特許第6245645号(P6245645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ケーヒンの特許一覧

<>
  • 特許6245645-電磁弁 図000002
  • 特許6245645-電磁弁 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245645
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   F16K31/06 305E
   F16K31/06 305N
   F16K31/06 305S
   F16K31/06 385A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-61489(P2014-61489)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-183789(P2015-183789A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】及川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】木立 大介
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−251607(JP,A)
【文献】 実開昭61−112180(JP,U)
【文献】 実開平05−083558(JP,U)
【文献】 特開平04−083982(JP,A)
【文献】 実開昭53−134133(JP,U)
【文献】 実開昭61−029181(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に天井壁(5a)を一体に有すると共に他端を開放した有底円筒状の主ヨーク(5)と,この主ヨーク(5)の開放端を閉じる補助ヨーク(6)とでヨーク(4)を構成し,このヨーク(4)内に,ボビン(7)にコイル(8)を巻装してなるコイル組立体(9)を収容し,前記ボビン(7)の中空部(7a)に,前記天井壁(5a)に当接する固定コア(15)を配置し,前記補助ヨーク(6)を貫通する可動コア(17)を前記ボビン(7)の中空部(7a)において前記固定コア(15)に対向配置し,これら固定コア(15)及び可動コア(17)間に,これらを相互に離反方向に付勢するコイルばね(20)を縮設し,前記可動コア(17)の先端に弁体(25)を付設し,前記ヨーク(4)が固定される制御基体(B)に,前記コイル(8)の非通電時,前記弁体(25)が着座する弁座部材(26)を設けてなる電磁弁において,
前記固定コア(15)を前記ボビン(7)の中空部(7a)に摺動可能に嵌装し,この固定コア(15)を,前記コイルばね(20)の,前記固定コア(15)に与えるセット荷重と,前記コイル(8)への通電に基づく前記固定コア(15)及び天井壁(5a)間の吸引力とにより,前記天井壁(5a)に密着保持することを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
請求項1記載の電磁弁において,
天井壁(5a)及びボビン(7)間に,前記固定コア(15)を囲繞するシール部材(16)を介装したことを特徴とする電磁弁。
【請求項3】
請求項1記載の電磁弁において,
この電磁弁(S)が車両に搭載されて30G以上の振動加速度を印加されても,前記固定コア(15)が前記天井壁(5a)から浮上しないように,前記コイルばね(20)のセット荷重を設定したことを特徴とする電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,一端に天井壁を一体に有すると共に他端を開放した有底円筒状の主ヨークと,この主ヨークの開放端を閉じる補助ヨークとでヨークを構成し,このヨーク内に,ボビンにコイルを巻装してなるコイル組立体を収容し,前記ボビンの中空部に,前記天井壁に当接する固定コアを配置し,前記補助ヨークを貫通する可動コアを前記ボビンの中空部において前記固定コアに対向配置し,これら固定コア及び可動コア間に,これらを相互に離反方向に付勢するコイルばねを縮設し,前記可動コアの先端に弁体を付設し,前記ヨークが固定される制御基体に,前記コイルの非通電時,前記弁体が着座する弁座部材を設けてなる電磁弁の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝる電磁弁は,特許文献1に開示されるように既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−43762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報記載の電磁弁では,固定コアを主ヨークの天井壁に固定するために,ボルトを使用しているため,部品点数及び組立工程が多く,コストの低減が困難であった。