特許第6245499号(P6245499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245499
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】地下水位低下システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 19/10 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   E02D19/10
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-118315(P2013-118315)
(22)【出願日】2013年6月4日
(65)【公開番号】特開2014-234681(P2014-234681A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】森尾 義彦
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−162298(JP,A)
【文献】 特開平11−325397(JP,A)
【文献】 特開昭57−179713(JP,A)
【文献】 特開昭60−149925(JP,A)
【文献】 特開2000−112533(JP,A)
【文献】 特許第3974851(JP,B2)
【文献】 特許第4824435(JP,B2)
【文献】 特許第4743355(JP,B2)
【文献】 特開2011−256670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/10
E02D 19/10
E03B 3/06
C02F 1/00
G01F 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋設された井戸管と、該井戸管の底部近傍に設置され揚水管が接続された水中ポンプと、前記井戸管の内部空間に連通接続された真空ポンプとを備え、該真空ポンプを用いて前記井戸管の内部空間を減圧しつつ前記水中ポンプを作動させることにより、前記井戸管に形成された地下水流入開口を介して該井戸管内に流入した地下水を前記揚水管を介して揚水するようになっている地下水位低下システムにおいて、
前記井戸管内における地下水の水位を評価する水位評価手段と、前記揚水管に設けられた流量制御弁又は前記水中ポンプを制御する制御手段とを備えるとともに、前記水中ポンプを、前記地下水流入開口の最上位置よりも下方となるように位置決めしてなり、該制御手段は、前記井戸管内における地下水の水位が前記地下水流入開口よりも高くなるように前記水位評価手段で得られた評価値を用いて前記流量制御弁又は前記水中ポンプを制御するようになっていることを特徴とする地下水位低下システム。
【請求項2】
前記水位評価手段を、前記井戸管内の地下水中に設置され大気圧補正を行うように構成された水位計と、前記井戸管内の気圧と大気圧との差圧を計測する差圧計と、演算手段とで構成し、該演算手段を、前記水位計で計測された水位をh1、前記差圧計で計測された差圧から換算された水柱高さをh2としたとき、前記井戸管内の水位hを、次式、
h=h1+h2
を用いて算出するように構成した請求項1記載の地下水位低下システム。
【請求項3】
前記水位評価手段を、前記井戸管内の地下水中に設置され大気圧補正を行わないように構成された水位計と、前記井戸管内の気圧を計測する気圧計と、演算手段とで構成し、該演算手段を、前記水位計で計測された水位をh3、前記気圧計で計測された気圧から換算された水柱高さをh4としたとき、前記井戸管内の水位hを、次式、
h=h3−h4
を用いて算出するように構成した請求項1記載の地下水位低下システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として掘削工事の際、地下水位を低下させることを目的として適用されるバキュームディープウェルを用いた地下水位低下システムに関する。
【背景技術】
【0002】
土木建築構造物の基礎や地下鉄等の地下構造物を構築するにあたっては、掘削底面や側面から地下水が湧出しないよう、あるいは掘削底面で盤膨れが生じないように事前の対策を講ずることが不可欠であり、その対策として、掘削底面あるいはその近傍から地下水を排水することで地下水位を下げる、いわゆる地下水位低下工法が従来から広く採用されている。
【0003】
地下水位低下工法は重力排水工法と強制排水工法に概ね大別され、前者の工法としてはディープウェル工法(深井戸工法)が、後者の工法としてはウェルポイント工法がそれらの典型的な工法として挙げられる。
