【実施例1】
【0009】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
小型の機械部品や小型の電子部品などのワークを一度に大量に取扱うのに、部品トレーを使用する。ここで、小型の機械部品は、例えば、小型ネジや、機械装置類の軸受けに使用される焼結リングなどとすることができる。また、小型の電子部品は、例えば、接点材料や、携帯電話またはタブレットなどの携帯型端末に用いられるリード部品や表面実装部品などとすることができる。但し、小型のワークは、上記に限るものではない。なお、上記のうち、焼結リングや表面実装部品などについては、高温で熱処理が行われるものである。この場合には、部品トレーは、大量のワークを収容した状態で一度に熱処理を行うことができる熱処理用治具として使用されることになる。
【0010】
この実施例では、部品トレー1を以下のようなものとする。
(1)全面に多数の貫通孔部2を有する1枚の金属製の多孔板3(
図6参照)を折り曲げて、
図1(〜
図5)に示すように、底面部4と、この底面部4の縁部から立上がる側面部5,6と、隣接する側面部5,6間に位置するコーナー部7と、を一体に有するトレー本体8を形成する。
そして、このトレー本体8は、
図3、
図4に示すように、上記側面部5,6が、上記底面部4に対して鈍角状に立上がるものとされる(補角:α1,α2<90°)。
また、
図5に示すように、上記コーナー部7に、谷折りによるワーク滑落部11が設けられる。
【0011】
ここで、部品トレー1は、枠状の治具本体と、この治具本体の内部に設置されるトレー本体8と、を有するものとされる。貫通孔部2は、多孔板3の内外面間を貫通する小孔とされる。貫通孔部2は、小型のワークよりも穴径が小さいもの、または、小型のワークが抜け落ちない大きさや形状を有するものとされる。1枚の金属製の多孔板3は、実質的に展性のないものを使用するのが好ましい。実質的に展性がないとは、伸ばすことによって、多孔板3が多孔板3としての機能を失ったり(例えば、貫通孔部2が部品トレー1として使用不能な程度にまで著しく変形するなど)、多孔板3が千切れたり破れたりして破損するなどの状態になることである。なお、金属製の板材は、多孔板3にすることによって展性を大きく喪失する。但し、多孔板3に残された数%程度(だいたい5%程度以下)の展性については、「実質的に展性がない」の範囲に含まれるものとする。
【0012】
1枚とは、複数枚の多孔板3やその他の板材などを組み合わせたものでないことである。多孔板3は、多数の孔を有する金属製の板材のことである。特に、高温で熱処理を行う場合には、多孔板3にステンレスやニッケルなどの耐熱金属が用いられる。多孔板3には、例えば、パンチングメタルなどを用いることができる。但し、貫通孔部2の小径化を図る場合には、後述するように、エキスパンドメタル21やエッチング板などを使用することができる。折り曲げとは、折り曲げ以外の手段を用いないことである。例えば、切断したり、接着や溶接などの接合手段を用いたりしないことである。なお、折り曲げであっても、ワークの引掛かりや嵌り込みなどを防止するために、180°折り返しによる重複部などは形成しないようにする。
【0013】
そして、多孔板3は、底面部4と、側面部5,6と、コーナー部7とを展開した平面形状のものとされる(
図6参照)。多孔板3は、部品トレー1を取り扱う際に(熱処理などを含む)、形が崩れない程度の自己保持性を有するものとなるように、厚さが1mm程度以下で0.1mm程度以上の、薄板状で箔よりは厚いものが使用される。
底面部4は、この場合、平坦な面とされる。底面部4は、長方形または正方形などの矩形状とされる。側面部5,6は、底面部4が長方形の場合、側面部5を長辺とし、側面部6を短辺とする。側面部5,6は、高さが等しいほぼ短冊状をした平坦面とされる。コーナー部7は、平面に展開した時に、側面部5,6間に位置する中心角が90°または90°よりも若干大きい扇型の部分を、襞折りにしたものとされる(襞折部12を有するコーナー部7)。
【0014】
