(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
マイクロ波発振器と、該マイクロ波発振器に付属するアンテナと、該アンテナからのマイクロ波エネルギーを受けて発光する無電極ランプと、前記無電極ランプに冷却用空気を供給する冷却空気供給機構と、を有する光照射装置において、
前記無電極ランプは不活性ガスと発光物質が封入された直管型の放電容器を有し、
前記放電容器は、マイクロ波エネルギーによって生成されるプラズマ領域の定在波の腹に対応して形成される2つの高温領域と、該定在波の節に対応して形成される3つの低温領域とを有し、前記3つの低温領域のうちの中央の低温領域に対応する位置に前記冷却用空気を遮断する風除け用フードが装着されていることを特徴とする光照射装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたマイクロ波無電極ランプでは、軸線方向の温度の不均一の課題を解決するために、無電極ランプ(放電容器)を特殊な形状にしている。しかしながら、このような特殊な形状の無電極ランプの製造には作業的な要素が多く含まれ、且つ、作業工数が増える。特許文献2に記載された紫外線発生装置では、冷却空気を供給するための構造に変化を加えているために、冷却機構の構造が複雑化し、部品点数が増えることとなる。
【0006】
本発明の目的は、簡単な方法で、マイクロ波無電極ランプの軸線方向の中央の低温領域における発光物質の凝集を抑制し、UV−A領域(315〜400nm)の発光強度及び発光効率を高めることができるマイクロ波無電極ランプ、及び、これを使用した光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者は、マイクロ波無電極ランプにおいて発光強度及び発光効率を高めるための課題と手段を鋭意検討した。そこで、本願の発明者は、マイクロ波無電極ランプにおける課題として、軸線方向の温度の不均一ではなく、中央の低温領域に起因した発光物質の凝集に着目した。即ち、マイクロ波無電極ランプにおいて発光強度及び発光効率を高めるためには、マイクロ波無電極ランプの軸線方向の温度の不均一を解消するよりも、マイクロ波無電極ランプの中央の低温領域の発光物質の凝集を抑制するほうが、より有効であるとの見解に達した。そこで本願の発明者は、マイクロ波無電極ランプの中央の低温領域の発光物質の凝集を抑制するための手段を鋭意検討した。
【0008】
本発明によると、マイクロ波エネルギーを受けて発光するマイクロ波無電極ランプにおいて、不活性ガスと発光物質が封入された直管型の放電容器を有し、前記放電容器は、マイクロ波エネルギーによって生成されるプラズマ領域の定在波の腹に対応して形成される2つの高温領域と、該定在波の節に対応して形成される3つの低温領域とを有し、前記3つの低温領域のうちの中央の低温領域に対応する位置に冷却用空気を遮断する風除け用フードが装着されている。
【0009】
本実施形態によると前記マイクロ波無電極ランプにおいて、前記風除け用フードは、円筒状に形成されてよい。
【0010】
本実施形態によると前記マイクロ波無電極ランプにおいて、前記風除け用フードは、半円筒状に形成されてよい。
【0011】
本実施形態によると前記マイクロ波無電極ランプにおいて、前記風除け用フードの軸線方向の寸法Lhは、Lh=20〜30mm、前記風除け用フードの肉厚は1.0〜1.5mmであってよい。
【0012】
本実施形態によると前記マイクロ波無電極ランプにおいて、 前記風除け用フードは、前記放電容器の外周面に接触しないように、装着されてよい。
【0013】
本実施形態によると前記マイクロ波無電極ランプにおいて、前記発光物質は、水銀と鉄を含んでよい。
【0014】