【0004】
ここで、ディープウェル工法は、井戸内に流入した地下水を該井戸の底部近傍に設置された水中ポンプで揚水するものであるため、透水性の高い地盤であれば、数十mの水位低下が可能である。
【0005】
それに対し、ウェルポイント工法は、真空ポンプで減圧をかけることにより生じた大気圧との圧力差で地下水を吸引するものであるため、原理的には約10m、実際には減圧の程度に限度があるため、その半分程度となるが、大気圧との圧力差で強制的に排水を行うものであることから、透水性が低い地盤にも適用することが可能である。
【0006】
一方、上述した2つの工法を併用したバキュームディープウェルと呼ばれる工法があり、ディープウェル工法に真空ポンプによる減圧を併用することで、両者の長所を生かしつつ、さらなる水位低下が可能になる。
【0007】
また、かかるバキュームディープウェル工法では、地下水の水位低下が進行し過ぎると、井戸の内部空間が地盤内の土粒子間空隙と連通して井戸内に空気が入り込む状態となり、減圧作用が低下してしまう懸念があるが、水位が低下しても井戸内の減圧状態が維持できるように構成された改良型のバキュームディープウェル工法も開発されており、例えば地下水流入部を二重管とした工法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−256670号公報
【特許文献2】特許第4743355号公報
【特許文献3】特許第4824435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、特許文献1記載の工法によれば、井戸管周囲の地下水は、該井戸管に形成されたストレーナを介して井戸管と内管との間にいったん流入した後、越流部である内管の上縁を越えて該内管に流れ込み、しかる後、内管内の水中ポンプで揚水されるため、内管内の水位が低下する状況であっても、井戸管と内管との間では、越流部を下限とする水位に保持されることとなり、かくしてストレーナから空気が入り込む事態を未然に回避することができる。
【0010】
しかしながら、かかる工法では、地下水を揚水するための水中ポンプを、井戸管ではなく、該井戸管内に収容された内管に設置する必要があるため、既存の揚水井戸に適用しようとすると、水中ポンプをいったん引き上げてから井戸管内に内管を収容し、しかる後、該内管内に水中ポンプを再設置しなければならず、時間と手間を要するという問題を生じていた。
【0011】
加えて、上述したように水中ポンプを内管を介して井戸管内に設置しなければならないため、井戸管は、一般的なバキュームディープウェルに用いるものよりも太径とならざるを得ず、その結果、新設の揚水井戸であれば、設置工事のコストが割高になるという問題や、既存の揚水井戸であれば、井戸管の内径が小さくて内管を収容することができず、結果として上述した工法を採用することが困難になるという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、バキュームディープウェルを用いて地下水位を低下させる際、井戸管内に空気が流入して該井戸管内の減圧状態が維持できなくなるのを防止可能な地下水位低下システムを提供することを目的とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る地下水位低下システムは請求項1に記載したように、地盤に埋設された井戸管と、該井戸管の底部近傍に設置され揚水管が接続された水中ポンプと、前記井戸管の内部空間に連通接続された真空ポンプとを備え、該真空ポンプを用いて前記井戸管の内部空間を減圧しつつ前記水中ポンプを作動させることにより、前記井戸管に形成された地下水流入開口を介して該井戸管内に流入した地下水を前記揚水管を介して揚水するようになっている地下水位低下システムにおいて、
前記井戸管内における地下水の水位を評価する水位評価手段と、前記揚水管に設けられた流量制御弁又は前記水中ポンプを制御する制御手段とを備えるとともに、前記水中ポンプを、前記地下水流入開口の最上位置よりも下方となるように位置決めしてなり、該制御手段は、前記井戸管内における地下水の水位が前記地下水流入開口よりも高くなるように前記水位評価手段で得られた評価値を用いて前記流量制御弁又は前記水中ポンプを制御するようになっているものである。
【0014】
また、本発明に係る地下水位低下システムは、前記水位評価手段を、前記井戸管内の地下水中に設置され大気圧補正を行うように構成された水位計と、前記井戸管内の気圧と大気圧との差圧を計測する差圧計と、演算手段とで構成し、該演算手段を、前記水位計で計測された水位をh1、前記差圧計で計測された差圧から換算された水柱高さをh2としたとき、前記井戸管内の水位hを、次式、
