(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱酸化膜が前記リセス内で露出する前記電子走行層の表面に形成された第1部分と、前記リセス内で露出する前記電子供給層の表面に形成された第2部分とを含み、前記第1部分と前記第2部分との膜厚が異なっている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
前記ゲート絶縁膜は、前記リセスの最底部において、膜厚のほぼ半分が前記電子走行層および前記電子供給層の界面よりも前記電子走行層側に位置している、請求項1〜13のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
前記AlGaNバッファ層は、前記基板から前記電子走行層に向かう層厚方向に関して、前記電子走行層に近づくほどアルミニウム組成が小さくなるようにアルミニウム組成を調整したAlGaN層である、請求項18に記載の窒化物半導体装置。
前記AlGaNバッファ層が、第1アルミニウム組成の第1アルミニウム組成AlGaN層と、前記第1アルミニウム組成AlGaN層よりも前記電子走行層側に積層され、前記第1アルミニウム組成よりも小さな第2アルミニウム組成の第2アルミニウム組成AlGaN層とを含み、前記高アルミニウム組成領域が前記第1アルミニウム組成AlGaN層を含み、前記低アルミニウム組成領域が前記第2アルミニウム組成AlGaN層を含む、請求項18または19に記載の窒化物半導体装置。
基板上に、アルミニウム組成が基板に近い領域において相対的に高く、基板から遠い領域において相対的に低くなるようにAlGaN結晶をエピタキシャル成長させてAlGaNバッファ層を形成する工程と、
前記AlGaNバッファ層上に、窒化物半導体をエピタキシャル成長させて電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層上に、前記電子走行層とは異なる組成の窒化物半導体層をエピタキシャル成長させて電子供給層を形成する工程と、
前記電子供給層、前記電子走行層および前記AlGaNバッファ層に前記基板の主面に対して傾斜した方向からイオン注入して結晶構造を破壊することにより、前記電子供給層および前記電子走行層を貫通して前記AlGaNバッファ層に到達する高抵抗の素子分離層を形成する工程と、
を含む、窒化物半導体装置の製造方法。
前記AlGaNバッファ層を形成する工程が、第1アルミニウム組成の第1アルミニウム組成AlGaN層を形成する工程と、前記第1アルミニウム組成AlGaN層よりも上に前記第1アルミニウム組成よりも小さな第2アルミニウム組成の第2アルミニウム組成AlGaN層を形成する工程とを含む、請求項38に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
前記AlGaNバッファ層を形成する工程の前に、前記基板上にAlNバッファ層を形成する工程をさらに含み、前記AlNバッファ層の上に前記AlGaNバッファ層が形成される、請求項38または39に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の第1の実施形態に係る半導体装置の特徴は、次のとおりである。
【0014】
A1.この実施形態は、窒化物半導体からなる電子走行層と、前記電子走行層上に形成され、前記電子走行層とは組成の異なる窒化物半導体からなり、表面から前記電子走行層に達するリセスを有する電子供給層と、前記リセス内で露出する前記電子走行層の表面に形成された熱酸化膜と、前記熱酸化膜に接するように前記リセス内に埋め込まれたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記熱酸化膜および前記ゲート絶縁膜を挟んで前記電子走行層に対向するゲート電極と、前記ゲート電極を挟むように間隔を開けて前記電子供給層上に設けられたソース電極およびドレイン電極と、を含む窒化物半導体装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、電子走行層上に組成の異なる電子供給層が形成されてヘテロ接合が形成されている。したがって、電子走行層と電子供給層との界面付近の電子走行層内に二次元電子ガスが形成され、この二次元電子ガスをチャネルとして利用したHEMTが形成されている。電子供給層には、その表面から電子走行層に達するリセス(凹部)が形成されている。したがって、リセスの底部においては、前記ヘテロ接合が途切れており、それに応じて、二次元電子ガスが途切れている。一方、リセス内にはゲート絶縁膜が埋め込まれており、そのゲート絶縁膜を挟んでゲート電極が電子走行層に対向している。そして、このゲート電極を挟むように間隔を開けて、ソース電極およびドレイン電極が配置されている。リセスの底部付近で二次元電子ガスが途切れているので、ゲート電極にバイアスを印加していないゼロバイアス時には、ソース−ドレイン間は遮断されている。したがって、ノーマリオフ型のデバイスとなる。一方、ゲート電極に適切なオン電圧(具体的には正のバイアス)を印加すると、リセスの近傍に引き寄せられた電子によってチャネルが形成され、ゲート電極の両側の二次元電子ガスが接続されるので、ソース−ドレイン間が導通する。
【0016】
この実施形態では、リセス内で露出する電子走行層の表面に熱酸化膜が形成されており、この熱酸化膜にゲート絶縁膜が接している。熱酸化膜は、リセスの底部を熱酸化することによって形成される。この熱酸化の過程で、リセス底部において露出する電子走行層の表面のダメージが治癒される。より具体的には、エッチング(たとえばドライエッチング)によって電子走行層に達するリセスを形成するときに、電子走行層の表面にダメージ(エッチングダメージ)が入る。このようなダメージは、電子移動度の低下を招き、デバイス特性を悪化させる。しかし、この実施形態の構成では、電子走行層の表面に熱酸化膜を形成する過程で、そのダメージが治癒される。より詳細には、ダメージを受けた表面から熱酸化膜が電子走行層の内部に向かって形成されていく結果、熱酸化膜と電子走行層との界面は、ダメージを受けていない領域に位置する。そして、このダメージを受けていない界面にチャネルが形成されるので、そのチャネルにおける電子移動度は、電子走行層を形成する窒化物半導体の本来の値となる。
【0017】
このように、電子供給層に形成するリセスを電子走行層に到達させて確実にノーマリオフ型とすることができ、かつチャネルにおける電子移動度が高いHEMT構造の窒化物半導体装置を提供できる。
【0018】
特許文献1は、ゲート電極直下の電子供給層の層厚を薄くする構造を開示している。しかし、電子供給層の層厚をエッチングで精密に制御することは困難であり、ゲート電極直下の電子供給層を完全になくすことはできない。そのため、電子供給層と電子走行層との間の格子不整合に起因する分極によって作られるチャネルを完全に消失させることができないから、現実的にはノーマリオフ型のデバイスにならない。また、ノーマリオフ型のデバイスにしようとして、電子供給層からのエッチングを、電子供給層/電子走行層の界面を超えて行うと、電子供給層/電子走行層の界面を傷付けることになるから、電子移動度が著しく低下し、デバイス特性が著しく悪化する。
【0019】
この実施形態において、電子供給層/電子走行層の組み合わせは、AlGaN層/GaN層、AlGaN層/AlGaN層(ただしAl組成が異なるもの)、AlInN層/AlGaN層、AlInN層/GaN層、AlN層/GaN層、AlN層/AlGaN層のうちのいずれかであってもよい。より一般化すれば、電子供給層は、組成中にAlおよびNを含んでもよい。電子走行層は、組成中にGaおよびNを含んでいてもよく、組成(とくにAl組成)が電子供給層とは異なる。電子供給層と電子走行層とで組成(とくにAl組成)が異なることにより、それらの間の格子不整合が生じ、それによって、分極に起因する二次元電子ガスが界面に近い電子走行層内に生じる。
【0020】
A2.前記熱酸化膜がGaおよびOを含んでいてもよい。電子供給層がGaを含む組成の場合、熱酸化膜は、GaおよびOを含む組成となる。
【0021】
A3.前記熱酸化膜は、膜中の酸素濃度が、膜厚方向に対して勾配を有していてもよい。酸素雰囲気中での熱処理によって熱酸化膜を形成した場合、熱酸化膜中の酸素濃度はその膜厚方向に関して勾配を有することになる。
【0022】
A4.前記熱酸化膜中の酸素濃度は、前記ゲート絶縁膜との界面において最大であり、前記電子走行層に向かうに従って小さくなっていてもよい。
【0023】
A5.前記熱酸化膜中の最大酸素濃度は、10
20cm
−3以下であってもよい。
【0024】
A6.前記熱酸化膜の膜厚が前記ゲート絶縁膜の膜厚よりも小さくてもよい。これにより、ゲート絶縁膜は、必要な膜厚を有することができる。
【0025】
A7.前記ゲート絶縁膜の膜厚が前記熱酸化膜の膜厚のほぼ2倍であってもよい。
【0026】
A8.熱酸化膜の膜厚は、1nm〜100nmであってもよい。
【0027】
A9.前記熱酸化膜が前記リセス内で露出する前記電子走行層の表面に形成された第1部分と、前記リセス内で露出する前記電子供給層の表面に形成された第2部分とを含み、前記第1部分と前記第2部分との膜厚が異なっていてもよい。熱酸化膜は、リセス内において、電子走行層の表面から電子供給層の表面へと連続するように形成されてもよい。この場合に、電子走行層と電子供給層とは組成が異なるので、その表面に熱酸化膜が成長するときの成長レートが異なる。そのため、熱酸化膜は、電子走行層の表面に形成された第1部分と電子供給層の表面に形成された第2部分とで、異なる膜厚を有することになる。
【0028】
A10.この実施形態は、窒化物半導体からなる電子走行層と、前記電子走行層上に形成され、前記電子走行層とは組成の異なる窒化物半導体からなり、表面から前記電子走行層に達するリセスを有する電子供給層と、前記リセス内に埋め込まれたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記ゲート絶縁膜を挟んで前記電子走行層に対向するゲート電極と、前記ゲート電極を挟むように間隔を開けて前記電子供給層上に設けられたソース電極およびドレイン電極と、を含み、前記ゲート絶縁膜の前記ゲート電極とは反対側の表面におけるB、Cl、Siの濃度がいずれも10
20cm
−3以下である、窒化物半導体装置を提供する。
【0029】
この構成によれば、電子走行層上に互いに組成の異なる電子供給層が形成されてヘテロ接合が形成されている。したがって、電子走行層と電子供給層との界面付近の電子走行層内に二次元電子ガスが形成され、この二次元電子ガスをチャネルとして利用したHEMTが形成されている。電子供給層には、その表面から電子走行層に達するリセスが形成されている。したがって、リセスの底部においては、前記ヘテロ接合が途切れており、それに応じて、二次元電子ガスが途切れている。一方、リセス内にはゲート絶縁膜が埋め込まれており、そのゲート絶縁膜を挟んでゲート電極が電子走行層に対向している。そして、このゲート電極を挟むように間隔を開けて、ソース電極およびドレイン電極が配置されている。リセスの底部付近で二次元電子ガスが途切れているので、ゲート電極にバイアスを印加していないゼロバイアス時には、ソース−ドレイン間は遮断されている。したがって、ノーマリオフ型のデバイスとなる。一方、ゲート電極に適切なオン電圧(具体的には正のバイアス)を印加すると、リセスの近傍に引き寄せられた電子によってチャネルが形成され、ゲート電極の両側の二次元電子ガスが接続されるので、ソース−ドレイン間が導通する。
【0030】
この実施形態では、ゲート絶縁膜のゲート電極とは反対側の表面におけるB、Cl、Siの濃度がいずれも10
20cm
−3以下となっている。電子供給層にドライエッチング(たとえばプラズマエッチング)によってリセスを形成するとき、エッチングガスとして、B、Cl、Siの少なくとも一つを含むガス(たとえばBCl
3またはSiCl
4)が用いられる。この場合に、そのエッチング後に、リセス内において露出した電子走行層に対して熱酸化処理(たとえば酸素雰囲気中で900℃以上)を行うと、エッチングガスに含まれていたB、Cl、Siが酸素と反応することによって散逸し、表面に残るB、Cl、Siの濃度が10