本実施形態によると、マイクロ波発振器と、該マイクロ波発振器に付属するアンテナと、該アンテナからのマイクロ波エネルギーを受けて発光する無電極ランプと、前記無電極ランプに冷却用空気を供給する冷却空気供給機構と、を有する光照射装置において、前記無電極ランプは不活性ガスと発光物質が封入された直管型の放電容器を有し、前記放電容器は、マイクロ波エネルギーによって生成されるプラズマ領域の定在波の腹に対応して形成される2つの高温領域と、該定在波の節に対応して形成される3つの低温領域とを有し、前記3つの低温領域のうちの中央の低温領域に対応する位置に前記冷却用空気を遮断する風除け用フードが装着されてよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な方法で、マイクロ波無電極ランプの軸線方向の中央の低温領域の発光物質の凝集を抑制し、UV−A領域(315〜400nm)の発光強度及び発光効率を高めたマイクロ波無電極ランプ、及び、これを使用した光照射装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る無電極ランプ及びこれを使用した光照射装置の実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施形態は、例示であって、本発明を何等限定するものではないことを承知されたい。
【0018】
図1A及び
図1Bは、本実施形態に係るマイクロ波無電極ランプを使用した光照射装置の一例を説明する図である。
図1Aは、光照射装置10の斜視図である。
図1Bは、
図1Aの光照射装置10を正面から見た概略正面図である。図示のように、光照射装置10のランプ軸線方向に沿ってX軸、光照射装置10からの発光方向(矢印方向)に沿ってZ軸、X−Z面に垂直方向にY軸を設定する。
【0019】
光照射装置10は、矩形の筐体4を有し、筐体4の後側内部にマイクロ波発振器3(図示なし)が設けられている。光照射装置10は、更に、マイクロ波発振器3に付属するアンテナ8と、アンテナ8からのマイクロ波エネルギーを受けて発光する無電極ランプ12と、無電極ランプ12の軸線に沿って配置された反射鏡14を有する。反射鏡14によって囲まれた空間は、マイクロ波空洞5を形成している。無電極ランプ12は、マイクロ波空洞5に配置されている。本実施形態によると、無電極ランプ12の中央の低温領域の周囲に風除け用フード20が装着されている。風除け用フード20の構造及び機能は後に説明する。
【0020】
光照射装置10は、更に、無電極ランプ12を冷却する冷却空気供給機構を有する。冷却空気供給機構は、図示しない冷却空気源と、筐体4の上側には装着された冷却用送風ダクト6(
図1Bでは省略)を有する。
【0021】
マイクロ波は、波長1m〜100μm、周波数300MHz〜3THzの電磁波を指し、電波の中で最も短い波長域である。マイクロ波発振器3として、マグネトロン、クライストロン、進行波管(TWT)、ジャイロトロン、ガンダイオードを用いた回路等がある。本実施形態では、マイクロ波発振器としてマグネトロンを使用する。マグネトロンは、発振用真空管の一種であり、強力なノンコヒーレントマイクロ波を発生する。身近なところでは、マグネトロンは、レーダーや電子レンジに使われている。本実施形態では、電子レンジ、好ましくは業務用電子レンジに使用されているマグネトロンを使用する。なお、電子レンジでは周波数2,450MHzが使用されているが、これは技術的な制限によるものではなく、法的規制によるものである。
【0022】
図2は、本実施形態に係る光照射装置10の筐体4の前側内部の断面構成を示す。反射鏡14は、代表的には、被照射面に集光させる楕円面反射鏡、被照射面に平行光を当てる放物面反射鏡等が有る。楕円面も放物面も少なくとも1つの焦点を有する。
図2の実施例では、反射鏡14は樋型楕円面反射鏡であり、無電極ランプ12は直管型で、その中心軸が楕円面反射鏡の焦点に位置するように配置されている。なお、無電極ランプの中心(中心軸)が反射鏡の焦点位置に必ずしも一致している必要は無く、ランプ設置の位置的誤差等も考慮して、ランプ本体の中央部分が焦点を含む位置に配置されていればよい。
【0023】
反射鏡14の筐体4の前面には光出射口2が形成され、光出射口は導電性メッシュ16によって覆われている。導電性メッシュ16は、マイクロ波に対しては不透過性であるが、マイクロ波空洞からの照射光18、即ち、可視光線及び紫外線に対しては透過性である。
【0024】
マイクロ波発振器3から発生したマイクロ波は、アンテナ8を介して放射され、マイクロ波空洞5に供給され、そこで定在波を形成する。マイクロ波空洞5に配置された無電極ランプ12の内部にプラズマを励起する。プラズマが放射する可視光線或いは紫外線は、照射光18として反射鏡14を反射し、又は、直接、光出射口2に向かって放射され、導電性メッシュ16を通過して、被照射面に照射される。
