(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、コンバータトランスに補助巻線を追加して、その補助巻線に生じるコンバータトランスの反転信号を利用してMOS−FETを駆動している。このため、回路が複雑化、及び巻線の追加により装置が大型化するといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、省スペース化を図り、整流素子での損失を低減できる電力変換装置及びワイヤレス電力伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電力変換装置は、交流電圧入力部と、一次側端子対及び二次側端子対を有し、前記一次側端子対が前記交流電圧入力部に接続されたトランスと、第1端子及び第2端子を有し、前記第1端子から前記第2端子へ電流を流す1又は複数の整流素子と、を備え、前記1又は複数の整流素子は、前記トランスの二次側に設けられ、前記トランスの出力電圧を整流して負荷へ供給し、前記複数の整流素子の少なくとも一つは、制御端子を有するスイッチ素子とダイオードとを含み、前記ダイオードのアノードが前記第1端子側、カソードが前記第2端子側となるように、前記スイッチ素子と前記ダイオードとが並列接続された整流ユニットであり、前記スイッチ素子の制御端子は、前記トランスの一次側端子対の一方又は他方に接続されている、ことを特徴とする。
【0007】
この構成では、ダイオードよりもオン抵抗が低いスイッチ素子、例えばMOS−FETを用いることで、ダイオードを用いた場合と比べ、電圧降下によるロスを低減して整流できる。また、スイッチ素子は、その制御端子がトランスの一次側に接続され、トランスの一次側の電圧を利用して駆動する構成であるため、巻線等を用いる必要がなく、省スペース化を実現できる。
【0008】
前記複数の整流素子は、第2端子が前記二次側端子対の一方に接続された第1整流素子と、第1端子が前記第1整流素子の第1端子に接続され、第2端子が前記二次側端子対の他方に接続された第2整流素子と、第1端子が前記二次側端子対の一方に接続された第3整流素子と、第2端子が前記第3整流素子の第2端子に接続され、第1端子が前記二次側端子対の他方に接続された第4整流素子と、を有し、前記第1整流素子及び前記第2整流素子の接続点と、前記第3整流素子及び前記第4整流素子の接続点とは、前記負荷に接続され、前記第1整流素子、前記第2整流素子、前記第3整流素子及び前記第4整流素子の少なくとも一つは、前記整流ユニットであり、前記第1整流素子が前記整流ユニットである場合、前記第1整流素子は、制御端子が前記一次側端子対の一方に接続され、前記二次側端子対の一方が高電位であるときオフし、前記二次側端子対の他方が高電位であるときオンし、前記第2整流素子が前記整流ユニットである場合、前記第2整流素子は、制御端子が前記一次側端子対の他方に接続され、前記二次側端子対の一方が高電位であるときオンし、前記二次側端子対の他方が高電位であるときオフし、前記第3整流素子が前記整流ユニットである場合、前記第3整流素子は、制御端子が前記一次側端子対の他方に接続され、前記二次側端子対の一方が高電位であるときオンし、前記二次側端子対の他方が高電位であるときオフし、前記第4整流素子が前記整流ユニットである場合、前記第4整流素子は、制御端子が前記一次側端子対の一方に接続され、前記二次側端子対の一方が高電位であるときオフし、前記二次側端子対の他方が高電位であるときオンすることが好ましい。
【0009】
この構成では、全波整流回路を、ダイオードよりもオン抵抗が低いスイッチ素子で構成することで、ダイオードを用いた場合と比べ、電圧降下によるロスを低減して整流できる。
【0010】
前記トランスの前記一次側端子対に並列接続され、前記トランスのインダクタンス成分と並列共振回路を構成するキャパシタを備え、前記整流ユニットは、前記制御端子がキャパシタを介して前記トランスの一次側端子対の一方又は他方に接続されていることが好ましい。
【0011】
この構成では、交流電圧入力部から効率よくトランスに電力を伝送することができる。また、スイッチ素子の制御端子へは、キャパシタにより分圧された電圧が印可されるため、制御端子に過電圧が印加されることを防止できる。
