特許第6245591号(P6245591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6245591
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】食品製造方法及び食品製造ライン
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20171204BHJP
   A21D 13/30 20170101ALI20171204BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20171204BHJP
   A23G 3/50 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   A23L5/00 F
   A21D13/30
   A21D13/80
   A23G3/00 102
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-99599(P2017-99599)
(22)【出願日】2017年5月19日
【審査請求日】2017年5月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591070266
【氏名又は名称】谷沢菓機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷沢 修次
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−516586(JP,A)
【文献】 特開2005−000124(JP,A)
【文献】 特開2002−171912(JP,A)
【文献】 特開2015−149940(JP,A)
【文献】 特開平11−276077(JP,A)
【文献】 特表2015−500629(JP,A)
【文献】 特開2007−195547(JP,A)
【文献】 特開平04−299936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00
A21D 13/30
A23G 3/50
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A片本体とB片本体とを間接的に包餡型中味材によって溶着した菓子を含む食品の食品製造方法であって、
少なくとも一方は、前記餡が浸透する性質のA片本体とB片本体とを準備する準備ステップと、
少なくとも前記餡が浸透する性質のA片本体又は/及びB片本体の少なくとも一面に前記餡が浸透しない性質の食用材料である非浸透材を塗布する非浸透材塗布ステップと、
非浸透材が塗布されたA片本体又は/及びB片本体に所定の溶解状態の包餡型中味材であって包み材料は、前記非浸透材が塗布されていないA片本体又はB片本体に浸透しない性質の食用材料から構成されるものをデポジットするデポジットステップと、
包餡型中味材がデポジットされかつ固形化する前に、包餡型中味材がデポジットされたA片本体又はB片本体にデポジットされた包餡型中味材を介して間接的にB片本体又はA片本体を載置する載置ステップと、を有し、
前記デポジットステップは、包餡型中味材を不完全包餡としてデポジットするための調整サブステップを有する食品製造方法。
【請求項2】
非浸透材は常温で固形であり、前記デポジットステップは、非浸透材が固形化したのちに行われる請求項1に記載の食品製造方法。
【請求項3】
前記包餡型中味材の包み材料は常温で固形であり、前記載置ステップののちに全体の温度を常温以下に冷やす冷却ステップをさらに有する請求項1又は請求項2に記載の食品製造方法。
【請求項4】
前記包餡型中味材の餡は常温で非固形である請求項1から請求項のいずれか一に記載の食品製造方法。
【請求項5】
デポジットステップは、A片本体又はB片本体に所定の溶解状態の包餡型中味材を上から包餡型中味材がつのを残すようにデポジットするサブデポジットステップをさらに有する請求項1から請求項のいずれか一に記載の食品製造方法。
【請求項6】
A片本体とB片本体とを間接的に包餡型中味材によって溶着した菓子を含む食品の食品製造ラインであって、
少なくとも前記餡が浸透する性質のA片本体又は/及びB片本体の少なくとも一面に前記餡が浸透しない性質の食用材料である非浸透材を塗布する非浸透材塗布装置と、
非浸透材が塗布されたA片本体又は/及びB片本体に所定の溶解状態の包餡型中味材であって包み材料は、前記非浸透材を塗布されていないA片本体又は/及びB片本体に浸透しない性質の食用材料から構成されるものをデポジットするデポジッターと、
包餡型中味材がデポジットされかつ固形化する前に、A片本体又はB片本体にデポジットされた包餡型中味材を介して間接的にB片本体又はA片本体を載置する載置装置と、を有し、
