特許第6245636号(P6245636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245636
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】車両リフト
(51)【国際特許分類】
   B60S 9/02 20060101AFI20171204BHJP
   B66F 7/28 20060101ALI20171204BHJP
   B66F 7/02 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B60S9/02
   B66F7/28 B
   B66F7/02 H
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-189227(P2013-189227)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-54980(P2014-54980A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】10 2012 017 959.6
(32)【優先日】2012年9月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591126677
【氏名又は名称】オットー・ヌスバウム・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コー・カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】OTTO NUSSBAUM GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG & COMPAGNIE KOMMANDIT GESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・ヌスバウム
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−062500(JP,U)
【文献】 特開2001−270689(JP,A)
【文献】 特開2000−255393(JP,A)
【文献】 特開平09−136621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 9/02
B66F 7/02
B66F 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(3)の側方両側に位置することになるとともに、それぞれ2本のキャリッジアーム(11,12,21,22)を備えている少なくとも2本の昇降支柱(1,2)からなり、前記キャリッジアームは水平旋回可能であるとともに、そのアーム長さが伸縮可能なようにそれぞれの昇降支柱(1,2)に支持され、かつ、それぞれのアーム自由端にそれぞれ1個の受け台(11a,12a,21a,22a)を有し、前記受け台は、それぞれのキャリッジアームの相応した運動によって、車両製造会社により指定された車両(3)のリフトアップポイント(11a´、12a´、21a´、22a´)に位置決めされるように構成した車両リフトであって、
車両製造会社によって指定された前記リフトアップポイント(11a´、12a´、21a´、22a´)の座標位置は対応する車種とリンクさせられた基準位置として車両リフトのデータ記憶手段(16)に格納されており、
前記受け台(11a,12a,21a,22a)の実位置の座標位置である実座標位置は、測定によってまたは測定と演算とによって決定され、
コンピュータ(15)によって前記基準位置の座標位置である基準座標位置と前記実座標位置との位置合わせが行なわれ
記キャリッジアーム(11,12,21,22)の上昇が、前記基準座標位置と前記実座標位置との差が所定の許容範囲内にある場合にのみ、許可され、かつ、
前記受け台(11a,12a,21a,22a)の前記基準位置および実位置はディスプレイ(6)上に表示されることを特徴とする車両リフト。
【請求項2】
前記表示された基準位置は全体的に、または、前記表示された実位置は全体的に、前記ディスプレイ(6)上でずらすことができることを特徴とする請求項に記載の車両リフト。
【請求項3】
前記受け台(11a,12a,21a,22a)の実座標位置の決定は、前記キャリッジアーム(11,12,21,22)の旋回角度の測定と、前記キャリッジアーム(11,12,21,22)のアーム長さの測定とによって行なわれることを特徴とする請求項1または2に記載の車両リフト。
【請求項4】
前記受け台(11a,12a,21a,22a)の実座標位置の決定は、前記キャリッジアーム(11,12,21,22)の旋回角度の測定と、前記キャリッジアームのアーム長さの演算とによって行なわれることを特徴とする請求項1または2に記載の車両リフト。
【請求項5】
