(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リセット信号の振幅は、前記クロック信号の振幅、前記クロック信号の連結端子と電気的に接続された容量A、及び前記クロック信号の連結端子以外に電気的に接続された容量Bによって設定される、
ことを特徴とした請求項1又は請求項2に記載の走査回路。
前記リセット信号の上位電圧を設定するためのトランジスタのゲートに容量Cの第1の電極が接続されていて、容量Cの第2の電極にクロック信号が接続されていることを特徴とした、
請求項1〜4のいずれかに記載の走査回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述の特許文献2、及び特許文献3をもってしても、単一導電性の薄膜トランジスタによる単位回路に適用するには、しきい値電圧の変動による回路の誤動作を回避するには至らない。
【0010】
発明者が行った実験によると、高温状態において、薄膜トランジスタに「プラスゲートストレス」をかけ、一定時間毎に当該薄膜トランジスタの特性を評価したところ、しきい値電圧の変動量は時間の経過と共に増大し、かつ、ゲート電圧に依存することがわかった。
図13は、3種類のゲート電圧(Va>Vb>Vc)について行った結果(a〜c)を模式的に示している。この結果は、50%、あるいは25%のデューティ駆動についても同等のしきい値電圧の変動量であった。
【0011】
従って、
図11に示した構成のように一定の外部電圧Vc1がゲートに印加されている状態、あるいは
図12に示した出力信号レベルの高電圧でのクロック信号がゲートに印加されている状態では、薄膜トランジスタのしきい値電圧の変動が大きくなる。しきい値変動が大きくなると、薄膜トランジスタのゲート、ソース、及びドレイン端子に所望の電圧が印加されたときの電流値が設計どおりとならなくなり、所望の動作が得られない不具合が発生してしまう。つまり、従来技術を用いた走査回路では、回路の誤動作が発生し、表示装置として適用することが不可能となる。
【0012】
本発明の目的は、回路を構成するトランジスタのしきい値電圧の変動を抑制した走査回路を提供することにある。また、その走査回路を具備した表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記問題を解決するため、本発明の走査回路は、単一導電性の薄膜トランジスタで構成され、クロック信号に同期して制御される単位回路が、複数配設されていて、単位回路が、少なくとも出力回路、リセット回路、及びリセット信号生成回路を具備し、出力回路は、出力端子に前記クロック信号を転送する回路要素と、出力端子を一定電圧に維持するための回路要素を具備し、リセット回路は、出力端子にクロック信号を転送する回路要素を停止させるための機能を有し、リセット信号生成回路は、リセット信号を生成する回路であって、リセット信号は、リセット回路を制御し、かつ、出力端子を一定電圧にするための回路要素を制御する信号であって、リセット信号の振幅は、クロック信号の振幅よりも小さいことを特徴としている(
図4a、
図5a)。
【0014】
また、本発明の走査回路の単位回路は、少なくとも出力回路、リセット回路、リセット信号生成回路、及びリセットキャンセル回路を具備し、出力回路は、出力端子に前記クロック信号を転送する回路要素と、出力端子を一定電圧に維持するための回路要素を具備し、リセット回路は、出力端子にクロック信号を転送する回路要素を停止させるための機能を有し、リセット信号生成回路は、リセット信号を生成する回路であって、リセット信号は、リセット回路を制御し、かつ、出力端子を一定電圧にするための回路要素を制御する信号であって、リセットキャンセル回路は、リセット回路と、出力端子を一定電圧にするための回路要素と、を共に停止させる機能を有し、リセット信号の振幅は、クロック信号の振幅よりも小さいことを特徴としている(
図4a)。
【0015】
また、本発明の走査回路のリセット信号の下位電圧から上位電圧への電位変動は、リセット信号生成回路内のトランジスタが、クロック信号に制御されてオン状態となることにより行われ、リセット信号の上位電圧から下位電圧への電位変動は、クロック信号が上位電圧から下位電圧への電位変動に応じてリセット信号生成回路内の容量により行われ、リセット信号の振幅は、クロック信号の振幅よりも小さいことを特徴としている(
図4a)。
【0016】
また、本発明の走査回路のリセット信号の振幅は、クロック信号の振幅、クロック信号に接続された容量A、及び前記クロック信号以外に接続された容量Bによって設定されることを特徴としている(
図5a)。
【0017】
また、本発明の走査回路を構成する単位回路において、クロック信号の振幅をV、容量Aの容量値をCa、及び容量Bの容量値をCbとしたとき、リセット信号の振幅が、(Ca/(Ca+Cb)×V)で概ね設定されることを特徴としている(
図5a)。
【0018】
また、本発明の走査回路のクロック信号の位相が、N相(Nは2以上の自然数)であり、リセット信号の位相もN相であることを特徴としている(
図5c)。
【0019】
さらに、本発明の走査回路のクロック信号の位相が、N相(Nは2以上の自然数)であり、リセット信号生成回路が、少なくともN個の回路要素で構成されていて、N個の回路要素が、互いに位相の異なるクロック信号に同期して制御されることを特徴としている(
図4d、
図4e)。
【0020】
加えて、本発明の走査回路のクロック信号の位相が、N相(Nは2以上の自然数)であり、リセット信号生成回路が、N個の回路要素で構成されていて、N個の回路要素が、少なくともクロック信号に制御されるスイッチと、容量Aと、容量Bで構成されていることを特徴としている(
図4e)。
【0021】
その他に、本発明の走査回路のクロック信号の振幅をV、容量Aの容量値をCa、及び容量Bの容量値をCbとしたとき、スイッチにより、リセット信号の上位電圧が設定され、クロック信号が上位電圧から下位電圧へ遷移することにより、リセット信号の上位電位から、(Ca/(Ca+Cb)×V)で概ね設定される電圧分だけ減少することにより、リセット信号の下位電圧が設定されることを特徴としている(
図7)。
【0022】
一方、本発明の走査回路のクロック信号の位相が、N相(Nは2以上の自然数)であり、リセット信号生成回路が、N個の回路要素で構成されていて、N個の回路要素が、少なくともリセット信号の上位電圧を、クロック信号の上位電圧以下の電圧に制限するためのクランプ回路と、容量Aと、容量Bで構成されていることを特徴としている(
図9)。
【0023】
