特許第6245508号(P6245508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245508
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】過活動膀胱の予防又は改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/015 20060101AFI20171204BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 31/11 20060101ALI20171204BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20171204BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171204BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20171204BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20171204BHJP
【FI】
   A61K31/015
   A61K31/19
   A61K31/045
   A61K31/11
   A61P13/10
   A61P43/00 105
   A23L2/00
   A23L35/00
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-188629(P2013-188629)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-54835(P2015-54835A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 宏和
(72)【発明者】
【氏名】北村 尚也
(72)【発明者】
【氏名】亀山 明代
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−133440(JP,A)
【文献】 Am J Physiol Cell Physiol,2009年,Vol.296,C97-C105
【文献】 臨床薬理,2009年,Vol.40, No.5,p.207-211
【文献】 Journal of Pharmacological Sciences,2010年,Vol.112,p.128-134
【文献】 排尿障害プラクティス,2012年,Vol.20, No.1,p.7-14
【文献】 PAIN RESEARCH,2012年,Vol.27,p.37-51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/015
A61K 31/045
A61K 31/11
A61K 31/19
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び下記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする、過活動膀胱の予防又は改善剤
【請求項2】
過活動膀胱の予防又は改善がATP放出抑制によるものである、請求項1記載の過活動膀胱の予防又は改善剤。
【請求項3】
下記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び下記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする、膀胱上皮細胞からのATP放出抑制剤
【請求項4】
下記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び下記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする、過活動膀胱の症状である、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防若しくは改善剤
【請求項5】
頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防若しくは改善がATP放出抑制によるものである、請求項4記載の頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防若しくは改善剤。
【請求項6】
請求項1若しくは2記載の過活動膀胱の予防又は改善剤、請求項3記載の膀胱上皮細胞からのATP放出の抑制剤、又は、請求項4若しくは5記載の頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防若しくは改善剤を含有する、過活動膀胱、又は、その症状である、頻尿、尿意切迫感、若しくは切迫性尿失禁の予防若しくは改善用の、食品若しくは飲料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
過活動膀胱(overactive bladder: OAB)は泌尿器系の疾患で、頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁といった症状を伴う。これらの症状は、日常生活に大きな支障を与え生活の質を低下させる。その程度は、糖尿病と同程度とも言われている。有病率は加齢に伴い上昇し、超高齢化社会の日本では40歳以上の罹患者は約810万人にものぼると推定されている。
【0003】
近年、過活動膀胱の原因として、膀胱の求心性神経活動の亢進が指摘されている。求心性神経活動の亢進は、蓄尿に伴う膀胱の伸展刺激を受けて膀胱上皮細胞から放出されるアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate、以下「ATP」と略記する)やアセチルコリン(acetylcholine)等の神経伝達物質により起こると考えられている。ヒトは加齢に伴い膀胱上皮細胞から放出されるATP量が増加すること、及び過活動膀胱患者では膀胱伸展時のATP放出量が増大することが報告されている(非特許文献1参照)。また、ラットの膀胱にATPを投与すると、排尿筋過活動が誘発され、排尿間隔が短縮することも報告されている(非特許文献2参照)。
【0004】
現在、過活動膀胱の薬物治療には、抗コリン薬が用いられている。抗コリン薬は、膀胱の排尿筋の収縮を促進するアセチルコリンの作用を阻害する。しかし、抗コリン薬は、患者によっては明確な症状改善効果が見られない、副作用として口渇や便秘等の症状を呈する等、問題点も多く存在する。そこで、より効果的な過活動膀胱の予防又は改善方法が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本脊髄障害医学会雑誌,2005年,第18巻,p.18-19
