(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態による薄切片作製装置について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態による薄切片作製装置1の一例を示すブロック図である。
また、
図2は、本実施形態における包埋ブロックBの一例を示す斜視図である。
この薄切片作製装置1は、
図2に示すような包埋ブロックBを、仮想平面Hに沿って包埋ブロックBと相対的に移動する切削刃3で切削して薄切片を切り出す装置である。例えば、薄切片作製装置1は、生体試料SがパラフィンPに包埋された包埋ブロックBを粗削りし、面出しした後に、包埋ブロックBを本切削することで薄切片(例えば、3μm〜5μmの厚さの薄切片)を作製する。ここで、「面出し」とは、例えば、生体試料Sの組織の薄切すべき断面を包埋ブロックBの表面に露出させることである。また、「粗削り」とは、面出しを行うために厚めに(粗く)切削することである。
【0024】
なお、本実施形態では、薄切片作製装置1が、ミクロトームなどの装置によって、予めある程度の面出しされている包埋ブロックBに対して、薄切片を切り出す場合について説明する。また、薄切片作製装置1は、不図示のセンサー(例えば、光センサーや電気的なセンサーなど)により、包埋ブロックBの最も高い位置(Z軸方向の高さ)を予め測定しているものとして説明する。なお、包埋ブロックBの最も高い位置の測定方法としては、センサーを用いるものに限定させるものではなく、他の公知の測定方式を適用できる。
【0025】
図2において、包埋ブロックBは、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィンP(包埋剤)によってブロック状に固められた平面視で矩形状のものである。これにより、生体試料SがパラフィンP内に包埋されている。また、生体試料S(試料)としては、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適時選択されるものである。
【0026】
また、包埋ブロックBは、
図2に示すようにカセットK上に固定されている。
このカセットKは、耐薬品性を有する樹脂等により箱状に形成されたものであり、包埋ブロックBを固定する固定台としての役割を果している。カセットKの一側面は、下方に面が向いた傾斜面となっており、この傾斜面には、包埋ブロックBの作製日、生体試料Sの各種データ等を含む図示しないIDデータが記録されている。そのため、包埋ブロックBは、このカセットKのIDデータを読み取ることで、包埋ブロックBの品質管理を行うことが可能となっている。
【0027】
図1において、薄切片作製装置1は、台部2、切削刃3、落射照明部4、コントロールユニット5、撮像部30、入力部31、及び表示部32を備えている。
台部2は、包埋ブロックBが載置されるブロックホルダ13(支持部)を有する支持台10と、回動機構部11と、仮想平面Hに直交するZ軸方向に支持台10を移動させる移動機構部12とを有している。また、この台部2は、落射照明部4の光軸L1上に配置されている。
ブロックホルダ13は、支持台10の先端に配置され、包埋ブロックB及びカセットKを支持台10に固定する支持部である。
【0028】
回動機構部11は、仮想平面H上で互いに直交するX軸及びY軸の2軸回りにそれぞれ支持台10及びブロックホルダ13を回動させる。また、回動機構部11は、支持台10をY軸回りに回動させるY軸回動機構部11aと、支持台10をX軸回りに回動させるX軸回動機構部11bとから構成されており、コントロールユニット5からの指示に基づいて作動する。
移動機構部12は、回動機構部11及び支持台10をZ軸方向に移動させるものであり、回動機構部11と同様にコントロールユニット5からの指示に基づいて作動する。
【0029】
切削刃3は、仮想平面Hに沿って包埋ブロックBと相対的に移動して、包埋ブロックBを切削する。本実施形態では、一例として、切削刃3はX軸方向に移動する切削刃移動機構部15に接続されている。これにより、切削刃3は、仮想平面Hに沿って移動するようになっている。
この切削刃移動機構部15は、コントロールユニット5からの指示を受けて作動するようになっており、移動速度(切削速度)や切削タイミング等が制御される。
【0030】
落射照明部4(照射部)は、包埋ブロックBに平行光を照射する。落射照明部4は、例えば、仮想平面Hに直交し支持台10上の包埋ブロックBの表面(切削面)に向かう光軸L1を有している。この落射照明部4は、複数のLED20が面状に配された面光源21と、面光源21から照射された光を平行光にするための図示しない光学系と、ハーフミラー22と、を有している。
ハーフミラー22は、面光源21からの平行光を支持台10上の包埋ブロックBの表面に向かうように反射させるとともに包埋ブロックBからの反射光を透過させる。
【0031】
なお、光源としては、面光源21ではなく、点光源からの光をピンホール及びコリメートレンズを通過させて平行光にするものであっても構わない。また、この実施形態では、光源(面光源21)から照射された光をハーフミラー22で反射させて包埋ブロックBの表面に向かう光軸L1を得るようにしているが、ハーフミラー22を設けずに、光源を包埋ブロックBの表面と直接対向するように配置して光軸L1を得るようにしてもよい。
【0032】
撮像部30は、図示しない撮像素子を備え、撮像軸が光軸L1と合致するように設定されている。また、撮像部30は、落射照明部4の照明光下において、包埋ブロックBを鉛直上方側から撮像する。すなわち、撮像部30は、落射照明部4から光が照射された状態で、平行光の反射による包埋ブロックBの画像を撮像する。この撮像部30で撮像された各画像データは、図示しない画像記憶部に一旦記憶され、後に詳述するコントロールユニット5に出力される。
なお、以下では、落射照明部4の照明光下(同軸落射照明下)で撮像された包埋ブロックBの画像(又は画像データ)を落射照明画像(又は落射照明画像データ)と呼ぶものとする。
【0033】
入力部31は、例えば、キーボード、マウス、ジョイステックなどの入力装置であり、薄切片作製装置1の各種操作を行う、及び各種設定などの情報を薄切片作製装置1に入力する。入力部31は、入力された操作情報、設定情報、及び、入力情報をコントロールユニット5に出力する。
表示部32は、例えば、液晶表示装置などのモニターであり、撮像部30が撮像した画像やその画像に処理を施した画像、及び、薄切片作製装置1の各種画面、設定画面、情報入力画面などを表示する。
【0034】
コントロールユニット5(制御部)は、例えば、不図示のCPU(Central Processing Unit)を有する制御装置であり、薄切片作製装置1の各種制御を行う。
コントロールユニット5は、例えば、包埋ブロックB又は生体試料Sの切削面と、切削刃3の仮想平面Hとが平行になるように、包埋ブロックBを配置する面合わせ処理を実行する。なお、本実施形態では、包埋ブロックBが予め粗削りがされており、コントロールユニット5が、包埋ブロックBの粗削り面と、切削刃3の仮想平面Hとが平行になるように、面合わせ処理(又は面出し処理)を実行する場合について説明する。ここで、「面合わせ」とは、例えば、包埋ブロックBの端面が切削面と並行になるように傾きを調整し切削することである。
