(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、
図1乃至
図16に示された一実施の形態、
図17に示された他の実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0023】
(エンジンアシスト装置のシステム)
図2は、油圧ショベルをベースマシンとするマグネット作業用の作業機械HEを示し、この作業機械HEは、下部走行体1と、この下部走行体1に旋回可能に設けた上部旋回体2とにより機体Bを構成し、この上部旋回体2に作業装置としてのフロント作業装置Fを搭載する。このフロント作業装置Fは、上部旋回体2にブーム3の基端を上下方向回動可能に軸支し、このブーム3の先端にアーム4を回動自在に軸結合し、このアーム4の先端にアタッチメント(リフティングマグネット)5を回動自在に軸結合している。フロント作業装置Fのブーム3はブームシリンダ3aにより回動し、アーム4はアームシリンダ4aにより回動し、アタッチメント5は、本来はバケット回動用のバケットシリンダ5aにより回動する。
【0024】
図1は、機体Bおよびフロント作業装置Fに対して設けられた制御装置Cの主として油圧システムの構成を示し、この
図1には、上部旋回体2に搭載したエンジン6によって駆動するメインポンプとしてのフロントポンプ7およびリアポンプ8(以下、これらをメインポンプ7,8という)と、これらのメインポンプ7,8から作動油の供給を受ける油圧アクチュエータの一部(ブームシリンダ3a、上部旋回体2を旋回駆動する旋回モータ9)とを示す。
【0025】
メインポンプ7,8の吐出口には、これらのメインポンプ7,8から吐出された作動油をコントロール弁(図示せず)により方向制御してブームシリンダ3a、アームシリンダ4a、バケットシリンダ5a、旋回モータ9および走行モータ(図示せず)などの各種油圧アクチュエータに供給するメインポンプ回路(図示せず)が接続されている。
【0026】
エンジン6またはメインポンプ7,8には、ポンプとモータの両機能を有する可変容量式のアシストポンプ10を連結する。このアシストポンプ10から吐出した圧油と、ブームシリンダ3aおよび旋回モータ9から放出した圧油とが合流する通路には、これらの圧油を蓄圧することでエネルギを蓄えるアキュムレータ11を設ける。
【0027】
アシストポンプ10の出口側の通路は、この出口側の通路をタンク23に開放することが可能なアンロード弁12に接続し、また、アキュムレータ11とアシストポンプ10の入口側とを連通可能な通路中には、アキュムレータ11に蓄圧(チャージ)した圧油をアシストポンプ10の入口側に供給するためのアキュムレータ再生弁13を設ける。これらのアンロード弁12およびアキュムレータ再生弁13は、オン・オフ電気信号により開閉操作される電磁弁である。
【0028】
ブームシリンダ3aのヘッド側端とアキュムレータ11との間の通路中には、図示しないブーム下げパイロット圧により切り換えることで、ブームシリンダ3aのヘッド室の圧油をアキュムレータ11に供給できるブーム再生弁14を設ける。このブーム再生弁14は、電磁弁(図示せず)からのパイロット圧によりパイロット操作される開閉弁である。
【0029】
旋回モータ9の左右ポート間には1対のチェック弁により構成した高圧選択弁15を設け、この高圧選択弁15のチェック弁間から引き出した通路中に、ブレーキ圧を保持しながらアキュムレータ11に蓄圧するためのシーケンス弁16およびチェック弁24を設ける。
【0030】
メインポンプ7,8は、容量可変用の斜板を備え、その斜板角をポンプレギュレータなどの斜板角調整部7θ,8θにより調整することでポンプ容量を可変制御するものであり、これらの斜板角調整部7θ,8θには、パワーシフト用電磁比例弁17の出力回路を接続する。この電磁比例弁17は、入力される電気信号に比例する油圧を斜板角調整部7θ,8θに出力し、ポンプ容量を可変制御することでメインポンプ7,8のトルクを調整する。
【0031】
アシストポンプ10は、容量可変用の斜板を備え、その斜板角を斜板角調整部10φにより調整することでポンプ容量またはモータ容量を可変制御するものであり、この斜板角調整部10φは、電気信号により比例動作する。
【0032】
ブームシリンダ3aのヘッド側端とブーム再生弁14との間の通路中にチェック弁18を設け、ブーム再生弁14とアシストポンプ10の入口側との間の通路中にチェック弁19を設け、ブーム再生弁14とアキュムレータ11との間の通路中にチェック弁20を設け、アシストポンプ10の出口側とアキュムレータ11との間の通路中にチェック弁21を設け、タンク23からアシストポンプ10の入口側に油を供給するための通路中にチェック弁22を設け、これらのチェック弁18〜22により逆流を防止する。
【0033】
30は、エンジンアシストシステムを制御するアシストポンプ制御手段としてのマシンコントローラであり、このマシンコントローラ30に、エンジン6を制御するエンジン制御手段としてのエンジンコントローラ31を双方向通信可能に接続する。
【0034】
マシンコントローラ30の入力側には、エンジン回転数およびエンジン設定トルクを設定するためのアクセル手段としてのアクセルダイヤル32と、メインポンプ7,8の吐出圧力を検出するポンプ圧センサ33,34と、メインポンプ7,8の斜板角を検出するポンプ斜板角センサ35,36と、アキュムレータ11が有するアキュムレータ圧Pacを検出するアキュムレータ圧検出手段としてのアキュムレータ圧センサ37と、アシストポンプ10の入口および出口の圧力を検出するアシストポンプ入口圧センサ38およびアシストポンプ出口圧センサ39とを接続する。
【0035】