また、本発明の走査回路のクロック信号の振幅をV、容量Aの容量値をCa、及び容量Bの容量値をCbとしたとき、クランプ回路により、リセット信号の上位電圧が設定され、クロック信号が上位電圧から下位電圧へ遷移することにより、リセット信号の上位電位から、(Ca/(Ca+Cb)×V)で概ね設定される電圧分だけ減少することにより、リセット信号の下位電圧が設定されることを特徴としている(
図9)。
【0024】
また、本発明の走査回路の出力回路が、クロック信号、第1のノード、及び出力信号と電気的に接続していて、リセット回路が、下位電源、リセット信号、第1のノード、及び隣接する単位回路の出力信号、あるいは外部から供給される制御信号と電気的に接続していて、リセット信号生成回路が、下位電源、リセット電源、クロック信号、及びリセット信号と電気的に接続されていることを特徴としている(
図4a)。
【0025】
また、本発明の走査回路の出力回路が、クロック信号、第1のノード、及び出力信号と電気的に接続していて、リセット回路が、下位電源、リセット信号、第1のノード、及び隣接する単位回路の出力信号、あるいは外部から供給される制御信号と電気的に接続していて、リセット信号生成回路が、下位電源、リセット電源、クロック信号、及びリセット信号と電気的に接続されていて、リセットキャンセル回路が、下位電源、第1のノード、及びリセット信号のうち、出力回路に接続されているクロック信号と位相が等しい前記リセット信号と電気的に接続されていることを特徴としている(
図4a)。
【0026】
また、本発明の走査回路のクロック信号の位相が、N相(Nは2以上の自然数)であり、出力回路が、クロック信号を転送するための転送用トランジスタと、第1の容量と、N個のリセット用トランジスタから構成されていて、リセット回路が、少なくとも2つのトランジスタで構成されていて、リセット信号生成回路が、少なくともN個の要素回路で構成されていて、要素回路は、少なくとも1つのトランジスタと第2の容量、及び第3の容量で構成されていることを特徴としている(
図4a)。
【0027】
また、本発明の走査回路の転送用トランジスタのゲートが、第1のノード、ドレインがクロック信号、ソースが出力信号にそれぞれ電気的に接続されていて、第1の容量は、第1のノード、及び出力信号に電気的に接続されていて、リセット用トランジスタのゲートは、いずれかのリセット信号、全てのソースが下位電源、全てのドレインが出力信号に電気的に接続されていて、第1のリセット回路の2つのトランジスタのうち、一方のトランジスタのゲートは、リセット信号のうち、出力回路のトランジスタのドレインに電気的に接続されているクロック信号と位相が等しいリセット信号、ソースは下位電源、ドレインが第1のノードに電気的に接続されていて、リセット信号生成回路の要素回路のトランジスタのゲートはクロック信号、ソースはリセット信号、ドレインはリセット電源に電気的に接続されていて、第1の容量は、クロック信号、及びリセット信号に電気的に接続されていて、第2の容量は、下位電源、あるいはその他の電気配線、及び前記リセット信号に電気的に接続されていることを特徴としている(
図4a)。
【0028】
また、本発明の走査回路の転送用トランジスタのゲートが、第1のノード、ドレインがクロック信号、ソースが出力信号にそれぞれ電気的に接続されていて、第1の容量は、第1のノード、及び出力信号に電気的に接続されていて、リセット用トランジスタのゲートは、いずれかのリセット信号、全てのソースが下位電源、全てのドレインが出力信号に電気的に接続されていて、第1のリセット回路の2つのトランジスタのうち、一方のトランジスタのゲートは、リセット信号のうち、出力回路のトランジスタのドレインに電気的に接続されているクロック信号と位相が等しいリセット信号、ソースは下位電源、ドレインが第1のノードに電気的に接続されていて、リセット信号生成回路の要素回路のトランジスタのソースは下位電源、ドレインがリセット信号、ゲートはリセット信号のうち、ドレインに接続されているリセット信号とは別のリセット信号が電気的に接続されていて、第1の容量は、クロック信号、及びリセット信号に電気的に接続されていて、第2の容量は、下位電源、あるいはその他の電気配線、及びリセット信号に電気的に接続されていることを特徴としている(
図7)。
【0029】
また、本発明の走査回路の転送用トランジスタのゲートが、第1のノード、ドレインがクロック信号、ソースが出力信号にそれぞれ電気的に接続されていて、第1の容量は、第1のノード、及び出力信号に電気的に接続されていて、リセット用トランジスタのゲートは、いずれかのリセット信号、全てのソースが下位電源、全てのドレインが出力信号に電気的に接続されていて、第1のリセット回路の2つのトランジスタのうち、一方のトランジスタのゲートは、リセット信号のうち、出力回路のトランジスタのドレインに電気的に接続されているクロック信号と位相が等しいリセット信号、ソースは下位電源、ドレインが第1のノードに電気的に接続されていて、リセット信号生成回路の要素回路のトランジスタのゲート、及びソースがリセット信号、ドレインがリセット電源に電気的に接続されていて、第1の容量は、クロック信号、及びリセット信号に電気的に接続されていて、第2の容量は、下位電源、あるいはその他の電気配線、及びリセット信号に電気的に接続されていてことを特徴としている(
図9)。
【0030】
また、本発明の走査回路におけるリセット信号の下位電圧は、クロック信号の下位電圧よりも低いことを特徴としている(
図5a)。
【0031】
また、本発明の走査回路を具備した表示装置が開示される(
図1、及び
図2)。
【発明の効果】
【0032】
本発明の効果は、走査回路を構成する単一導電性薄膜トランジスタのしきい値電圧の変動を抑制することにある。
その理由は、走査回路の構成要素である、単位回路内のリセット回路を構成するトランジスタのゲートに、低振幅のパルス信号を供給することができるためである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面に基づいて本発明に係る実施形態の走査回路、及び表示装置について説明する。
【0035】
[実施例1]
[構成の説明]
図を参照しながら本発明実施例1の構成について説明する。
【0036】
図1は、実施例1の表示装置の構成を示す斜視図、
図2は、実施例1の第1の基板の構成を示す斜視図、
図3a〜3cは、実施例1の走査回路の構成を示すブロック図、
図4a〜4eは、実施例1の単位回路の構成を示す回路図
をそれぞれ示す。
【0037】
図1より、実施例1の表示装置は、第1の基板1、第2の基板2、表示部3、駆動回路4、及び接続ケーブル10で概ね構成されている。
【0038】
