(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記信号処理回路は、前記第1の振動センサの出力の複数のピーク間の時間間隔、または前記第2の振動センサの出力の複数のピーク間の時間間隔に基づいて、前記ユーザの指の掃引速度を算出する、請求項1記載の入力装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の入力装置の構成を表わす図である。
【0024】
入力装置1は、入力用部材2と、基板3とを備える。基板3には、第1の振動センサ4と、第2の振動センサ5と、信号処理回路6とが搭載される。信号処理回路6は、掃引方向判定回路7と、掃引速度算出回路8とを備える。
【0025】
第1の振動センサ4および第2の振動センサ5は、加速度センサで構成され、配置された位置の振動を検知する。
【0026】
掃引方向判定回路7は、突起部9に対するユーザの指の掃引方向を判定する。
掃引速度算出回路8は、突起部9に対するユーザの指の掃引速度を算出する。
【0027】
図2は、入力用部材2の外観を表わす図である。
図3は、基板3を表わす図である。
図4は、入力装置1が搭載される電子機器の外観を表わす図である。
図3および
図4には、X軸、Y軸、Z軸を示す。以下では、X軸方向の座標値が大きい位置を下側、X軸方向の座標値が小さい位置を上側と呼ぶことにする。
【0028】
図2に示すように、入力用部材2は、複数の突起9−1〜9−Nからなる突起部9を備える。
【0029】
図3および
図4に示すように、第1の振動センサ4は、基板3上であって、時計型の電子機器の上側の特別な位置に配置される。第2の振動センサ5は、基板3上であって、時計型の電子機器の下側の特別な位置に配置される。第1の振動センサ4および第2の振動センサ5は、Z軸方向の振動を検知する。入力用部材2に含まれる突起部9は、タッチパネルとは異なり、電子機器のディスプレイ51(表示部)の表面には、配置されない。
【0030】
図3に示すように、第1の振動センサ4と信号処理回路6とは配線61で接続される。第2の振動センサ5と信号処理回路6とは配線62で接続される。
【0031】
図3に示すように、基板3は、図示しないピンをピン穴10、11に通すことによって、電子機器の部材に取り付けられる。
【0032】
入力用部材2は、電子機器に装着される。ユーザが入力用部材2の突起部9に触れることによって、突起9−1〜9−Nの振動が電子機器を構成する部材を経て基板3に伝わり、第1の振動センサ4および第2の振動センサ5が、配置された位置の振動を検知する。
【0033】
図5(a)は、第1の実施形態の突起部9をZ方向から見た図である。
図5(b)は、第1の実施形態の突起部9をY方向から見た図である。
【0034】
突起9−1〜9−Nは、すべて同一の形状である。各突起9−iは、たとえば、X方向およびZ方向の長さがwで、Y方向の長さがuである直方体である。
【0035】
突起9−1〜9−Nは、一直線L上に配置される。一直線Lの一方の端点EN1に近い方に突起9−1が配置され、一直線Lの他方の端点EN2に近い方に突起9−Nが配置される。端点EN1は、X軸方向の座標値が小さい位置(上側)にあり、端点EN2は、X軸方向の座標値が大きい位置(下側)にある。隣接する突起間の間隔は、Dである。なお、複数の突起は、本実施形態のように一直線上に配置されていてもよいし、曲線上に配置されていてもよい。複数の突起が、曲線上に配置される場合でも、曲線上の一方の端点EN1に近い方に突起9−1が配置され、曲線上の他方の端点EN2に近い方に突起9−Nが配置される。この場合も、端点EN1は、X軸方向の座標値が小さい位置(上側)にあり、端点EN2は、X軸方向の座標値が大きい位置(下側)にある。
【0036】
次に、第1の振動センサ4が置かれた特別な位置および第2の振動センサ5が置かれた特別な位置において、基板3に加えられた荷重がどのように伝わるかについて説明する。
【0037】
図6(a)は、荷重を表わす図である。
図6(b)は、
図6(a)に示す荷重が基板3の側面の−X方向に与えられたときの、第1の振動センサ4および第2の振動センサ5のZ軸方向の変位量の過渡応答のシミュレーション結果を表わす図である。