また、エンジンコントローラ31の入力側には、エンジン実回転数Neを検出するエンジン回転数センサ40と、エンジン実トルクTeaを検出するエンジン実トルク取得手段としてのエンジントルクセンサ41とを接続する。なお、エンジン実トルク取得手段としては、トルクセンサ41に限定されるものではなく、エンジンコントローラ31によってエンジン6の燃料噴射量、吸気圧などからエンジン実トルクTeaを推定する演算手段も含まれる。
【0036】
このエンジンコントローラ31の出力側は、エンジン6の燃料供給系の燃料噴射装置、吸排気系および始動制御系などの各制御部に接続し、例えば燃料噴射装置の燃料噴射タイミングや燃料噴射量などを電子制御し、後述するエンジン目標トルクTetに応じてエンジン実トルクTeaを制御する。
【0037】
前記マシンコントローラ30の入力側には、作業機械HEの各種油圧アクチュエータを制御するコントロール弁(図示せず)の各スプールをパイロット操作する操作パイロット圧Ppi(ブーム下げパイロット圧を除く)を検出することで作業機械HEの操作状態を検出する操作パイロット圧センサ42と、ブームシリンダ3aを収縮させる方向にパイロット操作するブーム下げパイロット圧Pbdを検出するブーム下げパイロット圧センサ43とを接続する。
【0038】
マシンコントローラ30の出力側は、メインポンプ7,8の斜板角調整部7θ,8θを制御するパワーシフト用電磁比例弁17と、アシストポンプ10の斜板を角度調整する際にアシストポンプ斜板角φを制御する斜板角調整部10φと、アンロード弁12およびアキュムレータ再生弁13の各ソレノイドと、ブーム再生弁14のパイロット操作用電磁弁(図示せず)とにそれぞれ接続する。
【0039】
そして、このマシンコントローラ30は、アシストポンプ斜板角φを制御することでそのポンプ容量を制御するとともに、アンロード弁12およびアキュムレータ再生弁13を制御することで、アシストポンプ10のモータ機能によってエンジン6をアシストするアシストモードと、アシストポンプ10のポンプ機能によってアキュムレータ11を蓄圧するチャージモードとを切り換える機能を備えている。
【0040】
次に、
図3は、制御装置Cの入出力信号をまとめたものである。
【0041】
この
図3において、マシンコントローラ30には、エンジン回転数を設定するためのアクセルダイヤル32から設定したアクセルダイヤル値Adが、ポンプ圧センサ33,34からメインポンプ圧としてのフロントポンプ圧Pfおよびリアポンプ圧Prが、ポンプ斜板角センサ35,36からフロントポンプ斜板角θfおよびリアポンプ斜板角θrが、アキュムレータ圧センサ37からアキュムレータ圧Pacが、アシストポンプ入口圧センサ38からアシストポンプ入口圧Pinが、アシストポンプ出口圧センサ39からアシストポンプ出口圧Poutが、操作パイロット圧センサ42から操作パイロット圧Ppiが、ブーム下げパイロット圧センサ43からブーム下げパイロット圧Pbdが、それぞれ入力される。
【0042】
エンジンコントローラ31には、エンジン回転数センサ40からエンジン実回転数Neが、エンジントルクセンサ41からエンジン実トルクTeaが、それぞれ入力され、さらに、このエンジンコントローラ31からマシンコントローラ30にエンジン実回転数Neおよびエンジン実トルクTeaの各データが送られ、マシンコントローラ30からエンジンコントローラ31に、アクセルダイヤル値Adに対応するエンジン設定回転数D6が送られる。
【0043】
一方、マシンコントローラ30から、アシストポンプ10の斜板角調整部10φにアシストポンプ斜板角φに関する制御信号が出力され、アンロード弁12およびアキュムレータ再生弁13にそれぞれの切換信号が出力され、パワーシフト用電磁比例弁17にパワーシフト用制御信号が出力される。
【0044】
次に、
図4は制御フローチャート、
図5は
図4の各演算タスクの関係を示す制御ブロック図、
図6〜
図11は各制御タスクの演算ブロック図を示し、これらの
図4〜
図11に基づいて制御システムの構成を説明する。
【0045】
なお、メインポンプ7,8のトルクは、アクセルダイヤル32で設定されるポンプ設定トルクと、操作レバーなどの操作量で決まる操作パイロット圧Ppiとに基づいて設定され、パワーシフト用電磁比例弁17を介して制御されるが、エンジンアシスト制御に直接関係しないので省略し、エンジンアシスト制御に関する構成のみについて説明する。
【0046】
(1) 全体制御フローチャートの説明
図4は、エンジンアシスト制御全体の制御フローチャートを示す。
【0047】
この制御フローチャートの入力処理タスクS1では、
図3に示された上記の入力信号を読み込む。
【0048】
メインポンプ負荷トルク演算手段としてのメインポンプ負荷トルク演算タスクS2では、
図5に示されるようにポンプ圧センサ33,34で検出されたメインポンプ圧Pf,Prと、ポンプ斜板角センサ35,36で検出されたメインポンプ斜板角θf,θrとによってメインポンプ負荷トルクD1を演算する。なお、このメインポンプ負荷トルクD1は、操作パイロット圧Ppiとメインポンプ圧Pf,Prとからメインポンプ負荷トルクD1を予測するようにしても良い。
【0049】
アシスト要求トルク演算タスクS3では、
図5に示されるようにメインポンプ負荷トルク演算タスクS2から出力されるメインポンプ負荷トルクD1などをもとにアシスト要求トルクD4を演算する。
【0050】
アシストポンプ斜板制御手段としてのアシストポンプ斜板制御タスクS4では、
図5に示されるようにアシスト要求トルク演算タスクS3から出力されるアシスト要求トルクD4およびアキュムレータ圧Pacなどにより、アシストポンプ斜板指令D5を演算する。
【0051】
バルブ制御タスクS5では、
