(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電池(5)の電極(50)と接続されるとともに、該電池(5)からの排出ガスを排出するガス流路(23)をアッパーケース(22)とともに区画するバスバー(3)であって、
板状の導電性材料よりなり、該電極(50)と接続される導電部(30)と、
熱可塑性弾性樹脂よりなり、該導電部(30)の表面にもうけられ該アッパーケース(22)との間をシールするシール部(35)と、
を有し、
該シール部(35)は、
該導電部(30)の表面に位置する基部(36)と、
該基部(36)から突出する本体部(370)と、該本体部(370)の先端にもうけられた該本体部(370)よりも溶融しやすく該アッパーケース(22)と当接する先端当接部(371)と、からなる第一リップ部(37)と、
該第一リップ部(37)から該ガス流路(23)の外方側に間隔を隔てた位置で該基部(36)から突出するとともに、その先端と該アッパーケース(22)との間の距離が該先端当接部(371)の突出長さよりも短い第二リップ部(38)と、
を有することを特徴とするバスバー。
前記第一リップ部(37)は、前記ガス流路(23)の内方から外方に向かう方向において、先端当接部(371)の幅が、前記本体部(370)の幅より短い請求項1〜2のいずれか1項に記載のバスバー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された組電池は、配線基板の電池との当接面に弾性部材を配して筐体側に排出ガスが流れること(ガス漏れ)を防止することは記載しているが、排出ガスの圧力が高い場合には、ガス漏れが生じるおそれがあった。また、排気室に流れ込んだ排出ガスが排気室の外部に漏れることについては、何らの記載もされていない。
【0006】
特に、電池がリチウムイオン二次電池の場合には、電池から排出されるガスは、高温となっている。このため、従来の組電池の配線基板では、弾性部材が溶融してこの溶融部からガス漏れが発生する可能性があった。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、電池から排出される排出ガスのガス流路(排気室)からのガス漏れが抑えられたバスバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]
適用例1は、電池の電極と接続されるとともに、電池からの排出ガスを排出するガス流路をアッパーケースとともに区画するバスバーであって、
板状の導電性材料よりなり、電極と接続される導電部と、
熱可塑性弾性樹脂よりなり、導電部の表面にもうけられアッパーケースとの間をシールするシール部と、
を有し、
シール部は、
導電部の表面に位置する基部と、
基部から突出する本体部と、本体部の先端にもうけられた本体部よりも溶融しやすくアッパーケースと当接する先端当接部と、からなる第一リップ部と、
第一リップ部からガス流路の外方側に間隔を隔てた位置で基部から突出するとともに、その先端とアッパーケースとの間の距離が先端当接部の突出長さよりも短い第二リップ部と、
を有することを特徴とするバスバーである。
【0010】
適用例1に記載のバスバーは、電池の電極と接続されるバスバーが、電池からの排出ガスを排出するガス流路をアッパーケースとともに区画する。バスバーは、熱可塑性弾性樹脂よりなるシール部を有する。このバスバーに一体に形成されたシール部が、バスバーとアッパーケースとの間をシールすることで、ガス流路に電池からの排出ガスが流れ込んでも、ガス流路の外部(ガスの排出経路の外部)にガス漏れが生じなくなる。
【0011】
そして、シール部は、第一リップ部と第二リップ部の二つのリップ部を、間隔を隔てた状態で有する。この構成によると、ガス流路に電池から高温の排出ガスが流れ込んでも、二つのリップ部及びその間に形成される空気層が、排出ガスの高温が伝達することを抑える。その結果として、アッパーケースとの間をシールする第二リップ部が溶融することが抑えられる。すなわち、シール部は、ガス漏れ(シール性の低下)が抑えられる。
【0012】
そして、第一リップ部は溶融しやすい先端当接部を持つ。先端当接部は、ガス流路に電池から高温の排出ガスが流れ込んだときに、本体部よりも優先的に溶融する。すなわち、第一リップ部は、先端当接部が溶融し、本体部は溶融が抑えられる。先端部が溶融すると、第一リップ部に押しつけられていたアッパーケースが変位して第二リップ部がアッパーケースに当接する。このことから、シール部のシール性が確保される。
また、第一リップ部の先端溶融部が溶融するときに、排出ガスの熱量を消費する(排出ガスの温度を下げる)ため、第二リップ部が溶融することが抑えられる。