【0038】
図6(b)に示すように、第1の振動センサ4の変位の振動と第2の振動センサ5のZ軸方向の変位の振動は互いに逆相となる。
【0039】
第1の振動センサ4および第2の振動センサ5の位置がずれると、上記のような変位が互いに逆相とはならない。つまり、本実施の形態では、第1の振動センサ4の出力と第2の第2の振動センサ5の出力とが互いに逆相となるような特別な位置に第1の振動センサ4および第2の振動センサ5が配置される。
【0040】
なお、第1の振動センサ4のZ軸方向の変位の振動と第2の振動センサ5のZ軸方向の変位の振動が同相となるような位置に第1の振動センサ4および第2の振動センサ5が配置され、第1の振動センサ4の出力と第2の振動センサ5の出力とが互いに逆相となるように、第1の振動センサ4および第2の振動センサ5が電気的に接続されていてもよい。
【0041】
図7(a)は、突起部9に対して、上から下に(X方向に)指を掃引したときの、第1の振動センサ4の出力電圧と第2の振動センサ5の出力電圧とを表わす図である。
図7(a)では、ユーザの指が3個の突起に接触した期間における結果を表す。
【0042】
図7(a)に示すように、ノイズ成分を除去して見ると、最初に、第1の振動センサ4の出力が立ち上がり、かつ第2の振動センサ5の出力が立ち下がる。その後、それぞれの出力が振動しながら減衰する。
【0043】
したがって、最初に、第1の振動センサ4の出力が立ち上がり、第2の振動センサ5の出力が立ち下がった場合には、ユーザの指が突起部9に接触しつつ、上から下に(X方向に)掃引されたと判定することができる。
【0044】
ノイズが存在する環境下で、最初に、第1の振動センサ4の出力が立ち上がり、第2の振動センサ5の出力が立ち下がったか否かは、以下のようにして判定することができる。
【0045】
一定期間ごとに第1の振動センサ4の出力の絶対値が所定値THU以上となる最初のピークP1と、第2の振動センサ5の出力の絶対値が所定値THU以上となる最初のピークP2とを検出する。第1の振動センサ4の出力の最初のピークP1が正の値で、第2の振動センサ5の出力の最初のピークP2が負の値のときに、最初に、第1の振動センサ4の出力が立ち上がり、第2の振動センサ5の出力が立ち下がったと判定することができる。
【0046】
図7(b)は、突起部9に対して、下から上に(−X方向に)指を掃引したときの、第1の振動センサ4の出力電圧と第2の振動センサ5の出力電圧とを表わす図である。
図7(b)では、
図7(a)と同様に、ユーザの指が3個の突起に接触した期間における結果を表す。
【0047】
図7(b)に示すように、ノイズ成分を除去して見ると、最初に、第1の振動センサ4の出力が立ち下がり、かつ第2の振動センサ5の出力が立ち上がる。その後、それぞれの出力が振動しながら減衰する。
【0048】
したがって、最初に、第1の振動センサ4の出力が立ち下がり、第2の振動センサ5の出力が立ち上がった場合には、ユーザの指が突起部9に接触しつつ、下から上に(−X方向に)掃引されたと判定することができる。
【0049】
ノイズが存在する環境下で、最初に、第1の振動センサ4の出力が立ち下がり、第2の振動センサ5の出力が立ち上がったか否かは、以下のようにして判定することができる。
【0050】
一定期間ごとに第1の振動センサ4の出力の絶対値が所定値THU以上となる最初のピークP1と、第2の振動センサ5の出力の絶対値が所定値TUH以上となる最初のピークP2とを検出する。第1の振動センサ4の出力の最初のピークP1が負の値で、第2の振動センサ5の出力の最初のピークP2が正の値のときに、最初に、第1の振動センサ4の出力が立ち下がり、第2の振動センサ5の出力が立ち上がったと判定することができる。
【0051】
なお、上記の立上がり/立下りの関係は、あくまでも一例であって、基板3の固定具合によって、立ち上がり/立下りが逆転する場合もある。すなわち、突起部9に対して、上から下に(X方向に)指を掃引したときに、最初に、第1の振動センサ4の出力が立ち下がり、かつ第2の振動センサ5の出力が立ち上がり、突起部9に対して、下から上に(−X方向に)指を掃引したときに、最初に、第1の振動センサ4の出力が立ち下がり、かつ第2の振動センサ5の出力が立ち上がる場合もある。