また、コントロールユニット5は、高さ変更部51、傾斜角変更部52、法線ベクトル算出部53、傾斜推定部54、及び傾斜補正部55を備えている。
【0035】
高さ変更部51は、台部2の移動機構部12を制御して、包埋ブロックBの高さを調整する。
傾斜角変更部52は、包埋ブロックBを固定するブロックホルダ13の傾き及び支持台10の傾きを変更する。すなわち、傾斜角変更部52は、回動機構部11(Y軸回動機構部11a及びX軸回動機構部11b)を制御して、ブロックホルダ13の傾き及び支持台10の傾きを変更する。
【0036】
傾斜推定部54(推定部)は、落射照明部4が包埋ブロックBに照射した平行光によって生じる光の反射に基づいて、仮想平面Hに沿って切削した切削面と非切削面(未切削面)との境界線を検出し、検出した境界線に基づいて、包埋ブロックBの傾きに関する情報を示す傾斜情報を推定する。ここで、傾斜情報には、例えば、傾きの方向と、傾きの量(傾斜角)とが含まれる。なお、本実施形態では、傾斜情報は、例えば、包埋ブロックBの粗削り面の傾きの方向、及び傾きの量(傾斜角)であり、傾斜推定部54は、包埋ブロックBの粗削り面の傾きの方向、及び傾きの量(傾斜角)について推定する。
また、上述の仮想平面Hに沿って切削した切削面とは、粗削り面に対して新たに切削刃3により切削した断面のことである。また、非切削面(未切削面)とは、本装置でまだ切削していない断面のことであり、粗削り面は、非切削面(未切削面)に含まれる。
【0037】
具体的に、傾斜推定部54は、落射照明部4が平行光を包埋ブロックBに照射した状態における画像(例えば、
図3及び
図4に示すような画像)を撮像部30に撮像させる。傾斜推定部54は、撮像部30が撮像した画像に基づいて、切削面と非切削面(未切削面)との境界線を検出し、検出した境界線に基づいて傾斜情報(傾きの方向、及び傾斜角)を推定する。
【0038】
ここで、包埋ブロックBには、落射照明部4から落射照明光が照射されるため、例えば、
図3に示すように、撮像部30が撮像した画像(落射照明画像)は、切削面と非切削面とで輝度の変化が生じる。
図3は、本実施形態における包埋ブロックBの落射照明画像の一例を示す第1の図である。
この図において、画像G1は、包埋ブロックBの落射照明画像であり、輝度の高いエリア(範囲)A1が、切削面を示している。なお、画像G1においてエリアA1に比べて、輝度の低い部分は、粗削り面における非切削面(未切削面)に対応する。
傾斜推定部54は、撮像部30から画像を取得した落射照明画像の輝度の変化に基づいて、切削面と非切削面の境界線を検出し、後述する法線ベクトル算出部53に、この境界線に対する法線ベクトルを算出させる。
傾斜推定部54は、法線ベクトル算出部53が算出した法線ベクトルの方向を傾きの方向として推定する。
【0039】
また、傾斜推定部54は、仮想平面Hに直交する方向に所定量(例えば、厚さΔTs)だけ仮想平面Hを相対的に移動させて切削刃3に再び切削させて、再び落射照明画像を撮像部30から取得する。ここでは、撮像部30は、例えば、
図4の画像G2のような落射照明画像を撮像する。なお、本実施形態では、この所定量(例えば、厚さΔTs)を高さ方向(Z軸方向)の送り出し量ということがある。
図4は、本実施形態における包埋ブロックBの落射照明画像の一例を示す第1の図である。
この図において、画像G2は、
図3に示す画像G1の状態から所定量だけ切削した包埋ブロックBの落射照明画像であり、輝度の高いエリア(範囲)A2が、切削面を示している。なお、画像G2では、切削面のエリアA2が、画像G1のエリアA1に比べて、広くなっていることを示している。
【0040】
傾斜推定部54は、撮像部30から取得した落射照明画像の輝度の変化に基づいて、切削面と非切削面の境界線を検出し、境界線の移動量を算出する。ここで、境界線の移動量は、法線ベクトルの方向における移動量である。傾斜推定部54は、算出した境界線の移動量と、上述の所定量(厚さΔTs)とに基づいて、傾斜角を算出する。なお、傾斜推定部54は、後述する三角関数を利用して、この粗削り面の傾斜角を算出する。
このように、傾斜推定部54は、例えば、境界線の法線ベクトルに基づいて、傾きの方向を推定するとともに、仮想平面Hに直交する方向に所定量(厚さΔTs)だけ仮想平面Hを移動させて切削した際の境界線の移動量と所定量とに基づいて、傾きの量(傾斜角)を推定する。
【0041】
法線ベクトル算出部53は、傾斜推定部54が検出した切削面と非切削面との境界線に基づいて、この境界線の法線ベクトルを算出する。法線ベクトル算出部53は、例えば、境界線が曲線である場合に、境界線を直線近似し、近似した直線の法線ベクトルを算出する。法線ベクトル算出部53は、算出した法線ベクトルを傾斜推定部54に出力する。
なお、法線ベクトル算出部53は、法線ベクトルとして、平均法線ベクトルを算出してもよい。例えば、境界線が曲線である場合には、法線ベクトル算出部53は、平均法線ベクトルを算出することにより、1つの方向を算出することができる。
また、法線ベクトル算出部53は、境界線の両端(包埋ブロックBの端と境界線との接点)を通る直線(例えば、
図6の境界線BL1、及び
図7の境界線BL2のような直線)を生成し、生成した直線に対する法線ベクトルを、境界線の法線ベクトルとして算出してもよい。
【0042】
傾斜補正部55(補正部)は、傾斜推定部54が推定した傾斜情報に基づいて、包埋ブロックBの所定の断面と仮想平面Hとが平行になるように、包埋ブロックBの傾きを補正する。例えば、上述の境界線には、パラフィンPの切削面と非切削面との境界線が含まれ、包埋ブロックBの所定の断面には、表面を所定の切削面に予め切削する粗削りがされた所定の切削面を示す粗削り面が含まれている。傾斜補正部55は、傾斜情報(粗削り面の傾きの方向、及び傾斜角)に基づいて、粗削り面と、仮想平面Hとが平行になるように、包埋ブロックBの傾きを補正する。具体的に、傾斜補正部55は、傾斜角変更部52に対して、ブロックホルダ13及び支持台10の傾きを変更させる。すなわち、傾斜角変更部52は、回動機構部11(Y軸回動機構部11a及びX軸回動機構部11b)を制御して、粗削り面と仮想平面Hとが平行になるように、ブロックホルダ13の傾き及び支持台10の傾きを変更する。
【0043】
次に、本実施形態における薄切片作製装置1の動作について図面を参照して、説明する。本実施形態では、包埋ブロックBの粗削り面に対して面合わせ処理を行う場合の動作について説明する。
ここでは、まず、傾斜推定部54による粗削り面の傾きの方向を推定する処理について説明する。
【0044】
<粗削り面における傾きの方向の推定処理>
図5は、第1の実施形態における粗削り済みの包埋ブロックBを切削する一例を示す断面図である。
この図において、包埋ブロックBは、粗削り面PM1を上にしてカセットK上に固定されており、切削刃3が、仮想平面Hに沿って包埋ブロックBと相対的に移動して、包埋ブロックBの粗削り面PM1を切削する様子を示している。このように、切削刃3が、包埋ブロックBを切削した後に、落射照明部4が落射照明を照射した場合に、包埋ブロックBは、撮像部30から
図6に示すように観察される。
【0045】
図6は、本実施形態における包埋ブロックBの傾き方向の検出例を示す第1の図である。
図6において、包埋ブロックBは、
