(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも前記挿入工程の前に、前記一方の部材と前記他方の部材との接合面の何れか一方に、さらに1種以上の異種金属部材を組み付ける接合工程が備えられ、前記一方の部材及び前記他方の部材を含む少なくとも3種以上の異種金属部材を一体化することを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の異種金属複合部材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来は、異種金属部材同士を一体化するにあたり、素材自体の特性を失うことなく、簡便な操作で一体化することが可能な装置や方法については、何ら提案されていなかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の異種金属部材を組み付けて一体化する際、素材の内部に大きな歪みが蓄積されたり、熱的な影響によって接合境界付近に異物が発生したりするのを防止でき、素材の特性を低下させることなく、低コストであるとともに簡便な操作で一体化させることが可能な異種金属複合部材
の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、まず、本発明に係る異種金属複合部材の製造装置は、密閉容器と、前記密閉容器内に配置され、互いに嵌合可能な複数の異種金属部材の内の一方の部材を支持するとともに、該一方の部材を冷却可能な冷却機能付支持台と、前記冷却機能付支持台に支持された前記一方の部材と同心状に他方の部材を支持する支持機構と、前記支持機構を前記密閉容器外から操作することにより、前記他方の部材を前記一方の部材に近接、離間する方向に移動させる移動機構と、前記一方の部材を、前記冷却機能付支持台を介して冷却する冷却機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成の異種金属複合部材の製造装置によれば、冷却機能付支持台に支持された一方の部材が冷却機構で冷却されて縮小し、この状態で支持機構を操作して一方の部材と他方の部材とを嵌め合わせた後、一方の部材の冷却を停止して常温に昇温させることで、一方の部材が元の寸法に拡大し、一方の部材と他方の部材との間が高い接合強度及びシール性を有した状態で圧入・嵌合された状態となる。これにより、複数の異種金属部材を組み付けて一体化する際、素材の内部に大きな歪みが蓄積されたり、接合境界付近に異物が発生したりするのを防止できる。従って、各素材の特性を低下させることなく、簡便な操作で複数の異種金属部材を一体化させることができるとともに、強度等の各種特性に優れた異種金属複合部材を組み合わせ設計、製造することが可能となる。
例えば、常温における直径が100mmのステンレス棒を液体窒素で冷却すると、2.5/1000の割合で縮小するので、直径が99.75mmとなるので、直径が99.88mmの穴に対して無理なく嵌合することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る異種金属複合部材の製造装置は、上記構成において、前記移動機構が、前記密閉容器を貫通する駆動軸を有し、前記駆動軸と前記密閉容器の表面との間に、前記駆動軸の移動に伴って弾性変形可能な真空シール体が設けられている構成を採用してもよい。
【0010】
このような構成の異種金属複合部材の製造装置によれば、上記の真空シール体が設けられることで、密閉容器の外部から支持機構を操作した場合であっても密閉容器内の気密性を高く保つことができる。これにより、密閉容器内を減圧環境とすることで、一方の部材を冷却した場合でも、各異種金属部材や装置内部に結露が生じるのを防止でき、得られる異種金属複合部材の接合性もより良好なものとなる。
【0011】
また、本発明に係る異種金属複合部材の製造装置は、上記構成において、前記密閉容器が真空減圧され、前記密閉容器と前記支持機構との間に、前記密閉容器の内外の圧力差によって前記駆動軸に生じる力を相殺する付勢手段が設けられている構成を採用してもよい。
【0012】
このような構成の異種金属複合部材の製造装置によれば、上記の付勢手段が設けられることで、密閉容器内を減圧した際に発生する、支持機構に対する密閉容器内への真空引き込み力を相殺できるので、異種金属複合部材や装置の破損を防止することが可能になる。
【0013】
また、本発明に係る異種金属複合部材の製造装置は、上記構成において、前記冷却機構が、圧縮機と、前記冷却機能付支持台に内蔵される冷却機とを備えてなる構成、あるいは、寒材を送通可能な構成を採用してもよい。
【0014】
このような構成の異種金属複合部材の製造装置によれば、圧縮機及び冷却機を用いて冷却機構を構成する方が、一方の部材を効率良く冷却して効果的に縮小させることができるので、一方の部材と他方の部材とを確実に嵌合して一体化することが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る異種金属複合部材の製造装置は、上記構成において、前記冷却機構が、冷媒として、液体ヘリウム、液体ネオン及び液体窒素の内の何れかが用いられ、前記一方の部材を当該冷媒の沸騰点温度付近まで冷却する構成を採用してもよい。
【0016】
このような構成の異種金属複合部材の製造装置によれば、上記の冷媒を用いることで、上記同様、一方の部材を効率良く冷却して効果的に縮小させることができるので、一方の部材と他方の部材とを確実に嵌合して一体化することが可能となる。
【0017】
さらに、本発明に係る異種金属複合部材の製造装置は、上記構成において、前記支持機構が、略管状の雌部材である前記他方の部材を加熱するヒータ等の加熱手段を備えていてもよい。
【0018】