【0012】
前記トランスの前記一次側端子対に並列接続され、前記トランスのインダクタンス成分と並列共振回路を構成する、第1キャパシタ及び第2キャパシタの直列回路を備え、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタの接続点はグランドに接続され、前記第1整流素子及び前記第2整流素子が前記整流ユニットである場合、前記第1整流素子の前記制御端子は、第3キャパシタを介して前記一次側端子対の一方に接続され、前記第2整流素子の前記制御端子は、第4キャパシタを介して前記一次側端子対の他方に接続され、第1キャパシタ、第2キャパシタ、第3キャパシタ及び第4キャパシタのキャパシタンスをそれぞれC1,C2,C3,C4で表すと、C1:C2=C3:C4を満たし、前記第3整流素子及び前記第4整流素子が前記整流ユニットである場合、前記第4整流素子の前記制御端子は、第5キャパシタを介して前記一次側端子対の一方に接続され、前記第3整流素子の前記制御端子は、第6キャパシタを介して前記一次側端子対の他方に接続され、第1キャパシタ、第2キャパシタ、第5キャパシタ及び第6キャパシタのキャパシタンスをそれぞれC1,C2,C5,C6で表すと、C1:C2=C5:C6を満たすことが好ましい。
【0013】
この構成では、C1,C2の容量比及びC3,C4の容量比、C1,C2の容量比及びC5,C6の容量比を等しくすることで、第1整流素子及び第2整流素子それぞれの制御端子、第3整流素子及び第4整流素子それぞれの制御端子に過電圧が印加されたり、印加電圧不足となったりすることを抑制でき、電力変換装置を確実に動作させることができる。
【0014】
前記整流ユニットの前記スイッチ素子はFETであり、前記FETのゲートは前記制御端子であり、前記整流ユニットの前記ダイオードは、前記FETのボディーダイオードであることが好ましい。
【0015】
この構成では、ボディーダイオードを利用することで、外付けのダイオードが不要となる。
【0016】
前記トランスは巻線トランスであることが好ましい。
【0017】
この構成では、巻線トランスを用いることで、低コストを実現できる。
【0018】
前記トランスは圧電トランスであることが好ましい。
【0019】
この構成では、回路の低背化が実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、整流素子での損失を低減でき、効率よく整流できる。また、スイッチ素子を駆動するための回路が大型化せず、省スペース化を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電力変換装置1の回路図である。本実施形態に係る電力変換装置1は、入力端子IN1,IN2に接続された交流電源Einから交流電圧が入力されると、その入力電圧を降圧し、整流して負荷RLへ供給する。
【0023】
入力端子IN1,IN2は、本発明に係る「交流電圧入力部」に相当する。
【0024】
電力変換装置1はトランスT1を備えている。トランスT1は降圧型トランスであって、巻線数が異なり、互いに逆極性に接続された一次巻線L1及び二次巻線L2を備えている。トランスT1の一次巻線L1は、電力変換装置1の入力端子IN1,IN2に接続されている。この一次巻線L1の両端は、本発明に係る「一次側端子対」に相当する。
【0025】
また、一次巻線L1には、キャパシタC1,C2の直列回路が並列に接続されている。キャパシタC1,C2の接続点はグランドに接続されている。キャパシタC1,C2はキャパシタンスが同じである。このキャパシタC1,C2は、本発明に係る「第1キャパシタ」及び「第2キャパシタ」に相当する。
【0026】
トランスT1の二次巻線L2には、直列接続されたn型MOS−FETQ1,Q2と、直列接続されたダイオードD1,D2が並列に接続されている。この二次巻線L2の両端は、本発明に係る「二次側端子対」に相当する。
【0027】
MOS−FETQ1は、そのドレインが二次巻線L2の一端に接続され、ソースがMOS−FETQ2のソースに接続されている。MOS−FETQ2は、そのドレインが二次巻線L2の他端に接続されている。MOS−FETQ1,Q2の接続点はグランドに接続されている。また、ダイオードD1は、そのアノードが二次巻線L2の一端に接続され、カソードがダイオードD2のカソードに接続されている。ダイオードD2は、そのアノードが二次巻線L2の他端に接続されている。