図5に示す仮想平面Hに沿って切削された切削面M1が明るくなり、非切削面NM1が暗くなる。傾斜推定部54は、このような状態の包埋ブロックBを撮像部30が撮像した画像データを、撮像部30から取得し、取得した落射照明画像の輝度変化に基づいて、切削面M1と非切削面NM1との境界線BL1を検出する。なお、ここでの切削面M1と非切削面NM1との境界線BL1は、パラフィンPの切削面と非切削面との境界線である。
また、法線ベクトル算出部53は、境界線BL1の法線ベクトルV1を算出して、傾斜推定部54に出力する。傾斜推定部54は、法線ベクトル算出部53が算出した法線ベクトルV1に基づいて、包埋ブロックBにおける粗削り面PM1の傾きの向きを推定する。具体的には、傾斜推定部54は、法線ベクトル算出部53が算出した法線ベクトルV1の向きを粗削り面PM1の傾きの向きとして推定(判定)する。
【0046】
また、
図7は、本実施形態における包埋ブロックBの
図6と異なる傾き方向の検出例を示す第2の図である。
図7において、包埋ブロックBは、粗削り面PM1が切削された切削面M2が明るくなり、非切削面NM2が暗くなる。なお、
図7では、粗削り面PM1の傾きの向きが、包埋ブロックBの斜め方向であり、傾斜推定部54は、切削面M2と非切削面NM2との境界線BL2を検出する。また、傾斜推定部54は、法線ベクトル算出部53が算出した境界線BL2の法線ベクトルV2の向きを粗削り面PM1の傾きの向きとして推定(判定)する。
【0047】
このように、傾斜推定部54は、粗削り面における切削面と非切削面との境界線であって、パラフィンPの切削面と非切削面との境界線を検出し、検出した境界線の法線ベクトルに基づいて、粗削り面の傾きの方向を包埋ブロックBの傾き方向として推定する。
【0048】
次に、
図8を参照して、傾斜推定部54による粗削り面の傾きの量(傾斜角)を推定する処理について説明する。
<粗削り面における傾きの量(傾斜角)の推定処理>
図8は、本実施形態における包埋ブロックBの傾斜角の検出例を示す図である。
図8(a)は、
図5と同様に、粗削り面PM1を上にしてカセットK上に固定された包埋ブロックBの断面図を示している。また、
図8(a)では、切削刃3が仮想平面H1に沿って包埋ブロックBの粗削り面PM1を切削した後、Z方向に切削刃3を所定量(厚さΔTs)たけ送り出して、切削刃3が仮想平面H2に沿って包埋ブロックBの粗削り面PM1を切削した様子を示している。
【0049】
また、
図8(b)は、
図8(a)に示すように、切削刃3が、仮想平面H2に沿って包埋ブロックBを切削した後に、落射照明部4が落射照明を照射した場合に、撮像部30によって観察される包埋ブロックBの様子を示している。
図8において、境界線BL3は、切削刃3が仮想平面H1に沿って包埋ブロックBの粗削り面PM1を切削した後におけるパラフィンPの切削面と非切削面との境界線(前回の切削した際の境界線)を示している。また、境界線BL4は、切削刃3が仮想平面H2に沿って包埋ブロックBの粗削り面PM1を切削した後におけるパラフィンPの切削面M3と非切削面NM3との境界線(今回の切削した際の境界線)を示している。
【0050】
傾斜推定部54は、撮像部30が撮像した、切削刃3が仮想平面H1に沿って切削した後の落射照明画像、及び切削刃3が仮想平面H2に沿って切削した後の落射照明画像を、撮像部30から取得する。傾斜推定部54は、撮像部30から取得した落射照明画像の輝度の変化に基づいて、切削面と非切削面の境界線BL3及びBL4を検出し、境界線の移動量ΔBLを算出する。ここで、境界線の移動量ΔBLは、法線ベクトルの方向における移動量である。傾斜推定部54は、算出した境界線の移動量ΔBLと、上述の所定量(厚さΔTs)とに基づいて、下記の式(1)を利用して、傾斜角θを算出する。
【0051】
tanθ=(包埋ブロックBの送り出し量(厚さΔTs)/境界線の移動量ΔBL)
傾斜角θ=tan
−1(厚さΔTs/境界線の移動量ΔBL) ・・・ 式(1)
【0052】
このように、傾斜推定部54は、例えば、仮想平面(H1及びH2)に直交する方向に所定量(厚さΔTs)だけ仮想平面を移動させて切削した際の境界線の移動量ΔBLと所定量(厚さΔTs)とに基づいて、傾きの量(傾斜角θ)を推定する。
【0053】
次に、本実施形態における薄切片作製装置1の薄切片作製処理動作について
図9を参照して説明する。
<薄切片作製処理の動作手順>
図9は、本実施形態における薄切片作製装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
この図において、包埋ブロックBは、台部2の支持台10上にブロックホルダ13を介してセットされ、薄切片作製装置1は、回動機構部11を初期状態(X=0、Y=0)にして、支持台10を水平にした状態において薄切片作製処理を開始する。なお、包埋ブロックBは、予めある程度の粗削りされている状態である。また、薄切片作製装置1は、不図示のセンサーにより、包埋ブロックBの最も高い位置(Z軸方向の高さ)を予め測定しているものとする。
【0054】
薄切片作製装置1は、まず、包埋ブロックBを切削する(ステップS101)。すなわち、コントロールユニット5の高さ変更部51は、台部2の移動機構部12を制御して、包埋ブロックBの所定の高さに調整する。そして、コントロールユニット5は、切削刃移動機構部15に、切削刃3を仮想平面Hに沿って移動させる。これにより、薄切片作製装置1は、包埋ブロックBを切削する。
【0055】
次に、落射照明部4が、包埋ブロックBに落射照明を照射する(ステップS102)。すなわち、落射照明部4が、仮想平面Hと垂直な方向から面光源21によって生成された平行光を、切削した包埋ブロックBに照射する。
【0056】
次に、撮像部30が、包埋ブロックBの画像を撮像する(ステップS103)。すなわち、コントロールユニット5の傾斜推定部54が、撮像部30に落射照明画像を撮像させる。
【0057】
次に、コントロールユニット5の傾斜推定部54は、画像内の包埋ブロックBの切削面と非切削面との境界線を検出する(ステップS104)。傾斜推定部54は、撮像部30から落射照明画像を取得し、取得した落射照明画像の輝度に基づいて、切削面と非切削面との境界線を検出する。
【0058】
次に、コントロールユニット5の法線ベクトル算出部53は、境界線の法線ベクトルを算出する(ステップS105)。すなわち、法線ベクトル算出部53は、傾斜推定部54が検出した切削面と非切削面との境界線に基づいて、この境界線の法線ベクトルを算出する。
【0059】
次に、薄切片作製装置1は、包埋ブロックBを厚さΔTsだけ送り出して、包埋ブロックBを切削する(ステップS106)。すなわち、コントロールユニット5の高さ変更部51は、台部2の移動機構部12を制御して、包埋ブロックBを厚さΔTsだけZ軸方向に送り出すように移動させる。そして、コントロールユニット5は、切削刃移動機構部15に、切削刃3を仮想平面Hに沿って移動させる。これにより、薄切片作製装置1は、厚さΔTsだけ送り出して、包埋ブロックBを切削する。例えば、傾斜推定部54は、高さ変更部51を介して移動機構部12に指示するとともに、切削刃移動機構部15に指示して、このような制御処理を実行する。
【0060】
