特許第6245364号(P6245364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245364
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/062 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   H01S5/062
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-530694(P2016-530694)
(86)(22)【出願日】2014年6月30日
(86)【国際出願番号】JP2014067375
(87)【国際公開番号】WO2016001969
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】廣木 知之
(72)【発明者】
【氏名】東條 公資
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一馬
(72)【発明者】
【氏名】福士 一郎
(72)【発明者】
【氏名】門谷 章之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隼規
(72)【発明者】
【氏名】齊川 次郎
(72)【発明者】
【氏名】石垣 直也
(72)【発明者】
【氏名】宇野 進吾
【審査官】 大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−207420(JP,A)
【文献】 特開2008−244339(JP,A)
【文献】 特開昭63−028089(JP,A)
【文献】 特開2012−018122(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0243562(US,A1)
【文献】 特開平05−029658(JP,A)
【文献】 特開平11−008444(JP,A)
【文献】 特開昭57−112147(JP,A)
【文献】 特開2011−228457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 − 5/50
H01L 33/00 − 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の半導体レーザと、
前記複数の半導体レーザに直列に接続され、前記複数の半導体レーザに電流を供給する駆動回路と、
前記複数の半導体レーザのレーザ光を合成する光合成器と、
前記光合成器で合成された前記複数の半導体レーザのレーザ光を検知する光検知素子を備え、
各半導体レーザの発光タイミングが半導体レーザ毎に異なるように、前記駆動回路から各半導体レーザまでの線路長を調整し、前記光合成器は、前記複数の半導体レーザの各々の半導体レーザから前記光合成器内の合波端までの光到達時間が前記各々の半導体レーザ毎に異なるように、前記各々の半導体レーザから前記光合成器までの光路長を設定し、
前記光検知素子は、前記各々の半導体レーザの光到達時間と光出力とに基づき前記複数の半導体レーザの故障を検知する半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記光到達時間を調整するために、光路に光伝搬調整用の光学素子を配置した請求項1記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記駆動回路から前記各々の半導体レーザまでの電流到達時間を調整するために、誘電率が異なる導電パターンにより前記各々の半導体レーザを接続した請求項1又は請求項2記載の半導体レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置は、レーザ光により、溶接や切断等の大口加工や、マーキング等の微細加工まで様々な加工を行う。レーザ光の加工利用に伴って、レーザ光源の高出力化や低消費電力化が望まれている。レーザ光源としては、ガスレーザ、固体レーザ、半導体レーザなどがある。高効率であることやメンテナンスの容易さの面で半導体レーザに優位性がある。
【0003】
半導体レーザを用いたレーザ加工装置は、例えば、特許文献1に記載されるように複数の半導体レーザからの光出力を重ね合わせることで高出力を実現する。複数の半導体レーザを使用する場合、容易に高出力化できる。しかし、半導体レーザの故障や劣化が発生した場合に、故障、劣化した半導体レーザを特定することが困難であるという課題を有している。
【0004】
この課題に対して、複数の半導体レーザを使用する場合、特許文献2、特許文献3に記載されるように、半導体レーザの故障を検知する装置を付加することで、装置としてのメンテナンス性や信頼性を高めることができる。
【0005】
特許文献2においては、各々の半導体レーザに対して出力検知用のフォトダイオードを設け、各々のフォトダイオードの出力をモニタすることで各々の半導体レーザの故障を検知している。また、特許文献3においては、各々の半導体レーザに対する電流供給タイミングを制御し、レーザ出力を時系列でモニタすることで故障を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−48159号公報
【特許文献2】特開2004−214225号公報
【特許文献3】特開平6−160237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2にあっては、各々の半導体レーザに対してフォトダイオードを付加するため、装置が大型化及び高コスト化する。また、特許文献3にあっては、制御系回路及びアルゴリズムが複雑化してしまう。
【0008】