【0028】
MOS−FETQ1,Q2の接続点と、ダイオードD1,D2の接続点との間には、負荷RLが接続されている。負荷RLには、平滑キャパシタCLが並列に接続されている。MOS−FETQ1,Q2と、ダイオードD1,D2とは、トランスT1の二次巻線L2に誘起された電圧を整流し、負荷RLへ供給するブリッジ回路を構成する。
【0029】
MOS−FETQ1は、本発明に係る「第1整流素子」及び「整流ユニット」に相当する。MOS−FETQ2は、本発明に係る「第2整流素子」及び「整流ユニット」に相当する。そして、MOS−FETQ1,Q2のソースは、本発明に係る「第1端子」に相当し、ドレインは、本発明に係る「第2端子」に相当する。また、ダイオードD1,D2は、本発明に係る「第3整流素子」及び「第4整流素子」に相当する。そして、ダイオードD1,D2のアノードは、本発明に係る「第1端子」に相当し、カソードは、本発明に係る「第2端子」に相当する。
【0030】
また、MOS−FETQ1は、そのゲートが、トランスT1の一次巻線L1の一端にキャパシタC3を介して接続されている。MOS−FETQ2は、そのゲートが、トランスT1の一次巻線L1の他端にキャパシタC4を介して接続されている。キャパシタC3,C4はキャパシタンスが同じである。MOS−FETQ1,Q2のゲートは、本発明に係る「制御端子」に相当する。また、キャパシタC3は、本発明に係る「第3キャパシタ」に相当する。キャパシタC4は、本発明に係る「第4キャパシタ」に相当する。
【0031】
図2は、MOS−FETQ1,Q2のゲート・ソース間容量を図示した場合のトランスT1の一次側の等価回路図である。
【0032】
MOS−FETQ1,Q2のゲート・ソース間容量をそれぞれ、キャパシタCgs1,Cgs2で表す。この場合、トランスT1の一次側において、キャパシタC3,Cgs1,Cgs2,C4の直列回路が一次巻線L1に並列接続された構成とみなせる。これにより、一次巻線L1とキャパシタC1,C2,C3,C4,Cgs1,Cgs2とで共振回路が形成でき、この共振回路の共振周波数と交流電源Einの出力電圧の周波数を合わせることにより、交流電源Einから効率良くトランスT1に電力を伝送することができる。また、MOS−FETQ1,Q2のゲートに充放電する電流は共振回路に流れる電流の一部であり再利用できるため、MOS−FETQ1,Q2のゲートでの駆動損失を低減することができる。
【0033】
トランスT1の一次巻線L1に電圧が印加され、入力端子IN1の接続ラインが正電位である場合、MOS−FETQ1のゲートには、キャパシタC3,Cgs1で分圧された電圧Vgs1が印加される。これにより、MOS−FETQ1はオンされた状態で、ソースからドレインに電流が流れる。また、トランスT1の一次巻線L1に電圧が印加され、入力端子IN2の接続ラインが正電位である場合、MOS−FETQ2のゲートには、キャパシタC4,Cgs2で分圧された電圧Vgs2が印加される。これにより、MOS−FETQ2はオンされた状態で、ソースからドレインに電流が流れる。
【0034】
なお、ゲートに印加される電圧Vgs1,Vgs2がMOS−FETQ1,Q2のしきい値電圧に達していない期間は、MOS−FETQ1,Q2はオンしない。この期間では、電流は、MOS−FETQ1,Q2のボディーダイオードを流れる。
【0035】
以下に、前記のように構成された電力変換装置1の動作について説明する。
【0036】
図3は、電力変換装置1に流れる電流の経路を示す図である。
図3(A)は入力端子IN1側が正電位である場合、
図3(B)は、
図3(A)から極性反転した場合の電流経路を示す。
【0037】
図3(A)に示すように入力端子IN1側が正電位である場合、トランスT1の一次側では、入力端子IN1から入力端子IN2へ電流が流れる。このとき、
図2で説明したように、キャパシタC3,Cgs1で分圧された電圧Vgs1がMOS−FETQ1のゲートに印加され、MOS−FETQ1がオンする。これにより、トランスT1の二次側では、二次巻線L2から、ダイオードD2、負荷RL、MOS−FETQ1の経路に電流が流れる。