次に、落射照明部4が、包埋ブロックBに落射照明を照射する(ステップS107)。すなわち、落射照明部4が、仮想平面Hと垂直な方向から面光源21によって生成された平行光を、切削した包埋ブロックBに照射する。
【0061】
次に、撮像部30が、包埋ブロックBの画像を撮像する(ステップS108)。すなわち、コントロールユニット5の傾斜推定部54が、撮像部30に落射照明画像を撮像させる。
【0062】
次に、傾斜推定部54は、境界線の移動量を算出する(ステップS109)。具体的に、傾斜推定部54は、撮像部30からステップS108において撮像した落射照明画像を取得し、取得した落射照明画像の輝度に基づいて、切削面と非切削面との境界線を検出する。傾斜推定部54は、前回検出した境界線から今回検出した境界線への移動量ΔBLを算出する。なお、傾斜推定部54は、境界線の移動量ΔBLを、法線ベクトルの方向における移動量により算出する。
【0063】
次に、傾斜推定部54は、包埋ブロックBの傾きの方向と、傾きの量(傾斜角θ)を算出する(ステップS110)。具体的に、傾斜推定部54は、ステップS105において法線ベクトル算出部53が算出した法線ベクトルに基づいて、包埋ブロックBの傾きの方向を算出する。なお、本実施形態では、傾斜推定部54は、粗削り面の傾きの方向を包埋ブロックBの傾きの方向として算出する。また、傾斜推定部54は、ステップS109において算出した境界線の移動量ΔBLと、上述した厚さΔTsとに基づいて、上述した式(1)を利用して、傾きの量(傾斜角θ)を算出する。なお、本実施形態では、傾斜推定部54は、粗削り面の傾きの量(傾斜角θ)を包埋ブロックBの傾きの量として算出する。
このように、傾斜推定部54は、例えば、境界線の法線ベクトルに基づいて、傾きの方向を推定するとともに、仮想平面Hに直交する方向に所定量(厚さΔTs)だけ仮想平面Hを移動させて切削した際の境界線の移動量ΔBLと所定量(厚さΔTs)とに基づいて、傾きの量(傾斜角θ)を推定する。
【0064】
次に、コントロールユニット5の傾斜補正部55は、傾きの方向と傾きの量(傾斜角θ)とに基づいて包埋ブロックBの傾きを補正する(ステップS111)。具体的に、傾斜補正部55は、傾斜情報(粗削り面の傾きの方向、及び傾斜角)に基づいて、粗削り面と、仮想平面Hとが平行になるように、包埋ブロックBの傾きを補正する。傾斜補正部55は、傾斜角変更部52に対して、ブロックホルダ13及び支持台10の傾きを変更させる。すなわち、傾斜角変更部52は、回動機構部11(Y軸回動機構部11a及びX軸回動機構部11b)を制御して、粗削り面と仮想平面Hとが平行になるように、ブロックホルダ13の傾き及び支持台10の傾きを変更する。
【0065】
次に、コントロールユニット5は、生体試料Sの目的部分が露出するまで、包埋ブロックBを切削する(ステップS112)。すなわち、コントロールユニット5は、高さ変更部51に所定の厚さだけ包埋ブロックBを送り出させて、切削刃移動機構部15に切削刃3で包埋ブロックBを切削させる処理を、生体試料Sの目的部分が露出するまで、繰り返し実行させる。なお、コントロールユニット5は、撮像部30に撮像させた落射照明画像に基づいて、生体試料Sの目的部分が露出する状態に達したか否かを自動的に判定してもよいし、表示部32に落射照明画像を表示させて、作業者によって生体試料Sの目的部分が露出する状態に達したか否かを判定してもよい。
【0066】
次に、コントロールユニット5は、所定の厚みで包埋ブロックBを切削する(ステップS113)。すなわち、コントロールユニット5は、高さ変更部51に所定の厚さだけ包埋ブロックBを送り出させて本切削を実行し、所定の厚みの薄切片を切り出す。なお、切り出されたこの薄切片は、少なくとも水(液体)の表面に浮かべて伸展させ、伸展された薄切片を、スライドガラス上に転写させて薄切片標本が作製される。
ステップS113の処理が終了後に、薄切片作製装置1は、薄切片作製処理を終了する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態における薄切片作製装置1は、生体試料S(試料)がパラフィンP(包埋剤)に包埋された包埋ブロックBを、仮想平面Hに沿って包埋ブロックBと相対的に移動する切削刃3で切削して薄切片を切り出す。本実施形態における薄切片作製装置1は、落射照明部4と、傾斜推定部54とを備えている。落射照明部4は、包埋ブロックBに平行光を照射する。そして、傾斜推定部54は、落射照明部4が包埋ブロックBに照射した光によって生じる光の反射に基づいて、仮想平面Hに沿って切削した切削面と非切削面との境界線を検出し、検出した境界線に基づいて、包埋ブロックBの傾きに関する情報を示す傾斜情報を推定する。
これにより、本実施形態における薄切片作製装置1は、切削面と非切削面との境界線に基づいて包埋ブロックBの傾斜情報を推定することができるので、例えば、センサーによる包埋ブロックBの位置検出を必要とせずに切削面の面合わせ(面合わせ処理)を行うことができるとともに、適切な断面の薄切片を作製することができる。また、本実施形態における薄切片作製装置1は、例えば、包埋ブロックBに包埋されている生体試料Sの組織の断面が、切削面に対して傾いている場合においても適切に面出しができ、適切な断面の薄切片を作製することができる。
【0068】
また、例えば、従来の面合わせ処理では、落射照明画像の輝度が最大になるように、包埋ブロックBの傾きを調整する手法が知られているが、この手法では、包埋ブロックBがどの方向に傾いているのか判定できないため、面合わせ処理に時間がかかる場合がある。これに対して、本実施形態における薄切片作製装置1は、落射照明部4によって包埋ブロックBの傾斜情報(例えば、傾きの方向と、傾きの量)を推定することができるため、従来の面合わせ処理に比べて、面合わせ処理に要する時間を短縮することができる。
【0069】
また、本実施形態では、傾斜情報には、傾きの方向と、傾きの量とが含まれる。そして、傾斜推定部54は、境界線の法線ベクトルに基づいて、傾きの方向を推定するとともに、仮想平面Hに直交する方向に所定量だけ仮想平面Hを移動させて切削した際の境界線の移動量と所定量とに基づいて、傾きの量を推定する。
これにより、本実施形態における薄切片作製装置1は、簡易な手段により、適切に傾斜情報としての傾きの方向及び傾きの量(傾斜角)を推定することができる。
【0070】
また、本実施形態では、境界線の移動量は、法線ベクトルの方向における移動量である。また、傾斜推定部54は、境界線の移動量(ΔBL)と、仮想平面Hに直交する方向に所定量(厚さΔTs)と、所定の三角関数とに基づいて、傾きの量(傾斜角θ)を算出する。
これにより、本実施形態における薄切片作製装置1は、簡易な手段により、境界線の移動量を算出することができるとともに、適切に傾きの量を算出することができる。
【0071】
また、本実施形態では、境界線の法線ベクトルは、平均法線ベクトルである。
これにより、傾斜推定部54は、例えば、境界線が曲線である場合にも、適切に傾斜情報(傾きの方向及び傾きの量(傾斜角))を推定することができる。
【0072】
また、本実施形態における薄切片作製装置1は、傾斜推定部54が推定した傾斜情報に基づいて、包埋ブロックBの傾きを補正する傾斜補正部55(補正部)を備えている。傾斜補正部55は、傾斜推定部54が推定した傾斜情報に基づいて、包埋ブロックBの所定の断面と仮想平面Hとが平行になるように、包埋ブロックBの傾きを補正する。