前記受け台(11a,12a,21a,22a)の実座標位置の決定は、前記キャリッジアーム(11,12,21,22)のアーム長さの測定と、前記キャリッジアーム旋回角度の演算とによって行なわれることを特徴とする請求項1または2に記載の車両リフト。
【請求項6】
前記キャリッジアーム(11,12,21,22)に装備されるとともに前記キャリッジアームの不測の旋回を禁止するロックレバーの監視のためのセンサ(1b)が備えられていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の車両リフト。
【請求項7】
前記キャリッジアーム(11,12,21,22)の旋回およびアーム長さの伸縮は、基準座標位置と実座標位置との位置合わせを実施するコンピュータ(15)によるモーター駆動によって自動的に行なわれることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の車両リフト。
【請求項8】
車両リフトに進入した車両(3)の位置は光学的に検知可能であり、かつ、この位置は基準座標位置と実座標位置との位置合わせを実施する前記コンピュータ(15)に入力されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の車両リフト。
【請求項9】
前記受け台(11a,12a,21a,22a)の基準座標位置および実座標位置は、X方向およびY方向のみならず、Z方向においても検知されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の車両リフト。
【請求項10】
前記受け台(11a,12a,21a,22a)は昇降モータと組み合わされていることを特徴とする請求項に記載の車両リフト。
【請求項11】
各々のキャリッジアーム(11,12,21,22)は、前記キャリッジアームに作用する荷重を検出するためのセンサ(12)が備えられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の車両リフト。
【請求項12】
前記センサ(12)は歪みゲージとして構成されていることを特徴とする請求項11に記載の車両リフト。
【請求項13】
算定された荷重は、総荷重および荷重分布を評価するために、コンピュータ(15)に入力されることを特徴とする請求項11に記載の車両リフト。
【請求項14】
前記コンピュータ(15)は、前記キャリッジアーム(11,12,21,22)において算定された荷重を前記昇降支柱(1,2)において算定された荷重と照合し、所定の許容差を超えた場合には信号を出力することを特徴とする請求項13に記載の車両リフト。
【請求項15】
前記キャリッジアームの昇降動作は、前記受け台(11a,12a,21a,22a)の基準位置および実位置に関して、さらには荷重やキャリッジアームのロックに関しても、文書化などの形態で記録化されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の車両リフト。
【請求項16】
前記データ記憶手段(16)および前記コンピュータ(15)は他の車両リフトのためにも利用されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の車両リフト。
【請求項17】
前記受け台(11a,12a,21a,22a)の実座標位置、算定された荷重、キャリッジアームロックの動作状態のいずれかあるいはその全ては、無線にて、前記データ記憶手段(16)に伝送されることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の車両リフト。
【請求項18】
車両(3)の側方両側に位置することになるとともに、それぞれ2本のキャリッジアーム(11,12,21,22)を備えている少なくとも2本の昇降支柱(1,2)からなり、前記キャリッジアームは水平旋回可能であるとともに、そのアーム長さが伸縮可能なようにそれぞれの昇降支柱(1,2)に支持され、かつ、それぞれのアーム自由端にそれぞれ1個の受け台(11a,12a,21a,22a)を有し、前記受け台は、それぞれのキャリッジアームの相応した運動により、車両製造会社によって指定された車両(3)のリフトアップポイント(11a´、12a´、21a´、22a´)に位置決めされるように構成した車両リフトの運転方法であって、
車両製造会社によって指定された前記リフトアップポイント(11a´、12a´、21a´、22a´)の座標位置は対応する車種とリンクさせられた基準位置として車両リフトのデータ記憶手段(16)に格納されており、
前記受け台(11a,12a,21a,22a)の実位置の座標位置である実座標位置は、測定によってまたは測定と演算とによって決定され、
コンピュータ(15)によって前記基準位置の座標位置である基準座標位置と前記実座標位置との位置合わせが行なわれ
記キャリッジアーム(11,12,21,22)の上昇が、前記基準座標位置と前記実座標位置との差が所定の許容範囲内にある場合にのみ、許可され、かつ、