【非特許文献2】Journal of Urology,2002年,第168巻,p.1230-1234
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、過活動膀胱を予防又は改善しうる、過活動膀胱の予防又は改善剤の提供を課題とする。また、本発明は、膀胱上皮細胞からのATP放出を抑制する、ATP放出抑制剤の提供を課題とする。さらに、本発明は、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁を予防又は改善しうる、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
抗コリン薬は、放出されたアセチルコリンが膀胱平滑筋の受容体へ結合するのを阻害するものである。しかし、抗コリン薬の投与はいわゆる対症療法であり、効果の点から十分な治療法とは言い難い。また、抗コリン薬には、上述のような副作用もある。
これに対し、過活動膀胱の主要原因である膀胱上皮細胞からの過度のATP放出を抑制することができれば、過活動膀胱の原因療法となり得る。
【0008】
そこで、本発明者らは上記課題に鑑み、過活動膀胱の原因となる膀胱上皮細胞からのATP放出を抑制しうる物質について鋭意検討を行った。その結果、ペリル酸にATP放出を抑制する作用があり、過活動膀胱の予防又は改善に有用であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0009】
本発明は、下記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び下記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする、過活動膀胱の予防又は改善剤に関する。
また、本発明は、下記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び下記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする、ATP放出抑制剤に関する。
また、本発明は、下記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び下記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤に関する。
さらに、本発明は、下記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び下記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を適用する、過活動膀胱、頻尿、尿意切迫感、又は切迫性尿失禁の非治療的予防又は改善方法に関する。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
【化3】
【0013】
【化4】
【0014】
【化5】
【0015】
【化6】
【発明の効果】
【0016】
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤は、膀胱上皮細胞からのATP放出を抑制して過活動膀胱を予防又は改善し、過活動膀胱とそれに伴う症状である頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁を予防又は改善することができる。
また、本発明のATP放出抑制剤は、膀胱上皮細胞からのATPの放出を抑制することができる。
さらに、本発明の頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤は、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁を予防又は改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転、疾患、症状又は状態の悪化の防止又は遅延、あるいは疾患、症状又は状態の進行の逆転、防止又は遅延をいう。
また、本明細書において、「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処理行為を含まない概念である。
また、本明細書において、「予防」とは、個体における疾患若しくは症状の発症の防止又は遅延、あるいは個体の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。
【0018】
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤は、前記式(1)で表される化合物又はその塩、前記式(2)で表される化合物、前記式(3)で表される化合物又はその塩、前記式(4)で表される化合物、前記式(5)で表される化合物、及び前記式(6)のいずれかで表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする。
【0019】
前述のように、過活動膀胱患者では膀胱伸展時のATP放出量が増大していること、ラットの膀胱にATPを投与すると、排尿筋過活動が誘発され排尿間隔が短縮すること、が報告されている。さらに、ATP受容体(P2X3)のアンタゴニストをラット静脈内へ投与すると、排尿間隔が延長されるとの報告もなされている(J.Chin.,Med.Assoc.,2007年,第70巻,p.439-444)。これらの報告から、過活動膀胱患者に見られる膀胱伸展時のATP放出量の増大を抑制することで、過活動膀胱及びその症状である頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁を予防又は改善し得ると考えられる。
後記実施例でも示すように、前記式(1)で表される化合物は、膀胱の伸展刺激による膀胱上皮細胞からのATP放出を抑制する作用を有する。したがって、前記式(1)で表される化合物を、膀胱上皮細胞からのATPの放出を抑制し、過活動膀胱及びその症状である頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁を予防又は改善するために使用することができる。
上記使用は、治療的使用(即ち医療行為)であっても非治療的使用(非医療的な行為)であってもよい。また、上記使用の対象は、ヒト、非ヒト動物、又はそれらに由来する検体であり得る。
【0020】
