特許第6245382号(P6245382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6245382-リチウムイオン二次電池 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245382
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20171204BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20171204BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20171204BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20171204BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/13
   H01M4/131
   H01M10/0568
   H01M10/052
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-564868(P2016-564868)
(86)(22)【出願日】2015年12月15日
(86)【国際出願番号】JP2015085117
(87)【国際公開番号】WO2016098783
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2017年6月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-254729(P2014-254729)
(32)【優先日】2014年12月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 馨
(72)【発明者】
【氏名】羽場 英介
(72)【発明者】
【氏名】西山 洋生
(72)【発明者】
【氏名】武井 康一
(72)【発明者】
【氏名】三國 紘揮
【審査官】 宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−522619(JP,A)
【文献】 特開2009−152197(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/073594(WO,A1)
【文献】 特開2012−146477(JP,A)
【文献】 特開平11−283671(JP,A)
【文献】 特開2000−077103(JP,A)
【文献】 特開2013−105677(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/200063(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/36− 4/62
H01M 4/13− 4/1399
H01M 10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、セパレータと、フッ素含有リチウム塩を含む電解液と、を備え、
前記正極が、集電体と、前記集電体上に形成された正極合材と、を有し、前記正極合材が、表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物を含み、
前記表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物におけるアルミニウム酸化物が無定形アルミニウムケイ酸化合物であり、
前記表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物の示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて測定される350℃〜850℃間での質量減少率が0.5%〜30%である、リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物の示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて測定された25℃〜350℃間の質量減少率が5%未満である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物の77Kでの窒素吸着測定から求められる比表面積が、1m/g以上80m/g未満である、請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物のレーザー回折式粒度分布測定装置で測定した体積平均粒子径が0.5μm以上10μm未満である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物の含有量が、前記正極合材の全量に対して、0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記正極合材が、正極活物質としてコバルト酸リチウムを含む、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度の二次電池であり、その特性を活かして、ノートパソコン、携帯電話等のポータブル機器の電源に使用されている。近年、スマートフォン、タブレットPCを中心とした携帯用情報端末の高機能化に伴い、リチウムイオン二次電池の更なる高容量化が求められている。リチウムイオン二次電池の高容量化を達成する手段としては、活物質の高容量化、エネルギー密度の向上、電池の高電圧化等が挙げられる。ここで、電池を高電圧化した場合は電池内部での構成材料間での反応が促進されるため、充放電サイクル後の容量低下が大きいという課題があった。
【0003】
充放電サイクル後の容量低下を抑制する方法として、(1)電解質にフッ素系含有塩とホスホノアセテート類化合物と正極にジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を用いる方法(例えば、特開2014−127256号公報参照)、(2)電解液としてフッ素化環状炭酸エステルとフッ素化鎖状エステルを用いる方法(例えば、特開2014−110122号公報参照)、(3)コバルト酸リチウムの表面の一部に希土類化合物を固着させる方法(例えば、特開2013−179095号公報参照)等が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載された方法では、高電位での容量維持率の低下を十分に低減することは困難であることが本発明者らの検討により明らかとなった。この原因として、リチウムイオン二次電池中に含まれる水分がヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)等のフッ素を含有する電解質と反応した際に生じるフッ化水素(HF)が原因となり、正極活物質からコバルト等の金属が溶出し、この溶出した金属が負極等で再析出することによる容量低下が発生することが考えられる。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、高電圧(例えば、充電電圧4.35V)でも容量維持率の低下が抑制されたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>正極と、負極と、セパレータと、リチウム塩としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を含む電解液と、を備え、
前記正極が、集電体と、前記集電体上に形成された正極合材と、を有し、前記正極合材が、表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物を含む、リチウムイオン二次電池。
<2>前記表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物の示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて測定される350℃〜850℃間での質量減少率が0.5%〜30%である、<1>に記載のリチウムイオン二次電池。
<3>前記表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物の示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて測定された25℃〜350℃間の質量減少率が5%未満である、<1>又は<2>に記載のリチウムイオン二次電池。
<4>前記表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物の77Kでの窒素吸着測定から求められる比表面積が、1m/g以上80m/g未満である、<1>〜<3>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
<5>前記表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物のレーザー回折式粒度分布測定装置で測定した体積平均粒子径が0.5μm以上10μm未満である、<1>〜<4>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
<6>前記表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物の含有量が、前記正極合剤の全量に対して、0.1質量%以上10質量%以下である、<1>〜<5>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
<7>前記表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物におけるアルミニウム酸化物が無定形アルミニウムケイ酸化合物である、<1>〜<6>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