20cm
−3以下となる。すなわち、エッチング後にリセス内の電子走行層表面に対して熱酸化が行われた結果として、ゲート絶縁膜におけるゲート電極とは反対側の表面におけるB、Cl、Siの濃度が10
20cm
−3以下となり、このことは、電子走行層の露出表面に対する選択的熱酸化処理が行われた痕跡であるといえる。
【0031】
熱酸化の過程で、リセス底部において露出する電子走行層の表面のダメージが治癒される。より具体的には、エッチング(たとえばドライエッチング)によって電子走行層に達するリセスを形成するときに、電子走行層の表面にダメージ(エッチングダメージ)が入る。このようなダメージは、電子移動度の低下を招き、デバイス特性を悪化させる。しかし、この実施形態の構成では、電子走行層の表面を熱酸化する過程で、そのダメージが治癒される。より詳細には、ダメージを受けた表面から熱酸化膜が電子走行層の内部に向かって形成されていく結果、熱酸化膜と電子走行層との界面は、ダメージを受けていない領域に位置する。そして、このダメージを受けていない界面にチャネルが形成されるので、そのチャネルにおける電子移動度は、電子走行層を形成する窒化物半導体の本来の値となる。
【0032】
このように、電子供給層に形成するリセスを電子走行層に到達させて確実にノーマリオフ型とすることができ、かつチャネルにおける電子移動度が高いHEMT構造の窒化物半導体装置を提供できる。
【0033】
電子供給層/電子走行層の組み合わせは、A1の実施形態の場合と同様に、AlGaN層/GaN層、AlGaN層/AlGaN層(ただしAl組成が異なるもの)、AlInN層/AlGaN層、AlInN層/GaN層、AlN層/GaN層、AlN層/AlGaN層のうちのいずれかであってもよい。より一般化すれば、電子供給層は、組成中にAlおよびNを含んでもよい。電子走行層は、組成中にGaおよびNを含んでいてもよく、組成(とくにAl組成)が電子供給層とは異なっている。電子供給層と電子走行層とで組成(とくにAl組成)が異なることにより、それらの間の格子不整合が生じ、それによって、分極に起因する二次元電子ガスが界面に近い電子走行層内に生じる。
【0034】
A11.前記ゲート絶縁膜の比誘電率が、前記電子供給層の比誘電率よりも高いことが好ましい。これにより、ゲート電極にバイアスを印加することによって、チャネルを誘起させるのに十分な電界を生成できる。
【0035】
A12.前記ゲート絶縁膜が、ALD法によって形成された絶縁膜であることが好ましい。ALD(Atomic Layer Deposition)法により、ゲート絶縁膜の膜厚を原子レベルで制御できるので、デバイス特性が正確に制御された窒化物半導体装置を提供できる。
【0036】
A13.前記ゲート絶縁膜が、Al
2O
3からなっていてもよい。Al
2O
3は、ALD法で形成できる絶縁膜であるので、Al
2O
3を用いゲート絶縁膜を形成することによって、デバイス特性が正確に制御された窒化物半導体装置を提供できる。
【0037】
A14.前記ゲート絶縁膜は、前記リセスの最底部において、膜厚のほぼ半分が前記電子走行層および前記電子供給層の界面よりも前記電子走行層側に位置していてもよい。この構成によれば、リセスの底部を確実に電子走行層に到達させて、ノーマリオフ型のデバイスとすることができる。
【0038】
A15.前記ゲート絶縁膜の膜厚が、5nm〜50nmであってもよい。これにより、オン抵抗を抑制しながら、ゲート−ソース間の十分な耐圧を確保できる。すなわち、ゲート絶縁膜が薄すぎると耐圧が不充分になり、ゲート絶縁膜が厚すぎるとオン抵抗が高くなる。
【0039】
A16.前記電子走行層の膜厚が、50nm〜2000nmであることが好ましい。電子走行層の厚さが2000nmを超えるとクラックが生じやすくなる。また、電子走行層の厚さが50nm未満であると移動度が低くなる。その反面、電子走行層は薄くする方が、閾値(ソース−ドレイン間を導通させるためにゲート電極に印加すべき最低電圧)を高くでき、デバイスを駆動するための回路設計が容易になる。すなわち、電子走行層を厚くして移動度を高くしようとすると、閾値が低くなり、回路設計が難しくなる。この実施形態では、電子走行層の表面が熱酸化されることにより、その表面のn型化を回避でき、それによって、閾値を高くすることができる。したがって、電子走行層を比較的厚く形成して高い電子移動度を確保しながらも、閾値の高いデバイスを提供できる。
【0040】
A17.前記電子走行層がGaNからなり、前記電子供給層がAlGaNからなっていてもよい。
【0041】
A18.この実施形態は、窒化物半導体からなる電子走行層を形成する工程と、前記電子走行層上に、前記電子走行層とは組成の異なる窒化物半導体からなる電子供給層を形成する工程と、前記電子供給層を前記電子走行層が露出するまでエッチングしてリセスを形成する工程と、前記リセスにおいて露出する電子走行層の表面を熱酸化する工程と、前記リセス内に絶縁物を埋め込んでゲート絶縁膜を形成する工程と、前記リセス内の前記ゲート絶縁膜を挟んで前記電子走行層に対向するゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極を挟んで離隔した位置に前記電子供給層に接するソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、を含む、窒化物半導体装置の製造方法を提供する。
【0042】
この方法により、電子供給層に形成したリセス内に埋め込まれたゲート絶縁膜を介してゲート電極が電子走行層に対向する構造を有し、したがって、ノーマリオフ型のHEMT構造を有する窒化物半導体装置を製造できる。エッチングによってリセスを形成した後に、リセス内で露出する電子走行層の表面が熱酸化されるので、エッチングによる電子走行層表面のダメージが治癒される。それによって、リセス直下のチャネル領域の電子移動度は、電子走行層を構成する窒化物半導体が持つ本来の値となるので、優れたデバイス特性を実現できる。
【0043】
A19.前記熱酸化工程によって、前記リセス内で露出する前記電子走行層の表面に熱酸化膜が形成されてもよい。
【0044】
A20.前記熱酸化工程によって、前記リセス内で露出する電子走行層および前記電子供給層の表面に熱酸化膜が形成されてもよい。
【0045】
A21.前記熱酸化膜が、GaおよびOを含むものであってもよい。電子走行層がGaを含む組成を有する場合には、熱酸化膜はGaおよびOを含むことになる。
【0046】
A22.前記リセスを形成するためのエッチングが、B、Cl、Siのうちの少なくとも一種の元素を含むエッチング剤を用いたドライエッチングであってもよい。
【0047】
A23.前記ゲート絶縁膜の前記電子走行層側の表面におけるB、Cl、Siの濃度が10
20cm
−3以下であることが好ましい。エッチング剤中に含まれるB、Cl、Siは、熱酸化時に酸素と反応して散逸するので、ゲート絶縁膜の電子走行層側表面に残るそれらの濃度は高くなく、10
20cm
−3以下となる。
【0048】
A24.前記ゲート絶縁膜を形成する工程が、絶縁物をALD法によって形成する工程であることが好ましい。これにより、ゲート絶縁膜の膜厚を原子レベルで制御できるので、窒化物半導体装置のデバイス特性を正確に制御できる。
【0049】
A25.前記絶縁物がAl
2O
3であってもよい。Al
2O
3は、ALD法で形成できるので、窒化物半導体装置のデバイス特性を正確に制御できる。
【0050】
以下では、この実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0051】
図1は、この発明の一実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための図解的な断面図である。また、
図2は、前記窒化物半導体装置の平面図である。
図1には、
図2のI−I線断面が示されている。
【0052】
この窒化物半導体装置は、基板101(たとえばシリコン基板)と、基板101の表面に形成されたバッファ層102と、バッファ層102上にエピタキシャル成長された電子走行層103と、電子走行層103上にエピタキシャル成長された電子供給層104とを含む。さらに、この窒化物半導体装置は、電子供給層104の表面を覆うパッシベーション膜105と、パッシベーション膜105に形成されたコンタクト孔106a,107aを貫通して電子供給層104にオーミック接触しているソース電極106およびドレイン電極107とを含む。ソース電極106およびドレイン電極107は、間隔を開けて配置されており、それらの間に、ゲート電極108が配置されている。
【0053】
電子供給層104には、その表面から電子走行層103に向かって掘り込まれたリセス109が形成されている。実際の素子におけるリセス109の付近の構造例を
図3に拡大して示す。リセス109は、電子走行層103に達する深さに形成されている。したがって、リセス109の内部空間に対して、電子走行層103および電子供給層104の両方が対向している。リセス109の内壁面において電子走行層103と電子供給層104との界面よりも電子走行層103側の部分を「底部109a」といい、当該界面よりも電子供給層104側の部分を「側壁部109b」ということにする。リセス109は、ソース電極106とドレイン電極107との間を通って溝状に形成されており、
図3に表れているように、滑らかに窪んだ皿状または放物線上の断面形状の表面を有していてもよい。たとえば、リセス109の底部109aの最低部は、電子走行層103と電子供給層104との界面よりも電子走行層103側に位置している。リセス109の底部109aの最低部は、電子走行層103と電子供給層104との界面から10nm〜100nm、好ましくは10nm〜20nmだけ電子走行層103側に位置していてもよい。
【0054】
リセス109の底部109aおよび側壁部109bには、熱酸化膜111が形成されている。この熱酸化膜111にゲート絶縁膜110が積層されている。ゲート電極108は、ゲート絶縁膜110および熱酸化膜111を挟んで、リセス109の底部109aにおいて、電子走行層310に対向している。熱酸化膜111がリセス109の底部109aだけでなく側壁部109bにも連続して延びていることにより、リークパスを少なくすることができる。
【0055】
電子走行層103と電子供給層104とは、互いに組成の異なるIII族窒化物半導体(以下単に「窒化物半導体」という。)からなっている。たとえば、電子走行層103は、GaN層からなっていてもよく、その厚さは、50nm〜2000nmであってもよい。電子供給層104は、この実施形態では、Al
xGa
1-xN層(0<x<1)からなっており、その厚さは、たとえば25nm程度であってもよい。
【0056】
このように、電子走行層103と電子供給層104とは、互いに組成の異なる窒化物半導体からなっていて、ヘテロ接合を形成しているとともに、それらの間には格子不整合が生じている。そして、ヘテロ接合および格子不整合に起因する分極のために、電子走行層103と電子供給層104との界面に近い位置(たとえば界面から数Å程度の距離の位置)には、その分極に起因する二次元電子ガス115が広がっている。
【0057】
リセス109の底部109aでは、熱酸化膜111は、1nm〜100nm、好ましくは1〜5nm、より好ましくは1〜3nmの膜厚を有している。熱酸化膜111は、電子走行層103の表面を熱酸化して形成されており、したがって、電子走行層103に接している。熱酸化膜111と電子走行層103との界面は、電子供給層104と電子走行層103との界面よりも電子走行層103寄りの深さに位置している。熱酸化膜111は、リセス109の底部109aに、電子供給層104と電子走行層103との界面よりも電子走行層103寄りの深さに位置する表面部分を有していてもよい。
【0058】