前記デポジッターは、包餡型中味材を不完全包餡としてデポジットするための調整手段を有する食品製造ライン。
【請求項7】
非浸透材は常温で固形であり、前記デポジッターは、非浸透材が固形化したのちに包餡型中味材をデポジットする請求項に記載の食品製造ライン。
【請求項8】
前記包餡型中味材の包み材料は常温で固形であり、前記載置装置の下流に全体の温度を常温以下に冷やす冷却装置をさらに有する請求項6又は請求項7に記載の食品製造ライン。
【請求項9】
前記包餡型中味材の餡は常温で非固形である請求項6から請求項8のいずれか一に記載の食品製造ライン。
【請求項10】
デポジッターは、A片本体又はB片本体に所定の溶解状態の包餡型中味材を上から包餡型中味材がつのを残すようにデポジットするサブデポジット手段をさらに有する請求項6から請求項9のいずれか一に記載の食品製造ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にビスケットやクッキーなどの菓子片にチョコレートやクリームなどの流動性を有する中味をサンドしてなる菓子(以下、サンド菓子という)の製造方法及び製造ラインに関し、とくに包餡型の中味をサンドしてなるサンド菓子の製造方法及び製造ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサンド菓子において中味は、例えばチョコレートやクリームなどの一種類のものに限られていた。しかし、近年では、包餡型の中味をサンドした菓子が出回り人気を博している。包餡型の中味は、例えば、餡(センターともいう)に流動性のあるフルーツソースやリキュールソースなどを用い、その餡を常温時に固化して外殻となるチョコレートなどにより完全に包み込んで形成される。
【0003】
このような包餡型中味をサンドする菓子として、特許文献1に記載のサンド菓子がある。係るサンド菓子は、薄板状のチョコレートの内部に平状の収容室を形成するとともに、この収容室にラズベリーソース等の流動性を有するソースを充填した中味を製造し、その中味を薄焼きクッキーで挟んでなるサンド菓子である。
【0004】
かかるサンド菓子は、口中にさくっとしたクッキーの食感とチョコレートの味わいをもたらすとともに、チョコレートから流れ出るソースの風味も加わることで変化に富んだ美味をもたらす。
【0005】
ところで、このような流動性のある餡を包んでなる包餡型中味のサンド菓子製造においては、餡が完全に包まれるように中味を形成することが求められる。その理由を図8を用いて説明する。
【0006】
図10は、従来の包餡型中味をサンドしてなるサンド菓子の概念図である。図10(a)に示すように、従来のサンド菓子1000は、クッキーやビスケットなどの菓子片1001及び1002と、それらの菓子片にサンドされる包餡型中味1003とからなっている。また、包餡型中味は、図10(b)の断面図に示すように、固化しているチョコレートなどの包み材料1004と、その包み材料により全体が包まれているソースやジャムなどの餡1005とからなっている。
【0007】
ここで、サンド菓子の製造工程に何らかのトラブルが生じるなどして餡を包む包み材料が破れるなどした場合には、図10(c)に示すように、餡1006が包み材料1007から流出して菓子片1008に直に接することで、餡に含まれる水分や油脂が菓子片を湿らせてさくっとした風味が損なわれてしまう。また、菓子片の形態が損壊してしまう場合もある。このように、包餡が破れることにより好ましくない事態が生じるため、餡が完全に包まれるように中味を形成することが求められるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−88949号公報
【特許文献2】特開平11−276077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、流動性を有する餡を包む包餡型中味材をサンドする菓子などの食品の製造において、餡が菓子片に直に接することでさくっとした食感が損なわれることを防止するサンド菓子を製造することのできる製造方法や製造ラインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、以下の食品製造方法を提供する。すなわち、A片本体とB片本体とを間接的に包餡型中味材によって溶着した菓子を含む食品の食品製造方法であって、少なくとも一方は、前記餡が浸透する性質のA片本体とB片本体とを準備する準備ステップと、少なくとも前記餡が浸透する性質のA片本体又は/及びB片本体の少なくとも一面に前記餡が浸透しない性質の食用材料である非浸透材を塗布する非浸透材塗布ステップと、非浸透材が塗布されたA片本体又は/及びB片本体に所定の溶解状態の包餡型中味材であって包み材料は、前記非浸透材が塗布されていないA片本体又はB片本体に浸透しない性質の食用材料から構成されるものをデポジットするデポジットステップと、包餡型中味材がデポジットされかつ固形化する前に、包餡型中味材がデポジットされたA片本体又はB片本体にデポジットされた包餡型中味材を介して間接的にB片本体又はA片本体を載置する載置ステップと、を有する食品製造方法を提供する。