次に、本発明に係る異種金属複合部材の製造方法は、複数の異種金属部材を互いに嵌合して組み付ける異種金属複合部材の製造方法であって、密閉容器内に配置された冷却機能付支持台に、前記複数の異種金属部材の内、略軸状の雄部材である一方の部材を支持させるとともに、略管状の雌部材である他方の部材を、前記一方の部材と同心状に支持機構に支持させる支持工程と、次いで、前記冷却機能付支持台に支持された前記一方の部材を冷却することにより、該一方の部材の外径Diを、常温とされた前記他方の部材の内径doよりも小さくなるように縮小させる冷却工程と、次いで、前記一方の部材を冷却しながら、前記支持機構を前記密閉容器外から操作することで前記他方の部材を前記一方の部材側に向けて移動させ、前記一方の部材を外径Diが縮小した状態で前記他方の部材に挿入した後、前記一方の部材の冷却を停止する挿入工程と、次いで、前記一方の部材を、前記他方の部材に挿入された状態で昇温させ、前記一方の部材の外径Diが前記他方の部材の内径doよりも大きくなるように拡大させることで、前記一方の部材と前記他方の部材とを嵌合状態で一体化した後、前記支持機構を前記他方の部材から離間させる嵌合工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
このような構成の異種金属複合部材の製造方法によれば、冷却工程において、雄部材である一方の部材を冷却することで、その外径Diを、他方の部材の内径doよりも小さくなるように縮小させ、挿入工程において、一方の部材を外径Diが縮小した状態で他方の部材に挿入した後に冷却を停止し、嵌合工程において、他方の部材に挿入された状態で一方の部材を昇温させ、一方の部材の外径Diが他方の部材の内径doよりも大きくなるように拡大させる方法なので、上記同様、一方の部材と他方の部材との間が高い接合強度及びシール性を有した状態で圧入・嵌合された状態となる。これにより、上記同様、複数の異種金属部材を組み付けて一体化する際、素材の内部に大きな歪みが蓄積されたり、接合境界付近に異物が発生したりするのを防止できる。従って、各素材の特性を低下させることなく、簡便な操作で複数の異種金属部材を一体化させることができるとともに、強度等の各種特性に優れた異種金属複合部材を製造することが可能となる。
例えば、常温における外径Diが100.10mmのステンレス棒からなる一方の部材を液体窒素で冷却すると、99.85mmまで縮小するので、内径doが100.00mmの他方の部材に対して無理なく挿入・嵌合することが可能となる。
【0020】
なお、本発明に係る異種金属複合部材の製造方法は、上記構成において、前記支持工程の前に、予め、前記密閉容器内を真空減圧した状態とすることがより好ましい。
【0021】
このような構成の異種金属複合部材の製造方法によれば、密閉容器内を予め真空減圧した状態とすることで、一方の部材を冷却した際に、各異種金属部材や装置内部に結露が生じるのを防止できるので、得られる異種金属複合部材の密着性もより良好となる。
【0022】
また、本発明に係る異種金属複合部材の製造方法は、上記構成において、少なくとも前記挿入工程の前に、前記一方の部材の外周面、又は、前記他方の部材の内周面の少なくとも一方に、予め、金、銀、白金からなる群から選ばれる貴金属、又は、鉛、錫、インジウムからなる群から選ばれる低融点金属の内の少なくとも何れかからなる介在層を形成した後、前記一方の部材を前記他方の部材に挿入することがより好ましい。
【0023】
このような構成の異種金属複合部材の製造方法によれば、一方の部材と他方の部材との接合面の間に、上記金属材料からなる軟質な介在層を設けることで、この介在層が真空シール材として機能するので、一方の部材と他方の部材とを気密性良く一体化することが可能となる。
【0024】
また、本発明に係る異種金属複合部材の製造方法は、上記構成において、少なくとも前記挿入工程の前に、さらに、前記一方の部材の外周面、又は、前記他方の部材の内周面の少なくとも一方に、予め、常温下で粘性を有するグリース等の高分子材料を塗布する方法を採用してもよい。
【0025】
このような構成の異種金属複合部材の製造方法によれば、一方の部材と他方の部材の各々の接合面の間に、高分子材料を予め塗布しておくことで、上記同様、この高分子材料が真空シール材として機能するので、一方の部材と他方の部材とを気密性良く一体化することが可能となる。
【0026】
また、本発明に係る異種金属複合部材の製造方法は、上記構成において、少なくとも前記挿入工程の前に、前記一方の部材と前記他方の部材との接合面の何れか一方に、さらに1種以上の異種金属部材を組み付ける接合工程が備えられ、前記一方の部材及び前記他方の部材を含む少なくとも3種以上の異種金属部材を一体化する方法を採用してもよい。
【0027】
このような構成の異種金属複合部材の製造方法によれば、さらに1種以上の異種金属部材を組み付ける接合工程が備えられることで、異種金属複合部材を、各種用途に応じて、強度特性や耐熱性を考慮した構成とすることが可能になる。
【0028】
また、本発明に係る異種金属複合部材の製造方法は、上記構成において、前記接合工程が、摩擦圧接法を用いて前記1種以上の異種金属部材を前記一方の部材又は前記他方の部材に接合する方法を採用してもよい。
【0029】
このような構成の異種金属複合部材の製造方法において、摩擦圧接法を併用して、さらに1種以上の異種金属部材を一方の部材又は他方の部材に接合することで、作業性が向上するとともに、より高い接合強度が得られる。
【0030】
また、本発明に係る異種金属複合部材の製造方法は、上記構成において、前記嵌合工程が、前記密閉容器内に窒素ガス又はヘリウムガスを封入することにより、前記一方の部材の昇温を促進させる方法を採用してもよい。
【0031】
このような構成の異種金属複合部材の製造方法によれば、嵌合工程において、直ちに一方の部材を常温に昇温させることができるので、一方の部材と他方の部材とを確実に嵌合状態として一体化できるとともに、工程時間が短縮されて生産性も向上する。
【0032】
また、前記挿入工程は、さらに、略管状の雌部材である前記他方の部材を加熱しながら、前記一方の部材を前記他方の部材に挿入することがより好ましい。