図5に示されるようにアシスト要求トルク演算タスクS3から出力されるアシスト要求トルクD4およびブーム下げパイロット圧Pbdにより、アンロード弁12とアキュムレータ再生弁13の切換信号を出力する。
【0052】
要するに、アシストポンプ斜板制御タスクS4およびバルブ制御タスクS5では、アシスト要求トルクD4などにより、アシストポンプ10の容量(すなわちアシストポンプ斜板角φ)や、エンジン6のアシストモードとアキュムレータ11のチャージモードの切換を制御する。
【0053】
以下に、各制御演算タスクについて説明する。
【0054】
(2) メインポンプ負荷トルク演算タスクS2
図6は、メインポンプ負荷トルク演算タスクS2の演算ブロックを示す。このメインポンプ負荷トルク演算タスクS2には、ポンプ圧センサ33,34で検出されたフロントポンプ圧Pfおよびリアポンプ圧Prと、ポンプ斜板角センサ35,36で検出されたフロントポンプ斜板角θfおよびリアポンプ斜板角θrとが入力される。
【0055】
そして、フロントポンプ圧Pfとフロントポンプ斜板角θfに基づいてポンプトルク演算ブロック50によりフロント側のポンプトルクTpfが求められ、リアポンプ圧Prとリアポンプ斜板角θrに基づいてポンプトルク演算ブロック51によりリア側のポンプトルクTprが求められ、これらのフロント側およびリア側のポンプトルクTpf,Tprが加算器52で足し合わされ、メインポンプ負荷トルクD1として出力される。
【0056】
フロント側のポンプトルク演算ブロック50は、下記の式により演算して出力する。
【0057】
Tpf=Pf・θf・Dpm/(2π・ηt)
Dpm:フロントポンプ最大容量
ηt:トルク効率
【0058】
リア側のポンプトルク演算ブロック51は、下記の式により演算して出力する。
【0059】
Tpr=Pr・θr・Dpm/(2π・ηt)
Dpm:リアポンプ最大容量
ηt:トルク効率
【0060】
(3) アシスト要求トルク演算タスクS3
図7は、アシスト要求トルク演算タスクS3の演算ブロックを示し、この
図7において、アシスト要求トルク演算タスクS3には、アキュムレータ圧Pac、アクセルダイヤル32、操作パイロット圧Ppi、ブーム下げパイロット圧Pbd、エンジン実トルクTeaおよびメインポンプ負荷トルク演算タスクS2で算出されたメインポンプ負荷トルクD1が入力される。
【0061】
アシスト要求トルク演算タスクS3は、アシストトルク演算手段としてのアシストトルク演算タスク53とエンジントルクフィードバック制御手段としてのエンジントルクフィードバック制御タスク54から構成され、両タスク53,54の出力が加算器55で足し合わされアシスト要求トルクD4として出力される。
【0062】
図8は、アシストトルク演算タスク53の演算ブロックを示し、このアシストトルク演算タスク53は、メインポンプ負荷トルクD1にフィルタ処理を行なうローパスフィルタ56と、アクセルダイヤル32の信号をもとにエンジン設定トルクを出力するエンジン設定トルクテーブル57と、ローパスフィルタ56の出力とエンジン設定トルクテーブル57の出力を比較して小さい値を選択する最小値選択演算器(以下、Min演算器という)58とを備えたエンジン目標トルク演算手段としてのエンジン目標トルク演算タスク101を具備している。
【0063】
このエンジン目標トルク演算タスク101から出力されたエンジン目標トルクTetをメインポンプ負荷トルクD1から差し引くことでアシスト目標トルクTatを演算するアシスト目標トルク演算手段としての減算器59を備えている。
【0064】
そして、メインポンプ負荷トルクD1からローパスフィルタ56により平滑なトルク成分Тsmを分離してこの平滑なトルク成分Тsmとエンジン設定トルクTesとの最小値をMin演算器58により求めてエンジン目標トルクТetとし、このエンジン目標トルクТetを減算器59でメインポンプ負荷トルクD1から差し引くことによりアシスト目標トルクTatを演算する。
【0065】
さらに、このアシストトルク演算タスク53は、Min演算器58の出力をエンジン設定トルクテーブル57の出力で割ってエンジン負荷率Relを求める除算器60と、減算器59から出力されたアシスト目標トルクTatのプラス成分を抽出する下限リミッタ61と、マイナス成分を抽出する上限リミッタ62と、除算器60で求められたエンジン負荷率Relによってアシスト補正係数を出力する補正係数設定器としてのアシスト補正係数設定器63と、チャージ補正係数を出力する補正係数設定器としてのチャージ補正係数設定器64と、下限リミッタ61から出力されるアシスト目標トルクTatのプラス成分にアシスト補正係数設定器63の出力を掛け合わせる乗算器65と、上限リミッタ62から出力されるアシスト目標トルクTatのマイナス成分にチャージ補正係数設定器64の出力を掛け合わせる乗算器66と、乗算器65と乗算器66の出力を足し合わせる加算器67とを備えている。
【0066】
また、このアシストトルク演算タスク53は、操作パイロット圧Ppiの信号を反転させて機械操作でOFF、非操作でONの信号を出力するNOT演算器68と、NOT演算器68の出力とブーム下げパイロット圧Pbdの論理和を求めるOR演算器69とを備えている。このOR演算器69による論理和演算を、下記の表1にまとめる。
【0068】
さらに、このアシストトルク演算タスク53は、OR演算器69の出力によって切り換わる切換器70を備えている。この切換器70は、OR演算器69の出力がOFFのときは加算器67の出力を選択し、OR演算器69の出力がONのときはゼロ設定器71の出力「0」を選択する。
【0069】