【0011】
また、上記の食品製造方法において、デポジットステップは、包餡型中味材を不完全包餡としてデポジットするための調整サブステップを有する食品製造方法を提供する。
【0012】
また、上記の食品製造方法において、非浸透材は常温で固形であり、前記デポジットステップは、非浸透材が固形化したのちに行われる食品製造方法を提供する。
【0013】
また、上記の食品製造方法において、前記包餡型中味材の包み材料は常温で固形であり、前記載置ステップののちに全体の温度を常温以下に冷やす冷却ステップをさらに有する食品製造方法を提供する。
【0014】
また、上記の食品製造方法において、前記包餡型中味材の餡は常温で非固形である食品製造方法を提供する。
【0015】
また、上記の食品製造方法において、デポジットステップは、A片本体又はB片本体に所定の溶解状態の包餡型中味材を上から包餡型中味材がつのを残すようにデポジットするサブデポジットステップをさらに有する食品製造方法を提供する。
【0016】
また、A片本体とB片本体とを間接的に包餡型中味材によって溶着した菓子を含む食品の食品製造ラインであって、少なくとも前記餡が浸透する性質のA片本体又は/及びB片本体の少なくとも一面に前記餡が浸透しない性質の食用材料である非浸透材を塗布する非浸透材塗布装置と、非浸透材が塗布されたA片本体又は/及びB片本体に所定の溶解状態の包餡型中味材であって包み材料は、前記非浸透材を塗布されていないA片本体又は/及びB片本体に浸透しない性質の食用材料から構成されるものをデポジットするデポジッターと、包餡型中味材がデポジットされかつ固形化する前に、A片本体又はB片本体にデポジットされた包餡型中味材を介して間接的にB片本体又はA片本体を載置する載置装置と、を有する食品製造ラインを提供する。
【0017】
また、上記の食品製造ラインであって、非浸透材は常温で固形であり、前記デポジッターは、非浸透材が固形化したのちに包餡型中味材をデポジットする食品製造ラインを提供する。
【0018】
また、上記の食品製造ラインであって、前記包餡型中味材の包み材料は常温で固形であり、前記載置装置の下流に全体の温度を常温以下に冷やす冷却装置をさらに有する食品製造ラインを提供する。
【0019】
また、上記の食品製造ラインであって、前記包餡型中味材の餡は常温で非固形である食品製造ラインを提供する。
【0020】
また、上記の食品製造ラインであって、B片載置装置の下流で一体化したA片、中味材、B片を冷却する全体冷却装置をさらに有する食品製造ラインを提供する。
【0021】
また、上記の食品製造ラインであって、デポジッターは、A片本体又はB片本体に所定の溶解状態の包餡型中味材を上から包餡型中味材がつのを残すようにデポジットするサブデポジット手段をさらに有する食品製造ラインを提供する。
【発明の効果】
【0022】
以上のような構成による本発明により、包餡型中味材をサンドする菓子などの食品において包まれていた餡が漏れ出たとしても、菓子片のさくっとした食感が損なわれることのないサンド菓子などを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1の食品製造方法の処理の流れを示すフロー図
図2】ワンショットデポジッターを用いて包餡型中味材をデポジットする態様の概念図
図3】実施形態1の各ステップを経て製造される菓子の一例を示す概念図
図4】実施形態1の各ステップを経て製造される菓子の他の例を示す概念図
図5】実施形態1の食品製造方法を食品製造ラインとして構成した一例を示す概念図
図6】実施形態2の食品製造方法の処理の流れを示すフロー図
図7】調整サブステップにて包餡型中味材を不完全包餡としてデポジットする態様を示す概念図
図8】不完全包餡の包餡型中味をサンドしたサンド菓子の他の態様を示す概念図
図9】実施形態3の食品製造方法の処理の流れを示すフロー図
図10】従来の包餡型中味をサンドしてなるサンド菓子の概念図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【0025】
なお、実施形態1は、主に請求項1、3−5、7、9−11などについて説明する。また、実施形態2は、主に請求項2、8などについて説明する。また、実施形態3は、主に請求項6、12などについて説明する。
<実施形態1>
<概要>
【0026】
