(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)以下、
図1に基づいて、本発明の第1実施形態を説明する。
図1において、本第1実施形態による電子回路装置は、多層回路基板10と、筐体20とから主に構成されている。
【0010】
多層回路基板10は、
図1中、表面側に位置する硬質な表層(第1の層)11と、表層11の背後側に位置する軟質な内層(第2の層)12と、内層12の背後側に位置する硬質な裏層(第3の層)
13とを有している。
【0011】
表層11の表面には複数個のボール状の電極部11aが形成されているとともに、この複数個の電極部11a上には発熱を伴う電子部品11bが実装(配設)されている。なお、電子部品11bの形状としては、ボールグリッドアレイ(BGA)等の形状を適用することができる。
【0012】
多層回路基板10の中間部分に位置する内層12は、軟質な絶縁基板12aと、この絶縁基板12aの背面全体に設けられた銅箔パターンからなる第1の接地パターン12bとを備えている。
【0013】
一方、表層11の所定箇所である表層11表面の周縁部並びに裏層13の所定箇所である裏層13裏面の周縁部には、略枠状の銅箔パターンからなる第2の接地パターン31、32がそれぞれ設けられている。この第2の接地パターン31、32は、筐体20に備えられる後述する第1、第2の鍔部とそれぞれ当接する。
【0014】
このように本例では、多層回路基板10は、内層12に設けられる第1の接地パターン12bと、前記各鍔部(筐体20)と当接するように表層11、裏層13の(周縁部)所定箇所に各々設けられる第2の接地パターン31、32とを有する構成となっている。
【0015】
そして、
図1中、14は、表層11と内層12と裏層13とを全て貫通するように設けられた導電性のスルーホール(ビアホール)であり、このスルーホール14は、第1の接地パターン12bと電極部11aとを導通接続するように設けられる。
【0016】
つまり、このことは、第1の接地パターン12bがスルーホール14を通じて電極部11aに導通接続されていることを意味している。なお、スルーホール14は、特許請求の範囲の請求項1における接続部に相当するものである。
【0017】
また、
図1中、15は、表層11と内層12と裏層13とを全て貫通するように設けられた導電性の金属メッキからなる他の接続部としての他のスルーホール(他のビアホール)であり、スルーホール14の配設位置とは異なる多層回路基板10箇所に設けられている他のスルーホール15は、第1の接地パターン12bと第2の接地パターン31、32とを導通接続するように設けられる。
【0018】
つまり、このことは、第2の接地パターン31、32が、スルーホール14とは異なる(別に設けられる)他のスルーホール15を通じて第1の接地パターン12bに導通接続されていることを意味している。
【0019】
筐体20は、アルミニウム等の金属材料からなり、略箱型形状に形成され、電子部品11を収容するものである。筐体20は、この場合、
図1中、上側に位置する第1のケース体21とこの第1のケース体21と対をなすように
図1中、下側に位置する第2のケース体22とに分割形成されている。
【0020】
第1のケース体21は、平板状の第1の基部21aと、立壁形状からなる第1の側壁部21bと、この第1の側壁部21bの下端側から外方に向けて突出形成された枠状の第1の鍔部21cとが一体形成された構成となっている。
【0021】
また、第2のケース体22は、平板状の第2の基部22aと、立壁形状からなる第2の側壁部22bと、この第2の側壁部21bの上端側から外方に向けて突出形成された枠状の第2の鍔部22cとが一体形成された構成となっており、第2の基部22aは第1の基部21aと対をなすように設けられ、第2の側壁部21bは第1の側壁部21bと対をなすように設けられ、第2の鍔部22cは第1の鍔部21cと対をなすように設けられている。
【0022】
そして、多層回路基板10の周縁部分が第1の鍔部21cと第2の鍔部22cとの間に挟持されるような構成となっている。このように各鍔部21c、22cの間に多層回路基板10の周縁部分が挟持されることで、表層11表面に設けられている第2の接地パターン31と第1の鍔部21cとが当接(面接触)するととともに、裏層13裏面に設けられている第2の接地パターン32と第2の鍔部22cとが当接(面接触)する。
【0023】