図9は、エンジントルクフィードバック制御タスク54の演算ブロックを示し、アキュムレータ圧Pac、メインポンプ負荷トルクD1、アクセルダイヤル32、操作パイロット圧Ppi、ブーム下げパイロット圧Pbdおよびエンジン実トルクTeaが入力され、制御演算の出力としてアシスト補正トルクD3が出力される。
【0070】
エンジントルクフィードバック制御タスク54は、前記のローパスフィルタ56と同様のメインポンプ負荷トルクD1から平滑なトルク成分Тsmを分離して抽出するローパスフィルタ72と、前記のエンジン設定トルクテーブル57と同様のエンジン設定トルクテーブル73と、アキュムレータ圧Pacに基づいて補正トルクを出力する補正トルクテーブル74と、ローパスフィルタ72で処理された平滑なトルク成分Тsmと補正トルクテーブル74の出力を足し合わす加算器75と、エンジン設定トルクテーブル73の出力(エンジン設定トルクTes)と加算器75の出力を比較して小さい値を選択するMin演算器76と、Min演算器76から出力されたエンジン目標トルクTetにエンジン実トルクTeaをフィードバックして得た偏差信号ΔTを求める減算器77と、減算器77から出力された偏差信号ΔTをPID演算処理する制御演算器78とを備えている。
【0071】
さらにエンジントルクフィードバック制御タスク54は、操作パイロット圧Ppiの信号を反転するNOT演算器79と、OR演算器80とを備えている。NOT演算器79は、機械操作でOFF、非操作でONの信号を出力し、また、OR演算器80は、NOT演算器79の出力とブーム下げパイロット圧Pbdの論理和を求める。OR演算器80の出力は、前記の表1と同じで、制御演算器78は、OR演算器80の出力がONでリセットされる。制御演算器78の出力は、アシスト補正トルクD3として出力される。
【0072】
(4) アシストポンプ斜板制御タスクS4
図10は、アシストポンプ斜板制御タスクS4の演算ブロックを示し、アシストポンプ入口圧Pin、アシストポンプ出口圧Pout、アキュムレータ圧Pac、およびアシスト要求トルクD4が入力され、アシストポンプ斜板指令D5が出力される。
【0073】
このアシストポンプ斜板制御タスクS4は、アシストポンプ入口圧Pinとアシストポンプ出口圧Poutとのアシストポンプ差圧ΔPを演算するアシストポンプ差圧取得手段としての減算器81と、アシスト要求トルクD4のプラス成分を抽出する下限リミッタ82と、アキュムレータ圧Pacに基づいてアシスト上限トルクを設定するアシスト上限トルク設定器83と、下限リミッタ82の出力とアシスト上限トルク設定器83の出力を比較して小さい値を選択するMin演算器84と、アシスト要求トルクD4のマイナス成分を抽出する上限リミッタ85と、アキュムレータ圧Pacに基づいてチャージ上限トルクを設定するチャージ上限トルク設定器86と、上限リミッタ85の出力とチャージ上限トルク設定器86の出力を比較して大きい値を選択する最大値選択演算器(以下、Max演算器という)87とを備えている。
【0074】
さらに、このアシストポンプ斜板制御タスクS4は、Min演算器84の出力Tと減算器81から出力されるアシストポンプ差圧ΔPをもとにアシストポンプ10のエンジンアシストモードにおけるアシスト斜板角φasを演算するアシスト斜板角演算器88と、Max演算器87の出力Tと減算器81から出力されるアシストポンプ差圧ΔPをもとにアシストポンプ10のアキュムレータチャージモードにおけるチャージ斜板角φchを演算するチャージ斜板角演算器89とを備えている。
【0075】
アシスト斜板角演算器88は、アシストポンプ斜板角φ(アシスト斜板角φas)を下記の式により演算して出力する。
【0076】
Das=(2π・Tas)/(ΔP・ηmt)
φas=Min(0,Das/Dpm)
Dpm:アシストポンプ最大容量
ηmt:トルク効率
【0077】
チャージ斜板角演算器89は、アシストポンプ斜板角φ(チャージ斜板角φch)を下記の式により演算して出力する。
【0078】
Dch=(2π・ηpt・Tch)/ΔP
φch=Min(0,Dch/Dpm)
Dpm:アシストポンプ最大容量
ηpt:トルク効率
【0079】
そして、アシスト要求トルクD4のプラス/マイナスによってアシスト斜板角演算器88の出力(アシスト斜板角φas)とチャージ斜板角演算器89の出力(チャージ斜板角φch)を切り換える切換器90を備え、この切換器90からアシストポンプ10の斜板角調整部10φに対して、アシストポンプ斜板指令D5としてのアシストポンプ斜板角φ(アシスト斜板角φasまたはチャージ斜板角φch)が出力される。
【0080】
(5) バルブ制御タスクS5
図11は、バルブ制御タスクS5の演算ブロックを示し、このバルブ制御タスクS5には、アシストポンプ斜板制御タスクS4から出力されるアシスト要求トルクD4およびブーム下げパイロット圧Pbdが入力され、制御演算結果に基づきアンロード弁12およびアキュムレータ再生弁13の切換信号が出力される。
【0081】
このバルブ制御タスクS5は、アシスト要求トルクD4によって切り換わる切換器91と、OPEN出力器92と、CLOSE出力器93とを備えており、切換器91は、アシスト要求トルクD4≧0の場合はOPEN出力器92の信号を選択し、アシスト要求トルクD4<0の場合はCLOSE出力器93の信号を選択する。
【0082】
さらに、このバルブ制御タスクS5は、ブーム下げパイロット圧Pbdによって切り換わる切換器94と、OPEN出力器95とを備え、切換器94は、ブーム下げパイロット圧Pbd=ONの場合はOPEN出力器95の信号を選択し、ブーム下げパイロット圧Pbd=OFFの場合は切換器91の信号を選択し、アンロード弁12の指令として出力する。
【0083】