前記受け台(11a,12a,21a,22a)の前記基準位置および実位置はディスプレイ(6)上に表示されることを特徴とする車両リフトの運転方法。
【請求項19】
請求項2〜16のいずれか1項に記載の車両リフトが運転対象となる請求項18による運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側方両側に位置することになるとともに、それぞれ2本のキャリッジアームが備えられている2本の昇降支柱からなり、これらのキャリッジアームは水平旋回可能であるとともに、そのアーム長さが伸縮可能なようにそれぞれの昇降支柱に支持され、かつ、それぞれのアーム自由端にそれぞれ1個の受け台を有し、前記受け台は、それぞれのキャリッジアームの相応した運動によって、車両製造会社により指定された車両下部のリフトアップポイントに位置決めされるように構成した車両リフトに関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に述べたタイプの車両リフトは数多くの態様のものが知られており、それらのリフトには、可変式キャリッジアームが備えられていることにより小型車両ならびに大型車両にも適しているために、実際に有用であることが広く知られている。キャリッジアームに設けられたそれぞれの受け台を、車両製造会社によって指定されている車両下部のリフトアップポイントに位置決めするために、前記キャリッジアームの旋回およびアーム長さの伸縮が、操作員によって、車両がリフト内に進入した後に、行なわれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、キャリッジアームの正確な対目標調節操作に不可欠な目視目測能力ならびに徹底した慎重さは、操作員のだれもが備わっている資質ではないことが、本発明の前提である。したがって、本発明の課題は、冒頭に述べたタイプの車両リフトを改良して、指定されたリフトアップポイントへのキャリッジアームの調節操作が従来よりも高い信頼度で実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、本発明では、車両製造会社によって指定されたリフトアップポイントの座標位置は対応する車種とリンクさせられた基準位置として、この車両リフトのためのデータ記憶手段に格納され、前記受け台の実位置の座標位置である実座標位置は測定によってまたは測定と演算とによって決定され、コンピュータによって前記基準位置の座標位置である実基準座標位置と前記実座標位置との位置合わせが行なわれ、前記キャリッジアームの上昇は、前記基準位置座標と前記実座標位置との差が所定の許容範囲内にある場合にのみ、許可されることで解決されている。
【0005】
つまり、本発明では、キャリッジアーム調節の監視が行なわれる。これによって、上昇時の安全性は、操作員の目視目測能力と徹底した慎重さにだけ依存しているわけでなく、その上昇動作はそれぞれ受け台を有した4本のキャリッジアームがすべて正しい位置に位置していることが保証されて初めて可能になるように構成されていることで確保されている。それゆえ、本発明による車両リフトは、高い運転安全性を備えることになる。つまり、受け台が位置決めエラーによって車両車体下部を凹ませたり、あるいは受け台が過度に外側に寄りすぎて車両車体の一部が滑り落ちたりすることが防止される。
【0006】
本発明の好適な実施形態では、上記の目標位置と実位置とがさらにディスプレイ上に表示される。これによって、操作員は、4本のキャリッジアームのうちのいずれを再調節しなければならないか、その際の調節はどの程度行なわれなければならないかを把握することができる。これにより、操作員は、床に膝を着いて車両下側の見えにくい箇所を覗き込んでチェックする必要はなく、こうしたチェックは、ディスプレイによって容易に行なうことができる。
【0007】
これに関連して、本発明のさらに別の好適実施形態では、表示された基準位置はまたは表示された実位置あるいはその両方は全体的に、上記ディスプレイ上でずらすことができる。このようにずれ調整が可能であることには、X方向およびY方向への直線的変位としてだけでなく、同時に旋回変位も含まれている。それは以下のような事情があるから好都合なものとなる。つまり、実際には、車両は必ずしも常に車両リフトにとって理想的な位置に進入しているとは限らないということである。たとえば、車両は斜めに、側方にずれて進入していたり、あるいは車両リフトへの進入度が浅すぎたり、深すぎたりすることがある。こうした事情からキャリッジアーム調節エラーが生じないようにするには、表示された上記基準位置を全体的に変位させて車両位置に合致するようにするのが好適である。これは、次のようにして、つまり、外側からよく見える1つまたは2つの車両リフトアップポイントに前記キャリッジアームが近寄せられるが、その際、これは前記基準位置が上記ディスプレイ上で前記受け台の実位置と重ね合わされるようにして行なうことができる。この重ね合わせに際し、当然のことながら、残りの所定の基準位置も同様にして連動されることから、4個の基準位置はすべて車両位置に合わされることになる。その結果、残りのキャリッジアームの調節は、ディスプレイを介して、容易に監視することが可能である。