本実施形態は、クッキーやビスケットのようにソースなどの餡が浸透する性質の菓子片で包餡型の中味をサンドするサンド菓子などの製造方法及び製造ラインであって、菓子片に餡が浸透しない性質の食用材料を塗布することを特徴とする。塗布された食用材料により菓子片の一面がコーティングされることで、製造時に包み材から餡が意図せず漏れ出たりした場合であっても餡と菓子片との直の接触が妨げられ菓子のさくっとした食感や風味を損なうことがないという効果を奏するものである。
<構成>
【0027】
本実施形態の方法は、A片本体とB片本体とを間接的に包餡型中味材によって溶着した菓子を含む食品を製造するための方法である。また、「A片本体」及び「B片本体」は、食品であって板状や片状に形成されるものである。例えば、菓子の場合には、クッキー、ビスケット、クラッカー、ラングドシャー、ラスク、パイ、シュー、タルト、ダックワーズ、煎餅などがある。菓子以外の食品としては、例えば、パン、ご飯を薄く延ばして板状に焼いたものなどが考えられる。
【0028】
図1は、本実施形態の食品製造方法の処理の流れを示すフロー図である。図示するように、本実施形態の食品製造方法は、準備ステップS0101と、非浸透材塗布ステップS0102と、デポジットステップS0103と、載置ステップS0104と、を有する。
【0029】
また、本実施形態の各機能的構成は、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせとして実現され得る。具体的には、コンピュータを利用するものであれば、CPUや主メモリ、バス、あるいは二次記憶装置(HDDやSSDなどの不揮発性メモリ、CDやDVDなどの記憶メディアとそれらメディアの読取ドライブなど)、情報入力に利用される入力デバイス、表示装置、ワンショットデポジッター、テンパリング装置、保温槽、チョコレート溶解タンク、チョコレートポンプ、ミキサー、バンドオーブン、搬送コンベア、整列装置、載置装置、製品押え装置、製品前揃い装置、製品排出装置などのハードウェア、またそれら各装置のインターフェース、通信用インターフェース、それらハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラム、ユーザインターフェース用アプリケーションなどが挙げられる。そして主メモリ上に展開したプログラムに従ったCPUの演算処理によって、入力デバイスやその他インターフェースなどから入力され、メモリやハードディスク上に保持されているデータなどが加工、蓄積されたり、上記各ハードウェアやソフトウェアを制御するための命令が生成されたりする。あるいは本システムの機能ブロックは専用ハードウェアによって実現されてもよい。
【0030】
また、本明細書に記載の各実施形態は装置として実現できるのみでなく、その一部または全部を方法としても実現可能である。また、このような装置の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに、そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるソフトウェア製品、及び同製品を固定した記録媒体も、当然に本明細書に記載の各実施形態の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である)。
【0031】
まず、準備ステップS0101は、少なくとも一方は、前記餡が浸透する性質のA片本体とB片本体とを準備するステップである。餡が浸透するということはA片本体やB片本体が有する隙間や細孔から餡を構成する液状成分が入り込むことをいい、とくに人の五感で感知し得ることをいう。例えば、浸透していない部分と浸透している部分との差異が肉眼で把握できたり、触れると湿気を感じたり軟らかさを感じたりする場合などは、該当箇所において餡が浸透しているといえる。
【0032】
A片本体とB片本体とは、一般的には同型の同じ食品(同じ型で焼き上げられたビスケットのように)であるが、異なる形や装飾が付与されていてもよいし、種類の異なる食品を組み合わせてもよい(バタークリーム味のクッキーとチョコレート味のクッキーのように)。
【0033】
また、A片本体及びB片本体には、それぞれ表面と裏面とがあるものとしてもよい。それぞれの菓子片の面において、包餡型中味材と接する面が裏面であり、包餡型中味材と接しない面を表面とする。そして、食品として完成した際に食品の表面を構成する菓子片の表面に、その食品の名称や装飾を施すことも好ましい。
【0034】
A片本体とB片本体の準備は、例えば、以下の各ステップを連続して行うための製造ラインにA片本体とB片本体とを置くことである。予め製造しておいたA片本体とB片本体とを人の手によって製造ラインに乗せてもよいし、オーブンなどのA片本体とB片本体を製造するための装置を製造ラインの上流に配置し、焼きあがったA片本体とB片本体とが、当該製造ラインに乗るようにしてもよい。