【0033】
このような構成の異種金属複合部材の製造方法によれば、挿入工程において、他方の部材を加熱することで、他方の部材の内径doが拡大するので、一方の部材を挿入するのが容易になる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る異種金属複合部材の製造装置によれば、上記構成により、冷却機能付支持台に支持された一方の部材が冷却機構で冷却されて縮小し、この状態で支持機構を操作して一方の部材と他方の部材とを嵌め合わせた後、一方の部材の冷却を停止して常温に昇温させることで、一方の部材が元の寸法に拡大し、一方の部材と他方の部材との間が高い接合強度及びシール性を有した状態で圧入・嵌合された状態となる。これにより、複数の異種金属部材を組み付けて一体化する際、素材の内部に大きな歪みが蓄積されたり、接合境界付近に異物が発生したりするのを防止できる。
【0035】
また、本発明に係る異種金属複合部材の製造方法によれば、上記構成により、冷却工程において、雄部材である一方の部材を冷却することで、その外径Diを、他方の部材の内径doよりも小さくなるように縮小させ、挿入工程において、一方の部材を外径Diが縮小した状態で他方の部材に挿入した後に冷却を停止し、嵌合工程において、他方の部材に挿入された状態で一方の部材を昇温させ、一方の部材の外径Diが他方の部材の内径doよりも大きくなるように拡大させる方法なので、上記同様、一方の部材と他方の部材との間が高い接合強度及びシール性を有した状態で圧入・嵌合された状態となる。これにより、上記同様、複数の異種金属部材を組み付けて一体化する際、素材の内部に大きな歪みが蓄積されたり、接合境界付近に異物が発生したりするのを防止できる。
【0036】
従って、本発明に係る異種金属複合部材の製造装置及び製造方法によれば、各素材の特性を低下させることなく、複数の異種金属部材を低コスト且つ簡便な操作で一体化させることができるとともに、強度等の各種特性に優れた異種金属複合部材を製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態である異種金属複合部材の製造装置、及び、異種金属複合部材の製造方法(以下、単に製造装置、又は、製造方法と略称することがある)の一例を挙げ、その構成及び作用について、
図1〜
図4を適宜参照しながら詳述する。
図1は本実施形態の異種金属複合部材の製造装置1の構成を説明する概略図であり、
図2〜
図4は本実施形態の異種金属複合部材の製造装置及び製造方法によって得られる異種金属複合部材の構成を説明する概略図である。
【0039】
[異種金属複合部材]
まず、本実施形態の製造装置及び製造方法によって製造される異種金属複合部材について説明する。
図2(a)、(b)に示すように、本実施形態の製造装置及び製造方法で得られる異種金属複合部材100は、複数の異種金属部材が組み付けられて一体化されたものである。図示例の異種金属複合部材100は、異種金属部材である略軸状のコア部材(一方の部材)101が、略管状であるアウター部材(他方の部材)102に嵌合され、異種・異形の金属部材が一体化されたマルチ部材として構成とされている。
【0040】
コア部材(一方の部材)101は、
図1及び
図2(a)、(b)に示すように、略軸状の雄部材として構成され、図示例においては、フランジ部101Aと軸部101Bとから構成されている。
【0041】
フランジ部101Aは、コア部材101とアウター部材102とを嵌合した後、異種金属複合部材100の表面に突出する部位であり、コア部材101の軸部101Bをアウター部材102の嵌合孔102A内に挿入した際のストッパーとしても機能する。また、図示例のフランジ部101Aの側面側には複数の凹部101aが形成されている。この凹部101aは、例えば、異種金属複合部材100を局部的に温度上昇が発生しやすい部材等に適用した場合に、部材表面で発生する高熱の放熱部としても機能させることができる。
【0042】
軸部101Bは、フランジ部101Aから延出するように形成される軸状の部位であり、
図2(a)、(b)に示す例では、略丸棒状に形成されている。本実施形態の異種金属複合部材100においては、この軸部101Bが、アウター部材102の嵌合孔102Aに嵌め込まれる部位となる。
【0043】
コア部材101の材質としては、特に限定されず、異種金属複合部材100の用途を勘案しながら、強度特性や耐食性に優れた金属材料を選択することができ、例えば、ステンレス鋼やチタン合金等を採用することができる。また、コア部材101にステンレス鋼を用いる場合には、例えば、SUS403等の高強度ステンレス鋼材料を用いることができ、熱伝導性に優れた金属材料を選択する場合には、例えば、アルミニウムや銅材料を用いることができる。
【0044】
アウター部材(他方の部材)102は、略管状の雌部材として構成され、上述したように、嵌合孔102Aの内部にコア部材101の軸部101Bが嵌入される。また、アウター部材102とコア部材101とを組み付けた際、コア部材101のフランジ部101Aがアウター部材102の一端102a側に当接する。
【0045】
アウター部材102の材質としても、特に限定されず、異種金属複合部材100の用途を勘案しながら、外装材としての強度特性等を勘案しながら金属材料を選択することができる。ここで、特に、異種金属複合部材100をシャフト等の回転部材に用いる場合、部材自体が磁性体としての特性を有していることが求められることがあるが、この場合、アウター部材102にもステンレス鋼を用いることができ、例えば、SUS630等が挙げられる。
【0046】
ここで、例えば、異種金属複合部材100を、局部的に温度上昇が発生しやすい部材等に適用した場合には、コア部材101の材質を、アウター部材102よりも熱伝導性の高い材質とし、部材表面で発生した熱をコア部材101側から放熱し易い構成とすることで、部材の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0047】