【0038】
なお、ゲートに印加される電圧Vgs1がMOS−FETQ1のしきい値電圧に達していない期間では、電流は、MOS−FETQ1のボディーダイオードを流れる。
【0039】
図3(B)に示すように入力端子IN2側が正電位である場合、トランスT1の一次側では入力端子IN2から入力端子IN1へ電流が流れる。このとき、トランスT1の一次巻線L1と二次巻線L2とでは、
図3(A)とは極性が反転し、
図2で説明したように、キャパシタC4,Cgs2で分圧された電圧Vgs2がMOS−FETQ2のゲートに印加され、MOS−FETQ2がオンする。これにより、トランスT1の二次側では、二次巻線L2から、ダイオードD1、負荷RL、MOS−FETQ2の経路に電流が流れる。
【0040】
なお、ゲートに印加される電圧Vgs2がMOS−FETQ2のしきい値電圧に達していない期間では、電流は、MOS−FETQ2のボディーダイオードを流れる。
【0041】
このように、電力変換装置1に交流電圧が印加されると、トランスT1によって降圧された電圧は、MOS−FETQ1,Q2及びダイオードD1,D2により整流され、負荷RLへ供給される。オン抵抗が極めて低いMOS−FETQ1,Q2を用いることで、ダイオードで構成した場合と比べ、電圧降下による損失を低減でき、効率よく整流できる。
【0042】
また、MOS−FETQ1,Q2は、降圧前のトランスT1の一次側の電圧を利用して駆動するため、トランスT1の二次側で、ゲートに印加する電圧を昇圧させるための昇圧回路等を設ける必要がない。また、トランスの反転信号を検出するための補助巻線が不要であるので、トランス又は回路の簡略化が図れる。
【0043】
なお、本実施形態では、キャパシタC1,C2同士、キャパシタC3,C4同士はキャパシタンスを同じにしているが、キャパシタンスは異なっていてもよい。キャパシタC1,C2,C3,C4,Cgs1, Cgs2のキャパシタンスをC1,C2,C3,C4,Cgs1, Cgs2で表すと、ゲートに印加される電圧Vgs1は、C2×C3/(C3+Cgs1)に比例し、Vgs2は、C1×C4/(C4+Cgs2)に比例する。よって、例えばMOS−FETQ1,Q2が同じ特性のものを使う場合はVgs1=Vgs2であるため、C2×C3×(C4+Cgs2)=C1×C4×(C3+Cgs1)となり、さらにCgs1とCgs2はC3とC4に比べて大きいため、C1,C2の比と、C3,C4の比とを等しくすればよい。すなわち、C1:C2=C3:C4を満たすように、各キャパシタC1,C2,C3,C4を設定することが好ましい。
【0044】
例えば、
図3(A)の状態で、C1,C2の比とC3,C4の比とが等しくない場合、MOS−FETQ1に過電圧が印加されたり、Vgs1が印加電圧不足となり、オンされなかったりするおそれがある。同様に、
図3(B)の状態で、C1,C2の比とC3,C4の比とが等しくない場合、MOS−FETQ2に過電圧が印加されたり、Vgs2が印加電圧不足となり、オンされなかったりするおそれがある。このため、C1,C2の比と、C3,C4の比とを等しくすることで、MOS−FETQ1,Q2への過電圧の印加、又は、印加電圧不足を抑制でき、電力変換装置1を確実に動作させることができる。
【0045】
また、本実施形態では、本発明に係る「第1整流素子」及び「第2整流素子」はボディーダイオードを有するn型MOS−FETQ1,Q2としているが、これに限定されない。p型MOS−FETQ1,Q2でもよい。他に、例えば、ショットキーバリアダイオードと、そのショットキーバリアダイオードに並列接続したスイッチ素子からなるユニットを、本発明に係る「第1整流素子」及び「第2整流素子」としてもよい。
【0046】
さらには、本実施形態では電力変換装置1はブリッジ型の全波整流回路としているがこれに限定されない。同期整流を用いたブリッジ型以外の全波整流回路、又は半波整流回路などその他の整流回路でもよく、トランスの2次側にあるスイッチング素子のスイッチングをトランスの1次巻線の電位を用いて制御する回路であればよい。なお、本実施形態のトランスT1に関しても巻線トランスである必要はなく、圧電トランスでもよい。
【0047】
