特許第6245691号(P6245691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6245691有機半導体用有機ヘテロ高分子及びそれを用いた半導体デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245691
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】有機半導体用有機ヘテロ高分子及びそれを用いた半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20171204BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 51/42 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C08G61/12
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250G
   H01L29/78 618B
   H01L31/04 D
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-235281(P2013-235281)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2014-114445(P2014-114445A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2016年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-251544(P2012-251544)
(32)【優先日】2012年11月15日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年5月15日発行、高分子学会予稿集 61巻1号[2012]、279頁に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年5月29日、パシフィコ横浜で開催された第61回高分子大会年次大会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 高分子学会予稿集61巻2号[2012]、2413−2414(発行日:平成24年9月5日)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年9月19日、名古屋工業大学で開催された第61回高分子討論会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第31回無機高分子研究討論会講演要旨集(発行日:平成24年11月8日)、1〜2頁
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年11月8日に東京理解大学森戸記念館で開催された第31回無機高分子研究討論会にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(72)【発明者】
【氏名】冨田 育義
(72)【発明者】
【氏名】松村 吉将
(72)【発明者】
【氏名】福井 和寿
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 一郎
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−189789(JP,A)
【文献】 冨田育義,主鎖型反応性有機金属ポリマーの設計とこれを経由する多彩なπ共役高分子の創製,有機合成化学協会誌,日本,2008年 5月,vol.66, No.5,436-443
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/12
H01L 29/786
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体を形成するための有機ヘテロ高分子であって、下記式(1)又は(2
【化1】
[式中、Mはリン(P)を示し、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示し、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールアルキル基又は−Z−R基(式中、Zは周期表16族元素を示し、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基又はヘテロアリールアルキル基を示す)を示し、Rは1価のアニオンを示し、
4cは直鎖状又は分岐鎖状C4−12アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C4−12アルコキシ基、又は直鎖状又は分岐鎖状C4−12アルキルチオ基を示し、Zは酸素原子、硫黄原子又はNR4f(R4fは水素原子、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、又は直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル−カルボニル基を示す)である]
で表される繰り返し単位を有する有機ヘテロ高分子。
【請求項2】
がC6−10アリール基であり、Rが直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキルチオ基、又は直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキルセレノ基である請求項1記載の有機ヘテロ高分子。
【請求項3】
が、R3aSO(式中、R3aは直鎖状又は分岐鎖状ハロC1−6アルキル基を示す)又はR3b(X)(式中、R3bは周期表12族元素、13族元素、14族元素又は15族元素を示し、Xはハロゲン原子を示し、qは2〜5の整数を示す)である請求項1又は2記載の有機ヘテロ高分子。
【請求項4】
数平均分子量が、1×10〜1×10である請求項1〜のいずれかに記載の有機ヘテロ高分子。
【請求項5】
有機半導体を形成するための組成物であって、請求項1〜のいずれかに記載の有機ヘテロ高分子と、有機溶媒とを含む組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載の有機ヘテロ高分子で形成された有機半導体。
【請求項7】
基材の少なくとも一方の面に請求項記載の組成物を塗布して乾燥し、有機半導体を形成する有機半導体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の有機ヘテロ高分子で形成された有機半導体を含む電子デバイス。
【請求項9】
光電変換素子、スイッチング素子及び整流素子から選択された一種である請求項記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子、光電変換素子などとして有機半導体を形成するのに有用な有機ヘテロ高分子(又は有機金属高分子)、この高分子で形成された有機半導体及びそれを用いたデバイス(半導体デバイス)に関する。
【背景技術】
【0002】
金属フタロシアニンに代表される有機金属化合物は、その有機分子−金属間の結合により、特異な電子状態や非常に安定な分子構造を形成するものが多い。これらの特徴により、古くから有機顔料などとして用いられてきた。
【0003】
近年では、熱・光や電場など外部エネルギーに対する応答性から、電子写真方式のプリンターの感光材、CD−Rなどの記録媒体などのエレクトロニクス分野への利用が広まっている。特に、最近では、有機半導体としての機能が注目され、有機トランジスタや有機薄膜太陽電池への利用が検討されている。有機半導体を用いた電子デバイスは、印刷により作製できるため、無機系デバイスに比べて、より安価に大量生産できると期待されている。
【0004】
しかし、従来の有機金属化合物は溶剤に不溶又は難溶であるものが多く、その成膜は主に真空蒸着法で行っているため、作製した電子デバイスは高価である。
