(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通常乗降用の動作パラメータおよび前記安全乗降用の動作パラメータは、速度設定値、および、推力制限値であることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の車両用ドア制御装置。
前記通常乗降用の動作パラメータは、戸挟み時に前記車両用ドアの推力の強弱を周期的に変更する推力であり、前記安全乗降用の動作パラメータは、前記車両用ドアを再開閉するような前記車両用ドアの位置であることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の車両用ドア制御装置。
前記車両用ドア制御装置は、前記安全乗降用の動作パラメータに切り換えられたときに安全乗降がなされることを外部の運行管理システムに通知し、運行管理者に伝えること
を特徴とする請求項2〜請求項5の何れか一項に記載の車両用ドア制御装置。
前記安全乗降用の動作パラメータと前記通常乗降用の動作パラメータとを比較して前記安全乗降用の動作パラメータが非安全側のデータである場合には、前記安全乗降用の動作パラメータを無視し、前記通常乗降用の動作パラメータ値を用いて開閉動作を行うこと
を特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の車両用ドア制御装置。
前記安全乗降用動作パラメータ発生装置は、運行管理システムもしくはプラットホームに設置されたドア制御操作装置に備えられていることを特徴とする請求項13に記載の車両用ドア制御システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
先に説明した特許文献1,2に記載の先行技術では、設定した動作パラメータを変更する場合には、記憶部を書き換える必要がある。したがって、動作パラメータの変更は容易ではなかった。
【0015】
また、非特許文献1の
図8(本願添付の
図6)の推力に強弱の変化を加える駆動方法では、車両用ドアに挟まれた対象を抜き易くしつつも車両用ドアが閉方向にしか動作しないようにする。しかしながら、車椅子やベビーカーなどの大物や、ボストンバッグなどの長尺物を抜くのは困難で、これらのものが挟まった場合には車両用ドアを再び開ける操作が必要となる。安全に乗降したい場合には採用が難しかった。
【0016】
そして、非特許文献1の
図9(本願添付の
図7)の一旦開方向に開いた後に再度閉方向へ動作させる手法では、車両用ドアに挟まれた対象を、より抜き易くする。しかしながら、戸閉に時間がかかること、また、開いた車両用ドアで再度乗客の乗降が生じること、という問題がある。安全に乗降したい場合に適したものであるが、定時運行を確保したい場合には採用が難しかった。
このように安全性の確保と定時運行とを動作パラメータの設定により共に実現することは容易ではなかった。
【0017】
また、特許文献1では、ホームドア毎に個別に動作パラメータを変更するスイッチを設けており、このスイッチにより、車いすの乗降など対応も都度可能である。しかしながら、ホームドアの速度が変わるのみで、車両用ドアの動作は変わらない。したがって、乗降客の安全確保という観点では、対応が不十分である。
【0018】
そこで、本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗降客の事情に応じて車両用ドアの動作パターンを柔軟に変更可能とし、安全性を高める車両用ドア制御装置
および車両用ドア制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の車両用ドア制御装置は、
乗降客が乗降する車両の車両用ドアの開閉についての通常乗降用の動作パラメータを予め記憶する記憶部と、
前記記憶部から読み出した通常乗降用の動作パラメータに基づいて前記車両用ドアの開閉についての通常乗降用の速度指令値及び推力指令値を生成し、通常乗降用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置に推力を発生させ、前記車両用ドアの開閉を制御する制御部と、
を有し、さらに前記制御部は、
外部の運行管理システムから発せられ、無線により伝送された安全乗降用の動作パラメータを前記記憶部に書き込み、前記記憶部から読み出した安全乗降用の動作パラメータに基づいて前記車両用ドアの開閉についての安全乗降用の速度指令値及び推力指令値を生成し、安全乗降用の速度指令値及び推力指令値に基づいて前記車両用ドア駆動装置に推力を発生させ、前記車両用ドアの開閉を制御する。
【0020】
また、本発明の車両用ドア制御装置は、
乗降客が乗降する車両の車両用ドアの開閉についての通常乗降用の動作パラメータを予め記憶する記憶部と、
前記記憶部から読み出した通常乗降用の動作パラメータに基づいて前記車両用ドアの開閉についての通常乗降用の速度指令値及び推力指令値を生成し、通常乗降用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置に推力を発生させ、前記車両用ドアの開閉を制御する制御部と、
を有し、さらに前記制御部は、
プラットホームのドア位置にあるドア制御操作装置から発せられ、無線により伝送された安全乗降用の動作パラメータを前記記憶部に書き込み、前記記憶部から読み出した安全乗降用の動作パラメータに基づいて前記車両用ドアの開閉についての安全乗降用の速度指令値及び推力指令値を生成し、安全乗降用の速度指令値及び推力指令値に基づいて前記車両用ドア駆動装置に推力を発生させ、前記車両用ドアの開閉を制御する。
【0021】
また、本発明の車両用ドア制御装置は、
乗降客が乗降する車両の車両用ドアの開閉についての通常乗降用の動作パラメータを予め記憶する記憶部と、
前記記憶部から読み出した通常乗降用の動作パラメータに基づいて前記車両用ドアの開閉についての通常乗降用の速度指令値及び推力指令値を生成し、通常乗降用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置に推力を発生させ、前記車両用ドアの開閉を制御する制御部と、
を有し、さらに前記制御部は、
プラットホームのホームドアにあるドア制御操作装置から発せられ、無線により伝送された安全乗降用の動作パラメータを前記記憶部に書き込み、前記記憶部から読み出した安全乗降用の動作パラメータに基づいて前記車両用ドアの開閉についての安全乗降用の速度指令値及び推力指令値を生成し、安全乗降用の速度指令値及び推力指令値に基づいて前記車両用ドア駆動装置に推力を発生させ、前記車両用ドアの開閉を制御する。
【0022】
また、本発明の車両用ドア制御装置は、
乗降客が乗降する車両の車両用ドアの開閉についての通常乗降用の動作パラメータを予め記憶する記憶部と、