さらに、このバルブ制御タスクS5は、アシスト要求トルクD4によって切り換わる切換器96と、OPEN出力器97と、CLOSE出力器98とを備え、切換器96は、アシスト要求トルクD4>0の場合はOPEN出力器97を出力し、アシスト要求トルクD4≦0の場合はCLOSE出力器98を出力する。
【0084】
さらに、このバルブ制御タスクS5は、ブーム下げパイロット圧Pbdによって切り換わる切換器99と、CLOSE出力器100とを備えている。切換器99は、ブーム下げパイロット圧Pbd=ONの場合はCLOSE出力器100の信号を選択し、ブーム下げパイロット圧Pbd=OFFの場合は切換器96の信号を選択し、アキュムレータ再生弁13の指令として出力する。
【0087】
次に、
図4〜
図16に基づいて制御アルゴリズムとその作用および効果を説明する。
【0088】
先ず、
図5の制御ブロック図をもとに制御の大まかな流れについて説明する。
【0089】
メインポンプ圧Pf,Prおよびメインポンプ斜板角θf,θrをもとにメインポンプ負荷トルク演算タスクS2でメインポンプ負荷トルクD1が演算される。
【0090】
メインポンプ負荷トルクD1はアシスト要求トルク演算タスクS3に入力され、アシストトルク演算タスク53でアシストトルクD2、エンジントルクフィードバック制御タスク54でアシスト補正トルクD3が求められ、加算器55で足し合わされ、アシスト要求トルクD4として出力される。
【0091】
アシスト要求トルクD4は、アシストポンプ斜板制御タスクS4に入力され、アシストポンプ斜板指令D5としてのアシストポンプ斜板角φを求め、アシストポンプ10の斜板角調整部10φが制御される。またアシスト要求トルクD4はバルブ制御タスクS5に入力され、アンロード弁12およびアキュムレータ再生弁13の切換信号が出力され、アンロード弁12およびアキュムレータ再生弁13が制御される。
【0093】
(a) アシストトルク演算タスク53(
図8参照)
メインポンプ負荷トルクD1は、ローパスフィルタ56によってフィルタ処理され平滑なトルク成分Tsmが抽出される。アクセルダイヤル32から入力された信号(アクセルダイヤル値Ad)に基づいてエンジン設定トルクテーブル57でエンジン設定トルクTesが出力され、Min演算器58でローパスフィルタ56から出力された平滑なトルク成分Tsmと、エンジン設定トルクテーブル57から出力されたエンジン設定トルクTesとを比較して、小さい値がエンジン目標トルクTetとして選択される。
【0094】
さらに、減算器59で、メインポンプ負荷トルクD1と、Min演算器58から出力されたエンジン目標トルクTetとの差が求められ、メインポンプ負荷トルクD1の変動成分がアシスト目標トルクTatとして抽出される。
【0095】
図12のエンジンアシスト制御の特性図に上記の演算結果を示す。Min演算器58の出力はエンジン目標トルクTet、減算器59の出力はアシスト目標トルクTatに相当する。
【0096】
図12のアシスト目標トルクTatのプラス成分は、アシストポンプ10がモータ作用してエンジン6の駆動トルクを助成するトルク、アシスト目標トルクTatのマイナス成分は、エンジン6によってアシストポンプ10を駆動してポンプ作用してアキュムレータ11にチャージするトルクである。
【0097】
図8に戻って、除算器60でMin演算器58の出力(エンジン目標トルクTet)をエンジン設定トルクテーブル57の出力で割ってエンジン負荷率Relが求められる。また、下限リミッタ61で減算器59の出力(アシスト目標トルクTat)のプラス成分(モータ作用によるアシストトルク)、上限リミッタ62でマイナス成分(ポンプ作用によるチャージトルク)が抽出される。
【0098】
除算器60で求められたエンジン負荷率Relをもとにアシスト補正係数設定器63でアシスト補正係数が求められる。同様にして、チャージ補正係数設定器64でチャージ補正係数が求められる。
【0099】
アシスト補正係数設定器63は、
図13に示すようにエンジン負荷率Relが高いときはアシスト補正係数を高く、エンジン負荷率Relが低いときはアシスト補正係数を低くするように設定される。チャージ補正係数設定器64は、
図14に示すようにアシスト補正係数設定器63と逆の特性に設定される。
【0100】
乗算器65で下限リミッタ61から出力されるアシスト目標トルクTatのプラス成分にアシスト補正係数設定器63の出力が掛け合わされる。同様に乗算器66で上限リミッタ62から出力されるアシスト目標トルクTatのマイナス成分にチャージ補正係数設定器64の出力が掛け合わされる。乗算器65と乗算器66の出力は、加算器67で加算される。
【0101】
切換器70は、OR演算器69の出力がOFFのときは加算器67の出力を選択し、OR演算器69の出力がONのときはゼロ設定器71の出力「0」を選択する。OR演算器69の出力は、前記の表1のように設定されるので、ブーム下げ以外の機械操作状態のときはOFFとなり、加算器67の出力が選択され、また、ブーム下げ操作もしくは機械が非操作状態のときは、OR演算器69からONが出力され、ゼロ設定器71の出力「0」が選択される。
【0102】
アシストトルクD2が(+)のときは、モータ作用によるエンジンアシストモードであり、(−)のときは、ポンプ作用によるアキュムレータチャージモードである。
【0103】
(b) エンジントルクフィードバック制御タスク54(
図9参照)
ローパスフィルタ72でメインポンプ負荷トルクD1から平滑なトルク成分Тsmが抽出される。また、エンジン設定トルクテーブル73でエンジン設定トルクTesが出力され、補正トルクテーブル74でアキュムレータ圧Pacに基づいて補正トルクが出力される。補正トルクテーブル74は、
図15に示すようにアキュムレータ圧Pacが低くなると補正トルクが高くなるように設定される。
【0104】