【0005】
このような課題を改善するため、特開2011−162575号公報(特許文献1)には、例えば、4−置換アミドフタロニトリル(4−アセトアミドフタロニトリル、4−ピリジルアミドフタロニトリルなど)と4−アルキルフタロニトリル(4−t−ブチルフタロニトリルなど)とを金属塩(Ni、Zn、Cuなどの金属塩)の存在下で反応させ、金属トリスアルキル−4−置換アミド−フタロシアニンを製造することが記載され、このフタロシアニン化合物を加水分解してアミノ基を有する可溶性の置換フタロシアニンを製造することも記載されている。このようなフタロシアニン誘導体は、フタロシアニンにt−ブチル基などの立体障害の大きな官能基が導入され、フタロシアニン間のスタッキングを防止でき、溶媒に可溶である。
【0006】
しかし、スタッキングを阻害する官能基を導入すると、分子間の電子移動が困難となるため、有機半導体としての機能は低下する。
【0007】
また、ポルフィリン構造を導入した高分子も知られている。J. Polym. Sci. Part A, 43 (2005) 2997(非特許文献1)には、5−[4−(2−メタクリロイルオキシエトキシカルボニル)フェニル]−10,15,20−トリフェニルポルフィナト 白金(II)をイソブチルメタクリレート及び2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートと共重合し、側鎖にポルフィリン構造を導入した高分子を調製し、この高分子を、酸素透過性高分子中に埋設した発光分子からなる感圧素子用に用いることが記載されている。
【0008】
しかし、このような高分子は、側鎖間距離を十分に離した構造により側鎖の錯体同士のスタッキング形成を防ぐため、やはり有機半導体としての機能は十分でなく、より高い電子移動度を必要とする。そのため、有機トランジスタや有機太陽電池用途には適していない。
【0009】
有機半導体の電子伝導度を向上又は制御するため、通常、酸、塩基、ハロゲン化物などがドープされる。ドーピング方法としては、例えば、(i)有機半導体を、揮発性の高いドーパントの蒸気に曝す方法、(ii)有機半導体を、ドーパントの溶液に浸漬する方法、(iii)有機半導体高分子の重合を、ドーパントを含む溶媒中で行い、重合とドーピングを同時に行う方法などが挙げられる。しかし、(i)の方法では、脱ドープが生じやすく安定性に問題があり、(ii)及び(iii)の方法では、ドープ量を制御することが困難であり、余分に取り込まれたドーパントが、デバイスへ適用した際に腐食を引き起こす原因となる。また、(iii)の方法では、重合条件の制約により作製可能な有機半導体も限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−162575号公報(特許請求の範囲、実施例)
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J. Polym. Sci. Part A; Polym. Chem, 43 (2005) 2997(ABSTRACT)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、分子量が高いにも拘わらず導電性(キャリア移動度)が高く、高分子有機半導体を形成するのに有用な有機半導体用有機ヘテロ高分子(又は有機金属高分子)、この高分子を含む組成物(又はコーティング組成物)、この組成物で形成された有機半導体、及びこの有機半導体を含むデバイス(半導体デバイス)を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、脱ドープがなく、安定性の高い有機半導体用有機ヘテロ高分子、この高分子を含む組成物、この組成物で形成された有機半導体、及びこの有機半導体を含むデバイスを提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、ドープ量を制御でき、デバイスに適用しても腐食を防止できる有機半導体用有機ヘテロ高分子、この高分子を含む組成物、この組成物で形成された有機半導体、及びこの有機半導体を含むデバイスを提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、有機溶媒に対する溶解性が高い有機半導体用有機ヘテロ高分子、この高分子を含む組成物、この組成物で形成された有機半導体、及びこの有機半導体を含むデバイスを提供することにある。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、コーティングなどの簡便な方法により成膜可能な有機半導体用組成物(コーティング組成物)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、主鎖にアレーン単位とヘテロ元素核(ヘテロ金属原子など)を含む5員環単位とを有する高分子(共役系高分子)の溶液に電子受容性ドーパントを添加してドープすると、脱ドープがなく安定であり、しかもドープ量が制御された高分子が得られること、この高分子が、導電性が高く半導体を形成するのに有用であることを見いだし、本発明を完成した。
【0018】
すなわち、本発明の有機半導体用有機ヘテロ高分子(有機金属高分子)は、有機半導体を形成するための有機ヘテロ高分子であって、下記式(1)又は(2)で表される繰り返し単位を有する。
【0019】
【化1】
【0020】
[式中、Mは周期表15族元素を示し、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示し、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールアルキル基又は−Z−R基(式中、Zは周期表16族元素を示し、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基又はヘテロアリールアルキル基を示す)を示し、Rは1価のアニオンを示し、
環Arは芳香族性環を示し、Rは直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基、又は直鎖状又は分岐鎖状アルキルチオ基を示し、pは0又は1〜3の整数である]。
【0021】
式(1)又は(2)において、RがC6−10アリール基であり、Rが直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキルチオ基、又は直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキルセレノ基であってもよい。Rが、R3aSO(式中、R3aは直鎖状又は分岐鎖状ハロC1−6アルキル基を示す)又はR3b(X)(式中、R3bは周期表12族(又は2B族)元素、13族(又は3B族)元素、14族(又は4B族)元素又は15族(又は5B族)元素を示し、Xはハロゲン原子を示し、qは2〜5の整数を示す)であってもよい。環Arは下記式(3a)〜(3c)のいずれかで表される環であってもよい。
【0022】
【化2】
【0023】
[式中、R4a、R4b、R4c、R4d及びR4eは、それぞれ、直鎖状又は分岐鎖状C4−12アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C4−12アルコキシ基、又は直鎖状又は分岐鎖状C4−12アルキルチオ基を示し、Zは酸素原子(O)、硫黄原子(S)又はNR4f(R4fは水素原子、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、又は直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル−カルボニル基を示す)である]。
【0024】
前記有機ヘテロ高分子の数平均分子量は、例えば、1×10〜1×10程度であってもよい。また、有機ヘテロ高分子は、半導体特性を有していればよい。
【0025】
前記有機ヘテロ高分子は、有機溶媒に可溶であるという特色がある。そのため、本発明は、前記有機ヘテロ高分子と、有機溶媒とを含む組成物も包含し、この組成物は有機半導体を形成するために有用である。本発明は、基材の少なくとも一方の面に前記組成物を塗布して乾燥し、有機半導体を形成する有機半導体の製造方法も包含する。