また、前記式(2)〜(6)で表される化合物は、生体内で前記式(1)で表される化合物に代謝されることが報告されている(Appl.Microbiol.Biotechnol.,2003年,61巻,p.269-277、Xenobiotica,1989年,第19巻,p.843-855、European Journal of Applied Microbiology and Biotechnology,1982年,第16巻,p.174-178)。具体的には、前記式(2)で表される化合物は、前記式(2)で表される化合物→ペリルアルコール→ペリルアルデヒド→前記式(1)で表される化合物という経路で、前記式(1)で表される化合物へと代謝される。また、前記式(3)で表される化合物は、前記式(3)で表される化合物→前記式(1)で表される化合物という経路で、前記式(1)で表される化合物へと代謝される。また、前記式(4)で表される化合物は、前記式(4)で表される化合物→前記式(3)で表される化合物→前記式(1)で表される化合物という経路で、前記式(1)で表される化合物へと代謝される。また、前記式(5)で表される化合物は、前記式(5)で表される化合物→前記式(3)で表される化合物→前記式(1)で表される化合物という経路で、前記式(1)で表される化合物へと代謝される。あるいは、前記式(5)で表される化合物→前記式(4)で表される化合物→前記式(3)で表される化合物→前記式(1)で表される化合物という経路で、前記式(1)で表される化合物へと代謝される。また、前記式(6)で表される化合物は、前記式(6)で表される化合物→前記式(2)で表される化合物→前記式(1)で表される化合物という経路で、前記式(1)で表される化合物へと代謝される。したがって、膀胱の伸展刺激による膀胱上皮細胞からのATP放出を抑制する前記式(1)で表される化合物に代謝される、前記式(2)で表される化合物、前記式(3)で表される化合物又はその塩、前記式(4)で表される化合物、前記式(5)で表される化合物、及び下記式(6)で表される化合物についても、膀胱上皮細胞からのATPの放出を抑制し、過活動膀胱及びその症状である頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁を予防又は改善するために使用することができる。
なお、前記(1)〜(6)で表される化合物の代謝経路を下記式に示す。
【0021】
【化7】
【0022】
前記(1)〜(6)で表される化合物について説明する。
式(1)で表される化合物は、ペリル酸である。本発明において、式(1)で表される化合物は、塩の形態で用いてもよい。前記化合物の塩としては、薬学的に許容できる塩であれば特に制限されないが、例えば、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム及びトリエチルアミン等のアミン類との塩などが挙げられる。本発明において、前記化合物の塩としては、アルカリ金属との塩が好ましく、ナトリウム塩及びカルシウム塩がより好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。
式(2)で表される化合物は、リモネンである。
式(3)で表される化合物は、ミルテン酸である。本発明において、式(3)で表される化合物は、塩の形態で用いてもよい。前記化合物の塩としては、薬学的に許容できる塩であれば特に制限されないが、例えば、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム及びトリエチルアミン等のアミン類との塩などが挙げられる。本発明において、前記化合物の塩としては、アルカリ金属との塩が好ましく、ナトリウム塩及びカルシウム塩がより好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。
式(4)で表される化合物は、ミルテノールである。
式(5)で表される化合物は、ミルテナールである。
式(6)で表される化合物は、α-ピネンである。
【0023】
前記式(1)〜(6)で表される化合物の製造方法に特に制限はなく、通常の有機化学的合成により得ることもできるし、天然物由来の材料から抽出や精製等したものであってもよい。また、試薬として市販されているものを式(1)〜(6)で表される化合物として用いることもできる。
式(1)で表される化合物は、例えば、香料化学総覧II(廣川書店、1980年、P1145)に記載の方法を参考に、ペリルアルデヒド(Perillaldehyde)の自己酸化によるか、または湿った酸化銀で酸化することにより得られる
式(2)で表される化合物は、例えば、香料化学総覧II(廣川書店、1980年、P405)に記載の方法を参考に、α-テルピネオールをKHSO4で脱水することにより得られる。
式(3)で表される化合物は、例えば、香料化学総覧II(廣川書店、1980年、P1149)に記載の方法を参考に、ミルテノールをクロン酸、MnO2で酸化するか、又はα-ピネンをSeO2で酸化して得たミルテナールをAgO2又は触媒下で空気酸化することにより得られる。
式(4)で表される化合物は、例えば、香料化学総覧II(廣川書店、1980年、P595)に記載の方法を参考に、樹脂酸コバルトの存在下で、α-ピネンの自働酸化によるか、又はSeO2酸化により得られる。
式(5)で表される化合物は、例えば、香料化学総覧II(廣川書店、1980年、P779)に記載の方法を参考に、ミルテノールを重クロム酸混液で酸化することにより得られる。
式(6)で表される化合物は、例えば、香料化学総覧II(廣川書店、1980年、P416)に記載の方法を参考に、下記スキームのように合成することにより得られる。
【0024】
【化8】
【0025】
本発明において、前記有効成分とする化合物のいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0026】
前記化合物を有効成分とする過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤は、上記使用の具体的態様の1つであり、治療的用途(医療用途)、非治療用途(非医療用途)のいずれにも適用することができる。
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防・改善剤の形態は適宜選択することができ、例えば、医薬品、医薬部外品、医薬組成物、食品、飲料、食品用組成物、飲料用組成物とするか、有効成分としてこれらに含有させることもできる。
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防・改善剤は、液状、固形状、乳液状、ペースト状、ゲル状、パウダー状(粉末状)、顆粒状、ペレット状、スティック状等、ヒトや動物に適用されうる各種剤型をとることができる。また、本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防・改善剤は、前記有効成分とする化合物のみからなるものであってもよいし、効果に影響を与えない範囲で他の成分を含有するものであってもよい。
【0027】