【0025】
図示しない冷却空気源からの冷却用空気17は、冷却用送風ダクト6(
図1A)を経由し、反射鏡14の孔14Aを介してマイクロ波空洞5に供給される。冷却用空気17は無電極ランプ12の外周面に衝突し、無電極ランプ12を冷却する。本実施形態によると、無電極ランプ12の中央の低温領域の周囲に風除け用フード20が装着されている。従って、無電極ランプ12の中央の低温領域では、冷却用空気17は風除け用フード20に直接衝突するが、無電極ランプ12には直接衝突しない。風除け用フード20の構造及び機能は後に説明する。
【0026】
図3を参照して本実施形態に係る無電極ランプの例を説明する。無電極ランプ12は、円筒状の放電容器12Aを有する直管型であり、その両端に突起部12Bを有する。放電容器の両端の突起部12Bを筐体の両側の内壁の係合部に係合させることによって、無電極ランプ12はマイクロ波空洞内に保持される。
【0027】
無電極ランプ12は石英ガラス製である。放電容器の内部には、不活性ガスと発光物質が封入されている。本例の無電極ランプ12では、不活性ガスとして2.7kPaのアルゴン(Ar)が封入されてよい。発光物質として45mgの水銀が封入されてよい。この場合、無電極ランプ12は、出力1,800Wの紫外線照射ランプ(UVランプ)として使用される。尚、発光物質は水銀に限定されない。例えば、水銀とハロゲン化金属等を封入してもよい。この場合には、無電極ランプはメタルハライドランプとなる。後に説明するように、発光物質として、水銀以外に、鉄単体、又は、鉄系ハロゲン化物(ヨウ化鉄、臭化鉄)が用いられてよい。
【0028】
マグネトロンを発振させると、2,450MHzのマイクロ波エネルギーがマイクロ波空洞5に供給され定在波が形成される。マイクロ波が無電極ランプ12の放電容器12Aと結合されて内部にプラズマが励起される。発光物質から可視光線或いは紫外線が放射される。
【0029】
無電極ランプ12を点灯すると、放電容器12Aの内部に、破線で示すように、2つのプラズマ領域13が形成される。プラズマ領域13は、腹131とその両側の節132を有する定在波を形成する。この定在波の波長は、λ=伝播速度/周波数=2.99×10
8(m/s)/2.45GHz≒123mmとなる。無電極ランプの放電容器12Aの軸線方向長さは、一波長の長さに略等しく形成されている。
【0030】
定在波の腹131の部分は比較的温度が高く、比較的強い発光をする。ここは高温領域(ホットゾーン)12a、12bと呼ばれる。定在波の節132の部分は比較的温度が低く、比較的弱い発光をする。ここは低温領域(コールドゾーン)12c、12d、12eと呼ばれる。低温領域12c、12d、12eでは、封入物質の蒸発が阻害され、又は、再凝縮が起こることがある。従って、無電極ランプ12の放電容器12Aの温度分布は軸線方向に沿って不均一となる。
【0031】
本実施形態では、無電極ランプ12の放電容器12Aの中央の低温領域12cにて、風除け用フード20が設けられている。ここで、風除け用フード20の機能を説明する。
【0032】
図2を参照して説明したように、マイクロ波空洞5に供給された冷却用空気17は、無電極ランプ12の放電容器12Aの外周面に衝突し、無電極ランプ12を冷却する。従来の技術では、冷却用空気17によって無電極ランプ12は軸線方向に一様に冷却される。即ち、高温領域12a、12bも低温領域12c、12d、12eも一様に冷却される。従って、無電極ランプ12の軸線方向の温度分布は不均一である。
【0033】
本実施形態では、中央の低温領域12cに風除け用フード20が設けられているため、中央の低温領域12cでは冷却用空気17は放電容器12Aに直接衝突しない。そのため、低温領域12cでは冷却用空気17による冷却作用が軽減される。中央の低温領域12c以外の領域では、冷却用空気17は放電容器12Aに直接衝突するから、冷却用空気17による冷却作用は変わらない。本実施形態では、冷却用空気17による冷却作用が中央の低温領域12cとそれ以外の領域では異なる。そのため、無電極ランプ12の中央の低温領域12cに風除け用フード20を設けることによってUV−A領域(315〜400nm)の発光強度及び発光効率を高めることができる。尚、放電容器12Aの両端の低温領域12d、12eには風除け用フードが設けられていない。