【0052】
図8は、第1の実施形態による、突起部9に対するユーザの指の掃引方向の判定および掃引速度の算出の手順を表わすフローチャートである。
【0053】
ステップS101において、掃引方向判定回路7は、一定期間ごとに、第1の振動センサ4の出力の振幅(絶対値)が最初に所定値以上となるピークを検出し、検出したピークの値V1およびピークの時刻t1を取得する。
【0054】
ステップS102において、掃引方向判定回路7は、一定期間ごとに、第2の振動センサ5の出力の振幅(絶対値)が最初に所定値以上となるピークを検出し、検出したピークの値V2およびピークの時刻t2を取得する。
【0055】
ステップS103において、掃引方向判定回路7は、V1>0、かつV2<0の場合には、処理をステップS104に進ませる。
【0056】
ステップS104において、掃引方向判定回路7は、第1の振動センサ4の出力が立ち上がり、かつ第2の振動センサ5の出力が立ち下がると判定し、当該判定に基づいて、ユーザの指が突起部9と接触しつつ、X方向に掃引されたと判定する。
【0057】
ステップS105において、掃引方向判定回路7は、V1<0、かつV2>0の場合には、処理をステップS106に進ませる。
【0058】
ステップS106において、掃引方向判定回路7は、第1の振動センサ4の出力が立ち下がり、かつ第2の振動センサ5の出力が立ち上がると判定し、当該判定に基づいて、ユーザの指が突起部9に接触しつつ、−X方向に掃引されたと判定する。
【0059】
ステップS107において、掃引速度算出回路8は、第1の振動センサ4の出力の複数のピークの時刻t1の間の時間間隔の平均値を算出する。掃引速度算出回路8は、算出した平均値を隣接する突起間の間隔Dで除算することによって、ユーザの指の掃引速度を算出する。
【0060】
以上のように、本実施の形態によれば、2つの振動センサの出力の位相の違いを利用して、突起部に対してユーザの指が上から下へ掃引されたか、下から上へ掃引されたかを判定することができる。これにより、ユーザによるスクロール操作を受け付けることができる。また、突起部は、タッチパネルのような部材と異なり、ユーザの指の接触によって汚れにくく、タッチパネルのように電子機器の表示部の表面に取り付けられないので、汚れによって表示部の画面が見づらくなることもない。
【0061】
また、判定されたユーザの指の掃引方向に基づいて、時計型の電子機器の日付や時刻の変更方向を切り替えることができる(スクロール処理が可能)。また、算出されたユーザの指の掃引速度によって、時計型の電子機器の日付や時刻の変更速度を切り替えることができる。
【0062】
[第1の実施形態の変形例]
掃引方向判定回路7は、第2の振動センサ5の出力の複数のピークの時刻t2の間の時間間隔の平均値を算出し、算出した平均値を隣接する突起間の間隔Dで除算することによって、ユーザの指の掃引速度を算出するものとしてもよい。
【0063】
[第2の実施形態]
本実施の形態の入力装置1も、第1および第2の振動センサを備えるの。本実施の形態は、第1の振動センサ4の出力のピークの振幅の変化に基づいて、ユーザの指の掃引方向を検知する。第1の振動センサ4は、突起9−1〜9−Nのうち突起9−1に最も近いに配置される。第2の振動センサ5は、突起9−1〜9−Nのうち突起9−Nに最も近いに配置される。
【0064】
本実施の形態は、第1の振動センサ4および第2の振動センサ5の出力のピークの時刻の先後関係の変化に基づいて、ユーザの指の掃引方向を検知する。
【0065】
図9(a)は、突起部9に対して、上から下に(X方向に)指を掃引したときの、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの時刻と第2の振動センサ5の出力電圧のピークの時刻とを模式的に表わす図である。
【0066】