これにより、本実施形態における薄切片作製装置1は、適切に切削面の面合わせ(面合わせ処理)を実行することができる。そのため、本実施形態における薄切片作製装置1は、適切な断面の薄切片を作製することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上述の境界線には、パラフィンPの切削面と非切削面との境界線が含まれ、包埋ブロックBの所定の断面には、表面を所定の切削面に予め切削する粗削りがされた所定の切削面を示す粗削り面が含まれる。そして、傾斜補正部55は、傾斜情報に基づいて、粗削り面と、仮想平面Hとが平行になるように、包埋ブロックBの傾きを補正する。
これにより、本実施形態における薄切片作製装置1は、例えば、作業者によって予め切削された粗削り面に対して、適切に面合わせ処理を実行することができるので、粗削り面に基づく適切な断面の薄切片を作製することができる。
【0074】
また、本実施形態の薄切片作製装置1は、包埋ブロックBを固定するブロックホルダの傾きを変更する傾斜角変更部52と、落射照明部4から平行光が照射された状態で、光の反射による包埋ブロックBの画像を撮像する撮像部30とを備えている。また、傾斜推定部54は、撮像部30が撮像した画像に基づいて境界線を検出し、検出した境界線に基づいて傾斜情報を推定する。そして、傾斜補正部55は、傾斜情報に基づいて、傾斜角変更部52にブロックホルダ13の傾きを変更させる。
これにより、撮像部30が撮像した画像に基づいて境界線するので、落射照明部4は、画像処理により境界線を正確に検出することができる。そのため、本実施形態の薄切片作製装置1は、適切に面合わせ処理を実行することができる。また、本実施形態の薄切片作製装置1は、適切な断面の薄切片を作製することができる。
【0075】
なお、本実施形態によれば、薄切片作製方法は、生体試料SがパラフィンPに包埋された包埋ブロックBを、仮想平面Hに沿って包埋ブロックBと相対的に移動する切削刃3で切削して薄切片を切り出す薄切片作製方法である。薄切片作製方法は、照射ステップと、推定ステップとを含んでいる。照射ステップにおいて、落射照明部4は、包埋ブロックBに平行光を照射する。そして、推定ステップにおいて、傾斜推定部54が、照射ステップによって包埋ブロックBに照射した平行光によって生じる光の反射に基づいて、仮想平面Hに沿って切削した切削面と非切削面との境界線を検出し、検出した境界線に基づいて、包埋ブロックBの傾きに関する情報を示す傾斜情報を推定する。
これにより、本実施形態における薄切片作製方法は、薄切片作製装置1と同様に、例えば、センサーによる包埋ブロックBの位置検出を必要とせずに切削面の面合わせ(面合わせ処理)を行うことができるとともに、適切な断面の薄切片を作製することができる。
【0076】
次に、本発明に係る第2の実施形態による薄切片作製装置1について、図面を参照して説明する。
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態では、粗削り面の傾斜情報を推定し、推定した粗削り面の傾斜情報に基づいて、包埋ブロックBの傾きを補正する面合わせ処理について説明したが、本実施形態では、生体試料Sの所定の断面の傾斜情報を推定し、推定した生体試料Sの所定の断面の傾斜情報に基づいて、包埋ブロックBの傾きを補正する場合について説明する。なお、本実施形態では、生体試料Sの所定の断面が、生体試料Sの表面である場合について説明する。
【0077】
なお、本実施形態において、薄切片作製装置1の基本的な構成は、
図1に示す第1の実施形態と同様にあるので、ここではその説明を省略する。
本実施形態では、境界線には、生体試料Sの切削面と非切削面との境界線が含まれ、包埋ブロックBの所定の断面には、生体試料Sの所定の断面(例えば、生体試料Sの表面)が含まれる。また、本実施形態における傾斜補正部55は、傾斜情報(生体試料Sの傾きの方向と、傾きの量(傾斜角))に基づいて、生体試料Sの所定の断面と、仮想平面Hとが平行になるように、包埋ブロックBの傾きを補正する。
【0078】
なお、生体試料Sが露出した包埋ブロックBに落射照明を照射した場合に、後述する
図10(b)に示すように、生体試料Sの切削面が暗く、非切削面(未切削面)が明るく観察される。ここで、非切削面(未切削面)とは、まだ生体試料Sが露出していないパラフィンPの断面のことである。
【0079】
次に、本実施形態における薄切片作製装置1の動作について図面を参照して、説明する。本実施形態では、生体試料Sの表面に対して面合わせ処理(面出し処理)を行う場合の動作について説明する。
ここでは、まず、傾斜推定部54による生体試料Sの傾きの方向を推定する処理について説明する。
【0080】
<生体試料Sにおける傾きの方向の推定処理>
本実施形態における傾斜推定部54は、撮像部30が撮像した落射照明画像における輝度の変化により、生体試料Sの切削面と非切削面との境界線を検出し、法線ベクトル算出部53が、検出した境界線の法線ベクトルを算出する。そして、傾斜推定部54は、法線ベクトル算出部53が算出した法線ベクトルの方向を、生体試料Sの傾きの方向として推定する。
【0081】
次に、
図10を参照して、傾斜推定部54による生体試料Sの傾きの量(傾斜角)を推定する処理について説明する。
<生体試料Sにおける傾きの量(傾斜角)の推定処理>
図10は、本実施形態における生体試料Sの傾斜角の検出例を示す図である。
図10(a)は、カセットK上に固定され、生体試料Sが露出するまで切削された包埋ブロックBの断面図を示している。また、
図10(a)では、切削刃3が仮想平面H3に沿って包埋ブロックBを切削した後、Z方向に切削刃3を所定量(厚さΔTs)たけ送り出して、切削刃3が仮想平面H4に沿って包埋ブロックBを切削した様子を示している。
【0082】
また、
図10(b)は、
図10(a)に示すように、切削刃3が、仮想平面H3に沿って包埋ブロックBを切削した後に、落射照明部4が落射照明を照射した場合に、撮像部30によって観察される包埋ブロックBの様子を示している。
図10において、境界線BL5は、切削刃3が仮想平面H3に沿って包埋ブロックBを切削した後における生体試料Sの切削面SM1と非切削面NSM1との境界線(今回の切削した際の境界線)を示している。また、境界線BL6は、切削刃3が仮想平面H4に沿って包埋ブロックBを切削した後における生体試料Sの切削面と非切削面との境界線(次回に切削する際の境界線)を示している。
【0083】
傾斜推定部54は、撮像部30が撮像した、切削刃3が仮想平面H3に沿って切削した後の落射照明画像、及び切削刃3が仮想平面H4に沿って切削した後の落射照明画像を、撮像部30から取得する。傾斜推定部54は、撮像部30から取得した落射照明画像の輝度の変化に基づいて、切削面と非切削面の境界線BL5及びBL6を検出し、境界線の移動量ΔBLを算出する。ここで、境界線の移動量ΔBLは、法線ベクトルの方向における移動量である。傾斜推定部54は、算出した境界線の移動量ΔBLと、上述の所定量(厚さΔTs)とに基づいて、上述した式(1)を利用して、生体試料Sの傾斜角θを算出する。
【0084】