【0035】
非浸透材塗布ステップS0102は、少なくとも前記餡が浸透する性質のA片本体又は/及びB片本体の少なくとも一面に前記餡が浸透しない性質の食用材料である非浸透材を塗布するステップである。非浸透材における浸透が意図するところは上述の通りであり、A片本体やB片本体に餡が接した箇所においてA片本体やB片本体の表面の隙間や凸部分に餡がわずかに入り込んだとしても、見た目においても触れても餡がしみ込んでいることが分からない程度であれば非浸透といえる。また、A片本体やB片本体の当初の保水率から増加の割合が概ね10%以内である場合や、A片本体やB片本体に餡が深さ方向にしみ込む深さが1mm以内である場合には、非浸透といえる。
【0036】
非浸透材は、例えばチョコレートやバターなどのように油脂成分を含有する食用材料や、飴のように糖類を含有する食用材料がある。本ステップでは、これらの食用材料を加熱して溶解させてA片本体やB片本体の一面に塗布する。塗布された非浸透材は加熱を停止したり冷却することなどにより固化する。固化した非浸透材がA片本体やB片本体の一面をコーティングすることで餡がA片本体やB片本体と直に接することがなく餡が浸透することを妨げることができる。
【0037】
また、非浸透材の塗布には、加熱することによりA片本体やB片本体の一面に非浸透層が形成されるようにすることも含む。例えば、小麦粉や米粉などの穀物粉をペースト状にしてA片本体やB片本体の一面に塗布して加熱(焼成)して薄板状とすることで、非浸透層が形成されることになる。
【0038】
なお、非浸透材は常温において又は加熱後に常温に戻った際に固形である性状のものが好ましい。本実施形態で製造される菓子を含む食品は常温で喫食されるケースが多い。ソースやジャムは、その風味を口中に広く速やかに行き渡ることが望ましいため喫食される常温において液状又は少なくとも非固形であることが好ましい。
【0039】
デポジットステップS0103は、非浸透材が塗布されたA片本体又は/及びB片本体に所定の溶解状態の包餡型中味材であって包み材料は、前記非浸透材が塗布されていないA片本体又はB片本体に浸透しない性質の食用材料から構成されるものをデポジットするステップである。
【0040】
包餡型中味材は、餡を包み材料で包んでなるものである。餡の例としては、フルーツソース、キャラメルソース、チョコレートソース、フルーツジャムなどを挙げることができる。また、包み材料としてはチョコレート、バター、飴などのおよそ常温にて固化し、固化することでA片本体又はB片本体に浸透しない性質を有する食用材料を用いる。なお、包み材料をシェルともいう。
【0041】
A片本体への包餡型中味材のデポジットは、ワンショットデポジッターやダブルデポジッターと称される中味自動充装置により行うことができる。これらのデポジッターは包餡型中味材をデポジットすることができる。
【0042】
図2は、ワンショットデポジッターを用いて包餡型中味材をデポジットする態様の概念図である。図示するように、デポジッターのノズルを二層の同心円として内側とその外周とで二つの流路を構成したノズル0201を用いるデポジッターである。このようなノズルにより、中心の流路から押し出される餡0202を外周の流路から押し出される包み材料0203が包んだ状態でデポジットすることができる。このように形成される包餡型中味材を、非浸透材であるチョコレート0204が一面に塗布されたA片本体0205にデポジットする。
【0043】
包餡型中味材はデポジットの際に所定の溶解状態となるようにする。ソースやジャムを用いた餡は常温でも流動性を有するが、包み材料となるチョコレートなどは常温では固化するのでデポジットするために好ましい程度の溶解状態とする。例えば、加熱及び保温機能を備えるチョコレート溶解タンクにて包み材料となるチョコレートを35℃から45℃程度で貯留し、そこからポンプなどを用いてワンショットデポジッターに供給することでデポジットの際に所定の溶解状態とすることができる。
【0044】
なお、デポジットステップは先の非浸透材塗布ステップにて塗布された非浸透材が固形化したのちに行われることが好ましい。上述したように包餡型中味材のデポジットは通常包み材料が非浸透材が塗布されたA片本体の一面に接する態様で行われるが、この際に包み材料から餡が漏れ出てしまう場合が生じても、塗布された非浸透材がすでに固形化していれば漏れ出た餡に含まれる水分などがA片本体に浸透することがないからである。
【0045】
載置ステップS0104は、包餡型中味材がデポジットされかつ固形化する前に、包餡型中味材がデポジットされたA片本体又はB片本体にデポジットされた包餡型中味材を介して間接的にB片本体又はA片本体を載置するステップである。間接的に載置するとは、A片本体にB片本体を載せるにあたり両者の間に包餡型中味材を介在させるということである。