また、本実施形態では、本発明に係る「第3キャパシタ」及び「第4キャパシタ」となるキャパシタC3及びキャパシタC4を有しているが、これらは必ずしも必要ない。交流電源Einからの交流電圧が低く、MOS−FETQ1,Q2がゲートに印加される電圧Vgs1,Vgs2に耐えられる場合、キャパシタC3及びキャパシタC4を介さず直接導通させてもよい。
【0048】
図4は、実施形態1に係る別の例の電力変換装置1Aの回路図である。
【0049】
図4に示す電力変換装置1Aでは、トランスT1の一次巻線L1及び二次巻線L2は、極性を同じにして接続されている。このトランスT1の二次巻線L2には、直列接続されたn型MOS−FETQ1,Q2が並列に接続されている。MOS−FETQ1は、そのドレインが二次巻線L2の一端に接続され、ソースがMOS−FETQ2のソースに接続されている。また、MOS−FETQ1は、そのゲートが、トランスT1の一次巻線L1の一端にキャパシタC4を介して接続されている。MOS−FETQ2は、そのドレインが二次巻線L2の他端に接続され、ゲートが、トランスT1の一次巻線L1の他端に、キャパシタC3を介して接続されている。
【0050】
また、トランスT1の二次巻線L2には、直列接続されたダイオードD1,D2が並列に接続されている。ダイオードD1は、そのアノードが二次巻線L2の一端に接続され、カソードがダイオードD2のカソードに接続されている。ダイオードD2は、そのアノードが二次巻線L2の他端に接続されている。
【0051】
この
図4に示す構成であっても、オン抵抗が極めて低いMOS−FETQ1,Q2を用いることで、ダイオードを用いた場合と比べ、電力変換装置1Aは、小さな電圧降下で効率よく整流できる。
【0052】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る電力変換装置2の回路図である。
【0053】
本実施形態では、実施形態1に係る電力変換装置1のダイオードD1,D2を、MOS−FFTQ3,Q4に置き換えている。MOS−FETQ3は、そのソースが、二次巻線L2の一端に接続され、ドレインがMOS−FETQ4のドレインに接続されている。MOS−FETQ4は、そのソースが、二次巻線L2の他端に接続されている。また、MOS−FETQ4のゲートがトランスT1の一次巻線L1の一端にキャパシタC5を介して接続され、MOS−FETQ3のゲートがトランスT1の一次巻線L1の他端にキャパシタC6を介して接続されている。
【0054】
MOS−FETQ3は、本発明に係る「第3整流素子」及び「整流ユニット」に相当する。MOS−FETQ4は、本発明に係る「第4整流素子」及び「整流ユニット」に相当する。また、キャパシタC5は、本発明に係る「第5キャパシタ」に相当し、キャパシタC6は、本発明に係る「第6キャパシタ」に相当する。
【0055】
キャパシタC1,C2のキャパシタンスが同じである場合、キャパシタC3,C4同士、及び、キャパシタC5,C6同士は、キャパシタンスが同じに設定されている。また、キャパシタC1,C2のキャパシタンスが異なっている場合、キャパシタC1,C2,C3,C4,C5,C6のキャパシタンスをC1,C2,C3,C4,C5,C6で表すと、実施形態1での説明と同様に、C1:C2=C3:C4=C5:C6を満たすように、各キャパシタC1,C2,C3,C4,C5,C6を設定することが好ましい。C1,C2の比と、C3,C4の比と、C5,C6の比とを等しくすることで、MOS−FETQ1,Q2,Q3,Q4に過電圧が印加されたり、印加電圧不足となったりすることを抑制でき、電力変換装置2を確実に動作させることができる。
【0056】
実施形態1で説明したように、MOS−FETQ1,Q2と同様、トランスT1の一次巻線L1に電圧が印加され、入力端子IN1の接続ラインが正電位である場合、MOS−FETQ4のゲートには、キャパシタC5とMOS−FETQ4のゲート・ソース容量とで分圧された電圧が印加される。これにより、MOS−FETQ4はオンされた状態で、ソースからドレインに電流が流れる。また、トランスT1の一次巻線L1に電圧が印加され、入力端子IN2の接続ラインが正電位である場合、MOS−FETQ3のゲートには、キャパシタC6と、MOS−FETQ3のゲート・ソース容量とで分圧された電圧が印加される。これにより、MOS−FETQ3はオンされた状態で、ソースからドレインに電流が流れる。
