特許第6245569号(P6245569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245569
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】光電気混載基板
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20171204BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20171204BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   G02B6/12 301
   G02B6/42
   H05K1/02 T
   H05K1/02 E
   H05K1/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-120088(P2013-120088)
(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公開番号】特開2014-238455(P2014-238455A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】辻田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】石丸 康人
【審査官】 佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−330117(JP,A)
【文献】 特開2010−266598(JP,A)
【文献】 特開2009−265342(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0236876(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12−6/14
G02B 6/42
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層の表面に実装用パッドを有する電気配線が形成されているフレキシブル回路基板と、上記実装用パッドに実装された素子と、上記絶縁層の裏面側に積層された光導波路とを備えた光電気混載基板であって、上記フレキシブル回路基板が、絶縁層の裏面にも電気配線が形成されたフレキシブル両面回路基板であり、その裏面側の電気配線のうち、少なくとも上記実装用パッドに対応する部分に、金属製補強層がめっき形成され、その金属製補強層に、上記光導波路が当接した状態になっていることを特徴とする光電気混載基板。
【請求項2】
上記裏面側の電気配線が、厚み5〜15μmの範囲内であり、上記金属製補強層が、弾性率152GPa以上かつ厚み1〜20μmの範囲内である請求項1記載の光電気混載基板。
【請求項3】
上記フレキシブル両面回路基板において、表面側の電気配線と裏面側電気配線とが接続した状態になっている請求項1または2記載の光電気混載基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル回路基板と光導波路とが積層され、上記フレキシブル回路基板に光学素子やICチップ等の素子が実装された光電気混載基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器等では、伝送情報量の増加に伴い、電気配線に加えて、光配線が採用されている。そのようなものとして、図7に示すような光電気混載基板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このものは、ポリイミド等からなる絶縁層51の表面に電気配線52が形成されてなるフレキシブル回路基板E1と、上記絶縁層51の裏面(電気配線52の形成面と反対側の面)に積層された、エポキシ樹脂等からなる光導波路(光配線)W1(アンダークラッド層56,コア57,オーバークラッド層58)と、上記電気配線52の所定部分(実装用パッド52a)に実装された光学素子5とからなっている。この光電気混載基板は、フレキシブル回路基板E1も光導波路W1もフレキシブルであり、最近の電子機器等の小形化に対応して、小スペースで屈曲させた状態での使用や、ヒンジ部等の可動部での使用等に好適なものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−048150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記フレキシブル回路基板E1および光導波路W1がフレキシブルであることから、上記フレキシブル回路基板E1の電気配線52に光学素子5を実装する場合、その実装時にかかる押圧荷重により、上記フレキシブル回路基板E1も光導波路W1も変形する。そのため、正確に実装し難く、実装不良になることがある。
【0005】
そこで、本発明者らは、上記フレキシブル回路基板E1の絶縁層51の裏面(光導波路W1が形成されている面)のうち、光学素子5の実装部分(実装用パッド52a)に対応する部分に、直接、金属製補強層を設けることを着想した。すなわち、上記金属製補強層により、光学素子5の実装時の押圧荷重による変形が抑制されるようにした。