図2より、実施例1の第1の基板1の構成は、駆動回路4、画素アレイ5、走査回路6、走査線7、及び接続ケーブル10で概ね構成されている。図示されていない外部接続機器から出力された信号が、接続ケーブル10を経由して駆動回路4へ入力され、また、駆動回路4から出力された信号は、制御信号線11を経由して走査回路6、あるいは画素アレイ5に供給される。走査回路6の出力信号は、走査線7を経由して画素アレイ5に出力される。画素アレイ5は、駆動回路4、及び走査回路6からそれぞれ出力された信号を受けて各画素を制御する。この制御により、
図1の表示部3より所望の映像を表示することが可能となる。
【0039】
図3a〜
図3cより、実施例1の走査回路6の構成として、3種類の構成例を挙げる。
【0040】
図3aより、単一導電性の薄膜トランジスタで構成される複数の単位回路8(UR(1)〜(3),・・・,UR(N−2)〜UR(N))が配設され、各々の単位回路8と走査線7(OUT(1)〜OUT(N))が接続されている。ここで、Nは2以上の自然数とし、画素アレイ5の縦方向の画素数によって確定される値である。制御信号線11を経由して制御信号が走査回路6に入力されると、各々の単位回路が制御され、走査線7に出力信号が供給される。走査回路6に入力される制御信号線11は、スタート信号ST、リセット電圧VR、最終段制御信号VO、下位電源VGL、及び2相のクロック信号CLK1、CLK2で構成されている。単位回路8は、複数の端子(IN1、IN2、VR、VGL、CLK(n)、CLK(n+1)、及びOUT)を有している。初段の単位回路8(UR(1))のIN1には、スタート信号STが接続される。また、2段目(UR(2))以降は、前段のOUTが接続される。また、CLK(n)、及びCLK(n+1)には、クロック信号CLK1、CLK2のいずれかが制御のために接続される。例えばUR(1)のCLK(n)にはCLK1が、CLK(n+1)にはCLK2がそれぞれ接続され、UR(2)のCLK(n)にはCLK2が、CLK(n+1)にはCLK1がそれぞれ接続される。UR(3)以降については、UR(1)とUR(2)の接続関係が繰り返される。OUTは、走査線7に接続されるとともに、前の段の単位回路8のIN2、及び次の段の単位回路8のIN1にそれぞれ接続されている。最終段(UR(N))のOUT(n+1)には、最手段制御信号VOが接続される。
【0041】
図3bより、別の走査回路6の構成は、単位回路8の端子のうち、下位電源VGLが上位電源VGHに変更となっている。これに伴い、制御信号線11も下位電源VGLから、上位電源VGHに変更となっている。
【0042】
図3cより、別の走査回路6の構成は、単位回路8の端子のうち、クロック信号が、CLK(n)、CLK(n+1)、CLK(n+2)、及びCLK(n+3)の4つに変更されている。これに伴い、制御信号線11も、CLK1〜CLK4の4本に変更されている。
【0043】
図4aに実施例1の単位回路8の基本構成を示すブロック図を示す。実施例1の単位回路8は、リセット信号生成回路12、リセットキャンセル回路13、入力回路14、リセット回路15、及び出力回路17から概ね構成されている。また、端子として入力信号IN1、及びIN2、クロック信号CLK(n)、CLK(n+1)、出力信号OUT、リセット電圧VR、及び下位電圧VGLを備えている。また、上記各回路、及び各端子を電気的に接続するノードとして、N1、RST1、及びRST2を備えている。
【0044】
リセット信号生成回路12は、クロック信号の入力端子CLK(n)、及びクロック信号の入力端子CLK(n+1)に制御されることにより、RST1、及びRST2の電位を、VR、あるいはVGLに制御する回路である。
【0045】
リセットキャンセル回路13は、ノードN1の電位により、RST1、あるいはRST2をVGLに設定する回路である。
【0046】
入力回路14は、IN1端子の信号を受けてノードN1を制御する回路である。
【0047】
リセット回路15は、IN2、RST1、及びRST2の信号を受けて、ノードN1をVGLに設定する回路である。
【0048】
出力回路17は、ノードN1、RST1、及びRST2の電位により、OUT端子の電位を制御する回路である。
より具体的な回路として、
図4b〜
図4eに実施例1の単位回路8の構成例を示す。
【0049】
図4bより、実施例1の単位回路8は、複数のNMOSトランジスタ(Tr1〜Tr6)、容量(C1〜C5)、配線、及び端子で構成され、図のように接続されている。また、ノードN1は、トランジスタTr3のゲート端子、及びトランジスタTr1のソース、あるいはドレイン端子、トランジスタTr2A〜Tr2Bのソース、あるいはドレイン端子、トランジスタTr6のゲート、及び容量C1にそれぞれ接続されている。
【0050】
Tr1は、IN1の電位によりゲート制御され、ノードN1の電位を上昇させる機能を有する。Tr2A(Tr2B)は、RST1(RST2)の電位によりゲート制御され、ノードN1をVGLに設定する機能を有する。Tr3は、ノードN1の電位によりゲート制御され、CLK(n)に接続されたクロック信号をOUTに供給する、あるいはCLK(n)とOUTを遮断する機能を有する。Tr4A(Tr4B)は、RST2の電位によりゲート制御され、OUTをVGLに設定する機能を有する。Tr5A(Tr5B)は、CLK(n)( CLK(n+1) )によりゲート制御され、RST1(RST2)をVRに設定する機能を有する。Tr6は、ノードN1の電位によりゲート制御され、RST1をVGLに設定する。容量C2、及びC3は、一方の端子がRST1に接続され、もう一方の端子がそれぞれVGL、及びCLK(n)に接続されていることにより、CLK(n)の電位変動を受けて、RST1の電位を減少させる機能を有する。容量C4、及びC5は、一方の端子がRST2に接続され、もう一方の端子がそれぞれ下位電圧電源VGL、及びクロック信号の入力端子CLK(n+1)に接続されていることにより、CLK(n+1)の電位変動を受けて、RST2の電位を減少させる。
【0051】
図4cより、実施例1の単位回路8の別の構成は、複数のPMOSトランジスタ(Tr1〜Tr6)、容量(C1〜C5)、配線、リセット信号生成回路12、及び端子で構成されている。
図4bの構成と異なり、トランジスタがPMOSで構成されているため、下位電源VGLのかわりに上位電源VGHが設けられている。
【0052】
図4d、及び
図4eより、実施例1の単位回路8の別の構成は、複数のNMOSトランジスタ(Tr1〜Tr6)、容量(C1〜C8)、配線、リセット信号生成回路12、及び端子で構成されている。
図4b、あるいは
図4cの構成とは異なり、本構成は、4相クロック信号に対応している。従って、出力回路17のOUT端子をVGLに設定するトランジスタが、4個(Tr4A〜4B)に増加している。また、クロック信号の端子CLK(n)〜CLK(n+3)、ノードRST1〜RST4も同様に増大している。
【0053】
ここで、
