特許第6245612号(P6245612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6245612pHを特定する方法及びその装置並びにイオン濃度を特定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245612
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】pHを特定する方法及びその装置並びにイオン濃度を特定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20171204BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20171204BHJP
   G01N 27/414 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   G01N27/416 353Z
   G01N27/26 371D
   G01N27/414 301X
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-556415(P2014-556415)
(86)(22)【出願日】2014年1月7日
(86)【国際出願番号】JP2014050073
(87)【国際公開番号】WO2014109314
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-4014(P2013-4014)
(32)【優先日】2013年1月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(72)【発明者】
【氏名】太齋 文博
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和明
(72)【発明者】
【氏名】二川 雅登
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−55874(JP,A)
【文献】 特開2001−33274(JP,A)
【文献】 特開2011−163826(JP,A)
【文献】 特開2012−207991(JP,A)
【文献】 特開2009−236502(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/108465(WO,A1)
【文献】 Toshiaki Hattori et al.,Real-Time Two-Dimensional Imaging of Potassium Ion Distribution Using an Ion Semiconductor Sensor with Charged Coupled Device Technology,Analytical Sciences,2010年,Vol.26,p.1039-1045
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHセンサアレイを構成する素子iの出力Voiより該素子iが接触する試料のpHを特定する方法であって、
前記素子iの出力Voiを次のように規定し、
Voi=Si×pHi+Gi×Vrm+Ci 式(1)
(ここに、前記素子iに接する前記試料のpHをpHi、電位をVrmとし、SiとGiは感応係数でCiは定数とする)
前記センサアレイを標準液に接触させて前記素子iの出力Voiから前記素子i固有の感応係数Si、Gi及び定数Ciを特定する検定ステップと、
前記センサアレイにおいて相互に近傍に位置する第1素子i1と第2素子i2を選択し、前記センサアレイを前記試料に接触させて前記第1素子i1の出力Voi1と前記第2素子i2の出力Voi2を測定する第1の測定ステップと、
該第1素子i1及び第2素子i2が接触する前記試料の各pHi1及びpHi2は等しいものとして、前記第1の測定ステップで測定された前記第1素子i1及び第2素子i2の出力Voi1、Voi2、並びに前記検定ステップで特定された前記第1素子i1及び第2素子i2に関する感応係数Si1、Si2、Gi1、Gi2及び定数Ci1、Ci2から前記試料の電位Vrmを特定する電位特定ステップと、
前記センサアレイを前記試料に接触させて前記素子iの出力Voiを測定する主測定ステップと、
