特許第6245400号(P6245400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6245400
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】インプラント用アバットメント
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   A61C8/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-125412(P2017-125412)
(22)【出願日】2017年6月27日
【審査請求日】2017年6月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517044384
【氏名又は名称】株式会社E−Joint
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】藤川 知
(72)【発明者】
【氏名】夏堀 礼二
【審査官】 村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−527339(JP,A)
【文献】 特開2008−149121(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0206407(US,A1)
【文献】 特開2017−055983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補綴部材を固定する先端部(3)を有するインプラント用アバットメントであって,
前記先端部(3)は,
全体が補綴部材の内部に挿入される形状を有し,
前記補綴部材を支持するための中空の円錐台状又は中空の円柱状の胴体部(5)と,
前記胴体部(5)の上面の一部から上方に伸びる部分壁(7)と,を有し,
前記部分壁(7)は,
切欠きされた中空の円錐台状又は切欠きされた中空の円柱状の部分壁基部(9)と,
前記部分壁基部(9)の上部に,前記部分壁基部(9)と連続して存在し,上方に向かうにしたがって水平断面の断面積が小さくなる部分壁傾斜部(11)と,
を有する,
前記補綴部材の形状に対応した形状を有するアバットメント。
【請求項2】
請求項1に記載のアバットメントであって,
前記部分壁傾斜部(11)は,中心部に向けた突起を有する,アバットメント。
【請求項3】
請求項1に記載のアバットメントであって,
前記部分壁傾斜部(11)は,上方に向かうにしたがって一定の割合で中心角が小さくなる,アバットメント。
【請求項4】
請求項1に記載のアバットメントであって,
前記部分壁傾斜部(11)の高さが0.3mm以上1.5mm以下である,アバットメント。
【請求項5】
請求項1に記載のアバットメントであって,
前記部分壁傾斜部(11)は,両端部(13,15)に斜面が形成された傾斜領域(17)を有するアバットメント。
【請求項6】
請求項5に記載のアバットメントであって,
前記傾斜領域(17)の傾斜角が30度以上60度以下であり,
前記傾斜領域(17)の平均長さが0.3mm以上1.5mm以下である,アバットメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,インプラント用アバットメントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6080569号公報には,アバットメント及びインプラントが開示されている。特開2017−74311号公報には,インプラント用アバットメントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6080569号公報
【特許文献2】特開2017−74311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に従来のアバットメントは,使用時にアバットメントが回転するという問題があった。また,補綴部材に合わせてアバットメントを設計しても,アバットメントと補綴部材とがうまく適合しないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は,基本的には,アバットメントの被歯冠部分を円柱状や円錐台とするのではなく,胴体部と胴体部から延びる部分壁を有する形状とし,さらに部分壁を切欠きされた中空の円錐台状又は切欠きされた中空の円柱状の部分壁基部と,その上部に位置し上方に向かうほど断面積が小さくなる部分壁傾斜部と有することで,アバットメントが回転する事態を防止しつつ,補綴部材とうまく適合できるという知見に基づく。
【0006】
本発明は,補綴部材を固定する先端部3を有するインプラント用アバットメントに関する。そして先端部3は,