図9(a)に示すように、最初は、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの時刻が第2の振動センサ5の出力電圧のピークの時刻よりも早く、次第にその時間差が縮まる。その後反転して、第2の振動センサ5の出力電圧のピークの時刻が第1の振動センサ4の出力電圧のピークの時刻よりも早くなり、次第にその時差が広がる。これは、突起9−1は、第2の振動センサ5よりも第1の振動センサ4に近く、突起9−Nは、第1の振動センサ4よりも第2の振動センサ5に近いためである。
【0067】
図9(b)は、突起部9に対して、下から上に(−X方向に)指を掃引したときの、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの時刻と第2の振動センサ5の出力電圧のピークの時刻とを模式的に表わす図である。
【0068】
図9(b)に示すように、最初は、第2の振動センサ5の出力電圧のピークの時刻が第1の振動センサ4の出力電圧のピークの時刻よりも早く、次第にその時間差が縮まる。その後反転して、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの時刻が第2の振動センサ5の出力電圧のピークの時刻よりも早くなり、次第にその時間差が広がる。これは、突起9−1は、第2の振動センサ5よりも第1の振動センサ4に近く、突起9−Nは、第1の振動センサ4よりも第2の振動センサ5に近いためである。
【0069】
本実施の形態では、上記の特徴を利用することによって、ユーザの指の掃引方向を判定する。
【0070】
図10は、第2の実施形態による、突起部9に対するユーザの指の掃引方向の判定および掃引速度の算出の手順を表わすフローチャートである。
【0071】
ステップS201において、掃引方向判定回路7は、第1の振動センサ4の出力の振幅が所定値以上となるピークを検出し、検出したピークの時刻t1(1),t1(2),t1(3)・・・を取得する。
【0072】
ステップS202において、掃引方向判定回路7は、第2の振動センサ5の出力の振幅が所定値以上となるピークを検出し、検出したピークの時刻t2(1),t2(2),t2(3)・・・を取得する。
【0073】
ステップS203において、掃引方向判定回路7は、あるMに対して、i<Mのとき、t1(i)<t2(i)であり、i>Mのとき、t1(i)>t2(i)が成立する場合には、処理をステップS204に進ませる。つまり、iが小さいときには、第1の振動センサ4の出力のピークの時刻が第2の振動センサ5の出力のピークの時刻よりも早く、iが大きいときには、第1の振動センサ4の出力のピークの時刻が第2の振動センサ5の出力のピークの時刻よりも遅くなったときに、処理がステップS204に進む。
【0074】
ステップS204において、掃引方向判定回路7は、ユーザの指が突起部9と接触しつつ、X方向に掃引されたと判定する。
【0075】
ステップS205において、掃引方向判定回路7は、あるMに対して、i<Mのとき、t1(i)>t2(i)であり、i>Mのとき、t1(i)<t2(i)が成立する場合には、処理をステップS206に進ませる。つまり、iが小さいときには、第1の振動センサ4の出力のピークの時刻が第2の振動センサ5の出力のピークの時刻よりも遅く、iが大きいときには、第1の振動センサ4の出力のピークの時刻が第2の振動センサ5の出力のピークの時刻より早くなったときに、処理がステップS206に進む。
【0076】
ステップS206において、掃引方向判定回路7は、ユーザの指が突起部9に接触しつつ、−X方向に掃引されたと判定する。
【0077】
ステップS207において、掃引速度算出回路8は、第1の振動センサ4の出力の複数のピークの時刻t1(1),t1(2),t1(3)・・・の間の時間間隔の平均値を算出する。掃引速度算出回路8は、算出した平均値を隣接する突起間の間隔Dで除算することによって、ユーザの指の掃引速度を算出する。
【0078】
以上のように、本実施の形態によれば、2つの振動センサの出力の先後関係を利用して、突起部に対してユーザの指が上から下へ掃引されたか、下から上へ掃引されたかを判定することができる。
【0079】
[第2の実施形態の変形例]
掃引方向判定回路7は、第2の振動センサ5の出力の複数のピークの時刻t2(1),t2(2),t2(3)・・・の間の時間間隔の平均値を算出し、算出した平均値を隣接する突起間の間隔Dで除算することによって、ユーザの指の掃引速度を算出する。