【0057】
なお、MOS−FETQ3,Q4はボディーダイオードを有している。このため、ゲートに印加される電圧がMOS−FETQ3,Q4のしきい値電圧に達していない期間では、電流は、MOS−FETQ3,Q4のボディーダイオードを流れる。
【0058】
以上のように、オン抵抗が極めて低いMOS−FETQ1,Q2,Q3,Q4を用いて、トランスT1の二次巻線L2に誘起された電圧を整流することで、ダイオードを用いた場合と比べ、小さな電圧降下で効率よく整流できる。また、MOS−FETQ1,Q2,Q3,Q4は、降圧前のトランスT1の一次側の電圧を利用して駆動するため、トランスT1の二次側で、ゲートに印加する電圧を昇圧させるための昇圧回路又はトランスの補助巻線等を設ける必要がなく、トランス又は回路の簡略化が図れる。
【0059】
(実施形態3)
実施形態3は、トランスの二次巻線にセンタータップを引き出している点で実施形態1と相違する。
【0060】
図6は、実施形態3に係る電力変換装置3の回路図である。
【0061】
トランスT2の二次側のセンタータップPには負荷RLが接続されている。この負荷RLには平滑キャパシタCLが並列に接続されている。
【0062】
トランスT2の二次巻線L21のセンタータップPと反対側の一端には、MOS−FETQ1が接続されている。MOS−FETQ1は、ドレインが二次巻線L21に接続され、ソースが負荷RLに接続されている。また、MOS−FETQ1のゲートには、トランスT2の一次巻線L1の一端がキャパシタC3を介して接続されている。
【0063】
二次巻線L22のセンタータップPと反対側の一端には、MOS−FETQ2が接続されている。MOS−FETQ2は、ドレインが二次巻線L22に接続され、ソースが負荷RLに接続されている。また、MOS−FETQ2のゲートには、トランスT2の一次巻線L1の一端がキャパシタC4を介して接続されている。
【0064】
実施形態1で説明したように、トランスT2の一次巻線L1に電圧が印加され、入力端子IN1の接続ラインが正電位である場合、MOS−FETQ1のゲートには、キャパシタC3とMOS−FETQ1のゲート・ソース容量とで分圧された電圧が印加される。これにより、MOS−FETQ1はオンされた状態で、ソースからドレインに電流が流れる。また、トランスT2の一次巻線L1に電圧が印加され、入力端子IN2の接続ラインが正電位である場合、MOS−FETQ2のゲートには、キャパシタC4と、MOS−FETQ2のゲート・ソース容量とで分圧された電圧が印加される。これにより、MOS−FETQ2はオンされた状態で、ソースからドレインに電流が流れる。
【0065】
この構成の場合、実施形態1に係るダイオードD1,D2が不要となり、部品点数を低減でき、より簡易な構成とすることができるとともに、ダイオードにおける損失がなくなり効率よく整流できる。
【0066】
(実施形態4)
実施形態4は、トランスに圧電トランスを用いた点で実施形態1と相違する。
【0067】
図7は、実施形態4に係る電力変換装置4の回路図である。
【0068】
電力変換装置4は、圧電トランス30を備えている。圧電トランス30は、入力電力31,32と、出力電極33,34とを備えている。圧電トランス30は、入力電力31,32から電圧が入力されると、機械共振により降圧した電圧を出力電極33,34から出力する。
【0069】
入力電力31,32は、入力端子IN1,IN2に接続されている。出力電極33,34には、直列接続されたMOS−FETQ1,Q2と、直列接続されたダイオードD1,D2が並列に接続されている。この出力電極33,34は、本発明に係る「二次側端子対」に相当する。
【0070】
この構成であっても、効率よく整流できる。また、圧電トランス30を用いることで、巻線型のトランスを用いた場合と比べて、電力変換装置4の小型化が可能となる。
【0071】
図8は、実施形態4に係る別の例の電力変換装置4Aを示す図である。
図9は、
図8に示す電力変換装置4Aの等価回路図である。
【0072】