h=h1+h2
を用いて算出するように構成したものである。
【0015】
また、本発明に係る地下水位低下システムは、前記水位評価手段を、前記井戸管内の地下水中に設置され大気圧補正を行わないように構成された水位計と、前記井戸管内の気圧を計測する気圧計と、演算手段とで構成し、該演算手段を、前記水位計で計測された水位をh3、前記気圧計で計測された気圧から換算された水柱高さをh4としたとき、前記井戸管内の水位hを、次式、
h=h3−h4
を用いて算出するように構成したものである。
【0016】
本発明に係る地下水位低下システムにおいては、従来一般的なバキュームディープウェルと同様、井戸管の内部空間に連通接続された真空ポンプを用いて該井戸管の内部空間を減圧しつつ、井戸管の底部近傍に設置された水中ポンプを作動させることで、井戸管に形成された地下水流入開口を介して該井戸管内に流入した地下水を揚水管を介して揚水するが、本発明では、井戸管内における地下水の水位を評価する水位評価手段と、揚水管に設けられた流量制御弁又は水中ポンプを制御する制御手段とを備えており、井戸管に流入した地下水を該井戸管から揚水するにあたっては、井戸管内における地下水の水位が地下水流入開口よりも高くなるように水位評価手段で得られた評価値を用いて流量制御弁又は水中ポンプを制御する。
【0017】
このようにすると、井戸管内外の地下水位は、常に地下水流入開口を上回ることとなり、かくして地下水流入開口から空気が混入し、それが原因で井戸管内の減圧状態が維持されなくなるのを未然に防止することが可能となる。
【0018】
地下水流入開口は、ストレーナ又はその一部として構成することができる。
【0019】
流量制御弁は、流量が可変となるように構成された電磁バルブであって、流量調整弁、絞り弁、ストップ弁などが含まれる。
【0020】
水位評価手段は、井戸管内における地下水の水位を計測し、必要に応じてその計測値を演算した後、水位データとして制御手段にデータ伝送できるものであれば、その構成は任意であり、超音波センサー、電極式液面変位センサー、非接触型測距装置、水感知センサー、フロート式レベル計などで構成することが可能である。なお、水感知センサーを採用する場合には、これを、予想される水位変動範囲内に鉛直方向に沿って列状に複数配置するようにすればよいし、フロート式レベル計であれば、ワイヤーを自動で巻き取る巻取り機構を井戸管の内面に取り付けるとともに該ワイヤーの先端を水面に浮かべたフロートにつなぐようにすればよい。
【0021】
ここで、水位評価手段を、井戸管内の地下水中に設置され大気圧補正を行うように構成された水位計と、井戸管内の気圧と大気圧との差圧を計測する差圧計と、演算手段とで構成し、該演算手段を、水位計で計測された水位をh1、差圧計で計測された差圧から換算された水柱高さをh2としたとき、井戸管内の水位hを、次式、
h=h1+h2 (1)
を用いて算出するように構成し、あるいは水位評価手段を、井戸管内の地下水中に設置され大気圧補正を行わないように構成された水位計と、井戸管内の気圧を計測する気圧計と、演算手段とで構成し、該演算手段を、水位計で計測された水位をh3、気圧計で計測された気圧から換算された水柱高さをh4としたとき、井戸管内の水位hを、次式、
h=h3−h4 (2)
を用いて算出するように構成することができる。
【0022】
これらの構成によれば、水位計、差圧計あるいは気圧計を入手しやすいため、水位評価手段を容易に構成することができる。なお、上述した2つの構成のうち、後者の構成においては、大気圧を計測する必要がないため、ベントチューブを配置する手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る地下水位低下システム1の図であり、(a)は周辺配置図、(b)はブロック図。
図2】第1実施形態に係る地下水位低下システム1の動作手順を示したフローチャート。
図3】第1実施形態に係る地下水位低下システム1の作用を示した説明図。
図4】第2実施形態に係る地下水位低下システム41のブロック図。
図5】第2実施形態に係る地下水位低下システム41の動作手順を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る地下水位低下システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る地下水位低下システムを示した図である。同図に示すように、本実施形態に係る地下水位低下システム1は、土留め壁10で地盤8を支持しつつ該土留め壁で囲まれた地盤領域を掘り下げて掘削空間9を形成する際に適用されるものであって、従来のバキュームディープウェル工法と同様、井戸管2の内部空間3に連通接続された真空ポンプ4を用いて該井戸管の内部空間3を減圧しつつ、井戸管2の底部近傍に設置された水中ポンプ5を作動させることで、井戸管2に形成された地下水流入開口としてのストレーナ6を介して該井戸管内に流入した地下水を揚水管7を介して揚水するようになっている。