【0026】
さらに、本発明は、前記有機ヘテロ高分子で形成された有機半導体及びこの有機半導体を含む電子デバイスも包含する。電子デバイスは、例えば、光電変換素子、スイッチング素子及び整流素子から選択された一種であってもよい。
【0027】
なお、本明細書中、「有機ヘテロ高分子」とは、硫黄、窒素、酸素、リンなどのヘテロ原子だけでなく、ヘテロ金属原子を含む高分子も意味する。そのため、「有機ヘテロ高分子」を有機金属高分子という場合もある。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、有機へテロ高分子が所定の芳香族性環とヘテロ原子を含む5員芳香族性環単位とが共役結合(π−電子共役結合)した構造を有し、かつ電子受容性ドーパントがドープされており、半導体特性を有するため、分子量が大きいにも拘わらず導電性(キャリア移動度)が高く、高分子有機半導体を形成するのに有用である。また、有機へテロ高分子溶液に電子受容性ドーパントを添加してドープすると、脱ドープがなく安定であり、しかもドープ量を制御できる。さらに、有機ヘテロ高分子の側鎖に長鎖アルキル鎖を導入すると、有機溶媒に対する溶解性を向上できるため、コーティング組成物とし、コーティングなどの簡便な方法により有機半導体を成膜可能である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[有機ヘテロ高分子]
前記式(1)又は(2)で表される繰り返し単位において、Mは、非共有電子対を有する元素(ヘテロ原子)であればよく、通常、周期表15族(又は5B族)元素(例えば、N、P、As、Sb、Bi)である。これらの元素Mのうち、P、As、Sb、Bi(特にP)が好ましい。
【0030】
、R及びRで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基などが例示できる。好ましいアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基(例えば、C1−2アルキル基)である。
【0031】
、R及びRで表されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのC3−10シクロアルキル基などが例示できる。好ましいシクロアルキル基は、C5−8シクロアルキル基である。
【0032】
、R及びRで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC1−4アルキル基が置換していてもよいC6−12アリール基などが例示できる。好ましいアリール基は、フェニル基などのC6−10アリール基である。
【0033】
、R及びRで表されるヘテロアリール基としては、例えば、硫黄原子、窒素原子及び酸素原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む5員複素環基(チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、フリル基など)、硫黄原子、窒素原子及び酸素原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む6員複素環基(ピリジル基、ピラジル基など)、これらの5員又は6員複素環と芳香族炭化水素環(ベンゼン環など)との縮合環基(ベンゾチエニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフリル基、キノリル基、キノキサリニル基など)などが例示できる。
【0034】
なお、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を構成する環は、それぞれアルキル基(例えば、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基)などの置換基を有していてもよい。
【0035】
及びRで表されるアラルキル基としては、前記例示のアリール基とアルキル基とを組み合わせた基、例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリールC1−4アルキル基などが例示できる。
【0036】
及びRで表されるヘテロアリールアルキル基としては、前記例示のヘテロアリール基とアルキル基とを組み合わせた基、例えば、チエニルエチル基、フリルエチル基などの5員又は6員ヘテロアリールC1−4アルキル基などが例示できる。
【0037】
で表される周期表16族元素としては、例えば、硫黄、セレン、テルルなどが例示できる。好ましい元素は、硫黄、セレンである。好ましい−Z−R基は、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキルチオ基、メチルセレノ基、エチルセレノ基、プロピルセレノ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキルセレノ基などである。
【0038】
及びRは、同一又は異なって、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、C6−12アリール基である場合が多く、特に、一方(例えば、R)がフェニル基などのC6−10アリール基であり、他方(例えば、R)がメチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基(例えば、C1−2アルキル基)であるのが好ましい。さらに、吸収を長波長側にシフトするとともに、バンドギャップ値を狭くして光電変換率を向上できる点から、Rがフェニル基などのC6−10アリール基であり、Rが直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキルチオ基(特に、メチルチオ基などのC1−2アルキルチオ基)、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキルセレノ基(特に、メチルセレノ基などのC1−2アルキルセレノ基)であるのが好ましい。
【0039】
で表されるアニオン(又は電子吸引性基)としては、電子受容性ドーパント(プロトン酸、ルイス酸など)に由来する1価のアニオンなどが例示できる。
【0040】
プロトン酸に由来するRとしては、R3aCO又はR3aSO[式中、R3aは、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基など)、ハロアルキル基(トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基などの直鎖状又は分岐鎖状ハロC1−6アルキル基など)、アリール基(ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基などの置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基などのC6−12アリール基など)を示す]などが例示できる。これらのRのうち、R3aSOが好ましい。なお、R3aとしては、直鎖状又は分岐鎖状ハロC1−6アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基などの直鎖状又は分岐鎖状フルオロC1−6アルキル基)が好ましい。
【0041】
ルイス酸に由来するRとしては、R3b(X)[式中、R3bは、例えば、周期表12族(又は2B族)元素(Znなど)、13族(又は3B族)元素(B、Alなど)、14族(又は4B族)元素(Snなど)又は15族(又は5B族)元素(P、As、Sbなど)を示し、Xは、ハロゲン原子(F、Cl、Brなど)を示し、qは2〜5の整数(例えば、3〜5の整数)である]などが例示できる。R3bとしては、周期表13族元素(特にB)が好ましく、Xとしては、F、Cl(特にF)が好ましい。
【0042】