熱酸化膜111は、リセス109の底部109aにおいて露出する電子走行層103を熱酸化して形成された底部被覆部111a(熱酸化膜111の第1部分)と、リセス109の側壁部109bにおいて露出する電子供給層104の表面を熱酸化して形成された側壁被覆部111b(熱酸化膜111の第2部分)とを有している。底部被覆部111aは、GaNからなる電子走行層103の露出表面を熱酸化して形成された部分であるので、GaおよびOを組成中に含む。側壁被覆部111bは、AlGaNからなる電子供給層104の露出表面を熱酸化して形成された部分であるので、やはり、GaおよびOを組成中に含む。底部被覆部111aおよび側壁被覆部111bは、共通の熱酸化工程によって形成されたものであり、互いに連続している。GaNとAlGaNとでは熱酸化レートが異なるので、それに応じて、底部被覆部111aと側壁被覆部111bとでは膜厚が異なる。具体的には、底部被覆部111aの膜厚は側壁被覆部111bの膜厚よりも大きい。底部被覆部111aの膜厚は、1nm〜100nm、好ましくは1〜5nm、より好ましくは1〜3nmである。側壁被覆部111bの膜厚は、同様に、1nm〜100nm、好ましくは1〜5nm、より好ましくは1〜3nmであるが、底部被覆部111aの膜厚よりも小さくなる。
【0059】
また、露出表面からの熱酸化によって形成された熱酸化膜111は、膜中の酸素濃度が、膜厚方向に対して勾配を有している。より具体的には、熱酸化膜111中の酸素濃度は、ゲート絶縁膜110との界面において最大であり、電子走行層103に向かうに従って小さくなっている。熱酸化膜111中の最大酸素濃度は、10
20cm
−3以下であってもよい。
【0060】
ゲート絶縁膜110は、その比誘電率が電子供給層104の比誘電率よりも高い絶縁膜である。ゲート絶縁膜110は、ALD(Atomic Layer Deposition)法によって形成された絶縁膜であってもよい。より具体的には、ゲート絶縁膜110は、たとえば、Al
2O
3(酸化アルミニウム。アルミナ)からなり、熱酸化膜111よりも厚く(たとえば電子供給層104よりも厚くてもよい)形成されている。より具体的には、ゲート絶縁膜110の膜厚は、5nm〜50nm(たとえば20nm)が好ましい。これにより、必要な絶縁破壊電圧(たとえば20V以上)を得ることができ、かつオン抵抗を抑制できる。ゲート絶縁膜110の膜厚は、熱酸化膜111の2倍程度であってもよい。また、ゲート絶縁膜110は、リセス109の底部109aの最低部において、膜厚のほぼ半分の部分が電子走行層103および電子供給層104の界面よりも電子走行層103側に位置していてもよい。
【0061】
この実施形態では、ゲート絶縁膜110のゲート電極108とは反対側の表面、すなわち、熱酸化膜111との界面において、B、Cl、Siの濃度がいずれも10
20cm
−3以下である。
【0062】
ゲート絶縁膜110は、この実施形態では、リセス109内において熱酸化膜111に接し、さらにリセス109外にまで延びて、電子供給層104のリセス109外の表面を覆っている。これにより、一層の耐圧向上が図られている。
【0063】
ゲート電極108は、ゲート絶縁膜110に接するように形成されている。ゲート電極108は、ゲート絶縁膜110に接する下層と、この下層上に積層される上層とを有する積層電極膜からなっていてもよい。下層はNiまたはPtからなっていてもよく、上層はAuまたはAlからなっていてもよい。ゲート電極8は、ソース電極6寄りに偏って配置され、これにより、ゲート−ソース間距離(たとえば2μm)よりもゲート−ドレイン間距離(たとえば9μm)の方を長くした非対称構造となっている。この非対称構造は、ゲート−ドレイン間に生じる高電界を緩和して耐圧向上に寄与する。ゲート長は1μm程度、ゲート幅は175μm程度であってもよい。
【0064】
さらに、この実施形態では、ゲート電極108は、パッシベーション膜105に形成された開口105a内に入り込み、さらにリセス109に入り込んだゲート本体部181と、ゲート本体部181に連なり、開口105a外においてパッシベーション膜105上をドレイン電極107に向かって延びたフィールドプレート部182とを有している。より詳細には、電子走行層103の厚さ方向に関してリセス109の底部109aに対向している部分がゲート本体部181であり、その外側の部分(とくにドレイン電極107側に向かって延びた部分)が、フィールドプレート部182である。ゲート本体部181の下端のドレイン電極107側の端部であるドレイン端181aからフィールドプレート部182のドレイン電極107側の端部までの距離Lfp(たとえば2.25μm程度)は、フィールドプレート長と呼ばれる。ドレイン端181aは、具体的には、リセス109の表面(熱酸化膜111とゲート絶縁膜110との界面)が、電子走行層103と電子供給層104との界面を含む平面を横切る、ドレイン電極107側の位置によって定義される。
【0065】
フィールドプレート長Lfpは、ドレイン端181aからドレイン電極107までの距離Lgd(たとえば9μm程度)の1/6以上1/2以下であることが好ましい。これにより、ドレイン端181aにおける電界集中を緩和でき、かつフィールドプレート部182のドレイン側端とドレイン電極107との間の電界に起因するパッシベーション膜105の破壊を回避できる。
【0066】
ソース電極106およびドレイン電極107は、たとえば、Ti、Al、MoおよびSiを含むオーミック電極であり、二次元電子ガス115にオーミック接触している。このオーミック電極は、たとえば、電子供給層104上に積層金属膜を形成し、その積層金属膜をパターニングしたあとにシンター処理して形成された電極であってもよい。積層金属膜は、たとえば、電子供給層104上にTi層(たとえば厚さ200Å)、第1Si層(たとえば厚さ200Å)、Al層(たとえば厚さ2000Å)、第2Si層(たとえば厚さ200Å)およびMo層(たとえば厚さ2000Å)を順に積層して形成されてもよい。この場合、シンター処理は、Al層が溶融する温度で行われることが好ましい。
【0067】
バッファ層102は、たとえば、AlGaN層であってもよいし、AlN層およびGaN層を繰り返し積層した超格子構造を有する層であってもよい。
【0068】
この窒化物半導体装置では、電子走行層103上に、当該電子走行層103とは組成の異なる電子供給層104が形成されてヘテロ接合が形成されている。これにより、電子走行層103と電子供給層104との界面付近の電子走行層103内に二次元電子ガス115が形成され、この二次元電子ガス115をチャネルとして利用したHEMTが形成されている。ゲート電極108は、ゲート絶縁膜110を挟んで電子走行層103に対向しており、ゲート電極108の直下には、電子供給層104は存在しない。したがって、ゲート電極108の直下では、電子供給層104と電子走行層103との格子不整合による分極に起因する二次元電子ガス115が形成されない。よって、ゲート電極108にバイアスを印加していないとき(ゼロバイアス時)には、二次元電子ガス115によるチャネルはゲート電極108の直下で遮断されている。こうして、ノーマリオフ型のHEMTが実現されている。ゲート電極108に適切なオン電圧(たとえば5V)を印加すると、ゲート電極108の直下の電子走行層103内にチャネルが誘起され、ゲート電極108の両側の二次元電子ガス115が接続される。これにより、ソース−ドレイン間が導通する。
【0069】
使用に際しては、たとえば、ソース電極106とドレイン電極107との間に、ドレイン電極107側が正となる所定の電圧(たとえば200V〜400V)が印加される。その状態で、ゲート電極108に対して、ソース電極106を基準電位(0V)として、オフ電圧(0V)またはオン電圧(5V)が印加される。
【0070】
図2に示されているように、平面視において、ソース電極106と電子供給層104との接合域(ソース接合域。コンタクト孔106a内の領域)Saと、ドレイン電極107と電子供給層104との接合域(ドレイン接合域。コンタクト孔107a内の領域)Daとを分離するように、ゲート電極108が引き回されている。すなわち、ゲート電極108のゲート本体部181と電子供給層104との接合域(ゲート接合域。開口105a内の領域)Gaが、ソース接合域Saとドレイン接合域Daとを分離する一定幅の帯状パターンに形成されている。より具体的には、ソース接合域Saおよびドレイン接合域Daは、長手方向が互いに平行な矩形領域であり、その矩形領域の短手方向に沿って配列されている。ゲート接合域Gaは、ソース接合域Saおよびドレイン接合域Daの間を通るジグザグ形状に形成されている。ゲート接合域Gaは、ドレイン接合域Daよりもソース接合域Saに近い位置を通るように配置されている。ゲート接合域Gaとゲート電極108のドレイン接合域Da側のエッジとの間の距離がフィールドプレート長Lfpである。また、ゲート接合域Gaの幅は、ゲート長Lg(たとえば1μm程度)である。
【0071】
図4A〜
図4Fは、前記窒化物半導体装置の製造工程の一例を説明するための図解的な断面図であり、製造工程における複数の段階における断面構造が示されている。また、
図5A〜
図5Cは、実際の素子におけるリセス109の付近の製造工程途中の構造例を拡大して示す断面図である。
【0072】
まず、
図4Aに示すように、基板101上に、バッファ層102および電子走行層103が順にエピタキシャル成長させられ、さらに電子走行層103上に電子供給層104がエピタキシャル成長させられる。そして、さらに、電子供給層104上の全面を被覆するように、たとえば、CVD法(化学的気相成長法)によって、パッシベーション膜105が形成される。パッシベーション膜105は、窒化シリコン(SiN)からなっていてもよく、その膜厚は数百nm程度が適当である。
【0073】
次に、
図4Bおよび
図5Aに示すように、ゲート電極108の形成位置に合わせて、電子供給層104にリセス109が形成される。具体的には、リセス109を形成すべき位置に開口を有するマスクが形成され、そのマスクを介するドライエッチングによって、パッシベーション膜105が開口され、さらに、電子供給層104が電子走行層103に達するまでエッチングされて、電子供給層104の表面から電子走行層103に向かって窪んだリセス109が形成される。このとき、リセス109の底部109aには、電子走行層103が露出しており、側壁部109bには電子供給層104が露出している。リセス109の底部109aの表面は、電子走行層103と電子供給層104との界面よりも電子走行層103側に位置している。ドライエッチングは、BCl
3ガスまたはSiCl
4をエッチングガスとして用いるプラズマエッチングであってもよい。
【0074】
次いで、
図4Cおよび
図5Bに示すように、熱酸化炉中で酸素ガスを流しながら行う熱酸化処理(選択熱酸化処理)によって、熱酸化膜111が形成される。より具体的には、窒素ガスおよび酸素ガスを含む雰囲気中で、900℃、3分間の熱処理を行うことによって、リセス109の内壁面が選択的に熱酸化され、熱酸化膜111がリセス109の内壁面に形成される。これにより、リセス109内の電子走行層103の露出表面に底部被覆部111aを有し、リセス109内の電子供給層104の露出表面に側壁被覆部111bを有する熱酸化膜111が形成される。熱酸化膜111は、電子走行層103および電子供給層104の表面から内部に向かってそれぞれの窒化物半導体材料が酸化されることによって形成される。このとき、リセス109の内壁面の位置はほとんど変化しないので、底部被覆部111aおよび側壁被覆部111bはリセス109側の表面が連続する。一方、電子走行層103および電子供給層104の組成が異なるので、それに応じて酸化レートが異なる。したがって、底部被覆部111aおよび側壁被覆部111bは互いに厚さが異なり、底部被覆部111aは側壁被覆部111bよりも厚くなる。そのため、底部被覆部111aと側壁被覆部111bとの境界部には、リセス109とは反対側の表面に段差が生じる。
【0075】
次に、
図4Dおよび
図5Cに示すように、露出した表面全域を覆うようにゲート絶縁膜110が形成される。したがって、ゲート絶縁膜110は、リセス109内において熱酸化膜111に接し、リセス109外の領域にまで延びて形成される。ゲート絶縁膜110は、この実施形態では、アルミナ(Al
2O
3)からなっており、たとえば、ALD法によって形成される。
【0076】
次に、