【0026】
井戸管2は、同図では土留め壁10の背面側に埋設した例を示してあるが、その配置数や位置については、掘削空間9の底部から地下水が噴出したり盤ぶくれが生じたりすることがないように適宜設定し、必要十分な地下水位の低下を図ることができるように構成する。
【0027】
ここで、本実施形態に係る地下水位低下システム1は、井戸管2の底部近傍に配置された水位計11と、該井戸管の内部空間3であって水面よりも上方となる位置に配置された差圧計12と、制御手段及び演算手段としてのシーケンサ(PLC)13とを備え、水位計11、差圧計12及びシーケンサ13は、井戸管2内における地下水の水位を評価する水位評価手段として機能するとともに、シーケンサ13は、井戸管2内における地下水の水位がストレーナ6よりも高くなるように、上述した水位評価手段で得られた評価値を用いて流量制御弁14を制御するようになっている。
【0028】
水位計11は、大気圧補正がなされた結果を出力するように構成してあり、先端を大気に連通させてなるベントチューブ(図示せず)を該水位計に接続しておく。
【0029】
差圧計12は、井戸管2内の気圧と大気圧との差圧を計測するように構成してあり、水位計11と同様、先端を大気に連通させてなるベントチューブ(図示せず)を該差圧計に接続しておく。
【0030】
水位計11や差圧計12は、市販品から適宜選択することが可能である。
【0031】
本実施形態に係る地下水位低下システム1を用いて地下水位を低下させるには、従来のバキュームディープウェル工法と同様、井戸管2の内部空間3に連通接続された真空ポンプ4を用いて該井戸管の内部空間3を減圧しつつ、井戸管2の底部近傍に設置された水中ポンプ5を作動させることで、ストレーナ6を介して井戸管2内に流入した地下水を揚水管7を介して地上に揚水するが、本実施形態では図2のフローチャートに示すように、水位計11で井戸管2内の地下水の水位を計測するとともに、井戸管2の内部空間3であって水面よりも上方となる位置の気圧を大気圧との差圧として差圧計12で計測する(ステップ101)。
【0032】
ここで、水位計11で計測された水位は、水面に大気圧が作用しているものとして補正された水位であり、減圧下にある井戸管2内では、実際の水位とずれが生じる。
【0033】
そこで、水位計11で計測された水位をh1、差圧計12で計測された差圧から換算された水柱高さをh2としたとき、次式、
h=h1+h2 (1)
をシーケンサ13で演算することで、井戸管2内の水位hを算出する(ステップ102)。
【0034】
上述の(1)式は、以下のように導出することができる。すなわち、井戸管2内の気圧をP1(水柱換算)、地下水のみによる圧力をPw(水柱換算)、大気圧をP0(水柱換算)とすると、水位計11が出力する水位h1は、
1=Pw+P1−P0
となる。
【0035】
したがって、これを変形すると、
w=h1+P0−P1
となるが、(P0−P1)は、井戸管2内の気圧と大気圧との差圧に他ならないから、
w=h1+h2
となる。
【0036】
このように水位計11、差圧計12及びシーケンサ13からなる水位計測手段で井戸管2内における地下水の水位を水位hとして評価したならば、次に、これを監視下限水位Hと比較する(ステップ103)。
【0037】
図3は、水位h、監視下限水位H及び絶対下限水位H′の関係を示したものであり、絶対下限水位H′は、ストレーナ6の最上位置に相当する水位であって、該水位を下回れば、ストレーナ6から空気が混入するため、下回ってはならない水位として定義し、監視下限水位Hは、絶対下限水位H′に余裕高さΔHを加えた水位として定義する。
【0038】
ΔHは、地盤8の透水性、水柱ポンプ5の吐出能力、真空度などから適宜設定する。なお、余裕高さΔHを0とすることも可能であり、その場合には、監視下限水位Hは、絶対下限水位H′に一致する。
【0039】
ここで、水位hが同図(a)に示すように監視下限水位H以上であれば(ステップ103,YES)、シーケンサ13を介して流量制御弁14を開くか、又は開いた状態を維持する(ステップ104)。
【0040】
このようにすると、井戸管2内に流入した地下水は、揚水が再開され又は引き続き揚水が継続される。
【0041】
一方、同図(b)に示すように水位hが監視下限水位Hを下回っていたならば(ステップ103,NO)、シーケンサ13を介して流量制御弁14を絞り若しくは閉じ又はそれらの状態を維持する(ステップ105)。