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防・改善剤を医薬品、医薬部外品、医薬組成物に適用する場合、前記有効成分とする化合物を有効量含有させ、必要により添加剤を配合して各種剤形に調製することができる。例えば、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、腸溶剤、トローチ剤、ドリンク剤等の経口投与製剤として調製することができる。あるいは、注射剤、坐剤、経皮吸収剤、外用剤等といった非経口投与製剤として調製することができる。これらの形態のうち、好ましい形態は経口投与製剤である。
種々の剤型に調製するには、添加剤を用いて常法に従って製造すればよい。添加剤は、通常用いられているものを使用することができる。添加剤の例としては、薬学的に許容される賦形剤(ソルビトール、グルコース、乳糖、デキストリン、澱粉等の糖類、炭酸カルシウム等の無機物、結晶セルロース、蒸留水、ゴマ油、とうもろこし油、オリーブ油、菜種油等)、液体担体(蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノール等のアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、油性担体(各種の動植物油、白色ワセリン、パラフィン、ロウ類等)、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、崩壊剤、滑沢剤、増量剤、界面活性剤、分散剤、懸濁剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、矯臭剤、細菌抑制剤等が挙げられる。
【0028】
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防・改善剤を飲食品、飼料、ペットフード等に適用する場合、食用又は飲料用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して提供することができる。さらに、前記飲食品は、一般飲食品の他、過活動膀胱、頻尿、尿意切迫感若しくは切迫性尿失禁の予防若しくは改善、又はATP放出の抑制をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した美容食品、病者用食品、栄養機能食品又は特定保健用食品等の機能性飲食品の形態とすることができる。ここで病者用食品、栄養機能食品又は特定保健用食品とは機能表示が許可された食品であり、一般的な食品と明確に区別される食品である。
飲食品の例としては、パン、麺類等に代表される小麦粉加工食品、お粥、炊き込みご飯等の米加工食品、ビスケット、ケーキ、ゼリー、チョコレート、せんべい、アイスクリーム等の菓子類、豆腐、その加工食品等の大豆加工食品、清涼飲料、果汁飲料、乳飲料、炭酸飲料等の飲料類、ヨーグルト、チーズ、バター、牛乳等の乳製品、醤油、ソース、味噌、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、ハム、ベーコン、ソーセージ等の蓄肉、蓄肉加工食品、はんぺん、ちくわ、魚の缶詰等の水産加工食品、調理油ならびにフライ用油等が挙げられる。また、錠剤(タブレット)、カプセル等の錠剤食、濃厚流動食、自然流動食、半消化態栄養食、成分栄養食、ドリンク栄養食等の経口経腸栄養食品、機能性食品等の形態としてもよい。
飼料としては、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、犬、猫、小鳥、リス等に用いるペットフード等が挙げられる。
【0029】
これらの飲食品等は、本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、又は、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防・改善剤を含有し、これに飲食品原料、例えば、甘味剤、着色剤、抗酸化剤、ビタミン類、香料、ミネラル等の添加剤、タンパク質、脂質、糖質、炭水化物、食物繊維等を適宜組み合わせて、常法に従って調製することができる。
【0030】
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防・改善剤における前記有効成分とする化合物の含有量は、その使用形態により異なり、適宜決定できる。例えば、医薬品、例えば、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤の場合は、固形分濃度として0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましく、90質量%以下が好ましく、50質量%がより好ましい。あるいは、0.001〜90質量%が好ましく、0.003〜90質量がより好ましく、0.01〜90質量がさらに好ましく、0.01〜50質量%がよりさらに好ましい。飲食品やペットフード等に配合する場合は、固形分濃度として0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましく、50質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。あるいは、0.001〜50質量%が好ましく、0.003〜50質量がより好ましく、0.01〜50質量がさらに好ましく、0.01〜10質量%がよりさらに好ましい。
【0031】
本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防・改善剤の投与又は摂取量は、個体の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って適宜選択、決定できる。例えば、成人(60kg)の1日の投与又は摂取量としては、前記有効成分とする化合物の乾燥物換算として、0.001mg以上が好ましく、1mg以上がより好ましく、100mg以上がさらに好ましく、80000mg以下が好ましく、40000mg以下がより好ましく、15000mg以下がさらに好ましい。あるいは、0.001〜80000mgが好ましく、1〜40000mgがより好ましく、100〜15000mgがさらに好ましい。また、本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防・改善剤は、1日1回〜数回に分け、又は任意の期間及び間隔で摂取・投与され得る。
【0032】
前記有効成分とする化合物、並びに本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防・改善剤の摂取又は投与対象は、ヒトやヒト以外の哺乳動物が好ましい。または、これらの症状は加齢に伴い増加するため、対象としては40歳以上のヒトが好ましい。なお、摂取又は投与対象には、過活動膀胱の症状が認められるヒトやヒト以外の哺乳動物、及びそのおそれがあるヒトやヒト以外の哺乳動物、その疾患・症状の予防を期待するヒトやヒト以外の哺乳動物も含まれる。
