【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0030】
<ハードコート用組成物の調製>
(実施例1)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(商品名「アロニックスM−305」、東亜合成社製、紫外線硬化型成分)100部、及びジメチルジクロロシラン処理ナノシリカ(商品名「アエロジルR976S」、日本アエロジル社製、アンチブロッキング剤、平均一次粒子径7nm)7.5質量部を混合した。トルエンで適宜希釈した後、ペイントシェーカーにて1時間分散した。さらに、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノン(商品名「イルガキュア2959」、BASFジャパン社製、光重合開始剤)4質量部、及びイオン液体(商品名「IL−AP3」、広栄化学社製、帯電防止剤、脂肪族ホスホニウム系)5質量部を添加して混合し、ハードコート用組成物を得た。
【0031】
(実施例2〜10、比較例1〜13)
表1に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、ハードコート用組成物を得た。なお、表1中の各成分(商品名)の詳細を以下に示す。
【0032】
[紫外線硬化型成分]
・NKエステルA−9550:新中村化学工業社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・NKオリゴU−15HA:新中村化学工業社製、15官能ウレタンアクリレート
【0033】
[アンチブロッキング剤]
・アエロジルR805:日本アエロジル社製、アルキルシリル処理ナノシリカ、平均一次粒子径12nm
・アエロジルRY50:日本アエロジル社製、ジメチルポリシロキサン処理ナノシリカ、平均一次粒子径40nm
・MEK−ST−ZL:日産化学工業社製、シランカップリング処理ナノシリカ(MEK分散液)、平均一次粒子径83nm
・アエロジルR200:日本アエロジル社製、未処理ナノシリカ、平均一次粒子径12nm
・アエロジルOX50:日本アエロジル社製、未処理ナノシリカ、平均一次粒子径40nm
・SC2050−MLH:アドマテックス社製、シランカップリング処理ナノシリカ(MIBK分散液)、平均一次粒子径500nm
【0034】
[光重合開始剤]
・イルガキュア184:BASFジャパン社製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
・ダロキュア1173:BASFジャパン社製、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
・イルガキュア127:BASFジャパン社製、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン
・イルガキュア907:BASFジャパン社製、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン
・イルガキュア369:BASFジャパン社製、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1
・ルシリンTPO:BASFジャパン社製、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド
・エサキュアONE:フラテッリ・ランベルティー社製、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー
【0035】
[帯電防止剤]
・IL−A2:広栄化学社製、脂肪族アミン系イオン液体
・IL−C5:広栄化学社製、脂環式アミン系イオン液体
・IL−MA2:広栄化学社製、脂肪族アミン系アクリレート反応型イオン液体
・IL−S4:広栄化学社製、脂肪族アミン系シラン反応型イオン液体
・PC−3662:丸菱油化工業社製、リチウム塩含有界面活性剤
・エソカードC/12:ライオン社製、4級アンモニウム塩含有界面活性剤
【0036】
【0037】
<試験片の作製>
バーコーターを使用して、PETフィルム(東洋紡績社製、商品名「コスモシャインA4300、厚さ100μm)上に乾燥膜厚3μmになるようにハードコート組成物を塗工した。100℃のオーブン内で1分間乾燥した後、80W/cmの高圧水銀灯にて積算光量300mJ/cm
2になるように光照射し、ハードコート組成物を硬化させて試験片を得た。
【0038】
<評価>
(1)外観及び光学特性値
目視観察によって硬化膜の外観(色味)を評価した。また、ヘイズメーター(商品名「HM−150型」、村上色彩技術研究所社製)を使用し、JIS K7105に準拠して試験片の全光線透過率(Tt)(%)及びヘイズ値(H)を測定し、それぞれの平均値(n=3)を算出した。結果を表2に示す。
【0039】
(2)アンチブロッキング性
試験片の硬化膜の表面にPETフィルム(東洋紡績社製、商品名「コスモシャインA4300、厚さ100μm)を重ね合わせ、インキブロッキングテスター(商品名「DG−BT」、大和グラビヤ社製)を用いて500g/cm
2の荷重を加えながら、40℃のオーブン内に12時間放置する耐熱試験を実施した。オーブンから取り出した後、重ね合わせたPETフィルムを剥離させ、以下に示す評価基準にしたがってアンチブロッキング性を評価した。結果を表2に示す。
○:力を加えることなく容易に剥離した。
△:剥離までに若干間があったが、界面は濡れなかった。
×:剥離せず、界面が濡れた状態となった。
【0040】
(3)表面抵抗値
デジタル絶縁計(商品名「DSM−8103」、東亜ディーケーケー社製)を使用し、JIS K6911に準拠して、初期(試験片の作製直後)の硬化膜、及び上記「(2)アンチブロッキング性」の評価で実施した耐熱試験後の硬化膜の表面抵抗値を測定した。結果を表2に示す
【0041】
(4)耐スチールウール(SW)性(耐傷付き性)
往復摩耗試験機(商品名「HEIDON」、新東科学社製)を使用し、スチールウール(商品名「ボンスター#0000」、ボンスター販売社製)により試験片の硬化膜表面を500g荷重×10往復した。その後、硬化膜表面(20mm×60mm)を目視観察し、以下に示す評価基準にしたがって耐SW性を評価した。結果を表2に示す。
1:傷大多数(白化)
2:傷多数
3:傷数十本
4:傷数本
5:傷なし
【0042】
【0043】
イオン液体を含有しないハードコート用組成物を用いると(比較例1)、イオン液体を含有するハードコート用組成物を用いた場合(実施例1)に比して、アンチブロッキング性が低下する傾向にあることが分かる。イオン液体が存在することで、形成される硬化膜の表面にナノシリカがより配向しやすくなったためであると推測される。
【0044】
表面処理していないナノシリカ(未処理ナノシリカ)を用いた場合(比較例2及び3)には、帯電防止剤との混合によって凝集及び白化し、かつ、帯電防止性も発現しなかった。このことから、表面が有機処理されたシリカを用いることは、外観及び帯電防止性を向上させる上で必須であると考えられる。
【0045】
比較例4〜10のうち、比較例4、6、7、9及び10は良好な帯電防止性を発現しなかった。比較例5では、耐熱試験後も良好な帯電防止性を示したが、耐SW性が発現しなかった。また、比較例8では硬化膜が黄変してしまい、光学用途には不適となった。以上のことから、耐熱試験後も良好な帯電防止性を発揮させるには、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノンを用いることが重要であることが分かる。
【0046】
平均一次粒子径が大きいナノシリカを用いると(比較例11)、ヘイズ値が高くなるとともに白化するため、光学用途には不適であることが分かる。
【0047】
また、イオン液体以外の帯電防止剤を用いると(比較例12及び13)、表面が有機処理されたナノシリカを用いた場合であっても白化するとともに、耐熱試験後の帯電防止性も低下した。これは、イオン液体以外の帯電防止剤と、表面が有機処理されたナノシリカとの相溶性が低いためであると考えられる。以上のことから、帯電防止剤としてイオン液体を用いることが重要であることが分かる。
【0048】
以上の結果から、イオン液体は、帯電防止性を発現させる効果だけでなく、表面が有機処理されたナノシリカの硬化膜表面への配向性を向上させる(アンチブロッキング性を改善する)効果をも発揮させる成分であることが分かる。さらに、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノンを光重合開始剤として用いることで、耐SW性(耐傷付き性)が低下することなく、耐熱試験後の帯電防止性が向上することが分かった。