特許第6245589号(P6245589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6245589水中構造物の防汚方法及び水中構造物防汚装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6245589
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】水中構造物の防汚方法及び水中構造物防汚装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 1/00 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   E02B1/00 301A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-19954(P2017-19954)
(22)【出願日】2017年2月6日
【審査請求日】2017年2月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517040146
【氏名又は名称】ブランテージ有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】赤星 達義
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−533957(JP,A)
【文献】 特開2012−036614(JP,A)
【文献】 特開2005−290502(JP,A)
【文献】 特開2003−278121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00
C02F 1/46− 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系全体として開回路となるように、パルス状の陽電圧を印加可能な電極と、水中構造物に被覆した導電性材料と、を接続し、前記電極が、前記導電性材料にパルス発生周期が略一定の前記パルス状の陽電圧のみを印加することを特徴とする、水中構造物の防汚方法。
【請求項2】
2つ以上の前記電極を、前記水中構造物に被覆した導電性材料と接続することを特徴とする、請求項1に記載の水中構造物の防汚方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法に用いるための水中構造物防汚装置であって、パルス発生周期が略一定のパルス状の陽電圧のみを発生するパルス発生回路及び、電極として、該パルス発生回路から発生したパルス状の陽電圧を印加可能な電極のみを備えることを特徴とする、水中構造物防汚装置。
【請求項4】
前記電極を2つ以上備えることを特徴とする、請求項3に記載の水中構造物防汚装置。
【請求項5】
さらに、電力供給手段として、太陽光発電装置を備えることを特徴とする、請求項3又は4に記載の水中構造物防汚装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中構造物の防汚技術に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶、港湾設備及び橋脚等の水中構造物は、海藻やフジツボ類等の生物が付着することで、機能低下及び機能障害を起こすことが知られている。
【0003】
特に、船舶においては、生物付着により水の抵抗が増大し、速力・燃費が低下することが懸念されている。また、付着した生物が船舶と共に移動することで、生物汚損の原因にもなる。
【0004】
生物付着のメカニズムは、以下のようになっている。
まず、水中の有機・無機物質が水中構造物に吸着し、皮膜を作る。この皮膜は、水中構造物表面の物理化学的性質を変化させ、微生物付着に好適な条件を作り出す。
【0005】
次に、この皮膜上へ棒状の初期バクテリアが付着し、その初期バクテリアから分泌された多糖類からなる細胞外ポリマーが、船底との隙間を架橋結合で結んで強固な付着が起こるようになる。
【0006】
そして、次にバクテリア、珪藻、その他の微小藻類及び原生動物などが付着し、微生物被膜を形成する。
最後に、その微生物被膜上に海藻やフジツボ類のような固着生物の幼生が付着する。
【0007】
水中構造物の防汚対策には、微生物被膜の形成、又は固着生物の幼生の付着を防ぐことが重要である。
【0008】
現在主流の水中構造物防汚方法として、自己研磨型防汚塗料(特許文献1、2)を塗布することが挙げられる。
自己研磨型塗料とは、亜酸化銅、シリコーン油等の防汚物質(殺生物剤)を含み、加水分解反応を起こす塗料である。
【0009】