前記電位特定ステップで特定された電位Vrm、前記主測定ステップで測定された前記素子iの出力Voi並びに前記検定ステップで特定された感応係数Si、Gi及び定数Ciから前記素子iに接する試料のpHiを求めるpH特定ステップと、
を含む試料のpHを特定する方法。
【請求項2】
前記検定ステップは、第1のpHを示す第1の標準液に前記素子iを接触させて、前記第1の標準液の電位を変えて前記素子iの出力Voiを測定し、該電位と前記素子iの出力Voiとから感応係数Giを求める第1のステップと、
前記第1のpHと異なる第2のpHを示す第2の標準液を用意し、同じ電位とされた前記第1及び第2の標準液に前記素子iを接触させて、該各標準液について前記素子iの出力Voiを測定し、該各標準液のpH及び前記素子iの出力Voiから感応係数Siを求める第2のステップと、を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の測定ステップにおいて前記第1素子i1と前記第2素子i2は、それらの感応係数Si及びGi、並びに定数Ciがともに所定の値以上に異なる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記電位特定ステップにおいて、前記試料の電位Vrmを下記の式を用いて求める請求項1〜3のいずれかに記載の方法、
Vrm={((Voi1−Ci1)/Si1)−((Voi2−Ci2)/Si2)}/(Gi1/Si1−Gi2/Si2)。
【請求項5】
前記pH特定ステップにおいて、各素子iのpHiを下記の式を用いて求める請求項1〜4のいずれかに記載の方法、
pHi=(Voi−Gi×Vrm−Ci)/Si。
【請求項6】
前記第1の測定ステップ及び前記主測定ステップにおいて、参照電極として、Pt参照電極又はAg/AgCl参照電極を含む非ガラス参照電極を前記試料に接触させる請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
イオン濃度センサアレイを構成する素子iの出力Voiより該素子iが接触する試料のイオン濃度を特定する方法であって、
前記素子iの出力Voiを次のように規定し、
Voi=Si×Qi+Gi×Vrm+Ci 式(1’)
(ここに、前記素子iに接する前記試料のイオン濃度をQi、電位をVrmとし、SiとGiは感応係数でCiは定数とする)
前記センサアレイを標準液に接触させて前記素子iの出力Voiから前記素子i固有の感応係数Si及びGi並びに定数Ciを特定する検定ステップと、
前記センサアレイにおいて相互に近傍に位置する第1素子i1と第2素子i2を選択し、前記センサアレイを前記試料に接触させて前記第1素子i1の出力Voi1と前記第2素子i2の出力Voi2を測定する第1の測定ステップと、
該第1素子i1及び第2素子i2が接触する前記試料の各イオン濃度Qi1及びQi2は等しいものとして、前記第1の測定ステップで測定された前記第1素子i1及び第2素子i2の出力Voi1、Voi2、並びに前記検定ステップで特定された感応係数Si1、Si2、Gi1、Gi2及び定数Ci1、Ci2から前記試料の電位Vrmを特定する電位特定ステップと、
前記センサアレイを前記試料に接触させて前記素子iの出力Voiを測定する主測定ステップと、
前記電位特定ステップで特定された電位Vrm、前記主測定ステップで測定された前記素子iの出力Voi並びに前記検定ステップで特定された感応係数Si、Gi及び定数Ciから前記素子iに接する試料のイオン濃度Qiを求めるイオン濃度特定ステップと、
を含む試料のイオン濃度を特定する方法。
【請求項8】
pHセンサアレイを構成する素子iの出力Voiより該素子iが接触する試料のpHを特定するpH特定装置であって、
前記素子iの出力Voiを次のように規定し、
Voi=Si×pHi+Gi×Vrm+Ci 式(1)
(ここに、前記素子iに接する前記試料のpHをpHi、電位をVrmとし、SiとGiは感応係数でCiは定数とする)
前記センサアレイを標準液に接触させて測定された前記素子iの出力Voiから特定された前記素子i固有の感応係数Si、Gi及び定数Ciを保存する第1の保存部と、
前記センサアレイを前記試料に接触させて測定された相互に近傍に位置する第1素子i1及び第2素子i2の出力Voi1、Voi2を保存する第2の保存部と、
該第1素子i1及び第2素子i2が接触する前記試料の各pHi1及びpHi2は等しいものとして、前記第2の保存部に保存された前記第1素子i1及び第2素子i2の出力Voi1、Voi2、並びに前記第1の保存部に保存された前記第1素子i1及び第2素子i2に関する感応係数Si1、Si2、Gi1、Gi2及び定数Ci1、Ci2から前記試料の電位Vrmを特定する電位特定部と、