環Arで表される芳香族性環としては、前記と同様のアリール基及びヘテロアリール基に対応する芳香族環、フルオレン環、ビフェニル環、ビナフチル環などのビスアレーン環、ビピリジン環などのビスヘテロアレーン環などが例示できる。代表的な芳香族性環Arは、ベンゼン環、ナフタレン環などのC6−12アレーン環(特に、C6−10アレーン環)、チオフェン環、ピリジン環などの5員又は6員ヘテロアレーン環、フルオレン環、ビフェニル環、ビナフチル環などのビスアレーン環である。芳香族性環Arは、ベンゼン環、5員又は6員ヘテロアレーン環(チオフェン環など)、フルオレン環である場合が多い。
【0043】
は溶媒可溶性を付与するのに有用である。Rで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基、ドデカニル基などの直鎖状又は分岐鎖状アルキル基などが例示できる。アルキル基は、通常、直鎖状又は分岐鎖状C4−16アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C6−14アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C6−12アルキル基である。
【0044】
で表されるアルコキシ基は、前記アルキル基に対応する直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基、例えば、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C4−16アルコキシ基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C6−12アルコキシ基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C6−10アルコキシ基である。
【0045】
で表されるアルキルチオ基は、前記アルキル基に対応する直鎖状又は分岐鎖状アルキルチオ基、例えば、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基などの直鎖状又は分岐鎖状C4−16アルキルチオ基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C6−12アルキルチオ基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C6−10アルキルチオ基である。
【0046】
pは0又は1〜3の整数を示し、通常、1〜3の整数(例えば、1又は2)である。
【0047】
環Arに対するRの置換位置は、特に制限されず、環Arの種類及び結合手の位置、Rの置換数pに応じて選択でき、例えば、環Arがベンゼン環であるとき、Rの置換位置は、2−,3−,4−,5−位のいずれであってもよく、2,3−、2,5−、2,6−位などの複数位置にRが置換していてもよい。チオフェン環では、3−位、3,4−位であってもよい。また、フルオレン環では9,9−位、1,1’−ビナフチル環では、2,2’−位などであってもよく、1,2’−ビナフチル環では、2,1’−位などであってもよい。
【0048】
好ましい環Arは置換基を有するベンゼン環、5〜6員ヘテロアレーン環又はフルオレン環であり、特に下記式(3a)で表される二置換ベンゼン環(1,4−フェニレン基)、下記式(3b)で表される一置換5員ヘテロアレーン環(2,4−ヘテロアリーレン基)、下記式(3c)で表される二置換フルオレン環(2,7−フルオレン−ジイル基)が好ましい。
【0049】
【化3】
【0050】
[式中、R4a、R4b、R4c、R4d及びR4eは、それぞれ、直鎖状又は分岐鎖状C4−12アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C4−12アルコキシ基、又は直鎖状又は分岐鎖状C4−12アルキルチオ基を示し、Zは酸素原子(O)、硫黄原子(S)又はNR4f(R4fは水素原子;メチル基、エチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基;又はアセチル基、プロピオニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル−カルボニル基を示す)である]。
【0051】
好ましいR4a、R4b、R4c、R4d及びR4eは、前記置換基Rのうち好ましいアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基である。R4a、R4b及びR4cは、通常、炭素数6〜14(例えば、6〜12)程度のアルキル鎖を有している。なお、R4a及びR4bの置換位置は、2,3−位、2,5−位、2,6−位のいずれであってもよく、通常、2,5−位である場合が多い。
【0052】
環Arとしては、狭バンドギャップ特性の点から、特に式(3b)で表される一置換5員ヘテロアレーン環(2,4−チオフェンジイル基など)が好ましく、発光特性の点から、特に式(3c)で表される二置換フルオレン環(2,7−フルオレン−ジイル基)が好ましい。
【0053】
本発明の有機ヘテロ高分子は比較的分子量が大きいという特色がある。有機ヘテロ高分子(ドープ前の有機ヘテロ高分子など)の分子量は特に制限されないが、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したとき、ポリスチレン換算で、数平均分子量が1×10〜1×10、好ましくは2.5×10〜5×10、さらに好ましくは3×10〜1×10(例えば、3×10〜7×10)程度であってもよい。
【0054】
なお、有機ヘテロ高分子は直鎖状である場合が多いものの、必要であれば分岐構造を有していてもよい。
【0055】
本発明の有機へテロ高分子は、ヘテロ元素核(典型金属や遷移金属元素などの元素核)を含む5員環構造と芳香族性環(アレーン環)とを主鎖に含み、共役系(π−共役系高分子)を形成している。また、主鎖骨格にヘテロ原子(ヘテロ金属原子)を含む5員環構造を形成しているため、自己凝集性を弱めると共に、芳香族性環を介して5員環構造を形成しているため、主鎖全体に有機−ヘテロ原子(ヘテロ金属原子)結合による特異な電子状態が維持されるためか、優れた半導体特性を有している。また、電子受容性ドーパントが脱ドープすることなく安定にドープされており、しかもドープ量が制御されており、デバイスに適用しても腐食などの問題が生じない。さらに、アルキル基などの側鎖を有する芳香族性環を導入できるため、溶解性を高めることもでき、溶媒可溶性を併せ持っている。そのため、塗布(コーティング)により容易に成膜できる。
【0056】
なお、成膜後、主鎖間でスタッキングするためか、分子間の電子移動も容易な構造膜が得られる。また、高分子中にアルキル鎖があったとしても、スタッキング方向(縦方向)に対してアルキル鎖が並行に並ぶためか、スタッキングを阻害することがない。そのためか、得られた膜は有機半導体として有効に機能する。
【0057】
[有機ヘテロ高分子の製造方法]
このような有機ヘテロ高分子は、Synthetic Metals, 159 (2009), 949-951又は有機合成化学協会誌Vol66 No5 2008に記載の方法に準じて合成できる。すなわち、有機ヘテロ高分子は、以下の反応工程式により調製できる。
【0058】
【化4】
【0059】
(式中、Rはアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、Lは配位子を示し、mは0又は1であり、nは1以上の整数であり、M、R〜R、Z、環Ar、pは前記に同じ)
で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基が例示できる。アルキル基Rとしては、分岐アルキル基、例えば、イソプロピル基などである場合が多い。Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子などが例示できる。
【0060】