前記記憶部から読み出した通常乗降用の動作パラメータに基づいて前記車両用ドアの開閉についての通常乗降用の速度指令値及び推力指令値を生成し、通常乗降用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置に推力を発生させ、前記車両用ドアの開閉を制御する制御部と、
を有し、さらに前記制御部は、
プラットホームのドア位置に認証装置を含むドア制御操作装置が配置され、前記認証装置により認証された操作者が操作した前記ドア制御操作装置から発せられ、無線により伝送された安全乗降用の動作パラメータを前記記憶部に書き込み、前記記憶部から読み出した安全乗降用の動作パラメータに基づいて前記車両用ドアの開閉についての安全乗降用の速度指令値及び推力指令値を生成し、安全乗降用の速度指令値及び推力指令値に基づいて前記車両用ドア駆動装置に推力を発生させ、前記車両用ドアの開閉を制御する。
【0023】
また、本発明の車両用ドア制御装置は、
乗降客が乗降する車両の車両用ドアの開閉についての通常乗降用の動作パラメータを予め記憶する記憶部と、
前記記憶部から読み出した通常乗降用の動作パラメータに基づいて前記車両用ドアの開閉についての通常乗降用の速度指令値及び推力指令値を生成し、通常乗降用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置に推力を発生させ、前記車両用ドアの開閉を制御する制御部と、
を有し、さらに前記制御部は、
プラットホームのホームドアに認証装置を含むドア制御操作装置が配置され、前記認証装置により認証された操作者が操作した前記ドア制御操作装置から発せられ、無線により伝送された安全乗降用の動作パラメータを前記記憶部に書き込み、前記記憶部から読み出した安全乗降用の動作パラメータに基づいて前記車両用ドアの開閉についての安全乗降用の速度指令値及び推力指令値を生成し、安全乗降用の速度指令値及び推力指令値に基づいて前記車両用ドア駆動装置に推力を発生させ、前記車両用ドアの開閉を制御する。
【0024】
本発明では、通常乗降用の動作パラメータおよび安全乗降用の動作パラメータは、速度設定値、および、推力制限値であることが好ましい。
【0025】
また、本発明では、通常乗降用の動作パラメータは、戸挟み時に車両用ドアの推力の強弱を周期的に変更する推力であり、安全乗降用の動作パラメータは、車両用ドアを再開閉するような車両用ドアの位置であることが好ましい。
【0026】
また、本発明では、車両用ドア制御装置は、安全乗降用の動作パラメータに切り換えられたときに安全乗降がなされることを車内の乗客に伝える報知部を有することが好ましい。
【0027】
また、本発明では、ドア制御操作装置は、安全乗降用の動作パラメータに切り換えられたときに安全乗降がなされることを操作者に伝える報知部を有することが好ましい。
【0028】
また、本発明では、車両用ドア制御装置は、安全乗降用の動作パラメータに切り換えられたときに安全乗降がなされることを運行管理システムに通知し、運行管理者に伝えることが好ましい。
【0029】
また、本発明では、車両用ドア制御装置は、安全乗降用の動作パラメータに切り換えられたときに安全乗降がなされることを運転台に通知し、列車乗務員に伝えることが好ましい。
【0030】
また、本発明では、安全乗降用の動作パラメータと通常乗降用の動作パラメータとを比較して安全乗降用の動作パラメータが非安全側のデータである場合には、安全乗降用の動作パラメータを無視し、通常乗降用の基準動作パラメータ値を用いて開閉動作を行うことが好ましい。
更に、本発明の車両用ドア制御システムは、
通常乗降用動作パラメータを
予め記憶し、この通常乗降用動作パラメータ
に基づいて車両用ドアの開閉を制御する車両用ドア制御装置と、
前記車両用ドア制御装置に対して安全乗降用動作パラメータを送信する安全乗降用動作パラメータ発生装置と、を備え、
前記車両用ドア制御装置は、前記安全乗降用動作パラメータを受信したとき、前記安全乗降用動作パラメータ
に基づいて車両用ドアの開閉を制御する、ことを特徴とする。
ここで、前記安全乗降用動作パラメータ発生装置は、運行管理システムもしくはプラットホームに設置されたドア制御操作装置に備えることが望ましい。
また、前記ドア制御操作装置は、プラットホームのドア位置またはホームドアに設置することが望ましい。
また、前記ドア制御操作装置はさらに認証装置を備え、前記安全乗降用動作パラメータは、前記認証装置により認証された操作者が操作した前記ドア制御操作装置から送信されることが望ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、乗降客の事情に応じて車両用ドアの動作パターンを柔軟に変更可能とし、安全性を高める車両用ドア装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
続いて、本発明を実施するための第1の形態に係る車両用ドア制御装置について、
図1を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
列車100は、運行システムにより運行が管理される。この運行システムでは、車両用ドアの通常乗降と安全乗降とを切り替える機能を有する。通常乗降ではいわゆる交通弱者ではない普通の人が乗降することを想定しており、車両用ドアの開閉について普通の安全配慮が採られる場合を想定している。一方、安全乗降では、乗降に時間を要する事情が生じたものとして車両用ドアの開閉について最善の安全配慮が採られる。安全乗降は、例えば、車椅子やベビーカーの利用者などいわゆる交通弱者が乗降するため安全に乗降できるようにする事態が想定される。
【0035】
この運行システムは、運行管理システム200、運行通信装置300を備える。運行管理システム200は運行通信装置300と有線・無線により通信する。また、運行通信装置300は、列車100の運転台110と無線により通信する。運行管理システム200が運行通信装置300へ指令やデータを送ると、運行通信装置300はそのまま列車100の運転台110へ指令やデータを送信する。また、運転台110が運行通信装置300へ指令やデータを送ると、運行通信装置300はそのまま運行管理システム200へ指令やデータを送信する。
【0036】
続いて車両用ドア制御装置が搭載される列車100について説明する。列車100は、
図1で示すように複数車両から構成される。なお、車両が1両であってもよい。列車100は、その先頭および最後の車両に運転台110を備える。運転台110には走行状態を示す計器類が置かれ、スイッチ、レバー、ハンドル、ペダルなど操作に必要なさまざまな装置が配置されている。列車100は、車掌がいない、いわゆるワンマン運転であり、運転台110から車両用ドア120の開閉が制御される。各車両には複数の車両用ドア120、この複数の車両用ドア120をそれぞれ開閉駆動する複数の車両用ドア駆動装置130、および、この複数の車両用ドア駆動装置130をそれぞれ制御する複数の車両用ドア制御装置140を備える。前後の運転台110および複数の車両用ドア制御装置140は列車内通信線150により通信可能に接続される。