【0008】
場合によっては、前記ディスプレイ上における表示された基準位置または表示された実位置の変位はX方向およびY方向に可能でありさえすれば十分なことがある。ただし、大型車両向け仕様の、相応して広い昇降支柱間隔を有する車両リフトをミニクラスの車両向けにも使用しようとすれば、車両リフトに斜めに進入した車両位置をも確実に処理可能に受け入れるようにするため、前記ディスプレイ上の基準位置または実位置のずらし(変位)を並進運動としてだけでなく、旋回運動としても実行できるようにするのが好適である。
【0009】
前記受け台の実座標位置の決定は、前記キャリッジアームの旋回角度の測定と前記キャリッジアームのアーム長さの測定とを通じて行なわれるのが好適である。これに適した角度センサおよび距離センサは公知である。
【0010】
車両リフトの運転安全性をさらに向上させるには、前記キャリッジアームの不測の旋回運動を禁止(ロック)するための通常のロックレバーがそのロック位置に入っているか否かをチェックして、入っていない場合には車両リフトの運転を禁止するセンサがキャリッジアームに配備されているのが好ましい。
【0011】
本発明をさらに好適なものとするための1つの形態では、前記キャリッジアームの旋回またはアーム長さの伸縮あるいはその両方が、基準座標位置と実座標位置との位置合わせを実行するコンピュータによるモータ駆動により、自動的に行なわれる。これによって、上昇前ならびに上昇後のいずれの場合にあっても、キャリッジアームの調節全体を自動化することが可能である。ただし、表示された目標位置を車両位置に合わせることができるようにすべく、第1のキャリッジアームは操作員によって基準位置にもたらされなければならない。
【0012】
また、車両リフトに進入した車両の位置は光学的に検知され、この位置情報は、基準座標位置と実座標位置との位置合わせを実行するコンピュータに送られる。これにより、実際の車両位置に対して基準位置を追従させることも自動化され、操作員がキャリッジアームの1つを基準位置に合わせるような作業を不要とすることができる。
【0013】
多くの車両において、前方および後方の車両リフトアップポイントは、同一のレベルには位置していない。こうした場合、基準座標位置および実座標位置がX方向およびY方向だけでなく、Z方向においても検知されるようにすると、コンピュータがZ方向の調節もするように構成することができる。この場合、車両リフトを自動化するために、受け台はそれぞれ、コンピュータによって制御される昇降モータと組み合わされているのが望ましい。
【0014】
測定ならびにリフトアップポイントの基準値と実値との位置合わせとは別な有用性を有する、本発明のさらに好適な実施形態では、キャリッジアームがそれぞれ、前記キャリッジアームに作用する車両の荷重を検出するためのセンサが備えられている。このセンサは、好ましくは、歪みゲージによって形成されているが、適用できるその他の形式のセンサを採用してもよい。
【0015】
重要なことは、各々のセンサを通じて算定された荷重は、総荷重を評価すると同時に、荷重分布を評価するために、コンピュータに入力される点である。その場合、各キャリッジアームは前記許容荷重に関して評価されると共に、昇降支柱の安定性を確保するために、前方のキャリッジアームと後方のキャリッジアームとの間の荷重分布も評価される。個別のキャリッジアーム当たりの算定荷重または全体としての算定荷重が過大にすぎるかまたは不均衡な荷重分布が存在する場合、コンピュータはその上昇を禁止することができる。
【0016】
これに関連して、キャリッジアームについて測定された荷重を一方とし、2本のリフトアームに生ずる荷重を他方とした妥当性チェックも行なうことができる。リフトアームがたとえば油圧駆動される場合には、その油圧と既知のピストン面積とから同所にかかる荷重が求められ、これにより、この荷重は、コンピュータによって、この昇降支柱の前方キャリッジアームと後方キャリッジアームにおいて算定された荷重の和と照合可能となる。これによって、運転安全性のさらなる向上がもたらされる。
【0017】
安全工学的観点からのさらに別な好適実施形態は、前記キャリッジアームの昇降動作を、前記受け台の基準位置および実位置に関して、また場合によっては、荷重、さらに場合によってはキャリッジアームロックに関しても、文書化などの形態で記録化される。これにより、万一故障や事故などが生じた場合に、原因がどこにあったかを確実に追跡することが可能である。
【0018】
最後に、データ記憶手段およびコンピュータが1台の車両リフトだけでなく、複数台の車両リフトに対して共通仕様の共通デバイスとして利用されることも本発明の範囲に属する。これによって、複数台の昇降リフトの設置コストは低下する。データ回線の面倒な引き回しを回避するために、中央コンピュータとのデータの伝送は無線で行なうことがこのましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は以下に記載の実施例の説明ならびに図面から判明するとおりである。各図は以下を示している。