トレー本体8には、側面部5,6の上縁部に、枠状の治具本体に対して上方から係止可能なフック部15(係止部または取付部)が、一体に曲げ形成される。側面部5,6と、底面部4とが成す鈍角状の角度は、おおむね40°〜90°未満の角度(鈍角)とされる。
【0015】
ワーク滑落部11は、文字通り、ワークを滑らせて取出すようにした滑り台状の取出部である。このワーク滑落部11は、トレー本体8を水平状態にした時には、ほぼ上下に延びて、上広がりとなる谷折りの折目とされる。このワーク滑落部11の谷折りの折目は、ワークが引っ掛らないような大きさとされる。よって、収容するワークの大きさなどを想定して作られていない単なる谷折りの折目や、ワークを滑らせて取り出すように使用できない谷折りの折目は、ワーク滑落部11には含まれない。各ワーク滑落部11は、トレー本体8の内面側に凹形状となり、外面側に凸形状となる(谷部分を構成する)、平面的に見てほぼU字状またはV字状の曲げ形状部とされる。U字状またはV字状のワーク滑落部11の奥部は、尖った折れ角や折れ線が出来ないようにアール状のコーナー部とされる。そして、ワーク滑落部11は、
図5に一点鎖線で示すような、隣接する側面部5,6の端部間を曲線状に結んだ線Rよりも、平面的に見てトレー本体8の外側へ張り出すものとされる。これにより、小型のワークを集中して滑落させることが可能となる。
【0016】
そして、実質的に展性のない、または、展性が極めて僅かな多孔板3をほとんど伸ばすことなく各コーナー部7にワーク滑落部11を備えた襞折部12を形成する。そのために、襞折部12は、各コーナー部7(の全て)のワーク滑落部11の上縁部の長さを合計した全長が、そのコーナー部7を展開した時の扇型の部分の周長とほぼ等しくなるか、または、上記した全長と周長との差が、多孔板3の極めて僅かな展性による伸びの範囲内に収まるようにする(非伸張型襞折部)。側面部5,6と、底面部4とが成す鈍角状の角度(180゜−α1,180゜−α2)は、多孔板3を伸ばすことなく複数のワーク滑落部11を形成できるように考慮して設定、調整される。α1とα2とは、等しくても良いし、異っていても良い。
【0017】
(2)
図5に示すように、上記谷折りによるワーク滑落部11の両側部が、鈍角状に開くように曲げ形成される(内面側の開き角度:β1,β2>90°)。
【0018】
ここで、鈍角状に開くとは、各ワーク滑落部11を平面的に見た時の状態を言う(鈍角状ワーク滑落部)。β1とβ2とは、等しくても良いし、異なっていても良い。
【0019】
(3)上記コーナー部7に、ワーク滑落部11が複数個設けられる。
そして、中央に位置するワーク滑落部11(a)が、他のワーク滑落部11(b)よりも大きくなるように形成される。
【0020】
ここで、中央に位置するワーク滑落部11(a)は、ワーク滑落部11の数が偶数の時は、真中の2個となる、ワーク滑落部11の数が奇数の時は、真中の1個となる。他のワーク滑落部11(b)は、中央に位置するワーク滑落部11(a)の両側部に位置する単数または複数のワーク滑落部11のことである。なお、全てのワーク滑落部11は、ワークを滑らせて取り出すのに使用できるものとされる。
大きくとは、この場合、上縁部の長さが長いことである。これにより、中央に位置するワーク滑落部11(a)は、他のワーク滑落部11(b)よりも深いものまたは幅広いものとなる。なお、他のワーク滑落部11(b)は、全てを同じ大きさとしても良いし、または、端のもの程小さくなるようにしても良い。
【0021】
(4)上記コーナー部7に、ワーク滑落部11が奇数個設けられる。
【0022】
ここで、奇数は、ワーク滑落部11が有効に設けられるのであれば、幾つであっても良い。但し、ワーク滑落部11は、3個または5個とするのが、多孔板3を伸ばすことなく鈍角状のワーク滑落部11を形成する上では好ましい。また、上記個数は、ワークを取出し易くする上でも好ましい。この場合には、コーナー部7は、3個のワーク滑落部11を有する襞折部12としている。
【0023】
(5)上記ワーク滑落部11の両側部に、山折りによるワーク乗上部17が設けられる。
そして、この山折りによるワーク乗上部17の両側部が、鈍角状に開くように曲げ形成される(外面側の開き角度:β3,β4>90°)。
【0024】