【0046】
デポジットされた包餡型中味材が固形化する前にB片本体を載置することで、包餡型中味材が満遍なくA片本体とB片本体との間に展延する。また、包餡型中味材の包み材料とB片本体とは、B片本体に非浸透材が塗布されている場合には、非浸透材は固形化するには至らない程度の温度の包み材料と接することで溶け、両者の界面にて溶け合った後に固形化する。それにより包餡型中味材と載置されたB片本体とが接着する。また、B片本体に非浸透材が塗布されていない場合には、溶けた状態の包み材料がB片本体に浸透はしないが接触面にある隙間や凹凸に入り込み、入り込んだ包み材料が冷えて固まることにより包み材料とB片本体とが接着する。
【0047】
図3は、上記各ステップを経て製造される菓子の一例を示す概念図である。図3(a)に示すように、本実施形態の食品である菓子0300は、非浸透材0301が塗布されたA片本体0302と非浸透材0303が塗布されたB片本体0304とで包餡型中味材0305を挟んでなる菓子である。また、図3(b)は、係る菓子の断面を示す概念図である。図示するように、包餡型中味材0305は、餡0306を包み材料0307で完全に包んだ態様となっている。
【0048】
図3(c)は、本実施形態の効果を示す概念図である。図示するように、本実施形態の製造方法によれば、例えば、デポジットされた包み材料が規定量に満たなかった場合が生じるなどして、包餡が不完全となり餡0308が包み材料0309から漏れ出たとしても、A片本体0310の一面には非浸透材0311が塗布されているため、漏れ出た餡がA片本体に到達することはなくA片本体を餡に含まれる水分等で濡らしてさくっとした食感を損ねることはない。
【0049】
また、図4は本実施形態の製法によるサンド菓子の他の例を示す図である。図4(a)に示すように、このサンド菓子は、A片本体0401やB片本体0402の直径よりも大きく展延するように包餡型中味材0403をサンドしている。また、図4(b)は、このサンド菓子の断面を示している。図示するように、包み材料0404は塗布された非浸透材に覆い被さっている。このように包餡型中味材がA片本体やB片本体からはみ出るようにすることで、サンド菓子に生じる応力が低下しA片本体、B片本体及び包餡型中味がより損壊しにくくなる。また、見た目において包餡型中味材のボリューム感が増して好ましい。
【0050】
また、本実施形態の食品の製造方法において、さらに冷却ステップを有するものとしてもよい。冷却ステップは、載置ステップののちに全体の温度を常温以下に冷やすステップである。包餡型中味材の包み材料が常温で固形である性状を有する場合には、冷却ステップにより包み材料が固形化することで包み材料と、A片本体、B片本体、塗布された非浸透材との溶着が堅固になる。
<食品製造ライン>
【0051】
本実施形態の食品製造方法に基づき、上述した各ステップを一連にて行うための食品の製造ラインとしても提供することができる。すなわち、A片本体とB片本体とを間接的に包餡型中味材によって溶着した菓子を含む食品の食品製造ラインであって、少なくとも前記餡が浸透する性質のA片本体及びB片本体の少なくとも一面に前記餡が浸透しない性質の食用材料である非浸透材を塗布する非浸透材塗布装置と、A片本体に所定の溶解状態の包餡型中味材であって包み材料は、前記A片本体又はB片本体に浸透しない性質の食用材料から構成されるものをデポジットするデポジッターと、包餡型中味材がデポジットされかつ固形化する前に、A片本体にデポジットされた包餡型中味材を介して間接的にB片本体を載置する載置装置と、を有する食品製造ラインを提供することができる。
【0052】
図5は、本実施形態の食品製造方法に基づき食品製造ラインとして構成を示す概念図である。この食品製造ラインは食品としてサンド菓子を製造するための物であり、上段の右から左に流れ、さらに下段の左から右へ流れる製造ラインである。なお、各装置間は複数の搬送コンベアなどを介在させて一連の処理がなされるが、すべての搬送コンベアを示すことは省略する。また、本製造ラインにおいてはA片本体とB片本体とは同じ菓子片であり、いずれの菓子片についてもその一面に非浸透材であるチョコレートが塗布される構成となっている。
【0053】
図示するように、まず、菓子片0501であるA片本体と及びB片本体は、搬送コンベア0502により搬送されながら整列装置0503により整列される。ただし、整列装置は本製造ラインにおける必須の手段ではない。また、さらに上流に菓子片を焼成するためのオーブンなどを備え、焼成された菓子片が自動で下流に搬送されるように構成してもよい。
【0054】