ローパスフィルタ72で処理された平滑なトルク成分Тsmと補正トルクテーブル74の出力は、加算器75で足し合わされ、Min演算器76でエンジン設定トルクテーブル73の出力と加算器75の出力が比較され、小さい値が選択され、エンジン目標トルクTetとして出力される。
【0105】
減算器77で、Min演算器76から出力されたエンジン目標トルクTetと、エンジントルクセンサ41により検出されたエンジン実トルクTeaとの偏差信号ΔTが求められ、その偏差信号ΔTが制御演算器78でPID演算処理され、アシスト補正トルクD3が出力される。このアシスト補正トルクD3が(+)のときは、モータ作用によるエンジンアシストモードであり、(−)のときは、ポンプ作用によるアキュムレータチャージモードである。
【0106】
制御演算器78は、OR演算器80の出力がONでリセットされる。OR演算器80の出力は、
図8のOR演算器69と同様に前記の表1のように設定されるので、ブーム下げ以外の機械操作状態のときはOFFとなり、制御演算器78はアシスト補正トルクD3を出力し、また、ブーム下げ操作もしくは機械が非操作状態のときは、OR演算器80からON(リセット信号)が出力され、制御演算器78の出力はゼロになる。
【0107】
アシスト補正トルクD3が(+)のときは、モータ作用によるエンジンアシストモードであり、(−)のときは、ポンプ作用によるアキュムレータチャージモードである。
【0108】
このようにして求めたアシスト補正トルクD3が、
図7に示されるようにアシストトルクD2に加算されて、アシスト要求トルクD4となる。このアシスト要求トルクD4が(+)のときは、モータ作用によるエンジンアシストモードであり、(−)のときは、ポンプ作用によるアキュムレータチャージモードである。
【0109】
(c) アシストポンプ斜板制御タスクS4(
図10参照)
アシスト要求トルク演算タスクS3から出力されるアシスト要求トルクD4は、アシストポンプ斜板制御タスクS4に入力され、以下の演算にてアシストポンプ斜板指令D5としてのアシストポンプ斜板角φが求められる。
【0110】
減算器81で、アシストポンプ入口圧Pinとアシストポンプ出口圧Poutとのアシストポンプ差圧ΔPが演算される。下限リミッタ82でアシスト要求トルクD4のプラス成分が抽出される。アシスト上限トルク設定器83でアキュムレータ圧Pacに基づいてアシスト上限トルクが設定され、Min演算器84で下限リミッタ82の出力とアシスト上限トルク設定器83の出力が比較され、小さい値が選択される。
【0111】
同様にして、上限リミッタ85で、アシスト要求トルクD4のマイナス成分が抽出され、チャージ上限トルク設定器86で、アキュムレータ圧Pacをもとにチャージ上限トルクが設定され、Max演算器87で、上限リミッタ85の出力とチャージ上限トルク設定器86の出力が比較され、大きい値が選択される。
【0112】
アシスト斜板角演算器88で、Min演算器84の出力と減算器81から出力されるアシストポンプ差圧ΔPをもとにアシスト時のアシストポンプ斜板角指令値(アシスト斜板角φas)が演算される。同様に、チャージ斜板角演算器89で、Max演算器87の出力と減算器81から出力されるアシストポンプ差圧ΔPをもとに、チャージ時のアシストポンプ斜板角指令値(チャージ斜板角φch)が演算される。
【0113】
切換器90で、アシスト要求トルクD4のプラス/マイナスによってアシスト斜板角演算器88の出力とチャージ斜板角演算器89の出力が切換えられ、アシストポンプ斜板指令D5としてのアシストポンプ斜板角φ(アシスト斜板角φasまたはチャージ斜板角φch)が出力され、アシストポンプ10の斜板が制御される。
【0114】
(d) バルブ制御タスクS5(
図11参照)
図11のバルブ制御タスクS5の論理演算ブロックによって、アンロード弁12およびアキュムレータ再生弁13は、表2のように制御される。
【0115】
(e) まとめ
上記の作用によって、
図8に示されるように、ローパスフィルタ56によってメインポンプ負荷トルクD1から滑らかなトルクが抽出され、メインポンプ負荷トルクD1と前記の滑らかなトルクの差がアシストトルクD2となる。このアシストトルクD2はエンジンの負荷状態によって補正され、エンジン負荷率Relが高いときはアシストトルクを高め、エンジン負荷率Relが低いときはチャージトルクを高めるように調整される。
【0116】
図9に示されるように、前記の滑らかなトルクをエンジン目標トルクTetとし、エンジン実トルクTeaをフィードバックしてエンジン目標トルクTetとエンジン実トルクTeaとの偏差信号ΔTを求め、PID制御(比例・積分・微分制御)等によってアシスト補正トルクD3を求める。
【0117】
アシストトルクD2はフィードフォワード成分であり、アシスト補正トルクD3はフィードバック成分であり、
図7に示されるように、両者を足し合わして、アシスト要求トルクD4とし、アシストポンプ10の斜板を制御して、エンジン6をアシストする。
【0118】
ブーム下げ操作では、アンロード弁12を開くとともに、アキュムレータ再生弁13を閉じ、アシストポンプ10の斜板を最小角にするので、ブーム下げ時のブームシリンダ3aのヘッド室の圧油はアキュムレータ11に直接チャージされる。
【0119】
次に、
図1乃至
図16に示された実施の形態の効果を列挙する。
【0120】
図12に示すようにメインポンプ負荷トルクD1は、アシスト目標トルクTatとエンジン目標トルクTetとに分離され、アシストポンプ10のトルクは、アシスト目標トルクTatになるよう制御され、エンジンをアシストするので、エンジン実トルクTeaをエンジン目標トルクTetのように滑らかに変化させることができる。
【0121】