【0080】
[第3の実施形態]
本実施の形態の入力装置1は、第1および第2の振動センサを備えるのではなく、第1の振動センサ4のみを備える。本実施の形態は、第1の振動センサ4の出力のピークの振幅の変化に基づいて、ユーザの指の掃引方向を検知する。第1の振動センサ4は、突起9−1〜9−Nのうち突起9−1に最も近いに配置され、突起9−1、9−2、・・・、9−Nの順にその間の距離が大きくなる。
【0081】
図11(a)は、突起部9に対して、上から下に(X方向に)指を掃引したときの、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの振幅を模式的に表わす図である。
【0082】
図11(a)に示すように、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの振幅が時間とともに減少する。
【0083】
図11(b)は、突起部9に対して、下から上に(−X方向に)指を掃引したときの、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの振幅を模式的に表わす図である。
【0084】
図11(b)に示すように、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの振幅が時間とともに増加する。
【0085】
図12は、第3の実施形態による、突起部9に対するユーザの指の掃引方向の判定および掃引速度の算出の手順を表わすフローチャートである。
【0086】
ステップS301において、掃引方向判定回路7は、第1の振動センサ4の出力の振幅が所定値以上となるピークを検出し、検出したピークの値V(1),V(2),V1(3)・・・およびピークの時刻t1(1),t1(2),t1(3)・・・を取得する。
【0087】
ステップS302において、掃引方向判定回路7は、V(i)が、iの増加とともに減少する場合には、処理をステップS303に進ませる。
【0088】
ステップS303において、掃引方向判定回路7は、ユーザの指が突起部9と接触しつつ、X方向に掃引されたと判定する。
【0089】
ステップS304において、掃引方向判定回路7は、V(i)が、iの増加とともに増加する場合には、処理をステップS305に進ませる。
【0090】
ステップS305において、掃引方向判定回路7は、ユーザの指が突起部9に接触しつつ、−X方向に掃引されたと判定する。
【0091】
ステップS306において、掃引速度算出回路8は、第1の振動センサ4の出力の複数のピークの時刻t1(1),t1(2),t1(3)・・・の間の時間間隔の平均値を算出する。掃引速度算出回路8は、算出した平均値を隣接する突起間の間隔Dで除算することによって、ユーザの指の掃引速度を算出する。
【0092】
以上のように、本実施の形態によれば、1つの振動センサの出力の振幅の時間変化を利用して、突起部に対してユーザの指が上から下へ掃引されたか、下から上へ掃引されたかを判定することができる。
【0093】
[第3の実施形態の変形例]
図13(a)は、突起部9に対して、上から下に(X方向に)指を掃引したときの、第2の振動センサ5の出力電圧のピークの振幅を模式的に表わす図である。
【0094】
図13(a)に示すように、第2の振動センサ5の出力電圧のピークの振幅が時間とともに増加する。
【0095】
図13(b)は、突起部9に対して、下から上に(−X方向に)指を掃引したときの、第2の振動センサ5の出力電圧のピークの振幅を模式的に表わす図である。
【0096】
図13(b)に示すように、第2の振動センサ5の出力電圧のピークの振幅が時間とともに減少する。
【0097】
上記特性を利用することによって、掃引方向判定回路7は、第2の振動センサ5の出力のピークの値V(i)が、iの増加とともに減少する場合には、ユーザの指が突起部9と接触しつつ、−X方向に掃引されたと判定し、iの増加とともに増加する場合には、ユーザの指が突起部9と接触しつつ、X方向に掃引されたと判定する。
【0098】
また、掃引方向判定回路7は、第2の振動センサ5の出力の複数のピークの時刻t2(1),t2(2),t2(3)・・・の間の時間間隔の平均値を算出し、算出した平均値を隣接する突起間の間隔Dで除算することによって、ユーザの指の掃引速度を算出する。