ここで、ワーク乗上部17は、文字通り、ワークが乗上げられるような斜面部であると共に、乗上げられたワークを確実に滑らせてワーク滑落部11へと向かわせる斜面部とされる。ワーク乗上部17の頂部は、尖った折れ角や折れ線が出来ないようにアール状のコーナー部とされる。鈍角状に開くとは、各ワーク乗上部17を平面的に見た時の状態を言う(鈍角状ワーク乗上部)。β3とβ4とは、等しくても良いし、異なっていても良い。
【0025】
(6)好ましくは、
図7に示すように、上記多孔板3を、エキスパンドメタル21とする。
【0026】
ここで、エキスパンドメタル21は、多孔板3に多数の千鳥状の切込みを入れて、切込みと直交する方向へ均一に引伸ばしたものとされる。これにより、切込みが菱型状に広がって貫通孔部2となる。エキスパンドメタル21は、上記した引伸ばしによって、展性が数%程度にまで低下する。貫通孔部2の大きさは、上記したように、小型のワークよりも小さいか、または、小型のワークが抜け落ちない大きさや形状を有するものとされる。この場合、切込みは、トレー本体8の長辺方向または短辺方向に向けて形成される。また、エキスパンドメタル21は、凹凸が少ない滑らかな面を内面側にし、凹凸が多い面を外面側にしてトレー本体8を形成するのが好ましい。但し、構造的には、上記とは逆に、凹凸が少ない滑らかな面を外面側にし、凹凸が多い面を内面側にしてトレー本体8を形成することも可能である。
【0027】
このような小型のワークを取り扱うための部品トレー1に使用するエキスパンドメタル21は、特殊なものであり、市販のものと比べて、材質や板厚や貫通孔部2の大きさなどが異なるものとされる。このエキスパンドメタル21の材質や板厚や貫通孔部2の大きさなどは、ワークに対する処理の内容やワークの処理数やワークの大きさなどの各種の要因に基づいて専用に設計される。
なお、多孔板3には、エキスパンドメタル21の他に、エッチングによって多数の貫通孔部2を形成したエッチング板を使用することも可能である。エッチング板は、エキスパンドメタル21と比べて、より細かい貫通孔部2を形成することが可能であるが、価格的には高価となる。
【0028】
(7)上記多孔板3が、上記貫通孔部2を潰して小さくした細孔化部25を有するものとされる。
【0029】
ここで、細孔化部25は、貫通孔部2を小型のワーク(処理対称ワーク)が抜け落ちない大きさ26に潰したものとされる。多孔板3を、エキスパンドメタル21とした場合、細孔化部25は、菱型の貫通孔部2を、その短辺が板厚近傍の大きさとなる程度にまで潰すことができる。
上記した(ワーク滑落部11を有する)多孔状のトレー本体8は、エキスパンドメタル21などの多孔板3をプレスすることによって加工できる。この際、プレスに用いる金型間の隙間を微調整して最適化することにより、トレー本体8の加工と同時に、貫通孔部2を潰して細孔化部25を形成することが可能となる。
なお、上記各構成は、様々に組み合わせて使用することができる。
【0030】
<作用>この実施例の作用について説明する。
この部品トレー1では、トレー本体8の上に小型のワークを並べて置いたりばら積みにしたりすることにより、ワークを一度に大量に取扱う(収容、運搬、一括処理などを行う)ことができる。また、例えば、部品トレー1を熱処理用治具として使用する場合、部品トレー1ごとワークをバッチ式や連続式の加熱炉内へ装入して高温で加熱することにより、一度に大量のワークを熱処理することができる。
そして、部品トレー1に、多数の貫通孔部2を有するトレー本体8を使用することにより、部品トレー1およびトレー本体8の軽量化や、省資源化や、低コスト化などを図ることができる。また、ワークを熱処理する場合には、多数の貫通孔部2によって、熱や熱風の通りを良くして、熱処理効率を上げることができる。
【0031】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)全面に多数の貫通孔部2を有する1枚の多孔板3を折り曲げて、底面部4と側面部5,6とコーナー部7とを一体に有するトレー本体8を形成した。これにより、多孔板3は、例えば、金網部材などと比べて形状保持性が高いので、トレー本体8を、形状が崩れ難く、そのままの形を保ち続けるものとすることができる。よって、鉄やアルミその他の比較的安価な材料で作っても、トレー本体8を支障なく部品トレー1として長期間繰り返し使用することが可能となる。