前記電位特定部で特定された電位Vrm、前記第1の保存部に保存された感応係数Si、Gi及び定数Ciから前記素子iに接する試料のpHiを特定するpH特定部と、
を備えるpH特定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pHを特定する方法及びその装置並びにイオン濃度を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料におけるpHの分布を測定し二次元のイメージとして出力するため、複数のpHセンサを二次元的に配列してなるpHセンサアレイが提案されている(特許文献1)。
かかるpHセンサアレイでは、一般的なpHセンサと同様に、参照電極を試料に接触させてその電位を安定させている。
医療・生化学分野などにおいて正確なpH値の測定が要求される場合は、参照電極にガラス電極が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−236502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス参照電極は試料の電位を安定させ、pHの測定精度を向上する点で極めて有用である。しかし、ガラス参照電極は、筺体にガラスを使用するため、破損しやすく、破損が生じると内部の塩化カリウムが漏出する。又、破損に至らなくても液絡部から塩化カリウムが漏出する。この塩化カリウムは細胞に悪影響を与えるので、医療・生化学分野の試料に対して用いるときにはその取扱いに十分な注意を要する。また、ガラス製の筺体を有するガラス参照電極は小型化が困難であり、この点からpHセンサアレイの用途を制限するおそれがある。
【0005】
他方、Pt又はAg/AgCl等の単体を参照電極に使用すれば、破損のおそれもないしまた参照電極自体を小型化することも容易である。しかしながら、かかる参照電極では試料の電位に揺ぎが生じ、測定精度の信頼性が低下する。
また、測定精度を向上させるために、試料の電位には応答するがpHには応答しない感応膜で構成されたREFETを用いて試料の電位の変動を計測しpH値を補正する方法が提案されている。しかしながら、REFETに用いる材料の制約から、REFETをpHセンサアレイの製造ラインでそのまま製造することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはかかる課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきた。
本発明者らは、pHセンサアレイを構成するpHセンサ(素子)はその特性に必ず「バラツキ」が生じていること、相互に近傍に位置する素子に接触する試料pHの値はほぼ等しいこと、及び試料は医療・生化学分野などで扱う試料は導電性であるのでその電位は一定であること、を前提とすれば、複数の素子の出力から試料の電位を正確に特定できると考えた。
【0007】
pHセンサアレイを構成する素子iを試料に接触させた際、素子iの出力Voiは、下記式(1)のように表わされる。
Voi=Si×pHi+Gi×Vrm+Ci 式(1)
ここに、素子iに接する試料のpHをpHi、電位をVrmとし、SiとGiは、素子iの出力Voiに対するpHiとVrmの感応係数で、Ciは定数である。
式(1)において、右辺第2項は試料の電位が揺らぐことに起因しており、ガラス参照電極を試料に接触させるときは試料の電位が安定するので、この第2項は定数として扱われる。換言すれば、参照電極として、ガラス参照電極を用いないときには、電位の揺らぎを考慮して右辺第2項を規定する必要がある。しかしながら、この電位を演算で特定できれば、ガラス参照電極を用いたときと同様に第2項を定数として扱うことができる。
【0008】
上記式(1)において、素子iを標準液に接触させて素子iの出力Voiを測定し、その測定結果から感応係数SiとGiと定数Ciを特定する。
次に、pHセンサアレイにおいて、相互に近傍に位置する2個の素子i1と素子i2を選択する。
センサアレイを試料に接触させて第1素子i1の出力Voi1と第2素子i2の出力Voi2を測定する。この2個の素子の出力は、
Voi1=Si1×pHi1+Gi1×Vrm+Ci1 式(2)
Voi2=Si2×pHi2+Gi2×Vrm+Ci2 式(3)
と表される。