<8>前記正極合材が、正極活物質としてコバルト酸リチウムを含む、<1>〜<7>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高電圧でも容量維持率の低下が抑制されたリチウムイオン二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態のリチウムイオン二次電池の一実施態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。「A以上」又は「A以下」として示された数値範囲には、Aも最小値又は最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において層、膜又は被覆との語には、当該層、膜又は被覆が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
【0010】
まず、リチウムイオン二次電池の概要について簡単に説明する。リチウムイオン二次電池は、電池容器内に、正極、負極、セパレータ及び電解液が収容された構造を有している。正極と負極との間には、セパレータが配置されている。セパレータは、電解液中に放出されたリチウムイオンが通過可能な構造(微多孔膜等)を有している。
【0011】
リチウムイオン二次電池を充電する際には、正極と負極との間に充電器を接続する。充電時においては、正極活物質内に挿入されているリチウムイオンが脱離し、電解液中に放出される。電解液中に放出されたリチウムイオンは、電解液中を移動し、セパレータを通過して、負極に到達する。負極に到達したリチウムイオンは、負極を構成する負極活物質内に挿入される。
【0012】
リチウムイオン二次電池を放電する際には、正極と負極の間に外部負荷を接続する。放電時においては、負極活物質内に挿入されていたリチウムイオンが脱離して電解液中に放出される。このとき、負極から電子が放出される。そして、電解液中に放出されたリチウムイオンは、電解液中を移動し、セパレータを通過して、正極に到達する。正極に到達したリチウムイオンは、正極を構成する正極活物質内に挿入される。このとき、正極活物質にリチウムイオンが挿入することにより、正極に電子が流れ込む。このようにして、負極から正極に電子が移動することにより放電が行われる。
【0013】
このように、リチウムイオンを正極活物質と負極活物質との間で挿入・脱離することにより、リチウムイオン二次電池の充放電が行われる。なお、実際のリチウムイオン二次電池の構成例については、後述する(例えば、図1参照)。
【0014】
以下、リチウムイオン二次電池の正極、負極、電解液、セパレータ及びその他の構成部材に関して説明する。
【0015】
1.正極
本実施形態の正極(正極板)は、集電体と、その上に形成された正極合材と、を含む。正極合材は、集電体の上部に設けられ、少なくとも正極活物質を含む層である。正極合材は、集電体の片面のみに形成されていても、両面に形成されていてもよい。
正極合材は、正極活物質に加え、少なくとも表面の一部又は全部が炭素で被覆されたアルミニウム酸化物(以下、炭素被覆アルミニウム酸化物とも称する)を含む。正極合材は、必要に応じて導電材、結着材、増粘材等を含んでもよい。
【0016】
(正極活物質)
正極活物質としては、リチウム含有複合金属酸化物を含むことが好ましい。リチウム含有複合金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物、又はリチウムと遷移金属とを含む金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。異種元素としては、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、B等が挙げられ、Mn、Al、Co、Ni、Mg等が好ましい。リチウム含有複合金属酸化物に含まれる異種元素は、1種であっても2種以上であってもよい。
【0017】
リチウム含有複合金属酸化物としては、LiCoO、LiNiO、LiCoNi1−y、LiCo1−y、LiNi1−y、LiMPO、LiMPOF(前記各式中、MはNa、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、V及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3である。)等が挙げられる。ここで、リチウムのモル比を示すxの値は、充放電により増減する。
【0018】
正極活物質としては、リチウム含有複合金属酸化物のほかに、オリビン型リチウム塩、カルコゲン化合物、二酸化マンガン等が挙げられる。オリビン型リチウム塩としては、LiFePO等が挙げられる。カルコゲン化合物としては、二硫化チタン、二硫化モリブデン等が挙げられる。正極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0019】
正極活物質が粒子状である場合、その形状としては、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が挙げられる。中でも、正極活物質は一次粒子の凝集体である二次粒子の状態であることが好ましく、形状が球状又は楕円球状である二次粒子の状態であることがより好ましい。
【0020】
電池のような電気化学素子においては、その充放電に伴い、電極中の正極活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パスの切断等の劣化が生じやすい。そのため、正極活物質は、一次粒子のみの単一粒子を用いるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものを用いる方が、膨張収縮のストレスを緩和し、上記劣化を防ぐことができる傾向にある。また、板状等の軸配向性の粒子よりも球状又は楕円球状の粒子を用いる方が、電極内における配向が少なくなるため、充放電時の電極の膨張収縮が小さくなる傾向にある。また、正極合材を形成する際に、導電材等の他の材料とも均一に混合しやすい傾向にある。
【0021】
正極活物質の体積平均粒子径(D50)(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子の体積平均粒子径(D50))について、その範囲は次のとおりである。範囲の下限は、所望のタップ密度が得られ易い観点から、0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上である。また上限は、電極形成性及び電池性能をより向上できる観点から、20μm以下、好ましくは18μm以下、より好ましくは16μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
ここで、正極活物質として、異なる体積平均粒子径(D50)をもつものを2種類以上混合することで、タップ密度(充填性)を向上させてもよい。なお、体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法により求めた粒度分布から求めることができる。レーザー回折法は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置(SALD3000J、株式会社島津製作所)を用いて測定できる。具体的には、粒子を、水等の分散媒に分散させて分散液を調製する。この分散液について、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50%となる粒子径(D50)を体積平均粒子径として求める。
【0022】
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合における一次粒子の平均粒径について、その範囲は次のとおりである。範囲の下限は、充放電の良好な可逆性の観点から、0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.08μm以上、特に好ましくは0.1μm以上である。上限は、出力特性等の電池性能をより向上できる観点から、3μm以下、好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.6μm以下である。
【0023】
正極活物質のBET比表面積について、その範囲は次のとおりである。範囲の下限は、電池性能をより向上できる観点から、0.1m/g以上、好ましくは0.2m/g以上、さらに好ましくは0.3m/g以上であり、上限は、電極形成性に優れる観点から、4.0m/g以下、好ましくは2.5m/g以下、さらに好ましくは1.5m/g以下である。
【0024】
BET比表面積は、JIS Z 8830(2001年)に準じて窒素吸着能から測定する。評価装置としては、例えば、窒素吸着測定装置(AUTOSORB−1、QUANTACHROME社)等を用いることができる。BET比表面積の測定を行う際には、試料表面及び構造中に吸着している水分がガス吸着能に影響を及ぼすと考えられることから、まず、加熱による水分除去の前処理を行う。
【0025】
前記前処理では、0.05gの測定試料を投入した測定用セルを、真空ポンプで10Pa以下に減圧した後、110℃で加熱し、3時間以上保持する。その後、減圧した状態を保ったまま常温(25℃)まで自然冷却する。この前処理を行った後、評価温度を77Kとし、評価圧力範囲を相対圧(飽和蒸気圧に対する平衡圧力)にて1未満として測定する。
【0026】
(炭素被覆アルミニウム酸化物)
炭素被覆アルミニウム酸化物は、粒子状のアルミニウム酸化物の表面の一部又は全部が炭素で被覆された構造を有する。アルミニウム酸化物としては、例えば、活性アルミナ及びアルミニウムケイ酸化合物が挙げられる。アルミニウムケイ酸化合物としては、例えば、アルミニウムケイ酸塩であるアロフェン、カオリン、ゼオライト、サポナイト及びイモゴライトが挙げられる。これらの中でもサイクル特性向上のために比表面積が容易に調整可能である無定形アルミニウムケイ酸化合物が好ましい。