図1】進入中の車両および車両リフトを示す斜視図である。
図2】ディスプレイ付き昇降支柱の拡大図である。
図3】キャリッジアームが旋回していない時点の基準位置と実位置とをディスプレイに表示した際の画面図である。
図4】キャリッジアーム旋回ないしはリフト時の基準位置と実位置および荷重をディスプレイに表示した際の画面図である。
図5】昇降支柱とキャリッジアームとの連結部の部分拡大図である。
図6】ブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、進入中の車両3の側方両側に配置されている2本の昇降支柱1および2が示されている。双方の昇降支柱には、キャリッジアーム11および12ないし21および22(以下キャリッジアームの図番は11で代表させておく)が装備されている。これらのキャリッジアーム11は公知の方法でそれぞれの昇降支柱に水平旋回可能に支持されているとともに、さらに、長手方向にアーム長さの伸縮可能である。そのため、車両の進入後、上昇が開始される前に、車両側方の外側静止位置から旋回されて車両車体の下部に入り込むことができる。これらのキャリッジアーム11はそれらの自由端にそれぞれ高さ調節可能な受け台11a、12aないし21a、22aを有している。これらの受け台は、上昇の間、車両を損ずることなく、車両重量を支えることができるように、車両製造会社(自動車メーカ)によって指定されている車両車体下部の所定のリフトアップポイントに位置決めされなければならない。
【0021】
同期駆動制御のために、双方の昇降支柱1および2は、それ自体公知のコントロールケーブルを収納したクロス連結部材4によって互いに連結されている。
【0022】
重要な点は、車両リフトの進入ゾーンが光学的に、たとえばカメラ5によって、検知されることである。このカメラは、車両が車両リフトに進入した後、車両リフトに対する車両輪郭の相対位置を検知する機能を有する。
【0023】
図2は、外側から眺めた昇降支柱1の部分拡大図を示している。同図から、この昇降支柱はディスプレイ6を備えていることが理解できる。このディスプレイ6は、4個の受け台11a、12a、21a、22aの基準位置および実位置ならびにキャリッジアーム11によって受け止められている荷重を表示する。
【0024】
図3は、車両が車両リフトに進入した後、キャリッジアーム11は未旋回で、なお車両側方の外側静止位置に位置している場合のディスプレイを拡大して示したものである。それゆえ、図3においては、前方の受け台11aおよび21aも、後方の受け台12aおよび22aも、ディスプレイの最も外側のコーナ部に位置している。
【0025】
加えてさらに、ディスプレイはすでに、データ記憶手段16(図6、参照)から転送された、車両製造会社によって指定された基準−リフトアップポイントも示している。これらの基準位置は、対応関係をわかりやすくするために、同一の符号(ただし、´を付して)11a´、12a´、21a´および22a´で表示されている。
【0026】
図3において、リフトアップポイントに関する基準値は、表示された中心軸に対して正確なシンメトリーをなしていない。それらは、むしろ、やや助手席側にずれている。これはカメラ5によって検知された車体輪郭に起因している。車両輪郭は、この実施形態において、正確に2本の昇降支柱1と2との間の中心に位置しておらず、やや助手席側(左ハンドル車)にずれている。これはカメラ画像のコンピュータ評価によって検知され、これらの基準位置を実際の車両位置に合わせるために、基準位置11a´、12a´、21a´および22a´は相応してずらされている。
【0027】
図3を出発状態として、操作員は、4本のキャリッジアーム11をそれらの外側静止位置から内側の車両下部に向かって旋回移動させ、すべての受け台がディスプレイに表示された基準位置に達するようにする。この状態は図4に表されている。これらの基準位置への到達プロセスはディスプレイによって容易に追跡可能であり、必要に応じて容易に再調整することも可能であるが、それは受け台の実位置が常時測定されて、コンピュータに送られ、さらに表示データかされディスプレイ6にも伝送されるからである。すべての受け台がそれぞれの基準位置に到達することで初めて、上昇が許可される。
【0028】
図4は、さらに別実施形態であるところの、すなわちキャリッジアーム11に作用する荷重が同時に測定される場合での、ディスプレイ6を示している。同図から、前方左側のキャリッジアームには314kg、前方右側のキャリッジアームには298kgの荷重がかかり、他方、後方左側のキャリッジアーム11には452kg、右側のキャリッジアーム11には414kgの荷重がかかっていることがわかる。これら個々のキャリッジアーム11間の荷重分布は、左右前後の荷重和ならびに総荷重和もそうであるが、継続的に検出され、その値は所定の限界内になければならない。もしもそうでない場合には、これらのデータの入力に応じてコンピュータ15(図6、参照)はキャリッジアーム11の上昇を禁止する。この場合、同一のコンピュータが基準座標位置と実座標位置との位置合わせも管理しているのが好適である。