【0037】
そして車両用ドア制御装置140は、
図1,
図2で示すように、さらに制御部141、記憶部142、報知部143(
図2参照)を備える。制御部141は、記憶部142、報知部143および車両用ドア駆動装置130と接続される。また、制御部141は、列車内通信線150と通信可能に接続される。記憶部142は、読み書き可能の装置であり、乗降客が乗降する車両用ドア120の開閉についての通常乗降用の動作パラメータを予め記憶している。通常乗降時はこの動作パラメータを用いて車両用ドア120の開閉制御を行う。報知部143は聴覚または視覚による報知機能を有し、例えば、車両用ドア120の上にある映像表示器である。また、別途設けたランプ等の報知部としても良い。
【0038】
運行管理システム200には、
図3で示すように、報知部160が接続されている。また、運転台110には、
図4で示すように、報知部170が接続されている。これら報知部160,170はいずれも聴覚または視覚による報知機能を有するものであり、例えば、映像表示器である。
【0039】
続いて、運行システムの実際の運用について説明する。まず、通常乗降について説明する。通常乗降では、車両用ドアの開閉が高速かつ高推力に設定されている。
【0040】
列車100が、A駅へ入線後に停車したものとする。この際、運行通信装置300から動作パラメータの送信はなされていない。運転台110から全ての車両用ドア120の開指令が出力されると、列車内通信線150を介して全ての車両用ドア制御装置140の制御部141がこの開指令を受信し、それぞれの制御部141は記憶部142に記憶された通常乗降用の動作パラメータを読み出し、この通常乗降用の動作パラメータから生成した開動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置130を速度制御しつつ推力を発生させ、車両用ドア120を開ける。
【0041】
そして、乗降終了後に運転台110から車両用ドア120の閉指令が出力されると、列車内通信線150を介して全ての車両用ドア制御装置140はこの閉指令を受信し、それぞれの制御部141は記憶部142に記憶された通常乗降用の動作パラメータを読み出し、この通常乗降用の動作パラメータから生成した閉動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置130を速度制御しつつ推力を発生させ、車両用ドア120を閉めることになる。
【0042】
この通常乗降用の閉動作用の動作パラメータについて説明する。
図5は車両用ドア制御装置による閉動作制御のタイムチャートである。通常乗降用の速度設定値は閉速度V
a1、閉速度V
a2、である。また、この際の推力制限値は、通常乗降用の設定値T
aとする。
【0043】
また、通常乗降用の他の動作パラメータとして、
図6の戸挟み時に車両用ドアの推力に強弱を加えた閉動作制御のタイムチャートで示すように、通常乗降用に、閉方向の速度指令値を与えた上で推力に強弱の変化をさせる動作を行う動作パラメータとしても良い。通常乗降の閉動作はこのようなものである。
【0044】
次に安全乗降について説明する。安全乗降では、車両用ドアの開閉が特別安全な低速かつ低推力に設定される。
【0045】
A駅で車椅子やベビーカーを利用する交通弱者の利用者が列車100の先頭の車両用ドア120から乗車するという情報が、地上にある運行管理システム200で入力される。すると、運行管理システム200は、A駅にある運行通信装置300に、列車100の先頭の車両用ドア120を制御する車両用ドア制御装置140に対して、安全乗降させるという指令と、安全乗降用の動作パラメータと、を送信する。運行通信装置300は車両100の車両台110へこの指令と安全乗降用の動作パラメータを送信する。
【0046】
ここで安全乗降用の動作パラメータについて説明する。安全乗降では特に車両用ドア120を閉めるときに速度および推進力を小さくするように配慮される。先に説明した
図5のタイムチャートで示すように、変更前の通常乗降用の速度設定値は閉速度V
a1、閉速度V
a2、であるのに対し、変更後の安全乗降用の設定値は、より小さい閉速度V
b1、閉速度V
b2である。また、この際の推力制限値T
bは、|変更前の通常乗降用の設定値T
a|>|変更後の安全乗降用の設定値T
b|とする。このように、通常乗降用の設定と比較して、安全乗降用の設定とは、安全乗降用の速度指令値と推力指令値とが低減されるようになされている。このような動作パラメータとする。
【0047】
また、安全乗降用の他の動作パラメータについて説明する。
図7は戸挟み時にドアを再開閉する閉動作制御のタイムチャートである。先に説明した通常乗降用の動作パラメータは、閉方向の速度指令値を与えた上で
図6に示すような、推力に強弱の変化をさせる閉動作を行う動作パラメータを採用した。そして、この安全乗降用の動作パラメータでは、
図7で示すように、一旦開方向に開いた後に再度閉方向へ閉動作を行う動作パラメータを採用する。さらに、この際の推力制限値は、|変更前の通常乗降用の設定値T
a|>|変更後の安全乗降用の設定値T
b|とする。このような動作パラメータであっても良い。
【0048】
通常乗降では、車両用ドア120に挟まれた対象を抜き易くしつつも車両用ドア120が閉方向にしか動作しないようにすることで、車両用ドア120が全閉して列車100が運行開始するまでの時間を短くし、列車100の定時運行を確保していた。しかしながら、この安全乗降では、車両用ドア120が開動作をすることで、乗降客や荷物が挟まれた際でもこれらを確実に引き抜くことができ、安全確保を最優先とする。このように各種の動作パラメータを選択することができる。
【0049】
さて、列車100が、A駅へ入線する。この際、運行通信装置300から運転台110へ上記のような安全乗降用の動作パラメータが伝送され、列車内通信線150を介して、列車100の先頭の車両用ドア120を制御する車両用ドア制御装置140の記憶部142にこの安全乗降用の動作パラメータが記憶される。そして記憶部142に安全乗降用の動作パラメータが登録された後に列車100が停車する。
【0050】
続いて、運転台110から車両用ドア120の開指令が出力されると、列車内通信線150を介して全ての車両用ドア制御装置140はこの開指令を受信し、先頭の車両用ドア120の制御部141は記憶部142に記憶された安全乗降用の動作パラメータを読み出して開動作用の速度指令値及び推力指令値を生成する。他の車両用ドア120の制御部141は記憶部142に記憶された通常乗降用の動作パラメータを読み出して開動作用の速度指令値及び推力指令値を生成する。各制御部141はこれら開動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置130を速度制御しつつ推力を発生させ、車両用ドア120を開ける。なお、車両用ドア120が開くときは閉まるときよりも安全性に影響が少ないため、全てを通常乗降用の動作パラメータとしても良い。