【0006】
しかしながら、上記金属製補強層の材料として、剛性(耐変形性)の高いニッケル等の金属を用いると、光電気混載基板を屈曲させた際に、その屈曲に金属製補強層が追従できず、その金属製補強層に割れが発生し、その割れの部分から絶縁層51が剥離する。そこで、絶縁層51と金属製補強層との間に接着剤層を設けると、今度は、接着剤層が柔らか過ぎて、光学素子5の実装不良が発生する。また、電気配線52と同じ銅を主成分とする金属を用いると、屈曲の際の追従性に優れ、絶縁層51との密着性に優れるものの、実装時の押圧荷重に対して充分な剛性を有していない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、フレキシブル回路基板の絶縁層に、接着剤層を介することなく、金属製補強層が密着され、その金属製補強層により、素子実装時の押圧荷重による変形を抑制した状態で素子が適正に実装されている光電気混載基板の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の光電気混載基板は、絶縁層の表面に実装用パッドを有する電気配線が形成されているフレキシブル回路基板と、上記実装用パッドに実装された素子と、上記絶縁層の裏面側に積層された光導波路とを備えた光電気混載基板であって、上記フレキシブル回路基板が、絶縁層の裏面にも電気配線が形成されたフレキシブル両面回路基板であり、その裏面側の電気配線のうち、少なくとも上記実装用パッドに対応する部分に、金属製補強層がめっき形成され、その金属製補強層に、上記光導波路が当接した状態になっているという構成をとる。
【0009】
すなわち、本発明の光電気混載基板は、フレキシブル回路基板として、絶縁層の裏面にも電気配線が形成されたフレキシブル両面回路基板を用いている。このフレキシブル両面回路基板では、元々、絶縁層と表裏面の電気配線とが密着した状態になっている。そのため、屈曲しても、絶縁層と表裏面の電気配線とが剥離することがない。そして、その裏面側の電気配線のうち、少なくとも表面側の実装用パッドに対応する部分に、金属製補強層がめっき形成されている。ここで、電気配線と金属製補強層とは、いずれも金属であることから、馴染み性が高く、しかも、金属製補強層は、電気配線にめっき形成されたものであることから、それら電気配線と金属製補強層とは、強固に密着した状態になっている。すなわち、上記金属製補強層は、フレキシブル両面回路基板の絶縁層に、接着剤層を介することなく、裏面側の電気配線を介して、強固に密着している。そして、その電気配線は、フレキシブル性を有する程度に柔らかいものの、接着剤層よりも高い剛性を有している。そのため、表面側の実装用パッドに素子を実装する際の押圧荷重による変形を、上記裏面側の電気配線と金属製補強層とにより抑制することができる。その結果、素子の実装不良がなく、素子を適正に実装することができる。さらに、上記のように金属製補強層が裏面側の電気配線にめっき形成され強固に密着していることから、屈曲しても、金属製補強層が裏面側の電気配線から剥離しない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光電気混載基板は、フレキシブル回路基板として、絶縁層の裏面にも電気配線が形成されたフレキシブル両面回路基板を用いているため、金属製補強層を上記裏面側の電気配線にめっき形成することができる。それにより、上記金属製補強層は、フレキシブル両面回路基板の絶縁層に、裏面側の電気配線を介して、強固に密着したものとなっている。そのため、本発明の光電気混載基板は、実装用パッドに素子を実装した際の押圧荷重による変形が、上記裏面側の電気配線と金属製補強層とにより抑制されている。その結果、本発明の光電気混載基板は、素子の実装不良がなく、素子が適正に実装されている。さらに、本発明の光電気混載基板は、上記のように金属製補強層が裏面側の電気配線にめっき形成され強固に密着していることから、屈曲しても、金属製補強層が裏面側の電気配線から剥離しないものとなっている。
【0011】
特に、上記裏面側の電気配線が、厚み5〜15μmの範囲内であり、上記金属製補強層が、弾性率152GPa以上かつ厚み1〜20μmの範囲内である場合には、素子を実装した際の押圧荷重による変形が抑制されつつ、フレキシブル性にも優れたものとなっている。
【0012】
また、上記フレキシブル両面回路基板において、表面側の電気配線と裏面側電気配線とが接続した状態になっている場合には、裏面側の電気配線を、表面側の電気配線のグランド配線とすることができる。また、素子の発熱を、表面側の電気配線を介して、裏面側の電気配線に伝熱して放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の光電気混載基板の一実施の形態を模式的に示す要部の縦断面図である。
図2】(a)〜(c)は、上記光電気混載基板におけるフレキシブル両面回路基板の作製工程を模式的に示す説明図である。
図3】(a)〜(c)は、図2に続くフレキシブル両面回路基板の作製工程を模式的に示す説明図である。