このように、傾斜推定部54は、例えば、仮想平面(H3及びH4)に直交する方向に所定量(厚さΔTs)だけ仮想平面を移動させて切削した際の境界線の移動量ΔBLと所定量(厚さΔTs)とに基づいて、生体試料Sの傾きの量(傾斜角θ)を推定する。
【0085】
次に、第2の実施形態における薄切片作製装置1の薄切片作製処理動作について
図11を参照して説明する。
<薄切片作製処理の動作手順>
図11は、本実施形態における薄切片作製装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
この図において、包埋ブロックBは、台部2の支持台10上にブロックホルダ13を解してセットされ、薄切片作製装置1は、回動機構部11を初期状態(X=0、Y=0)にして、支持台10を水平にした状態において薄切片作製処理を開始する。なお、包埋ブロックBは、例えば、予め粗削りされていない状態である。
【0086】
薄切片作製装置1は、まず、生体試料Sが露出するまで包埋ブロックBを切削する(ステップS201)。すなわち、コントロールユニット5は、高さ変更部51に所定の厚さだけ包埋ブロックBを送り出させて、切削刃移動機構部15に切削刃3で包埋ブロックBを切削させる処理を、生体試料Sが露出するまで、繰り返し実行させる。なお、コントロールユニット5は、撮像部30に撮像させた落射照明画像に基づいて、生体試料Sが露出する状態に達したか否かを自動的に判定してもよいし、表示部32に落射照明画像を表示させて、作業者によって生体試料Sの目的部分が露出する状態に達したか否かを判定してもよい。
【0087】
次に、落射照明部4が、包埋ブロックBに落射照明を照射し(ステップS202)、撮像部30が、包埋ブロックBの画像を撮像する(ステップS203)。
次に、コントロールユニット5の傾斜推定部54は、画像内の生体試料Sの切削面と非切削面との境界線を検出する(ステップS204)。傾斜推定部54は、撮像部30から落射照明画像を取得し、取得した落射照明画像の輝度に基づいて、生体試料Sの切削面(露出面)と非切削面(非露出面)との境界線を検出する。
【0088】
次に、コントロールユニット5の法線ベクトル算出部53は、境界線の法線ベクトルを算出する(ステップS205)。すなわち、法線ベクトル算出部53は、傾斜推定部54が検出した生体試料Sの切削面と非切削面との境界線に基づいて、この境界線の法線ベクトルを算出する。
【0089】
続く、ステップS206からステップS209までの処理は、
図9に示す第1の実施形態におけるステップS106からステップS109までの処理と同様であるので、ここではその説明を省略する。
次に、ステップS210において、傾斜推定部54は、生体試料Sの傾きの方向と、傾きの量(傾斜角θ)を算出する。具体的に、傾斜推定部54は、ステップS205において法線ベクトル算出部53が算出した法線ベクトルに基づいて、生体試料Sの傾きの方向を算出する。また、傾斜推定部54は、ステップS209において算出した境界線の移動量ΔBLと、厚さΔTsとに基づいて、上述した式(1)を利用して、生体試料Sの傾きの量(傾斜角θ)を算出する。
【0090】
次に、コントロールユニット5の傾斜補正部55は、生体試料Sの傾きの方向と傾きの量(傾斜角θ)とに基づいて包埋ブロックBの傾きを補正する(ステップS211)。具体的に、傾斜補正部55は、傾斜情報(生体試料Sの傾きの方向、及び傾斜角)に基づいて、生体試料Sの表面(包埋された生体試料Sの表面と平行な断面)と、仮想平面Hとが平行になるように、包埋ブロックBの傾きを補正する。傾斜補正部55は、傾斜角変更部52に対して、ブロックホルダ13及び支持台10の傾きを変更させる。すなわち、傾斜角変更部52は、回動機構部11(Y軸回動機構部11a及びX軸回動機構部11b)を制御して、生体試料Sの表面と仮想平面Hとが平行になるように、ブロックホルダ13の傾き及び支持台10の傾きを変更する。
【0091】
次に、コントロールユニット5は、生体試料Sの目的部分が露出するまで、包埋ブロックBを切削する(ステップS212)。すなわち、コントロールユニット5は、高さ変更部51に所定の厚さだけ包埋ブロックBを送り出させて、切削刃移動機構部15に切削刃3で包埋ブロックBを切削させる処理を、生体試料Sの目的部分が露出するまで、繰り返し実行させる。なお、コントロールユニット5は、撮像部30に撮像させた落射照明画像に基づいて、生体試料Sの目的部分が露出する状態に達したか否かを自動的に判定してもよいし、表示部32に落射照明画像を表示させて、作業者によって生体試料Sの目的部分が露出する状態に達したか否かを判定してもよい。
【0092】
次に、コントロールユニット5は、所定の厚みで包埋ブロックBを切削する(ステップS213)。すなわち、コントロールユニット5は、高さ変更部51に所定の厚さだけ包埋ブロックBを送り出させて本切削を実行し、所定の厚みの薄切片を切り出す。なお、切り出されたこの薄切片は、少なくとも水(液体)の中に浸漬させて伸展させ、伸展された薄切片を、スライドガラス上に転写させて薄切片標本が作製される。
ステップS213の処理が終了後に、薄切片作製装置1は、薄切片作製処理を終了する。
【0093】
以上説明したように、本実施形態によれば、境界線には、生体試料Sの切削面と非切削面との境界線が含まれ、包埋ブロックBの所定の断面には、生体試料Sの所定の断面(例えば、包埋された生体試料Sの表面)が含まれる。傾斜推定部54は、生体試料Sの切削面と非切削面との境界線に基づいて、生体試料Sの傾きの方向と、傾きの量(傾斜角θ)を算出する。そして、傾斜補正部55は、傾斜情報に基づいて、生体試料Sの所定の断面と、仮想平面Hとが平行になるように、包埋ブロックBの傾きを補正する。
これにより、本実施形態における薄切片作製装置1は、例えば、包埋ブロックの切削面が検査又は観察のために適切な生体試料の断面と一致しない場合であっても、適切に切削面の面合わせ(面出し処理)を行うことができる。よって、本実施形態における薄切片作製装置1は、適切な断面の薄切片を作製することができる。
【0094】
また、本実施形態における薄切片作製装置1は、生体試料Sの切削面と非切削面との境界線に基づいて包埋ブロックBの傾斜情報を推定することができるので、第1の実施形態と同様に、例えば、センサーによる包埋ブロックBの位置検出を必要とせずに切削面の面合わせ(面出し処理)を行うことができる。
【0095】
次に、本発明に係る第3の実施形態による薄切片作製装置1について、図面を参照して説明する。
[第3の実施形態]
本実施形態では、上述した第1の実施形態による面合わせ処理と、第2の実施形態による面出し処理とを選択して実施する場合について説明する。すなわち、本実施形態における薄切片作製装置1は、包埋ブロックBに面出し(粗削り)が行われている場合には、粗削り面の傾斜情報に基づいて、包埋ブロックBの傾きを補正する面合わせ処理を実行する。また、本実施形態における薄切片作製装置1は、包埋ブロックBに面出しが行われていない場合には、生体試料Sの所定の断面の傾斜情報に基づいて、包埋ブロックBの傾きを補正する。
【0096】
図12は、第3の実施形態による薄切片作製装置1の一例を示すブロック図である。
図12において、薄切片作製装置1は、台部2、切削刃3、落射照明部4、コントロールユニット5a、撮像部30、入力部31、及び表示部32を備えている。また、コントロールユニット5aは、高さ変更部51、傾斜角変更部52、法線ベクトル算出部53、傾斜推定部54、傾斜補正部55、及び補正指定情報取得部56を備えている。