アキュムレータ11の圧力が低下したときは、エンジン目標トルクTetを漸増させてチャージを行なうように制御することで、エンジン設定トルクTesによって平滑化されるエンジン目標トルクTetは、より平坦になるので、エンジンの負荷変動を効果的に抑えることができ、排気ガスの抑制と、エンジン6の小型化と、これらに伴なう後処理装置すなわち排ガス浄化装置の小型化に繋がる。
【0122】
アキュムレータ11の圧油を用いてエンジン6をアシストするので、
図16に示すようにアクセルダイヤル32で設定されるエンジン設定トルクTesをメインポンプ負荷トルクD1より低く設定でき、エンジンを燃費の良い領域で運転することができ、燃費をより向上させることができる。
【0123】
ブーム下げと旋回ブレーキの圧油をアキュムレータ11に蓄圧し、かつエンジン6の負荷が低いときに、アシストポンプ10でアキュムレータ11に蓄圧するので、エンジン6をアシストするためのエネルギを充分確保できる。従って、エンジン6を小型化することができ、かつエンジン小型化に伴いエンジンの冷却装置、エアクリーナ等の関連装置を小型化できる。
【0124】
エンジン6の高負荷時にアシストポンプ10によってアシストし、エンジン6の低負荷時にアシストポンプ10によってアキュムレータ11に蓄圧するので、エンジン6の負荷を平滑化でき、燃費が改善する。また、黒煙などの排ガスを低減できる。
【0125】
ブーム下げと旋回ブレーキの圧油を回収するので、油圧装置のエネルギ損失を低減でき、油圧冷却装置を小型化できる。
【0126】
油圧機器でシステムを構成するので、電気システムを用いたハイブリッドシステムに比較して大幅なコスト低減ができ、かつメンテナンスが少なく、ランニングコストを低減できる。また、従来の作業機械に容易に装着できる。
【0127】
アシスト目標トルク演算手段としての減算器59により、メインポンプ負荷トルクD1から平滑なトルク成分Тsmを分離してこの平滑なトルク成分Тsmとエンジン設定トルクTesとの最小値をエンジン目標トルクTetとし、このエンジン目標トルクTetに応じてエンジンコントローラ31によりエンジン実トルクTeaを制御するとともに、減算器59により、メインポンプ負荷トルクD1とエンジン目標トルクTetとの差からアシスト目標トルクTatを演算し、このアシスト目標トルクTatに基づきマシンコントローラ30によりアシストポンプ10の容量(すなわちアシストポンプ斜板角φ)、エンジン6のアシストモードとアキュムレータ11のチャージモードの切換(アンロード弁12およびアキュムレータ再生弁13の切換)を制御するので、変化の激しいトルク要求に対しては応答性の良いマシンコントローラ30による上記アシストポンプ容量およびモード切替の制御により負荷変動を吸収することでエンジン目標トルクTetを平滑化でき、このエンジン目標トルクTetにしたがってエンジン実トルクTeaを滑らかに変化させることができ、しかも大容量の発電電動機やバッテリなどを必要としないため、メインポンプ回路の状態などに応じてエンジン6の負荷変動を効果的に抑えることができる小型で安価な制御装置Cを提供できる。
【0128】
特に、エンジン目標トルク演算タスク101は、メインポンプ負荷トルクD1から分離した平滑なトルク成分Тsmとエンジン設定トルクTesとの最小値をエンジン目標トルクTetとしたので、アキュムレータ11の圧力が低下したときは、エンジン目標トルクTetを漸増させてチャージを行なうように制御するので、エンジン設定トルクTesによって平滑化されるエンジン目標トルクTetを、より平坦に変化させることができ、エンジン6の負荷変動を効果的に抑えることができ、排気ガスの抑制と、エンジン6およびその後処理装置すなわち排ガス浄化装置の小型化も図れる。
【0129】
エンジン目標トルクTetをエンジン設定トルクTesで除して求めたエンジン負荷率Relをアシスト目標トルクTatに乗じて、フィードフォワードトルクとしてのアシストトルクD2を求め、さらに、エンジン目標トルクTetにエンジン実トルクTeaをフィードバックして得た偏差信号ΔTに基づきアシスト補正トルクD3を求め、アシストトルクD2とアシスト補正トルクD3とを加算してアシスト要求トルクD4を求めるようにしたので、エンジン負荷率Relとエンジン実トルクTeaにより補正された正確なアシスト要求トルクD4によって、アシストポンプ斜板角φによってポンプ容量を可変調整するアシストポンプ10に対し正確なアシストポンプ斜板指令D5を出力することができる。
【0130】
エンジン目標トルクTetをエンジン設定トルクTesで除してエンジン負荷率Relを演算し、エンジン負荷率Relが高いときはアシストトルクを高め、エンジン負荷率Relが低いときはチャージトルクを高めるようにアシスト目標トルクTatを補正するので、このアシスト目標トルクTatをエンジン6の負荷状態に応じて適切に調整できる。
【0131】
油圧駆動の作業機械HEにおいて機体Bやフロント作業装置Fを作動する際に、機体Bの旋回モータ9などのブレーキエネルギおよびフロント作業装置Fのブームシリンダ3aなどの位置エネルギを蓄圧し放圧する機能を備えた制御装置Cのアキュムレータ11により、作業機械HEのブレーキエネルギおよび位置エネルギを有効利用できるとともに、エンジン6の負荷変動を効果的に抑えることができ、排気ガスの抑制と、エンジン6および後処理装置の小型化を図れる。
【0132】
次に、
図17は、マシンコントローラ30において、アシストポンプ10のトルク指令値であるアシスト要求トルクD4を求めるアシスト要求トルク演算タスクS3の他の実施の形態を示すアシスト指令トルク演算タスクS3aである。なお、
図1乃至
図4、
図6、
図10および
図11に示された構成は、同様であるため説明を省略する。
【0133】