図4a〜4eに示した回路構成、及びそれぞれのトランジスタ、及び容量の接続等は、望ましい様態の一例であって、この限りではない。また、各トランジスタ、及び容量の物理的な形状、及び大きさについては、後述の[動作の説明]における回路動作を十分な動作マージンを実現できるように設計されることが望ましい。
【0054】
特に、Tr5A、及びTr6の組み合わせは、Tr5Aよりも、Tr6の駆動能力が高くなるように設計されることにより、Tr6がオン状態となった場合、Tr5Aの動作状態に依存せずRST1を確実にVGLに設定しうる、あるいはTr2A、及びTr4Aを確実にオフ状態に設定しうるような構成であることが望ましい。
【0055】
また、C2〜C5の容量値は、Tr2A、及びTr4A(Tr4B)のゲート容量、及びTr5A(Tr5B)、及びTr6のゲート−ソース(あるいはドレイン)間容量の総量と比較して、10倍以上の容量値であることが望ましく、さらには、100倍以上の容量値であれば、C2〜C5の容量値の設定により、RST1、あるいはRST2の制御をより正確に行うことが可能となる。このように、実施例1における表示装置を駆動する走査回路は、その構成要素である単位回路8において、出力信号OUT(n)をVGLに維持し、かつ、フローティングにならないように設定するトランジスタが複数設置されていている(例えば
図4bにおけるTr4A〜4B)。
【0056】
これらのトランジスタに供給されるゲート信号は、後述の[動作の説明]に記載の回路動作を行うことにより、低振幅のパルス信号が供給されることとなり、当該トランジスタは、リセット信号による低振幅のデューティ駆動が適用される。これにより、クロック信号の振幅と同じ振幅で駆動した場合と比較してトランジスタのしきい値電圧の変動が抑えられるため、走査回路の信頼性を改善した表示装置が実現できる。
【0057】
[動作の説明]
実施例1の動作について、
図3a、
図4b、及び
図5aを用いて説明する。
【0058】
図5aは、
図4bに示した実施例1の単位回路8の構成例の動作を表すタイミングチャートを示す。横軸は時間(t(1)〜(17),・・・,t(u)〜t(z))、縦軸は各信号の電位をそれぞれ示している。入力信号IN1(初段の単位回路8に対しては、ST)、クロック信号CLK1〜2、最終段制御信号VO、及び出力信号OUT(1)〜OUT(N)は、上位電圧VGHから、下位電圧VGLまでの振幅の信号である。また、リセット信号RST1〜2は、リセット電圧VRから、任意の電圧V3までの振幅の信号である。ここで、リセット電圧VRは、上位電圧VGHよりも低い電圧であり、V3は、下位電圧VGL以下の電圧である。また、これらの入力信号は、オン/オフ比が50%とはならない。例えばCLK1を例にすると、VGHとなる期間は、t(3)〜t(4)であり、VGLとなる期間である、t(4)〜t(7)の方が長く設定される。
【0059】
初段の単位回路8(UR(1))の動作について説明する。UR(1)において、
図4bのCLK(n)にはCLK1が、CLK(n+1)にはCLK2がそれぞれ接続されている。
【0060】
時間t(1)において、ST、及びCLK2が、VGLからVGHへ遷移する。これにより、トランジスタTr1がオン状態となるため、ノードN1は、VGLからV1(=VGH−Vth)まで遷移する。ここでVthはTr1のしきい値電圧である。ノードN1の電位上昇によりTr3がオン状態となる。
【0061】
次に、時間t(2)において、ST、及びCLK2はVGHからVGLに遷移する。これにより、Tr1、Tr5Bがオフ状態となる。RST1、及びRST2がVGLであることから、Tr2A、及びTr2Bがオフ状態であるため、ノードN1はフローティング状態となる。
【0062】
次に、時間t(3)において、CLK1がVGLからVGHに遷移するため、オン状態であるTr3を通過して、OUT(n)の電位が上昇する。これにより、容量C1の片側の電極であるOUTの電位が上昇したため、フローティング状態であるもう一方の電極(ノードN1)の電位は、ブートストラップ効果により、(VGH−Vth)からさらにV2まで上昇する。従って、Tr3のゲートにはVGH以上の大きいゲート電圧が印加されるため、OUTの電位は、減衰することなく、VGHまで遷移する。また、Tr5A、及びTr6もオン状態であるため、VRからVGLへ貫通電流が流れることとなり、RST1は、VRへ遷移せずにVGLに維持される。RST1がVGLのため、Tr2A、及びTr4Aは共にオフ状態を維持する。
【0063】
次に時間t(4)において、CLK1はVGHからVGLに遷移する。このとき、Tr3がオン状態であるため、OUTはVGHからVGLに遷移する。また、Tr5A、及びTr6がオフ状態となる。
【0064】
次に時間t(5)において、CLK2がVGLからVGHに遷移するため、Tr5Bがオン状態となり、RST2はVRに遷移する。従って、Tr4Bがオン状態となるため、OUTをVGLに維持する。また、次の段のUR(2)のOUTがVGHに遷移するため、UR(1)のIN2もVGHに遷移する。このため、Tr2Bがオン状態となり、ノードN1をVGLに設定する。従って、Tr3はオフ状態となる。
【0065】
次に時間t(6)において、CLK2がVGHからVGLに遷移することにより、Tr5Bがオフ状態となる。このため、RST2はフローティング状態となる。この状態において、CLK2がVGLに遷移したため、C4、及びC5に保持されていた電荷の再分配が起こり、RST2の電位が、VRからV’だけ減少する。ここでリセット信号の振幅であるV’は、C4、及びC5の容量値、及びクロック信号の振幅(VGH−VGL)を用いると下記(1)式で表される。
【0066】
【数1】
この動作により、RST2は、VRからV3(=VR−V’)に遷移する。これにより、ゲートにTr2Bが連結されており、及びTr4Bはオフ状態となる。
【0067】
次に時間t(7)において、CLK1がVGLからVGHに遷移することにより、Tr5Aがオン状態となるため、RST1はVRまで遷移する。これにより、Tr2A、及びTr4Aが共にオン状態となるため、ノードN1、及びOUTをVGLに維持する。
【0068】
次に時間t(8)において、CLK1がVGHからVGLに遷移することにより、Tr5Aがオフ状態となる。Tr6Aもオフ状態のため、RST1はフローティング状態である。この状態において、CLK1がVGLに遷移したため、C2、及びC3に保持されていた電荷の再分配が起こり、RST1の電位が、VRからV’だけ減少する。ここでV’は、C2、及びC3の容量値、及びクロック信号の振幅(VGH−VGL)を用いると下記(2)式で表される。
【0069】
【数2】
この動作により、RST1は、VRからV3に遷移する。これにより、Tr2A、及びTr4Aはオフ状態となる。