更に、シール部を形成する熱可塑性弾性樹脂は、導電部と一体に成形を行うことが容易にでき、コストの上昇を抑えることができる。
【0013】
[適用例2]
適用例1に記載のバスバーにおいて、シール部は、導電部の外周に形成される。
この構成によると、シール部が導電部の外周にもうけられることで、シール部が導電部のズレも抑えることができる。
【0014】
[適用例3]
適用例1〜2のいずれかに記載のバスバーにおいて、第一リップ部は、ガス流路の内方から外方に向かう方向において、先端当接部の幅が、本体部の幅より短い。
【0015】
この構成によると、第一リップ部の先端当接部の厚みが薄く形成されており、この先端当接部が本体部よりも溶融しやすくなっている。すなわち、この構成とすることで、第一リップ部を、先端当接部を優先的に溶融させることができる。
【0016】
[適用例4]
適用例1〜3のいずれかに記載のバスバーにおいて、熱可塑性弾性樹脂は、ゴム,TPV(熱可塑性ゴム架橋体),TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー),TPC(エステル系熱可塑性エラストマ)より選択される。熱可塑性弾性樹脂が、これらの樹脂より選ばれることで、ガス漏れを抑えることができる。また、シール部の形成を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を組電池で具体化した実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、実施形態では、複数の電池を備える組電池に本発明を適用した例を示したが、一つの電池に適用した形態であってもよい。
【0019】
[実施形態1]
(組電池の構成)
本形態の組電池1は、
図1に概略断面図で示したように、ロアーケース20及びアッパーケース22から形成される電池ケース2と、バスバー3と、複数の電池4と、を有する。そして、本形態の組電池1は、ロアーケース20とバスバー3とに区画された電池収納室21と、バスバー3とアッパーケース22とに区画されたガス流路23と、を有する。本形態の組電池1は、複数の電池5を並列に接続している。
【0020】
本形態では、複数の電池5を一列に並べた状態で組電池1を形成しているが、電池5の配列方法についてはこの形態に限定されるものでなく、複数の電池5を密な状態で配列しても良い。
【0021】
(電池)
組電池1を構成する電池5は、軸方向の両端の端面に電極(正極,負極)がもうけられた柱状(円柱形状)を備えている。電池5は、その種類が限定されるものではないが、本形態では非水電解質二次電池であるリチウムイオン二次電池が採用される。電池5(リチウムイオン二次電池)は、一方の電極50(本形態では正極)から、電池5の内部で発生した排出ガスが排出される。例えば、内部で発生した排出ガスを排出するベント機構を備えることで、電池5(リチウムイオン二次電池)内部で発生した排出ガスを排出する。
【0022】
(ロアーケース)
ロアーケース20は、複数の電池5を収納する略槽状を有する。ロアーケース20は、複数の電池5を、その電極端子50がバスバー3の下面に当接した状態(電池5がバスバー3に付勢された状態)で収納する。本形態では、電池5の内部で発生した排出ガスが排出される一方の電極50(正極)がバスバー3の裏面に当接する状態で収納される。
【0023】
ロアーケース20は、図示しない固定手段により複数の電池5をその位置のズレを抑えた状態で保持する(固定する)。この固定手段は、複数の電池5を所定の状態に保持できる手段であれば限定されるものではない。電池5が収納される所定の状態とは、
図1に示されるように、槽状のロアーケース20の深さ方向に電池5の軸方向が伸びる状態をあげることができる。
【0024】
(バスバー)
バスバー3は、電池5の一方の電極50(正極)に接続される。バスバー3は、その下面に複数の電池5の一方の電極50(正極)が同時に当接する。なお、バスバー3の下面とは、各図(特に
図3)での上下方向での下面であり、電池5との当接面を示す。以降、上下方向について、特に規定がない場合は、同様の方向が該当する。
【0025】
バスバー3は、電池5の一方の電極50(正極)に接続されるとともに電気伝導を担う導電部30と、導電部30(導電本体部31)の外周であって電池ケース2との当接部に全周に亘って形成されたシール部35と、を有する。
【0026】
導電部30は、板状の導電性を有する材質よりなる。導電部30を形成する導電性材料は、電池5の電流を通電可能な材質であれば限定されるものではない。本形態では導電性金属を用いるが、導電性樹脂や樹脂基板の表面に導電性の配線回路を形成した回路基板等を採用しても良い。