例えば、前記式(4)で表されるジエチニルアレーン化合物と、低原子価チタン錯体(5)とを反応させ、式(6)で表されるチタナシクロペンタジエン骨格を有する高分子を生成できる。なお、低原子価チタン錯体(5)は、テトラアルコキシチタン(テトライソプロポキシチタン(Ti(OPr)など)とアルキルマグネシウムハライド(イソプロピルマグネシウムクロリド(PrMgCl)など)とを反応させることにより生成できる。そのため、高分子(6)は式(4)で表されるジエチニルアレーン化合物とテトラアルコキシチタンとアルキルマグネシウムハライドとを反応させることにより生成させてもよい。なお、アルキルマグネシウムハライドの使用量は、テトラアルコキシチタンに対して、1.5〜2.5当量程度である。反応は、通常、不活性溶媒(ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)中、不活性雰囲気(アルゴン気流など)下、−100℃〜−20℃(例えば、−80℃〜−40℃)程度の温度で行うことができる。
【0061】
なお、ジエチニルアレーン化合物(4)としては、例えば、1,4−ジエチニル−2,5−ジオクチルオキシベンゼン、1,4−ジエチニル−2,5−ジ(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼンなどのジエチニルジアルコキシベンゼン;2,5−ジエチニル−3−ドデカニルチオフェンなどのジエチニルアルキルチオフェン;2,7−ジエチニル−9,9−ジオクチルフルオレンなどのジエチニルジアルキルフルオレン;6,6’−ジエチニル−2,2’−ジオクチルオキシ−1,1’−ビナフチルなどのジエチニルジオクチルオキシビナフチル、6,6’−ジエチニル−2,2’−ジオクチル−1,1’−ビナフチルなどのジエチニルジアルキルビナフチルなどが例示できる。
【0062】
高分子(6)と、式(7)で表されるジハロゲン化物(Xはハロゲン原子を示す。M、Rは前記に同じ)との反応により、式(8)で表される高分子を得ることができる。式(7)で表されるジハロゲン化物としては、M及びRを有するジハロゲン化合物、例えば、アルキルジクロロホスフィン、アリールジクロロホスフィンなどのジクロロヘテロ化合物などが例示できる。
【0063】
上記反応において、式(7)で表されるハロゲン化物の使用量は、高分子(6)のチタン原子Tiに対して1〜2当量(例えば、1.1〜1.5当量)程度であってもよい。反応は、通常、不活性溶媒(ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)中、不活性雰囲気(アルゴン気流など)下、−80℃〜30℃(例えば、−60℃〜室温)程度の温度で行うことができる。
【0064】
高分子(8)と、式(9)又は式(14)で表される電子受容性ドーパントとの反応により、式(10)又は式(15)で表される高分子を得ることができる。また、高分子(8)と式(11)で表される周期表16属元素の単体とを反応させて、式(12)で表される高分子を得た後、高分子(12)と式(9)で表される電子受容性ドーパントとの反応により、式(13)で表される高分子を得ることができる。
【0065】
式(9)で表されるドーパントは、R及びRを有するプロトン酸エステルである。前記プロトン酸としては、無機酸(硝酸、硫酸、リン酸など)であってもよいが、有機酸であるのが好ましい。有機酸としては、有機カルボン酸、有機スルホン酸などが例示できる。
【0066】
有機カルボン酸としては、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物(脂肪族、脂環族、芳香族、複素環式カルボン酸)、例えば、有機モノカルボン酸(アルカンカルボン酸、例えば、ギ酸やC1−6アルカン−カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸など)など;アレーンカルボン酸、例えば、安息香酸などのC6−12アレーン−カルボン酸など)、有機多価カルボン酸(アルカンポリカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸などのC2−6アルカン−ジカルボン酸など;アルケンポリカルボン酸、例えば、マレイン酸、フマル酸などのC2−6アルケン−ジカルボン酸など;アレーンポリカルボン酸、例えば、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ピロメリット酸などのC6−12アレーン−ジ乃至テトラカルボン酸など)、ヒドロキシカルボン酸(ヒドロキシアルカンカルボン酸、例えば、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸などのヒドロキシC1−6アルカン−カルボン酸など;ヒドロキシアレーンカルボン酸、例えば、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシC6−12アレーン−カルボン酸など)などが挙げられる。
【0067】
有機スルホン酸としては、少なくとも1つのスルホ基(−SOH)を有する化合物(脂肪族、脂環族、芳香族、複素環式スルホン酸)、例えば、アルカンスルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸などのC1−6アルカンスルホン酸)、ハロアルカンスルホン酸(トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸などのハロC1−6アルカンスルホン酸)、アレーンスルホン酸(ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸(p−トルエンスルホン酸など)、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スチレンスルホン酸などのC6−12アレーンスルホン酸など)が例示できる。
【0068】
ポリアニオンとしては、スルホ基(−SOH)、スルフィノ基(−SOH)又はカルボキシル基(−COOH)を有する高分子(オリゴマーを含む)が例示できる。ポリアニオンを形成する単量体としては、スルホ基を有する重合性単量体、例えば、アルケンスルホン酸(ビニルスルホン酸などのC2−10アルケンスルホン酸、イソプレンスルホン酸などのC4−10アルカジエンスルホン酸など)、スルホアルキル(メタ)アクリレート(スルホエチルメタクリレート、4−スルホブチルメタクリレートなどのスルホC2−6アルキル(メタ)アクリレートなど)、ビニルアレーンスルホン酸(スチレンスルホン酸などのビニルC6−12アレーンスルホン酸)、N−スルホアルキルアクリルアミド(N−スルホエチルアクリルアミドなどのN−スルホC2−6アルキルアクリルアミドなど)などが例示できる。これらの単量体は、単独重合体又は二種以上組み合わせて共重合体を形成してもよい。また、前記単量体は、共重合性単量体(例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル系単量体、スチレンなどの芳香族ビニル単量体など)との共重合体を形成してもよい。代表的なポリアニオンは、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリスチレンスルホン酸などが例示でき、これらの共重合体も使用できる。これらのポリアニオンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0069】
ポリアニオンはオリゴマー又は高分子であってもよく、ポリアニオンの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、例えば、500〜100000、好ましくは1000〜50000、さらに好ましくは2500〜25000程度であってもよい。
【0070】
上記プロトン酸のエステルとしては、アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステルなどの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキルエステルなど)、シクロアルキルエステル(シクロヘキシルエステルなどのシクロC5−8アルキルエステルなど)、アリールエステル(フェニルエステルなどのC6−10アリールエステルなど)、アラルキルエステル(ベンジルエステル、フェネチルエステルなどのC6−10アリールC1−4アルキルエステルなど)、ヘテロアリールエステル(ピリジルエステル、チエニルエステルなどの5員又は6員ヘテロアリールエステル;キノリルエステル、ベンゾイミダゾリルエステルなどの縮合環式ヘテロアリールエステルなど)、ヘテロアリールアルキルエステル(チエニルエチルエステル、フリルエチルエステルなどの5員又は6員ヘテロアリールC1−4アルキルエステルなど)などが例示できる。