【0034】
図4を参照して、本実施形態に係る直管型の無電極ランプの例の寸法を説明する。無電極ランプ12は円筒状の放電容器12Aと両側の突起部12B、12Bを有する。図示のように、放電容器12Aの軸線方向の寸法をL、突起部12B、12Bの軸線方向の寸法をそれぞれLtとする。各高温領域12a、12b(
図3)において、定在波の腹の振幅が最大の位置にて、最も温度が高くなる。ランプが水平姿勢で点灯している場合には、最高温度位置は、各高温領域12a、12bにて、放電容器12Aの上側面に生じる。中央の低温領域12c(
図3)において、定在波の節の振幅が最小の位置にて、最も温度が低くなる。放電容器12Aにて定在波は左右対称的に形成される。従って、中央の最低温位置は、放電容器12Aの軸線方向の中央の位置にある。
【0035】
放電容器12Aの中央の最低温位置から、両側の最高温位置までの距離を、それぞれLbとし、両端までの距離を、それぞれLaとする。この放電容器12Aでは、L=138mm、Lt=8.5mm、La=69mm、Lb=34.5mmである。無電極ランプ12の全長、即ち、両側の突起部12B、12Bの外端の間の寸法は155mmである。
【0036】
放電容器12Aの外径Dは、D=11mmであり、放電容器12Aの肉厚は1mmである。
【0037】
風除け用フードの軸線方向の寸法Lhは中央の低温領域12cの軸線方向の寸法に対応して設定される。本実施形態では、風除け用フードの軸線方向の寸法Lhは、Lh=20〜30mm、風除け用フードの肉厚は1.0〜1.5mm、好ましくは1.2mmである。風除け用フードがスリーブ状、又は、円筒状の場合には、内径はDhi=12〜13mm、好ましくは12.5mmである。風除け用フード20を放電容器12Aの外周面に接触するように装着してもよいが、好ましくは接触しないように、即ち、両者の間に環状空間が形成されるように、装着する。
【0038】
風除け用フードの材質は、マイクロ波透過性の物質であればどのような物質であってもよく、例えば、石英ガラスであってよい。
【0039】
図5を参照して、本実施形態に係る無電極ランプの放電容器12Aに装着された風除け用フード20の機能を説明する。
図2を参照して説明したように、マイクロ波空洞5に配置された無電極ランプ12を冷却するために冷却用空気17が供給される。冷却用空気17は、無電極ランプ12の軸線に直交する方向に供給される。
図3を参照して説明したように、放電容器12Aの中央の低温領域12cでは、冷却用空気17は、風除け用フード20の外周面に衝突し、放電容器12Aの外周面に直接衝突しない。
【0040】
図示のように、風除け用フード20は、好ましくは、放電容器12Aの外周面に接触しないように、即ち、両者の間に環状空間が形成されるように、装着される。風除け用フード20と放電容器12Aの間の環状空間に冷却用空気17が直接侵入することはないが、空気は自由に出入することができる。従って、放電容器12Aの中央の低温領域12cでは、冷却用空気17による冷却作用は軽減される。風除け用フード20と放電容器12Aの間の環状空間は、空気が自由に出入することができるように、少なくとも1mmあるとよい。
【0041】
本実施形態は、風除け用フード20が放電容器12Aの外周面に接触する場合を排除するものではない。
【0042】
放電容器12Aの中央の低温領域12c以外の領域では、冷却用空気17は、放電容器12Aの外周面に直接衝突する。従って、低温領域12c以外の領域では、冷却用空気17による冷却作用は変わらない。従って、放電容器12Aの中央の低温領域12cの風除け用フード20によりUV−A領域(315〜400nm)の発光強度及び発光効率を高めることができる。
【0043】
図6A、
図6B及び
図6Cを参照して本実施形態に係る風除け用フードの構造と機能を説明する。
図6Aに示す例では、風除け用フード20は、スリーブ状、又は、円筒状に形成され、その断面は円環状である。風除け用フード20の材質は、マイクロ波透過性であり且つ紫外線透過性の物質であればどのような物質であってもよく、例えば、石英ガラスであってよい。
【0044】