補綴部材を支持するための中空の円錐台状又は中空の円柱状の胴体部5と,
胴体部5の上面の一部から上方に伸びる部分壁7と,を有する。
また,部分壁7は,
切欠きされた中空の円錐台状又は切欠きされた中空の円柱状の部分壁基部9と,
上方に向かうにしたがって水平断面の断面積が小さくなる部分壁傾斜部11と,
を有する。
【0007】
このアバットメントは,部分壁傾斜部11が,上方に向かうにしたがって一定の割合で中心角が小さくなるものであってもよい。
【0008】
このアバットメントは,部分壁傾斜部11の高さが,0.3mm以上1.5mm以下であるものであってもよい。
【0009】
このアバットメントは,部分壁傾斜部11が,両端部13,15に斜面が形成された傾斜領域17を有するものであってもよい。そして,傾斜領域17の傾斜角が30度以上60度以下であり,傾斜領域17の平均長さが0.3mm以上1.5mm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は,胴体部と胴体部から延びる部分壁を有する形状とし,さらに部分壁を切欠きされた中空の円錐台状又は切欠きされた中空の円柱状の部分壁基部と,その上部に位置し上方に向かうほど断面積が小さくなる部分壁傾斜部と有することで,アバットメントが回転する事態を防止しつつ,補綴部材とうまく適合できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は,アバットメントの外観の例を示す概念図である。
図2図2(a)は,アバットメントの側面図及び断面図を示す概念図である。図2(b)は,先端部の先の部分を示す概念図である。
図3図3は,アバットメントの外観の例を示す概念図である。
図4図4(A)は,部分壁基部の断面図の例を示す概念図である。図4(B)は,部分壁傾斜部を上面から見た際の例を示す概念図である。
図5図5(a)及び図5(b)は,従来のアバットメントの外観の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0013】
本発明は,補綴部材を固定する先端部3を有するインプラント用アバットメントに関する。歯科インプラントは,顎骨に固定する人工歯根であるフィクスチャー,歯冠が被る支持台であるアバットメント,及びアバットメントに被った上部構造である歯冠とを有する。なおアバットメントには,人工歯根と一体のものや人工歯根とは別のものも存在する。本明細書では,これらを含めてアバットメントとよぶ。アバットメントの材料の例は,チタン,チタン合金及びジルコニアである。補綴部材の例は人工歯冠である。
【0014】
アバットメントは,通常,被歯冠部分,歯肉貫通部分,及び嵌合部を有する。図5(a)及び図5(b)は,従来のアバットメントの外観の例を示す概念図である。図1は,アバットメントの外観の例を示す概念図である。図2(a)は,アバットメントの側面図及び断面図を示す概念図である。図2(b)は,先端部の先の部分を示す概念図である。嵌合部は人工歯根と嵌合する部分である。歯肉貫通部分は,歯肉の歯肉貫通部に配置される部分である。被歯冠部分は,歯肉貫通部分と接続され歯冠を被る部位である。被歯冠部分の全部または一部が先端部3であってもよい。また,被歯冠部分及び歯肉貫通部分(またはその一部)が先端部3であってもよい。
【0015】
先端部3は,人工歯冠などの補綴部材の内部に挿入され,補綴部材を固定する。例えば,歯科用セメントを用いて補綴部材と先端部3とを固定してもよい。先端部3は,補綴部材を支持するためのものであり,胴体部5とその先に位置する部分壁7とを有する。先端部の全体構造の例は,切り欠きを有する中空の円錐台状又は中空の円柱状である。先端部の全体構造が略円錐台の場合,略円錐台形状を維持している部分が胴体部5である。一方,円錐台形状を切り欠くことにより形成された部位が部分壁7である。胴体部5及び部分壁7は,軸が共通していてもよい。また軸を中心として一定の半径をもって中抜きされていてもよい。
【0016】
胴体部5は,例えば,およそ中空の円錐台状又は中空の円柱状の形状を有する部位である。胴体部5の外周面には,円周に沿った溝,又はらせん状に形成された溝21を有するものが好ましい。この溝21にセメントが入り込むことで,人工歯冠と先端部3との結合が強固になる。溝の太さや深さは,胴体部5の形状に合わせて適宜調整すればよい。また溝の間隔も胴体部5の形状に合わせて適宜調整すればよい。溝の太さの例は0.1mm以上1mm以下であり,0.2mm以上0.8mm以下でもよい。溝の深さの例は0.1mm以上1mm以下であり,0.2mm以上0.8mm以下でもよい。溝のピッチの例は1mm以上10mm以下であり,2mm以上8mm以下でもよい。この溝は,部分壁7の外周にも連続して設けられてもよい。この溝を設けることで,補綴部材の空間部位とアバットメントの外周形状にいわゆるあそび(余裕)を設ける(つまりアバットメントを空間部位よりやや小さく設計する)必要がなくなるか,小さくする程度を軽減できるため,より安定性の高いアバットメントを得ることができる。