そして、非浸透材塗布装置0504によりA片本体及びB片本体はその一面に非浸透材であるチョコレートが塗布される。非浸透材塗布装置での塗布の態様は種々あり、A片本体及びB片本体をネットコンベア0506で搬送しつつ、チョコレート溶解タンク0505から供給され槽内に貯留した溶解状態のチョコレートの上面を這わせることで塗布したり、供給される溶解状態のチョコレートをA片本体及びB片本体の上面に掛けることで塗布してもよい。図示している非浸透材塗布装置では、A片本体及びB片本体の下面にチョコレートを塗布している。
【0055】
チョコレートが塗布されたA片本体及びB片本体はさらに搬送されクーリングトンネル0507の中を通過することで冷却され、塗布されたチョコレートは固形化する。ただし、クーリングトンネルなどの冷却装置を設けずに自然冷却によって塗布されたチョコレートが固形化する構成であってもよい。
【0056】
続いて、必須ではないが再度整列装置0508を経由して、反転装置0509によって搬送される菓子片のうちA片本体を反転させてチョコレートが塗布された面が上を向くようにする。なお、反転装置に代えて人の手によりA片本体を反転させてもよい。
【0057】
そして、デポジッター0510により所定の溶解状態の包餡型中味材がA片本体にデポジットされる。このデポジッターは、図3を用いて説明したようなワンショットデポジッターであり、チョコレート溶解タンク0511から供給される包み材料となる溶解状態のチョコレートと、保温タンク0512から供給される餡となるソースなどとを包餡状態でデポジットする。
【0058】
そして、デポジットされた包餡型中味材が固形化する前にB片本体が載置装置0513により吸引保持されA片本体にデポジットされた包餡型中味材に載置される。B片本体が載置されたあとに、A片本体、包餡型中味材、B片本体と重ねられたサンド菓子を押して一体化を促すための装置を設けてもよい。
【0059】
そして、載置装置の下流において重ねられたサンド菓子の全体の温度を常温以下に冷やす冷却装置0514を設けることも好ましい。包み材料が常温以下の温度になることにより固形化するため、包餡状態が確かなものになるとともにA片本体、B片本体、またはそれらに塗布された非浸透材との溶着が堅固になる。
<効果>
【0060】
以上のような構成による本発明により、流動性を有する餡が包み材料から漏れ出た場合でも、菓子片などの食品のさくっとした食感が損なわれることを防止することができる。
<実施形態2>
<概要>
【0061】
本実施形態は、実施形態1を基本とし、餡が包み材料に完全に包まれない態様にてデポジットしてサンド菓子などの食品を製造する方法である。
<構成>
【0062】
図6は、本実施形態の食品製造方法の処理の流れの一例を示すフロー図である。図示するように、本実施形態の食品製造方法は、準備ステップS0601と、非浸透材塗布ステップS0602と、デポジットステップS0603と、載置ステップS0604と、を有し、デポジットステップはさらに調整サブステップS0605を有する。デポジットステップが有する調整サブステップ以外の各ステップについては、実施形態1において説明したので、重ねての説明は省略する。
【0063】
調整サブステップS0605は、包餡型中味材を不完全包餡としてデポジットするためのステップである。図7は、調整サブステップにて包餡型中味材を不完全包餡としてデポジットする態様を示す概念図である。図2で示したものと同様に二層の同心円の内側とその外周とで二つの流路を構成したノズル0701を用いるデポジッターによりデポジットする。ここで、図7(a)に示すように、外周の流路から注出される包み材料0703の注出時間を中心の流路から注出される餡0702の注出時間より短くするなどする。このように包み材料と餡のそれぞれの注出量を調整し、図7(b)に示すように、一回のデポジットにおいて包み材料で餡を包みきれないようにして不完全包餡0704とする。
【0064】
図7(c)は、不完全包餡の包餡型中味をサンドしたサンド菓子を示している。餡0705は包み材料0706に完全に包まれてはいない。一方、B片本体0707には非浸透材0708が塗布されているため餡がB片本体に直に触れることはなくB片本体が餡により湿りさくっとした食感が損なわれることがない。
【0065】
また、従来のサンド菓子のように餡を包み材料で完全に包餡しなければならないという制約がなくなるため、餡と包み材料の割合をより自由に設定することができ、多様な味のサンド菓子を提供することが可能になる。
【0066】
図8は、不完全包餡の包餡型中味をサンドしたサンド菓子の他の態様を示す概念図である。図8(a)に示すように、この菓子における包餡型中味材は上側において包み材料0801が餡0802を包み切れていない状態で菓子片0803が載置されている。そして、載置されている菓子片は、中央部分が抜かれたドーナツ形状になっている。図8(b)はこの菓子を上から視た図である。図示するように、ドーナツ形状の菓子片0804の抜かれた孔から餡0805が見えるようになっている。このようなサンド菓子を餡の種類を様々に変えて作ることで、餡の種類を視認することができる。