前記有効成分とする化合物、並びに本発明の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防・改善剤は、過活動膀胱、及びその主な症状である頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁の予防、改善又は治療を所望する対象者に適用することが好ましい。
【0033】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防・改善剤、製造方法、方法及び使用を開示する。
【0034】
<1>前記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び前記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする、過活動膀胱の予防又は改善剤。
<2>前記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び前記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする、ATP放出抑制剤。
<3>前記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び前記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分とする、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤。
【0035】
<4>過活動膀胱、頻尿、尿意切迫感、又は切迫性尿失禁の予防又は改善がATP放出抑制によるものである、前記<1>又は<3>項記載の過活動膀胱、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤。
<5>膀胱上皮細胞からのATP放出抑制によるものである、前記<1>〜<4>のいずれか1項記載の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、又は、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤。
<6>前記有効成分とする化合物が前記式(1)で表される化合物又はその塩である、前記<1>〜<5>のいずれか1項記載の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、又は、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤。
<7>前記有効成分とする化合物の含有量が固形分換算で0.001質量%以上(好ましくは0.003質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上)90質量%以下(好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下)である、前記<1>〜<6>のいずれか1項記載の過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、又は、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤。
【0036】
<8>過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、又は、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤としての、前記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び前記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の使用。
<9>過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、又は、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤の製造のための、前記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び前記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の使用。
<10>前記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び前記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を、過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、又は、頻尿、尿意切迫感、又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤として使用する方法。
<11>前記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び前記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を適用する、過活動膀胱、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善方法、又はATP放出抑制方法。
<12>前記化合物を過活動膀胱、及びその主な症状である頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁の予防、改善又は治療を所望する対象者に適用する、前記<10>又は<11>項記載の方法。
<13>非治療的方法である、前記<10>〜<12>のいずれか1項記載の方法。
<14>過活動膀胱、頻尿、尿意切迫感、又は切迫性尿失禁の予防又は改善、又はATP放出抑制のために用いる、前記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び前記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物。
<15>過活動膀胱の予防若しくは治療薬、ATP放出抑制薬、又は頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防若しくは改善薬の製造のための、前記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び前記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の使用。