【0017】
部分壁7は,胴体部5の上面の一部から上方に伸びる部位である。また,部分壁7は,好ましくは,部分壁基部9と部分壁傾斜部11とを有する。部分壁傾斜部11は,通常部分壁基部9の上方に位置する。通常部分壁7の外周部分の一部又は全部は,胴体部5の外周部分の延長上にあってもよい。換言すると,部分壁7は,円柱状,円錐状,中空円柱状,又は中空円錐状の先端部3の一部(上方の一部)を切り欠くことにより形成された部分であってもよい。
【0018】
部分壁基部9の例は,切欠きされた中空の円錐台状又は切欠きされた中空の円柱状の部分壁である。部分壁基部9の例は,半円である。例えば胴体部5が中空の円柱状(断面が輪状)であれば,部分壁基部9は,断面が弧状の状態(胴体部分と同じ半径の弧)であってもよい。部分壁基部9は,通常,両端23,25がおよそ垂直に立ち上がり,断側面を形成していてもよい。その場合,弧の中心角の例は70°以上150°以下であり80°以上100°以下でも85°以上95°以下でも90°でもよい。先端部3の外径が略円錐台の場合,上方に進むにつれて半径が小さくなる。胴体分5及び部分壁7は,円錐台における上方に向かうにしたがって半径が小さくなる割合が維持されているものが好ましい。
【0019】
部分壁傾斜部11は,上方に向かうにしたがって水平断面の断面積が小さくなる部分壁である。このアバットメントは,部分壁傾斜部11が,上方に向かうにしたがって一定の割合で中心角が小さくなるものであってもよい。部分壁傾斜部11の両端部分に着目すると,この両端部分が坂になっているものであってもよい。その坂は横から見ると斜めのものであってもよいし,局面状のものであってもよい。設計方法に基づけばいわゆるR状でもよいしC面加工されたものであってもよい。部分壁傾斜部11は,部分壁基部9の両端23,25の上部から,部分壁傾斜部11の両端23,25の上部と連結する連結部位が存在し,この連結部位が上記のとおり坂状(傾斜状)になっていてもよいし,湾曲(例えば凸形状)となっていてもよい。部分壁傾斜部11の天面は,例えば,平坦であり,部分的な円の形状をしている。もっとも,部分壁傾斜部(11)は,中心部に向けた突起を有するものが好ましい。突起部は,時に部分壁傾斜部11の両端23,25付近に存在するものが好ましい。部分壁傾斜部11の天面の両端には,内部方向(中心方向)に向けた突起を有していることが好ましい。この突起の高さ(部分壁傾斜部の内壁から,突起の先端部までの距離)の例は,0.1mm以上3mm以下であり,0.2mm以上2mm以下でもよく,0.3mm以上1mm以下でもよい。この突起により,歯冠の安定性が高まることとなる。なお,この突起は,部分壁傾斜部11の天面の両端とともに,またはこれと別に,部分壁傾斜部11の両端の下部領域に存在してもよい。この場合,歯冠とアバットメントとを結合した後も,突起が維持されるので,歯冠の安定性がより高まることとなる。
【0020】
このアバットメントは,部分壁傾斜部11の高さが,0.3mm以上1.5mm以下(又は0.3mm以上1mm以下,又は0.3mm以上0.8mm以下)であるものであってもよい。
【0021】
このアバットメントは,部分壁傾斜部11が,両端部13,15に斜面が形成された傾斜領域17を有するものであってもよい。そして,傾斜領域17の傾斜角が30度以上60度以下であり,傾斜領域17の平均長さが0.3mm以上1.5mm以下(又は0.3mm以上1mm以下,又は0.3mm以上0.8mm以下)であってもよい。
【0022】
このアバットメントは,補綴部材の形状に基づいて設計されるアバットメントに比べて,部分壁傾斜部11に相当する部分だけ小さくするように設計することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は,インプラント用のアバットメントに関するので,歯科の分野において利用されうる。
【符号の説明】
【0024】
3 先端部
5 胴体部
7 部分壁
9 部分壁基部
11 部分壁傾斜部
【要約】
【解決課題】 補綴部材とうまく適合するアバットメントを提供する。
【解決手段】
補綴部材を支持するための中空の円錐台状又は中空の円柱状の胴体部5と,
胴体部5の上面の一部から上方に伸びる部分壁7と,を有する補綴部材を固定する先端部3を有するインプラント用アバットメントであって,部分壁7は,切欠きされた中空の円錐台状又は切欠きされた中空の円柱状の部分壁基部9と,上方に向かうにしたがって水平断面の断面積が小さくなる部分壁傾斜部11とを有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5