本発明は、複数の半導体レーザの一部の故障や劣化を検知でき、しかも小型化及び低コスト化を図ることができる半導体レーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る半導体レーザ装置は、直列に接続された複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザに直列に接続され、前記複数の半導体レーザに電流を供給する駆動回路と、前記複数の半導体レーザのレーザ光を合成する光合成器と、前記光合成器で合成された前記複数の半導体レーザのレーザ光を検知する光検知素子を備え、各半導体レーザの発光タイミングが半導体レーザ毎に異なるように、前記駆動回路から各半導体レーザまでの線路長を調整し、前記光合成器は、前記複数の半導体レーザの各々の半導体レーザから前記光合成器内の合波端までの光到達時間が前記各々の半導体レーザ毎に異なるように、前記各々の半導体レーザから前記光合成器までの光路長を設定し、前記光検知素子は、前記各々の半導体レーザの光到達時間と光出力とに基づき前記複数の半導体レーザの故障を検知する
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各半導体レーザの発光タイミングが半導体レーザ毎に異なるように、前記駆動回路から各半導体レーザまでの線路長を調整し、光合成器は、各々の半導体レーザから合波端までの光到達時間が各々の半導体レーザ毎に異なるように、各々の半導体レーザから光合成器までの光路長を設定するので、各々の半導体レーザの光到達時間と光出力とに基づき、複数の半導体レーザの一部の故障や劣化を検知でき、しかも小型化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明の実施例1に係る半導体レーザ装置の構成を示す図である。
図2図2は本発明の実施例1に係る半導体レーザ装置の各半導体レーザが正常である場合の各出力を示す図である。
図3図3は本発明の実施例1に係る半導体レーザ装置の各半導体レーザの内の一部の半導体レーザが劣化した場合の各出力を示す図である。
図4図4は本発明の実施例2に係る半導体レーザ装置の構成を示す図である。
図5図5は本発明の実施例3に係る半導体レーザ装置の構成を示す図である。
図6図6は本発明の実施例4に係る半導体レーザ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る半導体レーザ装置が図面を参照しながら詳細に説明される。
【0013】
まず、本発明の原理を説明する。複数の半導体レーザにパルス電流を与えると、電流が早く到達する半導体レーザから光出力を生じる。また、光出力は光学的距離が短いものからフォトダイオードに到達する。従って、半導体レーザの接続方法、配置方法又は半導体レーザから合波端までに光学的距離を変化させる光学素子を配置することで、合波端における複数の半導体レーザからの光出力の到達時間をずらすことができる。即ち、光出力の時間的変化をフォトダイオードでモニタすることで半導体レーザの故障、劣化を検出することができる。
【0014】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1に係る半導体レーザ装置の構成を示す図である。本発明の実施例1に係る半導体レーザ装置は、図1に示すように、複数の半導体レーザLD1〜LD4、LD駆動回路10、光合成器11、フォトダイオードPD、抵抗R、中央処理装置(CPU)13、メモリ14、表示部15を備える。
【0015】
複数の半導体レーザLD1〜LD4は、LD駆動回路10から複数の半導体レーザLD1〜LD4の各々までの距離LLD1,LLD2,LLD3,LLD4がLLD1<LLD2<LLD3<LLD4となるように直列に接続されている。LD駆動回路10は、直列に接続された複数の半導体レーザLD1〜LD4に電流を供給する。複数の半導体レーザLD1〜LD4は、電流が流れることによりレーザ光を出力する。
【0016】
また、複数の半導体レーザLD1〜LD4と光合成器11は、複数の半導体レーザLD1〜LD4から光合成器11内の合波端までの距離SLD1,SLD2,SLD3,SLD4がSLD1<SLD2<SLD3<SLD4となるように配置されている。
【0017】
光合成器11は、反射、屈折の作用を持つ光学素子(ミラーやレンズ,プリズムなど)からなり、複数の半導体レーザLD1〜LD4から出力された光を合波端において直径500μm以下のスポットに集める機能を持つ。
【0018】
即ち、光合成器11は、半導体レーザLD1〜LD4のレーザ光を合成するとともに、各々の半導体レーザLD1〜LD4から光合成器11内の合波端までの光到達時間が各々の半導体レーザLD1〜LD4毎に異なるように、各々の半導体レーザLD1〜LD4から光合成器11までの光路長を設定する。
【0019】
ハーフミラー12は、光合成器11からの合波されたレーザ光をモニタ光と出力光とに分光する。
【0020】
フォトダイオードPDは、本発明の光検知素子に対応し、ハーフミラー12で分光されたレーザ光を検知する。CPU13は、フォトダイオードPDで検知されたレーザ光の出力値をメモリ14に記憶したり、出力値を表示部15に表示させる。
【0021】
次にこのように構成された実施例1の半導体レーザ装置の動作を図1を参照しながら説明する。
【0022】
まず、LD駆動回路10が、複数の半導体レーザLD1〜LD4に電流が供給すると、各半導体レーザLD1〜LD4は、LD1,LD2,LD3,LD4の順番にレーザ光を出力する。
【0023】
第1番目に出力された半導体レーザLD1からのレーザ光は、光合成器11、ハーフミラー12を介して第1番目にフォトダイオードPDにより検知される。第2番目に出力された半導体レーザLD2からのレーザ光は、光合成器11、ハーフミラー12を介して第2番目にフォトダイオードPDにより検知される。
【0024】