【0070】
次に時間t(9)において、CLK2がVGLからVGHに遷移することにより、Tr5Bがオン状態となり、RST2はVRに遷移する。これにより、Tr4Bがオン状態となるため、ノードN1、及びOUTをVGLに維持する。
【0071】
時間t(10)以降は、時間t(5)〜t(10)の期間の繰り返しの動作となる。2段目の単位回路8(UR(2))の動作については、
図4bにおけるCLK(n)、及びCLK(n+1)の接続関係が入れ替わること、IN1には、前段のOUT信号が入力されること、を除いて、主たる動作はUR(1)の場合と同様である。3段目の単位回路8(UR(3))以降についても同様である。時間t(v)〜t(w)において、最終段のUR(N)の出力信号OUT(N)がVGHとなり、全ての走査線7を駆動したこととなる。また、最終段のUR(N)におけるOUT(n+1)端子には、最終段制御信号VOが接続されているため、時間t(x)−t(y)の期間においてVGHとなるため、
図3aの最終段の単位回路UR(N);8のIN2端子にはVOが接続されており、Tr2Bがオン状態となり、ノードN1をVGLに設定する。
【0072】
図4cに示した単位回路8の別の構成例は、NMOSトランジスタがPMOSトランジスタに変更されているため、
図5bに示すように極性が入れ替わったものであって、基本的な動作は
図4bと変わりはない。
また、
図4dに示した4相クロックに対応した単位回路8の動作について、
図5cに示しながら説明する。
【0073】
まず、初段の単位回路8(UR(1))の動作について説明する。UR(1)において、
図4dのCLK(n)にはCLK1が、CLK(n+1)にはCLK2、CLK(n+2)にはCLK3、及びCLK(n+3)にはCLK4がそれぞれ接続されている。
【0074】
時間t(1)において、ST、及びCLK4が、VGLからVGHへ遷移する。これにより、トランジスタTr1がオン状態となるため、ノードN1は、VGLからV1(=VGH−Vth)まで遷移する。ここでVthはTr1のしきい値電圧である。ノードN1の電位上昇によりTr3がオン状態となる。
【0075】
次に、時間t(2)において、ST、及びCLK4はVGHからVGLに遷移する。これにより、Tr1、及びTr4Dがオフ状態となる。Tr2A、及びTr2Bがオフ状態であるため、ノードN1はフローティング状態となる。
【0076】
次に、時間t(3)において、CLK1がVGLからVGHに遷移するため、オン状態であるTr3を通過して、OUT(n)の電位が上昇する。これにより、容量C1の片側の電極であるOUTの電位が上昇したため、フローティング状態であるもう一方の電極(ノードN1)の電位は、ブートストラップ効果により、(VGH−Vth)からさらにV2まで上昇する。従って、Tr3のゲートにはVGH以上の大きいゲート電圧が印加されるため、OUTの電位は、減衰することなく、VGHまで遷移する。また、Tr4A、及びTr6もオン状態であるため、VRからVGLへ貫通電流が流れることとなり、RST1は、VRへ遷移せずにVGLに維持される。RST1がVGLのため、Tr2A、及びTr4Aは共にオフ状態を維持する。
【0077】
次に時間t(4)において、CLK1はVGHからVGLに遷移する。このとき、Tr3がオン状態であるため、OUTはVGHからVGLに遷移する。また、Tr4A、Tr6がオフ状態となる。
【0078】
次に時間t(5)において、CLK2がVGLからVGHに遷移するため、Tr4Bがオン状態となり、RST2はVRに遷移する。従って、Tr2Bがオン状態となるため、ノードN1がVGLに遷移し、Tr3はオフ状態となる。また、Tr4Bがオン状態となるため、OUTをVGLに維持する。
【0079】
次に時間t(6)において、CLK2がVGHからVGLに遷移することにより、Tr5Bがオフ状態となる。この状態において、CLK2がVGLに遷移したため、C4、及びC5に保持されていた電荷の再分配が起こり、RST2の電位が、VRからV’だけ減少する。ここでV’は、C4、及びC5の容量値、及びクロック信号の振幅(VGH−VGL)を用いると(1)式で表される。
この動作により、RST2は、VRからV3(=VR−V’)に遷移する。これにより、Tr4Bはオフ状態となる。
【0080】
次に時間t(7)において、CLK3がVGLからVGHに遷移することにより、Tr5Cがオン状態となるため、RST3はVRまで遷移する。これにより、Tr4Cがオン状態となるため、ノードN1、及びOUTをVGLに維持する。
【0081】
次に時間t(8)において、CLK3がVGHからVGLに遷移することにより、Tr5Cがオフ状態となる。従って、RST3はフローティング状態となる。この状態において、CLK3がVGLに遷移したため、C7、及びC8に保持されていた電荷の再分配が起こり、RST3の電位が、VRからV’だけ減少する。ここでV’は、C7の容量値はC2と概等しく、さらにC8の容量値はC3と概等しいため、及びクロック信号の振幅(VGH−VGL)を用いると(2)式で表される。
【0082】
この動作により、RST3は、VRからV3に遷移する。これにより、Tr4Cはオフ状態となる。
【0083】
次に時間t(9)において、CLK4がVGLからVGHに遷移することにより、Tr5Cがオン状態となり、RST4はVRに遷移する。これにより、Tr4Dがオン状態となるため、OUTをVGLに維持する。
【0084】
次に時間t(10)において、CLK4がVGHからVGLに遷移することにより、Tr5Cがオフ状態となる。従って、RST4はフローティング状態となる。この状態において、CLK4がVGLに遷移したため、C8、及びC9に保持されていた電荷の再分配が起こり、RST4の電位が、VRからV’だけ減少する。ここでV’は、C8の容量値はC2と概等しく、さらにC9の容量値はC3と概等しいため、及びクロック信号の振幅(VGH−VGL)を用いると(2)式で表される。
【0085】
この動作により、RST4は、VRからV3に遷移する。これにより、Tr4Dはオフ状態となる。
【0086】
時間t(11)以降は、時間t(5)〜t(10)の期間の繰り返しの動作となる。
【0087】
2段目の単位回路8(UR(2))の動作については、
図4dにおけるCLK(n)〜CLK(n+3)の接続関係がずれるため、CLK(n)端子にCLK2、CLK(n+1)端子にCLK3、CLK(n+2)端子にCLK4、そしてCLK(n+3)端子にCLK1が接続されること、及びIN1には、前段のOUT信号が入力されること、を除いて、主たる動作はUR(1)の場合と同様である。3段目の単位回路8(UR(3))以降についても同様である。時間t(v)〜t(w)において、最終段のUR(N)の出力信号OUT(N)がVGHとなり、全ての走査線7を駆動したこととなる。また、最終段のUR(N)におけるOUT(n+1)端子には、最終段制御信号VOが接続されているため、時間t(x)−t(y)の期間においてVGHとなるため、Tr2Bがオン状態となり、ノードN1をVGLに設定する。