【0029】
図4のディスプレイは、さらに、キャリッジアーム11がそれぞれの旋回領域においてロックされているか否かを表示する。このようなロックは、いわゆるキャリッジアームロック手段によって行なわれ、適当なセンサによって監視される。キャリッジアーム11がロックされていない場合には、その旨が表示され、キャリッジアーム11の上昇は禁止される。
【0030】
図5は、キャリッジアーム11の実施形態における、キャリッジアーム11と昇降支柱1との連結ゾーンの部分拡大図を示している。ここではキャリッジアーム11は、それ自体公知の方法で、垂直な回転軸を有した旋回継手110を介して昇降支柱1の昇降キャリッジ1aに支持されている。昇降キャリッジ1aは、それ自体公知の方法で、機械式駆動または油圧式駆動で昇降動作する。
【0031】
ここで重要な点は、旋回継手110が角度測定装置と組み合わされていることである。この角度測定装置については、当業者にとっては種々の形態が知られている。この実施形態において、この角度測定装置は、キャリッジアーム11とともに旋回運動を行うマグネットリング111と、昇降キャリッジ1aに組付けられたホールセンサ1bとで構成されている。このホールセンサは旋回角度を検知して、相応する信号をコンピュータ15に転送する。
【0032】
さらに、各キャリッジアーム11には、コンピュータ15と接続された長さ測定装置が備えられている。これについては、数多くの公知の測定技術が適していることから、図には詳細に示されていない。
【0033】
また、図5は、キャリッジアーム11に作用する荷重を検知するセンサ12がキャリッジアーム11に設けられていることを示している。このセンサは歪みゲージとして構成されており、そのセンサ信号は同じく上述のコンピュータに転送される。
【0034】
最後に、図5はさらに、キャリッジアーム11の不測の旋回を防止するキャリッジアームロックの存在を暗示している。通例、キャリッジアーム11は、それが所望の旋回位置に到達した後、図中詳細不図示の歯付きロックレバーによってロックされる。昇降キャリッジ1aは、このロックレバーの動きを検知するセンサ(誘導センサなど)13を備えている。センサ13は同じく上記のコンピュータ15に接続されているために、コンピュータは、ロックレバーが禁止位置に入っていなかった場合、車両リフトの上昇を禁止する。
【0035】
図6はデータフローを図解したものである。中央にはコンピュータ15が位置している。このコンピュータ15はデータ記憶手段16も内蔵しており、このデータ記憶手段16には、車両製造会社によって指定された受け台の基準位置が、対応する車種とリンクされた形態で記憶されている。
【0036】
コンピュータ15には、各キャリッジアーム11に対応するセンサを通じて、キャリッジアーム11の角度位置および伸縮長さ(アーム長さ)に関するデータが入力され、これらのデータから受け台の実位置が演算される。コンピュータ15はこれらの実位置を所定の基準位置と比較して、キャリッジアーム角度に関する制御信号をサーボモータ17に与え、キャリッジアーム11のアーム長さを調節する制御信号をサーボモータ18に与える。
【0037】
さらに、コンピュータ15には、各キャリッジアーム11に設けられた歪みゲージである荷重センサ12から信号が入力され、この信号から、個々のキャリッジアーム11にかかる荷重を算定し、それらの許容度および荷重分布とその妥当性を、昇降支柱に生ずる荷重との照合によって評価する。
【0038】
また、コンピュータ15には、キャリッジアームロックの状態を評価するセンサ13からデータが入力され、さらには、車両リフトに対する車両車体の相対位置を検知するカメラ5からデータも入力される。これらの入力データによって、現実の車両の位置が、基準の位置にくるような処理がなされる。
【0039】
コンピュータに入力されたデータは、必要に応じて、車両リフトのディスプレイ6に表示されるとともに、制御を目的として互いに独立して、永続的にデータ記憶手段16に格納することができる。
【0040】
以上の説明から、本発明は、車両リフトの誤操作が事実上排除されるために、安全性が確保される。それと同時に、操作員はキャリッジアーム11の調整をディスプレイによって監視することができ、旋回レバーがモータ駆動されていれば操作プロセス全体が自動化されるために、車両リフトの操作は従来よりも容易となる。
【0041】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構造に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
3: 車両
11,12,21,22:キャリッジアーム
1,2:昇降支柱
11a,12a,21a,22a:受け台
11a´、12a´、21a´、22a´:リフトアップポイント
15: コンピュータ
16: データ記憶手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6