図4Eに示すように、ソース電極106およびドレイン電極107が形成される。具体的には、それらの形成位置に整合するように、ゲート絶縁膜110およびパッシベーション膜105を貫通するコンタクト孔106a,107aが形成され、次いで、ソース電極106およびドレイン電極107が形成される。これらのソース電極106およびドレイン電極107は、二次元電子ガス115(
図1参照)にオーミック接触するオーミック電極である。
【0077】
このオーミック電極を形成する工程は、たとえば、電子供給層104上にTi層(たとえば厚さ200Å)、第1Si層(たとえば厚さ200Å)、Al層(たとえば厚さ2000Å)、第2Si層(たとえば厚さ200Å)およびMo層(たとえば厚さ2000Å)を順に積層して積層金属膜を形成する工程を含む。この積層金属膜は、構成各層を順に蒸着またはスパッタリングして形成される。その後、積層電極膜がソース電極106およびドレイン電極107のパターンにパターニングされる。積層電極膜のパターニングは、リフトオフによって行ってもよいし、エッチングによって行ってもよい。このパターニングの後に、さらに、シンター処理が施されることによって、二次元電子ガス115にオーミック接触するソース電極106およびドレイン電極107が形成される。シンター処理は、Al層が溶融するように行うことが好ましく、Alの融点(565℃)よりも高い温度(たとえば850℃)で行われる。具体的には、850℃で35分程度のシンター処理を行えばよい。
【0078】
次いで、
図4Fに示すように、ゲート電極108の形成位置に開口を有するレジスト膜116が形成され、その状態の表面全域を覆うように、電極膜117が形成される。レジスト膜116の開口は、パッシベーション膜105に形成された開口105aの領域を包含し、かつ開口105aの領域よりも広い領域に形成される。レジスト膜116の開口のドレイン電極107側の縁部は、パッシベーション膜105の開口105aのドレイン側端(より正確にはリセス109の表面がドレイン側で電子走行層103および電子供給層104の界面を横切る位置)からドレイン電極107に向かってフィールドプレート長Lfpだけ後退している。電極膜117は、たとえば、NiまたはPtからなる下層と、AuまたはAlからなる上層とを積層した積層金属膜からなり、各層を順に蒸着して形成される。
【0079】
次に、レジスト膜116とともに、当該レジスト膜116上の電極膜117(電極膜117の不要部分)がリフトオフされることによって、当該電極膜117がパターニングされて、ゲート電極108が得られる。こうして、
図1に示す構造の窒化物半導体装置が得られる。その後は、層間絶縁膜で全面が覆われ、ソース電極106およびドレイン電極107を露出させるコンタクト孔が層間絶縁膜に形成される。そして、層間絶縁膜上には、ソース電極106およびドレイン電極107にコンタクト孔でそれぞれ接続されるソース配線およびドレイン配線が形成される。
【0080】
このように、この実施形態によれば、リセス109内で露出する電子走行層103の表面に熱酸化膜111が形成されており、この熱酸化膜111にゲート絶縁膜110が接している。リセス109を形成するためのエッチングの際に、リセス109の底部において電子走行層103の表面にダメージが与えられる。このダメージは、熱酸化膜111を形成するための熱酸化の過程で治癒される。より詳細には、ダメージを受けた表面から熱酸化膜111が電子走行層103の内部に向かって形成されていく結果、熱酸化膜111と電子走行層103との界面は、ダメージを受けていない領域に位置する。そして、このダメージを受けていない界面にチャネルが形成されるので、そのチャネルにおける電子移動度は、電子走行層103を形成する窒化物半導体の本来の値となる。このようにして、電子供給層104に形成するリセス109を電子走行層103に到達させて確実にノーマリオフ型とすることができ、かつチャネルにおける電子移動度が高いHEMT構造の窒化物半導体装置を実現できる。
【0081】
また、この実施形態の構成では、リセス109内の電子走行層103の露出表面が選択的に熱酸化されることにより、その表面のn型化を回避でき、それによって、閾値を高くすることができる。そのため、電子走行層103を比較的厚く(たとえば50nm〜2000nm)して高い電子移動度を確保しながらも、閾値の高いデバイスを提供できる。
【0082】
図6Aは、前述のような構造の窒化物半導体装置について、さまざまなゲート電圧Vgsに対してドレイン電流Idsとドレイン電圧Vdsとの関係(Ids-Vds characteristics)を調べた特性図である。また、
図6Bは伝達特性(Transfer characteristics)を示しており、
図6Cはオフ時の耐圧特性(3-terminal off-state characteristics)を示している。閾値電圧Vthは1.5V程度であり、十分に高い正の値となっている。また、ドレイン電流Idsの最大値は150mA/mm、相互コンダクタンスgmの最大値は45mS/mm、オン抵抗Ronは33Ω・mmであり、耐圧V
BR(オフ時のソース−ドレイン間ブレークダウン電圧)は100Vよりも高かった。
【0083】
図7は、複数の窒化物半導体装置の試料についての閾値Vthのばらつきを示す。本実施形態の構成の複数の窒化物半導体装置の試料(with thermal oxidization)では、閾値Vthが1.5V以上となり、閾値Vthのばらつきを表す標準偏差σは、0.06Vであった。これに対して、リセス後の熱酸化処理(熱酸化膜111の形成)を行わなかった以外は前述の実施形態と同様の構成とした比較例(w/o thermal oxidization)に係る複数の試料においては、閾値Vthが1.5V未満となるものも多く、かつ閾値Vthのばらつきも大きく、閾値Vthの標準偏差σは0.2V程度であった。したがって、この実施形態の構成により、閾値Vthを高い値とすることができ、かつ安定化できることが分かった。
【0084】
この実施形態は、次のように変形することもできる。たとえば、前述の実施形態では、前述の実施形態では、電子走行層103がGaN層からなり、電子供給層104がAlGaNからなる例について説明したが、電子走行層103と電子供給層104とは組成(とくにAl組成)が異なっていればよく、他の組み合わせも可能である。たとえば、電子走行層103/電子供給層104の組み合わせとしては、GaN/AlGaN、Al
mGa
1-mN/Al
nGa
1-nN(ただし、m≠n)、AlGaN/AlInN、GaN/AlInN、GaN/AlN、AlGaN/AlNなどを例示できる。
【0085】
また、前述の実施形態では、ゲート絶縁膜110をAl
2O
3からなる一層の絶縁膜で構成してあるが、2層以上の絶縁膜を積層してゲート絶縁膜110を形成し、絶縁破壊耐圧をより高めた構成としてもよい。
【0086】
また、前述の実施形態では、基板1の材料例としてシリコンを例示したが、ほかにも、サファイア基板やGaN基板などの任意の基板材料を適用できる。
【0087】
この発明の第2の実施形態に係る半導体装置の特徴は、次のとおりである。
【0088】
B1.この実施形態は、基板と、前記基板上に形成され、窒化物半導体からなる電子走行層と、前記電子走行層上に形成され、前記電子走行層とは組成の異なる窒化物半導体からなる電子供給層と、前記基板と前記電子走行層との間に介在され、アルミニウム組成が相対的に高い高アルミニウム組成領域と、前記高アルミニウム組成領域よりもアルミニウム組成が低く、かつ前記高アルミニウム組成領域よりも前記電子走行層に近い領域に配置された低アルミニウム組成領域とを有するAlGaNバッファ層と、イオン注入によって結晶欠陥を引き起こして高抵抗化した領域からなり、前記電子供給層および前記電子走行層を貫通して前記AlGaNバッファ層に達する素子分離層と、を含む、窒化物半導体装置を提供する。
【0089】
この構成によれば、基板上に形成された電子走行層および電子供給層は、互いに異なる組成の窒化物半導体からなっている。したがって、これらの間には、ヘテロ接合が形成されている。それによって、電子走行層と電子供給層との界面付近には、二次元電子ガスが形成されており、この二次元電子ガスを利用した高移動度のデバイスを構成することができる。
【0090】
一方、基板と電子走行層との間にはAlGaNバッファ層が形成されており、さらに、電子供給層および電子走行層を貫通する素子分離層がAlGaNバッファ層に達している。素子分離層は、イオン注入によって窒化物半導体に結晶欠陥を引き起こすことによって高抵抗化した領域からなる。この素子分離層によって、基板の主面方向に沿う方向に関する素子分離を行うことができる。
【0091】
AlGaNバッファ層は、高アルミニウム組成領域および低アルミニウム組成領域を有し、低アルミニウム組成領域が高アルミニウム組成領域よりも電子走行層に近い領域に配置されている。低アルミニウム組成領域と基板との間に高アルミニウム組成領域が介在することによって、AlGaNバッファ層の厚さ方向に関するエネルギーレベルの変化が小さくなる。そのため、ポテンシャル障壁が厚くなるので、量子トンネル効果によるリークを抑制できる。こうして、バッファ層を介するリーク経路を遮断できる。特許文献1の構成では、半導体動作領域に形成された素子のリーク電流を十分に低減できない。
【0092】
B2.前記AlGaNバッファ層は、前記基板から前記電子走行層に向かう層厚方向に関して、前記電子走行層に近づくほどアルミニウム組成が小さくなるようにアルミニウム組成を調整したAlGaN層であってもよい。層厚方向に関するアルミニウム組成は、段階的に変化していてもよいし、連続的に変化していてもよい。
【0093】
B3.前記AlGaNバッファ層が、第1アルミニウム組成の第1アルミニウム組成AlGaN層と、前記第1アルミニウム組成AlGaN層よりも前記電子走行層側に積層され、前記第1アルミニウム組成よりも小さな第2アルミニウム組成の第2アルミニウム組成AlGaN層とを含んでいてもよく、この場合に、前記高アルミニウム組成領域が前記第1アルミニウム組成AlGaN層を含み、前記低アルミニウム組成領域が前記第2アルミニウム組成AlGaN層を含んでいてもよい。
【0094】
B4.前記AlGaNバッファ層と前記基板との間に介在されたAlNバッファ層をさらに含むことが好ましい。AlNバッファ層を介在させることによって、AlGaNバッファ層中のGaが基板(たとえばシリコン基板)に損傷を与えることを回避できる。また、B4項の特徴がB3項の特徴と組み合わせられる場合、AlNバッファ層、第1アルミニウム組成AlGaN層および第2アルミニウム組成AlGaN層が前記基板から前記電子走行層に向かって順に配置された構造のバッファ層が構成されることになる。この構造の場合、AlNバッファ層と比較的小さなアルミニウム組成の第2アルミニウム組成AlGaN層との間に、比較的大きなアルミニウム組成の第1アルミニウム組成AlGaN層が介在されている。これにより、バッファ層は、その厚さ方向に関して、台形形状のポテンシャル障壁を形成する。それによって、リーク電流を効果的に低減できる。
【0095】
B5.に記載されているように、前記素子分離層が、素子領域を取り囲むように形成されていることが好ましい。これにより、素子分離層によって素子領域が取り囲まれているので、素子領域内外間のリークを抑制または防止できる。
【0096】
B6.前記窒化物半導体装置は、前記素子分離層の上に配置された配線をさらに含んでいてもよい。この構成では、素子分離層のスペースを利用して配線を配置できるので、高集積化に有利な構成となる。そればかりでなく、配線の下の素子分離層がAlGaNバッファ層にまで達する厚い高抵抗層であるので、寄生容量を少なくすることができ、それに応じて、高速動作が可能になる。したがって、個々の素子領域におけるリークを低減しながら、高速動作が可能な窒化物半導体装置を提供できる。
【0097】
B7.前記素子分離層が、複数の素子領域を分離するように形成されており、前記複数の素子領域にそれぞれ形成された複数の素子の間を接続する素子間配線が設けられていてもよい。この構成により、個々の素子領域におけるリークを低減しながら、複数の素子領域にそれぞれ形成された複数の素子を結合して目的とする機能を実現する大素子を構成することができる。