【0051】
そして、乗降が開始される。この際、車両用ドア制御装置140の制御部141は、安全乗降用の動作パラメータに切り換えられて安全乗降がなされることを、報知部143を介して車内の乗客に前もって伝えている。報知内容については記憶部142から報知データを読み出して報知する。報知部143は例えば液晶表示パネルであり、安全乗降がされる主旨の文および点滅などで車内の乗客に対して安全乗降が行われていることの注意を喚起しつつ表示する。なお、報知部143は、表示報知、音声報知、警報音報知などとし、またはこれらを併用するなど各種報知を採用することができる。このような構成を採用することで、車椅子利用者やベビーカー利用者等が乗車することを前もって列車内の車両用ドア120付近の乗客に報知する。すると列車100内の乗客がA駅到着に先だって車両用ドア120周辺にスペースを空け、円滑な乗降が行われることを期待できる。
【0052】
また、この際に、
図3で示すように、安全乗降用の動作パラメータを通知した運行管理システム200は、報知部160も同様の報知を行わせる。この際に動作パラメータの報知も行う。この報知は、運行管理システム200が安全乗降用の動作パラメータを通知したときから行われる。これで、運行管理者に対し、安全乗降が行われていることの注意を喚起しつつ表示する。特に各車両用ドア120の動作パラメータの最新設定を、列車の運行管理者に知らせることにより、運行管理者がドア開閉および乗降客の乗降で特に注意する箇所を容易に把握することができる。また、安全乗降時では各車両用ドア120の動作パターンが統一された動きではなく一部異なる動作となるが、それが意図された動作なのか、故障なのかを把握することもできる。
【0053】
また、この際に、
図4で示すように、安全乗降の動作パラメータを受信した運転台110は、報知部170に同様の報知を行わせる。これで、運転士などの列車乗務員に安全乗降が行われていることの注意を喚起しつつ表示する。
【0054】
そして、乗降終了後に運転台110から車両用ドア120の閉指令が出力されると、列車内通信線150を介して全ての車両用ドア制御装置140はこの閉指令を受信し、各車両用ドア制御装置140は閉動作を行う。
【0055】
ここで、指定された先頭の車両用ドア制御装置140の制御部141は、記憶部142に記憶された安全乗降用の動作パラメータを読み出して閉動作用の速度指令値及び推力指令値を生成し、この閉動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置130を速度制御しつつ推力を発生させ、車両用ドア120を閉める。
【0056】
他の車両用ドア制御装置140の制御部141は、通常乗降用の動作パラメータを記憶部142から読み出して閉動作用の速度指令値及び推力指令値を生成し、この閉動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置130を速度制御しつつ推力を発生させ、車両用ドア120を閉める。このようにして指定された先頭の車両用ドア120では安全乗降がなされる。先頭の車両用ドアが閉められたときに各報知部143,160,170での報知が停止される。本発明の車両用ドア制御装置140はこのような制御を行う。
【0057】
なお、本形態では、列車100がA駅に入線した際に、当該A駅における車両用ドア120の動作パラメータを列車100に伝送する構成とした。しかしながら、A駅のみならず他の駅における車両用ドア120の動作パラメータを一括して伝送する方式としてもよい。例えば、車椅子利用者が車両100における先頭の車両用ドア120からA駅で乗車してB駅で同じく先頭の車両用ドア120から降車するという情報が、地上にある運行管理システム200に入力されれば、A駅での乗車に加えてB駅の降車でも安全乗降とする指令および動作パラメータを送ることでA駅およびB駅でいずれも安全乗降を行うことができる。
【0058】
また、特定の車両用ドア120についてのみ安全乗降を行うものとして説明したが、安全乗降がされるときには全ての車両用ドア120で安全乗降用の開閉制御を行うようにしても良い。
また、先の説明では列車100の入線中に動作パラメータを通信するものとして説明したが、列車100が停車してから通信を行うようにしても良い。
【0059】
このような本発明によれば、列車100への安全乗降を望む利用者(例えば、車椅子やベビーカーの利用者)は、通常乗降の車両用ドア120から乗車する場合に比べて、車両用ドアに120挟まれにくく、かつ仮に挟まれても大きな衝撃を受けることなく、乗車することができ、安全性を高めている。
また、この安全乗降は個別の車両用ドア120を対象として、特定の乗車駅や降車駅のみに設定することもでき、自由度が高い。
このような動作パラメータの設定で、列車の定時運行と交通弱者である利用者の乗降の安全確保と、を可能な限り両立できるようにする。
【0060】
続いて他の形態について
図8〜
図10を参照しつつ説明する。本形態ではプラットホーム400上にドア制御操作装置500が設置されている場合を想定する。先に説明したように運行管理システム200、運行通信装置300を用いて設定ができる点に加え、他にドア制御操作装置500の操作部540からも安全乗降のための指示ができるようにしたものである。なお、運行管理システム200、運行通信装置300、通常乗降用の動作パラメータ、安全乗降用の動作パラメータ、運行管理システムの報知部、運転台の報知部については先に
図1〜
図7を用いてした説明と同じであり、同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。車両用ドア制御装置140’を搭載する列車100’、プラットホーム400、ドア制御操作装置500について重点的に説明する。なお、
図8では発明の明瞭化のため、列車100’とプラットホーム400とを離して図示しているが、実際には列車100’とプラットホーム400とは近接している。
【0061】
列車100’は、
図8,
図9で示すように、運転台110、複数の車両用ドア120、複数の車両用ドア駆動装置130、および、複数の車両用ドア制御装置140’を備える。運転台110および複数の車両用ドア制御装置140’は列車内通信線150により通信可能に接続される。車両用ドア制御装置140’は、先に説明した制御部141、記憶部142、報知部143に加え、新たに車上通信部144が追加されている。車上通信部144は、制御部141と接続されている。車上通信部144は、後述するドア制御操作装置500の地上通信部530と通信するようになされている。記憶部142は、車両用ドア120の開閉制御についての通常乗降用の動作パラメータを予め記憶している。通常乗降時はこの動作パラメータを用いて開閉制御を行う。