この塗料を水中構造物に塗布し、水と接触させると、加水分解反応によって塗膜成分が溶け出し、防汚成分が流れ出すことで微生物被膜の生成を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−087117号公報
【特許文献2】特開2010−163369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、自己研磨型防汚塗料は、防汚成分が全部溶け出してしまえば再度塗布する必要があり、メンテナンスに手間と費用がかかってしまう問題があった。さらに、塗料を海中に流出させるという手法から、海洋汚染の原因となる可能性も懸念されている。
【0012】
そこで、本発明は、新規な水中構造物防汚技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、陽電圧を印加可能な電極と、導電性表面を有する水中構造物とを接触させることで、水中構造物への生物付着を抑制することができることを見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、陽電圧を印加可能な電極と、水中構造物の導電性表面とを接続する、水中構造物の防汚方法である。
本発明の防汚方法によれば、水中構造物への生物付着を抑制し、防汚することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記陽電圧がパルス電圧である。
このような形態とすることで、電極の消耗を抑え、生物付着を長時間抑制することが可能となる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記導電性表面が、水中構造物に被膜した導電性材料である。
このような形態とすることで、導電性の低い物質が表面にある水中構造物に対しても防汚効果を発揮することができ、かつ、電極の消耗を抑えることができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、2つ以上の前記電極を、前記導電性表面と接続する。
このような形態とすることで、防汚効果をより高めることができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、陰電圧を印加可能な電極を、前記導電性表面と電気的に接続しない。
【0019】
また、上記課題を解決する本発明は、パルス発生回路及び該パルス発生回路から発生したパルス状の陽電圧を印加可能な電極を備える水中構造物防汚装置である。
本発明は、水中構造物の生物付着を抑制し、防汚することができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記電極を2つ以上備える。
このような形態とすることで、より防汚効果を高めることができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、電力供給手段として、太陽光発電装置を備える。
このような形態とすることで、環境負荷及びコストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の防汚方法又は防汚装置によれば、水中構造物への生物付着を抑制し、防汚することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の水中構造物防汚装置の実施の形態を表わした図である。
図2】本発明の水中構造物の防汚方法を、表面に導電性の素材を有する水中構造物に適用した場合の実施の形態を表わした図である。
図3】本発明の水中構造物の防汚方法を、表面に導電性材料が被膜した水中構造物に適用した場合の実施の形態を表わした図である。
図4】本発明の水中構造物防汚装置におけるパルス発生回路の実体配線図の一例である。
図5】本発明における、パルス電圧の波形を表わした図である。
図6】海中における生物付着防止試験方法の模式図である。
図7】本発明の水中構造物の防汚方法を適用した場合と、適用しなかった場合の生物付着の比較を示した図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら詳しく説明を加える。なお、本発明の技術的範囲は以下の実施形態に限られない。
【0025】
本発明の水中構造物防汚装置10は、パルス発生回路20及び前記パルス発生回路20から発生したパルス状の陽電圧を印加可能な電極30を備える(図1参照)。
【0026】
前記パルス発生回路20としては、パルス電圧を発生させることができるものであれば、特に限定されず、デジタルIC及びアナログICの何れを用いてよい。
前記パルス発生回路20としては、図4に記載の実体配線図で示すパルス発生回路21を例示することができる。