【0098】
B8.前記複数の素子領域にそれぞれ形成された複数の素子が異なる機能を有する2以上の素子を含んでいてもよい。これにより、個々の素子領域におけるリークを低減しながら、異なる機能の素子を互いに接続して目的とする機能を実現する大素子を構成できる。
【0099】
B9.前記複数の素子領域にそれぞれ形成された複数の素子が共通の機能を有する2つ以上の素子を含んでいてもよい。これにより、個々の素子領域におけるリークを低減しながら、共通の機能の素子を互いに接続して目的とする機能(たとえば目的とする電流容量)を実現する大素子を構成できる。
【0100】
前記複数の素子領域にそれぞれ形成された複数の素子は、第1の素子と、第1の素子と共通の機能を有する第2の素子と、第1の素子とは異なる機能を有する第3の素子とを含んでいてもよい。これにより、共通の機能の素子と異なる機能の素子とを組み合わせて、目的とする機能の大素子を構成できる。
【0101】
B10.前記素子間配線によって接続された複数の素子の素子領域を取り囲むように前記素子分離層が形成されていてもよい。すなわち、素子分離層は、個々の素子領域を分離するとともに、素子間配線によって接続された複数の素子の素子領域を取り囲んでいてもよい。これにより、複数の素子を素子間配線で接続して構成された大素子を周囲から分離することができる。それによって、リーク電流を一層低減できる。
【0102】
B11.前記素子分離層が、質量数が10より小さく2より大きい元素を材料とするイオンの注入によって形成された高抵抗層であることが好ましい。イオン注入によって、窒化物半導体の結晶構造が破壊されて高抵抗化し、そうして形成された高抵抗層によって素子分離層を構成することができる。質量数が大きい元素を材料としたイオン種は、窒化物半導体層の深い位置まで到達させることが困難である。そこで、AlGaNバッファ層にまでイオンを到達させるには、質量数が10より小さい元素を材料としたイオンを用いることが好ましい。一方、質量数が小さい元素を材料とするイオン種は、窒化物半導体の結晶構造に対して十分な結晶欠陥を生じさせることができず、たとえば、イオン注入よりも後の段階で行われる熱処理工程において、結晶欠陥が治癒されてしまい、結果的に、十分に大きな高抵抗層を形成することができないおそれがある。そこで、窒化物半導体層を確実に高抵抗化するためには、質量数が2より大きな元素を材料としたイオン種を用いてイオン注入を行うことが好ましい。よって、質量数が2より大きく10よりも小さい元素を材料としたイオンを用いたイオン注入によって素子分離層を形成しておくことにより、リーク電流を低減できる。
【0103】
B12.前記素子分離層が、ヘリウムイオンの注入によって形成された高抵抗層であってもよい。ヘリウムイオンを用いることによって、窒化物半導体層の深い位置までイオンを注入できるので、たとえば電子走行層が厚くても、バッファ層に到達する素子分離層を形成できる。それによって、リーク電流を抑制できる。
【0104】
B13.前記素子分離層が、複数の加速エネルギーを用いたイオン注入によって形成された高抵抗層であってもよい。複数の加速エネルギーを用いたイオン注入(多段イオン注入)によって、イオン注入される表面から浅い領域から深い領域まで窒化物半導体結晶に損傷を与えることができ、深さ位置によらずに高い抵抗値を有する素子分離層を形成できる。それによって、リーク電流を低減した窒化物半導体装置を提供できる。
【0105】
B14.前記素子分離層が、前記電子走行層の厚さ方向に対して傾斜した方向からのイオン注入によって形成された高抵抗層であってもよい。傾斜した方向からのイオン注入によって、窒化物半導体結晶を構成する原子にイオンが衝突しやすくなるので、イオン注入の深さを正確に制御できる。これにより、確実に、高抵抗の素子分離層が形成されるので、リーク電流を低減した窒化物半導体装置を提供できる。
【0106】
B15.前記イオン注入方向の前記電子走行層の厚さ方向に対する傾斜角が5〜10度であることが好ましい。これにより、イオン注入の深さを正確に制御して、高抵抗な素子分離層を実現でき、リーク電流を低減できる。
【0107】
B16.前記電子走行層がGaNからなり、前記電子供給層がAlGaNからなることが好ましい。これにより、電子走行層と電子供給層とがヘテロ接合となり、それらの界面の近傍の電子走行層側に二次元電子ガスが形成される。それによって、二次元電子ガスを構成する電子の高移動度を利用したデバイスを構成できる。
【0108】
電子供給層/電子走行層の組み合わせは、AlGaN層/GaN層の他にも、AlGaN層/AlGaN層(ただしアルミニウム組成が異なるもの)、AlInN層/AlGaN層、AlInN層/GaN層、AlN層/GaN層、AlN層/AlGaN層を例示できる。より一般化すれば、電子供給層は、組成中にAlおよびNを含んでいてもよい。そして、電子走行層は、組成中にGaおよびNを含み、アルミニウム組成が電子供給層とは異なっていてもよい。電子供給層と電子走行層とでアルミニウム組成が異なることにより、それらの間の格子不整合が生じ、それによって、分極に起因するキャリヤが二次元電子ガスの形成に寄与する。
【0109】
B17.前記電子走行層が400nm以上の厚さのGaN層であることが好ましい。GaNからなる電子走行層は、滑らかで良好な表面状態を有するので、電子移動度を高めることができる。電子走行層が薄いGaN層である場合には、その表面状態が必ずしもよくなく、GaN層の近傍に形成される二次元電子ガスを構成する電子の移動度は、その表面状態の影響を受けて低くなるおそれがある。
【0110】
B18.前記窒化物半導体装置は、前記電子供給層上に間隔を開けて配置されたソース電極およびドレイン電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間において前記電子走行層に対向するように配置されたゲート電極と、をさらに含むことが好ましい。この構成により、ゲート電極に制御電圧を印加することによって、ゲート電極直下の二次元電子ガスを制御でき、それによって、ソース電極とドレイン電極との間をオン/オフしたり、それらの間の電流値を制御したりすることができる。これにより、二次元電子ガスを構成する電子の高移動度を利用したHEMT(高電子移動度トランジスタ)を実現できる。
【0111】
B19.前記ゲート電極が、前記素子分離層とともに、前記ソース電極を取り囲むように形成されていることが好ましい。これにより、ゲート電極に適切な電圧を印加することにより、二次元電子ガスを、ソース電極側とドレイン電極側とに分離でき、それによって、ソース−ドレイン間を遮断できる。
【0112】
B20.前記窒化物半導体装置は、前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記ゲート電極を覆う層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を貫通するソースコンタクト孔を介して前記ソース電極に接続され、前記層間絶縁膜上に配置されたソース配線膜と、前記層間絶縁膜を貫通するドレインコンタクト孔を介して前記ドレイン電極に接続され、前記層間絶縁膜上に配置されたドレイン配線膜と、をさらに含んでいてもよい。そして、前記ソース配線膜と前記ドレイン配線膜とが、前記層間絶縁膜上で櫛歯状に噛み合うパターンに形成されていてもよい。
【0113】
この構成により、複数本のソース電極および複数本のドレイン電極を交互に配置してストライプ状に形成し、それらをそれぞれソース配線膜およびドレイン配線膜に接続することができる。そして、隣接するソース電極およびドレイン電極の対の間にゲート電極を配置することができる。これによって、ソース電極とドレイン電極が、ゲート電極を介して長い範囲で対向するので、ゲート幅(チャネル幅)を大きくして、大電流化を図ることができる。
【0114】
B21.ゲート電極に接続されたゲート配線が素子分離層上に配置されていてもよい。これにより、ゲート電極を、素子分離層を含む厚い絶縁層の上に配置できるので、ゲート配線に寄生する容量を少なくすることができる。それによって、リーク電流が少なく、かつ高速動作が可能なHEMT構造の窒化物半導体装置を提供できる。
【0115】
前記素子分離層上に配置される配線は、ゲート電極に接続されたゲート配線に限らず、ソース電極に接続されたソース配線やドレイン電極に接続されたソース配線も素子分離層上に配置されてもよい。
【0116】
B22.基板上に、アルミニウム組成が基板に近い領域において相対的に高く、基板から遠い領域において相対的に低くなるようにAlGaN結晶をエピタキシャル成長させてAlGaNバッファ層を形成する工程と、前記AlGaNバッファ層上に、窒化物半導体をエピタキシャル成長させて電子走行層を形成する工程と、前記電子走行層上に、前記電子走行層とは異なる組成の窒化物半導体層をエピタキシャル成長させて電子供給層を形成する工程と、前記電子供給層、前記電子走行層および前記AlGaNバッファ層にイオン注入して結晶構造を破壊することにより、前記電子供給層および前記電子走行層を貫通して前記AlGaNバッファ層に到達する高抵抗の素子分離層を形成する工程と、を含む、窒化物半導体装置の製造方法である。この方法により、B1項に記載した構造の窒化物半導体装置を製造することができる。
【0117】
B23.前記AlGaNバッファ層を形成する工程が、第1アルミニウム組成の第1アルミニウム組成AlGaN層を形成する工程と、前記第1アルミニウム組成AlGaN層よりも上に前記第1アルミニウム組成よりも小さな第2アルミニウム組成の第2アルミニウム組成AlGaN層を形成する工程とを含んでいてもよい。この方法により、B3項に記載した構造の窒化物半導体装置を製造できる。
【0118】
B24.前記AlGaNバッファ層を形成する工程の前に、前記基板上にAlNバッファ層を形成する工程をさらに含み、前記AlNバッファ層の上に前記AlGaNバッファ層が形成されてもよい。これにより、B4項に記載した構造の窒化物半導体装置を製造できる。
【0119】
B25.前記素子分離層が、素子領域を取り囲むように形成されてもよい。これにより、B5項に記載した構造の窒化物半導体装置を製造できる。
【0120】
B26.前記素子分離層が、複数の素子領域を分離するように形成され、前記製造方法が、前記複数の素子領域にそれぞれ形成された素子間を接続する素子間配線を形成する工程をさらに含んでいてもよい。これにより、B7項に記載した構造の窒化物半導体装置を製造できる。
【0121】
B27.前記イオン注入を、質量数が10より小さく2より大きい元素を材料とするイオンを用いて行うことが好ましい。これにより、B11項に記載した構造の窒化物半導体装置を製造できる。
【0122】
B28.前記イオン注入を、ヘリウムイオンを用いて行うことが好ましい。これにより、B12項に記載した構造の窒化物半導体装置を製造できる。
【0123】
B29.前記イオン注入を、複数の加速エネルギーを用いて行うことが好ましい。これにより、B13項に記載した構造の窒化物半導体装置を製造できる。
【0124】
B30.前記イオン注入を、前記基板の主面に対して傾斜した方向から行うことが好ましい。これにより、B14項に記載した構造の窒化物半導体装置を製造することができる。
【0125】
B31.前記イオン注入を、前記基板の主面の法線方向に対して5〜10度傾斜した方向から行うことが好ましい。これにより、B15項に記載した構造の窒化物半導体装置を製造できる。
【0126】
B32.前記電子走行層を形成する工程が、厚さ400nm以上のGaN層をエピタキシャル成長させる工程を含むことが好ましい。これにより、B17項に記載した構造の窒化物半導体装置を製造できる。
B1項〜B32項の少なくとも1項に記載した特徴に対して、A1項〜A25項の少なくとも1項に記載した特徴を組み合わせてもよい。すなわち、B1項〜B32項の特徴とA1項〜A25項の特徴とを任意に組み合わせた窒化物半導体装置を構成することができる。
【0127】
以下では、この実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0128】
図8は、この発明の一実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