前記無定形アルミニウムケイ酸化合物とは、元素モル比Si/Alが0.3以上5.0以下のアルミニウムケイ酸塩である。このようなアルミニウムケイ酸塩としては、例えば、nSiO・Al・mHO[n=0.6〜10.0、m=0以上]で示される組成を有するものが挙げられる。
【0027】
アルミニウム酸化物は、合成してもよく、市販品を購入して用いてもよい。
アルミニウム酸化物としてのアルミニウムケイ酸塩を合成する場合の合成方法としては、ケイ酸イオンを含む溶液及びアルミニウムイオンを含む溶液を混合して反応生成物を得る工程と、前記反応生成物を、水性媒体中、酸の存在下で加熱処理する工程と、を含む方法が挙げられる。前記方法は、必要に応じてその他の工程を含んでもよい。得られるアルミニウム酸化物の収率及び構造体形成等の観点から、少なくとも加熱処理する工程の後、好ましくは、加熱処理工程の前及び後で、脱塩及び固体分離を行う洗浄工程を有することが好ましい。
【0028】
反応生成物であるアルミニウム酸化物を含む溶液から共存イオンを脱塩処理した後に、酸の存在下で加熱処理することで、金属イオン吸着能に優れるアルミニウム酸化物を効率良く製造することができる。共存イオンとしては、ナトリウムイオン、塩化物イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等が挙げられる。
【0029】
これは、例えば、以下のように考えることができる。規則的な構造の形成を阻害する共存イオンが除去されたアルミニウム酸化物を、酸の存在下で加熱処理することで、規則的な構造を有するアルミニウム酸化物が形成される。
【0030】
アルミニウム酸化物の表面を炭素で被覆する方法は特に制限されない。例えば、熱処理により炭素質に変化する有機化合物(炭素前駆体)をアルミニウム酸化物に付着させ、これに対して熱処理を行って有機化合物を炭素質に変化させる方法が挙げられる。アルミニウム酸化物に有機化合物を付着させる方法としては、有機化合物を溶媒に溶解又は分散させた混合溶液に核となる粒子状のアルミニウム酸化物を添加した後、溶媒を加熱等で除去する湿式法、粒子状のアルミニウム酸化物と固体状の有機化合物を混合して得られた混合物をせん断力を加えながら混練して被覆させる乾式法、CVD等の気相法などが挙げられる。製造コスト及び製造プロセスの低減の観点からは、溶媒を使用しない乾式法及び気相法が好ましい。
【0031】
熱処理により炭素質に変化する有機化合物(炭素前駆体)は特に制限されない。例えば、エチレンヘビーエンドピッチ、原油ピッチ、コールタールピッチ、アスファルト分解ピッチ、ポリ塩化ビニル等の熱分解により生成するピッチ、ナフタレン等を超強酸存在下で重合させて作製される合成ピッチ等が使用できる。また、熱可塑性樹脂に分類される材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール等が挙げられる。熱硬化性樹脂に分類される材料としては、フェノール樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。
【0032】
有機化合物を表面に付着させたアルミニウム酸化物を熱処理する際の条件は、有機化合物の炭素化率を考慮して選択でき、特に制限されない。例えば、800℃〜1300℃の熱処理温度であることが好ましい。熱処理温度が800℃以上であると、有機物の焼成が充分進み、比表面積が高すぎることによる初回の不可逆容量の増大が抑制される傾向にある。また、熱処理温度が1300℃未満であると、比表面積が低すぎて抵抗が上昇するのが抑制される傾向にある。また、熱処理は不活性雰囲気で行うことが好ましい。不活性雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0033】
炭素被覆アルミニウム酸化物のBET比表面積は80m/g以下であることが好ましく、サイクル特性及び保存特性の観点からは、40m/g以下であることがより好ましく、20m/g以下であることが更に好ましい。また、炭素被覆アルミニウム酸化物のBET比表面積の下限値は特に制限されないが、フッ化水素及び金属イオンの吸着能を向上させる観点からは、1m/g以上であることが好ましく、2m/g以上であることがより好ましく、3m/g以上であることが更に好ましい。
【0034】
炭素被覆アルミニウム酸化物のBET比表面積は、JIS Z 8830(2001年)に準じて窒素吸着能から測定する。評価装置としては、例えば、窒素吸着測定装置(AUTOSORB−1、QUANTACHROME社)等を用いることができる。BET比表面積の測定を行う際には、試料の表面及び構造中に吸着している水分がガス吸着能に影響を及ぼすことが想定されるため、まず、加熱による水分除去の前処理を行う。
【0035】
前処理では、0.05gの測定試料を投入した測定用セルを、真空ポンプで10Pa以下に減圧した後、110℃で加熱し、3時間以上保持する。その後、減圧した状態を保ったまま常温(25℃)まで自然冷却する。この前処理を行った後、評価温度を77Kとし、評価圧力範囲を相対圧(飽和蒸気圧に対する平衡圧力)にて1未満として測定する。
【0036】
炭素被覆アルミニウム酸化物は、電池容量及びサイクル特性をより向上できる観点から、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて測定される25℃〜350℃の間での質量減少率(D1)が5%未満であることが好ましく、4%未満であることがより好ましく、3%未満であることが更に好ましい。質量減少率(D1)の下限値は、実用的な観点から0.01%以上であることが好ましい。
【0037】
炭素被覆アルミニウム酸化物は、入出力特性及びサイクル特性の観点から、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて測定される350℃〜850℃の間での質量減少率(D2)が0.5%〜30%であることが好ましく、2%〜25%であることがより好ましく、5%〜20%であることが更に好ましい。質量減少率(D2)が上記範囲内であると、炭素被覆アルミニウム酸化物の粒子表面と電解液とが反応することによる抵抗の上昇が抑制される傾向にあり、フッ化水素、金属イオン等の吸着能により優れる傾向にある。
【0038】
質量減少率(D1)は、乾燥空気流通下、10℃/分の昇温速度で、25℃から350℃まで昇温することで測定できる。質量減少率(D1)は、下式(1)にて求められた値とする。式中のW0は25℃での質量であり、W1は350℃での質量である。

D1(%)={(W0−W1)/W0}×100 ・・・式(1)
【0039】
質量減少率(D2)は、乾燥空気流通下、10℃/分の昇温速度で、350℃から850℃まで昇温し、850℃で20分保持した際の質量から測定できる。質量減少率(D2)は、下式(2)にて求められた値とする。式中のW1は350℃での質量であり、W2は850℃での質量である。

D2(%)={(W1−W2)/W1}×100 ・・・式(2)
【0040】
炭素被覆アルミニウム酸化物の質量減少率は、例えば、示差熱−熱重量分析装置としてTG−DTA−6200型(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社)を用いて測定し、算出することができる。
【0041】
25℃〜350℃の質量減少率(D1)は、電池容量及びサイクル特性をより向上できる観点から、5%未満であることが好ましく、4%未満であることがより好ましく、3%未満であることが更に好ましい。また、25℃〜350℃の質量減少率(D1)の下限値は、実用的な観点から0.01%以上であることが好ましい。
【0042】
350℃〜850℃の質量減少率(D2)は、入出力特性及びサイクル特性の観点から、0.5%〜30%であることが好ましく、2%〜25%であることがより好ましく、5%〜20%であることが更に好ましい。上記範囲内であると、炭素被覆アルミニウム酸化物の粒子表面と電解液が反応することによる抵抗上昇を抑制でき、また、HF等のイオン
炭素被覆アルミニウム酸化物の体積平均粒子径(D50)は特に制限されず、最終的な所望の大きさに合わせて選択できる。例えば、0.1μm〜50μmとすることができ、0.5μm〜10μmであることが好ましく、0.5μm以上10μm未満であることがより好ましい。炭素被覆アルミニウム酸化物の体積平均粒子径(D50)が0.1μm以上であると、正極合材の作製の際のスラリー粘度の上昇が抑制され、作業性が良好に維持される傾向にある。炭素被覆アルミニウム酸化物の体積平均粒子径(D50)が50μm以下であると、正極合材の作製(塗工)の際のスジの発生が抑制される傾向にある。
炭素被覆アルミニウム酸化物の体積平均粒子径(D50)は、フッ化水素、金属イオン等の吸着能の向上の観点からは8μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが更に好ましい。
【0043】
炭素被覆アルミニウム酸化物の体積平均粒子径は、レーザー回折法を用いて測定される。レーザー回折法は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD3000J、株式会社島津製作所)を用いて測定できる。具体的には、炭素被覆アルミニウム酸化物を、水等の分散媒に分散させて分散液を調製する。この分散液について、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50%となる粒子径(D50)を体積平均粒子径として求める。
【0044】
炭素被覆アルミニウム酸化物の含有量は、例えば、正極合材の全量に対して0.1質量%以上10質量%以下とすることができ、0.1質量%以上7質量%以下であることが好ましい。電池密度向上の観点からは、炭素被覆アルミニウム酸化物の含有量は、正極合材の全量に対して0.1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