また、電力変換装置4Aは、圧電トランス30の出力側にカレントダブラ型の整流回路を備えている点で、電力変換装置4と相違する。詳しくは、電力変換装置4Aは、電力変換装置4に示すダイオードD1,D2に代えて、インダクタL31,L32を備えている。MOS−FETQ1,Q2と、インダクタL31,L32とは、トランスT1の二次巻線L2に誘起された電圧を整流し、負荷RLへ供給するブリッジ回路を構成する。このブリッジ回路は、出力電極33,34からの出力電流をインダクタL31,L32で分割し、それぞれが出力電流の半分を流すことによって整流する。このカレントダブラ型の整流回路を用いることで、出力電極33,34からの出力電流のリプルを低減できる。
【0073】
MOS−FETQ1,Q2は、キャパシタC3,C4とゲート・ソース間容量とで分圧された電圧がゲートに印加されることにより、オンされる。ここで、キャパシタC3,C4は同じ定数に設定されている。圧電トランス30は、
図9に示すように、キャパシタンス素子301,302、インダクタンス素子303,304、理想変圧器Tp、入力コンデンサ305及び出力コンデンサ306で表される。圧電トランス30では、キャパシタンス素子301,302、インダクタンス素子303,304は、それぞれ同じ定数に設定されている。また、MOS−FETQ1,Q2、インダクタL31,L32もそれぞれ同じ定数に設定されている。すなわち、電力変換装置4Aは、対称型の回路構成とである。このため、キャパシタC3,C4は同じ定数に設定することで、MOS−FETQ1,Q2のゲートには、同電圧が印加される。
【0074】
この構成であっても、効率よく整流できる。
【0075】
図10は、別の例の電力変換装置4Bを示す図である。
図10に示す電力変換装置4Bは、E級スイッチング回路41,42を用いて、
図8に示す電力変換装置4Aの圧電トランス30に交流電圧を入力する。
【0076】
E級スイッチング回路41は、インダクタL41とMOS−FETQ5とが電源Vddに直列に接続されている。また、MOS−FETQ5にはキャパシタC71が並列接続されている。同様に、E級スイッチング回路42は、インダクタL42とMOS−FETQ6とが電源Vddに直列に接続されている。また、MOS−FETQ6にはキャパシタC72が並列接続されている。これらのMOS−FETQ5とMOS−FETQ6とが相補的にオン・オフを繰り返すことで、直流−交流変換動作が行われる。
【0077】
この構成であっても、小型、薄型で高効率動作する電力変換装置を得ることができる。
【0078】
(実施形態5)
本実施形態では、電界結合を利用して送電装置から受電装置へ電力を伝送する電力伝送システムについて説明する。
【0079】
図11は、実施形態5に係る電力伝送システム5の回路図である。電力伝送システム5は、送電装置101と受電装置201とを備えている。送電装置101には受電装置201が載置される。その状態で、送電装置101は、電界結合を利用して受電装置201へ電力を伝送する。受電装置201は、二次電池及び充電回路を含む負荷RLを備えていて、送電装置101から受電した電力で二次電池に充電する。
【0080】
送電装置101は電源回路13を備えている。電源回路13は、商用電源に接続されたACアダプタにより交流電圧(AC100V〜240V)から変換された直流電圧(例えばDC19V)を、DC−ACインバータ回路で交流電圧に変換する。
【0081】
電源回路13には昇圧トランス14が接続されている。昇圧トランス14は、一次巻線及び二次巻線を有する絶縁型巻線トランスである。一次巻線は電源回路13に接続されている。二次巻線は、平板状であるアクティブ電極15及びパッシブ電極16に接続されている。アクティブ電極15及びパッシブ電極16には、昇圧トランス14で昇圧された交流電圧が印加される。アクティブ電極15及びパッシブ電極16は、本発明に係る「送電側作用部」に相当する。
【0082】
アクティブ電極15及びパッシブ電極16の間には、キャパシタC11が接続されている。キャパシタC11は、昇圧トランス14の二次巻線と並列共振回路を構成している。
【0083】