【0129】
この窒化物半導体装置は、基板1(たとえばシリコン基板)と、基板1の表面に形成されたバッファ層2と、バッファ層2上にエピタキシャル成長された電子走行層3と、電子走行層3上にエピタキシャル成長された電子供給層4と、電子供給層4上にエピタキシャル成長されたキャップ層5とを含む。さらに、この窒化物半導体装置は、キャップ層5を介して電子供給層4にオーミック接触しているソース電極6およびドレイン電極7を含む。ソース電極6およびドレイン電極7は、電子供給層4の主面に平行な方向に間隔を開けて配置されており、それらの間に、ゲート電極8が配置されている。キャップ層5は、パッシベーション膜9によって覆われている。
【0130】
パッシベーション膜9は、たとえば、窒化シリコン(SiN)からなっていてもよく、その膜厚は数百nm程度が適当である。この実施形態では、パッシベーション膜9は、下層91と上層92との2層構造を有している。そして、下層91には、コンタクト孔6a,7aが形成されており、それらをそれぞれ介してソース電極6およびドレイン電極7がキャップ層5に接している。さらに、パッシベーション膜9には、ゲート電極8が埋設される開口8aが貫通して形成されている。開口8aの底面において露出するキャップ層5は、ゲート絶縁膜10で覆われている。ゲート絶縁膜10は、この実施形態では、開口8aの底面だけでなく、その側面をも覆い、さらに、開口8a外のパッシベーション膜9の表面をも覆うように連続して形成されている。ゲート電極8は、ゲート絶縁膜10を挟んで、キャップ層5に対向している。
【0131】
ゲート絶縁膜10は、その比誘電率が電子供給層4およびキャップ層5の比誘電率よりも高い絶縁膜である。ゲート絶縁膜10は、ALD(Atomic Layer Deposition)法によって形成された絶縁膜であってもよい。より具体的には、ゲート絶縁膜10は、たとえば、Al
2O
3(酸化アルミニウム。アルミナ)からなり、その膜厚は、5nm〜50nm(たとえば20nm)が好ましい。これにより、必要な絶縁破壊電圧(たとえば20V以上)を得ることができ、かつオン抵抗を抑制できる。
【0132】
ゲート電極8およびパッシベーション膜9の表面は、層間絶縁膜12で覆われている。層間絶縁膜12は、たとえば、膜厚1μm程度のSiO
2膜からなる。層間絶縁膜12の表面には、ソース配線膜16およびドレイン配線膜17が形成されている。ソース配線膜16は、層間絶縁膜12、ゲート絶縁膜10およびパッシベーション膜9の上層92を貫通して形成されたソースコンタクト孔16aを介してソース電極6に接続されている。同様に、ドレイン配線膜17は、層間絶縁膜12、ゲート絶縁膜10およびパッシベーション膜9の上層92を貫通して形成されたドレインコンタクト孔17aを介してドレイン電極7に接続されている。
【0133】
電子走行層3と電子供給層4とは、互いに組成の異なるIII族窒化物半導体(以下単に「窒化物半導体」という。)からなっている。たとえば、電子走行層3は、GaN層からなっていてもよく、その厚さは、400nm〜1μm程度であってもよい。電子供給層4は、この実施形態では、Al
xGa
1-xN層(0<x<1)からなっており、その厚さは、たとえば25nm程度であってもよい。
【0134】
このように、電子走行層3と電子供給層4とは、互いに組成の異なる窒化物半導体からなっていて、ヘテロ接合を形成しているとともに、それらの間には格子不整合が生じている。そして、ヘテロ接合および格子不整合に起因する分極のために、電子走行層3と電子供給層4との界面に近い電子走行層3内の位置(たとえば界面から数Å程度の距離の位置)には、その分極に起因する二次元電子ガス11が広がっている。
【0135】
キャップ層5は、電子走行層3と同じ組成の窒化物半導体であるGaNからなっており、その厚さは、16nm以下(より好ましくは8nm以下。たとえば3nm程度)とされている。キャップ層5は、窒化物半導体層の表面モホロジーの改善に寄与する。すなわち、GaNからなる電子走行層3の表面に格子定数の異なるAlGaNからなる電子供給層4が形成されており、しかもAlGaNは3元系の結晶であるため結晶性が必ずしもよくない。そのため、電子供給層4を窒化物半導体層の最表面とすると、表面モホロジーが必ずしもよくなく、それに応じてデバイス特性が安定しない。そこで、電子走行層3と同一組成のキャップ層5を電子供給層4上に積層することで、窒化物半導体層の表面モホロジーを改善でき、それによって、デバイス特性を向上できる。ただし、キャップ層5を厚くし過ぎると、表面モホロジーを改善する効果が少なくなるうえに、ソース電極6およびドレイン電極7のオーミック接触に悪影響を与えるので、その厚さは16nm以下(より好ましくは8nm以下)とすることが好ましい。なお、キャップ層5を電子供給層の一部とみなし、および電子供給層4を併せて電子供給層を構成しているということもできる。
【0136】
バッファ層2は、この実施形態では、基板1に接するAlNバッファ層21と、AlNバッファ層21上に積層されたAlGaNバッファ層22とを含む。AlNバッファ層21層は、たとえば厚さは0.1μm程度である。AlGaNバッファ層22は、AlNバッファ層21上に積層された第1AlGaN層221と、この第1AlGaN層221上に積層された第2AlGaN層222とを含む。第2AlGaN層222上に電子走行層3が形成されている。第1AlGaN層221と第2AlGaN層222とは、組成が異なっている。より具体的には、第1AlGaN層221と第2AlGaN層222とは、アルミニウム組成が異なる。すなわち、第1AlGaN層221を構成するAl
x1Ga
1-x1Nのアルミニウム組成x1(0<x1<1)は、第2AlGaN層222を構成するAl
x2Ga
1-x2Nのアルミニウム組成x2(0<x2<x1<1)よりも大きい。すなわち、AlGaNバッファ層22は、電子走行層3に近づくに従ってアルミニウム組成が低くなるように積層された第1AlGaN層221および第2AlGaN層222を含む。第1AlGaN層221および第2AlGaN層222の厚さの合計は、たとえば1μm程度であってもよい。より具体的には、第1AlGaN層221の厚さは0.2μm程度、第2AlGaN層222の厚さは0.8μm程度であってもよい。
【0137】
第1AlGaN層221は第1アルミニウム組成の第1アルミニウム組成AlGaN層(高アルミニウム組成領域)であり、第2AlGaN層222は、第1アルミニウム組成よりも小さな第2アルミニウム組成の第2アルミニウム組成AlGaN層(低アルミニウム組成領域)である。また、AlGaNバッファ層22は、基板1から電子走行層3に向かう層厚方向に関して、電子走行層3に近づくほどアルミニウム組成が小さくなるようにアルミニウム組成を調整したAlGaN層であるということもできる。
【0138】
基板1上に形成された窒化物半導体層は、複数の素子領域DRに分割されている。そして、個々の素子領域DRは、他の素子領域DRから、素子分離層13によって電気的に分離されている。素子分離層13は、この実施形態では、キャップ層5、電子供給層4および電子走行層3を貫通してバッファ層2に達している。より具体的には、素子分離層13は、電子走行層3の厚さ方向に延びており、キャップ層5の表面から所定深さ(たとえば1.1μm程度)の位置に達するように形成されている。この実施形態では、素子分離層13は、第1AlGaN層221と第2AlGaN層222との界面を超える深さに達しており、その底部は、第1AlGaN層221内に位置している。素子分離層13は、この実施形態では、イオン注入によって窒化物半導体の結晶構造を破壊して結晶欠陥を生じさせ、それによって、高抵抗化した高抵抗層である。
【0139】
素子分離層13は、個々の素子領域DRを取り囲むように形成されている。そして、素子領域DR内にHEMT(高電子移動度トランジスタ)構造が形成されている。すなわち、各素子領域DR内において、ソース電極6およびドレイン電極7の間にゲート電極8が位置し、ゲート電極8がゲート絶縁膜10を挟んで電子走行層3(より具体的には二次元電子ガス11)に対向している。
【0140】
素子分離層13上には、開口13aが形成されている。この開口13aの底面および側面もゲート絶縁膜10で覆われている。そして、素子分離層13上にゲート絶縁膜10を介して、ゲート配線膜18が配置されている。ゲート配線膜18は、ゲート電極8に接続されている。この実施形態では、複数の素子領域DRにそれぞれ配置されたゲート電極8がゲート配線膜18に共通に接続されている。
【0141】
図9は、この実施形態の窒化物半導体装置のチップ全体の構成を説明するための図解的な平面図であり、層間絶縁膜12を透視して構成を示してある。また、
図10は、素子分離層13および素子領域DRの配置を説明するための図解的な平面図である。さらに、
図11は、ソース配線膜16およびドレイン配線膜17の配置を説明するための図解的な平面図である。そして、
図12は、
図9の一部を拡大して示す部分拡大平面図であり、
図9と同様に層間絶縁膜12を透視して示して構成を示してある。
【0142】
素子領域DRは、
図10に最もよく表れているように、所定方向に沿って延びた長尺な矩形形状(帯状)の領域である。それぞれ帯状の素子領域DRが、互いに平行に延びて、ストライプ状に形成されている。複数の素子領域DRをそれぞれ縁取るように、素子領域DR以外の領域に素子分離層13(
図10では明瞭化のための斜線を付して示す。)が配置されている。すなわち、素子分離層13は、個々の素子領域DRを取り囲み、かつ複数の素子領域DRを全体として取り囲むように配置されている。素子領域DRは、電子の移動によってデバイス動作に寄与する活性領域である。これに対して、素子分離層13の領域は、電子の移動を阻害する高抵抗領域であり、デバイスの動作には寄与しない非活性領域である。
【0143】
図11に最もよく表れているように、ソース配線膜16およびドレイン配線膜17は、層間絶縁膜12上において、互いに噛み合う櫛歯形状に形成されている。より具体的には、ソース配線膜16は、外部接続のためのソースパッド部16Aと、ソースパッド部16Aから互いに平行に延びた複数本のソースバス接続部16Bと、各ソースバス接続部16Bから突出した複数本のソース枝状部16Cとを含む。ソースパッド部16Aは、平面視において矩形の窒化物半導体装置の一辺に沿って形成された長尺な矩形形状に形成されている。複数本のソースバス接続部16Bは、素子領域DRと平行に延びた長尺矩形状に形成されており、隣り合う素子領域DRの間の素子分離層13上に形成されている。ソースバス接続部16Bの長手方向に沿う一対の辺から、各辺に垂直な方向に複数本のソース枝状部16Cが両側の素子領域DRへと延びて、各素子領域DRのほぼ全幅に渡って横たわっている。同様に、ドレイン配線膜17は、外部接続のためのドレインパッド部17Aと、ドレインパッド部17Aから互いに平行に延びた複数本のドレインバス接続部17Bと、各ドレインバス接続部17Bから突出した複数本のドレイン枝状部17Cとを含む。ドレインパッド部17Aは、窒化物半導体装置のソースパッド部16Aとは反対側の一辺に沿って形成された長尺な矩形形状に形成されている。複数本のドレインバス接続部17Bは、素子領域DRと平行に延びた長尺矩形状に形成されており、隣り合う素子領域DRの間の素子分離層13上に形成されている。ドレインバス接続部17Bの長手方向に沿う一対の辺から、各辺に垂直な方向に複数本のドレイン枝状部17Cが両側の素子領域DRへと延びて、各素子領域DRのほぼ全幅に渡って横たわっている。
【0144】
複数の素子領域DRの間に位置する素子分離層13上の領域に、ソースバス接続部16Bおよびドレインバス接続部17Bが交互に配置され、それによって、ソースバス接続部16Bとドレインバス接続部17Bとが櫛歯状に噛み合っている。さらに、各素子領域DR内では、ソース枝状部16Cとドレイン枝状部17Cとが、素子領域DRの長手方向に関して交互に配置されており、それらが櫛歯状に噛み合っている。
【0145】