【0099】
また、第1の振動センサ4の位置は、ユーザの指の掃引によって、ピークの振幅が増加するか、または減少するかのいずれかの特性を示す位置であれば、どこであってもよい。したがって、ユーザの指の掃引によって、ピークの振幅がある期間増加し、別の期間減少するような位置(たとえば、基板上の中央の位置)以外の位置に、第1の振動センサ4が配置される。
【0100】
[第4の実施形態]
本実施の形態は、突起の形状が第1の実施形態と相違する。また、本実施の形態の入力装置1は、第1および第2の振動センサを備えるのではなく、第1の振動センサ4のみを備える。第1の振動センサ4は、たとえば、第1の実施形態と同じ位置に配置されるものとするが、基板3上の任意の位置でよい。
【0101】
図14は、第4の実施形態の突起部9をZ方向から見た図である。
突起9−1〜9−Nは、一直線L上に配置される。一直線Lの一方の端点EN1に近い方に突起9−1が配置され、一直線Lの他方の端点EN2に近い方に突起9−Nが配置される。端点EN1は、X軸方向の座標値が小さい位置(上側)にあり、端点EN2は、X軸方向の座標値が大きい位置(下側)にある。
【0102】
突起9−iは、端点EN1に近い側が高く(高さd1)、端点EN2に近い側が低い(高さd2)階段状に構成される。つまり、突起9−iは、2個の直方体で構成される。上側の直方体は、たとえば、Y方向の長さがd1で、Z方向の長さがuで、X方向の長さがw1である。下側の直方体は、Y方向の長さがd2で、Z方向の長さがuで、X方向の長さがw2である。ここで、d1>d2であり、w1>w2である。
【0103】
d1>d2であるため、ユーザの指が上から下方向(X方向)に掃引されたときには、1つの突起に対して、ユーザの指が上側の直方体の表面のみに接触する。ユーザの指が下から上方向(−X方向)に掃引されたときには、1つの突起に対して、ユーザの指が上側の直方体の表面のみに接触する場合と、下側の直方体の表面および上側の表面に接触する場合がある。
【0104】
図15(a)は、突起部9に対して、上から下に(X方向に)指を掃引したときの、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの振幅を模式的に表わす図である。
【0105】
図15(a)に示すように、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの時刻の間隔E1,E2,E3,E3はすべて、所定値TH1を超える。
【0106】
図15(b)は、突起部9に対して、下から上に(−X方向に)指を掃引したときの、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの振幅を模式的に表わす図である。
【0107】
図15(b)に示すように、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの時刻の間隔F1,F3,F4,F6は所定値THを超えるが、F2,F5は、所定値TH1以下となる。F2、F5が所定値TH1以下となったのは、ユーザの指が下から上方向(−X方向)に掃引されたことによって、2箇所の突起において、ユーザの指が上側の直方体の表面と下側の直方体の表面の2箇所に接触したことによるものである。
【0108】
したがって、第1の振動センサ4の出力電圧の隣接するピークの時刻間隔のうち、所定値TH1以下となるものが少なくとも1つ存在する場合に、ユーザの指が下から上方向(−X方向)に掃引されたと判定することができる。
【0109】
図16は、第4の実施形態による、突起部9に対するユーザの指の掃引方向の判定および掃引速度の算出の手順を表わすフローチャートである。
【0110】
ステップS401において、掃引方向判定回路7は、第1の振動センサ4の出力の振幅が所定値以上となるピークを検出し、検出したピークの時刻t1(1),t1(2),t1(3)・・・を取得する。
【0111】
ステップS402において、掃引方向判定回路7は、隣接するピークの時間間隔のうち、所定値TH1以下となるものが少なくとも1つ存在する場合に、処理をステップS403に進ませる。