風除け用フード20の軸線が放電容器12Aの軸線に整合するように、風除け用フード20を装着する。風除け用フード20を放電容器12Aに接触するように装着してもよいが、好ましくは、両者の間には環状空間が形成されるように、装着する。この環状の空間に空気は自由に出入りできる。風除け用フード20は、放電容器12Aの外周面に適当な方法によって装着されてよい。例えば、風除け用フード20の縁の一部を溶着によって放電容器12Aに固定してよい。冷却用空気17は、風除け用フードの軸線に直交する方向より風除け用フードに衝突する。
【0045】
図6Bに示す例では、風除け用フード20は、円筒を軸線方向に沿って切断した樋型形状に形成され、その断面は、半円弧状、半楕円弧状又は放物線状である。
図6Cに示す例では、風除け用フードは、多角形の筒状体を軸線方向に沿って切断した樋型山形形状に形成され、その断面は、半多角形状である。
【0046】
図6B及び
図6Cに示す実施形態では、風除け用フード20の軸線が放電容器12Aの軸線に整合するように、風除け用フード20を装着する。風除け用フード20は、放電容器12Aの半周を覆うように、冷却用空気17が直接放電容器12Aに当たらないよう設けられている。
図6B及び
図6Cに示す実施形態では、風除け用フード20と放電容器12Aの間には半円周方向に沿って空間が形成されている。しかしながら、風除け用フード20は、少なくとも一部が放電容器12Aに接触するように装着してもよい。尚、風除け用フード20の内面に反射膜21を設けてもよい。但し、反射膜21は、紫外線を反射するが、マイクロ波を透過させる材料によって形成される。
【0047】
風除け用フード20は、放電容器12Aの外周面に適当な方法によって装着されてよい。例えば、風除け用フード20の縁の一部を溶着によって放電容器12Aに固定してよい。冷却用空気17は、風除け用フードの軸線に対して直交する方向より風除け用フードに衝突する。
【0048】
図7A及び
図7Bを参照して本願発明者が行った実験結果を説明する。本願の発明者は、
図5及び
図6Aに示した本実施形態によるスリーブ状の風除け用フード付きの無電極ランプを用いて発光強度の分光スペクトルを測定した。比較例として風除け用フード無しの無電極ランプを用いて発光強度の分光スペクトルを測定した。放電容器12Aに封入した発光物質は、少なくとも水銀、及び、鉄を含む。鉄は、鉄単体、又は、鉄系ハロゲン化物(ヨウ化鉄、臭化鉄)として含む。
【0049】
図7Aは波長315〜400nm(UV−A域)における、発光強度の測定結果を示す。横軸は波長(単位:nm)、縦軸は発光強度(相対値)である。破線のグラフは、比較例の無電極ランプを用いた場合を示し、実線のグラフは、本実施形態による無電極ランプを用いた場合を示す。波長365nm付近のピークは水銀を表し、その周辺に鉄の発光帯を表す。縦軸の発光強度の相対値は、水銀のピークの値を基準値1として求めた。
【0050】
本実施形態による無電極ランプ(実線のグラフ)を比較例の無電極ランプ(破線のグラフ)と比較すると、UV−A領域の発光強度が改善されていることが判る。発光強度の増加量は約6%であった。
【0051】
図7Bは、
図7Aのグラフの一部(楕円形内)を拡大したものであり、波長355〜400nmにおける、発光強度を示す。横軸は波長(単位:nm)、縦軸は発光強度(相対値)である。縦軸の発光強度の相対値は、比較例の無電極ランプを用いた場合の鉄(374nm)のピークの値を基準値1として求めた。本実施形態の風除け用フード付き無電極ランプを用いることによって、波長355〜400nmにおける発光強度が改善されることが判った。特に、3つのピークに対応する鉄成分に起因する発色の強度が改善されることが明らかとなった。従って、発光物質に、鉄単体、又は、鉄系ハロゲン化物を含む場合には、無電極ランプに風除け用フードを装着することによって、発光強度及び発光効率が著しく改善される。
【0052】
本実施形態の無電極ランプは、樹脂硬化用の紫外線光源として用いて好適である。
【0053】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲はこれらの実施の形態によって制限されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者であれば容易に理解されよう。