【0088】
このように、実施例1における表示装置を駆動する走査回路は、OUT(n)(走査線7)がフローティング状態にならないように設定するトランジスタ(例えば
図4bにおけるTr4A、Tr4B)、及びノードN1を駆動するトランジスタ(例えば
図4bにおけるTr2A)のゲートには、低電圧振幅のパルス信号が印加されているので、クロック信号の振幅と同等の振幅で駆動した場合と比較してトランジスタのしきい値電圧の変動が押さえられるため、走査回路の信頼性を改善した表示装置が実現できる。さらに、リセット信号の下位電圧を、OUT(n)に供給されるVGLよりも低くすることにより、更なるしきい値電圧の変動緩和が期待されるため、さらに信頼性を改善した表示装置が実現できる。
【0089】
[実施例2]
[構成の説明]
図を参照しながら本発明実施例2の構成について説明する。実施例2は、実施例1から走査回路、及び単位回路の構成が異なるため、
図1に示した表示装置の構成、及び
図2に示した第2の基板の構成は、実施例2にも適用される。
【0090】
図6は、実施例2の走査回路の構成を示すブロック図、
図7は、実施例2の単位回路の構成を示す回路図をそれぞれ示す。
【0091】
図6より、実施例2の走査回路6は、リセット電圧VRの配線が不要という点が実施例1と異なる。従って、制御信号線11は、スタート信号ST、最終段制御信号VO、及び、及びクロック信号CLK1、CLK2で構成されている。
【0092】
図7より、実施例2の単位回路8は、複数の単一導電性の薄膜トランジスタ(Tr1〜Tr6)、容量(C1〜C5)、配線、及び端子で構成されている。端子は、入力信号IN1、及びIN2、クロック信号CLK(n)、CLK(n+1)、出力信号OUT、及び下位電圧VGLである。また、複数のトランジスタTr1、Tr2A〜2B、Tr3、Tr4A〜4B、Tr5A〜5B、Tr6、及び容量C1〜C5がそれぞれ図のように接続されている。また、内部ノードN1は、トランジスタTr3のゲート端子、Tr1のソース、あるいはドレイン端子、トランジスタTr2A、及びTr2Bのソース、あるいはドレイン端子、及びトランジスタTr6のゲート端子にそれぞれ接続されている。
【0093】
Tr1、Tr2A、Tr2B、Tr3、Tr4A、及びTr6は、実施例1における単位回路8と同様である。Tr5A(Tr5B)は、RST2(RST1)の電位によりゲート制御され、RST1(RST2)をVGLに設定する。Tr6は、ノードN1の電位によりゲート制御され、RST1(RST2)をVGLに設定する。C2、及びC3は、一方の端子がRST1に接続され、もう一方の端子がそれぞれVGL、及びCLK(n)に接続されていることにより、CLK(n)の電位変動を受けて、RST1の電位を上昇させる。C4、及びC5は、一方の端子がRST2に接続され、もう一方の端子がそれぞれVGL、及びCLK(n+1)に接続されていることにより、CLK(n+1)の電位変動を受けて、RST2の電位を上昇させる。
【0094】
実施例1では、Tr5A(Tr5B)により、RST1(RST2)の電位をVRまで上昇させ、C2、及びC3(C5、及びC6)を利用してRST1(RST2)の電位を減少させているのに対し、実施例2では、Tr5A(Tr5B)により、RST1(RST2)の電位をVGLまで減少させ、C2、及びC3(C5、及びC6)を利用してRST1(RST2)の電位を上昇減少させている。また、実施例2のTr5A(Tr5B)は、オン状態となったときにTr6がオン状態とならないような構成となっているため、貫通電流が発生しない。
【0095】
ここで、
図7に示した回路構成、及びそれぞれのトランジスタ、及び容量の接続等は、望ましい様態の一例であり、この限りではない。また、各トランジスタ、及び容量の物理的な形状、及び大きさについては、後述の[動作の説明]における回路動作を十分な動作マージンを実現できるように設計されることが望ましい。
【0096】
また、C2〜C5の容量値は、Tr2A、及びTr4A(Tr4B)のゲート容量、及びTr5A(Tr5B)、及びTr6のゲート−ソース(あるいはドレイン)間容量の総量と比較して、10倍以上の容量値であることが望ましく、さらには、100倍以上の容量値であれば、C2〜C5の容量値の設定により、RST1、あるいはRST2の制御をより正確に行うことが可能となる。このように、実施例2における表示装置を駆動する走査回路は、実施例1と同様の効果を有しながら、貫通電流の流れない構成であることから低電力の表示装置を実現することが期待できる。
【0097】
[動作の説明]
実施例2の動作について、
図7、及び
図8を用いて説明する。
【0098】
図8は、実施例1の単位回路8の動作を表すタイミングチャートを示す。横軸は時間t(1)〜t(17)、・・・,t(u)〜t(v)、縦軸は各々の信号の電位をそれぞれ示している。入力信号N1(初段の単位回路8に対しては、ST)、クロック信号CLK1〜2、最終段制御信号VO、及び出力信号OUT(1)〜OUT(N)は、上位電圧VGHから、下位電圧VGLまでの振幅の信号である。また、リセット信号RST1〜2は、任意の電圧V4から、VGLまでの振幅の信号である。ここで、V4は、VGL以上、VGH以下の任意の電圧である。
【0099】
初段の単位回路8(UR(1))の動作について説明する。UR(1)において、
図4のCLK(n)にはCLK1が、CLK(n+1)にはCLK2がそれぞれ接続されている。
【0100】
時間t(1)において、ST、及びCLK2がVGLからVGHに遷移する。これにより、トランジスタTr1がオン状態となるため、ノードN1は、VGLからV1(=VGH−Vth)まで遷移する。ここでVthはTr1のしきい値電圧である。ノードN1の電位変動によりTr3がオン状態となる。また、Tr7Aがオン状態となるため、RST2はVGLに設定される。従って、Tr4Bはオフ状態である。
【0101】
次に、時間t(2)において、ST、及びCLK2はVGHからVGLに遷移する。これにより、Tr1がオフ状態となる。RST2がVGLであることから、Tr2A、及びTr2Bがオフ状態であるため、ノードN1はフローティング状態となる。
【0102】