【0071】
具体的には、有機カルボン酸エステル(アルコキシカルボニルエステル、シクロアルコキシカルボニルエステル、アリールオキシカルボニルエステル、アラルキルオキシカルボニルエステル、ヘテロアリールオキシカルボニルエステル、ヘテロアリールアルコキシカルボニルエステルなど)、有機スルホン酸エステル(上記カルボニルエステルに対応するスルホニルエステルなど)などが例示できる。なお、有機スルホン酸ヘテロアリールエステルには、例えば、下記式で表される化合物が含まれる。
【0072】
【化5】
【0073】
式(9)で表されるドーパントは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。式(9)で表されるドーパントとしては、有機スルホン酸エステル、例えば、ハロC1−6アルカンスルホン酸(トリフルオロメタン酸などのフルオロC1−6アルカンスルホン酸など)のアルキルエステル(メチルエステルなどのC1−4アルキルエステルなど)が好ましい。
【0074】
式(14)で表されるドーパントは、少なくともR(例えば、R及びL)を有するルイス酸である。ルイス酸としては、周期表12族(又は2B族)元素(Znなど)、13族(又は3B族)元素(B、Alなど)、14族(又は4B族)元素(Snなど)、15族(又は5B族)元素(P、As、Sbなど)のハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物など)などが例示できる。上記元素のフッ化物としては、フッ化ホウ素(BF、BFなど)、フッ化リン(PFなど)、フッ化ヒ素(AsFなど)、フッ化アンチモン(SbFなど)などが例示できる。また、上記元素の塩化物としては、塩化亜鉛(ZnClなど)、塩化ホウ素(BClなど)、塩化アルミニウム(AlClなど)、塩化錫(SnClなど)などが例示できる。上記元素の臭化物としては、臭化ホウ素(BBrなど)、臭化リン(PBrなど)などが例示できる。これらのハロゲン化物は、Lで表される配位子とともに錯体を形成してもよい。配位子Lとしては、慣用の配位子、例えば、アルキルエーテル(ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのC1−4アルキルエーテルなど)、環状エーテル(テトラヒドロフランなど)などが挙げられる。
【0075】
式(14)で表されるドーパントは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。式(14)で表されるドーパントとしては、安定にドープでき、しかもドープ量を制御できる点から、室温で固体又は液体のドーパント、例えば、ハロゲン化ホウ素(BFなど)の錯体(ジエチルエーテルなどのC1−4アルキルエーテルの錯体など)が好ましい。
【0076】
上記反応において、式(9)又は式(14)で表される電子受容性ドーパントの使用量は、高分子(8)のヘテロ原子Mに対して、例えば、1〜2当量、好ましくは1.1〜1.8当量、さらに好ましくは1.1〜1.5当量程度である。
【0077】
なお、式(9)で表されるドーパントと反応させる前に、高分子(8)を式(11)で表される周期表16属元素の単体と反応させる場合、周期表16属元素の単体の使用量は、高分子(8)のヘテロ原子Mに対して、例えば、1〜2当量、好ましくは1.1〜1.8当量、さらに好ましくは1.1〜1.5当量程度である。
【0078】
高分子(8)は、有機溶媒に対する溶解性を有する。そのため、上記反応は、有機溶媒(後述の有機溶媒、例えば、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類など)の存在下で行ってもよい。有機溶媒の存在下で反応させると、ドープ量を制御でき、過剰にドーパントが取り込まれることなく、デバイスに適用しても腐食などの問題が生じない。有機溶媒の使用量は、高分子(8)1重量部に対して、1〜500重量部程度の範囲から選択でき、例えば、10〜400重量部、好ましくは20〜300重量部、さらに好ましくは50〜200重量部程度である。
【0079】
上記反応は、通常、不活性雰囲気(アルゴン気流など)下、室温(例えば、10〜30℃程度)で行うことができる。
【0080】
反応終了後、慣用の分離精製方法、例えば、濃縮、デカント、再沈殿、クロマトグラフィなどにより所定の有機ヘテロ高分子を得ることができる。
【0081】
[有機ヘテロ高分子の用途]
有機ヘテロ高分子は、芳香族性環と、ヘテロ原子を含む5員環単位とで共役系(π−共役系)を形成しており、かつ電子受容性ドーパントがドープされており、極めて電子移動度が高く、半導体特性を有している。しかも、アルキル鎖を導入した有機へテロ高分子は、有機溶媒に対する溶解性に優れ、かつ高い半導体特性を示すという特色がある。そのため、本発明は有機へテロ高分子と有機溶媒とを含む組成物も包含し、この組成物は、有機半導体、特にコーティング(塗布)などにより有機半導体の薄膜を形成するのに有用である。
【0082】
有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(例えば、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエタンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、ピロリドン類(例えば、2−ピロリドン、3−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなど)などが例示できる。これらの有機溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用できる。
【0083】
溶媒の使用量は、塗布性及び成膜性を損なわない範囲から選択でき、例えば、有機へテロ高分子の濃度は、0.01〜30重量%、好ましくは0.05〜20重量%(例えば、0.1〜10重量%)程度であってもよい。
【0084】
有機半導体は、基材又は基板(ガラス板、シリコンウエハー、耐熱プラスチックフィルムなど)に前記組成物を塗布する工程と、塗膜を乾燥して溶媒を除去する工程とを経て製造してもよい。なお、塗布方法としては、慣用の塗布方法、例えば、エアーナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ブレードコート法、ディップコート法、スプレー法、スピンコート法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法などが例示できる。
【0085】
有機半導体の厚みは、用途に応じて適宜選択され、例えば、1〜5000nm、好ましくは30〜1000nm、さらに好ましくは50〜500nm程度であってもよい。
【0086】
本発明の有機半導体はn型半導体、p型半導体であってもよく、真性半導体であってもよい。本発明の有機半導体は、光電変換能を有し、例えば、光吸収により発生した電子及びホールの移動度を高め、光電変換率を向上できる。そのため、本発明の有機半導体は、光電変換デバイス又は光電変換素子(太陽電池素子、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子など)、整流素子(ダイオード)、スイッチング素子又はトランジスタ[トップゲート型、ボトムゲート型(トップコンタクト型、ボトムコンタクト型)など]などの用途に適する。
【0087】
代表的なデバイスとして、太陽電池は、pn接合型半導体に表面電極が積層された構造を有している。例えば、p型シリコン半導体に有機半導体膜を積層して、この有機半導体膜に透明電極(ITO電極など)を積層することにより、太陽電池を形成できる。このような太陽電池では、高い開放電圧及び短絡電流を得ることができる。
【0088】
