(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
次いで、本発明の実施の形態を
図1〜3を参照しながら以下に詳述する。
他方、本実施形態に係る香り付き包装フィルム1は、
図1に示すように、香料を含む基材層10及びこの基材層10の両面に接して配置される被覆層11,12を有しており、それら被覆層11,12のうちの一方面側の被覆層11が基材層中の香料の揮散を抑制する香料弱透過層11とされ、他方面側の被覆層12
も前記香料弱透過層とされた積層構造を有している
。なお、参考形態として他方面側の被覆層12が基材層中の香料の揮散を防止する香料バリア層12とされた積層構造が挙げられる。
【0023】
基材層10、
香料弱透過層11、12は、必ずしも単層である必要はなく、その機能を阻害しない態様であれば複数層からなる層であってもよい。例えば、
香料弱透過層11、12の基材層側と反対側面を熱融着性の高い層として、香り付き包装フィルム1を熱融着しやすいようにしてもよいし、紙、織布又は不織布等を積層接着してこれらの素材感を発現させて意匠性を高めるようにしてもよい。
【0024】
本実施形態に係る香り付き包装フィルム1の具体的な層構造例としては、
香料弱透過層11、12は樹脂製フィルムからなり、基材層10がこれらを貼り合せるための接着剤層とされている層構造である、参考形態として基剤層10、香料弱透過層11、12がすべて樹脂製フィルム層である層構造が挙げられる。
【0025】
本実施形態に係る香り付き包装フィルム1の柔軟性又は剛性は、包装性、コスト見栄えを考慮して適宜、設計することができる。例えば、高級感のある見栄えのよいものとする場合にはやや厚みのある剛性の高いものとし、複雑な形状の被包装物の包装に用いるのであれば形状追従性を高めるべく柔軟性の高いものとする。香り付き包装フィルムの剛性、柔軟性は、各層の材質や各層の厚さにより設計することができる。
【0026】
本実施形態に係る香り付き包装フィルム1の厚みは、15〜200μmであるのが望ましく、より望ましくは45〜145μmである。15μm未満であると基材層、香料弱透過層の香料バリア層の各機能を有しつつ、形成可能な強度を確保することが困難となる。200μmを超えても厚み増加による各層の設計性の向上に乏しく、むしろコスト高になる。なお、ここでの香り付き包装フィルムのフィルム厚みの測定方法は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定する。この厚みの測定時の荷重は、120μmの際に約70gfである。なお、厚みは測定を10回行って得られる平均値とする。
【0027】
他方、本実施形態に係る香り付き包装フィルム1は、透明であっても、不透明であってもよい。また、香料弱透過層及び香料バリア層を透明或いは不透明として基材層を外部から認識可能にして、基材層のみを着色するようにしてもよい。また、基材層を着色する場合、基材層中に含まれる香料の低下に応じて変化する変色インキを用いて、香気のインジケーター機能を付与することができる。基材層中に含まれる香料の低下に応じて変化する変色インキとしては、コチニール色素や酸塩基指示薬のように基材層中に含まれる香料の低下による基材層のpH変化に応じて変色するものが例示できる。さらに、本発明の香り付き包装フィルム1は、適宜の模様などが印刷されていてもよい。
【0028】
(香料弱透過層)
本実施形態に係る香り付き包装フィルム1を構成する香料弱透過層11、12は、基材層10を被覆する層であって基材層10からの香料を透過させはするものの、その揮散量を抑制して基材層10が露出された状態に比して、香気の強さ及び持続性を調整する層である。
この香料弱透過層11は、酸素の透過度が700cc/m
2・24h/atm以上、炭酸ガスの透過度が4000cc/m
2・24h/atm以上である樹脂製フィルム層が望ましい。上記ガスの透過度を有する樹脂製フィルム層であれば、香料を適度に透過させて本発明の効果を発揮させることが可能となる。香料弱透過層11を形成する樹脂製フィルム層として好適なものは、ポリエチレンフィルム層、ポリスチレンフィルム層、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム層が挙げられ、これらの中から用いる香料との関係で適宜選択することができる。
【0029】
(香料バリア層)
他方、
参考形態に係る香料バリア層12は、香料の透過が著しく低く実質的に基材層からの香気を感じられないようにする層である。
この香料バリア層12は、保香性に優れる樹脂製フィルム層であり、酸素の透過度が200cc/m