また、異種金属複合部材100には、コア部材101の軸部101Bの外周面101bと、アウター部材102の内周面102bとの間、即ち、両部材の接合面に図示略の介在層を設けた構成を採用することができる。
【0048】
介在層としては、例えば、金、銀、白金からなる群から選ばれる貴金属か、あるいは、鉛、錫、インジウムからなる群から選ばれる低融点金属の内の少なくとも何れかからなることが好ましい。上述のような金属材料からなる軟質な介在層を、コア部材101とアウター部材102との接合面の間に設けることにより、介在層が真空シール材として機能し、コア部材101とアウター部材102とを気密性(密着性)良く一体化することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の異種金属複合部材は、上記の介在層に代えて、コア部材101の軸部101Bの外周面101bと、アウター部材102の内周面102bとの間の接合面に、常温下で粘性を有する図示略の高分子材料が塗布された構成とすることができる。このような場合、詳細を後述するように、例えば、コア部材101とアウター部材102とを組み付ける前に、予め、真空グリース等の高分子材料を塗布しておけばよい。
【0050】
本実施形態の異種金属複合部材においては、上述のような真空グリース等、常温化で粘性を有する高分子材料を接合面に配置することにより、上記の介在層を設けた場合と同様、高分子材料が真空シール材として機能するので、コア部材101とアウター部材102とを気密性(密着性)良く一体化できる効果が得られる。
【0051】
また、上述のような、軟質の金属材料からなる図示略の介在層や、高分子材料は、コア部材101の外周面101bとアウター部材102の内周面102bとの間において、少なくとも一部に設けられていれば、各部材間における所定の気密性(密着性)が得られるが、接合面の全体にわたって設けられていることが、より気密性(密着性)が高められる観点から好ましい。
【0052】
本実施形態の製造装置及び製造方法によって得られる異種金属複合部材100のサイズや形状としても、特に限定されず、異種金属複合部材100の用途を勘案しながら、適宜決定することができる。例えば、
図1及び
図2(a)、(b)に示す例の異種金属複合部材100において、シャフト等に適用することを想定した場合、コア部材101の軸部101Bの外径Di及びアウター部材102の内径doを概ね30mm以上、アウター部材102、即ち、異種金属複合部材100としての総外径Dを概ね40mm以上とすることができる。
【0053】
また、本実施形態の製造装置及び製造方法によって得られる異種金属複合部材としては、上記の構成のものには限定されず、例えば、
図3(a),(b)及び
図4の断面図に示す例のように、コア部材とアウター部材との間に、さらに1種以上の異種金属部材を設けた構成とすることもできる。
図3(a),(b)に示す例の異種金属複合部材200は、断面略円形状のコア部材201とアウター部材202との間に、中間部材203が設けられている。また、
図4に示す例の異種金属複合部材300は、断面略三角形状のコア部材301と断面略矩形状のアウター部材302との間を埋めるように、中間部材303が設けられている。
【0054】
図3(a),(b)及び
図4に示す例のように、異種金属からなる中間部材203,303を設ける場合には、その材質を、例えば、アルミニウム、銅、クロム銅等の熱伝導性の高い金属材料とすることにより、異種金属複合部材200としての熱伝導性が良好となる。従って、例えば、異種金属複合部材200,300を、上述したような局部的に温度上昇が発生しやすい部材等に適用した場合であっても、部材表面で発生した熱が、中間部材203,303を介してコア部材201,301に即座に伝わり、これらコア部材201,301から放熱することで異種金属複合部材200,300の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態の製造装置及び製造方法によって得られる異種金属複合部材において、コア部材、アウター部材及び中間部材に用いられる金属材料の組み合わせとしても、特に限定されない。例えば、
図3(a),(b)に示す異種金属複合部材200の場合には、下記表1に示すように、コア部材201として高強度材であるSUS403又はチタン合金、アウター部材202として磁性材であるSUS630、そして、中間部材203としてアルミニウム、アルミニウム合金や、銅(電気銅)、クロム銅等の銅合金の何れかの各材料を、適宜組み合わせて用いることができる。
【0057】
また、
図4に示す異種金属複合部材300の場合には、下記表2に示すように、異種金属複合部材200の場合と同様、コア部材301として高強度材であるSUS403又はチタン合金、アウター部材302として磁性材であるSUS630、中間部材303としてアルミニウム、銅(電気銅)、クロム銅の何れかの各材料を、適宜組み合わせて用いることができる。
【0059】
なお、
図3(a),(b)及び
図4に示す例のような中間部材203,303を設けた構成を採用した場合には、上述した低融点金属からなる介在層又は高分子材料を、コア部材201,301と中間部材203,303との間、及び、アウター部材202,302と中間部材203,303との間のそれぞれに設けることが好ましい。
【0060】
本実施形態の製造装置及び製造方法によって得られる異種金属複合部材100,200,300は、例えば、局部的に温度上昇が発生しやすい部材や、配管継手等、高い寸法精度や強度特性が求められる各種複合部材等に適用されるものである。本実施形態で得られる異種金属複合部材100,200,300は、詳細を後述する本実施形態の製造装置1及び製造方法で製造されるものなので、各部材をなす素材の良好な特性が維持され、強度等の各種特性に優れたものとなる。