なお、本発明においてパルス電圧とは、断続的に発生する電圧のことをいう。
【0027】
図4に記載の前記パルス発生回路21は、タイマIC60を備える。前記タイマIC60を備えることで、パルス電圧を発生させることが可能となる。
前記パルス発生回路21は、前記タイマIC60として「NE 555(Texas Instruments社製)」を用いているが、パルス電圧を発生させることができれば、特に限定されない。
前記タイマIC60に付されている一桁の数字は、1及び8が電源端子(GND及びVcc)、2がトリガー端子、3が出力端子、4がリセット端子、5がコントロールボルテージ端子、6がスレッショルド端子、7がタイミングコンデンサ放電端子を表わす。
【0028】
前記タイマIC60としては、バイポーラ構造及び相補型金属酸化膜半導体(COMS)構造の何れの構造のタイマICを用いてもよく、「TLC551(Texas Instruments社製)」、「TLC555(Texas Instruments社製)」、「HA17555(ルネサス エレクトロニクス社製)、「LM555(National Semiconductor社製)」、「LMC555(National Semiconductor社製)」、「NJM555(新日本無線株式会社製)」及び「MIC1555(Micrel Semiconductor社製)」等が例示できる。
【0029】
前記パルス発生回路21は、コンデンサ70及び電解コンデンサ71を備える。コンデンサ70及び電解コンデンサ71を備えることで、誤作動及び故障といったトラブルの原因となるノイズを除去することができる。
前記パルス発生回路21は、コンデンサ70としてセラミックコンデンサを、電解コンデンサ71としてアルミ電解コンデンサを用いているが、ノイズ除去効果を有しているものであれば、特に限定されない。
【0030】
前記コンデンサ70としては、プラスチックフィルムコンデンサ、スチロールコンデンサ、ポリエステルコンデンサ、ポリプロピレンコンデンサ、テフロン(登録商標)コンデンサ及びポリフェニレンスルファイドコンデンサ等を用いても構わない。
【0031】
前記電解コンデンサ71としては、アルミニウム固体電解コンデンサ、アルミニウム非固体電解コンデンサ、両極性電解コンデンサ、タンタル固体電解コンデンサ及びタンタル非固体電解コンデンサ等を用いることができる。
【0032】
前記パルス発生回路21は、チップLED80を備える。
チップLED80を備えることで、前記水中構造物防汚装置10の作動状態を判別することができる。
【0033】
前記パルス発生回路21は、整流ダイオード90を備える。
前記パルス発生回路21は、前記整流ダイオード90として、「S1M(Diotec Semiconductor社製)」を用いているが、整流効果及び電気の逆流防止効果を有しているものであれば、特に限定されない。
【0034】
整流ダイオード90としては、PNダイオード及びショットキーバリアダイオード等の、電子回路に一般的に用いられる整流ダイオードを用いることができ、「V06C(日立株式会社製)、「MIFE60(新電元工業株式会社製)」、「D1FE60(新電元工業株式会社製)」、「S30V80V(新電元工業株式会社製)」、「D1N60(新電元工業株式会社製)」、「DG1M3(新電元工業株式会社製)」、「D1FP3(新電元工業株式会社製)」等が例示できる。
【0035】
前記パルス発生回路21は、トランジスタ100及び101を備える。前記トランジスタ100及び101は、前記タイマIC60からの出力電圧の増幅に用いる。
【0036】
本発明において、前記トランジスタ100及び101としては、一般に電子回路に用いられるものであれば、特に限定されず、NPN型及びPNP型のいずれも用いることができる。また、前記トランジスタ100及び101は、同一であっても異なっていてもよい。
トランジスタは、一つ又は二つ以上備えてもよい。
【0037】
また、前記トランジスタ100及び101の代わりに、オペアンプを用いた増幅回路及び増幅用IC等を用いて、前記タイマIC60からの出力電圧の増幅を行ってもよい。
【0038】
前記パルス発生回路21は、抵抗器110、111、112、113、114及び115を備える。
抵抗器110、111、112、113、114及び115の抵抗値は、それぞれ120kΩ、1kΩ、3.9kΩ、2.7kΩ、33kΩ及び5.6kΩである。
抵抗器の数及びその抵抗値は、回路によって適宜選択することができる。
【0039】
前記パルス電圧の波形としては、一般的な矩形波のみならず、三角波、鋸歯状波及び正弦波、又はこれらの波形を組み合わせであってもよい(図5参照)。
【0040】