2・24h/atm未満、炭酸ガスの透過度が900cc/m
2・24h/atm未満である樹脂製フィルム層が望ましい。上記ガスの透過度を有する樹脂製フィルム層であれば、香料の揮散を好適に防止することが可能となる。
【0030】
係る樹脂製フィルム層として好適なものは、ポリエチレンテレフタレートフィルム層、ポリ塩化ビニリデンフィルム層、株式会社クラレ社製のエバールなどのEVOH樹脂フィルム層(エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム層)、EVOH樹脂にスチレン系エラストマーを配合した樹脂からなるフィルム層が挙げられ、これらの中から用いる香料との関係で適宜選択することができる。また、香料バリア層は、金属箔などの金属シート又はこれを積層したラミネートフィルムで構成することもできる。
【0031】
(基材層)
本実施形態に係る香り付き包装フィルム1を構成する基材層10は、香料を含む層である。本実施形態に係る基剤層10としては、香料弱透過層11
、12及び香料バリア層を樹脂製フィルムシートを接着する接着剤層として、或いは、香料弱透過層11
、12及び香料バリア層を構成する樹脂製フィルム層に積層される、香料が練り込まれた樹脂製フィルム層とする態様が例示できる。
【0032】
基材層10を接着剤層として形成する場合、その接着基剤は、香料弱透過層11を構成する樹脂製フィルム
及び香料バリア層を構成する樹脂製フィルムや金属箔とを剥離不能に接着するものであり、例えば、天然ゴム系粘着剤、天然ゴムラッテクス系粘着剤、アクリル系粘着剤、ホットメルト粘着剤等である。香料弱透過層及び香料バリア層の基材層との接着面が樹脂製フィルムである場合には、特に樹脂製フィルムシートの接着性に優れ、香料の溶解性・分散性にも優れるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0033】
基材層10を接着剤層として形成する場合、基材層10は、香料弱透過層11
、12との間に点在的に或いはパターンをもって存在してもよいが、好ましくは全面に介在されている態様が望ましい。香料弱透過層11
、12との一体性が高まる。
【0034】
粘着剤層中における香料の配合割合は、香料の種類・揮発性等により定めることができるが、継続的にほのかに香気を発し、しかもコスト高とならないようにする点から、0.5〜15g/m
2、特に3〜8g/m
2であるのがよい。
【0035】
なお、参考形態として基材層10を香料を練り込んだ樹脂製フィルム層として形成する場合、樹脂製フィルム層の基材樹脂としては、スチレンブロックとジエンブロックを有するゴム質ブロック共重合体が望ましい。係るゴム質ブロック共重合体としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロプレン-スチレン共重合体、及びこれらの水素添加物が挙げられる。基材樹脂としてこれらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
また、基材樹脂は、ゴム質ブロック共重合体に対して、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリプロピレンの無水マレイン酸変性物、エチレン-ビニル共重合体を配合したものとしてもよい。
【0037】
基材層10を香料を練り込んだ樹脂製フィルム層として形成する場合には、基材樹脂中に1〜50重量%の香料を配合させることができる。
【0038】
他方、基剤層中に含有させる香料としては、天然系あるいは合成系の既知の香料を用いることができる。具体例としては、レモン油、グレープフルーツ油、ローズマリー油、ペパーミント油、マンダリン油、ライム油、ユズ油、カモミール油、ラベンダー油、ローズ油、スペアミント油等の天然香料;アルコール、ケトン、アルデヒド;リモネン、リナロール、シトロネロール、メントール、ゲラニオール等のテルペン類の合成香料などが挙げられる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて調合香料として用いてもよい。香料の選択は、所望の香調によって決定すればよい。
また、香料は、香気の強さの調整のために適宜ジプロピレングリコール、パラフィンオイル等の鉱物油、ヒマシ油、大豆油の植物油を用いて希釈することができる。
【0039】
他方、本実施形態に係る基材層の厚みは、5〜100μm、より好ましくは30〜80μmである。この範囲であれば、香り付き包装フィルム全体を過度に厚くすることなく、徐放性の調整を厚みで行えるようになる。
【0040】
(消臭剤)
