(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245641
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】タッチパッド入力装置およびタッチパッド制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0354 20130101AFI20171204BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
G06F3/0354 453
G06F3/041 534
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-11974(P2014-11974)
(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公開番号】特開2015-141426(P2015-141426A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大下 和人
【審査官】
塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−009514(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0322683(US,A1)
【文献】
特開2011−204092(JP,A)
【文献】
特開2011−100486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
3/03−3/0489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面に対する物体の近接状態に応じて出力される電気的変量に基づき検出された前記物体の接触位置に基づき前記操作面に対するタッチ操作を認識するとともに、キーボード操作状況に基づき前記タッチ操作を有効または無効にする制御部を備えたタッチパッド入力装置であって、
前記制御部は、キーボード操作中またはキーボード操作後の所定時間内は操作面全面をタッチ操作無効領域とし、所定時間経過後操作面上にタッチ操作があるかどうかの初回の判断において、タッチ操作があると判断したとき、タッチ操作があった領域を引き続きタッチ操作無効領域にすることを特徴とするタッチパッド入力装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記初回の判断においてタッチ操作があると判断したタッチ操作が継続されているときは前記タッチ操作があった領域を継続してタッチ操作無効領域とし、タッチ操作が継続されなかったときは前記タッチ操作があった領域をタッチ操作有効領域とすることを特徴とする請求項1記載のタッチパッド入力装置。
【請求項3】
操作面に対する物体の近接状態に応じて出力される電気的変量に基づき検出された前記物体の接触位置に基づき前記操作面に対するタッチ操作を認識するとともに、キーボード操作状況に基づき前記タッチ操作を有効または無効にするタッチパッド制御プログラムであって、
キーボード操作中またはキーボード操作後の所定時間内は操作面全面をタッチ操作無効領域とし、所定時間経過後操作面上にタッチ操作があるかどうかの初回の判断において、タッチ操作があると判断したとき、タッチ操作があった領域を引き続きタッチ操作無効領域にすることを特徴とするタッチパッド制御プログラム。
【請求項4】
前記初回の判断においてタッチ操作ありと判断したタッチ操作が継続されているときは前記タッチ操作があった領域を継続してタッチ操作無効領域とし、タッチ操作が継続されなかったときは前記タッチ操作があった領域をタッチ操作有効領域とすることを特徴とする請求項3記載のタッチパッド制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノートPC等に搭載されるタッチパッド入力装置およびタッチパッド制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノートPC等に設けられるタッチパッド入力装置は近年大型化する傾向があり、キーボードを操作するときにパーム(掌)が接触しやすくなり、誤操作しやすくなる。そのため、その誤操作を防止するものとして、キーボード操作中またはキーボードを操作してからしばらくの間はタッチパッドの操作を無効とする誤操作防止機能が検討されている。
【0003】
特許文献1に、キーボード操作中およびキーボードを操作してからしばらくの間はタッチパッドの操作を無効とする誤操作防止機能が開示されている。これによれば、パームによる誤操作を防止することができる。しかし、キーボード操作直後は指先による正規の操作も受け付けないこととなり、指先による正規の操作が阻害されてしまうことがある、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−78850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した問題を解決して、パームによる誤操作を防止することができるとともに、指先による正規の操作を阻害しにくくすることができるタッチパッド入力装置およびタッチパッド制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のタッチパッド入力装置においては、操作面に対する物体の近接状態に応じて出力される電気的変量に基づき検出された前記物体の接触位置に基づき前記操作面に対するタッチ操作を認識するとともに、キーボード操作状況に基づき前記タッチ操作を有効または無効にする制御部を備え、前記制御部は、キーボード操作中またはキーボード操作後の所定時間内
は操作面全面をタッチ操作無効領域とし、所定時間経過後操作面上にタッチ操作があるかどうかの初回の判断において、タッチ操作があると判断したとき、タッチ操作があった領域を