受電装置201は、アクティブ電極25及びパッシブ電極26を備えている。受電装置201を送電装置101に載置した場合に、アクティブ電極25は、送電装置101のアクティブ電極15に対向し、パッシブ電極26は、送電装置101のパッシブ電極16に対向する。アクティブ電極25及びパッシブ電極26はいずれも平板状であり、対向するアクティブ電極15及びパッシブ電極16と同面積を有している。アクティブ電極25及びパッシブ電極26は、本発明に係る「受電側作用部」に相当する。なお、アクティブ電極25及びパッシブ電極26と、対向するアクティブ電極15及びパッシブ電極16とは必ずしも同面積でなくても構わない。
【0084】
アクティブ電極25及びパッシブ電極26には、実施形態1に係る電力変換装置1が接続されている。送電装置101のアクティブ電極15及びパッシブ電極16に電圧が印加されると、アクティブ電極15,25同士、パッシブ電極16,26同士が電界結合する。そして、アクティブ電極25及びパッシブ電極26には電圧が誘起される。電力変換装置1は、この誘起された電圧を降圧し、整流する。電力変換装置1の動作については、実施形態1と同様である。電力変換装置1により降圧、整流された電圧は、負荷RLへ供給される。
【0085】
図2に示したと同様、電力変換装置1は、一次巻線L1に、キャパシタC3,C4の直列回路、キャパシタC3,Cgs1,Cgs2,C4の直列回路が並列接続された構成とみなせる。そして、これら二つの直列回路からなる並列回路と、一次巻線L1とは、並列共振回路を構成している。この並列共振回路は、送電装置101側で、キャパシタC11及び昇圧トランス14の二次巻線から構成される並列共振回路と、共振周波数が同じに設定されている。このように、送電装置101と受電装置201とに共振周波数が同じ共振回路を構成することで、送電装置101から受電装置201へ効率のよい電力伝送が行える。
【0086】
実施形態1で説明したように、オン抵抗が極めて低いMOS−FETQ1,Q2を用いることで、電力変換装置1は、ダイオードを用いた場合と比べ、電圧降下が小さいため損失を低減でき、効率よく整流できる。この結果、電力伝送システム5は、効率よく電力伝送を行える。
【0087】
図12は、出力電力と損失との関係を示す図である。
図12は、横軸を負荷RLへの出力電力[W]、縦軸を損失[W]としている。また、
図12では、MOS−FETを用いた電力伝送システム5の特性、及び、MOS−FETに代えてダイオードを用いた場合の特性をそれぞれ示している。
図12に示すように、MOS−FETを用いた電力伝送システム5では、例えば出力電圧が15[W]のとき、MOS−FETに代えてダイオードを用いた電力伝送システムに比べ約7%の損失を低減している。
【0088】
なお、本実施形態では、電界結合方式の電力伝送システム5に電力変換装置1を用いているが、磁界結合方式の電力伝送システム又は磁界共鳴などの共鳴方式の電力伝送システムに、電力変換装置1を用いてもよい。
【0089】
図13は、磁界結合方式の電力伝送システム5Aの回路図である。この例では、電力伝送システム5Aの送電装置101Aと受電装置201Aとが磁界結合して、送電装置101Aから受電装置201Aへ電力が伝送される。
【0090】
送電装置101Aは巻線17を備えている。この巻線17は、昇圧トランス14の二次巻線に接続されている。巻線17には、昇圧トランス14で昇圧された交流電圧が印加される。巻線17は、本発明に係る「送電側作用部」に相当する。なお、昇圧トランス14を省略し、電源回路13の出力を直接キャパシタC11と巻線17の並列回路に加えることによっても巻線17を「送電側作用部」として動作させることができる。
【0091】
受電装置201Aは、送電装置101Aの巻線17と磁界結合する巻線27を備えている。巻線27は、本発明に係る「受電側作用部」に相当する。巻線27には、実施形態1に係る電力変換装置1が接続されている。送電装置101Aの巻線17に高周波電流が通電されると、巻線17,27が磁界結合する。そして、巻線17,27には電圧が誘起される。電力変換装置1は、この誘起された電圧を降圧し、整流する。
【0092】
このように、電力変換装置1は、磁界結合方式の電力伝送システム5Aに用いてもよい。この場合であっても、電力変換装置1は、オン抵抗が極めて低いMOS−FETQ1,Q2を用いることで、ダイオードを用いた場合と比べ、小さな電圧降下で効率よく整流できる。その結果、電力伝送システム5Aは、効率よく電力伝送を行える。