前記パルス発生回路20から発生するパルス状の陽電圧は、好ましくは0.01〜100V、より好ましくは0.1〜50V、さらに好ましくは1〜30Vである。
【0041】
前記パルス発生回路20から発生するパルス状の陽電圧のパルス発生周期は、好ましくは1〜300μs、より好ましくは30〜250μs、さらに好ましくは50〜200μs、特に好ましくは70〜150μsである。
【0042】
前記パルス発生回路20から発生するパルス状の陽電圧のパルス幅は、好ましくは0.1〜300μs、より好ましくは0.3〜100μs、さらに好ましくは0.5〜50μs、特に好ましくは1〜10μsである。
【0043】
前記パルス発生回路20から発生するパルス状の陽電圧のデューティー比は、好ましくは0.001〜0.5、より好ましくは0.003〜0.1、さらに好ましくは0.005〜0.08、特に好ましくは0.01〜0.05である。
【0044】
前記電極30としては、銀、白金、銅、鉄、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、スズ、若しくはこれら金属の合金(ステンレスなど)等の金属類、酸化金属、導電性カーボン及び導電性シリコーン等を用いることができる。
【0045】
前記電極と電導性表面を接続するためにボルトやナットなどの固定手段を用いる場合には、固定手段は、イオン化傾向が大きい金属類により構成されていることが好ましい。イオン化傾向の大きい金属類としては、鉄、亜鉛、アルミニウム、ニッケル及びスズ等の金属類が挙げられる。
これにより、前記電極や電導性塗料に優先して固定手段が腐蝕されるため、前記電極や電導性塗料の腐蝕を防ぐことができる。
【0046】
前記電極の形状は特に限定されず、棒状、平板状、球状、輪状等のいずれの形状であってもよい。
【0047】
図1に示す通り、本発明の水中構造物防汚装置10は、前記電極30を2つ以上備えることが好ましい。
前記電極30を1つだけ備えてもよいが、前記電極30を2つ以上備えることで、防汚効果をより高めることができる。
【0048】
前記電極を2つ以上備える形態において、各電極に印加されるパルス状の陽電圧の波形は、異なっていても同一でもよいが、同一であることが好ましい。
【0049】
図1に示す通り、本発明の防汚装置は電力供給手段40を備える。
電力供給手段40は、外部電源であってもよいし、前記水中構造物防汚装置10に内蔵されていてもよい。
【0050】
前記電力供給手段40としては、蓄電池、乾電池、ディーゼル式発電機、ガソリン式発電機、太陽光発電装置、水力発電装置、風力発電装置、人力発電装置、陸上電源等を備えることが好ましい。
環境負荷、コスト及び安定した電源供給の観点から、太陽光発電装置を備えることがより好ましい。
【0051】
本発明の防汚方法によれば、前記電極30と水中構造物51の導電性表面50を接続することで、水中構造物を防汚することができる(図2参照)。
本発明の防汚方法において、前記電極30に印加する電圧は、パルス電圧及び定電圧の何れでも構わない。
電極の消耗を抑えるために、パルス電圧であることが好ましい。
【0052】
本発明の防汚方法は、前記水中構造物51の導電性表面50に適用することができる。導電性表面には、導電性の素材により構成された水中構造物自体の表面の他、導電性材料により被覆された水中構造物の表面が含まれる。
【0053】
図3に示す通り、本発明の防汚方法は、導電性材料により被覆された水中構造物の表面に適用することが好ましい。
水中構造物の表面を導電性材料52により被膜することで、水中構造物の素材によらず本発明の防汚方法を適用することができる。また、導電性材料52により被覆された水中構造物の表面に本発明を適用することにより、導電性材料52自体が電極として作用し、前記電極30の消耗を抑えることができる。
【0054】
前記導電性材料52としては、導電性のあるものであれば特に限定されず、導電性物質のみからなる形態であってもよいし、また、導電性物質とその他の成分を含む組成物の形態であってもよい。
【0055】
導電性物質としては、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、亜鉛及びスズ等の金属類、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の酸化金属、導電性カーボン、導電性シリコーンなどが挙げられる。
【0056】
導電性物質を含む組成物としては、上述した導電性物質を含む導電性塗料などが挙げられる。
導電性の塗料は、導電性物質を常法により塗料に添加・混合することにより製造することができる。市販の塗料と導電性の添加剤を塗料に添加・混合することで製造してもよい。