【0027】
本形態では導電性金属として銅を用いたが、その材質が限定されるものではない。例えば、銅(Cu系合金),鉄(Fe系合金),アルミニウム(Al系合金)等の導電性金属をあげることができる。導電部30を形成する導電性金属は、その表面にメッキ等の表面処理を施してもよい。本形態では、銅の表面にNiメッキを施している。
導電部30を形成する板状の部材の厚さは、限定されるものではない。導電部30(バスバー3)の形状を保持できる剛性を有する厚さとすることができる。
導電部30は、電池ケース2の形状と略一致する導電本体部31と、導電本体部31から電池ケース2の外部に突出する電極端子部32と、から形成される。
【0028】
導電本体部31は、
図2〜
図3に示したように、電池5から排出された排出ガスが通過する貫通孔33が厚さ方向に貫通して開口している。
図2は、バスバー3と電池5との接続を示す斜視図である。
図3は、
図1中のIII部の拡大断面図である。貫通孔33は、円柱状の電池5の外径よりもわずかに小さい径の内径の略円形の開口形状を備えている。貫通孔33は、外方から径方向内方(円心方向)に向かって伸びる接続体34がもうけられている。接続体34は、導電本体部31と一体に形成され、電池5の一方の電極50(正極)に当接して接続される。
【0029】
接続体34は、略円形の貫通孔33の径方向内方に向かって伸びるとともに、その先端部近傍が電池5の一方の電極50(正極)側に折り曲げられている。この折り曲げは、接続体34の下面(電池5との対向面)が、バスバー3の下面よりも下方(ロアーケース20側)に位置するようになされている。この折り曲げにより、接続体34が一方の電極50(正極)と当接する。
【0030】
接続体34と一方の電極50(正極)との当接部は、電気的な接続が確保されている状態であれば固定がなされていてもいなくても、いずれでもよい。すなわち、折り曲げられた接続体34自身の弾性により接続体34が一方の電極50(正極)に付勢された状態で当接していても、接続体34と一方の電極50(正極)とをハンダ付けや溶接で接合して当接していても、いずれでもよい。
【0031】
電極端子部32は、導電本体部31と一体に形成され、その先端が電池ケース2の外部に突出する。電極端子部32は、組電池1の電極端子(正極端子)を形成する。
【0032】
シール部35は、導電部30(導電本体部31)の略外周に一体にもうけられ、アッパーケース22及びロアーケース20との間をシールする。シール部35は、
図3に示したように、導電本体部31の端部の上面及び下面を同時に被覆するように形成される。
【0033】
シール部35は、導電本体部31の端部を被覆する基部36と、導電本体部31の上面側の基部36から突出する二つのリップ部37,38と、を有する。このとき、基部36は、その表面が導電部30(導電本体部31)の表面と平行に広がった形状をなすように、導電部30の表面に一体にもうけられている。
【0034】
第一リップ部37は、基部36から突出する。第一リップ部37は、
図4に示したように、アッパーケース22が組み付けられていない状態で、基部36から突出する本体部370と、本体部370の先端にもうけられたアッパーケース22と当接する先端当接部371と、からなる。第一リップ部37の本体部370は厚肉に形成され、先端当接部371は本体部370よりも薄肉の厚さを有するように形成されている。第一リップ部37は、本体部370及び先端当接部371の内方側の表面が平面をなすように形成されている。第一リップ部37の内方側の表面は、基部36の上面に対して垂直な方向をなすように形成されている。第一リップ部37では、肉厚の差から、先端当接部371の方が基部370よりも溶融しやすくなっている。
【0035】
第一リップ部37において、本体部370及び先端当接部371のそれぞれの形状は、排出ガスの種類や温度により適宜決定できる。先端当接部371の厚さは、本体部370の厚さの100%以下とすることができる。なお、先端当接部371が溶融することで効果を発揮できるのであれば同じ厚さとしてもよいが、先端当接部371が本体部370よりも厚さが薄いことがより好ましい。先端当接部371の本体部370からの突出高さは、後述のL1とL2とがL1>L2の関係となることが好ましい。
【0036】
第二リップ部38は、第一リップ部37からガス流路の外方側に間隔を隔てた位置で基部36から突出する。第二リップ部38は、
図3に示したように、その先端がアッパーケース22との間に間隔を有するように形成されている。すなわち、第二リップ部38は、アッパーケース22と当接しないようにもうけられている。本形態では、第二リップ部38の先端とアッパーケース22との間の間隔(