一方、ゲート配線膜18は、ゲートパッド部18Aと、ゲートバス接続部18Bとを含む。ソースパッド部16Aの一端部付近には、ほぼ矩形の切り欠きが形成されており、この切り欠きに整合するように、ゲートパッド部18Aが配置されている。層間絶縁膜12には、ゲートパッド部18Aを露出させる開口18b(
図11参照)が形成されている。ゲートバス接続部18Bは、平面視において、ソース配線膜16と素子領域DRとの間に位置するように、素子分離層13上で引き回されて配置されている。ゲートバス接続部18Bは、各素子領域DRの長手方向に沿う一辺に沿って延びている。そして、ゲートバス接続部18Bから素子領域DRに向かって、素子領域DRの長手方向と直交する方向に沿って複数本のゲート電極8が互いに平行に枝状に延び、素子領域DRの全幅に渡っている。
【0146】
ソース配線膜16が層間絶縁膜12上に形成されるのに対してゲート配線膜18は層間絶縁膜12下に形成される。したがって、それらは重なりあって配置されていてもよいが、この実施形態では、平面視において、ソースパッド部16Aおよびソースバス接続部16Bならびにドレイン配線膜17は、ゲート配線膜18とオーバーラップしないように配置されている。ただし、ソース枝状部16Cは、ゲート配線膜18の上方を通過して素子領域DRに至るように配置されている。
【0147】
複数の素子領域DRにそれぞれ形成されたソース電極6は、ソース配線膜16に共通接続されている。また、複数の素子領域DRにそれぞれ形成されたドレイン電極7はドレイン配線膜17に共通に接続されている。さらに、既述のとおり、複数の素子領域DRにそれぞれ形成されたゲート電極8は、ゲート配線膜18によって共通に接続されている。これにより、複数の素子領域DRにそれぞれ形成されたHEMT素子は、ソース配線膜16、ドレイン配線膜17およびゲート配線膜18によって互いに接続されている。これらのソース配線膜16、ドレイン配線膜17およびゲート配線膜18は、したがって、複数の素子の間を接続する素子間配線の一例である。この実施形態では、複数の素子領域DRに共通の機能を有するHEMT素子がそれぞれ形成されており、それらが素子間配線によって互いに接続されている。
【0148】
素子分離層13は、個々の素子領域DRを取り囲んでおり、かつ素子間配線としてソース配線膜16、ドレイン配線膜17およびゲート配線膜18によって互いに接続された複数の素子がそれぞれ形成された複数の素子領域DRを全体として取り囲んでいる。
【0149】
図13は、素子領域DR内における構成を説明するための部分拡大平面図である。なお、
図8は、
図13の切断面線VIII−VIIIにおける切断面を示している。
【0150】
素子領域DR内では、ソース枝状部16Cがソースコンタクト孔16a(
図8参照)を介してソース電極6に接続されており、ドレイン枝状部17Cがドレインコンタクト孔17a(
図8参照)を介してドレイン電極7に接続されている。
【0151】
ソース電極6およびドレイン電極7は、素子領域DRの長手方向に直交する幅方向に延びて帯状に形成されている。そして、複数本のソース電極6および複数本のドレイン電極7が、所定の間隔を開けて、素子領域DRの長手方向に一本ずつ交互に配列されている。さらに、ソース電極6とドレイン電極7との間に、それぞれ、ゲート電極8が配置されている。ゲート電極8は、素子領域DRの幅方向に延びており、素子領域DRの全幅に渡っている。より具体的には、ゲート電極8が埋設される開口8a(
図8参照)は、素子領域DRの全幅に渡っている。それによって、ゲート電極8は、素子分離層13とともにソース電極6を取り囲んでいる。これにより、ゲート電極8に所定の遮断電圧が与えられたときに、ゲート電極8の直下で二次元電子ガス11をソース電極6側とドレイン電極7側とに分離できる。ソース電極6およびドレイン電極7は、素子領域DRの全幅に渡っている必要はない。
【0152】
ゲート電極8とソース電極6との間の距離は、ゲート電極8とドレイン電極7との間の距離よりも短い。すなわち、ゲート電極8は、ソース電極6の近傍において、ソース電極6に沿って形成されている。これにより、ゲート電極8とドレイン電極7との間の電界を緩和して、耐圧の向上が図られている。
【0153】
図8に示されているように、ソース電極6の電位を基準(零電位)として、ドレイン電極7に正のバイアスが与えられる。その状態でゲート電極8に負の制御電圧を与えると、ゲート電極8の直下において二次元電子ガス11が消失し、それによって、ソース−ドレイン間が遮断される。負の制御電圧をゲート電極8から取り去ると、ゲート電極8の直下に二次元電子ガス11が現れ、これがチャネルとなって、ソース−ドレイン間が接続される。
【0154】
図14Aは、前記窒化物半導体装置の厚さ方向(基板1の主面の法線方向)に関する各部でのエネルギー準位を示すバンド図である。より具体的には、AlGaNバッファ層22を高アルミニウム組成の第1AlGaN層221(たとえばAl
0.25Ga
0.75N)および低アルミニウム組成の第2AlGaN層222(たとえばAl
0.08Ga
0.92N)で構成した実施例についてのバンド図である。また、
図14Bは、AlGaNバッファ層22を高アルミニウム組成のAlGaN層(たとえばAl
0.25Ga
0.75N)のみで構成した比較例の構造における同様のバンド図である。さらに、
図14Cは、前記比較例において、AlGaN層(たとえばAl
0.25Ga
0.75N)の単層からなるAlGaNバッファ層22の層厚を薄くし、電子走行層3の層厚を厚く(たとえば1μm程度)した場合の同様のバンド図である。
【0155】
図14A,7Bおよび7Cに示すように、AlNバッファ層21内でのエネルギーレベルは、基板1(たとえばシリコン基板)からAlGaNバッファ層22に向かうに従って急峻に立ち上がっている。一方、
図14Bに示す比較例では、高アルミニウム組成のAlGaN単層からなるAlGaNバッファ層22におけるエネルギーレベルは、下に凸の大きな放物線を描いて、AlNバッファ層21と電子走行層3との間を結んでいる。そのため、AlNバッファ層21とAlGaNバッファ層22との界面付近では、鋭角な三角状のポテンシャル障壁が形成されている。電子は、量子トンネル効果によって、三角状のポテンシャル障壁を通過し、それによって、リーク電流が発生する。
【0156】
図14Cに示す比較例では、GaNからなる電子走行層3が厚くしてあるので、AlGaNバッファ層22の最低エネルギーレベルは高くなっているものの、
図14Bの比較例と同様に、AlNバッファ層21とAlGaNバッファ層22との界面付近に鋭角な三角状のポテンシャル障壁が現れている。よって、
図14Bの比較例の場合と同様に、量子トンネル効果によるリーク電流が発生する。
【0157】
図14Aに示す実施例では、高アルミニウム組成の第1AlGaN層221に加えて、低アルミニウム組成の第2AlGaN層222が設けられることによって、第1AlGaN層221(高アルミニウム組成領域)の部分のエネルギーレベルが持ち上がっている。その結果、AlNバッファ層21と第2AlGaN層222(低アルミニウム組成領域)との間に、台形状のポテンシャル障壁が形成されている。この台形状のポテンシャル障壁は、量子トンネル効果による電子の通過を妨げるので、AlNバッファ層21とAlGaNバッファ層22との界面付近の空乏層を広げて高抵抗化することができる。これによって、リーク電流を抑制または防止できる。
【0158】
図15A、
図15Bおよび
図15Cは、GaN層からなる電子走行層3の厚さに関する特徴を説明するための図であり、様々な厚さにエピタキシャル成長させたGaN層の表面の光学顕微鏡写真である。
図15AはGaN層を厚さ0.1μmまでエピタキシャル成長させた場合の表面の状態を示し、
図15BはGaN層を厚さ0.4μmまでエピタキシャル成長させた場合の表面の状態を示し、
図15CはGaN層を厚さ1.0μmまでエピタキシャル成長させた場合の表面の状態を示す。
【0159】
厚さ0.1μmのGaN層(
図15A)では、表面に六角形の凹凸が表れており、十分な平滑性が得られていない。厚さ0.4μmおよび1.0μmのGaN層(
図15Bおよび
図15C)では、表面がスムーズであり、高い電子移動度を得るために必要な平滑性が得られており、厚さ1.0μmのGaN層(
図15C)の方がより平滑な表面を呈している。
【0160】
二次元電子ガス11は、電子走行層3の表面付近に形成され、この二次元電子ガス11を構成する電子がデバイスの動作に寄与する。したがって、電子走行層3の表面の平滑度は、電子の移動度に影響する。そこで、電子走行層3を厚さ0.4μm(400nm)以上のGaN層で構成することにより、電子走行層3の表面を十分に平滑な状態とすることができ、それに応じて、高速動作が可能なデバイスを提供できる。
【0161】
図16A〜16Iは、前記窒化物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0162】
まず、
図16Aに示すように、基板1上に、バッファ層2、電子走行層3、電子供給層4およびキャップ層5が順にエピタキシャル成長させられる。これらは、たとえば、c面を主面とする窒化物半導体結晶層であってもよい。バッファ層2のエピタキシャル成長では、まず、AlNバッファ層21が成長させられ、次いで、高アルミニウム組成のAlGaNからなる第1AlGaN層221が成長させられ、次いで、それよりも低アルミニウム組成のAlGaNからなる第2AlGaN層222が成長させられる。すなわち、基板1上に、アルミニウム組成が基板1に近い領域において相対的に高く、基板1から遠い領域において相対的に低くなるように、AlGaN結晶をエピタキシャル成長して、AlGaNバッファ層22が形成される。エピタキシャル成長時の原料ガスの流量を制御することによって、各層の組成を制御することができる。この窒化物半導体エピタキシャル成長工程の後に、同結晶成長装置内でSiNからなるパッシベーション膜9の下層91が全面に形成される。このパッシベーション膜91は、他の成膜方法、例えばプラズマCVD法(プラズマ化学的気相成長法)によって形成してもよい。
【0163】
次に、
図16Bに示すように、下層91の上に、ソース電極6およびドレイン電極7のためのコンタクト孔6a,7aに対応する位置に開口を有するレジストマスク31が形成される。このレジストマスク31を介するエッチングによって、下層91にコンタクト孔6a,7aが形成される。
【0164】
そして、
図16Cに示すように、レジストマスク31を剥離した後、コンタクト孔6a,7aをそれぞれ埋め込むソース電極6およびドレイン電極7が形成される。ソース電極6およびドレイン電極7は、キャップ層5および電子供給層4を介して二次元電子ガス11にオーミック接合できる材料で構成される。より具体的には、キャップ層5に接するTi層とTi層上に形成されたAl層とを積層した積層電極膜が用いられてもよい。たとえば、ソース電極6およびドレイン電極7に対応する位置に開口を有するレジストを形成し、そのうえから、電極膜を形成(たとえばスパッタ法で形成)し、レジストとともに不要部分をリフトオフすることによって、所定のパターンのソース電極6およびドレイン電極7が形成されてもよい。さらに、熱処理を行うことによって、ソース電極6およびドレイン電極7を二次元電子ガス11に対してオーミック接触させることができる。
【0165】
次に、
図16Dに示すように、パッシベーション膜9の上層92(たとえばSiN層)が、たとえば、プラズマCVD法によって全面に形成される。次いで、
図16Eに示すように、素子領域DRに整合するパターンのレジストマスク32が形成される。すなわち、レジストマスク32は、素子分離層13を形成すべき領域に開口を有するパターンに形成される。このレジストマスク32をエッチングマスクとして、パッシベーション膜9がエッチングされる。それによって、パッシベーション膜9には、素子分離層13の形成領域を露出させる開口13aが形成される。
【0166】
さらに、
図16Fに示すように、レジストマスク32をマスクとして、素子分離層13を形成するためのイオン注入が行われる。このイオン注入では、質量数が10より小さく2より大きい元素を材料とするイオン種を用いる。このようなイオン種としては、ヘリウムイオンを例示できる。ヘリウムイオンは、窒化物半導体結晶に深く到達させることができ、かつ結晶構造に対して十分な結晶欠陥を生じさせることができる。パッシベーション膜9は、素子領域DRを覆っており、素子領域DRにイオンが到達することを防いで、素子領域DRを保護する。