また、ワークが高温で熱処理されるものである場合には、トレー本体8をステンレスやニッケルなどの比較的入手し易く安価な耐熱材料で作るようにすれば、トレー本体8を支障なく熱処理用の部品トレー1として長期間繰り返し使用することが可能となる。
そして、側面部5,6を、底面部4に対して鈍角状にすると共に、コーナー部7を、複数のワーク滑落部11を有する襞折部12とした。これにより、1枚の多孔板3を折り曲げてトレー本体8を形成する場合の加工が容易となり、1回のプレスで簡単に深絞りすることが可能と
なる。
また、全面に多数の貫通孔部2を有する1枚の多孔板3を折り曲げて、底面部4と側面部5,6とコーナー部7とを一体に有するトレー本体8は、側方から見て内面が滑らかに連続するものとな
る。よって、トレー本体8には、鋭角状の部分や段差状の部分や接合部などのような、ワークが引掛かり易い形状や、ワークが嵌り込み易い形状が
大幅に少なくなるので、部品トレー1を傾けることで、ワークを側面部5,6や特にコーナー部7などに沿い、一気に滑らせて簡単に取出すことが
容易になる。この際、ワークがトレー本体8に引掛かったり嵌り込んだりし
難いため、ワークの取出作業の確実性を
向上することができる。よって、ワークの残留が
生じ難くなるため、製品に異種ワークが混在するおそれや、別ロットのワークが混在するおそれや、ワークに複数回の処理(例えば、熱処理)が行われるおそれなどを
減らすことができる。その結果、作業確認コストや検査コストを減らし、品質ロスコストを
減らして、品質トラブルの処理などのロスコストも
低減することができ
る。
加えて、各コーナー部7に、多孔板3を伸ばすことなく曲げ形成されたワーク滑落部11を設けた。これにより、トレー本体8のコーナー部7に、伸ばされて薄くなったワーク滑落部11や、貫通孔部2が大きく広げられた(変形された)ワーク滑落部11がなくなるので、多孔板3を破れ難くすることができる。よって、トレー本体8を、長期間の使用や、繰り返しの熱処理に耐えられるようにすることができる。
【0032】
(2)谷折りによるワーク滑落部11の両側部を、鈍角状に開く内面形状を有するものとした。これにより、ワーク滑落部11は奥側よりも手前側が広い形状となるので、トレー本体8を傾けてワークを一気に滑らせて取出す場合に、ワークをコーナー部7のワーク滑落部11に集めても、ワークがワーク滑落部11に引掛かったり嵌り込んだりしないようにすることができる。
そして、上記したように1回のプレスで深絞りして製造されたトレー本体8は、内面が滑らかに連続するものとなると共に、鈍角のみを有するものとなる。このトレー本体8には、鋭角状の部分や段差状の部分や接合部などのような、ワークが引掛かり易い形状や、ワークが嵌り込み易い形状がどこにもないので、部品トレー1を傾けることで、ワークを側面部5,6や特にコーナー部7などに沿い、一気に滑らせて簡単に取出すことができる。この際、ワークがトレー本体8に引掛かったり嵌り込んだりしないため、ワークの取出作業の確実性を得ることができる。よって、ワークの残留がなくなるため、製品に異種ワークが混在するおそれや、別ロットのワークが混在するおそれや、ワークに複数回の処理(例えば、熱処理)が行われるおそれなどをなくすことができる。その結果、作業確認コストや検査コストを減らし、品質ロスコストをなくして、品質トラブルの処理などのロスコストも防止することができる。
更に、複数枚のトレー本体8は、上記したような鈍角のみによる構成となっているため、不使用時には、重ねてコンパクトに収納することができる。
【0033】
(3)各コーナー部7にワーク滑落部11を複数設けた。これにより、トレー本体8のコーナー部7の出張りを小さくして、トレー本体8の平面形状または外形形状を小さくすることができる。即ち、所定の容積を確保しつつ、小型化を図ることができる。