【0062】
プラットホーム400は、列車100’への乗降客の乗り降りのため、線路に沿って築かれる台である。
【0063】
ドア制御操作装置500は、プラットホーム400の上に設けられる装置である。ドア制御操作装置500は、制御部510、記憶部520、地上通信部530、操作部540、報知部550を備える。
【0064】
制御部510は、記憶部520、地上通信部530、操作部540、報知部550と接続されており、操作部540からの入力に応じて報知部550による表示とともに地上通信部530を用いて通信する。
【0065】
記憶部520は、読み書き可能の装置であり、利用者が乗降する車両用ドア120の開閉制御についての安全乗降用の動作パラメータを予め記憶している。安全乗降時はこの安全乗降用の動作パラメータを用いて車両用ドア120の開閉制御を行う。
【0066】
地上通信部530は、車上通信部144と通信する。本形態では一台のドア制御操作装置500に対し一の車両用ドア120が対応するように設けられ、ドア制御操作装置500の地上通信部530は、その対応する車上通信部144とのみ通信するものとする。地上通信部530から車上通信部144へ安全乗降用の動作パラメータが送信される。
【0067】
操作部540は、安全乗降を指定するための操作部である。操作部540は、例えば、通常のスイッチ入力装置、液晶パネル入力装置、カード入力装置など各種入力装置を備える。全ての利用者に操作部540の操作を許可する場合、これらを操作して安全乗降を指定できる。また、鉄道事業者、または、車椅子利用者やベビーカー利用者等の交通弱者である利用者に限定して操作部540の操作を許可する場合、操作部540は、上記の入力装置に加えて認証装置も備えるものとし、許可者しか携帯できない物理錠やICカード等によって認証後に、制御部510が操作部540の入力装置を操作できるようにする。これにより、扱い者を限定することができる。
【0068】
報知部550は、
図10で示すような表示器であり、操作部540の操作前では何も表示しないが、操作部540が操作されたときに制御部510が報知部550を表示制御して、安全乗降をする際の「特別運転」を表示する。ドア制御操作装置500はこのようなものである。
【0069】
続いて、実際の運用について説明する。まず、通常乗降について説明する。列車100’が、A駅へ入線後に停車したものとする。この際、ドア制御操作装置500から動作パラメータは送信されていない。運転台110から全ての車両用ドア120の開指令が出力されると、列車内通信線150を介して全ての車両用ドア制御装置140’がこの開指令を受信し、制御部141は記憶部142に記憶された上記の通常乗降用の動作パラメータを読み出し、この通常乗降用の動作パラメータから生成した開動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置130を速度制御しつつ推力を発生させ、車両用ドア120を開ける。
【0070】
そして、乗降終了後に運転台110から車両用ドア120の閉指令が出力されると、列車内通信線150を介して全ての車両用ドア制御装置140’はこの閉指令を受信し、制御部141は記憶部142に記憶された上記の通常乗降用の動作パラメータを読み出し、この通常乗降用の動作パラメータから生成した閉動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置130を速度制御しつつ推力を発生させ、車両用ドア120を閉める。通常乗降はこのようなものである。
【0071】
次に安全乗降について説明する。A駅で車椅子やベビーカーを利用する交通弱者の利用者が列車100’の先頭の車両用ドア120から乗車するため、プラットホーム400の先頭のドア制御操作装置500の操作部540を利用者や駅員などの操作者が操作したものとする。この際、操作部540が操作されたことを記憶部520に記憶すると共に、報知部550は
図10のように「特別運転」と表示する。この表示により、利用者や駅員などの操作者が安全乗降へ移行したことを確認できる。
【0072】
さて、列車100’が、A駅へ入線する。この際、ドア制御操作装置500の地上通信部530は、そのドア制御操作装置500に隣接する車上通信部144と通信できる状態になる。ドア制御操作装置500の制御部510は、特別運転が選択されたため、記憶部520から上記の安全乗降用の動作パラメータを読み出して、地上通信部530から車両用ドア制御装置140’の車上通信部144へ上記のような特別運転が選択されていることを指示する指令と、安全乗降用の動作パラメータを送信する。車両用ドア制御装置140’の記憶部142にこの安全乗降用の動作パラメータが記憶される。そして記憶部142に安全乗降用の動作パラメータが登録された後に列車が停車する。なお、この処理は特別運転が操作されたドア制御操作装置500のみが行う。
【0073】
続いて、運転台110から全ての車両用ドア120の開指令が出力されると、列車内通信線150を介して全ての車両用ドア制御装置140’はこの開指令を受信し、先頭の車両用ドア120の制御部141は記憶部142に記憶された上記の安全乗降用の動作パラメータを読み出し、この安全乗降用の動作パラメータに基づいて開動作用の速度指令値及び推力指令値を生成する。他の車両用ドア120の制御部141は記憶部142に記憶された通常乗降用の動作パラメータを読み出し、この通常乗降用の動作パラメータに基づいて開動作用の速度指令値及び推力指令値を生成する。各制御部141はこれら開動作の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置130を速度制御しつつ推力を発生させ、車両用ドア120を開ける。なお、車両用ドア120を開けるときは閉めるときよりも安全性に影響が少ないため、安全乗降用ではなく通常乗降用の動作パラメータとしても良い。
【0074】
そして、乗降が開始される。この際、先頭の車両用ドア120の車両用ドア制御装置140’の制御部141は、安全乗降用の動作パラメータに切り換えられたときに安全乗降がなされることを、報知部143を介して車内の乗客に前もって伝えている。報知内容については記憶部142からデータを読み出して報知する。車両用ドア制御装置140’の報知部143は、上記のような報知を行う。
【0075】
また、この際に、車両用ドア制御装置140’の制御部141は、列車内通信線150、運転台110、運行通信装置300を経て運行管理システム200と通信し、運行管理システム200に安全乗降用の動作パラメータおよび特別運転が選択されたことを通知している。
図3で示すように、安全乗降用の動作パラメータを受信した運行管理システム200の制御により、報知部160も同様の報知を行う。これで、運行管理者に対し、安全乗降が行われていることの注意を喚起しつつ表示する。
【0076】