【0042】
このようにすると、井戸管2内に流入した地下水の揚水量が減少し若しくは揚水自体が停止し又はそれらの状態が継続されるので、井戸管2への地下水の流入によって該井戸管内の地下水の水位は上昇し、やがて監視下限水位Hを上回る。
【0043】
以下、所定の時刻ごとにステップ101〜ステップ105を繰り返すことで、井戸管2内外の地下水位は、常にストレーナ6を上回った水位に維持される。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る地下水位低下システム1によれば、井戸管2に流入した地下水を該井戸管から揚水するにあたり、水位計11、差圧計12及びシーケンサ13からなる水位評価手段で井戸管2内における地下水の水位hを評価し、その評価値を用いて井戸管2内における地下水の水位がストレーナ6よりも高くなるようにシーケンサ13を介して流量制御弁14を制御するようにしたので、井戸管2内外の地下水位は、常にストレーナ6を上回ることとなり、かくしてストレーナ6から空気が混入し、それが原因で井戸管2内の減圧状態が維持されなくなるのを防止することができるとともに、井戸管2内の減圧状態が安定化することにより、強制排水と重力排水の相乗作用によって高い揚水能力を確保できるというバキュームディープウェルの利点を継続的に発揮させることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係る地下水位低下システム1によれば、従来のように二重管構造を採用する必要がなくなるため、従来であれば、内管をφ300mm〜350mmとすると、φ350mm〜400mmの井戸管が必要であったところ、φ300mm以下の井戸管2を用いることも可能となり、あらたに揚水井戸を新設する場合には設置コストの低減を図ることができるとともに、既設の揚水井戸については、内管を収容するだけのスペースがないために適用自体が困難になるといった事態も生じない。
【0046】
また、本実施形態に係る地下水位低下システム1によれば、システム構築にあたり、水位計11や差圧計12を設置するだけで足りるため、既設の揚水井戸であれば、水中ポンプの一時撤去、内管の収容、該内管への水中ポンプの再設置といった煩雑な手順を踏む必要があった従来に比べ、低コストでのシステム導入が可能となる。
【0047】
また、本実施形態に係る地下水位低下システム1によれば、差圧計12により、井戸管2内の気圧を大気圧との差圧の形で計測することができるため、井戸管2内の減圧状態を監視することが可能となる。
【0048】
本実施形態では、井戸管2内における地下水の水位がストレーナ6よりも高くなるように流量制御弁14を制御するようにしたが、これに代えて、水中ポンプ5を制御するようにしてもかまわない。
【0049】
かかる場合においても、揚水量を調整するという点では流量制御弁14の場合と同様であり、上述したと同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
本実施形態に係る地下水位低下システム41は図4に示すように、井戸管2の底部近傍に配置された水位計51と、該井戸管の内部空間3であって水面よりも上方となる位置に配置された気圧計52と、制御手段及び演算手段としてのシーケンサ(PLC)53とを備え、水位計51、気圧計52及びシーケンサ53は、井戸管2内における地下水の水位を評価する水位評価手段として機能するとともに、シーケンサ53は、井戸管2内における地下水の水位がストレーナ6よりも高くなるように、上述した水位評価手段で得られた評価値を用いて流量制御弁14を制御するようになっている。
【0052】
水位計51は、大気圧補正をせずに出力するよう構成されたいわゆる絶対水位計であり、水位計11とは異なり、ベントチューブの配置は不要である。
【0053】
気圧計52は、井戸管2内の気圧を計測するように構成してあり、水位計51と同様、ベントチューブの配置は不要である。
【0054】
水位計51や気圧計52は、市販品から適宜選択することが可能である。
【0055】
本実施形態に係る地下水位低下システム41を用いて地下水位を低下させるには、従来のバキュームディープウェル工法と同様、井戸管2の内部空間3に連通接続された真空ポンプ4を用いて該井戸管の内部空間3を減圧しつつ、井戸管2の底部近傍に設置された水中ポンプ5を作動させることで、ストレーナ6を介して井戸管2内に流入した地下水を揚水管7を介して地上に揚水するが、本実施形態では、図5のフローチャートに示すように、水位計51で井戸管2内の地下水の水位を計測するとともに、井戸管2の内部空間3であって水面よりも上方となる位置の気圧を気圧計52で計測する(ステップ111)。