また、各コーナー部7における、中央に位置するワーク滑落部11(a)を他のワーク滑落部11(b)よりも大きくした。これにより、トレー本体8を傾けてワークを一気に滑らせて取出す場合に、ワークを、主に大きく形成された中央のワーク滑落部11(a)に集めて集中的に案内する(滑らせる)ことができる。よって、ワークの取出しを安定化し、こぼれや引掛かりや嵌り込みなどを防ぐことができる。
【0034】
(4)各コーナー部7における、複数のワーク滑落部11の設置個数を奇数個とした。これにより、コーナー部7の中央に、1つのワーク滑落部11を位置させることができる。そのため、トレー本体8を傾けてワークを一気に滑らせて取出す場合に、ワークを、主に中央の1つのワーク滑落部11に集めて集中的に案内する(滑らせる)ことができる。よって、ワークの取出しを安定化し、こぼれや引掛かりや嵌り込みなどを防ぐことができる。特に、上記したように、ワーク滑落部11を奇数個にして中央のものを大きくすると、最も取出しの安定性を高くすることができる。
【0035】
(5)ワーク滑落部11の両側部に、山折りによるワーク乗上部17を設けた。そして、この山折りによるワーク乗上部17の両側部を、鈍角状に開く外面形状を有するものとした。これにより、トレー本体8を傾けてワークを一気に滑らせて取出す場合に、ワーク乗上部17の鈍角状の斜面部がワークをスムーズに滑らせてコーナー部7のワーク滑落部11に集めるように積極的に機能すると共に、ワークがワーク乗上部17に引掛からないようにすることができる。
【0036】
(6)また、多孔板3に、エキスパンドメタル21を使用しても良い。エキスパンドメタル21は、貫通孔部2を細かくしても(金網部材などと比べて)強度に影響が出難いので、技術の進歩に応じてワークが微細化されて行っても長く対応することができる。また、エキスパンドメタル21は、上記したような単数または複数のワーク滑落部11を一体に有するトレー本体8に加工することも比較的容易にでき、長期間の使用や、繰返しの熱処理などに対してもワーク滑落部11の形状を保持し続けることができる。また、エキスパンドメタル21は、全面に多数の細かい貫通孔部2を均等に有しているため、例えば、熱処理を行う場合に、ガスや熱風を効率良く通して、熱を万遍なくワークへ伝えるので、熱処理用として好適に使用することができる。
これに対し、金網部材の場合、網目を細かくしようとすると、使用する針金を細くせざるを得ないため、強度が低下して破れ易くなるので、金網部材の使用には限界がある。また、金網部材は、コーナー部7にワーク滑落部11を一体に有するトレー本体8に加工しても、形状を保持するのが難しい。
【0037】
(7)多孔板3の貫通孔部2を潰して細孔化部25とした。これにより、同じ多孔板3を用いても、貫通孔部2を潰した分だけ、より小さなワークを取り扱えるようになる。また、多孔板3を、プレスによって、(コーナー部7にワーク滑落部11を有する)トレー本体8に加工する際に、同時に貫通孔部2を潰して細孔化部25を形成することができるので、細孔化部25の加工に特別な手間が掛からない。また、コストがアップすることもない。
具体的には、一枚の多孔板3をエキスパンドメタル21にした場合、上記菱型の貫通孔部2の短い対角線を小型のワーク(処理対称ワーク)が抜け落ちない大きさ26に潰すことで、同じ多孔板3であっても、より小型のワークを取り扱うことが可能となる。
なお、貫通孔部2を潰して細孔化部25とするのは、ワークをより小さくすると共に、一度により大量に処理したいという要望があるからである。そして、より小さいワークをより大量に処理するためには、より小さい貫通孔部2を有すると共により高い強度を有するトレー本体8が必要になる。しかし、トレー本体8の貫通孔部2を小さくするには、多孔板3の板厚を薄くせざるを得ず、多孔板3の板厚を薄くするとトレー本体8の強度が低下するので、貫通孔部2を小さくするのにもいずれ限界が生じることになる。これに対し、貫通孔部2を潰して細孔化部25とすることにより、多孔板3の板厚を薄くせずに、既存の多孔板3を用いて、より小さい貫通孔部2を得ることができるようになるので、上記した限界を越えるような、より小さい貫通孔部2を有すると共により高い強度を有するトレー本体8を得ることが可能となり、その効果は大きい。