側の面である第2メッシュ面6とを有する。図5および図6に示すように、第1メッシュ面5は、第1平坦部21および第1平坦部21よりも低くなっている複数の凹部23を含み、複数の凹部23の各々の内面に開口部7を有する。図7および図8に示すように、第2メッシュ面6は、第2平坦部22および第2平坦部22より高くなっている複数の隆起部24を含み、複数の隆起部24の各々に向かって開口部7が貫通している。言い換えれば、第2メッシュ面6の隆起部24の外面にある開口部は、第1メッシュ面5の凹部23の内面にある開口部と同じものである。なお、図3では開口部7は菱形で表示されているが、これはあくまで一例を概念的に示したものであり、開口部7を平面的に見たときの形状は菱形とは限らない。
【0024】
本実施の形態においても、実施の形態1で説明した効果を得ることができる。本実施の形態では、金属メッシュ4の一方の面と他方の面とで粗さが異なるので、所望の粗さの面を選択して使用することができる。
【0025】
このような構成において、第2メッシュ面6が、焼成対象物を載せる面となっていることが好ましい。このような条件を満たす第2メッシュ面6が焼成対象物を載せる面となっていれば、焼成対象物と金属メッシュ4との接触面積が小さくなるので、焼成の準備作業時または焼成中に、金属メッシュ4に焼成対象物がくっついてしまう現象をなるべく減らすことができる。
【0026】
なお、金属メッシュ4は、エキスパンドメタルであってもよい。一般的に、エキスパンドメタルは、金属板に千鳥状に切れ目を入れながら面方向に引っ張ることによって形成される。切れ目が面方向に引っ張られることによって、金属板に開口部が形成される。このように形成される開口部は、通常は菱形または亀甲形である。元々、切れ目は千鳥状に設けられているので、結果的に開口部は金属板の面内に千鳥状に設けられる。金属メッシュ4の全面積に対する開口部の比率は5%以上50%以下である。エキスパンドメタルであれば、部材の一体性を維持したまま所望の形状を容易に形成することができる。
【0027】
(実施の形態3)
図9図10を参照して、本発明に基づく実施の形態3として、焼成用治具の使用例について説明する。焼成用治具は実施の形態1で説明した焼成用治具101であってよい。図9に示すように、焼成用治具101は複数個を放射状に並べて配置して焼成に用いるものである。そのため、焼成用治具101は左右対称な台形となっている。すなわち、4辺のうち2辺は非平行となっている。図9に示した例では、8個の焼成用治具101を並べることで1つの円環形状となることを示しているが、1つの円環形状となるための個数は8個以外であってもよい。
【0028】
なお、焼成用治具を平面的に見たときの形状は台形とは限らず、他の形状であってもよい。
【0029】
図10に、複数の焼成用治具101を積み上げた状態を示す。焼成用治具101が積み上げられる際には、上下にある他の焼成用治具101との間に隙間をあけるために、スペーサ11が用いられる。スペーサ11は、焼成用治具101の上面側の四隅に載置される。スペーサ11の材質はセラミック材料であり、スペーサ11の表面は平滑ではなくやや粗い面となっている。焼成用治具101を積み上げる際に、金属メッシュ4の上面とスペーサ11とが接触する。金属メッシュ4の上面が、激しい凹凸を有する第2メッシュ面6となっている場合、あるいは、第2平坦部22および第2平坦部22より高くなっている複数の隆起部24を含む第2メッシュ面6となっている場合、第2メッシュ面6とスペーサ11のやや粗い下面とが接触し、摩擦力が大きくなる。したがって、積み上げた複数の焼成用治具101を一括して焼成炉内に搬入する際に、多少斜めに傾いたとしても崩れ落ちにくくなる。
【0030】
最も下にある焼成用治具101はスペーサ11を介して炉床13の表面に載置されている。
【0031】
図10では、説明の便宜のために、1つの段に1つの焼成用治具101のみを示しているが、このように積み重ねたものを複数用意し、焼成炉内に図9に示すように放射状に配置することとしてもよい。
【0032】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、焼成用治具に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
3 金属基体、3a 通気部、4 金属メッシュ、4c メッシュ本体部、4d 取付部、5 第1メッシュ面、6 第2メッシュ面、7 開口部、8 山部、9 谷部、11
スペーサ、12 焼成対象物、13 炉床、21 第1平坦部、22 第2平坦部、23 凹部、24 隆起部、31 第1主面、32 第2主面、33 外側壁、34 内側壁、101 焼成用治具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10