(導電材)
正極は、電池性能をより向上できる観点から、導電材を含むことが好ましい。前記導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛、繊維状黒鉛等の黒鉛(グラファイト)及びアセチレンブラック等のカーボンブラックが挙げられる。導電材はカーボンブラックを含むことが好ましく、アセチレンブラックを含むことがより好ましい。
【0046】
前記導電材としてカーボンブラックを用いる場合は、平均粒径が20nm以上100nm以下の粒子が好ましい。ここで粒子とは、例えば、粒状、フレーク状、球状、柱状、不規則形状などが挙げられる。前記「粒状」とは、不規則形状のものではなくほぼ等しい寸法をもつ形状である(JIS Z2500:2000)。前記フレーク状(片状)とは、板のような形状であり(JIS Z2500:2000)、鱗のように薄い板状であることから鱗片状とも称される。本実施形態においては、SEM観察の結果から解析を行い、アスペクト比(粒子径a/平均厚さt)が2〜100の範囲である場合を片状とする。ここでいう粒子径aは、片状の粒子を平面視したときの面積Sの平方根として定義するものとし、これを導電材の粒径とする。前記「球状」とは、ほぼ球に近い形状である(JIS Z2500:2000参照)。また、形状は必ずしも真球状である必要はなく、粒子の長径(DL)と短径(DS)との比(DL)/(DS)(球状係数あるいは真球度と言うことがある)が1.0〜1.2の範囲にあるものとし、粒径とは長径(DL)を指すものとする。前記柱状としては、略円柱、略多角柱等が挙げられる。柱状の粒子の粒径とは、柱の高さを指すものとする。
【0047】
なお、導電材の平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍で撮影した画像内の粒子像の全てについて測定した粒子径の算術平均値である。
【0048】
導電材としてカーボンブラックを用いる場合、正極合材の分散性及び電池の入出力特性により優れる観点からは、カーボンブラックの平均粒径は、20nm以上100nm以下であることが好ましく、30nm以上80nm以下であることがより好ましく、40nm以上60nm以下であることが更に好ましい。
【0049】
導電材として黒鉛を用いる場合、黒鉛の平均粒径は1μm以上10μm以下であることが好ましい。黒鉛は、X線広角回折法における炭素網面層間(d002)が、0.3354nm以上0.337nm以下であることが好ましい。
【0050】
導電材としてカーボンブラックと黒鉛の両方を用いる場合、カーボンブラックと黒鉛の割合は特に制限されない。電池の充放電特性の観点からは、例えば、カーボンブラックをA1、黒鉛をA2とすると、その質量比(A1/(A1+A2))は0.1以上0.9以下であることが好ましく、0.4以上0.85以下であることがより好ましい。
【0051】
導電材を用いる場合の含有量は、正極合材の全量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい、導電材の含有量の上限は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、電池容量及び入出力特性に優れたものとなる。
【0052】
さらに、前記導電材としてカーボンブラックを用いる場合の含有量は、導電性と高容量化の観点から、正極合材全量に対して、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、電池容量及び入出力特性に優れたものとなる。
【0053】
(結着材)
正極合材は、正極合材と集電体との間の接着性及び正極活物質同士の接着性を得る観点から、結着材を含むことが好ましい。結着材の種類は特に限定されない。例えば、塗布法により正極合材を形成する場合には、分散溶媒に対する溶解性及び分散性が良好な材料を選択することが好ましい。
結着材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物などが挙げられる。結着材は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。正極の安定性の観点からは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系高分子を用いることが好ましい。
【0054】
正極合材が結着材を含む場合、その含有量は、正極合材の全量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましい。また、正極合材の全量に対して50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。結着材の含有量を上記範囲とすることで、サイクル特性等の電池性能をより良好なものとすることができる。
【0055】
集電体上に正極合材を形成する方法は特に制限されず、乾式法、湿式法等が挙げられる。乾式法とは、正極合材の材料を乾式で混合してシート状にし、これを集電体に圧着する方法である。湿式法とは、正極合材の材料を分散溶媒に溶解又は分散させてスラリーとし、これを集電体に塗布し、乾燥する方法である。
【0056】
スラリーを形成するための分散溶媒としては、正極合材に含まれる材料を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のいずれを用いてもよい。水系溶媒の例としては、水、アルコールと水との混合溶媒等が挙げられ、有機系溶媒の例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。特に水系溶媒を用いる場合、増粘材を用いることが好ましい。分散溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
増粘材は特に制限されない。具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩が挙げられる。増粘材は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0058】
集電体上に形成された正極合材は、正極活物質の充填密度を向上させるため、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。
【0059】
正極用の集電体の材質は特に制限されない。例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料、及びカーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料が好ましく、アルミニウムがより好ましい。
【0060】
集電体の形状は特に制限されない。例えば、金属材料としては、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。炭素質材料としては、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。中でも、金属薄膜を用いることが好ましい。なお、薄膜はメッシュ状に形成してもよい。
集電体の厚さは特に制限されないが、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが更に好ましい。また、集電体の厚さは1mm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。集電体の厚さが1μm以上であると充分な強度が得られる傾向にあり、1mm以下であると可とう性と加工性に優れる傾向にある。
【0061】
正極合材は、密度が3.0g/cm以上4.0g/cm以下で、集電体への片面塗布量が100g/m以上300g/m以下であることが好ましい。正極合材の密度が上記範囲内であると、入出力特性をより向上することができる。このような観点から、正極合材の正極集電体への片面塗布量は、150g/m以上250g/m以下であることがより好ましく、185g/m以上220g/m以下であることが更に好ましい。
【0062】
2.負極
本実施の形態の負極(負極板)は、集電体と、その上に形成された負極合材と、を含む。負極合材は、集電体の上部に設けられ、少なくとも電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含む層である。負極合材は、集電体の片面のみに形成されていても、両面に形成されていてもよい。負極合材は、必要に応じて導電材、結着材、増粘材等を含んでもよい。
【0063】
(負極活物質)
負極活物質としては、炭素質材料、酸化錫、酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体、リチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、Sn、Si等のリチウムと合金形成可能な金属などが挙げられる。これらの負極活物質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、炭素質材料又はリチウム複合酸化物が安全性の観点から好ましい。
【0064】
金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵、放出可能なものであれば特に制限はないが、Ti(チタン)及びLi(リチウム)の少なくとも一方を含有するものが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
【0065】
炭素質材料としては、非晶質炭素、天然黒鉛、天然黒鉛に乾式のCVD(Chemical Vapor Deposition)法又は湿式のスプレイ法で形成される被膜を形成した複合炭素質材料、エポキシ、フェノール等の樹脂原料又は石油、石炭等から得られるピッチ系材料を焼成して得られる人造黒鉛、非晶質炭素材料などが挙げられる。
【0066】