図3中のL2)は、第一リップ部37の先端当接部371の突出長さ(突出高さ)(
図4中のL1)よりも短く形成されている。
【0037】
第二リップ部38は、略均一な厚さの板状をなすように形成されている。第二リップ部38は、その形状が限定されるものではない。好ましくは、第一リップ部37の本体部370より厚さが厚い凸形状である。
【0038】
第一リップ部37,第二リップ部38,基部36及びアッパーケース22により、空間39が区画される。この空間39には、排出ガスが排出されていない状態でガス流路23内に充満する気体(空気)と同じ気体(空気)が充満する。空間39に充満した気体(空気)は、第一リップ部37から第二リップ部38に向かう熱伝導を阻害する断熱性の空気層を形成する。
【0039】
第一リップ部37と第二リップ部38との間隔(距離)は、限定されるものではない。電池5の高温の排出ガスがガス流路23に排出されて第一リップ部37が溶融したときに、第一リップ部37の溶融物が流動しても第二リップ部38に到達しない間隔であることが好ましい。
【0040】
なお、第一リップ部37と第二リップ部38との間隔は、第一リップ部37の厚さの中央と第二リップ部38の厚さの中央の距離である。この間隔は、第一リップ部37と第二リップ部38の先端部の距離でもある。なお、第一リップ部37と第二リップ部38の少なくとも一方が、断面形状が異なる場合には、互いに対向する表面同士の距離とする。
【0041】
本形態の二つのリップ部37,38は、
図4に示したように、第一リップ部37の突出高さが、第二リップ部38のそれよりも高くなるように形成されている。このことは、二つのリップ部37,38が当接するアッパーケース22の傾斜部222が傾斜しているためである。すなわち、二つのリップ部37,38のそれぞれの突出高さは、アッパーケース22の形状により適宜決定できる。
【0042】
シール部35は、導電本体部31の下面の全面(貫通孔33及び接続体34を除く)を被覆する下面シール部40を有する。下面シール部40は、導電本体部31の端部を被覆する基部36と一体に、導電本体部31の下面全体を被覆するように形成されている。
【0043】
下面シール部40は、電池5がバスバー3に付勢された状態(組電池1が組み立てられた状態)では、電池5の一方の電極50(正極)である端面の周縁部が密着して当接して電池5と導電部30(導電本体部31)との間に介在して、電池5から排出される排出ガスが電池収納室21へ漏れ出すことを防止する。
【0044】
シール部35は、
図5に示したように、電極端子部32の表面も被覆する。電極端子部32の被覆は、電極端子部32が電池ケース2を貫通する部分で上面及び下面を含む全周に亘って行われる。
図5は、
図1中のV部の拡大断面図である。
【0045】
シール部35は、熱可塑性弾性樹脂により形成される。熱可塑性弾性樹脂の具体的な材質は、限定されるものではない。例えば、熱可塑性エラストマー,ゴムをあげることができる。熱可塑性エラストマーは、JIS K6418に記載の熱可塑性エラストマーを採用でき、これらのうち、TPC,TPO,TPVが好ましい。ゴムとしては、EPDM,シリコーンゴム,FKM,ACMが好ましい。なお、本形態において、熱可塑性弾性樹脂は、これらのエラストマー(ゴム)より選択される1種又は2種以上から形成できる。本形態では、TPCが用いられる。
【0046】
TPCは、曲げ弾性率が20MPa〜1300MPa,硬度が25度〜80度が好ましい。
【0047】
(アッパーケース)
アッパーケース22は、バスバー3との間でガス流路23を区画する。アッパーケース22は、ガス流路23を区画するために、上方側(電池5の軸方向であって、バスバー3から離反する方向)に凸となる蓋形状を有する。
【0048】
アッパーケース22は、バスバー3を介してロアーケース20との当接部となる当接部220と、バスバー3との間に間隔を隔ててもうけられた天井部221と、当接部220と天井部221とを接続する傾斜した内周面をもつ傾斜部222と、を有する。
当接部220は、ロアーケース20と略一致する形状に形成されている。
【0049】
傾斜部222は、組電池1を形成したときに、シール部35の第二リップ部38が当接する位置に形成されている。また、傾斜部222の傾斜角については限定されるものではない。第二リップ部38が当接したときに、
図3に示したようにシール可能な角度であればよい。
【0050】