【0056】
ここで、水位計51で計測された水位は、圧力値が全て水圧に起因するものとして出力された水位であり、気圧が存在する井戸管2内では、実際の水位とずれが生じる。
【0057】
そこで、水位計51で計測された水位をh3、気圧計52で計測された気圧から換算された水柱高さをh4としたとき、次式、
h=h3−h4 (2)
をシーケンサ53で演算することで、井戸管2内の水位hを算出する(ステップ112)。
【0058】
上述の(2)式は、以下のように導出することができる。すなわち、地下水のみによる圧力をPw(水柱換算)とすると、水位計51が出力する水位h3は、
3=Pw+P4
となる。
【0059】
したがって、これを変形すると、
w=h3−P4
となる。
【0060】
このように水位計51、気圧計52及びシーケンサ53からなる水位計測手段で井戸管2内における地下水の水位を水位hとして評価したならば、次に、これを監視下限水位Hと比較する(ステップ113)。
【0061】
ここで、水位hが監視下限水位H以上であれば(ステップ113,YES)、シーケンサ13を介して流量制御弁14を開くか、又は開いた状態を維持する(ステップ114)。
【0062】
このようにすると、井戸管2内に流入した地下水は、揚水が再開され又は引き続き揚水が継続される。
【0063】
一方、水位hが監視下限水位Hを下回っていたならば(ステップ113,NO)、シーケンサ13を介して流量制御弁14を絞り若しくは閉じ又はそれらの状態を維持する(ステップ115)。
【0064】
このようにすると、井戸管2内に流入した地下水の揚水量が減少し若しくは揚水自体が停止し又はそれらの状態が継続されるので、井戸管2への地下水の流入によって該井戸管内の地下水の水位は上昇し、やがて監視下限水位Hを上回る。
【0065】
以下、所定の時刻ごとにステップ111〜ステップ115を繰り返すことで、井戸管2内外の地下水位は、常にストレーナ6を上回った水位に維持される。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る地下水位低下システム41によれば、井戸管2に流入した地下水を該井戸管から揚水するにあたり、水位計51、気圧計52及びシーケンサ53からなる水位評価手段で井戸管2内における地下水の水位hを評価し、その評価値を用いて井戸管2内における地下水の水位がストレーナ6よりも高くなるようにシーケンサ53を介して流量制御弁14を制御するようにしたので、井戸管2内外の地下水位は、常にストレーナ6を上回ることとなり、かくしてストレーナ6から空気が混入し、それが原因で井戸管2内の減圧状態が維持されなくなるのを防止することができるとともに、井戸管2内の減圧状態が安定化することにより、強制排水と重力排水の相乗作用によって高い揚水能力を確保できるというバキュームディープウェルの利点を継続的に発揮させることが可能となる。
【0067】
また、本実施形態に係る地下水位低下システム41によれば、地下水位低下システム1と同様、従来のように二重管構造を採用する必要がなくなるため、例えばφ300mm以下の井戸管2を用いることも可能となり、あらたに揚水井戸を新設する場合には設置コストの低減を図ることができるとともに、既設の揚水井戸については、内管を収容するだけのスペースがないために適用自体が困難になるといった事態も生じない。
【0068】
また、本実施形態に係る地下水位低下システム41によれば、地下水位低下システム1と同様、低コストでのシステム導入が可能となる。
【0069】
また、本実施形態に係る地下水位低下システム41によれば、大気圧を計測する必要がないため、ベントチューブを配置する手間を省くことができる。
【0070】
また、本実施形態に係る地下水位低下システム41によれば、井戸管2内の気圧を気圧計52で計測することができるため、井戸管2内の減圧状態を監視することが可能となる。
【0071】
本実施形態では、井戸管2内における地下水の水位がストレーナ6よりも高くなるように流量制御弁14を制御するようにしたが、これに代えて、水中ポンプ5を制御するようにしてもかまわない。
【0072】
かかる場合においても、揚水量を調整するという点では流量制御弁14の場合と同様であり、上述したと同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0073】
1,41 地下水位低下システム
2 井戸管
3 井戸管2の内部空間
4 真空ポンプ
5 水中ポンプ
6 ストレーナ(地下水流入開口)
7 揚水管
8 地盤
11,51 水位計
12 差圧計
13,53 シーケンサ(制御手段、演算手段)
14 流量制御弁
52 気圧計
図1
図2
図3
図4
図5