その他の負極活物質としては、リチウムと化合物を形成することでリチウムを吸蔵放出できるリチウム金属、及びリチウムと化合物を形成し、結晶間隙に挿入されることでリチウムを吸蔵放出できる第14族元素(珪素、ゲルマニウム、錫等)の酸化物又は窒化物が挙げられる。
【0067】
特に、炭素質材料は、導電性が高く、低温特性及びサイクル安定性の面から負極活物質として優れている。炭素質材料の中では、炭素網面層間(d002)の広い材料(非晶質炭素)が、高入出力特性の観点から好ましい。電池特性の観点からは、炭素網面層間(d002)が0.39nm以下の炭素質材料が好ましい。炭素網面層間(d002)の広い材料(非晶質炭素)としては、ハードカーボンとソフトカーボンがある。サイクル特性の観点からはソフトカーボンが好ましい。ソフトカーボンは、X線広角回折法における炭素網面層間(d002)が、0.34nm以上0.36nm以下であることが好ましく、0.341nm以上0.355nm以下であることがより好ましく、0.342nm以上0.35nm以下であることが更に好ましい。
【0068】
また、高容量化の観点からは、黒鉛が好ましい。黒鉛は、X線広角回折法における炭素網面層間(d002)が0.34nm未満であることが好ましく、0.3354nm以上0.337nm以下であることがより好ましい。
このような炭素質材料を、擬似異方性炭素と称する場合がある。さらに、負極活物質として、黒鉛質、非晶質、活性炭等の導電性の高い炭素質材料を混合して用いてもよい。
【0069】
(導電材)
負極は導電材を含んでもよい。例えば、負極活物質として用いる第1の炭素質材料とは異なる性質の第2の炭素質材料を導電材として含んでもよい。前記性質とは、X線回折パラメータ、メジアン径、アスペクト比、BET比表面積、配向比、ラマンR値、タップ密度、真密度、細孔分布、円形度、灰分量等が挙げられ、これらから選択される一つ以上の特性が第1の炭素質材料と異なる炭素質材料を導電材として用いることができる。
【0070】
導電材としては、黒鉛質、非晶質、活性炭等の導電性の高い炭素質材料を用いることができる。具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等を用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このように、第2炭素質材料(導電材)を添加することにより、電極の抵抗を低減するなどの効果を奏する。
【0071】
負極合材が導電材を含む場合、負極合材の質量に対する導電材の含有量の範囲は次のとおりである。範囲の下限は、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、上限は、45質量%以下、好ましくは40質量%以下である。導電材の含有量が1質量%以上であると導電性の向上効果が得られやすい傾向にあり、45質量%以下であると初期不可逆容量の増大が抑制される傾向にある。
【0072】
(結着材)
負極合材は、結着材を含むことが好ましい。結着材の種類は特に制限されない。例えば、非水系電解液及び電極の形成の際に用いる分散溶媒に対して安定な材料から選択できる。
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、エチレン−プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
負極合材が結着材を含む場合、その含有量は、負極合材の全量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましい。また、負極合材の全量に対して20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、8質量%以下であることが特に好ましい。
【0074】
結着材の含有量が20質量%以下であると、電池容量に寄与しない結着材の割合が抑制されて電池容量の低下が抑制される傾向にある。また、0.1質量%以上であると、負極合材の強度の低下が抑制される傾向にある。
【0075】
結着材として、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分として用いる場合、その含有量は、負極合材の全量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましい。また、負極合材の全量に対して5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましい。
【0076】
結着材として、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分として用いる場合、その含有量は、負極合材の全量に対して1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましい。また、負極合材の全量に対して15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることが更に好ましい。
【0077】
集電体上に負極合材を形成する方法は特に制限されず、正極合材を形成する方法と同様に乾式法、湿式法等が挙げられる。
【0078】
負極合材を湿式法で形成する場合、スラリーを形成するための分散溶媒及び増粘材は特に制限されず、正極合材に使用可能な分散溶媒及び増粘材として例示したものから選択できる。
【0079】
増粘材を用いる場合、その含有量は、負極合材の全量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましい。また、負極合材の全量に対して5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましい。
【0080】
増粘材の含有量が0.1質量%以上であると、スラリーの塗布性が良好に維持される傾向にある。また、5質量%以上であると、負極合材に占める負極活物質の割合が抑制され、電池容量の低下、負極活物質間の抵抗の上昇等が抑制される傾向にある。
【0081】
(集電体)
負極用の集電体の材質は特に制限されない。例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも、加工のし易さとコストの観点からは、銅が好ましい。
【0082】
集電体の形状は特に制限されない。例えば、金属箔(金属薄膜)、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、金属箔が好ましい。例えば、銅箔には、圧延法により形成された圧延銅箔と、電解法により形成された電解銅箔とがあり、どちらも集電体として好適である。
【0083】
集電体の厚さは特に制限されない。集電体が銅製でかつ厚さが25μm未満である場合は、純銅よりも強度に優れる銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることが、集電体の強度向上の観点から好ましい。
【0084】
3.電解液
本実施の形態の電解液は、電解質としてのリチウム塩が非水系溶媒に溶解したものであり、リチウム塩はヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を含む。電解液は、必要に応じて、添加材等を含んでもよい。
【0085】
電解液は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)以外のリチウム塩を更に含んでもよい。ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)以外のリチウム塩としては、LiBF、LiAsF、LiSbF等の無機フッ化物塩;LiClO、LiBrO、LiIO等の過ハロゲン酸塩;LiAlCl等の無機塩化物塩;LiCFSO等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩;LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩;LiC(CFSO等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩;Li[PF(CFCFCF)]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF)]、Li[PF(CFCFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF]等のフルオロアルキルフッ化リン酸塩;リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等の含ジカルボン酸錯体リチウム塩などが挙げられる。
【0086】
電解液がヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)以外のリチウム塩を含む場合、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)の含有量は、電池性能の観点から、リチウム塩全量を基準として、10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0087】
電解液中のリチウム塩(電解質)の濃度は特に制限されない。例えば、0.5mol/L以上であってよく、好ましくは0.6mol/L以上、より好ましくは0.7mol/L以上である。また、濃度の上限は、2mol/L以下であってよく、好ましくは1.8mol/L以下、より好ましくは1.7mol/L以下である。リチウム塩(電解質)の濃度が0.5mol/L以上であると、充分な電気伝導率が得られる傾向にある。また、リチウム塩(電解質)の濃度が2mol/L以下であると、粘度が上昇して電気伝導度が低下するのが抑制され、リチウムイオン二次電池の性能の低下が抑制される傾向にある。
【0088】