【0112】
ステップS403において、掃引方向判定回路7は、ユーザの指が突起部9と接触しつつ、−X方向に掃引されたと判定する。
【0113】
ステップS404において、掃引方向判定回路7は、ユーザの指が突起部9に接触しつつ、X方向に掃引されたと判定する。すなわち、隣接するピークの時間間隔のうち、所定値TH1以下となるものが存在しない場合には、ユーザの指がX方向に掃引されたと判定される。
【0114】
ステップS405において、掃引速度算出回路8は、第1の振動センサ4の出力の複数のピークの時刻t1(1),t1(2),t1(3)・・・の間の時間間隔の平均値を算出する。掃引速度算出回路8は、算出した平均値を隣接する突起間の間隔Dで除算することによって、ユーザの指の掃引速度を算出する。
【0115】
以上のように、本実施の形態によれば、突起を階段状に構成し、1つの振動センサの出力のピークの時間間隔を利用して、突起部に対してユーザの指が上から下へ掃引されたか、下から上へ掃引されたかを判定することができる。
【0116】
[第5の実施形態]
本実施の形態は、突起の幅および突起の間隔が、第1の実施形態と相違する。
【0117】
また、本実施の形態の入力装置1は、第1および第2の振動センサを備えるのではなく、第1の振動センサ4のみを備える。第1の振動センサ4は、たとえば、第1の実施形態と同じ位置に配置されるものとするが、基板3上の任意の位置でよい。
【0118】
図17(a)は、第5の実施形態の突起部9をZ方向から見た図である。
図17(b)は、第5の実施形態の突起部9をY方向から見た図である。
【0119】
突起9−1〜9−Nは、一直線L上に配置される。一直線Lの一方の端点EN1に近い方に突起9−1が配置され、一直線Lの他方の端点EN2に近い方に突起9−Nが配置される。端点EN1は、X軸方向の座標値が小さい位置(上側)にあり、端点EN2は、X軸方向の座標値が大きい位置(下側)にある。
【0120】
突起9−iは、直方体であって、たとえば、Z方向の長さがwで、Y方向の長さがuである。突起9−iのX方向の長さ、および隣接する突起間の間隔は、一定ではない。
【0121】
突起9−iのX方向の長さ、および隣接する突起間の間隔は、以下の条件を満たすように設計される。
【0122】
ある突起9−iの上側(端点EN1に近い側)のエッジと、隣接する突起9−i+1の上側(端点EN1に近い側)のエッジとの距離はaである。ある突起9−iの下側(端点EN2に近い側)のエッジと、隣接する突起9−i+1の下側(端点EN2に近い側)のエッジとの距離はbである。ここで、a<bである。
【0123】
したがって、ユーザの指が下から上方向(−X方向)に掃引されたときには、ユーザの指が上から下方向(X方向)に掃引されたときよりも、掃引速度に大きな違いがなければ、第1の振動センサ4の出力のピークの時間間隔が長くなる。
【0124】
図18(a)は、突起部9に対して、上から下に(X方向に)指を掃引したときの、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの振幅を模式的に表わす図である。
【0125】
図18(a)に示すように、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの時間間隔G1,G2,G3はすべて、所定値TH2以下である。これは、上から下に指を掃引するときには、ユーザの指が突起9−iの上側のエッジまたは上側のエッジ周辺と接触しやすいため、ユーザの指が、相対的に短い時間間隔で突起9−iと接触するからである。
【0126】
図18(b)は、突起部9に対して、下から上に(−X方向に)指を掃引したときの、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの振幅を模式的に表わす図である。
【0127】
図18(b)に示すように、第1の振動センサ4の出力電圧のピークの時間間隔H1,H2,H3はすべて、所定値TH2を超える。これは、下から上に指を掃引するときには、ユーザの指が突起9−iの下側のエッジまたは下側のエッジ周辺と接触しやすいため、ユーザの指が、相対的に長い時間間隔で突起9−iと接触するからである。