次に、時間t(3)において、CLK1がVGLからVGHに遷移するため、オン状態であるTr3を通過して、OUTの電位が上昇する。これにより、容量C1の片側の電極であるOUTの電位が上昇したため、フローティング状態であるもう一方の電極(ノードN1)の電位は、ブートストラップ効果により、(VGH−Vth)からさらにV2まで上昇する。従って、Tr3のゲートにはVGH以上の大きいゲート電圧が印加されるため、OUTの電位は、減衰することなく、VGHまで遷移する。RST1、及びRST2がVGLの状態のため、Tr2A、Tr4A、及びTr4Bは全てオフ状態を維持する。
【0103】
次に時間t(4)において、CLK1はVGHからVGLに遷移する。このとき、Tr3がオン状態であるため、OUTはVGHからVGLに遷移する。
【0104】
次に時間t(5)において、CLK2がVGLからVGHに遷移する。このとき、Tr5Bがオフ状態であるため、RST2はフローティング状態である。この状態において、CLKがVGLからVGHに遷移したため、C4、及びC5に保持されていた電荷の再分配が起こるため、RST2の電位は、V’だけ上昇する。ここで、V’の値は実施例1の(1)式で表される電圧値と同様である。この動作により、RST2は、VGLからV4(=VGL+V’)まで遷移する。従って、Tr2Bがオン状態となるため、ノードN1がVGLに遷移し、Tr3はオフ状態となる。また、Tr4Bもオン状態となるため、OUT(n)をVGLに維持する。また、次の段のUR(2)のOUTがVGHに遷移するため、UR(1)のIN2もVGHに遷移する。このため、Tr2Bがオン状態となり、ノードN1がVGLに設定される。従って、Tr3がオフ状態となる。
【0105】
次に時間t(6)において、CLK2がVGHからVGLに遷移することにより、RST2はV4から、V’だけ減少するため、VGLに設定される。従ってTr5Aがオフ状態となる。
【0106】
次に、時間t(7)において、CLK1がVGLからVGHに遷移することにより、C2、及びC3に保持されていた電荷の再分配が起こるため、RST1の電位はV’だけ上昇する。ここで、V’の値は実施例1の(2)式で表される電圧値と同様である。この動作により、RST1は、VGLからV4(=VGL+V’)まで遷移する。これにより、Tr5Bがオン状態となり、RST2をVGLに設定する。また、Tr2A、及びTr4Aがオン状態となるため、ノードN1、及びOUTがVGLに維持される。
【0107】
次に時間t(8)において、CLK1がVGHからVGLに遷移することにより、RST1は、V4から、V’だけ減少するため、VGLに設定される。これにより、Tr2A、及びTr4Aはオフ状態となる。
【0108】
次に時間t(9)において、CLK2がVGLからVGHに遷移することにより、時間t(7)と同様、RST2はV4まで遷移する。これにより、Tr4Bがオン状態となるため、OUTをVGLに維持する。
【0109】
時間t(10)以降は、時間t(5)〜t(10)の期間の繰り返しの動作となる。
【0110】
2段目の単位回路8(UR(2))の動作については、
図4におけるCLK(n)、及びCLK(n+1)の接続関係が入れ替わること、IN1に前段のOUT信号が入力されること、を除いて、主たる動作はUR(1)の場合と同様である。3段目の単位回路8(UR(3))以降についても同様である。時間t(v)〜t(w)において、最終段のUR(N)の出力信号OUT(N)がVGHとなり、全ての走査線7を駆動したこととなる。
【0111】
このように、実施例2における表示装置を駆動する走査回路は、実施例1と同様の効果を有しながら、貫通電流の流れない構成をとっていることから低電力の表示装置を実現することが期待できる。
【0112】
[実施例3]
[構成の説明]
図を参照しながら本発明実施例3の構成について説明する。
【0113】
実施例3は、実施例1の単一導電性の薄膜トランジスタで構成される単位回路におけるリセット信号生成回路12の構成が異なるため、
図1に示した表示装置の構成、
図2に示した第1の基板の構成、及び
図3aに示した走査回路の構成は、実施例3にも適用される。
【0114】
図9は、実施例3の単位回路の構成を示す回路図を示す。
【0115】
図9より、実施例3の単位回路8は、リセット信号生成回路12の構成が、実施例1と異なる。
【0116】
実施例3のリセット信号生成回路12は、Tr5A、Tr5B、容量C3〜C5で構成されており、
図9に示すような接続がなされている。
【0117】
容量C3(C5)、及びTr5A(Tr5B)はクランプ回路18を構成しており、トランジスタTr5A(Tr5B)はRST1(RST2)とリセット電源VRとの間にダイオード接続されている。C2(C4)はRST1(RST2)と下位電源VGLに接続されていて、C3(C5)はクロック信号CLK(n)(CLK(n+1))とRST1(RST2)に接続されている。
【0118】
上記のような構成をとることにより、C3(C5)を介したCLK(n)(CLK(n+1))の電位変動による、RST1(RST2)の電位変動において、CLK(n)(CLK(n+1))が下位電源から、上位電源への電位変動時、RST1(RST2)の電位変動は、上位電源まで到達せず、リセット電源VRに制限される(詳細は[動作の説明]にて後述する)。これにより、実施例1、及び実施例2と同様、RST1(RST2)の上位電圧はVRに設定される。
【0119】
ここで、
図9に示した回路構成、及びそれぞれのトランジスタ、及び容量の接続等は、望ましい様態の一例であり、この限りではない。また、各トランジスタ、及び容量の物理的な形状、及び大きさについては、後述の[動作の説明]における回路動作を十分な動作マージンを実現できるように設計されることが望ましい。
【0120】
また、C2〜C5の容量値は、Tr2A、及びTr4A(Tr4B)のゲート容量、及びTr5A(Tr5B)、及びTr6のゲート−ソース(あるいはドレイン)間容量の総量と比較して、10倍以上の容量値であることが望ましく、さらには、100倍以上の容量値であれば、C2〜C5の容量値の設定により、RST1、あるいはRST2の制御をより正確に行うことが可能となる。このように、実施例3における表示装置を駆動する走査回路は、実施例1と同様の効果を有する別の構成を開示するものである。
【0121】
[動作の説明]
実施例3は、実施例1とリセット信号生成回路12の構成が異なるため、
図5aを参照しながら実施例3のリセット信号生成回路12の動作について説明する。
【0122】
時間t(1)において、CLK2がVGLから、VGHに遷移すると、C5を介してRST2がV3から電位上昇する。このとき、RST2の電位がVRまで上昇すると、トランジスタTr5Bがオン状態に遷移するため、RST2をVRに維持する。
【0123】
次に時間t(2)においてCLK2がVGHからVGLに遷移すると、C4、及びC5に保持されていた電荷の再分配が起こるため、RST2の電位は、V’だけ下降する。ここで、V’の値は実施例1の(1)式で表される電圧値と同様である。この動作により、RST2は、VRから、V3(=VR−V’)まで遷移する。