<16>過活動膀胱、ATP放出抑制、又は頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の非治療的な処置方法のために用いる、前記式(1)で表される化合物又はその塩、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物又はその塩、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、及び前記式(6)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の使用。
<17>前記化合物を医薬組成物の形態で適用する、前記<16>項記載の使用。
<18>前記化合物を食品又は飲料の形態で適用する、前記<16>項記載の使用。
<19>食品又は飲料の形態が病者用食品、栄養機能食品又は特定保健用食品である、前記<18>記載の化合物、使用又は方法。
<20>過活動膀胱、頻尿、尿意切迫感、又は切迫性尿失禁を予防又は改善がATP放出抑制によるものである、前記<8>〜<19>のいずれか1項記載の化合物、使用又は方法。
<21>膀胱上皮細胞からのATP放出抑制によるものである、前記<20>記載の化合物、使用又は方法。
<22>前記過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、又は、頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤における、前記化合物の含有量が固形分換算で0.001質量%以上(好ましくは0.003質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上)90質量%以下(好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下)である、前記<8>〜<21>のいずれか1項記載の化合物、使用又は方法。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
調製例 式(1)で表される化合物の調製
(S)-(−)-ペリル酸(SIGMA-ALDRICH社より入手、純度95%)を99.5%エタノールに濃度30%(w/v)になるように溶解し、式(1)で表される化合物として用いた。
【0039】
実施例1 ATP放出抑制試験
[膀胱上皮細胞]
ヒト膀胱上皮癌細胞であるHT-1376(ATCC社より入手)を使用した。細胞情報を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
[培地]
Earle's(Invitrogen社製)に、10%FCS(ウシ胎仔血清)、ピルビン酸ナトリウム(0.055g/500mL)、L−グルタミン(0.146g/500mL)を添加したものを使用した。
【0042】
1.低浸透圧刺激によるATP放出
12wellプレートに、6.0×104cells/wellとなるようにHT-1376を播種し、上記培地で37℃、5%CO2条件下で、72時間培養した。培地を吸引除去して、等浸透圧液(組成を表2に示す)で細胞を洗浄した。調製例で調製した化合物を下記表3に示す濃度となるよう添加した等浸透圧液を、375μL/well加えて、37℃、5%CO2環境下で60分インキュベートした。その後、調製例で調製した化合物を下記表3に示す濃度となるよう添加した低浸透圧液(組成を表2に示す)を375μL/well添加し、37℃、5%CO2環境下で60分インキュベートした。低浸透圧刺激により培地中に放出されたATP量を測定するため、細胞培養液50μLをサンプルとして回収した。
また、等浸透圧液及び低浸透圧液に式(1)で表される化合物を添加しない以外は上記と同様にして細胞培養を行い、回収した培養液をコントロールサンプルとした。
【0043】
【表2】
【0044】
2.ATP放出量の測定
回収したサンプル溶液中のATP濃度を、ATP Bioluminescent Assay Kit(SIGMA社製)を用いてルシフェリン・ルシフェラーゼ法により測定した。サンプル溶液と、ATP Bioluminescent Assay Kit中のATP Assay Mix solutionとを等量で混合し、撹拌後にホタルルシフェラーゼ活性を1秒間測定してATP量を測定した。同様に、コントロールサンプル中のATP量を測定した。
ルシフェリン・ルシフェラーゼ法によるATP濃度の測定では、サンプル溶液中に含まれている式(1)で表される化合物にクエンチング効果がある場合、ATP濃度が低く計算されてしまう。そこで、下記式(A)により、測定したサンプル中のATP量をATP添加回収率で補正した値を、ATP放出率とした。なお、ATP添加回収率とは、既知ATP量を含有する溶媒に式(1)で表される化合物を添加した場合の、該溶媒中における既知ATP量の測定可能割合をいい、式(A)におけるATP添加回収率は、溶媒対照(化合物添加なし)のATP量に対する相対値とした。

式(A)
ATP放出率=式(1)で表される化合物を添加したサンプル中のATP量/{(ATP添加回収率)×(コントロールサンプル中のATP量)}

結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表3に示すように、前記式(1)で表される化合物を添加したサンプルのATP放出率は、コントロールと比較して有意な差が見られた。すなわち、等浸透圧から低浸透圧へと浸透圧を変化させて膀胱上皮細胞を伸展させると、前記式(1)で表される化合物を添加しないコントロールサンプルではATPの放出が亢進するのに対し、前記式(1)で表される化合物を添加したサンプルでは、このATP放出が濃度依存的に抑制された。
【0047】
これらの結果から、前記式(1)で表される化合物は、膀胱上皮細胞の伸展時に亢進するATP放出を抑制する作用を有することが確認された。したがって、前記式(1)で表される化合物を過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤の有効成分とすることができる。
また、前記式(2)〜(6)で表される化合物は、生体内で前記式(1)で表される化合物に代謝されることが報告されている。したがって、膀胱上皮細胞の伸展時に亢進するATP放出を抑制する前記式(1)で表される化合物に代謝される、前記式(2)で表される化合物、前記式(3)で表される化合物又はその塩、前記式(4)で表される化合物、前記式(5)で表される化合物、及び下記式(6)で表される化合物についても、過活動膀胱の予防又は改善剤、ATP放出抑制剤、及び頻尿、尿意切迫感又は切迫性尿失禁の予防又は改善剤の有効成分とすることができる。