非水系溶媒の種類は、特に制限されない。例えば、環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状エステル、環状エーテル及び鎖状エーテルが挙げられる。これらの非水系溶媒は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0089】
環状カーボネートとしては、環状カーボネートを構成するアルキレン基の炭素数が2〜6であるものが好ましく、2〜4であるものがより好ましい。具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートが挙げられ、中でも、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが好ましい。環状カーボネートは、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等の、分子内に二重結合を有する環状カーボネート又はハロゲン原子を含む環状カーボネートであってもよい。負極活物質として炭素材料を用いる場合は、サイクル特性の観点から、ビニレンカーボネートを含むことが好ましい。
【0090】
鎖状カーボネートとしては、ジアルキルカーボネートが好ましく、2つのアルキル基の炭素数が、それぞれ独立に1〜5であるものが好ましく、1〜4であるものがより好ましい。具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート等の対称鎖状カーボネート類、メチルエチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート等の非対称鎖状カーボネート類などが挙げられる。中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びメチルエチルカーボネートが好ましい。
【0091】
鎖状エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等が挙げられる。中でも、低温特性改善の観点から酢酸メチルが好ましい。
【0092】
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。中でも、入出力特性改善の観点からテトラヒドロフランが好ましい。
【0093】
鎖状エーテルとしては、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等が挙げられる。
【0094】
非水系溶媒は1種を単独で用いても、2種類以上を併用してもよいが、2種以上を併用することが好ましい。例えば、環状カーボネート等の高誘電率の溶媒と、鎖状カーボネート、鎖状エステル等の低粘度の溶媒とを併用することが好ましい。
好ましい組み合わせの一つは、環状カーボネートと鎖状カーボネートを主体とする組み合わせである。中でも、非水系溶媒の全体に占める環状カーボネートと鎖状カーボネートの合計が、80容量%以上、好ましくは85容量%以上、より好ましくは90容量%以上であり、かつ環状カーボネートと鎖状カーボネートの合計に対する環状カーボネートの容量が次の範囲であるものが好ましい。環状カーボネートの容量の下限は、5容量%以上、好ましくは10容量%以上、より好ましくは15容量%以上であり、上限は、50容量%以下、好ましくは35容量%以下、より好ましくは30容量%以下である。このような非水系溶媒の組み合わせを用いることで、電池のサイクル特性及び保存特性が向上する傾向にある。
【0095】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの好ましい組み合わせの具体例としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとメチルエチルカーボネート等が挙げられる。
【0096】
これらの組み合わせの中で、鎖状カーボネートとして対称鎖状カーボネートと非対称鎖状カーボネートとを含有するものが好ましい。具体例としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとメチルエチルカーボネートの組み合わせが挙げられる。
エチレンカーボネートと対称鎖状カーボネートと非対称鎖状カーボネートとを組み合わせることにより、サイクル特性及び入出力特性を向上させることができる。中でも、非対称鎖状カーボネート類がメチルエチルカーボネートであるものが好ましく、また、ジアルキルカーボネートを構成するアルキル基の炭素数が1〜2であるものが好ましい。
【0097】
添加材は、リチウムイオン二次電池の非水系電解液用の添加材であれば特に制限されない。例えば、窒素及び硫黄の少なくとも一方を含有する複素環化合物、環状カルボン酸エステル、フッ素含有環状カーボネート、その他の分子内に不飽和結合を有する化合物が挙げられる。
また、上記添加材以外に、求められる機能に応じて過充電防止材、負極皮膜形成材、正極保護材、高入出力材等の他の添加材を用いてもよい。
【0098】
4.セパレータ
セパレータは、正極及び負極間を電子的には絶縁しつつもイオン透過性を有し、かつ、正極側における酸化性及び負極側における還元性に対する耐性を備えるものであれば特に制限はない。このような特性を満たすセパレータの材料(材質)としては、樹脂、無機物、ガラス繊維等が用いられる。
【0099】
樹脂としては、オレフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリイミド、ナイロン等が用いられる。具体的には、非水系電解液に対して安定で、保液性の優れた材料の中から選ぶのが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート、不織布等を用いることが好ましい。
【0100】
無機物としては、アルミナ、二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミニウム、窒化珪素等の窒化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩などが用いられる。例えば、繊維形状又は粒子形状の上記無機物を、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状の基材に付着させたものをセパレータとして用いることができる。薄膜形状の基材としては、孔径が0.01μm〜1μm、厚さが5μm〜50μmのものが好適に用いられる。また、例えば、繊維形状又は粒子形状の上記無機物を、樹脂等の結着材を用いて複合多孔層としたものをセパレータとして用いることができる。さらに、この複合多孔層を、正極又は負極の表面に形成し、セパレータとしてもよい。例えば、90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着材として結着させた複合多孔層を、正極の表面に形成してもよい。
【0101】
5.その他の構成部材
リチウムイオン二次電池のその他の構成部材として、開裂弁を設けてもよい。開裂弁が開放することで、電池内部の圧力上昇を抑制でき、安全性を向上させることができる。
【0102】
また、温度上昇に伴い不活性ガス(二酸化炭素等)を放出する構成部を設けてもよい。このような構成部を設けることで、電池内部の温度が上昇した場合に、不活性ガスの発生により速やかに開裂弁を開けることができ、安全性を向上させることができる。上記構成部に用いられる材料としては、炭酸リチウム、ポリアルキレンカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0103】
(リチウムイオン二次電池)
まず、本発明をラミネート型のリチウムイオン二次電池に適用した実施の形態について説明する。
ラミネート型のリチウムイオン二次電池は、例えば、次のようにして作製できる。まず、正極と負極を角形に切断し、それぞれの電極にタブを溶接し正負極端子を作製する。正極、絶縁層及び負極をこの順番に積層した積層体を作製し、その状態でアルミニウム製のラミネートパック内に収容し、正負極端子をアルミラミネートパックの外に出し密封する。次いで、非水電解質をアルミラミネートパック内に注液し、アルミラミネートパックの開口部を密封する。これにより、リチウムイオン二次電池が得られる。
【0104】
次に、図面を参照して、本発明を18650タイプの円柱状リチウムイオン二次電池に適用した実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、ニッケルメッキが施されたスチール製で有底円筒状の電池容器6を有している。電池容器6には、帯状の正極板2及び負極板3がセパレータ4を介して断面渦巻状に捲回された電極群5が収容されている。電極群5は、正極板2及び負極板3がポリエチレン製多孔質シートのセパレータ4を介して断面渦巻状に捲回されている。セパレータ4は、例えば、幅が58mm、厚さが30μmに設定される。電極群5の上端面には、一端部を正極板2に固定されたアルミニウム製でリボン状の正極タブ端子が導出されている。正極タブ端子の他端部は、電極群5の上側に配置され正極外部端子となる円盤状の電池蓋の下面に超音波溶接で接合されている。一方、電極群5の下端面には、一端部を負極板3に固定された銅製でリボン状の負極タブ端子が導出されている。負極タブ端子の他端部は、電池容器6の内底部に抵抗溶接で接合されている。従って、正極タブ端子及び負極タブ端子は、それぞれ電極群5の両端面の互いに反対側に導出されている。なお、電極群5の外周面全周には、図示を省略した絶縁被覆が施されている。電池蓋は、絶縁性の樹脂製ガスケットを介して電池容器6の上部にカシメ固定されている。このため、リチウムイオン二次電池1の内部は密封されている。また、電池容器6内には、図示しない非水電解液が注液されている。
【0105】
本実施形態において、負極と正極の容量比(負極容量/正極容量)は、安全性とエネルギー密度の観点から1.03〜1.8であることが好ましく、1.05〜1.4であることがより好ましい。