【0167】
また、イオン注入は、基板1の主面の法線方向(すなわち、電子走行層3の厚さ方向)に対して傾斜した方向からの斜めインプランテーションによって行うことが好ましい。電子走行層3等の主面がc面である場合、c軸方向に対して傾斜した方向からイオン注入が行われることになる。基板1の主面の法線方向(電子走行層3の厚さ方向。たとえばc軸方向)に対するイオン注入方向の傾斜角は、5〜10度が好ましい。このような傾斜方向からのイオン注入によって、六方晶の結晶構造を有する窒化物半導体の構成元素に対してイオンを効率的に衝突させることができ、それによって、結晶構造に欠陥を形成して、高抵抗化することができる。
【0168】
また、イオン注入は、複数の加速エネルギーを用いた多段注入によって行われる。これにより、キャップ層5からバッファ層2にまで到達する広い深さ範囲に渡って窒化物半導体層の結晶構造を破壊でき、それによって、当該深さ範囲に渡る高抵抗層からなる素子分離層13を形成することができる。
【0169】
イオン注入の後、レジストマスク32を剥離する。次に、
図16Gに示すように、ゲート電極8の形成位置に対応する開口を有するレジストマスク33が形成される。このレジストマスク33を介するエッチングによって、キャップ層5に達する開口8aがパッシベーション膜9に形成される。
【0170】
その後、
図16Hに示すように、レジストマスク33を剥離した後、たとえばALD法によって、たとえばアルミナからなるゲート絶縁膜10が形成される。したがって、ゲート絶縁膜10は、開口8aの底面と素子分離層13の上面においてキャップ層5に接し、さらに開口8a,13aの側面を覆い、そして開口8a,13a外のパッシベーション膜9の表面を覆うように連続する。その状態で、さらに、ゲート電極8およびゲート配線膜18が同じ電極膜で形成される。この電極膜は、NiまたはPtからなる下層と、この下層上に積層され、AuまたはAlからなる上層とを有する積層電極膜であってもよい。ゲート電極8およびゲート配線膜18の形成に際しては、たとえば、レジストパターンの形成、その上を覆う電極膜の形成(たとえばスパッタ法による形成)を順に行った後、レジストパターンとともに電極膜の不要部分をリフトオフすればよい。
【0171】
次いで、
図16Iに示すように、たとえば、SiO
2からなる層間絶縁膜12がプラズマCVD法によって形成される。そして、層間絶縁膜12において、ソース電極6およびドレイン電極7の直上の位置に、当該層間絶縁膜12およびパッシベーション膜9の上層92を貫通するソースコンタクト孔16aおよびドレインコンタクト孔17aがエッチングによって形成される。
【0172】
その後は、ソースコンタクト孔16aおよびドレインコンタクト孔17aに埋め込まれる配線膜が形成され、その配線膜がエッチングによってソース配線膜16およびドレイン配線膜17のパターンにパターニングされることにより、
図8に示す構造の窒化物半導体装置が得られる。
【0173】
さらに、熱処理を行うことによって、ソース電極6およびソース配線膜16の間、ならびにドレイン電極7およびドレイン配線膜17の間の接触抵抗を低減できる。
【0174】
図17は、素子分離層13の形成のための多段イオン注入の詳細を説明するための図である。具体的には、窒化物半導体結晶に対して、その主面(たとえばc面)の法線方向(たとえばc軸方向)に対して、5〜10度傾斜した方向からイオン注入した場合において、注入されたイオンの衝撃によって生じる結晶欠陥の深さ依存性を示す。
【0175】
ヘリウムイオンを次の表1の条件で第1〜第5段階の5段階で窒化物半導体結晶にイオン注入することにより、各段階のイオン注入により、加速エネルギーに応じて異なる深さにヘリウムイオンが到達する。それによって、窒化物半導体結晶中に形成される結晶欠陥の深さ方向の分布は、表面から異なる深さにピークを有するプロファイルを示す。第1〜第5段階のイオン注入によって生じる結晶欠陥分布のプロファイルを合成した合成プロファイルは、1.1μm程度の深さまで一定値以上の結晶欠陥密度を有している。したがって、この深さまで高抵抗化できることが分かる。
【0177】
また、傾斜した方向からのイオン注入によって、窒化物半導体結晶を構成する原子にイオンが衝突しやすくなるので、イオン注入の深さを正確に制御できる。これにより、確実に、高抵抗の素子分離層13が形成されるので、リーク電流を低減した窒化物半導体装置を提供できる。とくに、傾斜角を5〜10度とすることにより、イオン注入の深さを正確に制御して、高抵抗な素子分離層13を実現できる。
【0178】
図18は、オフ時リーク特性を示す。より具体的には、ゲート電極8にオフ電圧を印加してソース−ドレイン間が遮断されている状態において、ドレイン電流Id(ソース−ドレイン間電流)およびゲート電流Ig(ソース−ゲート間電流)を測定した結果を示す。横軸は、ソース電極6およびドレイン電極7の間のバイアスである。
【0179】
曲線C1d,C1gは、
図8の構成から素子分離層13を省き、第2AlGaN層222を省いた構造(比較例1)についての実験結果を示す。曲線C2d,C2gは、
図8の構成から第2AlGaN層222を省いた構造(比較例2)についての実験結果を示す。また、曲線C3d,C3gは、
図8の構成から素子分離層13を省いた構造(比較例3)についての実験結果を示す。さらに、曲線Ed,Egは
図8に示す実施形態に係る構造(実施例)についての実験結果を示す。
【0180】
比較例1,2の比較から、素子分離層13を設けることによって、ドレインリーク電流を2桁程度低減でき、かつゲートリーク電流を4桁程度低減できることが分かる。さらに、比較例2と実施例との比較、および比較例1と比較例3との比較から、高アルミニウム組成AlGaN層からなる第1AlGaN層221と電子走行層3との間に低アルミニウム組成AlGaN層からなる第2AlGaN層222を設けることによって、ドレインリーク電流およびゲートリーク電流を低減できることが分かる。そして、比較例3と実施例との比較から、高アルミニウム組成AlGaN層からなる第1AlGaN層221と電子走行層3との間に低アルミニウム組成AlGaN層からなる第2AlGaN層222を設け、かつ素子分離層13を設けた構造によって、ドレインリーク電流およびゲートリーク電流を最も低減できることが分かる。
【0181】
以上のように、この実施形態の構成によれば、基板1と電子走行層3との間にはAlGaNバッファ層22が形成されており、さらに、電子供給層4および電子走行層3を貫通する素子分離層13がAlGaNバッファ層22に達している。素子分離層13は、イオン注入によって窒化物半導体に結晶欠陥を引き起こすことによって高抵抗化した領域からなる。この素子分離層13によって、基板1の主面方向に沿う方向に関する素子分離を行うことができる。
【0182】
また、AlGaNバッファ層22は、高アルミニウム組成の第1AlGaN層221および低アルミニウム組成の第2AlGaN層222を有し、第2AlGaN層222が第1AlGaN層221よりも電子走行層3に近い領域に配置されている。低アルミニウム組成の第2AlGaN層222と基板1との間に高アルミニウム組成の第1AlGaN層221が介在することによって、AlGaNバッファ層22の厚さ方向に関するエネルギーレベルの変化が小さくなる。そのため、ポテンシャル障壁が厚くなるので、量子トンネル効果によるリークを抑制できる。こうして、バッファ層2を介するリーク経路を遮断できる。
【0183】
こうして、イオン注入によってバッファ層2に達するように形成された素子分離層と、高アルミニウム組成領域と低アルミニウム組成領域とを組み合わせたAlGaNバッファ層22とによって、リーク電流の少ない窒化物半導体装置を提供できる。
【0184】
素子分離層13が個々の素子領域DRを取り囲むように形成されているので、素子領域DRの内外間のリークを抑制または防止できる。さらに、素子分離層13は、素子間配線を形成する配線膜16,17,18によって共通接続された複数の素子領域DRを全体的に取り囲んでいるので、個々の素子領域におけるリークを低減しながら、複数の素子領域にそれぞれ形成された複数の素子を結合して目的とする機能を実現する大素子を構成することができ、かつその大素子全体としてのリーク電流を低減できる。
【0185】
また、この実施形態では、素子分離層13の上のスペースを利用して配線膜16,17,18が引き回されているので、高集積化に有利な構成となる。そればかりでなく、配線膜16,17,18の下の素子分離層13がバッファ層2にまで達する厚い高抵抗層であるので、寄生容量を少なくすることができ、それに応じて、高速動作が可能になる。したがって、個々の素子領域におけるリークを低減しながら、高速動作が可能な窒化物半導体装置を提供できる。
【0186】
また、素子分離層13が、質量数が10より小さく2より大きい元素を材料とする斜めインプランテーションによるイオン多段注入によって形成された高抵抗層である。そのため、GaN層からなる電子走行層3を厚くして電子移動度を高めたり、AlGaNバッファ層22を厚くしてリーク電流を低減したりしても、バッファ層2に到達する深い位置まで高抵抗な素子分離層13を形成できる。また、窒化物半導体の結晶構造に対して十分な結晶欠陥を生じさせるために十分な質量数の元素を材料としたイオン種が用いられているので、たとえば、ソース電極6およびドレイン電極7を窒化物半導体層にオーミック接触させるための熱処理時などに、結晶欠陥が治癒されてしまうといったことがない。それにより、素子分離層13は、いずれの深さ位置においても十分に高い抵抗値を有するので、リーク電流を効果的に低減できる。
【0187】
この実施形態は、次のように変形することもできる。
【0188】
たとえば、前述の実施形態では、高アルミニウム組成の第1AlGaN層221上に低アルミニウム組成の第2AlGaN層222が積層されているが、第2AlGaN層222よりもさらにアルミニウム組成の小さい第3AlGaN層を第2AlGaN層222と電子走行層3との間に介在させてもよい。すなわち、AlNバッファ層21と電子走行層3との間に、2層以上の任意の数のAlGaN層を介在させ、そのアルミニウム組成をAlNバッファ層21から電子走行層3に向かって単調に低くしてもよい。さらにまた、AlNバッファ層21と電子走行層3との間に、アルミニウム組成xが電子走行層3に近づくに従って連続的にかつ単調に減少するAl
xGa
1-xN層(0<x≦1)を介在させた構成としてもよい。
【0189】
また、AlNバッファ層21を省いてもよい。ただし、その場合でも、基板1との界面におけるAlGaN層のGa組成は零であることが好ましい。
【0190】
また、前述の実施形態では、電子供給層4の表面にキャップ層5が設けられているが、このキャップ層5は省いてもよい。
【0191】
また、前述の実施形態では、複数の素子領域DRに共通の機能の素子が形成されていて、それらが素子間配線(配線膜16,17,18)によって接続されることによって大素子が形成されている。しかし、複数の素子領域に異なる機能の素子が形成されていて、それらが素子間配線によって接続されることによって、大素子が形成されてもよい。さらにまた、必要な機能に応じて、前記複数の素子領域にそれぞれ形成された複数の素子が、第1の素子と、第1の素子と共通の機能を有する第2の素子と、第1の素子とは異なる機能を有する第3の素子とを含んでいてもよい。これにより、共通の機能の素子と異なる機能の素子とを組み合わせて、目的とする機能の大素子を構成できる。
【0192】
さらに、この第2の実施形態に対して、第1の実施形態(
図1〜
図7)の特徴が組み込まれてもよい。
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【0193】
この出願は、それぞれ2012年10月11日および2012年12月13日に日本国特許庁に提出された特願2012−226256号および特願2012−272725号に対応しており、これらの出願の全開示はここに引用により組み込まれるものとする。