このアシスト指令トルク演算タスクS3aは、前記メインポンプ負荷トルクD1および前記アクセルダイヤル値Adからエンジン目標トルクTetを演算するエンジン目標トルク演算手段としてのエンジン目標トルク演算タスク101と、エンジン目標トルクTetとエンジン実トルクTeaとの偏差信号ΔTを求める減算器102と、減算器102から出力された偏差信号ΔTをPID制御する制御演算器103とを備えている。
【0134】
エンジン目標トルク演算タスク101は、
図8に示されるようにメインポンプ負荷トルクD1からローパスフィルタ56により平滑なトルク成分Tsmを分離して、この平滑なトルク成分Tsmと、アクセルダイヤル値Adからエンジン設定トルクテーブル57により求めたエンジン設定トルクTesとを、Min演算器58で比較して選択した最小値をエンジン目標トルクTetとして出力する。
【0135】
したがって、このエンジン目標トルク演算タスク101により、メインポンプ負荷トルクD1から平滑なトルク成分Tsmを分離してこの平滑なトルク成分Tsmとエンジン設定トルクTesとの最小値をエンジン目標トルクTetとし、このエンジン目標トルクTetと、エンジンコントローラ31から得られたエンジン実トルクTeaとの偏差信号ΔTをPID制御してアシストポンプ10のトルク指令値(アシスト要求トルクD4)を求め、
図5に示されるアシストポンプ斜板制御タスクS4およびバルブ制御タスクS5により、このトルク指令値に基づいてアシストポンプ10の容量(すなわちアシストポンプ斜板角φ)や、エンジン6のアシストモードとアキュムレータ11のチャージモードの切換を制御する。
【0136】
このように、変化の激しいトルク要求に対しては応答性の良いマシンコントローラ30によるアシストポンプ容量制御およびモード切替制御により負荷変動を吸収することで、エンジン目標トルクTetを平滑化でき、このエンジン目標トルクTetにしたがってエンジン実トルクTeaを滑らかに変化させることができ、しかも大容量の発電電動機やバッテリなどを必要としないため、メインポンプ回路の状態などに応じてエンジン6の負荷変動を効果的に抑えることができる小型で安価な制御装置Cを提供できる。
【0137】
さらに、
図17に2点鎖線で囲まれた部分で示されるように、ポンプ圧センサ33,34により検出されたメインポンプ圧Pf,Prの和を検出する加算器104と、メインポンプ圧Pf,Prの和が第1の規定圧Ponより上がる場合はON信号を出力するとともにメインポンプ圧Pf,Prの和が第2の規定圧Poff(<第1の規定圧Pon)より下がる場合はOFF信号を出力するメインポンプ圧判定手段としてのメインポンプ圧判定テーブル105と、メインポンプ圧判定テーブル105の出力によって切り換わる切換器106とを備えている。
【0138】
切換器106は、メインポンプ圧判定テーブル105の出力がOFFのときは制御演算器103の出力を選択し、メインポンプ圧判定テーブル105の出力がONのときはゼロ設定器107のトルク「0」を選択する。
【0139】
そして、エンジン目標トルク演算タスク101により、メインポンプ負荷トルクD1などからエンジン目標トルクTetを演算して設定し、このエンジン目標トルクTetに、エンジンコントローラ31から出力されるエンジン実トルクTeaをフィードバックして、減算器102により、エンジン目標トルクTetとエンジン実トルクTeaとの偏差信号ΔTを求め、この偏差信号ΔTを制御演算器103によりPID制御する。
【0140】
ここで、
図17に2点鎖線で囲まれた部分で示されるように、メインポンプ圧Pf,Prの和が第1の規定圧Ponより上昇すると、メインポンプ圧判定テーブル105から出力されたON信号により切換器106がOFF側からON側に切り換わるので、アシストポンプ10のトルク指令値(アシスト要求トルクD4)は「0」となり、アシストポンプ10によるエンジン6のアシストおよびアキュムレータ11の蓄圧を停止する。
【0141】
また、メインポンプ圧Pf,Prの和が第2の規定圧Poffより下降すると、メインポンプ圧判定テーブル105から出力されたOFF信号により切換器106がON側からOFF側に切り換わり、アシストポンプ10によるエンジン6のアシストおよびアキュムレータ11の蓄圧を再開し、制御演算器103によりPID制御された出力が、アシストポンプ10のトルク指令値(アシスト要求トルクD4)となり、「+」の場合は、アシストポンプ10でエンジン6をアシストするエンジンアシストトルクとなり、「−」の場合は、アシストポンプ10でアキュムレータ11を蓄圧するアキュムレータチャージトルクとなる。
【0142】
よって、メインポンプ7,8の吐出回路に設けられたリリーフ弁(図示せず)がリリーフ作動するリリーフ状態のとき、すなわちメインポンプ圧Pf,Prの和が規定圧Ponより上昇するリリーフ状態の場合は、アシストポンプ10のトルク指令値をゼロにして、エンジン6のアシストを停止し、メインポンプ圧Pf,Prの和が規定圧Poffより下がると、エンジン6のアシストを再開するので、すなわちリリーフ状態の間はエンジン6をアシストしないため、アキュムレータ11が保有するエネルギの無駄な消費を防止できる。
【0143】
また、メインポンプ圧判定テーブル105のヒステリシスにより規定圧Pon−Poff間に不感帯を設けることで、不安定なON/OFF切換を防止でき、制御系の安定性を確保できる。
【0144】
なお、
図17に2点鎖線で囲まれた部分を備えていない場合は、メインポンプ7,8から吐出された作動油のメインポンプ圧Pf,Prが上昇してリリーフ状態となったときでも、アキュムレータ11の圧油をアシストポンプ10に供給してエンジン6をアシストするため、アキュムレータ11のエネルギを無駄に消費することになる。