また、この際に、車両用ドア制御装置140’の制御部141は、列車内通信線150を経て運転台110と通信し、運転台110に安全乗降用の動作パラメータおよび特別運転が選択されたことを通知する。
図4で示すように、安全乗降の動作パラメータを受信した運転台110の制御により、報知部170も同様の報知を行う。これで、運転士などの列車乗務員に安全乗降が行われていることの注意を喚起しつつ表示する。
【0077】
そして、乗降終了後に運転台110から車両用ドア120の閉指令が出力されると、列車内通信線150を介して全ての車両用ドア制御装置140’はこの閉指令を受信し、各車両用ドア制御装置140’は閉動作を開始する。
【0078】
ここで、先頭の指定された車両用ドア制御装置140’の制御部141は、記憶部142に記憶された上記の安全乗降用の動作パラメータを読み出し、この安全乗降用の動作パラメータに基づいて閉動作用の速度指令値及び推力指令値を生成する。他の車両用ドア120の車両用ドア制御装置140’の制御部141は記憶部142に記憶された上記の通常乗降用の動作パラメータを読み出し、この通常乗降用の動作パラメータに基づいて閉動作用の速度指令値及び推力指令値を生成する。各制御部141はこれら閉動作の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置130を速度制御しつつ推力を発生させ、車両用ドア120を閉める。先頭の車両用ドアが閉められたときに各報知部143,160,170での報知が停止される。本発明の車両用ドア制御装置140’はこのような制御を行う。
【0079】
なお、本形態では、列車100’がA駅に入線した際に、当該A駅における車両用ドア120の動作パラメータを列車100’に伝送する構成とした。しかしながら、A駅の車両用ドア120の動作パラメータのみならず他の駅における車両用ドア120の動作パラメータを一括して伝送する方式としてもよい。例えば、車椅子利用者が先頭車両100’における先頭の車両用ドア120からA駅で乗車してB駅で降車するという情報が、プラットホーム400上にあるドア制御操作装置500に入力されれば、A駅での乗車に加えてB駅の降車でも安全乗降とする指令および動作パラメータを送ることでA駅およびB駅でいずれも安全乗降を行うことができる。
【0080】
また、特定の車両用ドア120についてのみ安全乗降を行うものとして説明したが、全ての車両用ドア120で安全乗降を行うように開閉制御を行っても良い。
また、先の説明では列車100’の入線中に動作パラメータを通信するものとして説明したが、列車100’が停車してから通信を行うようにしても良い。
【0081】
このような本発明でも、A駅で車両用ドア120から列車100’に安全乗降を望む利用者(例えば、車椅子やベビーカーの利用者)は、通常乗降用の動作パラメータで駆動する車両用ドアから乗車する場合に比べて、車両用ドアに挟まれにくく、かつ仮に挟まれても大きな衝撃を受けることなく、乗車することができ、安全性を高めている。
また、列車へ乗車する前にドア制御操作装置500の操作部540を操作するのみで、この安全乗降も個別の車両用ドアを対象として、特定の乗車駅や降車駅のみに設定することもできる。
このような動作パラメータの設定で、列車の定時運行と交通弱者である利用者の乗降の安全確保と、を可能な限り両立できるようにする。
【0082】
続いて他の形態について
図11,
図12を参照しつつ説明する。本形態ではプラットホーム400上にホームドアシステム600が設置されている場合を想定する。このようなホームドアシステム600は、乗客の安全が確保され、列車のワンマン運転やホーム駅員の削減が推進されるため導入が進められている。運行管理システム200、運行通信装置300を用いて設定ができる点に加え、他にホームドアシステム600に設けられたドア制御操作装置640の操作部644からも安全乗降のための指示ができるようにしたものである。ホームドアシステム600のホームドア610は車両用ドア120と連動して安全乗降用の動作をする。なお、
図11では発明の明瞭化のため、列車100’とプラットホーム400・ホームドアシステム600とを離して図示しているが、実際には列車100’とプラットホーム400・ホームドアシステム600とは近接している。
【0083】
なお、運行管理システム200、運行通信装置300、通常乗降の動作パラメータ、安全乗降の動作パラメータ、運行管理システムの報知部、運転台の報知部については先に
図1〜
図7を用いてした説明と同じであり、同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。さらに列車100’、プラットホーム400については先に
図8,
図9を用いてした説明と同じであり、同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。ホームドア600について重点的に説明する。
【0084】
ホームドアシステム600は、プラットホーム400上に設けられる装置である。ホームドアシステム600は、ホームドア610、戸袋部620、ホームドア駆動装置630、ドア制御操作装置640を備える。
【0085】
ホームドア610は、駅のプラットホーム400の軌道側に沿って複数配置される。ホームドア610は右ドア左ドアの2枚ドアで構成される。ホームドア610は、プラットホーム400に発着する列車100’の車両ドア120の位置にそれぞれ対応して配置されている。
【0086】
戸袋部620は、プラットホーム120の軌道側に沿って立設されており、当該戸袋部620からホームドア610が出没自在に設けられる。戸袋部620は複数設けられる。
ホームドア駆動装置630は、ホームドア610をそれぞれ開閉駆動する。
【0087】
ドア制御操作装置640は、さらに制御部641、記憶部642、地上通信部643、操作部644、報知部645を備える。
制御部641は、記憶部642、地上通信部643、操作部644、報知部645と接続されており、操作部644からの入力に応じて報知部645による表示とともに地上通信部643を用いて通信する。
【0088】
記憶部642は、読み書き可能に構成された装置であり、利用者が乗降するホームドア610の開閉制御についての通常乗降用の動作パラメータおよび安全乗降用の動作パラメータを予め記憶している。安全乗降時はこの安全乗降用の動作パラメータを用いてホームドア610の開閉制御を行う。なお、安全乗降用の動作パラメータは、車両用ドア制御装置140’へ送られて車両用ドア120の開閉制御でも用いられる。
【0089】
地上通信部643は車上通信部144と通信する。本形態では一台のホームドア610に対し一の車両用ドア120が対応するように設けられ、ドア制御操作装置640の地上通信部643は、その対応する車上通信部144とのみ通信するものとする。地上通信部643から車上通信部144へ安全乗降用の動作パラメータが送信される。
【0090】