図4】(a)〜(c)は、上記光電気混載基板における光導波路の作製工程を模式的に示す説明図である。
図5】(a)は、上記光導波路のコアに光反射面を形成する工程を模式的に示す説明図であり、(b)は、上記光電気混載基板における光学素子の実装工程を模式的に示す説明図である。
図6】本発明の光電気混載基板の他の実施の形態を模式的に示す要部の縦断面図である。
図7】従来の光電気混載基板を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0015】
図1は、本発明の光電気混載基板の一実施の形態を模式的に示す、実装用パッド近傍(要部)の縦断面図である。この実施の形態の光電気混載基板は、電気回路基板として、可撓性を有する絶縁層1の表裏面に電気配線2A,2Bが形成されたフレキシブル両面回路基板Eを用いている。また、光学素子5やICチップ等の素子を実装する実装用パッド2aは、表面側の電気配線2Aの所定部分に形成されている。そして、この実施の形態では、裏面側の電気配線2Bおよび上記実装用パッド2aに、金属製補強層Mがめっき形成されている。また、光導波路Wは、上記フレキシブル両面回路基板Eの裏面側の電気配線2Bに、そのアンダークラッド層6が当接した状態で形成されている。このように、光電気混載基板の電気回路基板として、両面に電気配線2A,2Bが形成されたフレキシブル両面回路基板Eを用い、裏面側の電気配線2Bのうち、少なくとも表面側の実装用パッド2aに対応する部分に、金属製補強層Mをめっき形成したことが、本発明の大きな特徴の一つである。
【0016】
すなわち、フレキシブル両面回路基板Eでは、元々、絶縁層1と表裏面の電気配線2A,2Bとが密着した状態になっている。さらに、その裏面側の電気配線2Bに、金属製補強層Mをめっきにより形成しているため、それら裏面側の電気配線2Bと金属製補強層Mとは強固に密着されている。これらのことから、上記光電気混載基板は、フレキシブル両面回路基板Eの絶縁層1に、裏面側の電気配線2Bを介して、金属製補強層Mが強固に密着したものとなっており、上記実装用パッド2aに光学素子5等の素子を実装した際の押圧荷重による変形が、上記金属製補強層Mにより抑制されたものとなっている。そして、素子の実装不良がなく、素子が適正に実装されている。さらに、上記光電気混載基板は、上記のように金属製補強層Mが裏面側の電気配線2Bにめっき形成され強固に密着していることから、屈曲しても、金属製補強層Mが裏面側の電気配線2Bから剥離しないものとなっている。
【0017】
より詳しく説明すると、上記フレキシブル両面回路基板Eは、先に述べたように、可撓性を有する絶縁層1の表裏面に、電気配線2A,2Bが形成されている。その絶縁層1の厚みは、例えば、フレキシブル性,強度等の観点から、3〜40μmの範囲内に設定されることが好ましく、より好ましくは5〜25μmの範囲内である。上記絶縁層1の厚みが薄くなり過ぎると、強度が小さくなる傾向にあり、厚くなり過ぎると、フレキシブル性に劣る傾向にあるからである。また、電気配線2A,2Bの厚みは、例えば、フレキシブル性,強度,通電性等の観点から、5〜15μmの範囲内に設定されることが好ましく、より好ましくは5〜10μmの範囲内である。上記電気配線2A,2Bの厚みが薄くなり過ぎると、断線や通電性悪化を招く傾向にあり、厚くなり過ぎると、フレキシブル性に劣る傾向にあるからである。
【0018】
さらに、この実施の形態では、表面側の電気配線2Aと裏面側の電気配線2Bとが、ビアホールめっき2Cにより接続されている。そのため、裏面側の電気配線2Bを、表面側の電気配線2Aのグランド配線とすることができる。また、光学素子5等の素子の発熱を、表面側の電気配線2Aを介して、裏面側の電気配線2Bに伝熱して放熱することができる。
【0019】
また、実装する上記光学素子5の中央部に対応する絶縁層1の部分に、光路用の貫通孔1aが形成されている。また、表面側の電気配線2Aのうち、実装用パッド2aを除く部分は、カバーレイ3で被覆されている。さらに、この実施の形態では、実装用パッド2aに形成された金属製補強層Mの表面に、電導性を良好にするための金めっき層4が形成されている。
【0020】
上記金属製補強層Mは、剛性を要する観点から、弾性率が152GPa以上であることが好ましい。そのような金属材料としては、例えば、ニッケル,コバルト,クロム,モリブデン,鉄,マンガン,白金,タンタル,タングステン等があげられ、なかでも、形成容易性から、ニッケル,コバルト,クロムが好ましい。また、その金属製補強層Mの厚みは、フレキシブル性,強度等の観点から、1〜20μmの範囲内に設定されることが好ましく、より好ましくは3〜20μmの範囲内であり、さらに好ましくは5〜20μmの範囲内である。上記金属製補強層Mの厚みが薄くなり過ぎると、強度が小さくなる傾向にあり、厚くなり過ぎると、フレキシブル性に劣る傾向にあるからである。
【0021】