市販の塗料としては「シージェット033(中国塗料社製)」等が挙げられ、市販の導電性の添加剤としては「SHELLCUT(大京建機株式会社製)」等が例示できる。
【0057】
また、導電性塗料としては、市販のものを用いることができる。市販の導電性塗料としては、例えば、「エレアース EAM(江古川合成株式会社製)」、「エレアース EAU(江戸川合成株式会社製)」等が挙げられる。
【0058】
前記導電性材料52としては、処理が簡易であることから、導電性塗料を用いることが好ましい。
【0059】
導電性材料52としては、水に不溶なものを用いることが好ましい。
【0060】
本発明の防汚方法の適用対象である水中構造物51としては、水と接している部分がある構造物であれば特に限定されず、例えば、船舶、港湾設備、橋脚、浮桟橋、配管、浮き灯台、ブイ等が挙げられる。
【0061】
図2及び図3に示す通り、本発明の防汚方法は、2つ以上の前記電極30を前記導電性表面50と接触させることが好ましい。
2つ以上の前記電極30を前記導電性表面50と接続させることで、より防汚効果を高めることができる。
【0062】
本発明の防汚方法においては、陰電圧を印加可能な電極を、前記導電性表面と電気的に接続しないことが好ましい。
すなわち、本発明の好ましい形態では、陽電圧を印加可能な電極のみを、前記導電性表面と接続することが好ましい。
言い換えれば、本発明の防汚方法は、系全体として開回路となっていることが好ましい。
【0063】
前記電極30と、前記導電性表面50を接続させる方法としては、ボルト及びナットなどの固定手段を用いて固定する方法、前記電極30を前記水中構造物51に接触させ、その上から導電性材料52を塗布する方法等が例示できる。また、直接接続させる方法以外にも、非接触で電気的に接続(非接触通電)させてもよい。
【実施例】
【0064】
<試験例>海中における生物付着防止試験
導電性カーボンセラミックを含む導電性塗料をプラスチック板に塗布し、12Vの外部電源、図4の実体配線図で示されるパルス発生回路及び2つのアルミニウム電極を備える水中構造物防汚装置(出力電圧:4.2V、パルス発生周期:100μs、パルス幅:3.5μs、デューティー比、0.035、出力波形:方形波)の前記2つのアルミニウム電極を、前記プラスチック板の導電性塗料塗布部に接続した。前記アルミニウム電極を接続したプラスチック板を海中に1か月間放置し、生物付着の様子を調べた(実施例、図6参照)。
また、比較例として、導電性カーボンセラミックを含む導電性塗料を塗布したプラスチック板を、前記水中構造物防汚装置を用いずに、実施例と同時期、同期間、海中に放置した。
結果を図7に示す。
【0065】
図7に示すように、本発明の防汚技術を適用した実施例においては、生物付着がほとんど起こらなかった。
この結果より、本発明は優れた防汚効果を発揮することが分かった。
【0066】
また、図7に示す結果は、電気を通さない絶縁体であるプラスチックであっても、導電性材料を被膜し、本発明の防汚方法を適用することで、防汚が可能であることがわかった。
これは、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を素材として製造されたFRP船等の、導電性が無い又は極めて低い水中構造物においても、本発明の防汚方法が適用可能であることを示している。
【0067】
また、本実施例において、陰電圧を印加可能な電極を、導電性塗料と電気的に接続しておらず、つまり系全体として開回路となっている。
すなわち、本発明の防汚方法は、陰電圧を印加可能な電極を、水中構造物の導電性表面と電気的に接続しなくとも、水中構造物の防汚をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、水中構造物の防汚対策に用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
10 水中構造物防汚装置
20 パルス発生回路
21 パルス発生回路
30 電極
40 電力供給手段
50 水中構造物自体の導電性表面
51 水中構造物
52 導電性材料
60 タイマIC
70 コンデンサ
71 電解コンデンサ
80 チップLED
90 整流ダイオード
100 トランジスタ
101 トランジスタ
110 抵抗器
111 抵抗器
112 抵抗器
113 抵抗器
114 抵抗器
115 抵抗器
【要約】
【課題】新規な水中構造物防汚技術を提供することを課題とする。
【解決手段】陽電圧を印加可能な電極30と、水中構造物51の導電性表面50に接続することを特徴とする、水中構造物の防汚方法。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7