また、有機ELは、透明電極(ITO電極など)に、有機ヘテロ高分子(発光性高分子)に必要に応じて電子輸送性材料、ホール輸送性材料を分散させた発光層を形成し、この発光層に電極(金属電極など)を積層した構造が例示できる。
【0089】
さらに、有機薄膜トランジスタは、ゲート電極層と、ゲート絶縁層と、ソース/ドレイン電極層と、有機半導体層とで構成されている。これらの層の積層構造によって、有機薄膜トランジスタは、トップゲート型、ボトムゲート型(トップコンタクト型、ボトムコンタクト型)に分類できる。例えば、ゲート電極(酸化膜が形成されたp型シリコンウエハーなど)に有機半導体膜を形成して、この有機半導体膜上にソース・ドレイン電極(金電極)を形成することにより、トップコンタクト型電界効果トランジスタを製造できる。
【実施例】
【0090】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0091】
なお、実施例において、ジエチルエーテルはナトリウムで乾燥後、窒素雰囲気下又は気流下で蒸留して用いた。塩化メチレンは五酸化二リンで乾燥後、窒素雰囲気下又は気流下で蒸留して用いた。テトライソプロポキシチタン(Ti(OPr)及びフェニルジクロロホスフィンは減圧蒸留により精製した。
【0092】
[数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)(溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算で測定した。
【0093】
[表面抵抗]
実施例、参考例及び比較例のポリマー7mgを塩化メチレン10gに溶解させた後、孔径0.2μmのフィルターでろ過して0.07重量%の塗布液を調製した。この塗布液をガラス基板にスピンコートし、薄膜を形成した。得られた薄膜の表面抵抗を、抵抗率計(三菱化学(株)製、「MCP−HT450」)を用いて測定した。
【0094】
[λmax及びλonset並びにバンドギャップ]
実施例、参考例及び比較例のポリマーの塩化メチレン溶液(濃度:1mg/ml)を用いて、紫外−可視吸収スペクトル測定を行い、λmax及びλonsetを測定した。なお、λmaxは最大吸収波長(nm)、λonsetは長波長側の吸収端(nm)を意味する。バンドギャップ(BG,eV)は、紫外−可視吸収スペクトルのλonsetから以下の式を用いて算出した。
【0095】
E=hc/eλ
(式中、Eは電子ボルト(eV)、hはプランク定数(J・s)、cは光の速度(m/s)、eは素電荷(C)、λはλonset波長(nm)を示す)
[HOMO及びLUMO]
サイクリックボルタンメトリー法により酸化還元電位測定を行い、HOMO及びLUMOエネルギー準位を測定した。
【0096】
比較例1
【0097】
【化6】
【0098】
(式中、Rは2−エチルヘキシル基を示す)。
【0099】
上記式(8a)で表される繰り返し単位を有する高分子は、前駆体である有機チタン高分子を有機合成化学協会誌Vol66 No5 2008に記載の方法に準じて合成した。すなわち、アルゴン雰囲気下、1,4−ジエチニル−2,5−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼン(0.191g、0.5mmol)及びテトライソプロポキシチタン(Ti(OPr)(0.198g、0.7mmol)をジエチルエーテル(20ml)に溶解し、この溶液を−78℃で攪拌しつつ、イソプロピルマグネシウムクロリド(PrMgCl)のジエチルエーテル溶液(1.0N、1.25ml、1.25mmol)を添加し、−50℃まで昇温し12時間攪拌し、この温度でフェニルジクロロホスフィン(0.107g、0.6mmol)を加え、室温までゆっくりと昇温し3時間攪拌した。溶媒を留去後、塩化メチレンに溶解しエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)水溶液(1.0N、50ml)を加えて2時間攪拌し、未反応チタンを取り除いた。その後、有機層を回収し硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去後、少量の塩化メチレンに溶解し、ヘキサンへ注入して再沈殿し、赤紫色のポリマー(8a)を収率50%で得た。
【0100】
参考例1
【0101】
【化7】
【0102】
(式中、Rは2−エチルヘキシル基を示す)。
【0103】
アルゴン雰囲気下、比較例1で得られたポリマー(8a)(0.049g,0.100mmolユニット)を塩化メチレン(5.0ml)に溶解し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.017g,0.120mmol)の塩化メチレン(1.0ml)溶液を加え、室温で1時間攪拌した。反応終了後、ヘキサンに再沈殿することで、青色のポリマー(15a)を収率92%(0.052g,0.092mmol)で得た。
H−NMR(300MHz,CDCl,ppm)0.86−0.91(12H,−C),1.19−1.79(18H,−OCH(CCH)CCH),3.47−3.54(br,4H,−OC−),6.91−8.21(aromatic,9H)
31P−NMR(122MHz,CDCl,ppm)57.3ppm。
【0104】
参考例2
【0105】
【化8】
【0106】
(式中、Rは2−エチルヘキシル基を示す)。
【0107】
アルゴン雰囲気下、比較例1で得られたポリマー(8a)(0.049g,0.100mmolユニット)を塩化メチレン(5.0ml)に溶解し、トリフルオロメタンスルホン酸メチル(0.020g,0.120mmol)の塩化メチレン(1.0ml)溶液を加え、室温で1時間攪拌した。反応終了後、ヘキサンに再沈殿することで、ポリマー(10a)を収率90%(0.059g,0.090mmol)で得た。
H−NMR(300MHz,CDCl,ppm)0.86−1.04(12H,−C),1.19−1.52(18H,−OCH(CCH)CCH),3.45−3.52(br,4H,−OC−),7.01−8.11(aromatic,9H)
31P−NMR(122MHz,CDCl,ppm)39.9ppm。
【0108】
比較例2
【0109】
【化9】
【0110】
1,4−ジエチニル−2,5−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼンに代えて、2,5−ジエチニル−3−ドデカニルチオフェン(0.133g、0.5mmol)を用いた以外は、比較例1と同様に操作して、赤黒色のポリマー(8b)を収率45%で得た。
Mn(Mw/Mn)=3000(1.4)
H−NMR(300MHz,CDCl,ppm)0.70〜0.90(br,3H,−C),1.00〜1.35(18H,−C−),1.40〜1.60(2H,Ar−CH−C−),2.20〜2.60(br,2H,Ar−C−),6.84(s,1H,aromatic),7.14(7H,aromatic)
31P−NMR(121MHz,CDCl,ppm):6.69ppm
IR(ATR,cm−1):2961,2921,2851,2361,1456,1436,1416,1259,1092,1020,795,742,691。
【0111】
実施例3
【0112】
【化10】
【0113】
アルゴン雰囲気下、比較例2で得られたポリマー(8b)(0.041g,0.100mmolユニット)を塩化メチレン(5.0ml)に溶解し、トリフルオロメタンスルホン酸メチル(0.020g,0.120mmol)の塩化メチレン(1.0ml)溶液を加え、室温で1時間攪拌した。反応終了後、ヘキサンに再沈殿することで、青色のポリマー(10b)を収率83%(0.059g,0.090mmol)で得た。
H−NMR(300MHz,CDCl,ppm)0.60〜0.90(br,3H,−CH),0.90〜1.35(18H,−CH−),1.23〜1.35(br,2H,Ar−CH−C−),2.20〜2.60(br,2H,Ar−CH−),6.84(s,1H,aromatic),7.42(br,7H,aromatic)
31P−NMR(121MHz,CDCl,ppm):38.7。
【0114】
比較例3
【0115】
【化11】