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,部品点数及び組立工程が少なく,廉価な前記電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために,本発明は,一端に天井壁を一体に有すると共に他端を開放した有底円筒状の主ヨークと,この主ヨークの開放端を閉じる補助ヨークとでヨークを構成し,このヨーク内に,ボビンにコイルを巻装してなるコイル組立体を収容し,前記ボビンの中空部に,前記天井壁に当接する固定コアを配置し,前記補助ヨークを貫通する可動コアを前記ボビンの中空部において前記固定コアに対向配置し,これら固定コア及び可動コア間に,これらを相互に離反方向に付勢するコイルばねを縮設し,前記可動コアの先端に弁体を付設し,前記ヨークが固定される制御基体に,前記コイルの非通電時,前記弁体が着座する弁座部材を設けてなる電磁弁において,前記固定コアを前記ボビンの中空部に摺動可能に嵌装し,この固定コアを,前記コイルばねの,前記固定コアに与えるセット荷重と,前記コイルへの通電に基づく前記固定コア及び天井壁間の吸引力とにより,前記天井壁に密着保持することを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は,第1の特徴に加えて,天井壁及びボビン間に,前記固定コアを囲繞するシール部材を介装したことを第2の特徴とする。前記シール部材は,後述する本発明の実施形態中の第2シール部材16に対応する。
【0008】
さらに本発明は,第1の特徴に加えて,電磁弁が車両に搭載されて30G以上の振動加速度を印加されても,前記固定コアが前記天井壁から浮上しないように,前記コイルばねのセット荷重を設定したことを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば,ボビンの中空部に摺動可能に嵌装される固定コアは,コイルばねの,固定コアに与えるセット荷重と,コイルへの通電に基づく固定コア及び天井壁間の吸引力とにより,天井壁との密着状態に保持されるので,その保持のために特別な固着部材を用いる必要がなくなり,電磁弁の部品点数及び組立工程が減少し,コストの低減を図ることができる。
【0010】
本発明の第2の特徴によれば,天井壁及びボビン間に,固定コアを囲繞するシール部材を介装したので,そのシール部材により,ボビンの中空部の外部との連通を遮断することができる。しかもそのシール部材は,固定コアの摺動摩擦抵抗を増加させることがないから,コイルの容量増を行うことなく固定コアを天井壁に密着保持することができ,電磁弁の小型化を図ることができる。
【0011】
本発明の第3の特徴によれば,電磁弁が車両に搭載されて30G以上の振動加速度を印加されても,固定コアが天井壁から浮上しないように,コイルばねのセット荷重を設定したので,固定コアを常に天井壁との密着状態に保持することができ,したがってコイルの通電時には,固定コアは,直ちに可動コアを吸引して,弁体を開弁させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る電磁弁の平面図。
図2図1の2−2線拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0014】
図1及び図2において,油路1を有する制御基体Bに,その油路1を開閉する電磁弁Sのブラケット2がボルト3により締結される。
【0015】
図2に示すように,電磁弁Sのヨーク4は,一端に天井壁5aを一体に有すると共に他端を開放した有底円筒状の主ヨーク5と,この主ヨーク5の開放端部の内周面に圧入される補助ヨーク6とで構成され,主ヨーク5の下端に前記ブラケット2が一体に形成される。主ヨーク5はプレス製である。
【0016】
ヨーク4内には,ボビン7にコイル8を巻装してなるコイル組立体9が収容され,このコイル組立体9の外周には,合成樹脂製の被覆層10が射出成形時により形成される。その際,カプラ12が,コイル組立体9の一側方に張り出すように被覆層10と一体に成形され,このカプラ12により,コイル8に連なる給電端子11が保持される。前記主ヨーク5には,このカプラ12の頸部が通過する切欠き13が設けられる。補助ヨーク6及びボビン7間には,第1シール部材14が介装される。
【0017】
上記ボビン7の中空部7aには,前記天井壁5aに当接する固定コア15が摺動可能に嵌装される。またボビン7の,前記天井壁5aとの対向面には固定コア15を囲繞する環状のシール溝21が形成され,このシール溝21に,前記天井壁5aに密接する第2シール部材16が装着される。
【0018】
またボビン7の中空部7aにおいて固定コア15に対向する可動コア17が,補助ヨーク6の透孔18を貫通するように配設され,この可動コア17を保持する非磁性のセットカラー19が透孔18に装着される。このセットカラー19は,その内端にボビン7及び補助ヨーク6間に配置される取り付けフランジ19aを有し,またその外端に可動コア17の脱落を防ぐ内向き鍔19bを有している。このセットカラー19は,ヨーク4のブラケット2を制御基体Bに取り付ける前に,可動コア17の透孔18からの離脱を防ぐもので,ブラケット2を制御基体Bに取り付けた後は,可動コア17の往復作動に干渉しないようになっている。
【0019】
固定コア15及び可動コア17間には,両コア15,17を相互に離反する方向に付勢するコイルばね20が縮設され,このコイルばね20の大部分は,固定コア15の吸引面に開口するばね保持孔22に収容され,このコイルばね20の可動端は,可動コア17の吸引面より突出した短軸17aによって位置決めされる。また可動コア17の吸引面には,コイルばね20により保持される非磁性のワッシャ23が配設される。