【0061】
[異種金属複合部材の製造装置]
図1に示すように、本実施形態の異種金属複合部材の製造装置1は、密閉容器2と、この密閉容器2内に配置され、互いに嵌合可能な複数の異種金属部材の内の一方の部材であるコア部材101を支持するとともに、コア部材101を冷却可能な冷却機能付支持台3と、この冷却機能付支持台3に支持されたコア部材101と同心状に、他方の部材であるアウター部材102を支持する支持機構4と、この支持機構4を密閉容器2外から操作することにより、アウター部材102をコア部材101に近接、離間する方向に移動させる移動機構5と、コア部材101を冷却機能付支持台3を介して冷却する冷却機構6とを備え、概略構成される。
【0062】
密閉容器2は、縦長箱状の容器本体21と、この容器本体21の開口部21aを塞ぐ蓋部22とからなり、内部空間を密閉するように構成されている。
図1に示すように、容器本体21には、その内部空間において、底部付近に冷却機能付支持台3が設置されるとともに、上部における蓋部22の近傍に支持機構4が配置される。
また、図示例の製造装置1においては、容器本体21の縦長方向略中央付近に2箇所の減圧口21Aが形成されており、この減圧口21Aを通じて、密閉容器2内が真空ポンプ7によって真空減圧される構成とされている。
【0063】
蓋部22は、容器本体21に対して、図示略のシール部材を介して、開口部21aを塞ぐように図示略のボルト等によって固定されている。
また、蓋部22には、所定のシール性を有する挿通孔22Aが形成されており、この挿通孔22Aに、支持機構4を動作させるための移動機構5に備えられる駆動軸51が挿通されるように構成されている。
【0064】
冷却機能付支持台3は、上述したように、密閉容器2内に設置され、コア部材101を、軸部101Bが上方を向くように上端3aで支持しながら冷却するものである。冷却機能付支持台3へのコア部材101の固定方法としては、特に限定されず、例えば、冷却機能付支持台3を磁性材から構成することで、磁力によって固定しても良いし、あるいは、図示略のクランプ機構によってフランジ部101Aが固定される構成としてもよい。
【0065】
また、
図1に示す例では、冷却機能付支持台3には、詳細を後述する冷却機構6に備えられる熱交換物質(ガス)輸送管62が他端部3bに接続されており、冷却機能付支持台3の内部に形成された図示略の流路に圧縮機61から高圧ガスヘリウム等の熱交換物質が送り込まれることで、まず、冷却機能付支持台3が冷却される。そして、製造装置1は、冷却機能付支持台3の冷却により、この冷却機能付支持台3に支持されるコア部材101が冷却・縮小されるように構成されている。なお、コア部材101の冷却効率を高めるため、冷却機能付支持台3とコア部材101との間にグリースや低融点金属を介在させてもよい。
【0066】
支持機構4は、上述したように、冷却機能付支持台3に支持されたコア部材101と同心状にアウター部材102を支持するものであり、密閉容器2内において蓋部22近傍に配置されている。また、図示例の支持機構4は、略円筒状(断面略コの字状)の支持体41の側壁41aの複数箇所に、アウター部材102を固定するための固定ねじ42が取り付けられた構成とされている。そして、アウター部材102は、固定ねじ42による複数箇所での締め付けにより、その上部側の一部が支持体41の内部空間に入り込むように固定される。
【0067】
また、支持機構4は、支持体41の上面41bに、移動機構5を構成する駆動軸51が接続されており、移動機構5の動作によって、支持機構4及びこの支持機構4に支持されたアウター部材102が移動する。
【0068】
さらに、図示を省略するが、支持機構4には、略管状の雌部材であるアウター部材(他方の部材)102を、概ね100℃程度まで昇温させることが可能な、ヒータ等の加熱手段が備えられていてもよい。
【0069】
移動機構5は、上記の支持機構4を密閉容器2外から操作することにより、アウター部材102をコア部材101に近接、離間する方向、即ち、
図1中に示す矢印U方向で移動させるものである。図示例の移動機構5は、ハンドル52を回転させることで、このハンドル52に接続された操作軸53に備えられる図示略のねじ機構の回転により、駆動軸51が矢印U方向でスライド移動することで、支持機構4を
図1中において上下動させることが可能な構成とされている。これにより、移動機構5は、支持機構4に支持されたアウター部材102をコア部材101に近接させ、両部材を嵌合させた後、アウター部材102の固定状態を解除した支持機構4を、再び密閉容器2内の上部へ戻すことができる。
【0070】
また、移動機構5は、密閉容器2外に露出した駆動軸51の一部や、操作軸53の一部等が、収容ケース55によって覆われるように構成されている。また、操作軸53は、収容ケース55に設けられた挿通孔55Aに挿通され、収容ケース55の外部においてハンドル52と接続される。
【0071】
また、
図1に示す例の移動機構5は、密閉容器2の蓋部22を貫通する駆動軸51を有し、この駆動軸51と密閉容器2の表面2aとの間に、駆動軸51の移動に伴って弾性変形可能な真空シール体54が設けられている。この真空シール体54は、筒状で且つ蛇腹状の低ばね弾性を有する金属部品等から構成され、その下部側が封止部54Bによって密閉容器2の蓋部22の表面に固定されるとともに、上部側が、板状の封止板54Aの端部に固定されている。また、詳細な図示を省略するが、封止板54Aの平面視略中央付近において、駆動軸51と操作軸53とが接続されることで、封止板54Aと駆動軸51及び操作軸53との間が固定されている。
【0072】