ここで、負極容量とは、[負極の放電容量]を示し、正極容量とは、[正極の初回充電容量−負極又は正極のどちらか大きい方の不可逆容量]を示す。ここで、[負極の放電容量]とは、負極活物質に挿入されているリチウムイオンが脱離されるときに充放電装置で算出されるものと定義する。また、[正極の初回充電容量]とは、正極活物質からリチウムイオンが脱離されるときに充放電装置で算出されるものと定義する。
負極と正極の容量比は、例えば、「リチウムイオン二次電池の放電容量/負極の放電容量」からも算出することができる。前記リチウムイオン二次電池の放電容量は、例えば、4.35V、0.1C〜0.5C、終止時間を2〜15時間とする定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、0.1C〜0.5Cで2.5Vまで定電流(CC)放電したときの条件で測定できる。前記負極の放電容量は、前記リチウムイオン二次電池の放電容量を測定した負極を所定の面積に切断し、対極としてリチウム金属を用い、電解液を含浸させたセパレータを介して単極セルを作製し、0V、0.1C〜0.5C、終止電流0.01Cで定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、0.1C〜0.5C、で1.5Vまで定電流(CC)放電したときの条件で所定面積当たりの放電容量を測定し、これを前記リチウムイオン二次電池の負極として用いた総面積に換算することで算出できる。この単極セルにおいて、負極活物質にリチウムイオンが挿入される方向を充電、負極活物質に挿入されているリチウムイオンが脱離する方向を放電、と定義する。なお、Cは“電流値(A)/電池の放電容量(Ah)”を意味する。
【実施例】
【0106】
以下、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0107】
[製造例1]
<アルミニウム酸化物の作製>
濃度:700mmol/Lの塩化アルミニウム水溶液(500mL)に、濃度:350mmol/Lのオルトケイ酸ナトリウム水溶液(500mL)を加え、30分間撹拌した。この溶液に、濃度:1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を330mL加え、pHを6.1に調整した。
pHを調整した溶液を30分間撹拌した後、遠心分離装置(株式会社トミー精工製:Suprema23及びスタンダードロータNA−16)を用い、回転速度:3,000min―1で、5分間の遠心分離を行った。遠心分離後、上澄み溶液を排出し、ゲル状沈殿物を純水に再分散させ、遠心分離前の容積に戻した。このような遠心分離による脱塩処理を4回行った。
【0108】
脱塩処理4回目の上澄み排出後に得たゲル状沈殿物に、濃度:1mol/Lの塩酸を135mL加えてpHを3.5に調整し、30分間撹拌した。次に、この溶液を乾燥器に入れ、98℃で48時間(2日間)加熱した。加熱後溶液(塩濃度47g/L)に、濃度:1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を188mL添加し、pHを9.1に調整した。pH調整を行うことにより溶液中の塩を凝集させ、上記同様の遠心分離によってこの凝集体を沈殿させ、次いで上澄み液を排出した。上澄み液を排出した後の沈殿物に純水を添加して遠心分離前の容積に戻すという脱塩処理を4回行った。脱塩処理4回目の上澄み排出後に得たゲル状沈殿物を、60℃で16時間乾燥して30gの粒子塊を回収した。その粒子塊をジェットミルで粉砕することで、粒子状のアルミニウム酸化物を作製した。
【0109】
<炭素被覆アルミニウム酸化物の作製>
上記のアルミニウム酸化物とポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業株式会社)とを100:70(アルミニウム酸化物:ポリビニルアルコール粉末)の質量比で混合し、窒素雰囲気下、850℃で1時間焼成して、粒子状の炭素被覆アルミニウム酸化物を作製した。
【0110】
[製造例2]
<アルミニウム酸化物の作製>
Al濃度:1mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液(800mL)に、Si濃度:2mol/Lの水ガラス(珪酸ソーダ3号、NaO・nSiO・mHO)(200mL)を加え、30分間撹拌した。この溶液に、濃度:1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を1900mL加え、pHを7に調整した。pH調整した溶液を30分間撹拌した後、加圧ろ過により脱塩を行った。脱塩処理後の沈殿物に、濃度:1mol/Lの硫酸を90mL加えてpHを4に調整し、30分間撹拌した。次に、この溶液を乾燥器に入れ、98℃で48時間(2日間)加熱した。加熱後の溶液に、濃度:1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を330mL添加し、pHを9に調整した。pH調整を行うことにより溶液中の塩を凝集させ、上記と同様の加圧ろ過によってこの凝集体を沈殿させた。次いで、上澄み液を排出して脱塩を行った。脱塩処理後に得た沈殿物を、110℃で16時間乾燥して粒子塊を回収した。その粒子塊をジェットミルで粉砕することで、粒子状のアルミニウム酸化物を得た。
【0111】
<炭素被覆アルミニウム酸化物の作製>
上記製造例1に記載と同様の工程で、粒子状の炭素被覆アルミニウム酸化物を作製した。
【0112】
[製造例3]
<アルミニウム酸化物の作製>
Al濃度:1mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液(500mL)に、Si濃度:2mol/Lの水ガラス(珪酸ソーダ3号、NaO・nSiO・mHO)(500mL)を加え、30分間撹拌した。この溶液に、濃度:1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液890mLを加え、pHを7に調整した。pH調整した溶液を30分間撹拌した後、加圧ろ過により脱塩を行った。脱塩処理後の沈殿物に、濃度:1mol/Lの硫酸100mLを加えてpHを4に調整し、30分間撹拌した。次に、この溶液を乾燥器に入れ、98℃で48時間(2日間)加熱した。加熱後の溶液に、濃度:1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液235mLを添加し、pHを9に調整した。pH調整を行うことにより溶液中の塩を凝集させ、上記同様の加圧ろ過によってこの凝集体を沈殿させ、次いで上澄み液を排出して脱塩を行った。脱塩処理後に得た沈殿物を、110℃で16時間乾燥して粒子塊を回収した。その粒子塊をジェットミルで粉砕することで、粒子状のアルミニウム酸化物を作製した。
【0113】
<炭素被覆アルミニウム酸化物の作製>
上記製造例1に記載と同様の工程で、粒子状の炭素被覆アルミニウム酸化物を作製した。
【0114】
[製造例4]
核材には市販のサポナイト(商品名:スメクトンSA(クニミネ工業株式会社))を用いた。前記サポナイトをジェットミルで粉砕することで、粒子状のアルミニウム酸化物を作製した。
【0115】
<炭素被覆アルミニウム酸化物の作製>
上記製造例1に記載と同様の工程で、粒子状の炭素被覆アルミニウム酸化物を作製した。
【0116】
(実施例1)
[正極板の作製]
正極板の作製を以下のように行った。正極活物質であるコバルト酸リチウム(94質量%)に、導電材として繊維状の黒鉛(1質量%)及びアセチレンブラック(AB)(1質量%)と、製造例1で作製した炭素被覆アルミニウム酸化物(1質量%)と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(3質量%)とを順次添加し、混合することにより正極材料の混合物を得た。炭素被覆アルミニウム酸化物の物性及び正極の組成を表1に示す。尚、表1中、導電材は、繊維状の黒鉛(1質量%)及びアセチレンブラック(1質量%)の合計量を記載した。
さらに上記混合物に対し、分散溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加し、混練することによりスラリーを形成した。このスラリーを正極用の集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔に、厚さが実質的に均等かつ均質になるように塗布した。その後、乾燥処理を施し、所定密度までプレスにより圧密化した。正極合材密度は3.6g/cmとし、正極合材の片面塗布量を202g/mとした。
【0117】
[負極板の作製]
負極板の作製を以下のように行った。負極活物質として平均粒径22μmの人造黒鉛を用いた。この負極活物質に結着材としてSBR(スチレン・ブタジエンゴム)、増粘材としてカルボキシメチルセルロース(商品名:CMC#2200、ダイセルファインケム株式会社製)を添加した。これらの質量比は、負極活物質:結着材:増粘材=98:1:1とした。これに分散溶媒である水を添加し、混練することによりスラリーを形成した。このスラリーを負極用の集電体である厚さ10μmの圧延銅箔の両面に、厚さが実質的に均等かつ均質になるように所定量を塗布した。負極合材密度は1.65g/cmとし、負極合材の片面塗布量113g/mとした。
【0118】
[電池の作製]
13.5cmの角形に切断した正極電極をポリエチレン製多孔質シートのセパレータ(商品名:ハイポア、旭化成株式会社製、厚さが30μm、「ハイポア」は登録商標)で挟み、さらに14.3cmの角形に切断した負極を重ね合わせて積層体を作製した。この積層体をアルミニウムのラミネート容器(商品名:アルミラミネートフィルム、大日本印刷株式会社製)に入れ、電解液を1mL添加した。電解液としては、1mol/LのLiPFを含むエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=2.5/6/1.5の混合溶液(体積比)に、ビニレンカーボネートを混合溶液全量に対して1.0質量%添加したもの(宇部興産株式会社製)を使用した。次いで、アルミニウムのラミネート容器を熱溶着させ、ラミネート型の電極評価用電池を作製した。