該第1素子i1及び第2素子i2が接触する試料の各pHi1及びpHi2は等しいものとすると、試料の電位Vrmは、
Vrm={((Voi1−Ci1)/Si1)−((Voi2−Ci2)/Si2)}/(Gi1/Si1−Gi2/Si2) 式(4)
と表される。
そこで、第1素子i1及び第2素子i2の出力Voi1、Voi2、感応係数Si1、Si2、Gi1及びGi2並びに定数Ci1及びCi2を式(4)に代入することにより試料の電位Vrmを特定する。
このように特定された電位Vrm、素子iの出力Voi、並びに感応係数Si、Gi及び定数Ciより、素子iが接する試料のpHiは、
pHi=(Voi−Gi×Vrm−Ci)/Si 式(5)
と表される。
そして、このようにして得られた各素子iが接触する試料のpHiを、各素子iの位置に対応して表示させることで、センサアレイが接する試料のpH分布を表示できる。
【0009】
以上の原理に基づき、本発明の第1の局面は次のように規定される。
pHセンサアレイを構成する素子iの出力Voiより該素子iが接触する試料のpHを特定する方法であって、
前記素子iの出力Voiを次のように規定し、
Voi=Si×pHi+Gi×Vrm+Ci 式(1)
(ここに、前記素子iに接する前記試料のpHをpHi、電位をVrmとし、SiとGiは感応係数でCiは定数とする)
前記センサアレイを標準液に接触させて前記素子iの出力Voiから前記素子i固有の感応係数Si、Gi及び定数Ciを特定する検定ステップと、
前記センサアレイにおいて相互に近傍に位置する第1素子i1と第2素子i2を選択し、前記センサアレイを前記試料に接触させて前記第1素子i1の出力Voi1と前記第2素子i2の出力Voi2を測定する第1の測定ステップと、
該第1素子i1及び第2素子i2が接触する前記試料の各pHi1及びpHi2は等しいものとして、前記第1の測定ステップで測定された前記第1素子i1及び第2素子i2の出力Voi1、Voi2、並びに前記検定ステップで特定された前記第1素子i1及び第2素子i2に関する感応係数Si1、Si2、Gi1、Gi2及び定数Ci1、Ci2から前記試料の電位Vrmを特定する電位特定ステップと、
前記センサアレイを前記試料に接触させて前記素子iの出力Voiを測定する主測定ステップと、
前記電位特定ステップで特定された電位Vrm、前記主測定ステップで測定された前記素子iの出力Voi並びに前記検定ステップで特定された感応係数Si、Gi及び定数Ciから前記素子iに接する試料のpHiを求めるpH特定ステップと、
を含む試料のpHを特定する方法。
【0010】
このように規定される本発明の第1の局面の試料のpHを特定する方法によれば、試料を測定する都度、試料の電位Vrmを特定し、特定された電位Vrmを用いてpHを演算する。従って、試料の電位に揺らぎが生じても、pHを正確に特定可能となる。これにより、試料に接触させる参照電極としてガラス参照電極以外のもの(Pt参照電極やAg/AgCl参照電極等の非ガラス参照電極)を採用可能となる。
【0011】
上記において、試料は導電性であればよく、溶液タイプの他、ゾル、ゲルその他の固体をpH特定対象とすることができる。
標準液はpHが常に一定である汎用的な標準溶液を用いることができる。
pHセンサアレイを構成する素子i(pHセンサ)の構造は特に限定されるものではないが、高密度及び高い感度を達成する見地から、特許文献に1に示す電荷蓄積型のpHセンサを用いることが好ましい。
【0012】
上記において、下記式(1)
Voi=Si×pHi+Gi×Vrm+Ci
の感応係数Si、Gi及び定数Ciを定めるには、Voi、pHi及びVrmを変数とする三元一次方程式を解けばよいことは明らかである。
そのため、例えば、第1のpHを示す第1の標準液に素子iを接触させて、第1の標準液の電位を変えて素子iの出力Voiを測定し、各電位と各電位について得られた素子iの出力Voiとから感応係数Giを求める。次に、
第2のpH(第1のpHと異なる)を示す第2の標準液を用意し、同じ電位とされた第1及び第2の標準液に素子iを接触させて、該各標準液について素子iの出力Voiを測定する。そして、上記で特定された感応係数Gi、該各標準液のpH及び素子iの出力Voiから感応係数Siを求める。
次に、既知のpHの標準液(例えば第1の標準液)を所定の電位にして得られた出力Voi、並びに上記で求められた感応係数Si及びGiより、定数Ciが求められる。
【0013】