なお、この図において、
図1に示す構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0097】
本実施形態では、コントロールユニット5aが、補正指定情報取得部56を備える点が、第1の実施形態、及び第2の実施形態と異なり、以下、補正指定情報取得部56について説明する。
【0098】
補正指定情報取得部56は、入力部31から入力された、包埋ブロックBに粗削りが行われているか否かを指定する補正指定情報を取得する。すなわち、補正指定情報取得部56は、作業者が入力部31を介して入力した上述の補正指定情報を取得する。
【0099】
なお、本実施形態におけるコントロールユニット5aは、補正指定情報取得部56が取得した補正指定情報に基づいて、傾斜推定部54及び傾斜補正部55に対して、面合わせもしくは面出し処理を実行させる。
具体的には、補正指定情報取得部56が、包埋ブロックBに面出し(粗削り)が行われていることを示す情報を補正指定情報として取得した場合に、傾斜推定部54は、第1の実施形態において説明したように、パラフィンPの切削面と非切削面との境界線に基づいて、粗削り面の傾斜情報を推定する。そして、傾斜補正部55は、第1の実施形態において説明したように、傾斜推定部54が推定した粗削り面の傾斜情報に基づいて、包埋ブロックBの傾きを補正する、すなわち、傾斜補正部55は、粗削り面と仮想平面Hとが平行になるように、包埋ブロックBの傾きを補正する。
【0100】
また、補正指定情報取得部56が、包埋ブロックBに面出しが行われていないことを示す情報を補正指定情報として取得した場合に、傾斜推定部54は、第2の実施形態において説明したように、生体試料Sの切削面と非切削面との境界線に基づいて、生体試料Sの傾斜情報を推定する。そして、傾斜補正部55は、第2の実施形態において説明したように、傾斜推定部54が推定した生体試料Sの傾斜情報に基づいて、包埋ブロックBの傾きを補正する、すなわち、傾斜補正部55は、生体試料Sの所定の断面と仮想平面Hとが平行になるように、包埋ブロックBの傾きを補正する。
【0101】
次に、第3の実施形態における薄切片作製装置1の薄切片作製処理動作について
図13を参照して説明する。
<薄切片作製処理の動作手順>
図13は、本実施形態における薄切片作製装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
この図において、包埋ブロックBは、台部2の支持台10上にブロックホルダ13を解してセットされ、薄切片作製装置1は、回動機構部11を初期状態(X=0、Y=0)にして、支持台10を水平にした状態において薄切片作製処理を開始する。なお、本実施形態では、包埋ブロックBは、予め面出し(粗削り)されている状態と、予め面出し(粗削り)されていない状態とがあり、作業者によって、入力部31を介して、予め面出し(粗削り)されているか否かが指定される。
【0102】
薄切片作製装置1は、まず、補正指定情報を取得する(ステップS301)。例えば、コントロールユニット5は、表示部32に、包埋ブロックBが予め面出し(粗削り)されているか否かの補正指定情報を入力するように、作業者に要求する表示を表示させる。コントロールユニット5の補正指定情報取得部56は、入力部31を介して作業者から入力された補正指定情報を取得する。
【0103】
次に、コントロールユニット5は、補正指定情報が面出し済みか否かを判定する(ステップS302)。すなわち、コントロールユニット5は、補正指定情報取得部56が取得した補正指定情報が、包埋ブロックBが予め面出しされていることを示す情報であるか否かを判定する。コントロールユニット5は、包埋ブロックBが予め面出しされている場合(ステップS302:YES)に、処理をステップS303に進める。また、コントロールユニット5は、包埋ブロックBが予め面出しされていない場合(ステップS302:NO)に、処理をステップS304に進める。
【0104】
ステップS303において、コントロールユニット5は、面合わせする。すなわち、コントロールユニット5は、
図9に示すステップS101からステップS112までの処理を実行し、粗削り面に面合わせする。
【0105】
また、ステップS304において、コントロールユニット5は、面出しする。すなわち、コントロールユニット5は、
図11に示すステップS201からステップS212までの処理を実行する。なお、ここでのコントロールユニット5による面出し処理には、生体試料Sの端面の傾き補正を含む。
【0106】
また、続く、ステップS305の処理は、
図9に示すステップS113の処理(
図11に示すステップS213の処理)と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0107】
以上説明したように、本実施形態によれば、薄切片作製装置1は、包埋ブロックBに面出し(粗削り)が行われているか否かを指定する補正指定情報を取得する補正指定情報取得部56を備えている。また、傾斜補正部55は、包埋ブロックBに面出し(粗削り)がされている場合に、粗削り面の傾斜情報に基づいて、粗削り面と、仮想平面Hとが平行になるように、包埋ブロックBの傾きを補正する。また、傾斜補正部55は、包埋ブロックBに面出し(粗削り)がされていない場合に、生体試料Sの傾斜情報に基づいて、生体試料Sの所定の断面と、仮想平面Hとが平行になるように、包埋ブロックBの傾きを補正する。
これにより、本実施形態における薄切片作製装置1は、包埋ブロックBの状態に応じて、適切に切削面の面合わせ(面合わせ処理)を実行することができる。
【0108】
なお、本実施形態において、補正指定情報取得部56は、入力部31から補正指定情報を取得する場合について説明したが、コントロールユニット5が、撮像部30が撮像した画像に基づいて、包埋ブロックBに面出し(粗削り)が行われているか否かを判定する判定部を備え、この判定部から補正指定情報を取得してもよい。
【0109】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、法線ベクトル算出部53は、
図14に示すように、延長法線ベクトルに基づいて、境界線の法線ベクトルを算出してもよい。
【0110】
図14は、法線ベクトルの算出方法の別の一例を示す第1の図である。
この図において、境界線BL7は、切削刃3が仮想平面Hに沿って、N回目に包埋ブロックBを切削した後における生体試料Sの切削面SM2と非切削面NSM2との境界線(N回目に切削した際の境界線)を示している。ここでは、カセットK上に包埋ブロックBが固定され、切削面SM2は、生体試料Sの組織面であり、非切削面NSM2は、パラフィンPである。
また、境界線BL8は、切削刃3が仮想平面Hに沿って、N+m回目に包埋ブロックBを切削した後における生体試料Sの切削面と非切削面との境界線(N+m回目に切削する際の境界線)を示している。
この図に示すような場合に、法線ベクトル算出部53は、境界線BL7の法線ベクトルをN+m回目の境界線BL8まで延長した延長法線ベクトルの最大の延長法線ベクトルV3を境界線の法線ベクトルとして算出してもよい。すなわち、境界線の法線ベクトルは、境界線の移動量を大きさとした境界線の法線方向のベクトルのうち、大きさが最大のベクトルであってもよい。この場合、傾斜推定部54は、最大の延長法線ベクトルV3に基づいて、生体試料Sの傾きの方向及び傾きの量(傾斜角)を推定する。これにより、傾斜推定部54は、例えば、境界線が曲線である場合にも(