【0128】
ここで、ピークの時間間隔は、掃引方向だけでなく掃引速度によっても変化する。しかしながら、ユーザの指による掃引速度は任意の値をとるものではなく、通常は、所定の範囲に収まる。したがって、所定の範囲の掃引速度について、隣接する突起の上側エッジ間の距離a、隣接する突起の下側エッジ間の距離b、および所定値TH2を適切に設定することによって、ユーザの指の掃引方向が判定できる。
【0129】
図19は、第5の実施形態による、突起部9に対するユーザの指の掃引方向の判定および掃引速度の算出の手順を表わすフローチャートである。
【0130】
ステップS501において、掃引方向判定回路7は、第1の振動センサ4の出力の振幅が所定値以上となるピークを検出し、検出したピークの時刻t1(1),t1(2),t1(3)・・・を取得する。
【0131】
ステップS502において、掃引方向判定回路7は、検出したピークの時刻t1(1),t1(2),t1(3)から隣接するピークの時間間隔の平均値Mを算出する。
【0132】
ステップS503において、掃引方向判定回路7は、隣接するピークの時間間隔の平均値Mが所定値TH2を超える場合には、処理をステップS504に進ませる。
【0133】
ステップS504において、掃引方向判定回路7は、ユーザの指が突起部9と接触しつつ、−X方向に掃引されたと判定する。
【0134】
ステップS505において、掃引方向判定回路7は、ユーザの指が突起部9に接触しつつ、X方向に掃引されたと判定する。すなわち、隣接するピークの時間間隔の平均値Mが所定値TH2以下の場合には、ユーザの指がX方向に掃引されたと判定される。
【0135】
ステップS506において、掃引速度算出回路8は、第1の振動センサ4の出力の複数のピークの時刻t1(1),t1(2),t1(3)・・・の間の時間間隔の平均値を算出する。掃引速度算出回路8は、算出した平均値を隣接する突起間の間隔Dで除算することによって、ユーザの指の掃引速度を算出する。
【0136】
以上のように、本実施の形態によれば、突起の上側エッジ間の間隔と、下側エッジ間の間隔を異なるようにし、1つの振動センサの出力のピークの時間間隔を利用して、突起部に対してユーザの指が上から下へ掃引されたか、下から上へ掃引されたかを判定することができる。
【0137】
[第5の実施形態の変形例]
図20(a)は、第5の実施形態の変形例の突起部9をZ方向から見た図である。
図20(b)は、第5の実施形態の変形例の突起部9をY方向から見た図である。
【0138】
突起9−1〜9−Nは、一直線L上に配置される。一直線Lの一方の端点EN1に近い方に突起9−1が配置され、一直線Lの他方の端点EN2に近い方に突起9−Nが配置される。端点EN1は、X軸方向の座標値が小さい位置(上側)にあり、端点EN2は、X軸方向の座標値が大きい位置(下側)にある。
【0139】
突起9−iの下側(端点EN2に近い側)は、平面である。突起9−iの上側(端点EN1に近い側)は、曲面である。
【0140】
したがって、ユーザの指が上から下方向(X方向)に掃引されたときには、ユーザの指が下から上方向(−X方向)に掃引されたときよりも、ユーザの指と突起との接触面積が大きくなる。その結果、ユーザの指が上から下方向(X方向)に掃引されたときにはユーザの指が下から上方向(−X方向)に掃引されたときよりも、掃引速度に大きな違いがなければ、第1の振動センサの出力のピークの時間間隔が長くなる。
【0141】
このような特徴を有するので、第5の実施形態で説明した
図19のフローチャートに従って、ユーザの指の掃引方向の判定および掃引速度の算出ができる。ただし、ステップS504とステップS505の処理は、交換する必要がある。
【0142】
本発明は、上記の実施形態限定されるものではなく、たとえば以下のような変形例も含む。
【0143】
(変形例)
(1)本実施の形態の入力装置は、時計側の電子機器だけではなく、スマートフォンまたはスマートウオッチなどの電子機器に組み込むことが可能である。
【0144】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。