【0124】
次に時間t(3)において、CLK1がVGLからVGHへ遷移するため、C3を介してRST1の電位を上昇させる力が働くが、このときノードN1はV1からV2まで上昇するためトランジスタTr6がオン状態である。つまり、RST1はVGLに設定されているため、CLK1の電位上昇に依らずRST1はVGLに設定される。このとき、RST1をパスするDC電流が存在しないため、リセット動作のキャンセルには余計な電流を消費しない。
【0125】
この状態は、時間t(7)まで継続し、t(7)においてCLK1がVGLからVGHへ遷移する際、RST1はC3を介して電位上昇する。このとき、RST1がVRまで上昇すると、トランジスタTr5Aがオン状態に遷移するため、RST1をVRに維持する。
【0126】
次にt(8)においてCLK2がVGHからVGLに遷移すると、C2、及びC3に保持されていた電荷の再分配が起こるため、RST1の電位は、V’だけ下降する。ここで、V’の値は実施例1の(1)式で表される電圧値と同様である。この動作により、RST1は、VRから、V3(=VR−V’)まで遷移する。
【0127】
このように、実施例3における表示装置を駆動する走査回路は、実施例1と同様の効果を有しながら、貫通電流の流れない構成をとっていることから低電力の表示装置を実現することが期待できる。
【0128】
[実施例4]
[構成の説明]
図を参照しながら本発明実施例4の構成について説明する。
【0129】
実施例4は、実施例1の単一導電性の薄膜トランジスタで構成される単位回路におけるリセット信号生成回路12の構成が異なるため、
図1に示した表示装置の構成、
図2に示した第1の基板の構成、及び
図3aに示した走査回路の構成は、実施例4にも適用される。
【0130】
図14は、実施例4の単位回路の構成を示す回路図を示す。
【0131】
図14より、実施例4の単位回路8は、リセット信号生成回路12の構成が、実施例1と異なる。
【0132】
実施例4のリセット信号生成回路12は、Tr5A、Tr5B、Tr8A、Tr8B、容量C2〜C7で構成されており、
図14に示すような接続がなされている。
【0133】
トランジスタTr5A(Tr5B)はRST1(RST2)とリセット電源VRとの間にソース、あるいはドレイン端子が接続されている構成をとっており、ゲートはC6(C7)の電極、及びTr8A(Tr8B)のドレイン、あるいはソース端子が接続されている。トランジスタTr8A(Tr8B)のゲートは共にノードN1に接続されている。ソース、あるいはドレイン端子はVGL、あるいはTr5A(Tr5B)のゲートにそれぞれ接続されている。
【0134】
容量C2(C4)はRST1(RST2)と下位電源VGLに接続されていて、C3(C5)はクロック信号CLK(n)(CLK(n+1))とRST1(RST2)に接続されている。C6(C7)は片側の電極がTr5A(Tr5B)のゲート、及びTr8A(Tr8B)のドレイン、あるいはソース電極に接続されている。また、もう一方の電極がCLK(n)(CLK(n+1))に接続されている。
【0135】
上記のような構成をとることにより、C3(C5)を介したCLK(n)(CLK(n+1))の電位変動による、RST1(RST2)の電位変動において、CLK(n)(CLK(n+1))が下位電源から、上位電源への電位変動時、RST1(RST2)の電位変動は、上位電源まで到達せず、リセット電源VRに制限される(詳細は[動作の説明]にて後述する)。これにより、実施例1〜3と同様、RST1(RST2)の上位電圧はVRに設定される。
【0136】
ここで、
図14に示した回路構成、及びそれぞれのトランジスタ、及び容量の接続等は、望ましい様態の一例であり、この限りではない。また、各トランジスタ、及び容量の物理的な形状、及び大きさについては、後述の[動作の説明]における回路動作を十分な動作マージンを実現できるように設計されることが望ましい。
【0137】
また、C2〜C7の容量値は、Tr2A、Tr4A(Tr4B)、Tr5A(Tr5B)、のゲート容量、あるいはTr6A(Tr6B)のゲート−ソース(あるいはドレイン)間容量の総量と比較して、10倍以上の容量値であることが望ましく、さらには、100倍以上の容量値であれば、C2〜C7の容量値の設定により、RST1、あるいはRST2の制御をより正確に行うことが可能となる。
【0138】
このように、実施例4における表示装置を駆動する走査回路は、実施例1と同様の効果を有する別の構成を開示するものである。
【0139】
[動作の説明]
実施例4は、実施例1とリセット信号生成回路12の構成が異なるため、
図5aを参照しながら実施例4のリセット信号生成回路12の動作について説明する。
【0140】
時間t(1)において、CLK2がVGLから、VGHに遷移すると、Tr5BがC7を介してオン状態となる。このため、RST2はV3から電位上昇してVRに設定される。
次に時間t(2)においてCLK2がVGHからVGLに遷移すると、C4、及びC5に保持されていた電荷の再分配が起こるため、RST2の電位は、V’だけ下降する。ここで、V’の値は実施例1の(1)式で表される電圧値と同様である。この動作により、RST2は、VRから、V3(=VR−V’)まで遷移する。
【0141】
次に時間t(3)において、CLK1がVGLからVGHへ遷移するが、ノードN1の電位がV2であるため、Tr8Aがオン状態となり、Tr5AのゲートをVGLに設定しているため、Tr5Aはオフ状態である。また、C3を介してRST1の電位を上昇させる力が働くが、このときノードN1はV2であるため、トランジスタTr6がオン状態である。つまり、RST1はVGLに設定されているため、CLK1の電位上昇に依らずRST1はVGLに設定される。このとき、RST1をパスするDC電流が存在しないため、リセット動作のキャンセルには余計な電流を消費しない。
【0142】
この状態は、時間t(7)まで継続し、t(7)においてCLK1がVGLからVGHへ遷移する際、トランジスタTr5Aがオン状態となるため、RST1をVRに設定する。
【0143】
次にt(8)においてCLK2がVGHからVGLに遷移すると、C2、及びC3に保持されていた電荷の再分配が起こるため、RST1の電位は、V’だけ下降する。ここで、V’の値は実施例1の(1)式で表される電圧値と同様である。この動作により、RST1は、VRから、V3(=VR−V’)まで遷移する。
【0144】
このように、実施例4における表示装置を駆動する走査回路は、実施例1と同様の効果を有しながら、貫通電流の流れない構成をとっていることから低電力の表示装置を実現することが期待できる。