図14に示すように境界線が円であっても)、適切に傾斜情報(傾きの方向及び傾きの量(傾斜角))を推定することができる。
【0111】
なお、
図14に示す例では、法線ベクトル算出部53は、最大の延長法線ベクトルを境界線の法線ベクトルとして用いているが、延長法線ベクトルの平均ベクトルを境界線の法線ベクトルとして用いていてもよい。
また、
図14に示す例では、第2の実施形態に適用する場合について説明したが、第1の実施形態に、同様に適用してもよい。
【0112】
また、上記の各実施形態において、薄切片作製装置1は、落射照明を包埋ブロックBに照射した光の反射に基づいて、切削面と非切削面との境界線を検出する場合について説明したが、照射する照明は、落射照明に限定されるものではない。例えば、包埋ブロックBに対して斜めから光を照射する形態でもよいし、切削面と非切削面との境界線を検出できる照明であれば、他の照明を包埋ブロックBに照射してもよい。また、包埋ブロックBに対して斜めから光を照射する場合には、包埋ブロックBに照射した光が包埋ブロックBの表面又は切削面により反射する光軸上に撮像部30を配置してもよい。
【0113】
また、上記の各実施形態において、薄切片作製装置1は、落射照明の他に、拡散光などの光源を備え、異なる照明を照射して撮像した画像を組み合わせて表示部32に表示させてもよい。
また、例えば、薄切片作製装置1が、照明部として、上述の落射照明部4と拡散光照明部(不図示)とを備え、照射部は、落射照明光と拡散光(通常照明光)とを切り替えて包埋ブロックに照射した場合に、
図15及び
図16に示すような画像が撮像される。
図15は、本実施形態における包埋ブロックの拡散光照明画像の一例を示す図である。
この図において、画像G3は、包埋ブロックBに拡散光(通常照明光)を照射して撮像された拡散光照明画像(通常照明画像)を示している。この画像G3では、拡散光が照射されているため、包埋ブロックB内部の生体試料S(組織)の輪郭(外形線)を判定可能であり、エリアA3は、生体試料Sの輪郭(外形線)を示している。傾斜推定部54は、画像G3のような拡散光照明画像において、例えば、輝度の変化に基づいて、生体試料Sの外形線を抽出する。
【0114】
また、
図16は、本実施形態における包埋ブロックの落射照明画像の一例を示す第3の図である。
この図において、画像G4は、
図15において拡散光照明画像が撮像された同一の包埋ブロックBに落射照明光を照射して撮像された落射明画像(通常照明画像)を示している。この画像G4では、エリアA3がパラフィンPに包埋された生体試料Sの輪郭(外形線)を示しており、境界線BL9が生体試料Sの切削面(露出面)と非切削面(非露出面)との境界線を示している。この場合、傾斜推定部54は、撮像部30から取得した落射照明画像の輝度の変化に基づいて、切削面と非切削面の境界線BL9を検出する。
図15及び
図16に示すように、落射照明光と、拡散光とを切り替えて包埋ブロックBに照射して画像を撮像することにより、例えば、法線ベクトル算出部53は、
図17に示すように、延長法線ベクトルに基づいて、境界線の法線ベクトルを算出してもよい。
【0115】
図17は、法線ベクトルの算出方法の別の一例を示す第2の図である。
この図において、境界線BL10は、切削刃3が仮想平面Hに沿って、包埋ブロックBを切削した後における生体試料Sの切削面SM3と非切削面NSM3との境界線を示している。ここでは、カセットK上に包埋ブロックBが固定され、切削面SM3は、生体試料Sの組織面であり、非切削面NSM3は、パラフィンPである。
また、外形線SL1は、上述した
図15に示したように拡散光の照射に基づいて得られた生体試料Sの外形線を示している。
この図に示すような場合に、法線ベクトル算出部53は、境界線BL10の法線ベクトルを生体試料Sの外形線SL1まで延長した延長法線ベクトルの最大の延長法線ベクトルV4を境界線の法線ベクトルとして算出してもよい。すなわち、境界線の法線ベクトルは、拡散光の照射に基づいて得られた生体試料Sの外形線SL1までの長さを大きさとした境界線BL10の法線方向のベクトルのうち、大きさが最大のベクトルであってもよい。この場合、照射部は、落射照明光と、拡散光とを切り替えて前記包埋ブロックに照射し、傾斜推定部54は落射照明光の反射に基づいて境界線BL10を検出する。そして、傾斜推定部54は、最大の延長法線ベクトルV4に基づいて、生体試料Sの傾きの方向及び傾きの量(傾斜角)を推定する。これにより、傾斜推定部54は、例えば、境界線が曲線である場合にも(
図17に示すように境界線が円であっても)、適切に傾斜情報(傾きの方向及び傾きの量(傾斜角))を推定することができる。
【0116】
なお、
図17に示す例では、法線ベクトル算出部53は、最大の延長法線ベクトルを境界線の法線ベクトルとして用いているが、延長法線ベクトルの平均ベクトルを境界線の法線ベクトルとして用いていてもよい。
また、
図17に示す例では、第2の実施形態に適用する場合について説明したが、第1の実施形態に、同様に適用してもよい。
【0117】
また、上記の各実施形態において、切削刃移動機構部15が、切削刃3を仮想平面Hに沿って移動させる場合について説明したが、台部2を移動させて包埋ブロックBを切削してもよい。
また、上記の各実施形態において、高さ変更部51には、移動機構部12を含めない場合について説明したが、高さ変更部51に移動機構部12を含めて高さ変更部としてもよい。また、傾斜角変更部52には、回動機構部11を含めない場合について説明したが、傾斜角変更部52に回動機構部11を含めて傾斜角変更部としてもよい。
【0118】
また、上記の第1の実施形態において、包埋ブロックBが粗削りされている場合に、パラフィンPの切削面と非切削面との境界線を利用する形態を説明したが、包埋ブロックBが粗削りされていない場合に、パラフィンPの切削面と非切削面との境界線を利用してもよい。この場合、薄切片作製装置1は、包埋ブロックBの表面と、仮想平面Hとが平行になるように、面合わせ処理を実行してもよい。
また、上記の第2の実施形態において、薄切片作製装置1は、包埋ブロックBが粗削りされている場合に、生体試料Sの切削面と非切削面との境界線を利用して、生体試料Sの傾斜情報を推定し、生体試料Sの表面と、仮想平面Hとが平行になるように、面合わせ処理を実行してもよい。
【0119】
また、上記の各実施形態において、薄切片作製装置1が、センサーによる包埋ブロックBの位置検出を必要とせずに切削面の面合わせ(面合わせ処理)を行う形態を説明したが、薄切片作製装置1は、包埋ブロックBの切削位置を検出するためにセンサーを備え、センサーによる位置検出を必要としない切削面の面合わせ(面合わせ処理)と組み合わせて実施してもよい。
【0120】
上述の薄切片作製装置1は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した面合わせ処理及び薄切片作製の処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。