このようにして、素子iの感応係数Si及びGi並びに定数Ciを特定した後、これら感応係数Si及びGi並びに定数Ciが所定値以上異なり、かつ相互に近傍に位置する複数の素子(第1素子i1、第2素子i2)を選択する。電位特定ステップにおいて電位Vrmを特定する際、選択された複数の素子の感応係数Si及びGi並びに定数Ciが微差であると、選択された素子の出力も微差となり、電位Vrmを求める演算に誤差が入りやすくなるためである。
第1素子il及び第2素子i2は次のようにして選択できる。
センサアレイにおいて近傍に位置する一対の素子iの組合せとその組合せにおける感応係数Si及びGi並びに定数Ciの差の一覧表を作成する。そして、感応係数Si及びGi並びに定数Ciの各差に所定の重み付けをして、当該差の和が最も大きくなる素子の組合せを採用する。
なお、異常な素子を排除するため、感応係数Si及びGi並びに定数Ciの差がそれぞれ所定値を超えて大きくなる素子の組合せは排除する。
【0014】
第1素子i1と第2素子i2の出力Voi1とVoi2は次のように表わされる。
Voi1=Si1×pHi1+Gi1×Vrm+Ci1 式(2)
Voi2=Si2×pHi2+Gi2×Vrm+Ci2 式(3)
ここに、試料の電位が揺れていたとしても、ある時刻において試料は全域で同電位であるので、右辺第2項のVrmは同じ値である。
また、相互に近傍に位置する第1素子と第2素子が接触する試料のpHは、事実上は異なる場合もあるが、pHセンサの感度からみると、実質的に等しいと仮定する。従って、式(1)において、pHi1=pHi2となる。
これにより、第1素子i1と第2素子i2の出力Voi1とVoi2を得た時刻の試料の電位Vrmは
Vrm={((Voi1−Ci1)/Si1)−((Voi2−Ci2)/Si2)}/(Gi1/Si1−Gi2/Si2) 式(4)
と表される。
【0015】
第1素子i1と第2素子i2の出力Voi1とVoi2を得た時刻において全ての素子iにつきその出力Voiを測定し、保存しておく。
上記で説明したように、測定時の試料の電位Vrmが特定されたので、その結果、各素子iが接触する試料のpHiは下記式(5)より求められる。
pHi=(Voi−Gi×Vrm−Ci)/Si 式(5)
該式(5)において、Voiは測定結果、感応係数Gi及びSi並びに定数Ciは既知、Vrmは上記で特定された値である。
【0016】
試料の電位Vrmの揺れを考慮すれば、全ての素子iの出力を同時刻に測定して上記の処理を実行することが好ましい。
ただし、ガラス参照電極以外の参照電極であっても、短時間であれば試料の電位は殆ど変化しないとみなせるので、試料の電位Vrmを特定するステップを予め実行し、その後全ての素子iの出力を測定して、そのpHを演算してもよい。
【0017】
上記の説明は、水素イオン濃度指数pHを特定するものであるが、素子iの出力が他のイオン濃度に対応するものであれば、同じ原理でそのイオン濃度を特定できることは、当業者であれば容易に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係る試料のpHを特定する方法を示すフローチャート図である。
図2】第1の実施形態に係るセンサアレイを示す概念図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るpH特定装置の構成を示すブロック図である。
図4】非ガラス電極を接触させた試料における電位の時間変化を示すグラフである。
図5】本発明のpH特定方法を実行したときの、素子の出力から得られたpHの時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るpHを特定する方法を示すフローチャート図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係るセンサアレイを示す概念図である。
図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係るセンサアレイ11は、複数の検出画素12により構成され、各検出画素12は、素子iを備える。センサアレイ11には、図3に示すように、検出された値を記憶するための記憶装置15、及び、センサアレイ11と記憶装置15を制御して試料のpHを特定する制御装置17が接続される。
【0020】
図1のフローチャートを参照して、本発明の第1の実施形態に係るpHを特定する方法について以下に記載する。
最初に感応係数Si及びGi並びに定数Ciを特定する(ステップ1〜5;検定ステップ)。