ここで、駆動軸51と挿通孔22Aとの間は、摺動性を確保する観点から、この部分のシール性については、必ずしも真空状態での使用に耐えうるものではない場合がある。このような場合には、駆動軸51と挿通孔22Aとの間のシール性を、所定のシール性を有する程度に抑制したうえで、上記の真空シール体54を設けことにより、密閉容器2の外部から支持機構4を操作した場合であっても密閉容器2内の気密性を高く保つことができる。従って、密閉容器2内を減圧環境とすることで、コア部材101を冷却した場合でも、密閉容器2内部に配置されたコア部材101やアウター部材102、ひいては異種金属複合部材100や装置内部に結露が生じるのを防止でき、得られる異種金属複合部材100の接合性もより良好なものとなる。
【0073】
なお、本実施形態においては、図示例のように、密閉容器2と支持機構4との間に、減圧された密閉容器2の内外の圧力差によって駆動軸51に生じる力を相殺するバネ部(付勢手段)56が設けられている構成を採用してもよい。このようなバネ部56を設けることにより、密閉容器2内を減圧した際に発生する、支持機構4に対する密閉容器2内への真空引き込み力を相殺できるので、コア部材101及びアウター部材102(異種金属複合部材100)の他、製造装置1の何れかの箇所が破損するのを防止できる。
【0074】
冷却機構6は、圧縮機61と、冷却機能付支持台3に内蔵される図示略の冷却機とを備えてなるものであり、圧縮機61から冷却機能付支持台3に内蔵される冷却機に向けて、高圧配管と低圧配管とからなる熱交換物質(ガス)輸送管62を介して熱交換物質(ガス)が送り込まれることで、冷却機能付支持台3に支持されるコア部材101が冷却されるものである。
【0075】
冷却機構6に用いられる圧縮機61としては、従来から工業用素材の冷却処理等に用いられるものを何ら制限無く採用することができる。このように、圧縮機61と、冷凍機が内蔵された冷却機能付支持台3を用いて冷却機構6を構成することで、コア部材101を効率良く冷却して効果的に縮小させることができるので、コア部材101とアウター部材102とを確実に嵌合して一体化することが可能となる。
【0076】
また、冷却機構6において用いられる熱交換ガスとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ヘリウムガスを熱交換ガスとして用い、コア部材101を当該冷媒の沸騰点温度付近まで冷却する構成を採用することが好ましい。
【0077】
ここで、冷却機構6によるコア部材101の冷却温度は、特に限定されるものではないが、詳細を後述するコア部材101の軸部101Bの外径Diを効果的に縮小させるためには、例えば、液体窒素等により、−200℃以下の冷却限界に近い温度までコア部材101を冷却することが好ましい。
【0078】
本実施形態の異種金属複合部材の製造装置1によれば、上記構成により、冷却機能付支持台3上のコア部材101が冷却機構6によって冷却されることで軸部101Bの外径Diが縮小する。この状態で、移動機構5による支持機構4の操作でコア部材101とアウター部材102とを嵌め合わせた後、コア部材101の冷却を停止して常温に昇温させることで、コア部材101の軸部101Bが元の寸法に拡大するので、コア部材101とアウター部材102との間が高い接合強度及びシール性を有した状態で圧入・嵌合された状態と同様の状態になる。これにより、複数の異種金属部材を組み付けて一体化する際に、素材の内部に大きな歪みが蓄積されたり、接合境界付近に異物が発生したりするのを防止できるので、各素材の特性を低下させることなく、低コストであるとともに簡便な操作で複数の異種金属部材を一体化させ、強度等の各種特性に優れた異種金属複合部材を組み合わせ設計、製造することが可能となる。
【0079】
[異種金属複合部材の製造方法]
以下、本実施形態の異種金属複合部材の製造方法について、
図1に示すような製造装置1を用いて、複数の異種金属部材、即ちコア部材101とアウター部材102とを互いに嵌合して組み付けることにより、
図2(a)、(b)に示すような異種金属複合部材100を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0080】
本実施形態の異種金属複合部材100の製造方法は、少なくとも以下に示す(1)〜(4)の各工程を備える方法である。
(1)密閉容器2内に配置された冷却機能付支持台3に、複数の異種金属部材の内、略軸状の雄部材であるコア部材(一方の部材)101を支持させるとともに、略管状の雌部材であるアウター部材(他方の部材)102を、コア部材101と同心状に支持機構4に支持させる支持工程。
(2)支持工程に次いで、冷却機能付支持台3に支持されたコア部材101を冷却することにより、コア部材101の軸部101Bの外径Diを、常温とされたアウター部材102の内径doよりも小さくなるように縮小させる冷却工程。
(3)冷却工程に次いで、コア部材101を冷却しながら、支持機構4を密閉容器2の外部から操作することでアウター部材102をコア部材101側に向けて移動させ、コア部材101の軸部101Bを外径Diが縮小した状態でアウター部材102の嵌合孔102Aに挿入した後、コア部材101の冷却を停止する挿入工程。
(4)挿入工程に次いで、コア部材101を、アウター部材102に挿入された状態で昇温させ、コア部材101の軸部101Bの外径Diがアウター部材102の嵌合孔102Aの内径doよりも大きくなるように拡大させることで、コア部材101とアウター部材102とを嵌合状態で一体化した後、支持機構4をアウター部材102から離間させる嵌合工程。
【0081】
(1)支持工程
本実施形態の製造方法においては、まず、支持工程において、冷却機能付支持台3にコア部材101を支持させるとともに、アウター部材102をコア部材101と同心状に支持機構4に支持させる。
【0082】
この際、上述したように、冷却機能付支持台3へのコア部材101の取り付けは、図示略のクランプ機構によって行ってもよいし、あるいは、磁力による接続で行っても良い。また、冷却機能付支持台3とコア部材101との接触面にグリース等を塗布しておくことが、これらの間の密着性が高められ、後述の冷却工程におけるコア部材101の冷却効率が向上する観点から、より好ましい。また、支持機構4へのアウター部材102の取り付けは、支持体41の側壁41aに複数で設けられた固定ねじ42を締め付けることで行う。