第3番目に出力された半導体レーザLD3からのレーザ光は、光合成器11、ハーフミラー12を介して第3番目にフォトダイオードPDにより検知される。第4番目に出力された半導体レーザLD4からのレーザ光は、光合成器11、ハーフミラー12を介して第4番目にフォトダイオードPDにより検知される。
【0025】
このため、図2に示すように、フォトダイオードPDの出力は、半導体レーザLD1、半導体レーザLD2、半導体レーザLD3、半導体レーザLD4の順で時間的に得られる。図2に示す例では、各半導体レーザLD1〜LD4が正常であるので、フォトダイオードPDの各出力は一定値である。
【0026】
しかし、図3に示す例では、第3番目の出力が他の出力に比較して低いので、半導体レーザLD3が劣化していることを判定できる。また、半導体レーザが故障した場合にも、同様にフォトダイオードPDの時間的な出力変化により故障した半導体レーザを検出できる。
【0027】
このように実施例1の半導体レーザ装置によれば、各々の半導体レーザLD1〜LD4の発光タイミングが半導体レーザLD1〜LD4毎に異なるように、LD駆動回路10から半導体レーザLD1〜LD4までの線路長を調整し、且つ各々の半導体レーザLD1〜LD4から合波端までの光到達時間が半導体レーザLD1〜LD4毎に異なるように、各々の半導体レーザLD1〜LD4から光合成器11までの光路長を調整するので、各々の半導体レーザLD1〜LD4の光到達時間と光出力とに基づき、複数の半導体レーザLD1〜LD4の一部の故障や劣化を検知できる。また、複雑なタイミング制御回路を用いることなく、単一のフォトダイオードPDにより半導体レーザLD1〜LD4の一部の故障や劣化を検知できるので、小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0028】
(実施例2)
図4は本発明の実施例2に係る半導体レーザ装置の構成を示す図である。実施例2に係る半導体レーザ装置は、LD駆動回路10、バイポーラ型のNPNのトランジスタQ1,Q2、半導体レーザLD1,LD2、光合成器11a、フォトダイオードPD、CPU13、メモリ14、表示部15を備える。
【0029】
LD駆動回路10とトランジスタQ1との距離S1と、LD駆動回路10とトランジスタQ2との距離S2とは、同じである。LD駆動回路10は、トランジスタQ1,Q2の各々のベースに電圧を印加することによりトランジスタQ1,Q2に電流を流す。
【0030】
トランジスタQ1,Q2のコレクタには電源Vccが接続され、トランジスタQ1のエミッタには半導体レーザLD1のアノードが接続され、トランジスタQ2のエミッタには半導体レーザLD2のアノードが接続されている。
【0031】
光合成器11aは、半導体レーザLD1,LD2から光合成器11内の合波端までの距離SLD11,SLD12がSLD11>SLD12となるように配置されている。
【0032】
図4に示す光合成器11a、フォトダイオードPD、CPU13、メモリ14、表示部15は、図1に示すそれらと同じであるので、それらの説明は省略する。
【0033】
このように実施例2の半導体レーザ装置によれば、LD駆動回路10からの電圧によりトランジスタQ1,Q2がオンすると、半導体レーザLD1,LD2に同時に電流が流れる。すると、半導体レーザLD2からのレーザ光は第1番目に光合成器11aに到達する。一方、半導体レーザLD1からのレーザ光は第2番目に光合成器11aに到達する。
【0034】
従って、最初にフォトダイオードPDで検出される出力は、半導体レーザLD2からのレーザ光の出力であり、次に、フォトダイオードPDで検出される出力は、半導体レーザLD1からのレーザ光の出力である。この時間的な出力の変化により半導体レーザLD1,LD2の劣化、故障を判定することができる。また実施例1では、LD駆動回路10から各々の半導体レーザLD1〜LD4までの距離を設定し、且つ各々の半導体レーザLD1〜LD4から光合成器11内の合波端までの距離を設定したが、実施例2では、各々の半導体レーザLD1〜LD4から光合成器11a内の合波端までの距離(光路長)を設定するのみで、半導体レーザの劣化、故障を判定することができる。
【0035】
(実施例3)
図5は本発明の実施例3に係る半導体レーザ装置の構成を示す図である。実施例3に係る半導体レーザ装置は、図1に示す実施例1に係る半導体レーザ装置に対して、さらに、半導体レーザLD4と光合成器11との間の光路にプリズム16a,16bを配置したことを特徴とする。プリズム16a,16bは、本発明の光伝搬調整用の光学素子に対応する。
【0036】
このように実施例3に係る半導体レーザ装置によれば、半導体レーザLD4と光合成器11との間の光路にプリズム16a,16bを配置したので、半導体レーザLD4と光合成器11との間の光到達時間を調整することができる。このため、半導体レーザLD1〜LD4の劣化、故障を容易に判定することができる。
【0037】
(実施例4)
図6は本発明の実施例4に係る半導体レーザ装置の構成を示す図である。実施例4に係る半導体レーザ装置は、図1に示す実施例1に係る半導体レーザ装置に対して、各々の半導体レーザLD1〜LD4を誘電率が異なる導電パターンPT1〜PT4により接続したことを特徴とする。
【0038】
実施例4に係る半導体レーザ装置によれば、誘電率が異なる導電パターンPT1〜PT4により各々の半導体レーザLD1〜LD4を接続したので、電流伝達時間が互いに異なる。このため、駆動回路10から各々の半導体レーザLD1〜LD4までの電流到達時間を調整することができるので、半導体レーザLD1〜LD4の劣化、故障を容易に判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、レーザ加工機、レーザ照明機器に適用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6