また、基剤層中には香料とともに、悪臭成分である、トリメチルアミン等の窒素化合物系や、硫化水素、メチルカプタン等の硫黄系化合物を消臭する消臭成分を含有させてもよい。消臭成分は、香料に影響を与えず、香料とともに香料弱透過層から外部に揮散して消臭機能を発揮させることが可能な化学的消臭成分が望ましい。化学的消臭成分の具体例としては、ポリフェノール、ポリフェノール誘導体等のポリフェノール系消臭剤が挙げられる。香料と香料の機能を阻害しない消臭成分の組み合わせは公知のなかから適宜選択することができる。
【0041】
(香り付き包装フィルムの製造方法例)
本実施形態に係る香り付き包装フィルム1は、基材層10、香料弱透過層11
、12、香料バリア層をTダイ法による共押出法、押し出しラミネート法、ドライラミネート法によって積層構造することができる。各層の厚みは、基剤層10は5〜100μm、香料弱透過層11が5〜50μm、香料バリア層12が5〜50μmであるのが望ましい。香り付き包装フィルム全体としての成形性、柔軟性を阻害することなく各層の機能を十分に確保できる。なお、各層の具体的な厚みは、徐放性や香りの強さにより適宜変更することができる。
【0042】
基材層10を接着剤層として形成する場合には、香料弱透過層11
、12又は香料バリア層に係るフィルムシートを形成した後、ドライラミネート法により、予め香料を配合した接着剤で積層一体化するようにすればよい。
【0043】
基材層10を樹脂製フィルム層とする場合には、香料弱透過層11
、12を形成する樹脂、香料バリア層を形成する樹脂、香料を含有させた上記基材樹脂をTダイ法による共押出法又は押し出しラミネート法により積層一体化することができる。
【0044】
基材樹脂に香料を含有させるには、予め香料を基材樹脂に混合して混練しておき、これを材料としてフィルム化する方法、押し出し時に香料を圧入する方法が例示できる。
【0045】
(香りの持続性調整方法)
本実施形態に係る香り付き包装フィルム1における香りの強さ及び香りの持続性の調整は、基材層中の香料の配合割合(香料濃度)、香料弱透過層11
、12を形成する樹脂製フィルム層の種類の選択及び厚さの調整、さらに香料弱透過層上に部分的に香料が透過しないように目止め部分を設けてもよい。目止め部分を設けることで、香料の持続性や香調を調整できる。目止め部分の形成は、保香性の高い樹脂を部分的に積層すればよい。
さらに、芳香フィルムに穴やスリットを形成して、裁断面やスリット面から基材層を外部に微小に露出させるようにして調整してもよい。
【0046】
(大きさ、形状等)
本実施形態に係る香り付き包装フィルム1の具体的な大きさ、形状は、包装対象物に応じて適宜設計することであり、特に限定されない。
【0047】
〔包装形態〕
上記本実施形態に係る香り付き包装フィルム1は
、フィルムの表裏がそれぞれ包装内外となり、かつ密封性に優れる包装形態
である、ガゼット包装、ピロー包装、四方閉じ包装に用いることができる。
【0048】
実施形態に係る香り付き包装フィルム1で被包装物を包装するにあたっては、帯状の長尺の香り付き包装フィルムを巻き取った原反ロールから、包装フィルムを繰出して被包装物を連続的に包装する公知装置及び方法が採用できる。この場合、特に一方面側が香料バリア層12とされている香り付き包装フィルム1では、原反ロールにする際に、香料バリア層12が巻き取り外面側になるように巻き取れば、原反ロール保管時に香料が揮散されることが防止される。
【0049】
なお、本発明に係る香り付き包装フィルム1により被包装物を包装するにあたっては、香料弱透過層11
、12を内外面にして包装物を包装した場合には、内包物に香気を移行させて着香させることができるとともに、その香気を外部からも感じられるものとなる。この包装形態では、例えば、香料が付与されていないティシュペーパーやサニタリー用品等を内包して、それらに基材層10の香料を移香させることで、強すぎないほのかな香りを着香させるとともに、購入者がどのような香りが付与されているのかを外部からも確認できるようになる。
【0050】
また、
参考形態に係るフィルムにおいて香料弱透過層を内面側として香料バリア層を外面側にして包装物を包んだ場合には、内包物に香気を移行させて着香させることができるとともに、外部にはその香気が漏れでないようになり、内包物に直接的に香料を付与せずに間接的に移香させる用途に適するものとなる。例えば、内包物に基材層の香料を移香させることで、強すぎないほのかな香りを着香させることができ、また、その過程で香気が外部に漏れることがなく周辺環境を香気で汚染することがないものとなる。
【0051】
さらに、