【0083】
また、本実施形態においては、支持工程の前に、予め、密閉容器2内を真空ポンプ7によって真空減圧した状態とすることがより好ましい。このように、密閉容器2内を予め真空減圧した状態とすることで、コア部材101を冷却した際に、このコア部材101やアウター部材102、さらには製造装置1の内部の各箇所に結露が生じるのを防止できる。これにより、結露による水分等の影響を受けることなく、安定して部材間の組付けを行うことが可能となるので、得られる異種金属複合部材100の接合性も良好となる。
【0084】
(2)冷却工程
次に、冷却工程においては、コア部材101を冷却することにより、コア部材101の軸部101Bの外径Diを、常温とされたアウター部材102の内径doよりも小さくなるように縮小させる。この際、コア部材101を冷却するにあたっては、上述した冷却機構6を用い、圧縮機61から熱交換物質(ガス)輸送管62を介して冷却機能付支持台3に熱交換物質(高圧ガスヘリウム)を送り込む。冷却機能付支持台3に送り込まれた熱交換物質は、図示略の冷却機が内蔵された冷却機能付支持台3の所定の部位で熱交換した後、圧縮機61に向けて還流される。
【0085】
冷却工程においては、コア部材101を冷却することで、金属材料の収縮により、軸部101Bの外径Diが、概ね数十μm程度、縮小する。より具体的には、例えば、コア部材101の軸部101Bの外径Diが100mmである場合、−200℃以下まで冷却することで、概ね100μm(0.1mm)程度、収縮する(
図1中に示したコア部材101の二点鎖線を参照)。
【0086】
(3)挿入工程
次に、挿入工程においては、コア部材101を冷却した状態で、支持機構4を密閉容器2の外部から操作することで、アウター部材102をコア部材101側に向けて移動させる。この際、コア部材101の軸部101Bを、外径Diが縮小した状態でアウター部材102の嵌合孔102Aに挿入する。この際、
図2(a)に示すように、コア部材101のフランジ部101Aが、アウター部材102の一端102aに当接するまで、挿入操作を行う。
【0087】
上述のように、冷却工程においてコア部材101を冷却することで、コア部材101の軸部101Bの外径Diが100mmである場合には、概ね100μm(0.1mm)程度の縮小が生じる。即ち、例えば、常温におけるアウター部材102の嵌合孔102Aの内径doを99.95mmに設定し、常温におけるコア部材101の軸部101Bの外径Diを100.0mmに設定した場合には、コア部材101を冷却することで軸部101Bの外径Diが概ね99.9mm程度に収縮するので、コア部材101の軸部101Bを、アウター部材102の嵌合孔102Aの内部に支障なく挿入することが可能になる。この際、コア部材101の軸部101Bと、アウター部材102の嵌合孔102Aとの位置合わせを容易にするため、例えば、軸部101Bの先端、あるいは、嵌合孔102Aの孔縁部の何れかに面取り処理を施してもよい。
【0088】
そして、挿入工程においては、コア部材101の軸部101Bのアウター部材102への挿入が完了した後、コア部材101の冷却を停止する。
【0089】
なお、本実施形態の製造方法においては、少なくとも挿入工程の前に、コア部材101の軸部101Bの外周面、又は、アウター部材102の嵌合孔102Aの内周面の少なくとも何れかの接合面に、予め、金、銀、白金からなる群から選ばれる貴金属、又は、鉛、錫、インジウムからなる群から選ばれる低融点金属の内の少なくとも何れかからなる図示略の介在層を形成しておき、その状態で、挿入工程〜嵌合工程を行うことがより好ましい。このように、挿入工程及び嵌合工程に先立ち、予め、コア部材101又はアウター部材102との接合面の間に、上記の金属材料からなる軟質な介在層を設けることで、この介在層が真空シール材として機能するので、コア部材101とアウター部材102とを気密性良く一体化することが可能となる。
【0090】
あるいは、本実施形態においては、少なくとも挿入工程の前に、コア部材101の軸部101Bの外周面、又は、アウター部材102の嵌合孔102Aの内周面の少なくとも一方に、予め、常温下で粘性を有するグリース等の高分子材料を塗布する方法を採用してもよい。このように、挿入工程及び嵌合工程に先立ち、予め、コア部材101又はアウター部材102との接合面の間に高分子材料を塗布しておくことで、上記同様、この高分子材料が真空シール材として機能するので、コア部材101とアウター部材102とを気密性良く一体化することが可能となる。上記のような粘性を有する高分子材料としては、例えば、従来から用いられている真空グリース等が挙げられる。
【0091】
また、挿入工程においては、さらに、略管状の雌部材であるアウター部材102を加熱しながら、コア部材101をアウター部材102に挿入することがより好ましい。このように、アウター部材102を、例えば、100℃程度まで加熱することで、アウター部材102の内径doが拡大するので、コア部材101を挿入するのが容易になる。
【0092】
(4)嵌合工程
次に、嵌合工程においては、挿入工程においてアウター部材102に挿入された状態の コア部材101を昇温させ、コア部材101の軸部101Bの外径Diがアウター部材102の嵌合孔102Aの内径doよりも大きくなるように拡大させる。即ち、上述のように、常温におけるアウター部材102の嵌合孔102Aの内径doを99.95mmに設定した場合、コア部材101が常温に昇温することで、その軸部101Bの外径Diが100.000mmに戻るので、コア部材101とアウター部材102とが、通常の焼き嵌めと同様に、強固な圧入状態で嵌合される。
【0093】
そして、嵌合工程においては、コア部材101とアウター部材102とを嵌合状態で一体化した後、アウター部材102から支持機構4を離間させる。この際、固定ねじ42を緩めることにより、アウター部材102を支持体41から開放する。