【0119】
(実施例2)
実施例1に記載の正極活物質であるコバルト酸リチウムの割合を90質量%、製造例1で作製した炭素被覆アルミニウム酸化物を5質量%、正極合材の片面塗布量を211g/mに変更したこと以外は実施例1と同様のプロセスで正極及び電池を作製した。炭素被覆アルミニウム酸化物の物性及び電池の組成を表1に示す。
【0120】
(実施例3)
実施例1に記載の正極活物質であるコバルト酸リチウムの割合を90質量%、製造例1で作製した炭素被覆アルミニウム酸化物を5質量%、正極合材の片面塗布量を211g/mに変更し、非水電解質中のリチウム塩を0.6mol/LのLiPFと0.4mol/LのLiBFの組み合わせとしたこと以外は実施例1と同様のプロセスで正極及び電池を作製した。炭素被覆アルミニウム酸化物の物性及び電池の組成を表1に示す。
【0121】
(実施例4)
実施例1に記載の正極活物質であるコバルト酸リチウムの割合を94質量%、製造例2に記載の方法で作製した炭素被覆アルミニウム酸化物を1質量%、正極合材の片面塗布量を202g/mに変更したこと以外は実施例1の記載と同様のプロセスで正極及び電池を作製した。炭素被覆アルミニウム酸化物の物性及び電池の組成を表1に示す。
【0122】
(実施例5)
製造例3に記載の方法で作製した炭素被覆アルミニウム酸化物を用いたこと以外は、実施例4の記載と同様のプロセスで正極及び電池を作製した。炭素被覆アルミニウム酸化物の物性及び電池の組成を表1に示す。
【0123】
(実施例6)
製造例4に記載の方法で作製した炭素被覆アルミニウム酸化物を用いたこと以外は、実施例4の記載と同様のプロセスで正極及び電池を作製した。炭素被覆アルミニウム酸化物の物性及び電池の組成を表1に示す。
【0124】
(実施例7)
実施例1に記載の正極活物質であるコバルト酸リチウムの割合を94.9質量%、製造例1で作製した炭素被覆アルミニウム酸化物を0.1質量%、正極合材の片面塗布量を200g/mに変更したこと以外は実施例1と同様のプロセスで正極及び電池を作製した。炭素被覆アルミニウム酸化物の物性及び電池の組成を表1に示す。
【0125】
(実施例8)
実施例1に記載の正極活物質であるコバルト酸リチウムの割合を88質量%、製造例1で作製した炭素被覆アルミニウム酸化物を7質量%、正極合材の片面塗布量を214g/mに変更したこと以外は実施例1と同様のプロセスで正極及び電池を作製した。炭素被覆アルミニウム酸化物の物性及び電池の組成を表1に示す。
【0126】
(比較例1)
実施例1に記載の正極活物質であるコバルト酸リチウムの割合が95質量%で、製造例に記載するような炭素被覆アルミニウム酸化物を添加せず、正極合材の片面塗布量を200g/mに変更したこと以外は実施例1と同様のプロセスで正極及び電池を作製した。上記の電池の組成を表1に示す。
【0127】
(比較例2)
実施例1に記載の正極活物質であるコバルト酸リチウムの割合を90質量%、製造例1で作製した炭素被覆アルミニウム酸化物を5質量%、正極合材の片面塗布量を211g/mに変更し、非水電解質中のリチウム塩を1mol/LのLiBFとしたこと以外は実施例1と同様のプロセスで正極及び電池を作製した。炭素被覆アルミニウム酸化物の物性及び電池の組成を表1に示す。
【0128】
[粉体物性の評価]
<質量減少率測定>
炭素被覆アルミニウム酸化物の質量減少率は、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)TG−DTA−6200型(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社)を用いて測定、算出した。質量減少率は、乾燥空気流通下、10℃/分の昇温速度で、850℃20分保持で測定した。その際、質量減少率はTG−DTAで測定された25℃での質量(W0)、350℃での質量(W1)及び850℃での質量(W2)に対し、上記式(1)にてD1、及び上記式(2)にてD2を求めた値とした。結果を表1に示す。
【0129】
<比表面積測定>
炭素被覆アルミニウム酸化物のBET比表面積は、JIS Z 8830(2001年)に準じて窒素吸着能から測定した。評価装置としては、窒素吸着測定装置(AUTOSORB−1、QUANTACHROME社)を使用した。BET比表面積の測定を行う際には、試料表面及び構造中に吸着している水分がガス吸着能に影響を及ぼすことが想定されるため、まず、加熱による水分除去の前処理を行った。
【0130】
前記前処理では、0.05gの測定試料を投入した測定用セルを、真空ポンプで10Pa以下に減圧した後、110℃で加熱し、3時間以上保持した。その後、減圧した状態を保ったまま常温(25℃)まで自然冷却した。この前処理を行った後、評価温度を77Kとし、評価圧力範囲を相対圧(飽和蒸気圧に対する平衡圧力)にて1未満として測定を行った。結果を表1に示す。
【0131】
<平均粒径測定>
炭素被覆アルミニウム酸化物の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD3000J、株式会社島津製作所)を用いて測定した。具体的には、炭素被覆アルミニウム酸化物を、水等の分散媒に分散させて分散液を調製し、この分散液について、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50%となる粒子径(D50)を体積平均粒子径として求めた。結果を表1に示す。
【0132】
[電池容量の評価]
このように作製したリチウムイオン二次電池の電池特性を、以下に示す方法で評価した。まず、25℃の環境下において0.1Cの電流値で定電流充電を上限電圧4.35Vまで行い、続いて4.35Vで定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値0.01Cとした。その後、0.1Cの電流値で終止電圧2.5Vの定電流放電を行った。この充放電サイクルを3回繰り返した。電流値の単位として用いた「C」とは、「電流値(A)/電池容量(Ah)」を意味する。さらに、0.2Cの定電流充電を上限電圧4.35Vまで行い、続いて4.35Vで定電圧充電を行った(充電終止条件は、電流値0.02Cとした。)。その後、0.2Cの電流値で終止電圧2.5Vの定電流放電を行い、この放電時の容量を電池容量とした。
【0133】
[出力特性の評価]
出力特性は、以下のようにして算出した。
上記電池容量を測定した後、0.2Cの定電流充電を上限電圧4.35Vまで行い、続いて4.35Vで定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値0.02Cとした。その後、0.2Cの電流値で終止電圧2.5Vの定電流放電を行い、この放電時の容量を電流値0.2Cにおける放電容量とした。次に、0.2Cの定電流充電を上限電圧4.35Vまで行い、続いて4.35Vで定電圧充電を行った(充電終止条件は、電流値0.02Cとした。)。その後、3Cの電流値で終止電圧2.5Vの定電流放電を行い、この放電時の容量を電流値3Cにおける放電容量とし、以下の式により出力特性を算出した。
【0134】
出力特性(%)=(電流値3Cにおける放電容量/電流値0.2Cにおける放電容量)×100
【0135】
実施例1〜8及び比較例1、2に記載の正極を用いた電池の出力特性を表1に示す。
【0136】
[サイクル特性の評価]
上記に示す条件で出力特性を評価した後、充放電を繰り返すサイクル試験にてサイクル特性を評価した。充電パターンは、50℃の環境下でそれぞれのリチウム電池を1Cの電流値で定電流充電を上限電圧4.35Vまで行い、続いて4.35Vで定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値0.1Cとした。放電は、1Cで定電流放電を2.5Vまで行った。以下の式によりサイクル特性を算出した。試験結果を表1に示す。
【0137】
サイクル特性(%)=(電流値1Cにおける200サイクル後の放電容量/電流値1Cにおける1サイクル後の放電容量)×100
【0138】
実施例1〜8及び比較例1、2に記載の正極を用いた電池の出力特性を表1に示す。
【0139】
【表1】

【0140】
表1の結果に示されるように、製造例1で作製した炭素被覆アルミニウム酸化物を含有する実施例1〜3、7及び8では、比較例1と比較して出力特性及びサイクル特性が向上することが確認できる。これは、炭素被覆アルミニウム酸化物の導電性が高いため、出力特性が向上したと推定している。また、炭素被覆アルミニウム酸化物が電解液中のフッ化水素(HF)を吸着することによって抵抗成分となるフッ化リチウムの析出や、正極活物質の結晶構造変化を抑制できたためサイクル試験後の容量低下が抑制できたと推定している。又は、正極活物質から溶出したコバルト等の金属イオンを吸着し、負極上での金属析出を抑制することによってサイクル試験後の容量低下が抑制されたためと推定している。
【0141】
また、実施例3に示すように製造例1で作製した炭素被覆アルミニウム酸化物を含む正極と、LiPF及びLiBFを混合したリチウム塩を適用した系においては、比較例1と比較して出力特性はほぼ同等であるが、サイクル特性が大きく向上することが確認できる。これは、炭素被覆アルミニウム酸化物を含有することによって、フッ化水素やコバルト等の金属イオンを吸着したため、サイクル試験後の容量低下が抑制されたためと推定される。
【0142】
また、製造例1とは異なる製造法(製造例2〜4)で作製した炭素被覆アルミニウム酸化物を添加した実施例4〜6においても、比較例1と比較して同等以上の出力特性及びサイクル特性が向上することが確認できる。これも上記と同様の理由で容量低下が抑制されたためと推定される。
また、比較例2に示すようにリチウム塩にLiPFを含まない電池では、サイクル特性は良好であるが、出力特性の評価が低いことが確認できる。
【0143】
日本国特許出願第2014−254729号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
図1