参考形態に係るフィルムにおいて香料弱透過層11を外面側とし、香料バリア層を内面側にして包装物を包んだ場合には、内包物に香気を移行させることなく、外部からは香気を感じられるようになり、内包物に香料を付与せずに外部に香気を放つものとしたい用途に適するものとなる。香辛料、紅茶のような香りが重視される食品などでは外部から香りが食品に付与されることに問題があるものの、商品イメージとして香気を消費者に感じさせることが好ましい製品や、香香りに関する雑誌やファッション小物など商品自体に香気は必要ないが、商品の販売促進のために香りを用いることが想定される商品に適する。
【0052】
〔香り付き包装袋〕
他方、
本発明は、上記の香り付き包装フィルム1を袋状に成形し
た、香り付き包装袋2
である。包装袋の具体的な形態としては、ガゼット袋、三方閉じ袋が例示できる。ガゼット袋は、上記ガゼット包装の前駆体として、三方閉じ袋は、上記四方閉じ包装の前駆体としても利用可能である。
【0053】
図2に、香り付き包装フィルム1を用いて三方閉じ袋の形態とした香り付き包装袋2を示す。香り付き包装フィルム1から上記三方閉じ袋の形態とするには、公知の方法で行なうことができ、例えば、香り付き包装フィルム1を矩形に裁断し、中央部で折り返して底縁を形成したのちに底縁部21及び両側縁部22を熱融着等によりシールして三方閉じ袋の形態とすることができる。三方閉じ袋の形態から袋内に被包装物をいれ、開口部23をシールして封止すれば上記四方閉じ包装となる。
【0054】
香り付き包装袋2の形態においては、基材層両側の被覆層が共に、香料弱透過層11の香り付き包装フィルム
であるので、袋の内面25及び外面26のいずれも香料弱透過層11となり、袋内外に香気が発せられるものとなる。
なお、参考形態に係る香り付き包装フィルムにおいて、基材層10の一方面側が香料弱透過層11、他方面側が香料バリア
層とされている香り付き包装フィルムを用いた場合には、香料弱透過層11を袋内面側25にして袋を形成すれば、袋内面側25からに香気が発せられるものとなり、香料弱透過層11を袋外面側26にして袋を形成すれば、袋外面26から香気が発せられるものとなる。
【0055】
本実施形態に係る香り付き包装袋2は、図示はしないが開口部に再封止可能な密閉チャック機構を設けてもよいし、開口された状態のままのもので使用者が封止テープなどで任意に開口部を閉じるようにして使われるものであってもよい。
【0056】
〔香り付きラベル〕
他方、
参考形態として図3に示すように、基材層10の一方面側が香料弱透過層11、他方面側が香料バリア層12とされた香り付き包装フィルム1の香料バリア層12上に粘着剤層31を設け、対象物に貼付可能として香り付きラベル3とすることもできる。
【0057】
香料バリア層上に形成する粘着層を形成するための粘着剤の具体例としては、ホットメルト系、ゴム系、EVA系、オレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ウレタン系等の既知の材料から適宜選定可能である。なかでもホットメルト系粘着剤が好ましい。ホットメルト系粘着剤は、乾燥工程の省略が可能となり、生産性が向上する。粘着層31の厚さは、特に限定はされないが、5〜50μm、好ましくは10〜30μmである。5μm未満だと粘着力が小さく、十分な強度で対象物へ粘着しない可能性が高くなり、50μmを超えると粘着力は高くならず、ラベルシート全体としての平滑性が低下し印刷性が低下する。粘着層31を形成する方法は、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法や凸版印刷、グラビア印刷、孔版印刷等の各種印刷方式等を用いることができる。
【0058】
図示の形態では、粘着剤層31を被覆保護する剥離紙32を設けている。この剥離紙32は、粘着層31に対して容易に剥離可能な状態で接着する既知のものを用いることができる。剥離紙32の具体例としては、上質紙やクラフト紙等の適宜の基材紙の粘着層面に対面する面をシリコーン、長鎖アルキルポリマー、ポリオレフィン、アルキド樹脂、フッ素化合物等の既知の剥離剤を適宜のパターンで印刷して剥離面を設けたものや、樹脂フィルムをラミネートして樹脂層面を剥離面としたラミネート紙、或いは、樹脂製フィルムシートなどが挙げられる。
【0059】
この香り付きラベル3の形態は、剥離紙31を剥離して粘着剤層31を露出させ、この粘着剤層31を介して商品の包装に貼付することで、その包装を外面から香気を感じられるものにする。商品の包装が保香性を有するフィルムなどでされていれば、上述の香料弱透過層11を外面側に、香料バリア層12を内面側にして包装する場合とほぼ同様の効果が得られる。