操作部644は、安全乗降を指定するための操作部である。操作部644は、例えば、通常のスイッチ入力装置、液晶パネル入力装置、カード入力装置など各種入力装置を備える。全ての利用者に操作部644の操作を許可する場合、これらを操作して安全乗降を指定できる。また、鉄道事業者、または、車椅子利用者やベビーカー利用者等の交通弱者である利用者に限定して操作部644の操作を許可する場合、操作部644は、上記の入力部装置に加えて認証装置も備えるものとし、許可者しか携帯できない物理錠やICカード等によって認証後に、制御部641が操作部644の入力装置を操作できるようにする。これにより、扱い者を限定することができる。
【0091】
報知部645は、
図10で示すような表示器であり、操作部644の操作前では何も表示しないが、操作部644が操作されたときに制御部641が報知部645を表示制御して、安全乗降をする際の「特別運転」を表示する。ドア制御操作装置640はこのようなものである。
【0092】
続いて、実際の運用について説明する。まず、通常乗降について説明する。列車100’が、A駅へ入線後に停車したものとする。この際、ドア制御操作装置640の地上通信部643は、そのドア制御操作装置640に隣接する車上通信部144と通信できる状態になる。この際、ホームドアシステム600のドア制御操作装置640から動作パラメータは送信されていない。運転台110から全ての車両用ドア120の開指令が出力されると、列車内通信線150を介して全ての車両用ドア制御装置140’がこの開指令を受信し、制御部141は車上通信部144および地上通信部643を介して通信し、ドア制御操作装置640にもホームドア610の開指令を送る。
【0093】
ホームドアシステム600において、ドア制御操作装置640の制御部641は記憶部642に記憶された上記の通常乗降用の動作パラメータを読み出し、この通常乗降用の動作パラメータから生成した開動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいてホームドア駆動装置630を速度制御しつつ推力を発生させ、ホームドア610を開ける。
【0094】
また、同時に車両100’において、車両用ドア制御装置140’の制御部141は記憶部142に記憶された上記の通常乗降用の動作パラメータを読み出し、この通常乗降用の動作パラメータから生成した開動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置130を速度制御しつつ推力を発生させ、車両用ドア120を開ける。
車両用ドア120とホームドア610とはほぼ同時に開くこととなる。
【0095】
そして、乗降終了後に運転台110から全ての車両用ドア120の閉指令が出力されると、列車内通信線150を介して全ての車両用ドア制御装置140’がこの閉指令を受信し、制御部141は車上通信部144および地上通信部643を介して通信し、ドア制御操作装置640にもホームドア610の閉指令を送る。
【0096】
ホームドアシステム600において、ドア制御操作装置640の制御部641は記憶部642に記憶された上記の通常乗降用の動作パラメータを読み出し、この通常乗降用の動作パラメータから生成した閉動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいてホームドア駆動装置630を速度制御しつつ推力を発生させ、ホームドア610を閉じる。
【0097】
また、同時に車両100’において、車両用ドア制御装置140’の制御部141は記憶部142に記憶された上記の通常乗降用の動作パラメータを読み出し、この通常乗降用の動作パラメータから生成した閉動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置130を速度制御しつつ推力を発生させ、車両用ドア120を閉じる。
車両用ドア120とホームドア610とはほぼ同時に閉まることとなる。通常乗降はこのようなものである。
【0098】
次に安全乗降について説明する。A駅で車椅子やベビーカーを利用する交通弱者の利用者が列車100’の先頭の車両用ドア120から乗車するため、ホームドアシステム600の先頭のドア制御操作装置640の操作部644を利用者や駅員などの操作者が操作したものとする。この際、操作部644が操作されたことを記憶部642に記憶すると共に、報知部645は
図10のように「特別運転」と表示する。この表示により、利用者や駅員などの操作者が安全乗降へ移行したことを確認できる。
【0099】
さて、列車100’が、A駅へ入線する。この際、ドア制御操作装置640の地上通信部643は、そのドア制御操作装置640に隣接する車上通信部144と通信できる状態になる。ドア制御操作装置640の制御部641は、特別運転が選択されたため、記憶部642から上記の安全乗降用の動作パラメータを読み出して、地上通信部643から車両用ドア制御装置140’の車上通信部144へ上記のような特別運転が選択されていることを指示する指令と、安全乗降用の動作パラメータを送信する。車両用ドア制御装置140’の記憶部142にこの安全乗降用の動作パラメータが記憶される。そして記憶部142に安全乗降用の動作パラメータが登録された後に列車が停車する。なお、この処理は特別運転されるホームドア610のドア制御操作装置640のみが行う。
【0100】
運転台110から全ての車両用ドア120の開指令が出力されると、列車内通信線150を介して全ての車両用ドア制御装置140’がこの開指令を受信し、制御部141は車上通信部144および地上通信部643を介して通信し、ドア制御操作装置640にもホームドア610の開指令を送る。
【0101】
ホームドアシステム600において、先頭のホームドア610のドア制御操作装置640の制御部641は記憶部642に記憶された上記の安全乗降用の動作パラメータを読み出し、この安全乗降用の動作パラメータに基づいて開動作用の速度指令値及び推力指令値を生成する。他のホームドア610のドア制御操作装置640の制御部641は記憶部642に記憶された上記の通常乗降用の動作パラメータを読み出し、この通常乗降用の動作パラメータに基づいて開動作用の速度指令値及び推力指令値を生成する。各制御部641は、これら開動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいてホームドア駆動装置630を速度制御しつつ推力を発生させ、ホームドア610を開ける。
【0102】