上記光導波路Wは、コア7がアンダークラッド層6とオーバークラッド層8とで挟持された状態で形成されており、そのアンダークラッド層6が、裏面側の電気配線2Bに形成された金属製補強層Mおよび裏面側の電気配線2Bが形成されていない絶縁層1の裏面に当接した状態で、フレキシブル両面回路基板Eの裏面側に積層されている。そして、実装する光学素子5等の素子の中央部に対応するコア7の部分は、コア7の軸に対して45°傾斜した光反射面7aに形成され、その光反射面7aでの光の反射により光路を変換し、コア7と光学素子5との間の光伝播を可能にしている。なお、図1において、符号5aは、光学素子5等の素子の電極である。
【0022】
上記光電気混載基板は、例えば、つぎのようにして製造することができる。
【0023】
まず、図2(a)に示すように、ポリイミド等の樹脂からなる絶縁層1の表裏面に銅箔21が形成された基材を準備し、その基材に、光路用の貫通孔1aおよびビアホール1bを形成する。
【0024】
ついで、図2(b)に示すように、電解めっき処理により、電気配線2A,2B〔図2(c)参照〕の厚みになるまで、上記箔21に銅めっき層22を形成するとともに、上記ビアホール1bにビアホールめっき2Cを形成する。
【0025】
つぎに、図2(c)に示すように、上記銅箔21と銅めっき層22との積層体を、電気配線2A(実装用パッド2aを含む),電気配線2Bにパターン形成する。このパターン形成は、例えば、上記積層体のうち、電気配線2A,2Bにする部分をレジストで被覆し、レジストで被覆されていない積層体の部分をエッチングにより除去した後、上記レジストを剥離することによりなされる。
【0026】
その後、図3(a)に示すように、実装用パッド2aを除く表面側の電気配線2Aの部分を、カバーレイ3で被覆する。このカバーレイ3の形成は、例えば、カバーレイ形成用材料として、感光性絶縁樹脂を用い、フォトリソグラフィ法によりなされる。なお、図3(a)およびそれ以降の図面では、図2(c)に示す銅箔21および銅めっき層22を図示せず、それらからなる電気配線2A(実装用パッド2aを含む),電気配線2Bを図示する。
【0027】
そして、図3(b)に示すように、露呈している金属である裏面側の電気配線2Bおよび実装用パッド2aに、電解めっき処理により、金属製補強層Mを形成する。この金属製補強層Mについては、先に述べたように、その金属材料としてニッケル,コバルト,クロムが好適であり、厚みは1〜20μmの範囲内が好適である。
【0028】
さらに、図3(c)に示すように、実装用パッド2aに形成された金属製補強層Mの表面に、電解めっき処理により、金めっき層4を形成する。この金めっき層4の厚みは、例えば、0.05〜2μmの範囲内に設定される。また、上記電解めっき処理の際には、露呈している金属である裏面側の電気配線2Bをレジスト等で被覆し、その部分に金めっき層4が形成されないようにする。このようにして、金属製補強層Mを形成したフレキシブル両面回路基板Eが作製される。
【0029】
つぎに、図4(a)に示すように、フレキシブル両面回路基板Eの裏面側に、裏面側の電気配線2Bを被覆する金属製補強層Mに当接した状態で、アンダークラッド層6を形成する。このアンダークラッド層6の形成材料としては、例えば、感光性樹脂,熱硬化性樹脂等があげられ、その形成材料に応じた製法により、アンダークラッド層6を形成することができる。アンダークラッド層6の厚みは、例えば、1〜50μmの範囲内に設定される。
【0030】
ついで、図4(b)に示すように、アンダークラッド層6の下面に、コア7を突出した状態で線状に形成する。このコア7は、例えば、感光性樹脂を形成材料として、フォトリソグラフィ法により形成される。コア7の寸法は、例えば、高さも幅も5〜60μmの範囲内に設定される。
【0031】
さらに、図4(c)に示すように、コア7を被覆するように、アンダークラッド層6の下面にオーバークラッド層8を形成する。このオーバークラッド層8の形成材料としては、例えば、感光性樹脂,熱硬化性樹脂等があげられ、その形成材料に応じた製法により、オーバークラッド層8を形成することができる。オーバークラッド層8の厚み(コア7からの厚み)は、例えば、3〜50μmの範囲内に設定される。このようにして、フレキシブル両面回路基板Eの裏面側に、光導波路Wが積層された状態で作製される。
【0032】
その後、図5(a)に示すように、切削刃またはレーザ加工等により、オーバークラッド層8の下面側からコア2の所定部分を切削し、コア2の軸に対して45°傾斜した光反射面7aを形成する。
【0033】
そして、図5(b)に示すように、実装用パッド2aに、光学素子5等の素子を実装する。このとき、フレキシブル両面回路基板Eおよび光導波路Wに、実装による押圧荷重がかかるが、上記金属製補強層Mにより、その押圧荷重によるフレキシブル両面回路基板Eおよび光導波路Wの変形を抑えることができる。そのため、素子の実装不良がなく、素子が適正に実装されている。このようにして、光電気混載基板が得られる。
【0034】
図6は、本発明の光電気混載基板の他の実施の形態を模式的に示す、実装用パッド近傍(要部)の縦断面図である。この実施の形態の光電気混載基板は、図1に示す実施の形態において、金属製補強層Mが、裏面側の電気配線2Bのうち、表面側の実装用パッド2aに対応する部分にのみ形成されている。このような金属製補強層Mの部分的な形成は、金属製補強層Mを形成する際に〔図3(b)参照〕、金属製補強層Mを形成しない電気配線2A,2Bの部分をレジスト等で被覆した状態で、電解めっき処理することによりなされる。それ以外の部分は、図1に示す実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0035】