引き続きタッチ操作無効領域にするという特徴を有する。
【0007】
請求項1のタッチパッドによれば、キーボード操作中およびキーボード操作後のパームの接触位置は一般的に操作面の両側方であって大きく移動しないので、その領域をタッチ操作無効領域とすればパームによる誤操作を防止することができる。一方正規の操作を行なうときの指先の接触位置は一般的に操作面の中心付近であるので、タッチ操作がなかったその領域をタッチ操作有効領域とすれば指先による正規の操作を阻害しにくくすることができる。
【0008】
請求項2に記載のタッチパッド入力装置においては、前記制御部は、前記
初回の判断においてタッチ操作ありと判断したタッチ操作が継続されているときは前記タッチ操作があった領域を継続してタッチ操作無効領域とし、タッチ操作が継続されなかったときは前記タッチ操作があった領域をタッチ操作有効領域とする、という特徴を有する。
【0009】
請求項2のタッチパッド入力装置によれば、パームが離れたあとは、パームがあった領域もタッチ操作有効領域となる。そのため、指先による正規の操作を支障なく行なうことができる。
【0010】
請求項3に記載のタッチパッド制御プログラムにおいては、操作面に対する物体の近接状態に応じて出力される電気的変量に基づき検出された前記物体の接触位置に基づき前記操作面に対するタッチ操作を認識するとともに、キーボード操作状況に基づき前記タッチ操作を有効または無効にし、キーボード操作中またはキーボード操作後の所定時間内は
操作面全面をタッチ操作無効領域とし、所定時間経過後操作面上にタッチ操作があるかどうかの初回の判断において、タッチ操作があると判断したとき、タッチ操作があった領域を
引き続きタッチ操作無効領域にする、という特徴を有する。
【0011】
請求項4に記載のタッチパッド制御プログラムにおいては、前記
初回の判断においてタッチ操作ありと判断したタッチ操作が継続されているときは前記タッチ操作があった領域を継続してタッチ操作無効領域とし、タッチ操作が継続されなかったときは前記タッチ操作があった領域をタッチ操作有効領域とする、という特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キーボード操作中およびキーボード操作後のパームの接触位置は一般的に操作面の両側方であって大きく移動しないので、その領域をタッチ操作無効領域とすればパームによる誤操作を防止することができる。一方正規の操作を行なうときの指先の接触位置は一般的に操作面の中心付近であるので、タッチ操作がなかった領域をタッチ操作有効領域とすれば指先による正規の操作を阻害しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態におけるタッチパッド2およびキーボード10がノートPCに搭載された状態を示す図である。
【
図2】本実施形態におけるタッチパッド入力装置1およびキーボード10のシステム構成図である。
【
図3】本実施形態における制御部6のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から
図5を用いて本実施形態のタッチパッド入力装置1を説明する。
図1は、タッチパッド2およびキーボード10がノートPCに搭載された状態を示す図である。タッチパッド2は、キーボード10の手前のパームレスト部分の中央に取り付けられている。タッチパッド2は、タッチパッド入力装置1を構成する要素の1つであり、プリント基板、プリント基板上に敷設された電極、電極の上側に貼り付けられた表面シート等から構成される。
【0015】
図2は、タッチパッド入力装置1およびキーボード10のシステム構成図である。タッチパッド入力装置1は、タッチパッド2と、複数の配線を介してタッチパッド2と接続されASIC等からなる位置検出部5と、位置検出部5と接続される制御部6から構成される。タッチパッド2は、プリント基板と、プリント基板上に横方向に延設された複数の検出電極3と、検出電極3の上側に絶縁層を介して縦方向に延設された複数の駆動電極4と、駆動電極4の上側に貼り付けられた表面シートから構成され、表面シートの上面が操作面となる。位置検出部5は、駆動電極4への電圧印加状況および検出電極3の電圧検出状況に基づき電極間の静電容量の変化を検知して、指等の物体の接触位置を検出し、その位置信号を生成して制御部6に送信する。制御部6は、ノートPCの演算装置や記憶装置に該当するものであり、位置検出部5から位置信号を受信して操作面に対するタッチ操作を認識するものであり、本実施形態における制御プログラムを記憶するとともに本実施形態における制御動作を実行するものである。
【0016】
図3は、本実施形態における制御部6の制御動作を示すフローチャートである。
図4は、
図3のフローチャートにおけるステップS2のときに設定されるタッチ操作無効領域を説明する図である。
図5は、
図3のフローチャートにおけるステップS10のときに設定されるタッチ操作無効領域を説明する図である。
図3〜
図5を用いて、本実施形態におけるタッチパッド入力装置1の動作を説明する。
【0017】
最初にステップS1にて、キー入力があったかどうかを判断する。キー入力があったと判断した場合はステップS2に進む。
【0018】
次にステップS2にて、
図4に示すように操作面全面をタッチ操作無効領域Aとして登録する。
【0019】
次にステップS3にて、キー入力検出時刻を保存する。
【0020】
次にステップS4にて、タッチ操作無効領域の登録があるかどうかを判定する。操作無効領域の登録があればステップS5に進む。
【0021】
次にステップS5にて、タッチ操作無効領域上にある物体を無視し、スタートに戻る。ステップS1からステップS5までの処理を行なえば、キー入力中に誤ってパームがタッチパッド2に触れてしまっても、パームの接触によりタッチパッド入力装置1が意図しない動作をしてしまうことを防止することができる。