【0094】
なお、嵌合工程においては、コア部材101を昇温させるにあたり、密閉容器2内に窒素ガス又はヘリウムガスを封入することにより、コア部材101の昇温を促進させる方法を採用してもよい。これにより、コア部材101とアウター部材102とを組み付けた後、直ちにコア部材101を昇温させることができるので、これら両部材を確実に嵌合状態として一体化できるとともに、昇温時間の短縮に伴って工程時間も短縮されるので、生産性も向上する。
【0095】
(5)接合工程
本実施形態の製造方法においては、上記(1)〜(4)に示した各工程に加え、少なくとも(4)で示した挿入工程の前に、コア部材101の軸部101Bの外周面101b、又は、アウター部材102の内周面102bの何れかに、さらに1種以上の異種金属部材を組み付ける接合工程が備えられていてもよい。即ち、接合工程においては、さらに、図示略の異種金属部材を組み付けることで、コア部材101及びアウター部材102を含む、少なくとも3種以上の異種金属部材を一体化する方法を採用してもよい。
【0096】
具体的には、
図3(a),(b)及び
図4の断面図に示すように、まず、コア部材201,301、又は、アウター部材202,302の何れかに中間部材203、303を接合する。その後、上述のような挿入工程及び嵌合工程を経ることにより、コア部材201,301とアウター部材202,302との間に中間部材203、303が設けられた異種金属複合部材200,300を製造することができる。この際、中間部材203,303の材質としては、上述したような、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金や、銅、クロム銅等の銅合金のような、熱伝導性の高い金属材料を用いることができる。
【0097】
また、本実施形態において接合工程を設けた場合には、例えば、摩擦圧接法を用いて、1種以上の異種金属部材をコア部材又はアウター部材に接合する方法を採用してもよい。このように、摩擦圧接法を併用して、さらに1種以上の異種金属部材をコア部材又はアウター部材に接合することで、作業性が向上するとともに、より高い接合強度が得られる。
【0098】
なお、本実施形態において、上述のような接合工程を設け、
図3(a),(b)及び
図4に示すような中間部材203,303を組み付ける場合には、上述の介在層又は高分子材料を、コア部材201,301と中間部材203,303との間、及び、アウター部材202,302と中間部材203,303との間のそれぞれに形成又は塗布しておくことが好ましい。
【0099】
(6)後工程
本実施形態においては、上記のような嵌合工程を終えた異種金属複合部材100に対して、さらに、各種金属部材等を組み付けることで、異種金属複合部材100を、各種用途に応じた形状に構成することが可能になる。このように、さらに異種金属複合部材100に組み付けられる金属部材としては、例えば、本実施形態の異種金属複合部材100をシャフトに適用する場合には、このシャフトとの間で回転力の伝達が行われる歯車部材やスプライン部材等が挙げられる。
【0100】
上述したような本実施形態の製造方法によれば、上記方法を採用することにより、複数の異種金属部材を組み付けて一体化する際に、素材の内部に大きな歪みが蓄積されたり、接合境界付近に異物が発生したりするのを防止できる。これにより、各素材の特性を低下させることなく、複数の異種金属部材を低コスト且つ簡便な操作で一体化させることができるとともに、強度等の各種特性に優れた異種金属複合部材100を製造することが可能となる。
【0101】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態の異種金属複合部材の製造装置1によれば、上記構成により、冷却機能付支持台3に支持されたコア部材101が冷却機構6で冷却されて縮小し、この状態で支持機構4を操作してコア部材101とアウター部材102とを嵌め合わせた後、コア部材101の冷却を停止して常温に昇温させることで、コア部材101が元の寸法に拡大し、コア部材101とアウター部材102との間が高い接合強度及びシール性を有した状態で圧入・嵌合された状態となる。これにより、複数の異種金属部材を組み付けて一体化する際、素材の内部に大きな歪みが蓄積されたり、高温にさらされる場合のような接合境界付近に異物が発生したりするのを防止できる。
【0102】
また、本実施形態の異種金属複合部材の製造方法によれば、上記構成により、冷却工程において、雄部材であるコア部材101を冷却することで、その外径Diを、アウター部材102の内径doよりも小さくなるように縮小させ、挿入工程において、コア部材101を外径Diが縮小した状態でアウター部材102に挿入した後に冷却を停止し、嵌合工程において、アウター部材102に挿入された状態でコア部材101を昇温させ、コア部材101の外径Diがアウター部材102の内径doよりも大きくなるように拡大させる方法なので、上記同様、コア部材101とアウター部材102との間が高い接合強度及びシール性を有した状態で圧入・嵌合された状態となる。これにより、上記同様、複数の異種金属部材を組み付けて一体化する際、素材の内部に大きな歪みが蓄積されたり、接合境界付近に異物が発生したりするのを防止できる。
【0103】
従って、本実施形態の異種金属複合部材の製造装置及び製造方法によれば、各素材の特性を低下させることなく、複数の異種金属部材を低コスト且つ簡便な操作で一体化させることができるとともに、強度等の各種特性に優れた異種金属複合部材を製造することが可能となる。
【0104】
なお、以上説明した実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は上記の実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。