また、この場合、筐体20は、電極部11a、スルーホール14、第1の接地パターン12b、他のスルーホール15並びに第2の接地パターン31、32を介して、発熱を伴う電子部品11bから各鍔部21c、22c(筐体20)へと至る熱を放熱する機能を有している。
【0024】
すなわち、電子部品11bの動作時において、電子部品11bから発せられる熱は、電極部11a→スルーホール14→第1の接地パターン12b→他のスルーホール15→第2の接地パターン31、32→各鍔部21c、22c(筐体20)へと順次、伝わり、装置外部(筐体20の外部)へと放熱される。
【0025】
以上のように本実施形態では、表層11と表層11の背後側に位置する内層12と内層12の背後側に位置する裏層13とを有し、表層11に電極部11aが形成された多層回路基板10と、電極部11aに配設される発熱を伴う電子部品11bと、この電子部品11bを収容する筐体20とを備え、多層回路基板10は、内層12に設けられる第1の接地パターン12bと、筐体20と当接するように表層11及び裏層13の周縁部(所定箇所)にそれぞれ設けられる第2の接地パターン31、32とを有し、第1の接地パターン12bは、スルーホール14を通じて電極部11aと導通接続され、第2の接地パターン31、32は、スルーホール14とは異なる他のスルーホール15を通じて第1の接地パターン12bと導通接続されているものである。
【0026】
従って、電子部品11bの動作時において、電子部品11bから発せられる熱は、電極部11a→スルーホール14→第1の接地パターン12b→他のスルーホール15→第2の接地パターン31、32→各鍔部21c、22c(筐体20)へと順次、伝わり、装置外部(筐体20の外部)へと放熱されることから、発熱を伴う電子部品11bから発せられる熱を装置外部(筐体20の外部)へと効率よく放熱(放散)させることが可能となり、電子部品11bが温度上昇する虞のない電子回路装置を提供することができる。
【0027】
また本実施形態では、表層11、裏層13の周縁部に形成される銅箔パターンからなる第2の接地パターン31、32がアルミニウムにて形成された各鍔部21c、22c(筐体20)に直接、当接している例について説明したが、例えばこのように第2の接地パターン31、32と筐体20とが異種金属材料にて形成されているような場合にあっては、本実施形態の変形例として
図2に示すように、第2の接地パターン31、32上に、錫メッキやニッケルメッキ等にて形成された薄板状の金属プレートからなる腐食防止手段としての金属チップ40を実装させるような構成としてもよい。
【0028】
この金属チップ40は、第1の鍔部21cと第2の接地パターン31との間、並びに第2の鍔部22cと第2の接地パターン32との間に挟持され(設けられ)、異種金属の接触(当接)による筐体20や第2の接地パターン31、32の腐食を防止する機能を備えている。
【0029】
また本実施形態では、他のスルーホール15と第1の鍔部21cとの間に第2の接地パターン31が介在しているとともに、他のスルーホール15と第2の鍔部22cとの間に第2の接地パターン32が介在している例について説明したが、例えば第2の接地パターン31、32のうちどちらか一方を廃止してもよい。さらには、例えば第2の接地パターン31、32のうち第2の接地パターン32を廃止した場合、この廃止した第2の接地パターン32側に位置する他のスルーホール15部分と第2の鍔部22cとは接触させなくてもよい。
【0030】
また本実施形態では、他のスルーホール15と第1の鍔部21cとの間に第2の接地パターン31が介在しているとともに、他のスルーホール15と第2の鍔部22cとの間に第2の接地パターン32が介在している例について説明したが、例えば本実施形態の他の変形例として、詳細図示は省略するが、第2の接地パターン31、32を廃止し、他のスルーホール15が第1の接地パターン12bと導通接続されるとともに各鍔部21c、22c(筐体20)と接触(当接)するようにしてもよい。
【0031】
この際、筐体20は、電極部11a、スルーホール14、第1の接地パターン12b並びに他のスルーホール15を介して、電子部品11bから筐体20へと至る熱を放熱する機能を有することから、前述した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0032】