【0022】
ステップS1にて、キー入力がないと判定された場合には、ステップS6に進む。
【0023】
次にステップS6にて、最後のキー入力から所定時間経過したかどうか判断する。所定時間経過していないと判断した場合には、ステップS4に進む。このようなステップを設けることにより、キー入力中のみならずキー入力が終わってからしばらくの間は誤操作を防止できるようになっている。
【0024】
ステップS6にて、所定時間経過したと判断した場合には、ステップS7に進む。
【0025】
次にステップS7にて、操作面上に物体があるかどうか判断する。操作面上に物体があると判断した場合にはステップS8に進む。
【0026】
次にステップS8にて、所定時間の経過が初回であるかどうか判断する。所定時間の経過が初回であると判断した場合にはステップS9に進む。
【0027】
次にステップS9にて、操作面上の物体の位置情報を保存し、ステップ10に進む。
【0028】
次にステップS10にて、
図5に示すように操作面上のパーム等の物体の接触領域P1および周辺領域R1をタッチ操作無効領域A1とし、ステップ4に進む。ここで、その他の領域は、タッチ操作無効領域とせず、タッチ操作有効領域Bとする。このステップS10が本発明の特徴的動作である。なお、
図5では周辺領域R1は矩形であるが、これに限られるものでなく、
図6に示すように例えば接触領域P1を拡大したような形でもよい。また、
図5では、パーム等の物体の接触領域が1つのみ記載されているが、
図6に示すように複数ある場合にはそれぞれについて同じ処理を行なうようにしてもよい。
【0029】
図5に示すように、キーボード操作中およびキーボード操作後のパームの接触位置は一般的に操作面の両側方であって大きく移動しないので、その領域をタッチ操作無効領域A1およびA2とすればパームによる誤操作を防止することができる。一方正規の操作を行なうときの指先Fの接触位置は一般的に操作面の中心付近であるので、タッチ操作がなかった領域をタッチ操作有効領域Bとすれば指先による正規の操作を阻害しにくくすることができる。
【0030】
ステップS8にて、所定時間の経過が初回でないと判断した場合にはステップS11に進む。
【0031】
次に、ステップS11にて、ステップS9で見つけた物体がまだ操作面上にあるかどうかを判断する。ステップS9で見つけた物体がまだ操作面上にある場合にはステップS12に進む。
【0032】
次にステップS12にて、まだ操作面上にある物体の接触領域および周辺領域をタッチ操作無効領域とし、ステップS4に進む。ステップS11およびステップS12の動作を行なうことにより、タッチ操作が継続されているときはタッチ操作があった領域およびその周辺領域を継続してタッチ操作無効領域とし、パームによる誤操作を防止している。
【0033】
ステップS11にて、ステップS9で見つけた物体がもう操作面上にない場合には、ステップS13に進む。
【0034】
次にステップS13にて、操作無効領域の登録情報をクリアしてステップS4に進む。ステップS11およびステップS13の動作を行なうことにより、タッチ操作が継続されなかったときはそのタッチ操作があった領域およびその周辺領域をタッチ操作有効領域にするようにしている。これによれば全面がタッチ操作有効領域となり、指先による正規の操作を支障なく行なうことができる。
【0035】
このように本実施形態のタッチパッド入力装置1においては、操作面に対する物体の近接状態に応じて出力される電気的変量に基づき検出された物体の接触位置に基づき操作面に対するタッチ操作を認識するとともに、キーボード操作状況に基づきタッチ操作を有効または無効にする制御部6を備え、制御部6は、キーボード操作中またはキーボード操作後の所定時間内にタッチ操作があったとき、タッチ操作があった領域F1、F2および周辺領域R1、R2をタッチ操作無効領域A1、A2にするとともにタッチ操作がなかった領域をタッチ操作有効領域Bにするようにした。
【0036】
これによれば、キーボード操作中およびキーボード操作後のパームの接触位置は一般的に操作面の両側方であって大きく移動しないので、その領域をタッチ操作無効領域A1およびA2とすればパームによる誤操作を防止することができる。一方正規の操作を行なうときの指先Fの接触位置は一般的に操作面の中心付近であるので、タッチ操作がなかった領域をタッチ操作有効領域Bとすれば指先による正規の操作を阻害しにくくすることができる。
【0037】
また、本実施形態のタッチパッド入力装置1においては、制御部6は、タッチ操作が継続されているときはタッチ操作があった領域およびその周辺領域を継続してタッチ操作無効領域とし、タッチ操作が継続されなかったときはそのタッチ操作があった領域およびその周辺領域をタッチ操作有効領域にする、という特徴を有する。
【0038】
これによれば、パームが離れたあとは、パームがあった領域もタッチ操作有効領域となる。そのため、指先による正規の操作を支障なく行なうことができる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変形を加えて実施することができるのは言うまでもない。本実施例では、物体の接触領域およびその接触領域の周辺領域を操作無効領域としたが、それに限らず、物体の接触領域と、タッチパッド2の両側方に固定的に設定された所定領域が操作無効領域となるようなものでもよい。また、接触した物体がパームではなく指であると判断できる場合には操作無効領域を設定しないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 タッチパッド入力装置
2 タッチパッド
3 検出電極
4 駆動電極
5 位置検出部
6 制御部
10 キーボード
A タッチ操作無効領域
A1 タッチ操作無効領域
A2 タッチ操作無効領域
B タッチ操作有効領域
P1 接触領域
P2 接触領域
R1 周辺領域
R2 周辺領域
F 指