アッパーケース22は、電池5から排出された排出ガスがガス流路23を通って排出されるガス排出口24が、天井部221に開口している。本形態はガス排出口24が、天井部221の中央部に開口しているが、この開口位置は限定されるものではない。例えば、傾斜部222に開口していてもよい。ガス排出口24が傾斜部222に開口する場合には、ガス漏れを防ぐために、傾斜部222とリップ部37との当接部よりも内方側であることが好ましい。
ガス排出口24の開口数についても限定されるものではない。すなわち、アッパーケース22は、複数のガス排出口が開口していてもよい。
【0051】
(組電池のその他の構成)
本形態の組電池1は、図示しない締結手段により、ロアーケース20及びアッパーケース22に、両ケース20,22が閉じる方向の応力が付与されている。両ケース20,22が閉じる方向の応力が付与されることで、アッパーケース22とバスバー3(シール部35)とが密着してガス漏れが抑えられる。
【0052】
また、両ケース20,22は、バスバー3を介して密着しており、すき間が生じたときに、生じたすき間を減少する方向に変位する。すなわち、アッパーケース22がロアーケース20に近接する方向の相対的な変位を生じる。なお、この変位は、アッパーケース22全体の位置の変位だけでなく、アッパーケース22の傾斜部222の部分的な変位を含む。ここで、傾斜部222の部分的な変位は、アッパーケース22の形状変化を含む。
【0053】
電池ケース2は、その材質が限定されるものではなく、両ケース20,22が閉じる方向に付与された応力による損傷を生じない材質であればよい。例えば、硬質樹脂,金属等の材質をあげることができる。
【0054】
本形態の組電池1は、複数の電池5の他方の電極51(負極)も、図示しない負極バスバーで並列の状態で接続される。負極バスバーは、電池ケース2の外部に突出する組電池1の負極端子を有する。
【0055】
(本形態の作用効果)
本形態の組電池1は、
図6に拡大図で示したように、バスバー3のシール部35には、二つのリップ部37,38と、二つのリップ部37,38の間の空間39とが形成されている。二つのリップ部37,38の間の空間39には空気が充填した空気層が形成されている。
【0056】
また、本形態の組電池1は、バスバー3の第一リップ部37がアッパーケース22(傾斜部222)と当接してガス流路23を区画する。バスバー3の第二リップ部38がアッパーケース22(傾斜部222)と当接しない。第一リップ部37がアッパーケース22(傾斜部222)との間をシールする。
【0057】
そして、組電池1において電池5から排出された高温の排出ガスがガス流路23に流入すると、ガス流路23中を排出ガスが拡散する。排出ガスは、ガス流路23の外方に向かって拡散し、シール部35の内方側に位置する第一リップ部37に到達する。
【0058】
そして、排出ガスは、第一リップ部37に当たる。第一リップ部37に当たった排出ガスは、第一リップ部37を加熱する。この加熱により、先端当接部371が本体部370よりも素早く昇温し、先端当接部371が溶融する。先端当接部371が溶融することで、排出ガスのもつ熱量が減少し、排出ガスの温度が低下する。この結果、本体部370は溶融するまで加熱されず、第一リップ部37の全体が溶融することが抑えられる。
【0059】
第一リップ部37の先端当接部371が溶融すると、アッパーケース22(傾斜部222)との間にすき間が形成される。先端当接部371とアッパーケース22(傾斜部222)との間にすき間が形成されると、アッパーケース22がバスバー3(シール部35)から受ける応力が減少する。アッパーケース22は、締結手段によりロアーケース20側に付勢されており、両ケース20,22の間にすき間が形成されると、アッパーケース22がロアーケース20に近接する方向に変位する(相対的な変位)。
【0060】
アッパーケース22がロアーケース20に近接する方向に変位すると、
図7に示したように、アッパーケース22(傾斜部222)が第一リップ部37の本体部に当接する前に、第二リップ部38に当接する。アッパーケース22に当接した第二リップ部38が、アッパーケース22がロアーケース20の間をシールして、排出ガスのガス漏れを防止する。
【0061】
なお、先端当接部371が溶融した第一リップ部37と第二リップ部38との間の空間39には空気が貯留している(空気層が形成されている)。空気層は、排出ガスが第二リップ部38に当たる排出ガスの温度を低下させる。また、空気層に当たることで、排出ガスの流速も減少し、第二リップ部38に当たったとしても第二リップ部38が損傷することが抑えられる。この結果、第二リップ部38が損傷してガス漏れが発生することが抑えられる。
以上のように、シール部35の二つのリップ部37,38及び空間39を有することで、ガス流路23からのガス漏れを確実に抑えることができる。