【0020】
可動コア17の先端には円錐状の弁体25が一体に形成され,この弁体25が着座する弁座部材26が制御基体Bの油路1に介装される。而して,弁体25の弁座部材26に対する離座及び着座により油路1は開閉される。
【0021】
補助ヨーク6及び制御基体B間には,セットカラー19を囲繞する第3シール部材27が介装される。
【0022】
次に,この実施形態の作用について説明する。
【0023】
コイルばね20は,そのセット荷重により固定コア15及び可動コア17を離反方向に付勢しているので,コイル8の非通電時には,コイルばね20のセット荷重によって,固定コア15は,主ヨーク5の天井壁5aとの密着状態に押圧される一方,可動コア17は,弁体25を弁座部材26に着座させるように押圧される。したがって,制御基体Bの油路1は遮断されている。
【0024】
コイル8に通電すると,それによって発生する磁束が,固定コア15,主ヨーク5,補助ヨーク6,可動コア17及び固定コア15へと順次流れ,固定コア15及び主ヨーク5の天井壁5a間に吸引力が発生し,固定コア15は,天井壁5aに吸着される。これと同時に,固定コア15及び可動コア17間にも吸引力が発生し,両コア15,17は,非磁性のワッシャ23を介して相互に吸着状態となるが,固定コア15が天井壁5aに吸着されることから,吸着状態の両コア15,17が一体となって天井壁5aに吸着されることなり,弁体25を開弁することができる。
【0025】
こゝで,弁体25の開弁に必要な条件は,下記(1)及び(2)式を同時に満足させることである。
【0026】
Fy>Fc+F1 +F2 ・・・・・(1)
Fc>Fs+F1 ・・・・・(2)
但し,Fy:天井壁5a及び固定コア15間の吸引力
Fc:両コア15,17間の吸引力
Fs:コイルばね20のセット荷重
1 :固定コア15の摺動摩擦抵抗
2 :可動コア17の摺動摩擦抵抗
こゝで,コイルばね20のセット荷重Fsは,コイル8の非通電時,車両から電磁弁Sに30G以上の振動加速度が印加されても,固定コア15が天井壁5aから浮上しないように設定される。
【0027】
このように,ボビン7の中空部7aに摺動可能に嵌装される固定コア15は,コイルばね20の,固定コア15に与えるセット荷重Fsと,コイル8への通電に基づく固定コア15及び天井壁5a間の吸引力Fcとにより,天井壁5aとの密着状態に保持されるので,その保持のために特別な固着部材を用いる必要がなくなり,電磁弁Sの部品点数及び組立工程が減少し,コストの低減を図ることができる。
【0028】
またコイルばね20のセット荷重Fsは,コイル8の非通電時,車両から電磁弁Sに30G以上の振動加速度が印加されても,固定コア15が天井壁5aから浮上しないように設定されることで,コイル8の非通電時,車両の走行により,電磁弁Sが振動を受けても,固定コア15が天井壁から浮上することはない。したがって,固定コア15を常に天井壁5aとの密着状態に保持することができるから,コイル8の通電時には,固定コア15は,天井壁5aから吸引されることゝと相俟って,直ちに可動コア17を吸引して,弁体25を開弁させることができる。
【0029】
油路1中の作動油は,可動コア17の周囲からボビン7の中空部7aに侵入していくが,ヨーク4の天井壁5a及びボビン7間には,固定コア15を囲繞する第2シール部材16が介装されているので,この第2シール部材16により,上記作動油のヨーク4外部への流出,並びにボビン7内への外気の侵入を防ぐことができる。ところで,作動油のヨーク4外部への流出を防ぐには,シール部材を固定コア15及びボビン7間に介装することも考えられるが,そうすると,そのシール部材の固定コア15に対する締めつけ力により,固定コア15の摺動摩擦抵抗F1 が増加することになるから,前記(1)式から明らかように,天井壁5a及び固定コア15間の吸引力Fyを増加させなければ,弁体25の開弁を確保できなくなり,コイル8の容量増を余儀なくされる。そこで,本発明では,前述のように,天井壁5a及びボビン7間に,固定コア15を囲繞する第2シール部材16を介装したので,その第2シール部材16が固定コア15の摺動摩擦抵抗を増加させることはない。したがってコイル8の容量増の必要はなく,電磁弁Sの小型化に寄与し得る。
【0030】
コイル8への通電を絶つと,コイルばね20の両コア15,17に対する離反力により,固定コア15は,天井壁5aとの密着位置に保持されると共に,可動コア17は,固定コア15から離間して,弁体25を閉弁状態に戻すことになる。その際,可動コア17の,固定コア15との対向面に設けた非磁性のワッシャ23が両コア15,17間の残留磁気を解消して,可動コア17の戻り応答性の向上を図ることができる。しかも上記ワッシャ15は,コイルばね10を利用して可動コア17に保持されるので,その保持構造が簡単である。
【0031】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
B・・・・制御基体
S・・・・電磁弁
4・・・・ヨーク
5・・・・主ヨーク
5a・・・天井壁
6・・・・補助ヨーク
7・・・・ボビン
7a・・・中空部
8・・・・コイル
9・・・・コイル組立体
15・・・固定コア
16・・・シール部材(第2シール部材)
17・・・可動コア
20・・・コイルばね
25・・・弁体
26・・・弁座部材
図1
図2