pHが既知の標準溶液センサアレイを接触させる(ステップ1)。この際に、センサアレイとともに、標準溶液測定用参照電極を標準溶液に接触させ、その電位を安定させる。各素子iの特性を規定する感応係数Si及びGi並びに定数Ciを正確に定めるため、標準溶液測定用参照電極はガラス電極とすることが好ましい。
次に、標準溶液測定用参照電極を所定の電位Vrnに設定し、素子iの出力Voiを測定する(ステップ2)。
そして、素子iの出力Voi=Si×pHi+Gi×Vrn+Ciについて、素子i固有の感応係数Si及びGi並びに定数Ciを特定する(ステップ3)。
ステップ3の操作を全ての素子iについて実行する(ステップ4、5)。
【0021】
次に、第1の測定ステップについて説明する。
まず、上記検定ステップ(ステップ1〜5)で特定された感応係数Si及びGi並びに定数Ciに基づいてセンサアレイにおいて相互に近傍に位置する2個の素子(第1素子i1と第2素子i2)を選択する(ステップ6)。
第1素子及び第2素子のそれぞれの感応係数Si及びGi並びに定数Ciは相互に大きな差を有することが好ましい。
選択された第1素子i1及び第2素子i2を試料に接触させ、各出力Voi1及びVoi2を測定する(ステップ7、8)。
【0022】
ここで、第1素子i1及び第2素子i2についてステップ8で得られた出力Voi1及びVoi2と、ステップ4で得られた第1素子i1及び第2素子i2の各感応係数Si1、Si2、Gi1及びGi2並びに定数Ci1及びCi2を式(1)に代入すると次の式(2)、(3)が得られる。
Voi1=Si1×pHi1+Gi1×Vrm+Ci1 式(2)
Voi2=Si2×pHi2+Gi2×Vrm+Ci2 式(3)
相互に近傍に位置する素子に接触する試料のpHは等しいものと仮定できるので、pHi1=pHi2とすると、式(2)、(3)は2元一次方程式となり、試料の電位Vrmが求められる(ステップ9;電位特定ステップ)。
【0023】
このようにして、下記素子iの出力方程式、
Voi=Si×pHi+Gi×Vrm+Ci 式(1)
において、pHi以外の値が全て特定されるので、pHiは次式より求められる。
pHi=(Voi−Gi×Vrm−Ci)/Si(S10;pH特定ステップ)。
センサアレイを前記試料に接触させ、センサアレイを構成する全ての素子iの出力Voiを測定し(主測定ステップ)、得られた出力に基づきステップ10ステップ10を実行して、各素子iに接触する試料pHを特定する(ステップ11)。
【0024】
図3において、記憶装置15には、素子iの出力を保存する出力保存部151(この中に、第1素子と第2素子の出力を保存する第2の保存部が含まれる)、検定ステップで検定された素子iの感応係数Si及びGi並びに定数Ciを保存する第1の保存部153、特定された試料の電位を保存する電位保存部155が備えられる。
また、制御装置17には、第2の保存部に保存された第1素子i1及び第2素子i2の出力Voi1、Voi2、並びに第1の保存部153に保存された感応係数Si1、Si2、Gi1、Gi2及び定数Ci1、Ci2から試料の電位Vrmを特定する電位特定部171と、電位特定部171で特定された電位Vrm並びに第1の保存部に保存された感応係数Si、Gi及び定数Ciから素子iに接する試料のpHiを特定するpH特定部173が備えられる。
【0025】
図4は、参照電極としてAg/AgCl単体電極を用い、pH6.86バッ
ファ液を試料溶液とした場合の、ガラス参照電極(Ag/AgCl:飽和KCl)を用いた場合を基準とした溶液電位の時間変化を示す。
図5は、センサアレイを上記試料溶液に接触させた際、任意に選択した3つの素子において、その出力に基づき既述の特定方法を適用して演算したpHの値の時間変化を示す。なお、第1の測定ステップにおいて選択される2つの素子もこの3つの素子の中から選んでいる。
試料溶液の電位がシフトし、揺らいでいるにも関わらず、図5の結果から、演算されたpHはどの素子においてもpH6.86前後を示す。これにより、この発明のpH特定方法が実用的であることが分かる。
【0026】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求に範囲の記載の趣旨を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1 pH特定装置
11 センサアレイ
12 画素
15 記憶装置
17 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5