<食品製造ライン>
【0067】
本実施形態の食品製造方法に基づき、上述した各ステップを一連にて行うための食品の製造ラインとしても提供することができる。すなわち、実施形態1の食品製造ラインにおいて、デポジッターは、包餡型中味材を不完全包餡としてデポジットするための調整手段を有する食品製造ラインを提供することができる。
【0068】
実施形態1において、図5を用いて説明した食品製造ラインに準じて本実施形態の食品製造ラインを実現することができる。また、デポジッターが有する調整手段は、ワンショットデポジッターにおいて餡と包み材料の注出量を調整する機能を備えればよく、公知の技術により実現することができる。
<効果>
【0069】
本実施形態によれば、餡と包み材料の割合をより自由に設定した中味をデポジットすることができ、多様な味の食品を提供することが可能となる。
<実施形態3>
<概要>
【0070】
本実施形態は実施形態1又は2を基本とし、デポジットステップにおいて包餡型中味材がつのを残すようにデポジットすることを特徴とする。
<構成>
【0071】
図9は、本実施形態の食品製造方法の処理の流れの一例を示すフロー図である。図示するように、本実施形態の食品製造方法は、準備ステップS0901と、非浸透材塗布ステップS0902と、デポジットステップS0903と、載置ステップS0904と、を有し、デポジットステップはさらにサブデポジットステップS0905を有する。デポジットステップが有するサブデポジットステップ以外の各ステップについては、実施形態1又は2において説明したので、重ねての説明は省略する。
【0072】
サブデポジットステップS0905は、デポジッターステップは、A片本体に所定の溶解状態の包餡型中味材を上から包餡型中味材がつのを残すようにデポジットするステップである。
【0073】
「つの」は、デポジッターのノズルから注出されてノズルの口締により注出が停止したときに包餡型中味材の中央あたりに生じる突起のことをいう。コーンに抽出した送付とクリームの先端と同様である。つのを残すようにするためにはとくに包み材料の溶解状態を適宜調整すればよい。すなわち、溶解が進みすぎると流動性が強くなり生じたつのが直ちに消えてしまうので、流動性が強くなりすぎない程度の溶解状態にある包み材料をデポジットすればよい。
【0074】
つのが残るようにデポジットすることにより、後の載置ステップの際に包餡型中味材の上にB片本体が載せられることによる圧力がこのつのに集中し、包餡型中味材とB片本体との溶着がより確実になされることになる。
<製造ライン>
【0075】
本実施形態の食品製造方法における各ステップを行うための食品の製造ラインを提供することができる。すなわち、実施形態1又は2の食品製造ラインにおいて、デポジッターは、A片本体に所定の溶解状態の包餡型中味材を上から包餡型中味材がつのを残すようにデポジットするサブデポジット手段をさらに有する食品製造ラインを提供することができる。
【0076】
図4を用いて説明した実施形態1の食品製造ラインに準じて本実施形態の食品製造ラインを実現することができる。また、デポジッターが有するサブデポジット手段は、ワンショットデポジッターに供給され注出される包み材料の溶解の程度を調整する(温度調整など)機能を備えればよく、公知の技術により実現することができる。また、デポジッターから載置装置までの搬送コンベアの距離や搬送速度などを併せて調整して、B片本体が載置されるときにつのが残るようにすることが好ましい。
<効果>
【0077】
以上のような構成による本発明により、デポジットされた包餡型中味材と載置されるB片本体との溶着がより確実になされる。
【符号の説明】
【0078】
S0101 準備ステップ
S0102 非浸透材塗布ステップ
S0103 デポジットステップ
S0104 載置ステップ
【要約】
【課題】流動性を有する餡を包む包餡型中味材をサンドする菓子などの製造において、餡が菓子片に直に接することでさくっとした食感が損なわれることを防止することを課題とする。
【解決手段】係る課題を解決するために、菓子片を間接的に包餡型中味材によって溶着した菓子を含む食品の食品製造方法であって、少なくとも前記餡が浸透する性質のA片本体又は/及びB片本体の少なくとも一面に前記餡が浸透しない性質の食用材料である非浸透材を塗布し、非浸透材が塗布されたA片本体又は/及びB片本体に所定の溶解状態の包餡型中味材であって包み材料は、前記非浸透材が塗布されていないA片本体又はB片本体に浸透しない性質の食用材料から構成されるものをデポジットするデポジットステップすることを特徴として含む食品製造方法などを提供する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10