なお、この他の変形例において、他のスルーホール15と筐体20とが異種金属材料にて形成されている場合には、他のスルーホール15と筐体20との間に、異種金属の当接による他のスルーホール15や筐体20の腐食を防止するための前述した腐食防止手段としての金属チップ40を設けてもよい。また、鍔部21c、22cとの接触面積が広い方が放熱効率が向上することを考慮すると、
図1の構成のように他のスルーホール15と各鍔部21c、22cとの間に第2の接地パターン31、32を設けることが望ましい。
【0033】
(第2実施形態)次に、本発明の第2の実施形態を
図3に基づいて説明するが、前述の第1実施形態と同一もしくは相当個所には同一の符号を用いてその詳細な説明は省略する。本第2実施形態が前記第1実施形態と比べて異なる点は、内層12に設けられる第1の接地パターン12bが表層11や裏層13の外部へとはみ出るように、表層11や裏層13が各鍔部21c、22cの内方に配置され、表層11や裏層13の外部へ露出する部分となる第1の接地パターン12bの所要部Xが第2の鍔部22c(筐体20)と当接(面接触)している点にある。
【0034】
この場合、第1の接地パターン12bは、
図3に示すようにスルーホール14を通じて電極部11aと導通接続されるとともに、その所要部Xが第2の鍔部22c(筐体20)と当接するように表層11や裏層13の外部へと延長形成された構成となっている。
【0035】
そして、電子部品11の動作時において、電子部品11から発せられる熱は、電極部11a→スルーホール14→第1の接地パターン12b→第2の鍔部22cへと順次、伝わるようになっている。換言すれば、このとき、筐体20は、電極部11a、スルーホール14並びに第1の接地パターン12bを介して、電子部品11bから第2の鍔部22cへと至る熱を放熱する機能を有していることになる。
【0036】
このように本第2実施形態によれば、第1の接地パターン12bは、その所要部Xが第2の鍔部22c(筐体20)と当接するように表層11の外部へと延長形成されていることから、電子部品11bの動作時において、電子部品11bから発せられる熱は、電極部11a→スルーホール14→第1の接地パターン12b→第2の鍔部22c(筐体20)へと順次、伝わり、装置外部(筐体20の外部)へと放熱され、発熱を伴う電子部品11bから発せられる熱を装置外部(筐体20の外部)へと効率よく放熱(放散)させることが可能となり、前記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
また本第2実施形態では、裏層13側に第1の接地パターン12bが設けられ、この第1の接地パターン12bが第2の鍔部22cと当接している例について説明したが、例えば絶縁基板12aと第1の接地パターン12bとの位置関係を逆にして、表層11側に位置する第1の接地パターン12bを第1の鍔部21cに当接させるような構成としてもよい。
【0038】
また本第2実施形態では、銅箔パターンにて形成された第1の接地パターン12bの所要部Xがアルミニウムにて形成された第2の鍔部22c(筐体20)に直接、当接している例について説明したが、例えばこのように第1の接地パターン12bと筐体20とが異種金属材料にて形成されているような場合にあっては、本第2実施形態の変形例として
図4に示すように、第1の接地パターン12bの背面に、錫メッキやニッケルメッキ等にて形成された薄板状の金属プレートからなる腐食防止手段としての金属チップ50を実装させるような構成としてもよい。
【0039】
この金属チップ50は、第1の接地パターン12bの所要部Xと第2の鍔部22cとの間に挟持され(設けられ)、異種金属の接触(当接)による筐体20や第1の接地パターン12bの腐食を防止する機能を備えている。
【0040】
また前記各実施形態では、筐体20がアルミニウム等の金属材料にて形成されている例について説明したが、筐体20は電極部11a、スルーホール14、第1の接地パターン12b、他のスルーホール15並びに第2の接地パターン31、32を介して、発熱を伴う電子部品11bから筐体20へと至る熱を装置外部(筐体20の外部)へと放熱できる材料であればあらゆる材料を採用することができ、例えば筐体20をセラミック材や樹脂材、グラスファイバーにて形成してもよい。
【0041】
なお、前記各実施形態では、スルーホール(ビアホール)14及び他のスルーホール(他のビアホール)15が表層11と内層12と裏層13とを全て貫通するように設けられている例について説明したが、例えばスルーホール14と他のスルーホール15とのうち少なくとも一方を表層11と内層12とを貫通するように設けられるブラインドビアホールとしてもよい。