この実施の形態では、図1に示す実施の形態と比較して、金属製補強層Mの形成面積が少ないことから、光電気混載基板は、剛性に少し劣るものの、光学素子5等の素子の実装に対しては、適正部分に金属製補強層Mが形成されているため、その素子実装時の押圧荷重による変形が充分に抑制されたものとなっている。そして、素子の実装不良がなく、素子が適正に実装されている。
【0036】
なお、上記各実施の形態では、表面側の電気配線2Aと裏面側の電気配線2Bとをビアホールめっき2Cにより接続したが、表裏面の電気配線2A,2Bは、場合によって、接続しなくてもよい。
【0037】
また、上記各実施の形態では、実装用パッド2aに金めっき層4を形成したが、その金めっき層4は、場合によって、形成しなくてもよい。
【0038】
さらに、上記各実施の形態において、金属製補強層Mが形成されていない裏面側の電気配線2Bの部分を、カバーレイで被覆してもよい。このカバーレイは、金属製補強層Mの形成後、アンダークラッド層6の形成に先立って、形成される。また、オーバークラッド層8の形成後、そのオーバークラッド層8をカバーレイ等の被覆層で被覆してもよい。
【0039】
また、上記各実施の形態では、絶縁層1に光路用の貫通孔1aを形成したが、絶縁層1が透光性を有するものである場合は、上記光路用の貫通孔1aを形成しなくてもよい。
【0040】
つぎに、実施例について説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0041】
図6に示す実施の形態の光電気混載基板を作製した。ここで、ポリイミド製絶縁層の厚みを5μm、表裏各面の銅製電気配線の厚みを10μm、ニッケルめっきからなる金属製補強層の厚みを3μm、アンダークラッド層の厚みを15μm、コアの厚みを50μm、コアの幅を50μm、オーバークラッド層の厚み(コアからの厚み)を15μmとした。また、上記ニッケルめっきからなる金属製補強層の弾性率は177GPaであった。なお、この弾性率は、弾性率測定機(マツザワ社製、MMT−X7)を用いて測定した。
【0042】
〔アンダークラッド層およびオーバークラッド層〕
ここで、上記アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料は、脂肪変性エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON EXA−4816)50重量部、脂環式二官能エポキシ樹脂(ダイセル社製、セロキサイド2021P)30重量部、ポリカーボネートジオール(ダイセル社製、プラクセルCD205PL)20重量部、光酸発生剤(アデカ社製、SP170)2重量部、乳酸エチル(武蔵野化学研究所社製)5重量部を混合することにより、調製した。
【0043】
〔コア〕
また、上記コアの形成材料は、o−クレゾールノボラックグリシジルエーテル(新日鉄住金化学社製、YDCN−700−10)50重量部、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル(大阪ガスケミカル社製、オグゾールEG)50重量部、光酸発生剤(アデカ社製、SP170)1重量部、乳酸エチル(武蔵野化学研究所社製)50重量部を混合することにより、調製した。
【0044】
〔光学素子の実装〕
上記実施例の光電気混載基板の実装用パッドに、受光素子(京セミ社製、フォトダイオードKPDG006HA1)を、超音波実装機フリップチップボンダー(パナソニックファクトリーソリューションズ社製、FCB3)を用いて実装した。その実装条件は、素子温度150℃、光電気混載基板の温度50℃、押圧荷重1.0N、超音波出力3.0W、実装時間0.5秒とした。そして、その受光素子が適正に作動することを確認した。このことから、実装不良がなく、受光素子が適正に実装されていたことがわかる。
【0045】
また、上記金属製補強層を、クロムめっきからなるもの(弾性率248GPa),コバルトめっきからなるもの(弾性率211GPa),マンガンめっきからなるもの(弾性率159GPa),白金めっきからなるもの(弾性率152GPa)に代えても、それぞれ、上記と同様の傾向を示す結果が得られた。さらに、上記金属製補強層の厚みを1μm,20μmに代えても、それぞれ、上記と同様の傾向を示す結果が得られた。
【0046】
また、上記表裏各面の銅製電気配線の厚みを5μm,15μmに代えても、上記と同様の傾向を示す結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の光電気混載基板は、光学素子等の素子の実装不良をなくす場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
E フレキシブル両面回路基板
M 金属製補強層
W 光導波路
1 絶縁層
2A,2B 電気配線
2a 実装用パッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7