【0116】
(式中、Rはオクチル基を示す)。
【0117】
1,4−ジエチニル−2,5−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼンに代えて、2,7−ジエチニル−9,9−ジオクチルフルオレン(0.219g、0.500mmol)を用いた以外は、比較例1と同様に操作して、ポリマー(8c)を収率81%で得た。
H−NMR(300MHz,CDCl,ppm)0.10〜2.78(34H,−CH−C15),6.86〜8.20(13H,aromatic)
31P−NMR(121MHz,CDCl,ppm):4.07ppm。
【0118】
参考例4
【0119】
【化12】
【0120】
(式中、Rはオクチル基を示す)。
【0121】
アルゴン雰囲気下、比較例3で得られたポリマー(8c)(0.055g,0.100mmolユニット)を塩化メチレン(5.0ml)に溶解し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.017g,0.120mmol)の塩化メチレン(1.0ml)溶液を加え、室温で1時間攪拌した。反応終了後、ヘキサンに再沈殿することで、赤色のポリマー(15b)を収率93%で得た。
H−NMR(300MHz,CDCl,ppm)0.46〜2.90(34H,−CH−C15),7.31〜7.88(13H,aromatic)
31P−NMR(121MHz,CDCl,ppm):52.7ppm。
【0122】
参考例5
【0123】
【化13】
【0124】
(式中、Rは2−エチルヘキシル基を示す)。
【0125】
アルゴン雰囲気下、比較例1で得られたポリマー(8a)(0.049g,0.100mmolユニット)をテトラヒドロフラン(5.0ml)に溶解し、セレン(0.009g,0.12mmol)を加え、室温で24時間攪拌した。反応終了後、不溶物を濾別し、濾液をヘキサンに再沈殿することで、青紫色のポリマー(12a)を収率90%(0.051g)で得た。
Mn(Mw/Mn)=5500(1.6)
H−NMR(300MHz,CDCl,ppm)0.85−0.94(12H,−C),1.19−1.60(18H,−OCH(CCH)CCH),3.36−3.75(br,4H,−OC−),6.91−7.90(aromatic,9H)
31P−NMR(122MHz,CDCl,ppm)40.9ppm
IR(ATR,cm−1)2961,2928,2853,1411,1258,1086,1015,864,794,701,661
【0126】
【化14】
【0127】
続いて、アルゴン雰囲気下、ポリマー(12a)(0.051g,0.090mmolユニット)を塩化メチレン(5.0ml)に溶解し、トリフルオロメタンスルホン酸メチル(0.018g,0.108mmol)の塩化メチレン(1.0ml)溶液を加え、室温で1時間攪拌した。反応終了後、ヘキサンに再沈殿することで、青色のポリマー(13b)を収率95%(0.043g,0.086mmol)で得た。
H−NMR(300MHz,CDCl,ppm)0.96−1.16(12H,−C),1.19−1.68(18H,−OCH(CCH)CCH),3.58−3.65(br,4H,−OC−),7.13−8.23(aromatic,9H)
31P−NMR(122MHz,CDCl,ppm)47.4ppm。
【0128】
参考例6
【0129】
【化15】
【0130】
(式中、Rは2−エチルヘキシル基を示す)。
【0131】
アルゴン雰囲気下、比較例1で得られたポリマー(8a)(0.049g,0.100mmolユニット)をテトラヒドロフラン(5.0ml)に溶解し、硫黄(0.004g,0.12mmol)を加え、室温で48時間攪拌した。反応終了後、不溶物を濾別し、濾液をヘキサンに再沈殿することで、青紫色のポリマー(12b)を収率87%(0.046g)で得た。
Mn(Mw/Mn)=5000(1.6)
H−NMR(300MHz,CDCl,ppm)0.91−1.21(12H,−C),1.24−1.68(18H,−OCH(CCH)CCH),3.47−3.80(br,4H,−OC−),6.60−7.95(aromatic,9H)
31P−NMR(122MHz,CDCl,ppm)54.0ppm
IR(ATR,cm−1)2960,2924,2852,1464,1436,1259,1091,1016,798,744,719,691。
【0132】
【化16】
【0133】
続いて、アルゴン雰囲気下、ポリマー(12b)(0.046g,0.087mmolユニット)を塩化メチレン(5.0ml)に溶解し、トリフルオロメタンスルホン酸メチル(0.017g,0.104mmol)の塩化メチレン(1.0ml)溶液を加え、室温で1時間攪拌した。反応終了後、ヘキサンに再沈殿することで、青色のポリマー(13b)を収率92%(0.037g,0.080mmol)で得た。
H−NMR(300MHz,CDCl,ppm)0.89−1.20(12H,−C),1.25−1.59(18H,−OCH(CCH)CCH),3.55−3.69(br,4H,−OC−),7.21−8.31(aromatic,9H)
31P−NMR(122MHz,CDCl,ppm)58.7ppm。
【0134】
実施例7
【0135】
【化17】
【0136】
アルゴン雰囲気下、比較例2で得られたポリマー(8b)(0.041g,0.100mmolユニット)をテトラヒドロフラン(5.0ml)に溶解し、セレン(0.009g,0.12mmol)を加え、室温で24時間攪拌した。反応終了後、不溶物を濾別し、濾液をヘキサンに再沈殿することで、青黒色のポリマー(12c)を収率93%(0.046g)で得た。
Mn(Mw/Mn)=4500(1.4)
H−NMR(300MHz,CDCl,ppm):0.80−1.11(br,3H,−CH),1.35(br,18H,−CH−),1.75−1.78(br,2H,Ar−CH−C−),2.4−2.8(br,2H,Ar−CH−),6.98(s,1H,aromatic),6.58−7.86(br,7H,aromatic)
31P−NMR(121MHz,CDCl,ppm):40.9ppm
IR(ATR,cm−1):2961,2922,2851,1462,1436,1258,1089,1016,794。
【0137】
【化18】
【0138】
続いて、アルゴン雰囲気下、ポリマー(12c)(0.046g,0.093mmolユニット)を塩化メチレン(5.0ml)に溶解し、トリフルオロメタンスルホン酸メチル(0.019g,0.111mmol)の塩化メチレン(1.0ml)溶液を加え、室温で1時間攪拌した。反応終了後、ヘキサンに再沈殿することで、青色のポリマー(13c)を収率90%(0.056g,0.084mmol)で得た。
H−NMR(300 MHz,CDCl,ppm):0.92−1.22(br,3H,−CH),1.46(br,18H,−CH−),1.89−1.92(br,2H,Ar−CH−C−),2.9−3.5(br,2H,Ar−CH−),7.19(s,1H,aromatic),7.66−8.34(br,7H,aromatic)
31P−NMR(122MHz,CDCl,ppm)47.9ppm
【0139】
【表1】
【0140】
表1から明らかなように、比較例に比較して、実施例の高分子は、表面抵抗が小さく、高いキャリア移動度を有するとともに、LUMOエネルギー準位が低く、狭バンドギャップ特性を示す。また、比較例3の高分子に三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を接触させると蛍光がクエンチするため、化学センサーなどに利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の有機へテロ高分子は、π−電子共役系高分子であり、低抵抗で導電性の高い有機半導体(高分子型有機半導体)を形成するのに有用である。有機半導体は、様々なデバイス、例えば、整流素子(ダイオード)、スイッチング素子又はトランジスタ[接合型トランジスタ(バイポーラトランジスタ)、電界効果型トランジスタ(ユニポーラトランジスタ)など]、光電変換素子(太陽電池素子、有機EL素子など)などに利用できる。