また、同時に車両100’において、先頭の車両用ドア120の制御部141は記憶部142に記憶された上記の安全乗降用の動作パラメータを読み出し、この安全乗降用の動作パラメータに基づいて開動作用の速度指令値及び推力指令値を生成する。他の車両用ドア120の制御部141は記憶部142に記憶された上記の通常乗降用の動作パラメータを読み出し、この通常乗降用の動作パラメータに基づいて開動作用の速度指令値及び推力指令値を生成する。各制御部141はこれら開動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいて車両用ドア駆動装置130を速度制御しつつ推力を発生させ、車両用ドア120を開ける。車両用ドア120とホームドア610とはほぼ同時に開くこととなる。なお、ホームドア610および車両用ドア120が開くときは閉まるときよりも安全性に影響が少ないため、全て通常乗降用の動作パラメータであっても良い。
【0103】
そして、乗降が開始される。この際、先頭の車両用ドア120の車両用ドア制御装置140’の制御部141は、安全乗降用の動作パラメータに切り換えられたときに安全乗降がなされることを、報知部143を介して車内の乗客に伝える。報知内容については記憶部142からデータを読み出して報知する。この際に車両用ドア制御装置140’の報知部143は、上記のような報知を行っている。
【0104】
また、この際に、車両用ドア制御装置140’の制御部141は、列車内通信線150、運転台110、運行通信装置300を経て運行管理システム200と通信し、運行管理システム200に安全乗降用の動作パラメータおよび安全乗降が選択されたことを通知している。
図3で示すように、安全乗降の動作パラメータを受信した運行管理システム200の制御により、報知部160も同様の報知を行う。これで、運行管理者に対し、安全乗降が行われていることの注意を喚起しつつ表示する。
【0105】
また、この際に、車両用ドア制御装置140’の制御部141は、列車内通信線150を経て運転台110と通信し、運転台110に安全乗降用の動作パラメータおよび安全乗降が選択されたことを通知する。
図4で示すように、安全乗降の動作パラメータを受信した運転台110の制御により、報知部170も同様の報知を行う。これで、運転士や車掌という列車乗務員に安全乗降が行われていることの注意を喚起しつつ表示する。
【0106】
乗降終了後に運転台110から全ての車両用ドア120の閉指令が出力されると、列車内通信線150を介して全ての車両用ドア制御装置140’がこの閉指令を受信し、制御部141は車上通信部144および地上通信部643を介して通信し、ドア制御操作装置640にもホームドア610の閉指令を送る。
【0107】
ホームドアシステム600において、先頭のホームドア120のドア制御操作装置640の制御部641は記憶部642に記憶された上記の安全乗降用の動作パラメータを読み出し、この安全乗降用の動作パラメータに基づいて閉動作用の速度指令値及び推力指令値を生成する。また、他のホームドア120のドア制御操作装置640の制御部641は記憶部642に記憶された上記の通常乗降用の動作パラメータを読み出し、この通常乗降用の動作パラメータに基づいて閉動作用の速度指令値及び推力指令値を生成する。これら閉動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいてそれぞれのホームドア駆動装置630を速度制御しつつ推力を発生させ、ホームドア610を閉じる。
【0108】
また、同時に車両100’において、先頭の車両用ドア制御装置140’の制御部141は記憶部142に記憶された上記の安全乗降用の動作パラメータを読み出し、安全乗降用の動作パラメータに基づいて閉動作用の速度指令値及び推力指令値を生成する。また、他の車両用ドア制御装置140’の制御部141は記憶部142に記憶された上記の通常乗降用の動作パラメータを読み出し、この通常乗降用の動作パラメータに基づいて閉動作用の速度指令値及び推力指令値を生成する。これら閉動作用の速度指令値及び推力指令値に基づいてそれぞれ車両用ドア駆動装置130を速度制御しつつ推力を発生させ、車両用ドア120を閉じる。
車両用ドア120とホームドア610とはほぼ同時に閉まることとなる。安全乗降はこのようなものである。先頭の車両用ドアが閉められたときに各報知部143,160,170での報知が停止される。本発明の車両用ドア制御装置140’はこのような制御を行う。
【0109】
なお、本形態では、列車100’がA駅に入線した際に、当該A駅における車両用ドア120の動作パラメータを列車100’に伝送する構成とした。しかしながら、A駅のみならず他の駅における車両用ドア120の動作パラメータを一括して伝送する方式としてもよい。例えば、車椅子利用者が先頭車両100’における先頭の車両用ドア120からA駅で乗車してB駅で降車するという情報が、プラットホーム400上のホームドアシステム600にあるドア制御操作装置640に入力されれば、A駅での乗車に加えてB駅の降車でも特定の車両用ドアで安全乗降を行うとする指令および動作パラメータを送ることでA駅およびB駅でいずれも安全乗降を行うことができる。
【0110】
また、特定の車両用ドア120についてのみ安全乗降を行うものとして説明したが、全ての車両用ドア120で安全乗降を行うようにしても良い。
また、先の説明では列車100’の入線中に動作パラメータを通信するものとして説明したが、列車100’が停車してから通信を行うようにしても良い。
【0111】
このような本発明でも、A駅で列車100’への安全乗降を望む利用者(例えば、車椅子やベビーカーの利用者)は、通常乗降の動作パラメータで駆動する車両用ドアおよびホームドアから乗車する場合に比べて、車両用ドアおよびホームドアに挟まれにくく、かつ仮に挟まれても大きな衝撃を受けることなく、乗車することができ、安全性を高めている。
また、列車へ乗車する前に操作部を操作するのみで、この安全乗降も個別の車両用ドアおよびホームドアを対象として、特定の乗車駅や降車駅のみに設定することもできる。
このような動作パラメータの設定で、列車の定時運行と交通弱者である利用者の乗降の安全確保と、を可能な限り両立できるようにする。
【0112】
続いて、第1,第2,第3の形態を改良した第4の形態について説明する。
先の第1,第2,第3の形態において、特に安全乗降用の動作パラメータと通常乗降用の動作パラメータとを比較して安全乗降用の動作パラメータが、非安全側のデータである場合には、安全乗降用の動作パラメータを無視し、通常乗降用の動作パラメータ値を用いて開閉動作を行うようにした。非安全側のデータとは、例えば、安全乗降時の速度指令値及び推力指令値が、通常乗降時の速度指令値及び推力指令値よりも大きくなるようなデータである。これは、動作パラメータが地上から車上へ伝送される際の伝送誤りにより動作パラメータが変化したときの非安全なドア動作を防ぐものである。このようにすることでより安全性を高めることができる。
【0113】
続いて、第1,第2,第3,第4の形態を改良した第5形態について説明する。
上記した列車100,100’は車内からは安全乗降を指定できなかった。しかしながら、上記したドア制御操作装置500を列車100,100’内にも搭載すれば、列車100,100’から降車するときにも安全乗降を指定することができ、降車時の安全性の向上を図ることができる。