【0062】
本形態の組電池1は、シール部35がTPC(熱可塑性弾性樹脂)よりなる。TPCは、弾性変形が可能であり、より高い耐ガス漏れ性(シール性)を確保できる。また、ガス流路23に充填した排出ガスが高圧の場合、その圧力によりリップ部37が弾性変形を生じ、その結果として、バスバー3(導電部30)とアッパーケースとの界面をふさぐ(被覆する)こととなり、ガス漏れが生じなくなる。更に、TPCは、インサート成形(射出成形)が可能な樹脂(エラストマー)であり、導電部30と一体に成形を行うことが容易にでき、コストの上昇を抑えることができる。また、TPCは、インサート成形で成形を行うと、成形後に収縮する。この収縮により、シール部35と導電部30との密着性が向上する。
【0063】
本形態の組電池1では、シール部35が、導電部30(導電本体部31)の外周に全周にわたって形成されており、アッパーケース22との界面の全周に亘ってより高い耐ガス漏れ性(シール性)を確保できる。
【0064】
本形態の組電池1では、シール部35がTPCよりなることで、導電部30の外周の全周に亘って形成されても、シール部35の弾性が導電部30に加える応力が小さく、その結果としての導電部30の変形及び変形に伴うズレも抑えることができる。
【0065】
本形態の組電池1では、シール部35が導電部30の電極端子部32(組電池1の電極端子(正極端子))も被覆することで、電極端子部32の界面でのガス漏れを抑えることができる。
【0066】
本形態の組電池1では、シール部35(下面シール部390)が、電池5と貫通孔33とのに介在して、電池5から排出される排出ガスが電池収納室21へ漏れ出すことを防止する。
【0067】
本形態の組電池1では、組電池1を形成したときに第二リップ部38がアッパーケース22に当接していない。この構成では、アッパーケース22をロアーケース20に密着するように押しつけて組み付けるときに、第二リップ部38からの反力を受けない。つまり、組み付けに要するコストを低減できる。
さらに、第二リップ部38をアッパーケース22の組み付け時のガイドとして利用することができ、組み付けに要するコストをより低減できる。
【0068】
[実施形態2]
本形態は、導電本体部31の上面の全面(貫通孔33及び接続体34を除く)に上面シール部41を有すること以外は、実施形態1と同様な組電池である。本形態を、
図3の時と同様に、二つのリップ部37,38近傍の断面図で
図8に示す。
【0069】
本形態は、上面シール部41が導電部30(導電本体部31)の上面に一体に形成されている。上面シール部41により、導電性の金属よりなる導電部30(導電本体部31)の上面が露出することを抑えることができ、酸化等の劣化を抑えることができる。
【0070】
本形態では、導電部30(導電本体部31)に通孔を開口しておき、通孔の内部をTPCが充填している。通孔に充填したTPCは、上面シール部41と下面シール部40と一体に形成される。これにより、両シール部40,41と導電部30(導電本体部31)の密着性の低下が抑えられる。また、シール部35の形状変化(収縮)による導電部30の変形(ソリやゆがみ)を抑えることができる。
その他、本形態では、実施形態1と同様の効果が発揮される。
【0071】
[変形形態]
上記した各形態では第一リップ部37が
図4に示した段差をなす形状に形成されているが、第一リップ部37の形状はこの形状に限定されるものではない。たとえば、下記の各変形形態に記載の形状としてもよい。
【0072】
(変形形態1)
変形形態1は、
図9に示したように、第一リップ部37の形状(厚さ方向の断面形状)が、第一リップ部37(本体部370及び先端当接部371)が徐々に厚さが減少する先細のテーパ形状を有する。変形形態1の第一リップ部37は、一方の表面(内方側の表面が好ましい)が第一リップ部37の突出方向と平行な平面をなし、他方の表面が傾斜した面をなしている。
なお、変形形態1では、一方の表面(内方側の表面が好ましい)が第一リップ部37の突出方向と平行な平面をなす構成を示したが、この一方の表面も傾斜した面をなしていてもよい。
本変形形態では、第一リップ部37は、先端部近傍の溶融しやすい部分が先端当接部371に相当し、溶融しにくい部分が本体部370に該当する。
【0073】
(変形形態2)
変形形態2は、
図10に示したように、第一リップ部37の形状(厚さ方向の断面形状)が、第一リップ部37の先端当接部371が徐々に厚さがなめらかに減少する先細の形状を有する。より具体的には、先端が丸められたR形状をなしている。
各変形形態は、第一リップ部37が実施形態1と同様に機能する。すなわち、実施形態1と同様の効果が発揮される。